説明

部品の状態監視方法及びその装置

【課題】機械を構成する部品の疲労進行状態を監視するにあたって、簡単なシステムで以って、部品の交換実績及び整備実績を考慮した交換寿命を把握可能とするとともに、機械の使用経過における該機械の負荷度合いを考慮した使用時間を採用可能として、機械を構成する部品の疲労進行状態の監視精度を向上させて正確な交換時期を把握可能とした部品の状態監視方法及びその装置を提供する。
【解決手段】機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視手段であって、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検知して前記2つの時刻差から前記機械の運転時間を算出し、該運転時間と予め記録された前記機械の運転履歴に基づき前記部品の実使用時間を算出し、予め記録された前記部品の交換履歴から該部品の交換時間を算出し、前記交換時間と前記実使用時間との差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの構成部品の寿命予測等に適用され、エンジン等の機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのピストンリング、軸受、シリンダ、燃料噴射ノズル、排気弁、シール部材等の熱疲労や摩耗を生ずる構成部材は、寿命予測を行ないあるいは使用状況をモニタリングして、一定の使用時間に達したら整備あるいは交換するようになっている。
かかるエンジンや排気ターボ過給機の高温状態で使用される構成部品の監視システムとして、特許文献1(特開2003−150237号公報)の技術が提供されている。
【0003】
特許文献1(特開2003−150237号公報)にて提供されている技術は、高温使用部品に対して、機械の遠隔地に置かれた解析サーバが、前記部品及び損傷モード毎に検索可能なフォールトツリー解析を該部品の診断結果に基づいて必要に応じて実行し、前記部品の損傷に関する要因を監視するようにした高温使用部品の遠隔監視システムである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−150237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンの熱疲労や摩耗を生ずる構成部品においては、整備や交換を行なって使用する場合が多く、従ってかかる構成部品の交換までの寿命や整備の要否を決定するためには、部品毎の交換実績及び整備実績を考慮することが要求される。また、エンジンは低負荷から高負荷まで構成部品に掛かる負荷度合いが変化することから、構成部品の交換までの寿命や整備の要否を決定する際に、部品の使用時間を算出する際には前記負荷度合いを考慮した使用時間を用いることも要求される。
【0006】
然るに、特許文献1(特開2003−150237号公報)の技術にあっては、機械の遠隔地に置かれた解析サーバによって、構成部品及び損傷モード毎に検索可能なフォールトツリー解析を該部品の診断結果に基づいて必要に応じて実行し、前記構成部品の損傷に関する要因を監視するようにしている、つまり構成部品の組み込みから寿命(交換)までの監視及び寿命予測を行なっているにとどまっており、また、構成部品の使用時間についても単純使用時間によっており、機械の負荷度合いを考慮してはいない。
【0007】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、エンジン等の機械を構成する部品の疲労進行状態を監視するにあたって、簡単なシステムで以って、部品の交換実績及び整備実績を考慮した交換寿命を把握可能とするとともに、機械の使用経過における該機械の負荷度合いを考慮した使用時間を採用可能として、機械を構成する部品の疲労進行状態の監視精度を向上させて正確な交換時期を把握可能とした部品の状態監視方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視方法であって、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検知して前記2つの時刻差から前記機械の運転時間を算出し、該運転時間と予め記録された前記機械の運転履歴に基づき前記部品の実使用時間を算出し、予め記録された前記部品の交換履歴から該部品の交換時間を算出し、前記交換時間と前記実使用時間との差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知することを特徴とする(請求項1)。
かかる発明において、好ましくは、予め記録された前記機械の整備履歴から該機械の整備後運転時間を算出し、該整備後運転時間を用いて前記部品の実使用時間を補正する(請求項3、6)。
【0009】
また、前記部品の状態監視方法を実施する装置の発明は、機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視装置において、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検出する発停情報検出手段をそなえるとともに、前記発停情報検出手段から入力される始動時刻及び停止時刻の2つの検出値の時刻差から前記機械の運転時間を算出する手段と、前記機械の運転履歴を記録する手段と、前記運転時間と前記運転履歴に基づき前記部品の実使用時間を算出する手段と、前記部品の交換履歴を記録する手段と、前記交換履歴から前記部品の交換時間を算出する手段と、前記交換時間と前記実使用時間との差を算出してこの差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知する手段とよりなるモニタリング装置をそなえたことを特徴とする(請求項4)。
