遮熱コーティング施工方法及び遮熱コーティング施工装置
【課題】複雑な形状をした静翼に対して、品質が良好な遮熱コーティングができる施工方法を提供する。
【解決手段】ロボット1の先端部には溶射ガン2が取り付けられており、ターンテーブル10上には、翼100が載置されている。ターンテーブル10を時計周り方向に回転させつつ、ロボット1の先端部を反時計周り方向に水平に移動させていく。このとき、溶射ガン2に対向している翼面の曲率変化が小さいとき(対向する翼面が翼腹面、翼背面であるとき)には、ターンテーブル10を規定回転速度で回転させ、溶射ガン2を規定移動速度で移動させる。溶射ガン2に対向している翼面の曲率変化が大きいとき(対向する翼面が翼前縁面であるとき)には、曲率変化が大きくなるにしたがい、ターンテーブル10の回転速度を規定回転速度よりも遅くし、溶射ガン2の移動速度を規定移動速度よりも速くする。
【解決手段】ロボット1の先端部には溶射ガン2が取り付けられており、ターンテーブル10上には、翼100が載置されている。ターンテーブル10を時計周り方向に回転させつつ、ロボット1の先端部を反時計周り方向に水平に移動させていく。このとき、溶射ガン2に対向している翼面の曲率変化が小さいとき(対向する翼面が翼腹面、翼背面であるとき)には、ターンテーブル10を規定回転速度で回転させ、溶射ガン2を規定移動速度で移動させる。溶射ガン2に対向している翼面の曲率変化が大きいとき(対向する翼面が翼前縁面であるとき)には、曲率変化が大きくなるにしたがい、ターンテーブル10の回転速度を規定回転速度よりも遅くし、溶射ガン2の移動速度を規定移動速度よりも速くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮熱コーティング施工方法及び遮熱コーティング施工装置に関するものであり、複雑な形状をした被溶射物に対して、品質が良好な遮熱コーティングを施すことができ、良好な遮熱性能を有する製造物を製造することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンでは、その効率を向上させるために、使用するガスの温度を高く設定している。このような高温のガスに晒される翼には、耐熱性を高めるために、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating:TBC)が施されている。TBCとは、被溶射物である翼の表面に、溶射により熱伝導率の小さい遮熱材(例えば熱伝導率の小さいセラミックス系材料)を被覆したものである。
【0003】
被溶射物にTBCを施すには、一般的には、多軸ロボットの先端にプラズマ溶射をする溶射ガンを取り付けた遮熱コーティング施工装置が使用される。このような遮熱コーティング施工装置では、多軸ロボットを駆動して溶射ガンを走査移動させつつ、溶射ガンから被溶射物に対して加熱・溶融した遮熱材を吹き付けて溶射をしている。
【0004】
このようにして得られる遮熱コーティング(TBC)の性能の主なものとしては、遮熱性、耐久性、成膜効率(コスト)がある。
このような性能を良好に維持するためには、(1)電流、(2)プラズマガス流量、(3)溶射距離、(4)粉末量、(5)溶射ガンの移動速度、(6)予熱温度、(7)溶射角度等を適正化する必要がある。
【0005】
そこで、上記の各要求性能を満たす遮熱コーティング施工装置を実現するために、次のような設計手法が採用されている。
【0006】
まず、試験片レベルで要求性能(遮熱、耐久、効率)を満足する、上記パラメータの組合せを得る。
次に、このようにして得たパラメータの組合せを、実部品へトレースするために、装置(ロボット)を駆動するための適正なプログラムを製作する必要がある。
【0007】
ロボットの動きに関連する特に重要なパラメータは、(3)溶射距離、(5)溶射ガンの移動速度、(7)溶射角度であるため、このようなパラメータを考慮してプログラムを製作する必要がある。
このうち、溶射ガンの移動速度は、ロボットに数値で指定できるため、折り返し端部の誤差等を除けば、比較的制御は容易である。ただし、角度急変部、折り返し部等の速度は、条件によっては、ロボットの加速が間に合わず、速度一定にはなりにくい。
溶射ガンの移動速度は、膜厚には直接的に影響しやすいが、TBC膜の性能(耐熱サイクル性、遮熱性等)は、ある速度範囲内であれば、同等のものが得られる。
溶射距離と溶射角度は、ロボットの位置と部品(被溶射物)の位置の相対的なもので決まるため、特に制御が難しい。
【0008】
以上のようにして製作する、実部品に遮熱コーティングを施工するための、ロボットのプログラムの開発の流れを図7に示す。
【0009】
溶射距離は、非常に重要なパラメータであり、距離が長くなるほど、溶射粒子の温度は下がるため、組織、密着性に直接作用し、遮熱性、耐久性に影響が大きい。
逆に、溶射距離が短い場合等では、溶射ガンと被溶射物(ワーク)との接触を避けるため、溶射角度が浅くなるケースがある。
溶射角度が極端に浅くなると、膜の組織が悪くなり、また密着性が落ち、図8に示すように、膜の耐久性が低下しやすい。ここで、溶射角度(θ)とは、図9に示すように、遮熱材の吹き付け方向(図において矢印で示す方向)と、被溶射物の表面とでなす角度をいう。
結局、上記のような条件や状況を考慮して、溶射作業に用いるロボットのプログラムを製作している。
【0010】
ここで、発電用のガスタービンの静翼を、大気プラズマ溶射により遮熱コーティングする従来の一例を、図10を参照して説明する。
【0011】
図10に示すように、遮熱コーティング施工装置は、多軸ロボット1と溶射ガン2とターンテーブル10により構成されている。
多軸ロボット1の先端には、溶射ガン2が取り付けられており、溶射ガン2は、加熱・溶融した遮熱材を被溶射物に吹き付ける。
ターンテーブル10は、水平面内において回転駆動することができる。
【0012】
ガスタービンの静翼100は、通常、翼の根元側(図10では上側)にシュラウド101があり、翼の先端側(図10では下側)にシュラウド102がある構造となっている。更に、遮熱コーティングをする際には、コーティング不要部の成膜を避けるため等のために、シュラウド101側には治具111が、シュラウド102側には治具112が取り付けられている。
そして、静翼100の根元側と先端側が上下に位置する状態で、静翼100が、ターンテーブル10上に載置される。
静翼100の翼面は、翼腹面、翼前縁面、翼背面、翼後縁面からなり、概略的には涙形となっている複雑な形状となっている。
【0013】
このような装置においては、ターンテーブル10は、後述する割り出し動作をして、静翼100の翼面のうち、遮熱コーティングを施す面を、多軸ロボット1に対向させるように回転動作する。
多軸ロボット1は溶射ガン2を走査移動させて、翼面のうち対向した面に対して、溶射をする。
【0014】
次に、多軸ロボット1とターンテーブル10とが動くことにより、溶射をする動作を、図11〜図13を参照して説明する。なお図11〜図13は、図10の状態に載置されている静翼100及びターンテーブル10等を上方からみた平面図である。
【0015】
まず、ターンテーブル10を回転させていって、図11に示すように静翼100の翼腹面が多軸ロボット1に対向する状態になった回転位置で、ターンテーブル10の回転を停止させる。
このとき、多軸ロボット1の先端部を翼腹面に対向させつつ翼面の横方向(翼の根元側と先端側とを結ぶ縦方向(垂直方向)に対して、直交する方向)に沿い走査移動することにより、図中において点線の矢印で示す経路に沿い溶射ガン2を横方向(水平方向)に走査移動させていき、各走査移動位置において溶射ガン2から静翼100に向かって溶射をする。
図11中において、実線の矢印及び二点鎖線の矢印は、遮熱材の溶射方向を示すものである。
【0016】
次に、多軸ロボット1を一端退避させた状態にしてから、再びターンテーブル10を回転させていって、図12に示すように静翼100の翼前縁面が多軸ロボット1に対向する状態になった回転位置で、ターンテーブル10の回転を停止させる。
このとき、多軸ロボット1の先端部を翼前縁面に対向させつつ翼面の横方向に沿い走査移動することにより、図中において点線の矢印で示す経路に沿い溶射ガン2を横方向に走査移動させていき、各走査移動位置において溶射ガン2から静翼100に向かって溶射をする。
図12中において、実線の矢印及び二点鎖線の矢印は、遮熱材の溶射方向を示すものである。
【0017】
その後は、多軸ロボット1を一端退避させた状態にしてから、再びターンテーブル10を回転させていって、図13に示すように静翼100の翼背面が多軸ロボット1に対向する状態になった回転位置で、ターンテーブル10の回転を停止させる。
このとき、多軸ロボット1の先端部を翼背面に対向させつつ翼面の横方向に沿い走査移動することにより、図中において点線の矢印で示す経路に沿い溶射ガン2を横方向に走査移動させていき、各走査移動位置において溶射ガン2から静翼100に向かって溶射をする。
図13中において、実線の矢印及び二点鎖線の矢印は、遮熱材の溶射方向を示すものである。
【0018】
上述したように、ターンテーブル10を回転させていって、溶射すべき翼面が多軸ロボット1に対向する状態になったところで停止する、という動作を繰り返し行うことを、ターンテーブル10の「割り出し動作」と称している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開WO98/17837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
[成膜品質に関する問題]
静翼の翼面に対して溶射をして成膜をする場合において、最も成膜が難しいのは、翼前縁面の曲率急変部である。このため従来では、例えば、図11〜図13に示すように、溶射パスを3分割するなどの手法で、成膜を重ねて成膜対象面全面を施工している。翼の形状や寸法に応じ、分割パターンは変えられるものの、ここでは、簡単のため、3分割の場合を例にとり、説明する。
このように成膜を重ねて施工すると、溶射をすべき全ての翼面に対して面直に溶射をすることはできず、かつ、重なり部の膜厚の調整や、組織の調整が難しく、膜に継目部や、浅角度の成膜や、距離の悪い成膜が混じり、これら部分の耐久性が低下するなどの懸念があった。
【0021】
このようになる理由を、図11〜図13の各パスにおける状態毎に次に順次説明する。
【0022】
図11に示す状態では、静翼100の翼腹面を多軸ロボット1側に向けた位置でターンテーブル10が静止し、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)のみが点線の矢印で示すように走査して成膜している。
実線の矢印及び二点鎖線の矢印は、溶射ガン2が狙っている方向で、この場合、翼腹面に対しては、かなり90度に近い施工となっているが、溶射ガン2の向きは急に変えにくいため、翼前縁面の部分では、角度が悪く、かつ溶射距離の長い膜が不本意ながら少量成膜されてしまう。
溶射施工の場合、膜品質にはある程度の裕度があり、上記課題が直に剥離等の致命的な欠陥につながるわけではなく、使用環境に対して、コーティング部の耐久性が十分高い場合には、このような膜が少量混じっても、性能にはほとんど影響を及ぼさない。しかし、厳しい使用環境となるほど上記施工方法もより理想状態に近づけて、信頼性を増加させる必要がある。
ここで実線の矢印は、狙った翼面に溶射施工している状態を示しており、二点鎖線の矢印は、一連の動きで仕方なく、狙った翼面ではない翼面に成膜されてしまう状態を示している。
【0023】
図12に示す状態では、静翼100の翼前縁面を成膜するため、翼前縁面を多軸ロボット1側に向けた位置でターンテーブル10が静止し、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)は点線の矢印で示すように走査する。
この場合も、二点鎖線の矢印で示すように、翼腹面側の部分に距離の長い、角度の浅い膜が不本意ながら成膜されてしまう。
