説明

遮蔽を行ない、はんだ付けを必要としない電子ユニット用のコネクター

【課題】 遮蔽を行ない、はんだ付けを必要としない電子ユニット用のコネクターを提供する。
【解決手段】 本発明は、各々が電気的接続パッド(13)を備え、2つの空洞(11、21)内にそれぞれが設置される、2つの電子回路基板(1、2)を相互接続するための装置(40)に関し、この装置は空洞間のマイクロ波遮蔽手段を備える。
この装置は更に:
− その両端がそれぞれ2つの電子回路基板の接続パッド(13)と直接接触するように意図された導電体であって、装置の端から端まで貫通し、はんだ付けされていない幾つかの導電体(48)と、
− 装置の両側に、装置に対して2つの回路基板を保持するための機械的手段とを備え、
そして各導体(48)と接触し、各導電体の長さの全体又は幾分かを囲むマイクロ波吸収体(45)によって、遮蔽手段が用意される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、人工衛星の積載荷重により機上に搭載されるような、能動的RF機器における2つの電子回路基板の相互接続に関する。これらの基板は各々が空洞内に設置され、1つの基板が他の基板を電磁的に妨害するのを避けるように、これらの空洞を遮蔽することが必要である。
【背景技術】
【0002】
能動的RF(無線周波数)機器の様々な内部の電子的機能の厳密な仕切りを得るために、1GHzよりも高い周波数における約90dBiの遮蔽が目標とされる。その一例が図1に示されている、最も一般的に採用される解決策は、貫通フィルターを用いてこの電気的相互接続を行なうことにある。各々の電子回路基板(又はモジュール)(この例においては、LF(低周波数)モジュール1及びRFモジュール2)は、金属の仕切り構造により境界を定められた空洞内に固定される。貫通コンデンサーとも呼ばれる貫通フィルター30は、2つの空洞11と21に共通の仕切り32内に備えられた開口の中に、接着剤を用いて取り付けられる。これらの貫通フィルター30はRFシールを備える。電子回路基板の接続パッド13、23は、両端ではんだ付けされた導線31を用いて、貫通フィルター30に接続されている。各貫通フィルター30は、1つの信号の電気的接続を確実にする。従って、1つの基板から他の基板へと通すべき信号の数と同じ数の貫通フィルターが必要とされる。各貫通フィルター30の静電容量及びRFシールは、2つの基板の間にEMC(電磁両立性=electromagnetic compatibility)を確実にする。要素3は、外部とのインターフェースとして役立ち、従って機器の外側で生成されるLF信号を届ける給電コネクターであり、LF信号はLFモジュール1(この中で信号が処理される)を介して通過しなければならず、そして一旦処理されると最後にRFモジュール2に供給される。
【0003】
これらの貫通フィルターは、それゆえモジュール間の電気的接続を生み出すために、人手による接着及び配線作業を必要とする。RFの遮蔽要求は電子モジュールの配置及び、従ってそれらを収容する機械的構造の設計を複雑にする。最後に、構造の価格上昇を計算に入れない場合、1つのRFシールを備える貫通フィルターの単価は約100ユーロであり、それに150ユーロの労務費が加算されなければならない。
【0004】
手作業の数は、通すべき信号の数がますます多くなることによって更に倍増する(N個の信号を通すためにはN台の貫通フィルターが必要となる)。確かに、同一基板上に幾つかの機能を組み合わせた、高付加価値の電子モジュールを備える機器に対する需要の高まりが存在する。
【0005】
さらに、貫通フィルター内でのフィルタリングのため、信号を速く通すことは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの欠点を緩和することである。従って、上述の要求を全て、とりわけ単価、労務費、遮蔽、及び通すべき信号の容量に関して、同時に満たす相互接続装置の必要性が今日まで残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
より正確には、本発明の主題は各々が電気的接続パッドを備え、各基板が異なる遮蔽された空洞内に設置されるよう意図されている、2つの電子回路基板を相互接続するための装置である。この装置は空洞間のマイクロ波遮蔽手段を備え、それが:
− その両端がそれぞれ2つの電子回路基板の接続パッドと直接接触するように意図された導電体であって、装置の端から端まで貫通し、はんだ付けされていない幾つかの導電体と、
− 装置に対して2つの電子回路基板を保持するための機械的手段を装置の両側に備えることと、
そして各導体と接触し、各導電体の長さの全部又は幾分かを囲むマイクロ波吸収体によって、遮蔽手段が用意されることとを主として特徴とする。
【0008】
LF相互接続装置は、積載荷重の能動的機器における空洞間のRF遮蔽の問題と、2つの電子サブユニット(基板、ケース等)間の内部的相互接続の単純化との、両方に対する解決策を提供する。この装置は又装置と関連する機器構造の機械設計の最適化を可能にし、そして特に貫通フィルター及び、関連するはんだ付けされた接続部を削減することにより、価格低減できるようにする。