【0010】
かかる発明によれば、発停情報検出手段により機械の始動時刻及び停止時刻を検知してモニタリング装置に入力し、該モニタリング装置において、前記発停情報検出手段からの始動時刻及び停止時刻との時刻差から前記機械の運転時間を算出し、該運転時間と前記機械の運転履歴に基づき前記部品の実使用時間を算出する一方、予め記録された前記部品の交換履歴から該部品の交換時間を算出し、この交換時間と前記実使用時間との差を算出してこの時間差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知するので、部品毎に実使用時間と該部品の交換履歴に基づき設定された交換時間と突き合せて、交換履歴に基づく交換時間と実使用時間との差を当該部品の交換までの余裕度(余裕時間)として算出することにより、部品が正常状態であっても、リアルタイムで該部品の交換あるいは整備までの時間を正確に把握することができる。
これにより、機械の運転状態を検出する手段とモニタリング装置内のデータベースとを組み合わせるという簡単なシステムで以って、部品の交換あるいは整備までの疲労進行状態をリアルタイムで精度良く検知でき、機械のメインテナンス能率が向上する。
【0011】
また、かかる発明において、予め記録された機械の整備履歴から該機械の整備後運転時間を算出し、該整備後運転時間を用いて前記部品の実使用時間を補正して補正実使用時間として、前記交換時間と補正実使用時間との差により当該部品の交換までの余裕度を算出するように構成すれば(請求項3、6)、前記部品の整備履歴を加味して当該部品の交換までの余裕度を検知できるので、部品の交換までの疲労進行状態をさらに高精度で検知できる。
【0012】
また本発明は、機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視方法であって、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検知して前記2つの時刻差から前記機械の運転時間を算出し、前記機械の運転負荷状態によって運転時間の長さを調整する重み係数を設定し、前記機械の運転負荷状態を検知して該運転負荷状態と前記重み係数とにより前記運転時間を補正して重み付き運転時間を算出し、該重み付き運転時間を用いて前記部品の実使用時間を算出し、予め記録された前記部品の交換履歴から該部品の交換時間を算出し、前記交換時間と前記実使用時間との差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知することを特徴とする(請求項2)。
【0013】
また、前記部品の状態監視方法を実施する装置の発明は、機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視装置において、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検出する発停情報検出手段、及び前記機械の運転負荷状態を検出する負荷状態検出手段をそなえるとともに、前記発停情報検出手段から入力される始動時刻及び停止時刻の2つの検出値の時刻差から前記機械の運転時間を算出する手段と、前記機械の運転負荷状態によって運転時間の長さを調整する重み係数を設定する手段と、前記負荷状態検出手段から入力される機械の運転負荷状態検出値と前記重み係数とにより前記運転時間を補正して重み付き運転時間を算出する手段と、該重み付き運転時間を用いて前記部品の実使用時間を算出する手段と、前記部品の交換履歴を記録する手段と、前記交換履歴から前記部品の交換時間を算出する手段と、前記交換時間と前記実使用時間との差を算出してこの差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知する手段とよりなるモニタリング装置をそなえたことを特徴とする(請求項5)。
【0014】
かかる発明によれば、発停情報検出手段により機械の始動時刻及び停止時刻を検知してモニタリング装置に入力するとともに、負荷状態検出手段により機械の運転負荷状態を検出してモニタリング装置に入力し、該モニタリング装置において、前記発停情報検出手段からの始動時刻及び停止時刻との時刻差から前記機械の運転時間を算出し、前記機械の運転負荷状態によって運転時間の長さを調整する重み係数を設定しておき、前記負荷状態検出手段からの機械の運転負荷状態検出値と前記重み係数設定値とにより前記運転時間を補正して重み付き運転時間を算出してこの重み付き運転時間を用いて前記部品の実使用時間を算出する一方、予め記録された前記部品の交換履歴から該部品の交換時間を算出し、この交換時間と前記重み付き運転時間に基づく実使用時間との差を算出してこの時間差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知するので、前記機械の使用経過における該機械の運転負荷の度合いを考慮して、たとえば高負荷運転では低負荷運転よりも運転時間を長くするように補正して実使用時間を算出することにより、当該部品の交換までの余裕度(余裕時間)の算出精度を向上できる。
【0015】
