説明

部品の製造方法及び繊維強化熱可塑性部品

【解決手段】
本発明は、機体外皮を航空機の環状リブに取り付ける部品(3、35)、特にアングル部材(4)の製造方法であって、該部品は、少なくとも2つのエッジライン(7〜10、15〜17、40、41、43)に沿って平坦なブランク材(1、36)を曲げることにより形成され、該ブランク材は複数のカーボン繊維層により強化された熱可塑性樹脂で形成される部品(3、35)を製造する方法に関する。
本発明によれば、第1成形工程において繊維層の層間スライドがほぼ終了し、第2成形工程においては、上部ツールと下部ツール(25)により全側面をプレスにより圧縮することで、部品(3、35)の圧密化、つまり最終成形がなされる。これにより複雑な部品(3、35)は、少なくとも2つエッジライン(7〜19、15〜17、40、41、43)と共に製造することができ、これらのエッジラインは、互いにほぼ0°から90°の角度、好ましくは30°から90°の角度を呈する。また、これらのエッジラインは少なくとも2つの異なる面(21〜24、37〜39、42)上にある。
また、本発明は、本発明により製造され、複数の繊維層で強化された熱可塑性樹脂部品(3、35)に関し、特に、環状リブを航空機の機体外皮に内部連結するためのアングル部材(4)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の製造方法、特に、航空機の環状リブに機体外皮(fuselage cell skin)を結合するアングル部材の製造方法であって、該部品は、少なくとも2つのエッジラインに沿って平坦なブランク材を複数回曲げることにより形成され、該ブランク材は複数の繊維層により強化された熱可塑性樹脂により製造される部品の製造方法に関する。
また、本発明は、本発明の方法、特に屈曲により形成される多重繊維層で強化された熱可塑性樹脂の部品に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体の製造にはアルミニウムセクション設計が広く用いられ、一般的には多数の機体部分を次々に配置し、円周部横方向の継ぎ目を結合することにより機体を製造する。このセクションは少なくとも2つのシェルセグメントから形成される。軽量化のため、多くの機体セクションが複合材料、特にカーボン繊維強化樹脂(CFP’s)により製造されるようになってきている。このCFP機体外皮の設計では、CFPプロファイルとともに形成される環状リブにより、機体外皮内部が強化されている。CFP長手強化プロファイル(ストリンガー・プロファイル)は、機体セクションの長手延長方向と平行に、円周部を超えて機体外皮の内部表面の上に均一に配置される。ストリンガー・プロファイルは、CFP機体外皮の製造と同時に形成されるのが望ましい。環状リブと機体外皮の間はアングル部材(いわゆるクリップ)で結合される。これらのアングル部材は、基本的に環状リブに対する軸受けの脚部と機体外皮の軸受けの脚部とを有する。環状リブ及び機体外皮へのアングル部材の結合は任意に、接着、リベット、ネジ止め、溶接或いはこれらの組合せによりできる。
【0003】
複合材料の接合部分の腐食を防止し更なる軽量化を図るため、これらのアングル部材は板状のアルミニウム板に替わり、強化繊維樹脂により製造される。カーボン繊維強化デュロプラスチックによるアングル部材は、非常に多くの量を製造する必要があり(一機あたり10万個以上)、多くの時間を要することから、熱可塑性カーボン繊維強化樹脂で形成された板状半加工品(「有機プレート(organoplate)」と呼ぶ)が使用される。
【0004】