【0024】
同様に図13に示す状態では、翼背面側を成膜するケースであり、静翼100の翼背面を成膜するため、翼背面を多軸ロボット1側に向けた位置でターンテーブル10が静止し、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)は点線の矢印で示すように走査する。
この場合も、二点鎖線の矢印で示すように、翼前縁面の部分に、角度が浅く、溶射距離の長目の成膜部が生じてしまう。
【0025】
溶射施工の場合、膜品質にはある程度の裕度があり、上記課題が直に剥離等の致命的な欠陥につながるわけではないが、厳しい使用環境となるほど上記施工方法もより理想状態に近づけて、信頼性を増加させる必要がある。
【0026】
結局、図11〜図13に示す各溶射動作においては、溶射距離(溶射ガン2から溶射される翼面までの距離)が一定で、溶射角度(図9参照)が90°となる面直施工となるように常に維持することは困難であり、特に、涙形形状を持つ翼前縁面の部分では曲率が急変するため、かかる問題が顕著になっていた。
【0027】
[ロボットの稼動限界に伴う問題点]
一方、ガスタービンの翼は、非常に複雑狭隘な曲面を持っていて、溶射施工の基本である、面直施工(対象面に対し溶射角度を90°に保つこと)が難しい。
つまり、翼面は概略涙形の複雑な形状をしているため、涙形曲線に沿う形で多軸ロボット1の先端の溶射ガン2を横方向に動かすと、溶射時の多軸ロボット1の速度は、溶接等の動きに比べて速度が概して速いため、特に翼前縁面の曲率急変部では、多軸ロボット1の姿勢の変化が苦しくなる。
その結果、多軸ロボット1の軸の稼動範囲を超えて多軸ロボット1が止まってしまったり、動いたとしても、速度の変動他による膜厚不均一が生じて、TBCのうちトップコート層の膜厚が過大となって剥がれる等、不適合が生じやすい。
【0028】
このような不都合が生じる理由は、
(1)溶射施工時の速度が、溶接等のプロセスに比べ、速度が速い点、
(2)塗装等に比べ、大気プラズマ溶射によるセラミックス遮熱コーティングの場合には、成膜される領域が中央部に集中する形となるので、多軸ロボット1の微妙な動きの不安定(速度の微妙な差など)が結果(膜厚等)に反映されやすい点、
(3)大気プラズマ溶射の溶射距離は、LPPS(低圧プラズマ溶射法)やHVOF(高速フレーム溶射法)等に比べ、概して短く、溶射距離や、位置の微妙なずれも結果に反映されやすい点、 等が組合わさるためである。
【0029】
[縦方向走査を採用しようとした場合の問題点]
また、特に重要な翼面部の施工をする場合、例えば、静翼100の例では、曲率変化が少ない縦方向(翼の根元側と先端側とを結ぶ方向(垂直方向)、図10では上下方向)に溶射ガン2を主に動かすことが考えられるが、上下のシュラウド101,102が邪魔になるため、パスを繋ぐことが難しい。
【0030】
更に、成膜仕様によって、溶射距離を短くしなければならない場合には、図10中に点線で図示するように、溶射ガン2がシュラウド101,102や治具111,112と干渉しやすい。かかる観点から、溶射ガン2を縦方向には動かせないことが多い。
なお溶射距離が短くない場合であっても、一般的にシュラウド101,102や治具111,112の奥行きが長いため、溶射ガン2がシュラウド101,102や治具111,112と干渉しやすく、溶射ガン2を縦方向には動かせないことが多い。
【0031】
[低熱伝導TBCを採用しようとした場合の問題点]
一方、近年各方面で研究がなされている、パイロクロア形結晶構造をもつ低熱伝導のセラミックス等は、一般的に遮熱性や、相安定性には、非常に優れるものの、耐久性を従来並に維持するには、工夫が必要である。これは、上記、低熱伝導セラミックスの破壊靱性が、一般的に、従来YSZ等に比べ小さいためである。
このため、低熱伝導TBCを適用する場合、耐久性維持のため、施工面でも工夫が必要であり、溶射距離を短くして、緻密な組織、場合により微細縦割れを含む組織等とすることも、その1つの打ち手となる。通常、緻密な膜は、熱伝導率が増加方向となるので、打ち手としては使いにくいが、元々熱伝導率が低い、低熱伝導TBCの場合、熱伝導率の増加と耐久性の向上のバランス次第では、有効な改善手段となる。しかし、従来技術では、上述したように、短溶射距離で複雑狭隘な翼形状を施工することは困難である。この結果、従来では、図10に示すような遮熱コーティング施工装置により、低熱伝導型TBCをベストな状態で成膜することはできなかった。
【0032】
本発明は、上記従来技術に鑑み、曲率急変部を有する複雑な形状となっている翼などの被溶射物に対しても、溶射距離を一定にして、溶射距離を90°とする面直施工ができる、遮熱コーティング施工方法及び遮熱コーティング施工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決する本発明の遮熱コーティング施工方法の構成は、
被溶射物が載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルの回転と、
加熱・溶融した遮熱材を前記被溶射物に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットの先端部の移動動作とを連動制御する遮熱コーティング施工方法において、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記被溶射物の被溶射面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ被溶射面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が零であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が零であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とすることを特徴とする。
【0034】
また本発明の遮熱コーティング施工方法の構成は、
ガスタービンの翼が翼の根元側と先端側が上下に位置する状態で載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルの回転と、
加熱・溶融した遮熱材を前記翼に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットの先端部の移動動作とを連動制御する遮熱コーティング施工方法において、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記翼の翼面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ翼面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼前縁面であるときには、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼前縁面である場合には、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とすることを特徴とする。
【0035】
また本発明の遮熱コーティング施工方法の構成は、
前記翼面のうち最下部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め下方に向け、前記翼面のうち最上部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め上方に向ける、制御をすることを特徴とする。
【0036】
また本発明の遮熱コーティング施工装置の構成は、
被溶射物が載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルと、
加熱・溶融した遮熱材を前記被溶射物に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットと、
前記ターンテーブルの回転と、前記ロボットの先端部の移動動作とを連動制御する制御部と、
を備えた遮熱コーティング施工装置において、
前記制御部は、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記被溶射物の被溶射面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ被溶射面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が零であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が零であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とする、連動制御をすることを特徴とする。
【0037】
また本発明の遮熱コーティング施工装置の構成は、
ガスタービンの翼が翼の根元側と先端側が上下に位置する状態で載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルと、
加熱・溶融した遮熱材を前記翼に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットと、
前記ターンテーブルの回転と、前記ロボットの先端部の移動動作とを連動制御する制御部と、
を備えた遮熱コーティング施工装置において、
前記制御部は、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記翼の翼面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ翼面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼前縁面であるときには、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼前縁面である場合には、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とする、連動制御をすることを特徴とする。
【0038】
また本発明の遮熱コーティング施工装置の構成は、
前記制御部は、
前記翼面のうち最下部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め下方に向け、前記翼面のうち最上部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め上方に向ける、制御をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ロボットの稼動範囲および速度を、その許容稼動範囲内及び許容速度範囲内に納めつつ、溶射距離を一定にして溶射角度を90°に保った状態で、被溶射物に対して横方向に溶射ができる。この結果、高品質の遮熱コーティングを形成することができる。
また、溶射距離を短くすることもでき、低熱伝導型TBCを用いて高品質で耐久性良い遮熱コーティングを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例に係る、遮熱コーティング施工装置を示す構成図。
【図2】実施例の動作状態を示す説明図。
【図3】本発明の実施例に係る、遮熱コーティング施工装置を示す構成図。
【図4】本発明の実施例に係る、遮熱コーティング施工装置を示す構成図。
【図5】従来の割り出し法により形成したTBCの組成を示す組成図。
【図6】本発明の実施例により形成したTBCの組成を示す組成図。
【図7】実部品に遮熱コーティングを施工するための、ロボットのプログラム開発の流れを示す説明図。
【図8】溶射角度と膜組成との関係を示す特性図。
【図9】溶射角度を示す説明図。
【図10】従来の遮熱コーティング施工装置を示す構成図。
【図11】従来の遮熱コーティング施工方法の動作を示す説明図。