さらに、かかる発明は、ピストンリング、軸受、シリンダ、燃料噴射ノズル、排気弁、シール部材等の熱疲労や摩耗を生ずる構成部品の多いエンジンに適用すれば、前記効果をより顕著に発揮できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、機械の始動時刻及び停止時刻との時刻差から運転時間を算出し、該運転時間と機械の運転履歴に基づき機械の構成部品の実使用時間を算出する一方、前記部品の交換履歴から該部品の交換時間を算出し、この交換時間と実使用時間との差を算出してこの時間差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知するので、交換履歴に基づく交換時間と実使用時間との差から当該部品の交換までの余裕度(余裕時間)を算出することにより、部品が正常状態であっても、リアルタイムで該部品の交換までの時間を正確に把握することができる。
これにより、機械の運転状態を検出する手段とモニタリング装置内のデータベースとを組み合わせるという簡単なシステムで以って、部品の交換までの疲労進行状態をリアルタイムで精度良く検知でき、機械のメインテナンス能率が向上する。
また、機械の整備履歴から算出した整備後運転時間を用いて部品の実使用時間を補正して補正実使用時間を用いて前記余裕度を算出するように構成すれば、部品の整備履歴を加味して当該部品の交換までの余裕度を検知できるので、部品の交換までの疲労進行状態をさらに高精度で検知できる。
【0017】
また、本発明によれば、始動時刻及び停止時刻との時刻差から前記機械の運転時間を算出し、機械の運転負荷状態検出値と重み係数設定値とにより前記運転時間を補正して算出した重み付き運転時間を用いて部品の実使用時間を算出し、前記交換時間と前記重み付き運転時間に基づく実使用時間との差を算出してこの時間差から部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知することにより、機械の使用経過における該機械の運転負荷の度合いを加味することにより、当該部品の交換までの余裕度(余裕時間)の算出精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
図1は 本発明の実施例に係るエンジン部品の状態監視システムの制御ブロック図、図2は前記実施例におけるエンジンの検出手段及びモニタリング装置の全体構成図である。
図2において、かかるエンジンの検出手段は、エンジンの始動時刻及び停止時刻を検出するエンジン発停情報検出手段1、エンジンの運転負荷状態を検出するエンジン負荷状態検出手段2からなる。また前記モニタリング装置100は、運転履歴のデータベース101、整備履歴のデータベース102、交換履歴のデータベース103、発停情報のデータベース104、及びエンジン運転時間の演算部105、部品別使用時間及び余裕度(余裕時間)の演算部106等からなる。
【0020】
次に図2に基づき、本発明の実施例に係るエンジン部品の状態監視システムの動作を説明する。
前記エンジン発停情報検出手段1からのエンジンの始動時刻及び停止時刻の検出値は、前記モニタリング装置100のエンジン運転時間算出部12に入力される。また前記エンジン負荷状態検出手段2からのエンジンの運転負荷状態の検出値は前記モニタリング装置100の負荷別全運転時間算出部10に入力される。
エンジン運転時間算出部12においては、前記始動時刻と停止時刻との2つの時刻差からエンジンの運転時間を算出して前記負荷別全運転時間算出部10に入力する。
【0021】
11はエンジン運転履歴記録部で、前記運転時間算出部12での運転時間の算出以前のエンジンの運転履歴について、図3の表(A)のように、エンジン負荷を1/4負荷未満の低負荷、1/4〜1/2負荷の中負荷、1/2負荷を超える高負荷の3つの負荷区分(負荷の区分は任意でよい)に分け、前記低負荷の運転時間T1及び積算運転時間T1S、前記中負荷の運転時間T2及び積算運転時間T2S、前記高負荷の運転時間T3及び積算運転時間T3Sが記録されている。
前記負荷別全運転時間算出部10においては、前記エンジン運転時間算出部12からのエンジン運転時間の算出値及びこのときの前記エンジン負荷状態検出手段2からのエンジン負荷状態検出値とにより、エンジンの負荷別運転時間を算出し、この負荷別運転時間を前記エンジン運転履歴記録部に記録されているエンジンの負荷別運転履歴に加算して、エンジンの負荷別累計運転時間を算出して重み付き運転時間算出部16に入力する。
【0022】
15は重み係数設定部で、図3の表(B)のように、エンジンの各構成部品(この例ではピストン)の、前記3つの負荷区分(負荷の区分は任意でよい)における重み係数K1、K2、K3が設定されている。前記重み係数K1、K2、K3は、エンジン負荷が大きくなるに従い各構成部品(この例ではピストン)にかかる力や熱が大きくなって劣化度合いが速くなることから、エンジン負荷が大きくなるに従い大きくして(K1<K2<K3)、負荷の大きさを加味して構成部品の実使用時間を記録するようにしている。
前記重み付き運転時間算出部16においては、前記負荷別全運転時間算出部10からのエンジンの負荷別累計運転時間の算出値に前記重み係数K1、K2、K3を乗じて負荷別の重み付き累計運転時間(たとえば図3(B)におけるK1・T1S、K2・T2S、K3・T3S)を算出して部品実使用時間算出部17に入力する。
【0023】
13はエンジン整備状況記録部で、エンジンの各構成部品についての整備履歴が記録されている。14はエンジン整備後経過時間算出部で、前記エンジン整備状況記録部13から入力される各構成部品についての整備履歴から各構成部品の整備後運転時間を算出して、前記部品実使用時間算出部17に入力する。