このような板状の強化繊維熱可塑性樹脂が製造される場合、従来の金属板製造とは異なり、製造(成形及び圧密)には単一の形成工程が要求される。ここでは、最初にブランク材全体を加熱し、溶解温度を超えた後に成形ツールに移動し、そしてプレスに配置された上部のツール手段により成形及び圧密して最終部品に加工する。形成作業においては、下部ツールに上部ツールが直線的に接近する動きにより、可塑化した熱可塑性材料が所望の位置へ確実に運ばれるが、これは、単一軸プレスによってのみ達成することができる。この条件によって、部品の設計は非常に限定されたものとなる。この部品には設計仕様が要求され、例えば、板状アルミニウム成形において問題を生ずることなしに達成可能なステップなど、幾つかの連続的な形成ステップが要求される。部品全体が常に全て溶融し(可塑化され)ていなければならず、さらに、その後の成形(加圧)過程において再度密圧される(全てのワークピースの表面が十分に高圧に曝される)必要があるため、これは、「有機」プレートの場合では不可能であった。
【0005】
また、「有機」プレートを形成する場合、「層間スライド」と呼ばれるものが必ず起こる点も考慮しなければならない。すなわち、カーボン繊維強化熱可塑性板において順に被覆された繊維層どうしが、内部と外部で端部の半径が異なることにより変位するからである。これは、製造工程における障害や成形中の強化繊維の一体性に障害をもたらす結果となる。
【0006】
アルミニウムシート成形から既知の作業手順は、「有機」プレートの屈曲や成形により複雑な部品を製造する場合の複数の屈曲には適用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、本発明の目的は、アルミニウムシート成形から公知の成形技術を発展させ、複雑な三次元構造をもつ一部品を、平坦なブランク材、つまり熱可塑性繊維強化樹脂材料(「有機」プレート)から製造することを可能にするような成形技術を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は請求項1に記載の方法により達成される。ブランク材がプリフォームに形成され、第2成形工程においては、プリフォームを成形して部品を製造することになる。第1成形工程において、既に、独立した繊維層の間で層間スライドが生じるため、層間スライドは第2成形工程の前に完了している。これにより、熱可塑性繊維強化物質から部品を製造し、成形及び屈曲することで複雑な形状にすることがきる。本願の方法によれば、少なくとも1つのエッジラインを形成する少なくとも1以上の面が、平坦なブランク材(第1面)から生成され、プリフォームを製造し、繊維のプロセス及び/又はプリフォームにおける繊維の一体性を損なうことなしに、さらに面を製造することができる。また、第1エッジラインに対して0°から90°の角度、つまり必ずしも平行ではない角度で、面にエッジラインを形成することができる。これに対し、先行技術においては、エッジラインは1つの面に位置するか或いは相互に平行にする必要があった。
【0009】
この方法を実施するには、多重繊維層で強化された平坦な熱可塑性樹脂製プレートから、平坦なブランク材を切り出す(「有機」プレート)。この繊維層は、樹脂繊維、グラスファイバー、アラミド(登録商標)ファイバー、ケブラー(登録商標)ファイバー、玄武岩繊維、天然繊維等から形成でき、これらは、織物と同様に、熱可塑性樹脂マトリックス中に積層されている。あるいは、繊維層は、繊維織物、繊維編み地、または不連続の粗紡で構成されることもある。
【0010】
その後、このブランク材を樹脂の溶解温度範囲以上に熱し、層間スライドが理想的に終了した後に、第1段階においてプリフォームを成形又はドレープする。ここでは個々の層は強化樹脂の配置内で互いにスライドする。この文脈で「ドレープ」とは、本質的に折り曲げなしの成形であり、当初の平坦な状態にある繊維強化構造を空間的構造に変化させる。
【0011】
プリフォームを冷却した後、次のステップにて再度可塑化し、平坦な状態に戻ってしまう規定外の変位を防止するために一般的に求められるプリフォームの固定・位置決めをする。もしプリフォームが、例えばアングル部材を形成するのに使用される場合、プリフォームの脚部の位置は、例えば外形が従来のネクタイピンに近いクランプ手段により固定される。プリフォームが、使用される熱可塑性樹脂の融点より一般に少し高い所望の成形温度に達すると、プリフォームは、上部及び下部ツールを有するプレスに搬送される。この第2成形工程では、プレスの圧力により最終成形が行われる。
【0012】