【図12】従来の遮熱コーティング施工方法の動作を示す説明図。
【図13】従来の遮熱コーティング施工方法の動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
[実施例1の全体構成]
図1は本発明の実施例1に係る、遮熱コーティング施工装置を示す。この遮熱コーティング施工装置は、多軸ロボット1と溶射ガン2とターンテーブル10と制御部20により構成されている。
多軸ロボット1の先端部には、溶射ガン2が取り付けられている。溶射ガン2は、加熱・溶融した遮熱材を被溶射物に吹き付ける溶射をする。
ターンテーブル10は、水平面内において回転駆動する。
【0043】
被溶射物であるガスタービンの静翼100は、翼の根元側(図1では上側)にシュラウド101が取り付けられ、翼の先端側(図1では下側)にシュラウド102が取り付けられている。更に、遮熱コーティングをする際には、シュラウド101側には治具111が、シュラウド102側には治具112が取り付けられている。
そして、静翼100の根元側と先端側が上下に位置する状態で、静翼100が、ターンテーブル10上に載置される。
静翼100の翼面(被溶射面)は、翼腹面、翼前縁面、翼背面、翼後縁面からなり、概略的には涙形となっている複雑な形状となっている。
【0044】
ターンテーブル10は、制御部20による制御に応じて回転する。
多軸ロボット1は、制御部20による制御に応じて駆動し、溶射ガン2を走査移動させ、溶射ガン2は、静翼100の翼面のうち対向した面に対して溶射をする。
【0045】
制御部20は、ターンテーブル10の回転と、溶射ガン2を走査移動させる多軸ロボット1の動作とを、連動動作させる連動動作プログラムを有しており、この連動動作プログラムに従い、ターンテーブル10の回転と、溶射ガン2を走査移動させる多軸ロボット1の動作とを連動させる制御を行う。
【0046】
次に、制御部20による、ターンテーブル10と多軸ロボット1の制御手法を説明する。
以下の説明では、連動動作のうち「ターンテーブルの制御」と「多軸ロボットの制御」を個別に説明した後に、「ターンテーブルと多軸ロボットとを連動動作させる制御」について説明する。
【0047】
[ターンテーブルの制御]
ターンテーブル10は、予め決めた一つの回転方向(例えば時計周り方向)に回転し、しかも、ターンテーブル10上に載置した静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面の曲率変化が小さいほど、ターンテーブル10の回転速度がより速くなり、翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面の曲率変化が大きいほど、ターンテーブル10の回転速度がより遅くなる。
【0048】
更に詳述すると、静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面の曲率変化が零であるとき(平面であるとき)には、ターンテーブル10の回転速度は予め決めた速い規定回転速度となり、翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにつれて、ターンテーブル10の回転速度は予め決めた規定回転速度よりも遅い回転速度となる。
【0049】
このため、ターンテーブル10上に載置した静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼腹面や翼背面である場合(翼面の曲率変化が小さい場合)には、ターンテーブル10の回転速度は、ほぼ規定回転速度(規定回転速度、ないし、規定回転速度に対して、翼面の曲率変化に応じてやや遅くなった回転速度)となる。
【0050】
一方、静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼前縁面である場合(翼面の曲率変化が大きい場合)には、ターンテーブル10の回転速度は、翼面の曲率変化に応じて規定回転速度よりも遅くなる。
このように、静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼前縁面である場合には、
(1)静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼前縁面の翼前縁に近づく方向に移動するにしたがい、ターンテーブル10の回転速度が減少し、
(2)静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼前縁面の翼前縁から離れる方向に移動するにしたがい、ターンテーブル10の回転速度が増加してくる。
これは、翼前縁面は翼前縁に近づくほど曲率変化が大きいからである。
【0051】
[多軸ロボットの制御]
多軸ロボット1は、ロボット先端部に備えた溶射ガン2が、静翼100の翼面に対向しつつ翼面の横方向(翼の根元側と先端側とを結ぶ縦方向(垂直方向)に対して、直交する方向)に走査移動するように、動作する。この多軸ロボット1の先端部ひいては溶射ガン2の横方向(水平方向)の移動方向は、ターンテーブル10の回転方向(例えば時計周り方向)と逆の方向(反時計周り方向)である。
しかも多軸ロボット1の先端部が対向している静翼100の翼面の曲率変化が小さいほど、多軸ロボット1の先端部の横方向の移動速度がより遅くなり、多軸ロボット1の先端部が対向している静翼100の翼面の曲率変化が大きいほど、多軸ロボット1の先端部の横方向の移動速度がより速くなる。
【0052】
更に詳述すると、多軸ロボット1の先端部が対向している翼面の曲率変化が零であるとき(平面であるとき)には、多軸ロボット1の先端部の移動速度は予め決めた遅い規定移動速度であり、多軸ロボット1の先端部が対向している翼面の曲率変化が大きくなるにつれて、多軸ロボット1の先端部の移動速度は予め決めた規定移動速度よりも速い回転速度となる。
【0053】
このため、多軸ロボット1の先端部が、静翼100の翼腹面や翼背面に対向している場合(翼面の曲率変化が小さい場合)には、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)の移動速度は、ほぼ規定移動速度(規定移動速度、ないし、規定移動速度に対して、翼面の曲率変化に応じてやや速くなった移動速度)となる。
【0054】
一方、多軸ロボット1の先端部が、静翼100の翼前縁面に対向している場合(翼面の曲率変化が大きい場合)には、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)の移動速度は、翼面の曲率変化に応じて規定移動速度よりも速くなる。
このように、多軸ロボット1の先端部が、静翼100の翼前縁面に対向している場合には、
(1)多軸ロボット1の先端部が対向している静翼100の翼面が、翼前縁面の翼前縁に近づく方向に移動するにしたがい、多軸ロボット1の先端部の移動速度が増加し、
(2)多軸ロボット1の先端部が対向している静翼100の翼面が、翼前縁面の翼前縁から離れる方向に移動するにしたがい多軸ロボット1の先端部の移動速度が減少してくる。
これは、翼前縁面は翼前縁に近づくほど曲率変化が大きいからである。
【0055】
更に、溶射ガン2から出力される遮熱材の溶射方向が静翼100の翼面に対して直交し、且つ、溶射ガン2と静翼100の翼面との距離が予め決めた一定距離となるように、多軸ロボット1の先端部の位置及び向きが制御される。
【0056】
[ターンテーブルと多軸ロボットとを連動動作させる制御]
図2は実施例1において、制御部20により、ターンテーブル10と多軸ロボット1とが連動動作している状態を示す説明図である。
図2において、ポジションP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8は、それぞれ、ターンテーブル10の回転位置(回転角度)が、−50°,−80°,−90°,−100°,−110°,−120°,−150°,−190°における、静翼100と、溶射ガン2から吹き出された遮熱材の溶射方向(図中、棒状の矢印で示している)とを、平面的に示すものである。
【0057】
ポジションP1〜P8のように、テーブル10は、水平面内において時計周り方向に回転し、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)は、反時計周り方向に沿い横方向移動する。つまりテーブル10の回転方向と、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)の移動方向は、逆方向になっている。
【0058】
このとき、溶射ガン2から吹き出された遮熱材により静翼100の翼面を溶射する場合には、多軸ロボット1の先端部の位置及び向き、即ち、溶射ガン2の位置及び向きは、溶射ガン2から出力される遮熱材の溶射方向が静翼100の翼面に対して直交し、且つ、溶射ガン2と静翼100の翼面との距離が予め決めた一定距離となるように、制御部20により制御される。
【0059】
ポジションP1〜P3のように、静翼100の翼腹面がロボット1の先端部に対向している場合には、ターンテーブル10はほぼ規定回転速度(速い回転速度)で時計周り方向に回転し、多軸ロボット1の先端部はほぼ規定移動速度(遅い移動速度)で反時計周り方向に横移動する。
より詳細に説明すると、ポジションP2では、翼腹面の曲率変化が零であるため、ターンテーブル10の回転速度は規定回転速度となり、多軸ロボット1の先端の移動速度は規定移動速度となり、ポジションP1,P3では、翼腹面の曲率変化がやや大きくなるため、ターンテーブル10の回転速度は規定回転速度よりもやや遅くなり、多軸ロボット1の先端部の移動速度は規定移動速度よりもやや速くなる。このとき、規定回転速度の減少割合と、移動速度の増加割合を同じにしている。
なお翼腹面の曲率変化が、全体的に小さいときには、ポジションP1〜P3を含む翼腹面の全体において、ターンテーブル10の回転速度を規定移動速度とし、多軸ロボット1の先端部の移動速度を規定移動速度にするようにしてもよい。
【0060】
かかる動作により、静翼100の翼腹面の後縁側から前縁側に向けて、横方向に沿い溶射をすることができる。しかも、ターンテーブル10と多軸ロボット1の先端部との相対移動速度は、ポジションP1〜P3に渡り同一となり、これにより、溶射ガン2による横方向に沿う溶射速度(溶射点の移動速度;図2の場合、翼面と溶射カガンの狙う方向の交点Aが溶射点となる。)が一定となる。
【0061】
ポジションP4〜P6のように、静翼100の翼前縁面がロボット1の先端部に対向している場合には、ターンテーブル10は、多軸ロボット1の先端部との対向位置が翼前縁面の翼前縁に向かうにしたがい、回転速度が規定回転速度から減少し、多軸ロボット1の先端部との対向位置が翼前縁面の翼前縁から離れるにしたがい、規定回転速度に向かって増加してくる。
一方、ロボット1の先端部は、この先端部が対向する位置が翼前縁面の翼前縁に向かうにしたがい、移動速度が規定移動速度から増加し、先端部が対向する位置が翼前縁面の翼前縁から離れるにしたがい、移動速度が規定移動速度に向かって減少してくる。
このとき、規定回転速度の減少・増加割合と、移動速度の増加・減少割合を同じにしている。
【0062】
かかる動作により、静翼100の翼前縁面に対して、横方向に沿い溶射をすることができる。しかも、ターンテーブル10と多軸ロボット1の先端部との相対移動速度は、ポジションP4〜P6に渡り同一となり、これにより、溶射ガン2による横方向に沿う溶射速度(溶射点の移動速度;図2の場合、翼面と溶射ガンの狙う方向の交点Aが溶射点となる。)が一定となる。
【0063】
ポジションP7〜P8のように、静翼100の翼背面がロボット1の先端部に対向している場合には、ターンテーブル10はほぼ規定回転速度(速い回転速度)で時計周り方向に回転し、多軸ロボット1の先端部はほぼ規定移動速度(遅い移動速度)で反時計周り方向に横移動する。