該部品実使用時間算出部17においては、前記重み付き運転時間算出部16からの重み付き累計運転時間を前記整備後運転時間で補正して、該整備後運転時間を加味した各構成部品の実使用時間を算出して部品余裕度算出部18に入力する。
即ち、整備が施された構成部品については、実使用時間は整備後の運転時間が実質的な使用時間になるので、実使用時間として整備後運転時間あるいは該整備後運転時間に若干の付加時間を加えた値を用いる。
【0024】
19は部品交換状況記録部で、エンジンの各構成部品についての交換履歴が記録されている。20は部品交換時間算出部で、各構成部品について前記部品交換状況記録部19に記録された交換履歴から、各構成部品の交換時間即ち許容使用時間を算出して前記部品余裕度算出部18に入力する。
該部品余裕度算出部18においては、前記各構成部品について、前記部品交換時間算出部20からの交換時間と前記部品実使用時間算出部17からの実使用時間との差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を算出する。この構成部品毎の余裕度算出結果は表示装置3に表示される。
【0025】
かかる実施例によれば、エンジン発停情報検出手段1によりエンジンの始動時刻及び停止時刻を検知してモニタリング装置100に入力し、該モニタリング装置100において、前記エンジン発停情報検出手段1からの始動時刻及び停止時刻との時刻差からエンジンの運転時間を算出し、該運転時間とエンジンの運転履歴に基づきエンジン構成部品の実使用時間を算出する一方、予め記録された前記構成部品の交換履歴から該構成部品の交換時間を算出し、この交換時間と前記実使用時間との差を算出してこの時間差から前記構成部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知するので、構成部品毎に実使用時間と該構成部品の交換履歴に基づき設定された交換時間と突き合せて、交換履歴に基づく交換時間と実使用時間との差を当該部品の交換までの余裕度(余裕時間)として算出することにより、構成部品が正常状態であっても、リアルタイムで該構成部品の交換までの時間を正確に把握することができる。
【0026】
これにより、エンジンの運転状態を検出する手段1、2とモニタリング装置100内のデータベースとを組み合わせるという簡単なシステムで以って、エンジン構成部品の交換までの疲労進行状態をリアルタイムで精度良く検知でき、エンジンのメインテナンス能率が向上する。
【0027】
また、かかる実施例において、予め記録されたエンジンの整備履歴から該エンジンの整備後運転時間を算出し、該整備後運転時間を用いてエンジン構成部品の実使用時間を補正して補正実使用時間として、前記交換時間と補正実使用時間との差により当該構成部品の交換までの余裕度を算出するので、前記構成部品の整備履歴を加味して当該構成部品の交換までの余裕度を検知できることとなって、構成部品の交換までの疲労進行状態をさらに高精度で検知できる。
【0028】
また、かかる実施例によれば、エンジン発停情報検出手段1により機械の始動時刻及び停止時刻を検知してモニタリング装置に入力するとともに、エンジン負荷状態検出手段2によりエンジンの運転負荷状態を検出してモニタリング装置100に入力し、該モニタリング装置100において、前記エンジン発停情報検出手段1からの始動時刻及び停止時刻との時刻差からエンジンの運転時間を算出し、エンジンの運転負荷状態によって運転時間の長さを調整する重み係数を設定しておき、前記エンジン負荷状態検出手段2からのエンジンの運転負荷状態検出値と前記重み係数設定値とにより前記運転時間を補正して重み付き運転時間を算出し、この重み付き運転時間を用いて前記構成部品の実使用時間を算出する一方、予め記録されたエンジン構成部品の交換履歴から該構成部品の交換時間を算出し、この交換時間と前記重み付き運転時間に基づく実使用時間との差を算出してこの時間差から前記構成部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知するので、エンジンの使用経過における該エンジンの運転負荷の度合いを考慮して、たとえば高負荷運転では低負荷運転よりも運転時間を長くするように補正して実使用時間を算出することにより、当該構成部品の交換までの余裕度(余裕時間)の算出精度を向上できる。
【0029】
尚、前記実施例において、図1における重み係数設定部15及び重み付き運転時間算出部16を除去して、前記負荷別全運転時間算出部10で算出されたエンジンの負荷別累計運転時間を部品実使用時間算出部17に直接に入力し、該エンジンの負荷別累計運転時間を用いて各構成部品の実使用時間を算出するように構成することもできる。
【0030】
さらに、本発明はこの実施例におけるエンジンに限らず、熱による損傷、摩耗等が発生し易い構成部品からなる機械全般の状態監視システムに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、エンジン等の機械を構成する部品の疲労進行状態を監視するにあたって、簡単なシステムで以って、部品の交換実績及び整備実績を考慮した交換寿命を把握可能とするとともに、機械の使用経過における該機械の負荷度合いを考慮した使用時間を採用可能として、機械を構成する部品の疲労進行状態の監視精度を向上させて正確な交換時期を把握可能とした部品の状態監視方法及びその装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例に係るエンジン部品の状態監視システムの制御ブロック図である。