最終成形とは、理想的かつ均一に全ての側部に適用される圧力による部品の圧密化である。プレス内の上部及び下部のツールには、必要に応じ、更に加熱装置も提供される。もしプリフォームの製造と圧力工程のサイクル時間が非常に短い場合には、ブランク材に対する加熱は一度で十分であるため、両成形ステップは組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る方法では、必然的に起こる繊維層の層間スライドがほぼ終わっており、第2成形工程においては、同じ圧力が全側面に理想的に作用する圧縮ツールの圧力を適用することで、最終的な幾何学的形状と圧密化だけが起こるのが明白である。そして、本発明の方法で複雑な幾何学構造の部品を製造するには、予め折り曲げておき、再度可塑化した後に再度曲げることで、連続的に1つの面を形成することはせず、本願方法の第1工程においてプリフォームを製造する際に、設計上必要とされる部品全面がほぼ「潜在的に」適用される。本発明に係る方法では、繊維層のスライドは事実上、エッジラインに対して常に実質的に垂直に生じるため、形成作業の結果、強化繊維の強度が低減する障害(歪みや変位)が生じることがない。
【0014】
層間スライドによるストッキング(stocking)は否定できない。すなわち、本発明により製造される部品の端部が斜めになってしまう。特定の部品形状を達成するために、このストッキングは、一般的には再度機械加工により、取り除かれ、分離され又は削り取られる。
【0015】
本発明の方法で部品を製造するには、例えば、PPS、PEEC、PECC又はこれらの組合せ等の熱可塑性樹脂を用いるのが好ましく、複数のカーボン繊維層で強化されたものが好ましい。
【0016】
また、本発明の目的は、請求項9に記載された部品により達成できる。
部品は互いに約0°から90°の角度で延びる2つのエッジラインを有し、しかも、このエッジラインは少なくとも2つの異なる面に位置するため、強化繊維の方向を力の流れる方向に向かわせることで、多様な設計要求に対応できる。したがって、例えば、航空機のCFP環状リブをCFP機体外皮に接合するために、大量の部品が使用できる。また、この部品は、非常に軽量で高度な静的・動的荷重容量を同時に有し、安価で高精度な部品が大量に生産できる。
【0017】
本発明の方法と部品のさらに有利な実施形態はその他の請求項に表される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、プリフォームを作成するための平坦な一体成形用のブランク材を示し、該プリフォームは「ソフトエッジライン」(半加工エッジライン)を有する。
【図2】図2は、位置固定された部分を有する第1成形工程後のドレープ加工されたプリフォームの概略図である。
【図3】図3は、第2成形工程終了後のプリフォームの平面図を示す図である。
【図4】図4は、第2成形工程終了後の最終状態にある部品一例(アングル部材又は接合アングル部材)を示す概略図である。
【図5】図5は、プリフォームを最終成形するための圧密化に使用されるプレスの下部ツールを示す概略図である。
【図6】図6は、複雑な幾何学形状の別の部品を製造するための他のプリフォームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面では各構成要素には同一の数字が付されている。まず図1〜4を参照して、以下に本発明を説明する。
図1は、ブランク材の平面図を示す。これはプリフォーム2を製造するための初期段階で提供するもので、最初の時点では未だ平坦である。そして、幾つかの屈曲作業により最終部品3が製造される。最終部品3は、実施例に示す航空機の機体外皮に環状リブを内部締結するための(接触)アングル部材4又はガセット板である。ブランク材1は、多層繊維層、より好ましくはカーボン繊維層で強化された熱可塑性樹脂により形成されるのが好ましい。熱可塑性材料として、特に、PPS、PEEC、PECC或いはこれらの組合せが適すると考えられる。
【0020】