より詳細に説明すると、翼背面は平面ではなく全体的に緩やかな曲率変化があるため、ターンテーブル10の回転速度は規定回転速度よりもやや遅くなり、多軸ロボット1の先端部の移動速度は規定移動速度よりもやや速くなる。このとき、規定回転速度の減少割合と、移動速度の増加割合を同じにしている。
なお翼背面の曲率変化が、全体的に小さいときには、ポジションP7〜P8を含む翼背面の全体において、ターンテーブル10の回転速度を規定移動速度とし、多軸ロボット1の先端部の移動速度を規定移動速度にするようにしてもよい。
【0064】
かかる動作により、静翼100の翼背面の前縁側から後縁側に向けて、横方向に沿い溶射をすることができる。しかも、ターンテーブル10と多軸ロボット1の先端部との相対移動速度は、ポジションP7〜P8に渡り同一となり、これにより、溶射ガン2による横方向に沿う溶射速度(溶射点の移動速度;図2の場合、翼面と溶射ガンの狙う方向の交点Aが溶射点となる。)が一定となる。
【0065】
結局、ターンテーブル10の回転と多軸ロボット1の先端部の横方向移動とを連動させることにより、ポジションP4〜P6のように、曲率変化の大きな翼前縁面を溶射する場合には多軸ロボット1の移動は速い速度で行うが、ポジションP1〜P3やポジションP7〜P8のように、曲率変化の小さな翼腹面や翼背面を溶射する場合には、多軸ロボット1の移動は遅い速度で行うことができ、多軸ロボット1の先端部の走査移動は、このロボット稼動範囲(角度、位置、速度)内で実行することができる。
【0066】
このように、制御部20により、多軸ロボット1の先端部の横方向に沿う走査移動と、ターンテーブル10の回転を、連動して制御することにより、静翼100の翼腹面の後縁側から前縁側、前縁面、翼背面の前縁側から後縁側に向けて、横方向に所謂「一筆書き」の状態で、溶射距離を一定にして、且つ、溶射角度を90°にした面直施工により、1パスの溶射をすることができる。
【0067】
このようにして1パスの溶射が完了したら、ターンテーブル10と多軸ロボット1の位置を、図2のポジションP1の状態に戻し、前回の1パスの位置に対して上下方向(縦方向に1ピッチ(例えば3〜5mm)ずらした位置に溶射ができるように、多軸ロボット1の先端の上下方向(縦方向)の位置を調整する。
その後は、前述したのと同様に、制御部20により、図2に示すようなターンテーブル10と多軸ロボット1との連動動作を行って、新たな1パスの溶射をする。
【0068】
以降は、同様に上下方向(縦方向)に1ピッチずらした位置で、パスの溶射をしていき、静翼100の翼面の全面を溶射してTBCを形成する。
【0069】
かかる実施例1では、横方向に沿い所謂一筆書きの状態で1ピッチの溶射ができるため、溶射部の重なりがなくなり、溶射して形成した遮熱コーティングの品質が向上する。
また多軸ロボット1の移動範囲は、この多軸ロボット1に許容される稼動範囲内に納まることができる。
更に、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)を横方向に移動させるため、溶射ガン2がシュラウド101,102や治具111,112と干渉することを防止でき、このため、溶射距離を短くして溶射作業をすることができる。
したがって、溶射材として低熱伝導型TBCを採用しても、端溶射距離で溶射をすることができ、低熱伝導型TBCを用いて高品質で耐久性の良い遮熱コーティングを形成することができる。
【実施例2】
【0070】
次に本発明の実施例2について説明する。実施例2では、翼面の縦方向に沿う最下部や最上部の1パスの溶射をする場合において、ロボット1や溶射ガン2が、上下のシュラウド101,102や治具111,112と干渉しないように工夫したものである。
【0071】
翼面の縦方向に沿う最下部の1パスの溶射をする場合には、図3に示すように、溶射ガン2の向きを、水平面に対して下方に20°程度傾ける。このように溶射ガン2を下方に向けた状態にして、実施例1と同様にして、制御部20により、図2に示すようなターンテーブル10と多軸ロボット1との連動動作を行って、横方向に沿う1パスの溶射をする。
【0072】
このようにすることにより、ロボット1や溶射ガン2が、シュラウド102や治具112に干渉することを防止することができる。
【0073】
また溶射角度が70°の場合には、図8にも示すように、溶射角度が90°(つまり面直)のときと同等の性能が得られる。溶射ガン2を下方に20°傾けても、溶射角度は70°以上となり、良好な溶射性能が得られる。
【0074】
翼面の縦方向に沿う中央部において1パスの溶射をする場合には、図1に示すのと同様に、溶射ガン2の向きを水平面にする。このように溶射ガン2を水平にして、実施例1と同様にして、制御部20により、図2に示すようなターンテーブル10と多軸ロボット1との連動動作を行って、横方向に沿う1パスの溶射をする。
【0075】
翼面の縦方向に沿う最上部の1パスの溶射をする場合には、図4に示すように、溶射ガン2の向きを、水平面に対して上方に20°程度傾ける。このように溶射ガン2を上方に向けた状態にして、実施例1と同様にして、制御部20により、図2に示すようなターンテーブル10と多軸ロボット1との連動動作を行って、1パスの溶射をする。
【0076】
このようにすることにより、ロボット1や溶射ガン2が、シュラウド101や治具111に干渉することを防止することができる。
【0077】
また溶射角度が70°の場合には、図8にも示すように、溶射角度が90°(つまり面直)のときと同等の性能が得られる。溶射ガン2を上方に20°傾けても、溶射角度は70°以上となり、良好な溶射性能が得られる。
【0078】
図5は従来の割り出し法により形成したTBCの組成を示し、図6は実施例1,2により形成したTBCの組成を示している。
従来手法では、翼の曲率急変部では角度の浅い膜が同一箇所に繰り返し重なるため、図5に示すように、異常にポーラスな組織が形成されてしまうのに対して、実施例1,2では、図6に示すように、非常に良好な膜が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、ガスタービンの静翼のみならず、ガスタービンの動翼や、その他の被溶射物に対して溶射をしてTBCを形成するものに対して適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 多軸ロボット
2 溶射ガン
10 ターンテーブル
20 制御部
100 静翼
101,102 シュラウド
111,112 治具
【技術分野】
【0001】
本発明は遮熱コーティング施工方法及び遮熱コーティング施工装置に関するものであり、複雑な形状をした被溶射物に対して、品質が良好な遮熱コーティングを施すことができ、良好な遮熱性能を有する製造物を製造することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンでは、その効率を向上させるために、使用するガスの温度を高く設定している。このような高温のガスに晒される翼には、耐熱性を高めるために、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating:TBC)が施されている。TBCとは、被溶射物である翼の表面に、溶射により熱伝導率の小さい遮熱材(例えば熱伝導率の小さいセラミックス系材料)を被覆したものである。
【0003】
被溶射物にTBCを施すには、一般的には、多軸ロボットの先端にプラズマ溶射をする溶射ガンを取り付けた遮熱コーティング施工装置が使用される。このような遮熱コーティング施工装置では、多軸ロボットを駆動して溶射ガンを走査移動させつつ、溶射ガンから被溶射物に対して加熱・溶融した遮熱材を吹き付けて溶射をしている。
【0004】
このようにして得られる遮熱コーティング(TBC)の性能の主なものとしては、遮熱性、耐久性、成膜効率(コスト)がある。
このような性能を良好に維持するためには、(1)電流、(2)プラズマガス流量、(3)溶射距離、(4)粉末量、(5)溶射ガンの移動速度、(6)予熱温度、(7)溶射角度等を適正化する必要がある。
【0005】
そこで、上記の各要求性能を満たす遮熱コーティング施工装置を実現するために、次のような設計手法が採用されている。
【0006】
まず、試験片レベルで要求性能(遮熱、耐久、効率)を満足する、上記パラメータの組合せを得る。
次に、このようにして得たパラメータの組合せを、実部品へトレースするために、装置(ロボット)を駆動するための適正なプログラムを製作する必要がある。
【0007】
ロボットの動きに関連する特に重要なパラメータは、(3)溶射距離、(5)溶射ガンの移動速度、(7)溶射角度であるため、このようなパラメータを考慮してプログラムを製作する必要がある。
このうち、溶射ガンの移動速度は、ロボットに数値で指定できるため、折り返し端部の誤差等を除けば、比較的制御は容易である。ただし、角度急変部、折り返し部等の速度は、条件によっては、ロボットの加速が間に合わず、速度一定にはなりにくい。
溶射ガンの移動速度は、膜厚には直接的に影響しやすいが、TBC膜の性能(耐熱サイクル性、遮熱性等)は、ある速度範囲内であれば、同等のものが得られる。
溶射距離と溶射角度は、ロボットの位置と部品(被溶射物)の位置の相対的なもので決まるため、特に制御が難しい。
【0008】
以上のようにして製作する、実部品に遮熱コーティングを施工するための、ロボットのプログラムの開発の流れを図7に示す。
【0009】
溶射距離は、非常に重要なパラメータであり、距離が長くなるほど、溶射粒子の温度は下がるため、組織、密着性に直接作用し、遮熱性、耐久性に影響が大きい。
逆に、溶射距離が短い場合等では、溶射ガンと被溶射物(ワーク)との接触を避けるため、溶射角度が浅くなるケースがある。
溶射角度が極端に浅くなると、膜の組織が悪くなり、また密着性が落ち、図8に示すように、膜の耐久性が低下しやすい。ここで、溶射角度(θ)とは、図9に示すように、遮熱材の吹き付け方向(図において矢印で示す方向)と、被溶射物の表面とでなす角度をいう。
結局、上記のような条件や状況を考慮して、溶射作業に用いるロボットのプログラムを製作している。
【0010】
ここで、発電用のガスタービンの静翼を、大気プラズマ溶射により遮熱コーティングする従来の一例を、図10を参照して説明する。
【0011】
図10に示すように、遮熱コーティング施工装置は、多軸ロボット1と溶射ガン2とターンテーブル10により構成されている。
多軸ロボット1の先端には、溶射ガン2が取り付けられており、溶射ガン2は、加熱・溶融した遮熱材を被溶射物に吹き付ける。
ターンテーブル10は、水平面内において回転駆動することができる。
【0012】
ガスタービンの静翼100は、通常、翼の根元側(図10では上側)にシュラウド101があり、翼の先端側(図10では下側)にシュラウド102がある構造となっている。更に、遮熱コーティングをする際には、コーティング不要部の成膜を避けるため等のために、シュラウド101側には治具111が、シュラウド102側には治具112が取り付けられている。
そして、静翼100の根元側と先端側が上下に位置する状態で、静翼100が、ターンテーブル10上に載置される。
静翼100の翼面は、翼腹面、翼前縁面、翼背面、翼後縁面からなり、概略的には涙形となっている複雑な形状となっている。
【0013】
このような装置においては、ターンテーブル10は、後述する割り出し動作をして、静翼100の翼面のうち、遮熱コーティングを施す面を、多軸ロボット1に対向させるように回転動作する。
多軸ロボット1は溶射ガン2を走査移動させて、翼面のうち対向した面に対して、溶射をする。
【0014】
次に、多軸ロボット1とターンテーブル10とが動くことにより、溶射をする動作を、図11〜図13を参照して説明する。なお図11〜図13は、図10の状態に載置されている静翼100及びターンテーブル10等を上方からみた平面図である。
【0015】
まず、ターンテーブル10を回転させていって、図11に示すように静翼100の翼腹面が多軸ロボット1に対向する状態になった回転位置で、ターンテーブル10の回転を停止させる。