【0009】
好ましくは、各導電体は、接続パッドとの電気的接続を強化するように、装置の外側に向かってその両端を押圧する手段を導電体の両端の間に備える。
【0010】
これらの押圧手段は、例えば両端部の間に置かれる1つ又は2つの導電性磁石、又は機械的ばねである。
【0011】
2つの回路基板を保持するための機械的手段は、ナットを伴う1つ以上のネジ棒又は1つ以上のねじを含み得る。
【0012】
それは、空洞の境界を定める壁と接触しようとする側において、取り外し出来るように装置の溝内に設置された電磁シールを好ましくは備えることが有利である。
【0013】
本発明の1つの特徴によれば、それは装置内に導体を保持するための樹脂を含む。
【0014】
本発明の別の特徴によれば、マイクロ波吸収体は1GHzよりも高い周波数において有効である。
【0015】
本発明のその他の特徴と利点は、限定されない例のために与えられている以下の詳細記述を読み、そして添付図を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】上述されている、例示的な先行技術の相互接続装置の略図を示す。
【図2a】本発明による(2つの空洞間に設置された)例示的な相互接続装置の概略断面図を示す。
【図2b】本発明による(より詳細な視図の)例示的な相互接続装置の概略断面図を示す。
【図3a】8個の導電軸が取り付けられた、本発明による例示的な円形の相互接続装置の、概略透視図を示す。
【図3b】8個の導電軸が取り付けられた、本発明による例示的な円形の相互接続装置の、概略上面図を示す。
【図3c】8個の導電軸が取り付けられた、本発明による例示的な円形の相互接続装置の、概略下面図を示す。
【0017】
これら全ての図において、同一要素は同じ参照記号を与えられている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2a及び2bに関して、各々が電気的接続パッド13を備える、2つの電子回路基板である、LF基板1とRF基板2を相互接続するための装置が説明されている。これらの基板は、金属の仕切りを備える2つの空洞11、21の中にそれぞれ設置されている。接続されることを目的とした電子回路基板は、例えば:
− 2枚のプリント基板と、
− プリント基板及びマクロハイブリッド回路(マクロハイブリッドは、その中に電子回路が集積されている密封されたケースである。ここの例で、それは図1におけるRF基板2と同等なものである)と、
− 2つのセラミック基板とである。
【0019】
相互接続装置40は金属構造物すなわち本体42と、装置の両側に、装置に対して2つの電子基板を保持するための機械的手段とを備える。これらは例えば、図に示されている、ナット41bと組み合わされる1本のネジ棒41a(又は幾つかのネジ棒)のような、暫定的な保持手段である。基板はまた1つ以上のねじで保持され得る。それらは装置の中央、又は他の任意の位置(周辺部等)に設置され得る。
【0020】
装置はまた、片側から他の側まで装置を貫通し、はんだ付けされていない、導電軸とも称される幾つかの導電体48を備える。各導電軸の両端は、上で示されているように、相互接続装置の両側に保持される2つの電子回路基板の接続パッド13とそれぞれ直接接触することを目的としている。はんだ付けされるべき電線はもはや存在しない。これらの導電軸48は例えば、それらの長さの一部分を包む樹脂46を用いて装置内に保持される。図中の例において、樹脂46はそれらの端部を包んでいる。樹脂はさらに、導体48の両端を互いから絶縁するように、電気絶縁性である。
【0021】
本発明の好適な変更例によれば、各導電体48は、接続パッドに向かって両端部を押圧するための手段44をその両端の間に備える。これらの手段は両端部を接続パッド13へと押圧できるようにし、従って人工衛星の積載荷重の搭載機器における一般的な場合のように、たとえ大きな振動が存在しても電気的接続の確保を可能にする。これらの導電性の押圧手段は、図に示されるように、例えば1個のばね(又は2個のばね)である。1つあるいは2つの磁石が使われることも又可能である。
【0022】
空洞間のRF遮蔽は、各導体48に接触し、導体の長さの全部又は一部分にわたって取り囲むマイクロ波吸収体45により確保される。この図の例において、吸収体45は各軸の中央部を取り囲む。この吸収体45は一般に、鋼の粒子で満たされた吸収力のあるエポキシ樹脂である。
【0023】
場合によっては取り外し可能なEMCシール49が、2つの空洞の境界を定める壁32と接触する装置の一つの面上に、好ましくは設置される。例えば銅及び銀の粒子を含むシリコンシールであるシール49は、接続装置の本体42と、シールが置かれている壁との間を遮蔽する機能を有する。このシールは装置の本体42内に作られ、このために準備されている溝47の中に置かれることが有利である。
【0024】