一体成形用ブランク材1はほぼV字型の切り欠き部5を有しており、この先端は切り欠き部5の応力緩和のためほぼ円形の凹部6につながっている。波線で示すエッジライン7〜10は、いわゆる「ソフト」湾曲部11、12を規定し、ブランク材1の湾曲部は、事実上第1成形工程のプリフォーム2の製造中に形作られる。この「ソフト」エッジライン7〜10は成形を行うことができる湾曲部11、12を限定する。したがって、この「ソフト」エッジラインは、最終形状を与えることのない「予め確立された」潜在的なエッジラインを形成し、最終的な「シャープ」エッジラインは第2成形工程における圧密化中に生じる。図1の2つの黒矢印は、図1に示す状態から図2に示す状態へ変化する際のV字型の切り欠き部5のエッジ13、14の移動方向を示す。第1成形工程中の一体成形用ブランク材1のプリフォーム2への変形又はドレープ加工は、ブランク材1の可塑化温度範囲内で行われ、通常これは使用される熱可塑性樹脂の溶融温度内である。また、第2成形工程を遂行するには、使用される熱可塑性樹脂の溶融温度内でプリフォーム2を加熱する必要がある。
【0021】
図2に示す概略図では、プリフォーム2は第2成形工程で要求される幾何学形状、すなわち、本発明の第1成形工程の方法が終了した形状となっている。本発明の方法のこの段階では、平行する個々の繊維層は他の繊維層の上では滑らず、理想的には滑りが殆どないことが非常に重要である。したがって、それに続く第2成形工程では、プリフォーム2はこれ以上曲がったり捩れたり或いは層間剥離が起こることはなく、また、繊維層の完全性や配置方向が損なわれることもない。そして、最終的に得られる部品3は非常に高度な静的・動的な機械的負荷容量を有する。
【0022】
第2最終成形工程中の再加熱過程で要求されるエッジ13、14の機械的位置固定は、図中波線の楕円で示される。これにより、再加熱時において、プリフォームが平坦なブランク材1の形状に再度変形してしまうことを防止する。屈曲作業の最終的な具体化である第2成形工程の圧密時におけるプリフォーム2の屈曲は、ほぼ最終エッジライン15〜17に沿ってのみ行う。そして、3つの最終エッジライン15〜17が互いに垂直に直交することが明らとなる。
【0023】
図3及び図4は、それぞれ、最終部品3又はアングル部材4に成形されたプリフォーム2の平面図と概略図である。アングル部材4は互いに直交する3つの最終エッジライン15〜17を有し、これらの線は第2成形工程のプリフォーム2の最終成形又は圧密化の段階で最終的に作られる。エッジライン15及び16は、一般的に「ソフト」エッジライン7、8及び9、10で挟まれる湾曲部11、12を通る。
【0024】
図3、4では、本発明の方法の第2成形工程におけるプリフォーム2の圧密化が完全に終了する。すなわち、部品3又はアングル部材4は、ほぼ最終的な幾何学形状を有している。第2成形工程を実施するには、最初に、プリフォーム2を再び熱可塑性樹脂の溶融温度を超える温度にして適切なクランプ機構等により位置を固定することが要求される。プリフォーム2はその後、上部ツール及び下部ツールを有するプレス(pressure)に搬送され、プリフォームは下部ツール上に置かれる。上部ツールと下部ツールの間に置かれたプリフォーム2の最終形成と、圧力プレスによるその圧密化とは、プレスの圧縮により行われる。第1及び第2成形工程のサイクル時間は非常に短いので、第2成形工程前のプリフォームの再加熱は必須である。例示する実施形態の最終部品3又はアングル部材4には常に、エッジ領域において繊維層の層間変位によるストッキングがみられる。部品3の最終的な用途に備えて、最終部品形状にするべく傾斜した部品エッジを機械的に再加工する。
【0025】
アングル部材4は、互いにほぼ垂直な2つの脚部18、19を有する。また、アングル部材4は、本質的に互いに直交し近接する2つの面21、22(アングル部材4の接触面)により形成される連続背面20を有する。さらに2つの面23、24(アングル部材4の底面)は面21、22の下部方向でほぼ90°の角度で接している。両面21、22と面23、24は、必要により、空間の一又は二方向に含まれるように形成される。面23、24は互いに、エッジ13、14に沿ってほぼ平行に位置する。あるいは、エッジ13、14が、例えば特定の間隔で互いに平行となるようにすることも可能である。図示しない変形例においては、エッジ13、14は、アングル部材4の強度を更に増すため、圧密過程において互いに堅固に溶融・接着することもできる。例えば、環状リブを機体外皮に内部で連結するには、航空機の異なる部品間の境界面は、アングル部材4の面21、22及び面23、24により形成される。