このとき、多軸ロボット1の先端部を翼腹面に対向させつつ翼面の横方向(翼の根元側と先端側とを結ぶ縦方向(垂直方向)に対して、直交する方向)に沿い走査移動することにより、図中において点線の矢印で示す経路に沿い溶射ガン2を横方向(水平方向)に走査移動させていき、各走査移動位置において溶射ガン2から静翼100に向かって溶射をする。
図11中において、実線の矢印及び二点鎖線の矢印は、遮熱材の溶射方向を示すものである。
【0016】
次に、多軸ロボット1を一端退避させた状態にしてから、再びターンテーブル10を回転させていって、図12に示すように静翼100の翼前縁面が多軸ロボット1に対向する状態になった回転位置で、ターンテーブル10の回転を停止させる。
このとき、多軸ロボット1の先端部を翼前縁面に対向させつつ翼面の横方向に沿い走査移動することにより、図中において点線の矢印で示す経路に沿い溶射ガン2を横方向に走査移動させていき、各走査移動位置において溶射ガン2から静翼100に向かって溶射をする。
図12中において、実線の矢印及び二点鎖線の矢印は、遮熱材の溶射方向を示すものである。
【0017】
その後は、多軸ロボット1を一端退避させた状態にしてから、再びターンテーブル10を回転させていって、図13に示すように静翼100の翼背面が多軸ロボット1に対向する状態になった回転位置で、ターンテーブル10の回転を停止させる。
このとき、多軸ロボット1の先端部を翼背面に対向させつつ翼面の横方向に沿い走査移動することにより、図中において点線の矢印で示す経路に沿い溶射ガン2を横方向に走査移動させていき、各走査移動位置において溶射ガン2から静翼100に向かって溶射をする。
図13中において、実線の矢印及び二点鎖線の矢印は、遮熱材の溶射方向を示すものである。
【0018】
上述したように、ターンテーブル10を回転させていって、溶射すべき翼面が多軸ロボット1に対向する状態になったところで停止する、という動作を繰り返し行うことを、ターンテーブル10の「割り出し動作」と称している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開WO98/17837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
[成膜品質に関する問題]
静翼の翼面に対して溶射をして成膜をする場合において、最も成膜が難しいのは、翼前縁面の曲率急変部である。このため従来では、例えば、図11〜図13に示すように、溶射パスを3分割するなどの手法で、成膜を重ねて成膜対象面全面を施工している。翼の形状や寸法に応じ、分割パターンは変えられるものの、ここでは、簡単のため、3分割の場合を例にとり、説明する。
このように成膜を重ねて施工すると、溶射をすべき全ての翼面に対して面直に溶射をすることはできず、かつ、重なり部の膜厚の調整や、組織の調整が難しく、膜に継目部や、浅角度の成膜や、距離の悪い成膜が混じり、これら部分の耐久性が低下するなどの懸念があった。
【0021】
このようになる理由を、図11〜図13の各パスにおける状態毎に次に順次説明する。
【0022】
図11に示す状態では、静翼100の翼腹面を多軸ロボット1側に向けた位置でターンテーブル10が静止し、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)のみが点線の矢印で示すように走査して成膜している。
実線の矢印及び二点鎖線の矢印は、溶射ガン2が狙っている方向で、この場合、翼腹面に対しては、かなり90度に近い施工となっているが、溶射ガン2の向きは急に変えにくいため、翼前縁面の部分では、角度が悪く、かつ溶射距離の長い膜が不本意ながら少量成膜されてしまう。
溶射施工の場合、膜品質にはある程度の裕度があり、上記課題が直に剥離等の致命的な欠陥につながるわけではなく、使用環境に対して、コーティング部の耐久性が十分高い場合には、このような膜が少量混じっても、性能にはほとんど影響を及ぼさない。しかし、厳しい使用環境となるほど上記施工方法もより理想状態に近づけて、信頼性を増加させる必要がある。
ここで実線の矢印は、狙った翼面に溶射施工している状態を示しており、二点鎖線の矢印は、一連の動きで仕方なく、狙った翼面ではない翼面に成膜されてしまう状態を示している。
【0023】
図12に示す状態では、静翼100の翼前縁面を成膜するため、翼前縁面を多軸ロボット1側に向けた位置でターンテーブル10が静止し、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)は点線の矢印で示すように走査する。
この場合も、二点鎖線の矢印で示すように、翼腹面側の部分に距離の長い、角度の浅い膜が不本意ながら成膜されてしまう。
【0024】
同様に図13に示す状態では、翼背面側を成膜するケースであり、静翼100の翼背面を成膜するため、翼背面を多軸ロボット1側に向けた位置でターンテーブル10が静止し、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)は点線の矢印で示すように走査する。
この場合も、二点鎖線の矢印で示すように、翼前縁面の部分に、角度が浅く、溶射距離の長目の成膜部が生じてしまう。
【0025】
溶射施工の場合、膜品質にはある程度の裕度があり、上記課題が直に剥離等の致命的な欠陥につながるわけではないが、厳しい使用環境となるほど上記施工方法もより理想状態に近づけて、信頼性を増加させる必要がある。
【0026】
結局、図11〜図13に示す各溶射動作においては、溶射距離(溶射ガン2から溶射される翼面までの距離)が一定で、溶射角度(図9参照)が90°となる面直施工となるように常に維持することは困難であり、特に、涙形形状を持つ翼前縁面の部分では曲率が急変するため、かかる問題が顕著になっていた。
【0027】
[ロボットの稼動限界に伴う問題点]
一方、ガスタービンの翼は、非常に複雑狭隘な曲面を持っていて、溶射施工の基本である、面直施工(対象面に対し溶射角度を90°に保つこと)が難しい。
つまり、翼面は概略涙形の複雑な形状をしているため、涙形曲線に沿う形で多軸ロボット1の先端の溶射ガン2を横方向に動かすと、溶射時の多軸ロボット1の速度は、溶接等の動きに比べて速度が概して速いため、特に翼前縁面の曲率急変部では、多軸ロボット1の姿勢の変化が苦しくなる。
その結果、多軸ロボット1の軸の稼動範囲を超えて多軸ロボット1が止まってしまったり、動いたとしても、速度の変動他による膜厚不均一が生じて、TBCのうちトップコート層の膜厚が過大となって剥がれる等、不適合が生じやすい。
【0028】
このような不都合が生じる理由は、
(1)溶射施工時の速度が、溶接等のプロセスに比べ、速度が速い点、
(2)塗装等に比べ、大気プラズマ溶射によるセラミックス遮熱コーティングの場合には、成膜される領域が中央部に集中する形となるので、多軸ロボット1の微妙な動きの不安定(速度の微妙な差など)が結果(膜厚等)に反映されやすい点、
(3)大気プラズマ溶射の溶射距離は、LPPS(低圧プラズマ溶射法)やHVOF(高速フレーム溶射法)等に比べ、概して短く、溶射距離や、位置の微妙なずれも結果に反映されやすい点、 等が組合わさるためである。
【0029】
[縦方向走査を採用しようとした場合の問題点]
また、特に重要な翼面部の施工をする場合、例えば、静翼100の例では、曲率変化が少ない縦方向(翼の根元側と先端側とを結ぶ方向(垂直方向)、図10では上下方向)に溶射ガン2を主に動かすことが考えられるが、上下のシュラウド101,102が邪魔になるため、パスを繋ぐことが難しい。
【0030】
更に、成膜仕様によって、溶射距離を短くしなければならない場合には、図10中に点線で図示するように、溶射ガン2がシュラウド101,102や治具111,112と干渉しやすい。かかる観点から、溶射ガン2を縦方向には動かせないことが多い。
なお溶射距離が短くない場合であっても、一般的にシュラウド101,102や治具111,112の奥行きが長いため、溶射ガン2がシュラウド101,102や治具111,112と干渉しやすく、溶射ガン2を縦方向には動かせないことが多い。
【0031】
[低熱伝導TBCを採用しようとした場合の問題点]
一方、近年各方面で研究がなされている、パイロクロア形結晶構造をもつ低熱伝導のセラミックス等は、一般的に遮熱性や、相安定性には、非常に優れるものの、耐久性を従来並に維持するには、工夫が必要である。これは、上記、低熱伝導セラミックスの破壊靱性が、一般的に、従来YSZ等に比べ小さいためである。
このため、低熱伝導TBCを適用する場合、耐久性維持のため、施工面でも工夫が必要であり、溶射距離を短くして、緻密な組織、場合により微細縦割れを含む組織等とすることも、その1つの打ち手となる。通常、緻密な膜は、熱伝導率が増加方向となるので、打ち手としては使いにくいが、元々熱伝導率が低い、低熱伝導TBCの場合、熱伝導率の増加と耐久性の向上のバランス次第では、有効な改善手段となる。しかし、従来技術では、上述したように、短溶射距離で複雑狭隘な翼形状を施工することは困難である。この結果、従来では、図10に示すような遮熱コーティング施工装置により、低熱伝導型TBCをベストな状態で成膜することはできなかった。
【0032】
本発明は、上記従来技術に鑑み、曲率急変部を有する複雑な形状となっている翼などの被溶射物に対しても、溶射距離を一定にして、溶射距離を90°とする面直施工ができる、遮熱コーティング施工方法及び遮熱コーティング施工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決する本発明の遮熱コーティング施工方法の構成は、
被溶射物が載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルの回転と、
加熱・溶融した遮熱材を前記被溶射物に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットの先端部の移動動作とを連動制御する遮熱コーティング施工方法において、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記被溶射物の被溶射面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ被溶射面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が零であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が零であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とすることを特徴とする。
【0034】
また本発明の遮熱コーティング施工方法の構成は、
ガスタービンの翼が翼の根元側と先端側が上下に位置する状態で載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルの回転と、
加熱・溶融した遮熱材を前記翼に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットの先端部の移動動作とを連動制御する遮熱コーティング施工方法において、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記翼の翼面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ翼面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼前縁面であるときには、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼前縁面である場合には、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とすることを特徴とする。
【0035】
また本発明の遮熱コーティング施工方法の構成は、