相互接続装置40は図に示すように円形であってもよいが、様々な形状が電子回路基板上の接続パッドの配置に適合するように考えられてもよい。従って、例えば図3a、3b、及び3cに示すような相互接続装置が、やはり円形に配置されている接続パッド(図3の例において8個)を有する電子回路基板に対応する。
【0025】
図に示されている、本発明による例示的接続装置は、典型的には次の寸法を有する:
− 外径:160mm、
− 金属製本体の厚さ:6mm、
− ネジ棒の長さ:160mm
【0026】
本発明による相互接続装置は、次の利点を有する:
− 貫通フィルターと、それに関連する手作業の接着及び配線作業との削除、
− 保持構造の機械設計の単純化:より少ない仕切りと、かさ歯車箱を用いる穴開けの不要化。又、より最適化されたサブユニットの構成及び利用可能なスペース増加の可能性、
− 存在する導体の数と同じ数の信号を通すことが可能なため、大部分の信号が単一のコネクターを介して通過する、高付加価値を有するサブユニット(例えばグロブ・トップ基板=glob−top boards)の生産に対する需要の高まりに適応し得、ユニットの費用低減を可能にする、
− 本発明では1GHz未満の周波数Fを有する信号をフィルタリングしないため、二次の供給バスの信号及び制御信号を歪み無しで通すことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 LFモジュール
2 RFモジュール
3 要素
11 空洞
12 −
13 接続パッド
21 空洞
22 −
23 接続パッド
30 貫通フィルター
31 導線
32 空洞の境界を定める壁
40 相互接続装置
41a ネジ棒
41b ナット
42 本体
43 −
44 端部を押圧するための手段
45 マイクロ波吸収体
46 樹脂
47 溝
48 導電体
49 電磁シール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が電気的接続パッド(13)を備え、各基板が異なる遮蔽された空洞内に設置されるよう意図されている、2つの電子回路基板(1、2)を相互接続するための装置(40)であって、この装置が空洞間のマイクロ波遮蔽手段を備え、それが更に:
− その両端がそれぞれ前記2つの電子回路基板の前記接続パッド(13)と直接接触するように意図された導電体であって、前記装置の端から端まで貫通し、はんだ付けされていない幾つかの導電体(48)と、
− 前記装置の両側に、前記装置に対して前記2つの電子回路基板を保持するための機械的手段とを備えることと、
そして各導体(48)と接触し、前記各導電体の長さの全体又は幾分かを囲むマイクロ波吸収体(45)によって、前記遮蔽手段が用意されることとを特徴とする装置(40)。
【請求項2】
各導電体(48)が、前記接続パッドとの前記電気的接続を強化するように、前記装置の外側に向かって前記各導電体の両端を押圧する手段を前記各導電体の両端の間に備えることを特徴とする、請求項1に記載の2つの電子回路基板を相互接続するための装置(40)。
【請求項3】
これらの押圧手段が、前記両端部の間に置かれる1つ又は2つの導電性磁石、又は機械的ばね(44)であることを特徴とする、請求項2に記載の2つの電子回路基板を相互接続するための装置(40)。
【請求項4】
前記2つの回路基板を保持するための前記機械的手段が、ナット(41b)を伴う1つ以上のネジ棒(41a)又は1つ以上のねじを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の2つの電子回路基板を相互接続するための装置(40)。
【請求項5】
前記空洞の境界を定める壁(32)と接触しようとする側において、好ましくは取り外し出来るように前記装置の溝(47)内に設置された電磁シール(49)を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の2つの電子回路基板を相互接続するための装置(40)。
【請求項6】
前記装置内に前記導体を保持するための樹脂(46)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の2つの電子回路基板を相互接続するための装置(40)。
【請求項7】
前記マイクロ波吸収体(45)が、1GHzよりも高い周波数において吸収力のあることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の2つの電子回路基板を相互接続するための装置(40)。


【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公開番号】特開2012−23037(P2012−23037A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−149184(P2011−149184)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】