【図2】前記実施例におけるエンジン発停情報検出手段及びモニタリング装置の全体構成図である。
【図3】前記実施例におけるエンジン負荷と重み係数との関係表である。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジン発停情報検出手段
2 エンジン負荷状態検出手段
3 表示装置
10 負荷別全運転時間算出部
11 エンジン運転履歴記録部
12 エンジン運転時間算出部
13 エンジン整備状況記録部
14 エンジン整備後経過時間算出部
15 重み係数設定部
16 重み付き運転時間算出部
17 部品実使用時間算出部
18 部品余裕度算出部
19 部品交換状況記録部
20 部品交換時間算出部
100 モニタリング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視方法であって、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検知して前記2つの時刻差から前記機械の運転時間を算出し、該運転時間と予め記録された前記機械の運転履歴に基づき前記部品の実使用時間を算出し、予め記録された前記部品の交換履歴から該部品の交換時間を算出し、前記交換時間と前記実使用時間との差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知することを特徴とする部品の状態監視方法。
【請求項2】
機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視方法であって、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検知して前記2つの時刻差から前記機械の運転時間を算出し、前記機械の運転負荷状態によって運転時間の長さを調整する重み係数を設定し、前記機械の運転負荷状態を検知して該運転負荷状態と前記重み係数とにより前記運転時間を補正して重み付き運転時間を算出し、該重み付き運転時間を用いて前記部品の実使用時間を算出し、予め記録された前記部品の交換履歴から該部品の交換時間を算出し、前記交換時間と前記実使用時間との差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知することを特徴とする部品の状態監視方法。
【請求項3】
予め記録された前記機械の整備履歴から該機械の整備後運転時間を算出し、該整備後運転時間を用いて前記部品の実使用時間を補正することを特徴とする請求項1または2のいずれかの項に記載の部品の状態監視方法。
【請求項4】
機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視装置において、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検出する発停情報検出手段をそなえるとともに、前記発停情報検出手段から入力される始動時刻及び停止時刻の2つの検出値の時刻差から前記機械の運転時間を算出する手段と、前記機械の運転履歴を記録する手段と、前記運転時間と前記運転履歴に基づき前記部品の実使用時間を算出する手段と、前記部品の交換履歴を記録する手段と、前記交換履歴から前記部品の交換時間を算出する手段と、前記交換時間と前記実使用時間との差を算出してこの差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知する手段とよりなるモニタリング装置をそなえたことを特徴とする部品の状態監視装置。
【請求項5】
機械を構成する部品の疲労進行状態を監視する部品の状態監視装置において、前記機械の始動時刻及び停止時刻を検出する発停情報検出手段、及び前記機械の運転負荷状態を検出する負荷状態検出手段をそなえるとともに、前記発停情報検出手段から入力される始動時刻及び停止時刻の2つの検出値の時刻差から前記機械の運転時間を算出する手段と、前記機械の運転負荷状態によって運転時間の長さを調整する重み係数を設定する手段と、前記負荷状態検出手段から入力される機械の運転負荷状態検出値と前記重み係数とにより前記運転時間を補正して重み付き運転時間を算出する手段と、該重み付き運転時間を用いて前記部品の実使用時間を算出する手段と、前記部品の交換履歴を記録する手段と、前記交換履歴から前記部品の交換時間を算出する手段と、前記交換時間と前記実使用時間との差を算出してこの差から前記部品の交換あるいは整備までの余裕度を検知する手段とよりなるモニタリング装置をそなえたことを特徴とする部品の状態監視装置。
【請求項6】
前記モニタリング装置に、予め記録された前記機械の整備履歴から該機械の整備後運転時間を算出する手段と、該整備後運転時間を用いて前記部品の実使用時間を補正する手段とを加設したことを特徴とする請求項4ないし5のいずれかの項に記載の部品の状態監視装置。
【請求項7】
前記機械がエンジンであり、前記部品が該エンジンの構成部品であることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかの項に記載の部品の状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−206007(P2007−206007A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27868(P2006−27868)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】