前記翼面のうち最下部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め下方に向け、前記翼面のうち最上部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め上方に向ける、制御をすることを特徴とする。
【0036】
また本発明の遮熱コーティング施工装置の構成は、
被溶射物が載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルと、
加熱・溶融した遮熱材を前記被溶射物に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットと、
前記ターンテーブルの回転と、前記ロボットの先端部の移動動作とを連動制御する制御部と、
を備えた遮熱コーティング施工装置において、
前記制御部は、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記被溶射物の被溶射面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ被溶射面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が零であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が零であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とする、連動制御をすることを特徴とする。
【0037】
また本発明の遮熱コーティング施工装置の構成は、
ガスタービンの翼が翼の根元側と先端側が上下に位置する状態で載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルと、
加熱・溶融した遮熱材を前記翼に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットと、
前記ターンテーブルの回転と、前記ロボットの先端部の移動動作とを連動制御する制御部と、
を備えた遮熱コーティング施工装置において、
前記制御部は、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記翼の翼面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ翼面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼前縁面であるときには、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼前縁面である場合には、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とする、連動制御をすることを特徴とする。
【0038】
また本発明の遮熱コーティング施工装置の構成は、
前記制御部は、
前記翼面のうち最下部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め下方に向け、前記翼面のうち最上部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め上方に向ける、制御をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ロボットの稼動範囲および速度を、その許容稼動範囲内及び許容速度範囲内に納めつつ、溶射距離を一定にして溶射角度を90°に保った状態で、被溶射物に対して横方向に溶射ができる。この結果、高品質の遮熱コーティングを形成することができる。
また、溶射距離を短くすることもでき、低熱伝導型TBCを用いて高品質で耐久性良い遮熱コーティングを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例に係る、遮熱コーティング施工装置を示す構成図。
【図2】実施例の動作状態を示す説明図。
【図3】本発明の実施例に係る、遮熱コーティング施工装置を示す構成図。
【図4】本発明の実施例に係る、遮熱コーティング施工装置を示す構成図。
【図5】従来の割り出し法により形成したTBCの組成を示す組成図。
【図6】本発明の実施例により形成したTBCの組成を示す組成図。
【図7】実部品に遮熱コーティングを施工するための、ロボットのプログラム開発の流れを示す説明図。
【図8】溶射角度と膜組成との関係を示す特性図。
【図9】溶射角度を示す説明図。
【図10】従来の遮熱コーティング施工装置を示す構成図。
【図11】従来の遮熱コーティング施工方法の動作を示す説明図。
【図12】従来の遮熱コーティング施工方法の動作を示す説明図。
【図13】従来の遮熱コーティング施工方法の動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
[実施例1の全体構成]
図1は本発明の実施例1に係る、遮熱コーティング施工装置を示す。この遮熱コーティング施工装置は、多軸ロボット1と溶射ガン2とターンテーブル10と制御部20により構成されている。
多軸ロボット1の先端部には、溶射ガン2が取り付けられている。溶射ガン2は、加熱・溶融した遮熱材を被溶射物に吹き付ける溶射をする。
ターンテーブル10は、水平面内において回転駆動する。
【0043】
被溶射物であるガスタービンの静翼100は、翼の根元側(図1では上側)にシュラウド101が取り付けられ、翼の先端側(図1では下側)にシュラウド102が取り付けられている。更に、遮熱コーティングをする際には、シュラウド101側には治具111が、シュラウド102側には治具112が取り付けられている。
そして、静翼100の根元側と先端側が上下に位置する状態で、静翼100が、ターンテーブル10上に載置される。
静翼100の翼面(被溶射面)は、翼腹面、翼前縁面、翼背面、翼後縁面からなり、概略的には涙形となっている複雑な形状となっている。
【0044】
ターンテーブル10は、制御部20による制御に応じて回転する。
多軸ロボット1は、制御部20による制御に応じて駆動し、溶射ガン2を走査移動させ、溶射ガン2は、静翼100の翼面のうち対向した面に対して溶射をする。
【0045】
制御部20は、ターンテーブル10の回転と、溶射ガン2を走査移動させる多軸ロボット1の動作とを、連動動作させる連動動作プログラムを有しており、この連動動作プログラムに従い、ターンテーブル10の回転と、溶射ガン2を走査移動させる多軸ロボット1の動作とを連動させる制御を行う。
【0046】
次に、制御部20による、ターンテーブル10と多軸ロボット1の制御手法を説明する。
以下の説明では、連動動作のうち「ターンテーブルの制御」と「多軸ロボットの制御」を個別に説明した後に、「ターンテーブルと多軸ロボットとを連動動作させる制御」について説明する。
【0047】
[ターンテーブルの制御]
ターンテーブル10は、予め決めた一つの回転方向(例えば時計周り方向)に回転し、しかも、ターンテーブル10上に載置した静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面の曲率変化が小さいほど、ターンテーブル10の回転速度がより速くなり、翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面の曲率変化が大きいほど、ターンテーブル10の回転速度がより遅くなる。
【0048】
更に詳述すると、静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面の曲率変化が零であるとき(平面であるとき)には、ターンテーブル10の回転速度は予め決めた速い規定回転速度となり、翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにつれて、ターンテーブル10の回転速度は予め決めた規定回転速度よりも遅い回転速度となる。
【0049】
このため、ターンテーブル10上に載置した静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼腹面や翼背面である場合(翼面の曲率変化が小さい場合)には、ターンテーブル10の回転速度は、ほぼ規定回転速度(規定回転速度、ないし、規定回転速度に対して、翼面の曲率変化に応じてやや遅くなった回転速度)となる。
【0050】
一方、静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼前縁面である場合(翼面の曲率変化が大きい場合)には、ターンテーブル10の回転速度は、翼面の曲率変化に応じて規定回転速度よりも遅くなる。
このように、静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼前縁面である場合には、
(1)静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼前縁面の翼前縁に近づく方向に移動するにしたがい、ターンテーブル10の回転速度が減少し、
(2)静翼100の翼面のうち多軸ロボット1の先端部に対向している面が、翼前縁面の翼前縁から離れる方向に移動するにしたがい、ターンテーブル10の回転速度が増加してくる。
これは、翼前縁面は翼前縁に近づくほど曲率変化が大きいからである。
【0051】
[多軸ロボットの制御]
多軸ロボット1は、ロボット先端部に備えた溶射ガン2が、静翼100の翼面に対向しつつ翼面の横方向(翼の根元側と先端側とを結ぶ縦方向(垂直方向)に対して、直交する方向)に走査移動するように、動作する。この多軸ロボット1の先端部ひいては溶射ガン2の横方向(水平方向)の移動方向は、ターンテーブル10の回転方向(例えば時計周り方向)と逆の方向(反時計周り方向)である。
しかも多軸ロボット1の先端部が対向している静翼100の翼面の曲率変化が小さいほど、多軸ロボット1の先端部の横方向の移動速度がより遅くなり、多軸ロボット1の先端部が対向している静翼100の翼面の曲率変化が大きいほど、多軸ロボット1の先端部の横方向の移動速度がより速くなる。
【0052】
更に詳述すると、多軸ロボット1の先端部が対向している翼面の曲率変化が零であるとき(平面であるとき)には、多軸ロボット1の先端部の移動速度は予め決めた遅い規定移動速度であり、多軸ロボット1の先端部が対向している翼面の曲率変化が大きくなるにつれて、多軸ロボット1の先端部の移動速度は予め決めた規定移動速度よりも速い回転速度となる。
【0053】
このため、多軸ロボット1の先端部が、静翼100の翼腹面や翼背面に対向している場合(翼面の曲率変化が小さい場合)には、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)の移動速度は、ほぼ規定移動速度(規定移動速度、ないし、規定移動速度に対して、翼面の曲率変化に応じてやや速くなった移動速度)となる。
【0054】
一方、多軸ロボット1の先端部が、静翼100の翼前縁面に対向している場合(翼面の曲率変化が大きい場合)には、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)の移動速度は、翼面の曲率変化に応じて規定移動速度よりも速くなる。
このように、多軸ロボット1の先端部が、静翼100の翼前縁面に対向している場合には、
(1)多軸ロボット1の先端部が対向している静翼100の翼面が、翼前縁面の翼前縁に近づく方向に移動するにしたがい、多軸ロボット1の先端部の移動速度が増加し、
(2)多軸ロボット1の先端部が対向している静翼100の翼面が、翼前縁面の翼前縁から離れる方向に移動するにしたがい多軸ロボット1の先端部の移動速度が減少してくる。
これは、翼前縁面は翼前縁に近づくほど曲率変化が大きいからである。
【0055】
更に、溶射ガン2から出力される遮熱材の溶射方向が静翼100の翼面に対して直交し、且つ、溶射ガン2と静翼100の翼面との距離が予め決めた一定距離となるように、多軸ロボット1の先端部の位置及び向きが制御される。