【0026】
図5は、図示せぬプレスにおける下部ツール25である。これは第2成形工程においてプリフォーム2を圧密化するために使用される。下部ツール25は不規則な多面体形状を有し、プレス内に挿入される基板26上に配置される。下部ツール25は合計6つの平坦な面27〜32を有する。上面27は二等辺三角形であり、2つの後部小側面31、32は不規則な三角形又は直角三角形の形状を有する。2つの前部大側面28、29は不規則な四角形の幾何学形状で、後部側面30は、台形である。全ての面27〜32は、基板26に対し傾斜するように設計されている。下部ツール25の外形は不規則な五角形に対応している。
【0027】
次に、プリフォーム2を熱効果により適切に可塑化し最終的に圧密化させるために、円形凹部6がツール端部33に位置するように、プリフォーム2を下部ツール25に配置する。続いて底面23、24が曲げられて、大きな側面27、29に対して少なくとも一定の領域に置かれる。
【0028】
図5では図示しない上部ツールと、下部ツール25とは、これらの間に配されるプリフォーム2を圧密化し所定の最終幾何学形状を与えるため、プレス手段により圧縮される。上部ツールは、下部ツール25に対応するように、すなわち、少なくとも一定の領域において上部及び下部ツール25間で正接触(positive connection)できるように設計されている。この場合の上部及び下部ツール25間で形成される空洞は、ツールを圧縮する際に、均一な接触圧力がプリフォームの表面に亘るように好ましい寸法とされる。上部及び/又は下部ツール25には、焼き戻しのために加熱装置を装備することができる。また、プリフォームの圧密化は、少なくとも1つの操作装置に誘導されるツール、特に、さまざまな自由度を有する多関節アームロボット(産業ロボット)により行うことができる。ツールの幾何学形状を簡素化するため、下部ツール25及びこれに対応するよう設計された上部ツールが三角形の輪郭を有するように、傾斜した表面31、32が施される。
【0029】
成形後の部品3をアングル部材4の形をした金型から除き、それに続く冷却段階を経た後、必要に応じて、エッジ領域のストッキングを機械的に再加工して、部品の最終形状を作成する。
【0030】
図6は、複雑な幾何学形状の部品35(アングル部材)を製造するための別のプリフォームの概略図である。プリフォーム34は、「有機」プレート製のブランク材36を曲げることで形成される。プリフォーム34は、適切なツール内において最終形状とするために圧密化される。すなわち、全ての側面にできる限り均一にプレス圧力が作用するように装填される。
【0031】
折り曲げることで生成される第2及び第3の面38、39は、第1の(基)面37に相当する平坦な部分のブランク材36につながっている。このように生成されるエッジライン40、41は、例示の実施形態では互いに約10°の角度βで走り、いずれも面37内に位置する。原理上は、角度βは0°から90°の間にありうる。更なる(第4)の面42は、第2の面38に垂直に接続し、第3エッジライン43を形成して上方に直角に接触する。第3エッジライン43は、第1及び第2の面37、38とは異なる第4の面42を走り、第1の面37を通るエッジライン40と共に約90°の角度αを形成する。第3エッジライン43は、異なる曲げ作業により、角度αが0°から90°の範囲内になってもよいが、30°から90°の角度が好ましい。
【0032】
したがって、プリフォーム34は最終的に互いに0°から90°の角度となる3つのエッジライン40、41、43を有する。
【0033】
ブランク材36の強化繊維層のスライド方向は符号を有さない黒矢印で表示される。繊維層のスライド方向は、互いに関連するエッジライン40、41、43に略垂直に走ることがわかる。この工程では、平坦なブランク材36は、「有機」プレートの溶融温度より僅かに高い温度まで昇温されその温度で維持される。