【0056】
[ターンテーブルと多軸ロボットとを連動動作させる制御]
図2は実施例1において、制御部20により、ターンテーブル10と多軸ロボット1とが連動動作している状態を示す説明図である。
図2において、ポジションP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8は、それぞれ、ターンテーブル10の回転位置(回転角度)が、−50°,−80°,−90°,−100°,−110°,−120°,−150°,−190°における、静翼100と、溶射ガン2から吹き出された遮熱材の溶射方向(図中、棒状の矢印で示している)とを、平面的に示すものである。
【0057】
ポジションP1〜P8のように、テーブル10は、水平面内において時計周り方向に回転し、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)は、反時計周り方向に沿い横方向移動する。つまりテーブル10の回転方向と、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)の移動方向は、逆方向になっている。
【0058】
このとき、溶射ガン2から吹き出された遮熱材により静翼100の翼面を溶射する場合には、多軸ロボット1の先端部の位置及び向き、即ち、溶射ガン2の位置及び向きは、溶射ガン2から出力される遮熱材の溶射方向が静翼100の翼面に対して直交し、且つ、溶射ガン2と静翼100の翼面との距離が予め決めた一定距離となるように、制御部20により制御される。
【0059】
ポジションP1〜P3のように、静翼100の翼腹面がロボット1の先端部に対向している場合には、ターンテーブル10はほぼ規定回転速度(速い回転速度)で時計周り方向に回転し、多軸ロボット1の先端部はほぼ規定移動速度(遅い移動速度)で反時計周り方向に横移動する。
より詳細に説明すると、ポジションP2では、翼腹面の曲率変化が零であるため、ターンテーブル10の回転速度は規定回転速度となり、多軸ロボット1の先端の移動速度は規定移動速度となり、ポジションP1,P3では、翼腹面の曲率変化がやや大きくなるため、ターンテーブル10の回転速度は規定回転速度よりもやや遅くなり、多軸ロボット1の先端部の移動速度は規定移動速度よりもやや速くなる。このとき、規定回転速度の減少割合と、移動速度の増加割合を同じにしている。
なお翼腹面の曲率変化が、全体的に小さいときには、ポジションP1〜P3を含む翼腹面の全体において、ターンテーブル10の回転速度を規定移動速度とし、多軸ロボット1の先端部の移動速度を規定移動速度にするようにしてもよい。
【0060】
かかる動作により、静翼100の翼腹面の後縁側から前縁側に向けて、横方向に沿い溶射をすることができる。しかも、ターンテーブル10と多軸ロボット1の先端部との相対移動速度は、ポジションP1〜P3に渡り同一となり、これにより、溶射ガン2による横方向に沿う溶射速度(溶射点の移動速度;図2の場合、翼面と溶射カガンの狙う方向の交点Aが溶射点となる。)が一定となる。
【0061】
ポジションP4〜P6のように、静翼100の翼前縁面がロボット1の先端部に対向している場合には、ターンテーブル10は、多軸ロボット1の先端部との対向位置が翼前縁面の翼前縁に向かうにしたがい、回転速度が規定回転速度から減少し、多軸ロボット1の先端部との対向位置が翼前縁面の翼前縁から離れるにしたがい、規定回転速度に向かって増加してくる。
一方、ロボット1の先端部は、この先端部が対向する位置が翼前縁面の翼前縁に向かうにしたがい、移動速度が規定移動速度から増加し、先端部が対向する位置が翼前縁面の翼前縁から離れるにしたがい、移動速度が規定移動速度に向かって減少してくる。
このとき、規定回転速度の減少・増加割合と、移動速度の増加・減少割合を同じにしている。
【0062】
かかる動作により、静翼100の翼前縁面に対して、横方向に沿い溶射をすることができる。しかも、ターンテーブル10と多軸ロボット1の先端部との相対移動速度は、ポジションP4〜P6に渡り同一となり、これにより、溶射ガン2による横方向に沿う溶射速度(溶射点の移動速度;図2の場合、翼面と溶射ガンの狙う方向の交点Aが溶射点となる。)が一定となる。
【0063】
ポジションP7〜P8のように、静翼100の翼背面がロボット1の先端部に対向している場合には、ターンテーブル10はほぼ規定回転速度(速い回転速度)で時計周り方向に回転し、多軸ロボット1の先端部はほぼ規定移動速度(遅い移動速度)で反時計周り方向に横移動する。
より詳細に説明すると、翼背面は平面ではなく全体的に緩やかな曲率変化があるため、ターンテーブル10の回転速度は規定回転速度よりもやや遅くなり、多軸ロボット1の先端部の移動速度は規定移動速度よりもやや速くなる。このとき、規定回転速度の減少割合と、移動速度の増加割合を同じにしている。
なお翼背面の曲率変化が、全体的に小さいときには、ポジションP7〜P8を含む翼背面の全体において、ターンテーブル10の回転速度を規定移動速度とし、多軸ロボット1の先端部の移動速度を規定移動速度にするようにしてもよい。
【0064】
かかる動作により、静翼100の翼背面の前縁側から後縁側に向けて、横方向に沿い溶射をすることができる。しかも、ターンテーブル10と多軸ロボット1の先端部との相対移動速度は、ポジションP7〜P8に渡り同一となり、これにより、溶射ガン2による横方向に沿う溶射速度(溶射点の移動速度;図2の場合、翼面と溶射ガンの狙う方向の交点Aが溶射点となる。)が一定となる。
【0065】
結局、ターンテーブル10の回転と多軸ロボット1の先端部の横方向移動とを連動させることにより、ポジションP4〜P6のように、曲率変化の大きな翼前縁面を溶射する場合には多軸ロボット1の移動は速い速度で行うが、ポジションP1〜P3やポジションP7〜P8のように、曲率変化の小さな翼腹面や翼背面を溶射する場合には、多軸ロボット1の移動は遅い速度で行うことができ、多軸ロボット1の先端部の走査移動は、このロボット稼動範囲(角度、位置、速度)内で実行することができる。
【0066】
このように、制御部20により、多軸ロボット1の先端部の横方向に沿う走査移動と、ターンテーブル10の回転を、連動して制御することにより、静翼100の翼腹面の後縁側から前縁側、前縁面、翼背面の前縁側から後縁側に向けて、横方向に所謂「一筆書き」の状態で、溶射距離を一定にして、且つ、溶射角度を90°にした面直施工により、1パスの溶射をすることができる。
【0067】
このようにして1パスの溶射が完了したら、ターンテーブル10と多軸ロボット1の位置を、図2のポジションP1の状態に戻し、前回の1パスの位置に対して上下方向(縦方向に1ピッチ(例えば3〜5mm)ずらした位置に溶射ができるように、多軸ロボット1の先端の上下方向(縦方向)の位置を調整する。
その後は、前述したのと同様に、制御部20により、図2に示すようなターンテーブル10と多軸ロボット1との連動動作を行って、新たな1パスの溶射をする。
【0068】
以降は、同様に上下方向(縦方向)に1ピッチずらした位置で、パスの溶射をしていき、静翼100の翼面の全面を溶射してTBCを形成する。
【0069】
かかる実施例1では、横方向に沿い所謂一筆書きの状態で1ピッチの溶射ができるため、溶射部の重なりがなくなり、溶射して形成した遮熱コーティングの品質が向上する。
また多軸ロボット1の移動範囲は、この多軸ロボット1に許容される稼動範囲内に納まることができる。
更に、多軸ロボット1の先端部(溶射ガン2)を横方向に移動させるため、溶射ガン2がシュラウド101,102や治具111,112と干渉することを防止でき、このため、溶射距離を短くして溶射作業をすることができる。
したがって、溶射材として低熱伝導型TBCを採用しても、端溶射距離で溶射をすることができ、低熱伝導型TBCを用いて高品質で耐久性の良い遮熱コーティングを形成することができる。
【実施例2】
【0070】
次に本発明の実施例2について説明する。実施例2では、翼面の縦方向に沿う最下部や最上部の1パスの溶射をする場合において、ロボット1や溶射ガン2が、上下のシュラウド101,102や治具111,112と干渉しないように工夫したものである。
【0071】
翼面の縦方向に沿う最下部の1パスの溶射をする場合には、図3に示すように、溶射ガン2の向きを、水平面に対して下方に20°程度傾ける。このように溶射ガン2を下方に向けた状態にして、実施例1と同様にして、制御部20により、図2に示すようなターンテーブル10と多軸ロボット1との連動動作を行って、横方向に沿う1パスの溶射をする。
【0072】
このようにすることにより、ロボット1や溶射ガン2が、シュラウド102や治具112に干渉することを防止することができる。
【0073】
また溶射角度が70°の場合には、図8にも示すように、溶射角度が90°(つまり面直)のときと同等の性能が得られる。溶射ガン2を下方に20°傾けても、溶射角度は70°以上となり、良好な溶射性能が得られる。
【0074】
翼面の縦方向に沿う中央部において1パスの溶射をする場合には、図1に示すのと同様に、溶射ガン2の向きを水平面にする。このように溶射ガン2を水平にして、実施例1と同様にして、制御部20により、図2に示すようなターンテーブル10と多軸ロボット1との連動動作を行って、横方向に沿う1パスの溶射をする。
【0075】
翼面の縦方向に沿う最上部の1パスの溶射をする場合には、図4に示すように、溶射ガン2の向きを、水平面に対して上方に20°程度傾ける。このように溶射ガン2を上方に向けた状態にして、実施例1と同様にして、制御部20により、図2に示すようなターンテーブル10と多軸ロボット1との連動動作を行って、1パスの溶射をする。
【0076】
このようにすることにより、ロボット1や溶射ガン2が、シュラウド101や治具111に干渉することを防止することができる。
【0077】
また溶射角度が70°の場合には、図8にも示すように、溶射角度が90°(つまり面直)のときと同等の性能が得られる。溶射ガン2を上方に20°傾けても、溶射角度は70°以上となり、良好な溶射性能が得られる。
【0078】
図5は従来の割り出し法により形成したTBCの組成を示し、図6は実施例1,2により形成したTBCの組成を示している。
従来手法では、翼の曲率急変部では角度の浅い膜が同一箇所に繰り返し重なるため、図5に示すように、異常にポーラスな組織が形成されてしまうのに対して、実施例1,2では、図6に示すように、非常に良好な膜が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、ガスタービンの静翼のみならず、ガスタービンの動翼や、その他の被溶射物に対して溶射をしてTBCを形成するものに対して適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 多軸ロボット
2 溶射ガン
10 ターンテーブル
20 制御部
100 静翼
101,102 シュラウド
111,112 治具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶射物が載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルの回転と、
加熱・溶融した遮熱材を前記被溶射物に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットの先端部の移動動作とを連動制御する遮熱コーティング施工方法において、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記被溶射物の被溶射面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ被溶射面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が零であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が零であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とすることを特徴とする遮熱コーティング施工方法。
【請求項2】
ガスタービンの翼が翼の根元側と先端側が上下に位置する状態で載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルの回転と、
加熱・溶融した遮熱材を前記翼に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットの先端部の移動動作とを連動制御する遮熱コーティング施工方法において、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記翼の翼面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ翼面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼前縁面であるときには、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼前縁面である場合には、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とすることを特徴とする遮熱コーティング施工方法。
【請求項3】
請求項4において、
前記翼面のうち最下部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め下方に向け、前記翼面のうち最上部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め上方に向ける、制御をすることを特徴とする遮熱コーティング施工方法。
【請求項4】
被溶射物が載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルと、
加熱・溶融した遮熱材を前記被溶射物に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットと、
前記ターンテーブルの回転と、前記ロボットの先端部の移動動作とを連動制御する制御部と、
を備えた遮熱コーティング施工装置において、
前記制御部は、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記被溶射物の被溶射面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ被溶射面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が零であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が零であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とする、連動制御をすることを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項5】
ガスタービンの翼が翼の根元側と先端側が上下に位置する状態で載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルと、
加熱・溶融した遮熱材を前記翼に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットと、
前記ターンテーブルの回転と、前記ロボットの先端部の移動動作とを連動制御する制御部と、
を備えた遮熱コーティング施工装置において、
前記制御部は、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記翼の翼面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ翼面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼前縁面であるときには、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼前縁面である場合には、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とする、連動制御をすることを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御部は、
前記翼面のうち最下部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め下方に向け、前記翼面のうち最上部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め上方に向ける、制御をすることを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項1】
被溶射物が載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルの回転と、
加熱・溶融した遮熱材を前記被溶射物に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットの先端部の移動動作とを連動制御する遮熱コーティング施工方法において、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記被溶射物の被溶射面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ被溶射面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が零であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が零であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とすることを特徴とする遮熱コーティング施工方法。
【請求項2】
ガスタービンの翼が翼の根元側と先端側が上下に位置する状態で載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルの回転と、
加熱・溶融した遮熱材を前記翼に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットの先端部の移動動作とを連動制御する遮熱コーティング施工方法において、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記翼の翼面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ翼面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼前縁面であるときには、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼前縁面である場合には、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とすることを特徴とする遮熱コーティング施工方法。
【請求項3】
請求項4において、
前記翼面のうち最下部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め下方に向け、前記翼面のうち最上部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め上方に向ける、制御をすることを特徴とする遮熱コーティング施工方法。
【請求項4】
被溶射物が載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルと、
加熱・溶融した遮熱材を前記被溶射物に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットと、
前記ターンテーブルの回転と、前記ロボットの先端部の移動動作とを連動制御する制御部と、
を備えた遮熱コーティング施工装置において、
前記制御部は、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記被溶射物の被溶射面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ被溶射面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が零であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記被溶射物の被溶射面のうち前記ロボットの先端部に対向している面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が零であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記被溶射面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とする、連動制御をすることを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項5】
ガスタービンの翼が翼の根元側と先端側が上下に位置する状態で載置されると共に、水平面内で回転するターンテーブルと、
加熱・溶融した遮熱材を前記翼に吹き付けて溶射をする溶射ガンが、先端部に取り付けられたロボットと、
前記ターンテーブルの回転と、前記ロボットの先端部の移動動作とを連動制御する制御部と、
を備えた遮熱コーティング施工装置において、
前記制御部は、
前記ターンテーブルを予め決めた1つの回転方向に回転させ、
前記溶射ガンが前記翼の翼面に対向しつつ溶射距離が予め決めた一定距離で且つ翼面に対する溶射角度が90°となるように維持しつつ、前記ロボットの先端部を、前記回転方向と逆方向に水平方向に移動させ、
前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ターンテーブルの回転速度を予め決めた規定回転速度とし、前記ターンテーブル上に載置した前記翼の翼面のうち前記ロボットの先端部に対向している面が翼前縁面であるときには、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ターンテーブルの回転速度を前記規定回転速度よりも遅い回転速度とし、
前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼腹面または翼背面であるときには、前記ロボットの先端部の移動速度を予め決めた規定移動速度とし、前記ロボットの先端部が対向している前記翼面が翼前縁面である場合には、翼前縁面の曲率変化が大きくなるにしたがい、前記ロボットの先端部の移動速度を前記規定移動速度よりも速い移動速度とする、連動制御をすることを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御部は、
前記翼面のうち最下部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め下方に向け、前記翼面のうち最上部を溶射する場合には、前記溶射ガンを斜め上方に向ける、制御をすることを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−195945(P2011−195945A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67226(P2010−67226)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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