【0034】
本発明に係る形成プロセスにより、層間スライドは本質的に一方向にのみ起こることが保証される。このため繊維配向及び/又は繊維一体性における障害はなく、さらに、褶曲(波型形状)やこれ(第1(基)面37から2つのエッジライン40、41と面38、39とを生成し、面38からエッジライン43と第4の面42とを生成すること)に起因して起こる層間剥離もない。
【0035】
曲げ工程の後、層間スライドは殆ど終了しており、最終的な第2成形工程において、最終幾何学形状を得るために圧力及び温度を加えることでプリフォーム34を圧密化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の方法は、例示したアングル部材4及び部品35に加えて、複雑な幾何学形状を有するあらゆる種類の部品について、熱可塑性繊維強化樹脂を曲げることにより成形して製造するのに適している。
【符号の説明】
【0037】
1…ブランク材
2…プリフォーム
3…部品(完成品)
4…アングル部材(完成品)
5…切り欠き部
6…円形凹部
7…エッジライン(ソフト)
8…エッジライン(ソフト)
9…エッジライン(ソフト)
10…エッジライン(ソフト)
11…湾曲部
12…湾曲部
13…エッジ
14…エッジ
15…エッジライン(最終)
16…エッジライン(最終)
17…エッジライン(最終)
18…脚部(アングル部材)
19…脚部(アングル部材)
20…背面(アングル部材)
21…平面(アングル部材の接触面)
22…平面(アングル部材の接触面)
23…平面(アングル部材の基面)
24…平面(アングル部材の基面)
25…下部ツール
26…基板
27…上面
28…前部大側面
29…前部大側面
30…後部側面
31…後部小側面
32…後部小側面
33…ツール端部
34…プリフォーム
35…部品(アングル部材)
36…平坦なブランク材
37…第1の面
38…第2の面
39…第3の面
40…エッジライン
41…エッジライン
42…第4の面
43…エッジライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(3)を製造する方法であって、
a)ブランク材(1)の所定の3つのエッジライン(7、8、9、10)が交差する位置に先端が一致する実質的に円形凹部(6)を呈する実質的にV字状の切り欠き部(5)を有するように繊維層により強化された熱可塑性樹脂のブランク材(1)を調製する工程と、
b)プリフォーム(2)を形成するために、所定のエッジライン(7、8、9、10)に沿ってブランク材(1)を成形して主に繊維層のスライドを止め、互いにほぼ垂直に交差するエッジライン(15、16、17)を形成する工程と、
c)前記プリフォーム(2)をプレスの上部又は下部ツール(25)に配置し、前記プリフォーム(2)はピラミッド形状の基面(26)と端部(33)を形成する3つの側面(27、28、29)とを有し、プリフォーム(2)の前記円形凹部(6)が端部(33)に位置し、前記プリフォーム(2)のV字状切り欠き部(5)を適用して、前記プリフォーム(2)の基面(23、24)が側面(27、28、29)の1つに対して少なくとも一部を支持するようにする工程と、
d)最終エッジライン(15、16、17)を形成するためにプレスに圧力を加え、前記プリフォームを圧密化して部品(3)を製造する工程、
を有する部品(3)の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−535650(P2010−535650A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519395(P2010−519395)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058481
【国際公開番号】WO2009/019083
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】