説明

部品係合構造

【目的】取付け、取外しが容易な係合構造を提供することを目的とする。
【構成】開口および開口の縁と縁を架橋する可撓性の架橋体を有する第一の部材と、係合爪を有する第二の部材とからなる係合構造において、架橋体を撓ませながら係合爪を開口に進入させ、その後、係合爪の先端に形成された爪部を第一の部材の一側に突出させた状態で第一の部材と第二の部材とを組付ける部品係合構造において、係合爪は架橋体によって開口壁へ押圧される部品係合構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材の係合構造に関し、特に、容易な取付け、取外し機能を有する係合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、2つの部材を係合する際には一方の部材に爪を形成し、他方の部材に爪を受入れ可能な開口を形成し、両者を係合することで、係合構造とする構成が広くとられている。
【0003】
特許文献1にて開示されている係合構造においては、ロック孔に対して係止可能とされるロックアームに圧潰壁を設けており、ロックアームをロック孔に差し込むと、圧潰壁がロック孔を押し広げる構造となっている。そして係合動作が完了した時には、圧潰壁がロック孔の内壁に食い込んだ状態となることで、係合部品同士を強固に係合し、がたつきなく保持することを可能とするものである。
【0004】
また、特許文献2で開示される係合構造では、可撓性の係止部と、係合部とによる構造が開示されている。この構造によれば、取外時は可撓性の係止部に形成された突出部を係合解除方向へ押すことで、係合を解除可能となる。
【特許文献1】特開2005−98496号
【特許文献2】特開2007−81199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では高い係合力を実現可能なものの、取付時には圧潰壁を変形させながら取り付けるため、相当な力を要する。さらに、圧入された爪を取り外す際にも、相当な力を要し、ロックアームまたはロック孔が破損する可能性もあり、作業性が良いとは言い難い。そのため、頻繁に取り外しを行う部品への使用は困難であった。
【0006】
また特許文献2に開示される組付構造では係止を解除する際に、突出部を押さなければ解除不可である為、作業者が押面を押すことが可能な位置にのみ設定可能という制限が生じる。また、突出部の突出方向に係止部が動いた場合、容易に係止が解除されてしまうため、この係合部とは別の部位で係合部が動かないように位置規制する必要もある。さらに、係止部が弾性変形する長さ、係合爪部と係合部とが係合するための長さ、つまり製品の厚みが必要であり、薄板状の部材に対しては採用することが困難な構成である。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたもので、取付、取外が容易であり、薄い係合部材同士であっても係合可能な係合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、開口および開口の縁と縁を架橋する可撓性の架橋体を有する第一の部材と、係合爪を有する第二の部材とからなる係合構造において、架橋体が弾性変形することで係合爪を開口に挿通可能となり、開口へ係合爪が挿通された状態では、係合爪は架橋体によって開口壁へ押圧されることを特徴とする部品係合構造による。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取付、取外操作が容易であり、かつ係合部材の厚みに左右されない係合構造を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一の部材の開口を示した斜視図である
【図2】第二の部材の係合爪を示した斜視図である
【図3】第一の部材の開口を示した平面図である
【図4】第二の部材の係合爪を示した断面図である
【図5】開口に係合爪を取り付けている状態を示した平面図である
【図6】開口に係合爪を取り付けている状態を示した断面図である
【図7】第一の部材が第二の部材に係合した状態を示した断面図である
【図8】第一の部材と第二の部材の係合を解除する際の挙動を示した断面図である
【図9】本発明の第二実施形態を示した断面図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から図8は、本発明の第一の実施形態を示す。本実施形態による係合構造は、第一の部材(1)に設けられる開口(4)と、開口(4)を架橋する可撓性の架橋体(3)と、第二の部材(5)に設けられる係合爪(7)と、で構成され、開口(4)へ係合爪(7)を挿通することにより第一の部材(1)と第二の部材(5)とを係合状態に組付け、また、係合爪(7)を開口(3)から外すことで係合が解除される。
【0012】
本発明において係合される2部材はそれぞれ、一般的に自動車内装部品の材料で使用される、ポリプロピレンやABSといった熱可塑性樹脂から成り、一方は開口を、他方は係合爪を有するものである。2部材の例としては、自動車内装部品であるピラーガーニッシュ、スカッフプレート、ラゲージルームに設定されるキャップ等の締結構造、チャイルドアンカーカバー等が挙げられるが、これら以外においても、あらゆる締結構造に採用可能である。
【0013】
図1および図3に開示されているように、本実施形態の第一の部材(1)は、矩形状の開口(4)が形成された、略平坦な面である第一の面(2)を有している。また矩形の開口(4)において、向き合う短辺側を架橋する架橋体(3)が形成されている。架橋体(3)は、矩形の開口(4)の短辺から腕部(32)を延出させ、曲部(33)を4つ有する湾曲した形状となっており、開口(4)を形成する長辺側に膨出したΩ状の形状であり、長辺に対して平行な面を有する押当部(31)を備えた形状となっている。
【0014】
架橋体(3)によって、開口(4)は係合空間(41)と自由空間(42)の2つの空間に分割される。ここで、係合空間(41)は係合爪(7)が通される空間であり、自由空間(42)は係合爪(7)が通されない空間である。係合爪(7)の取付作業及び取外し作業によって、両空間を分ける架橋体(3)が弾性変形するため、それに伴い両空間の体積も変化する。
【0015】
本実施形態の第二の部材(5)は図2及び図4に図示されるように、略平坦な面である第二の面(6)を有しており、この第二の面(6)から面外方向に突出して係合爪(7)が形成されている。係合爪(7)は、第二の面(6)から延出する脚部(71)と、脚部(71)の先端に形成された爪部(73)とから成る。爪部(73)は、脚部(71)の延出方向に対して傾斜した傾斜部(75)を備え、脚部(71)の延出方向の断面に略三角形状となる形状を有している。第一の部材(1)と第二の部材(5)とが組付いた状態では、略三角形状の爪部(73)において、第二の面(6)に対面する面である底面(77)が、第一の面(2)の裏面と接し、引っ掛かりとなることで係合状態となる。
【0016】
第一の部材(1)に形成された略矩形の開口(4)の縁となる長辺と、架橋体(3)の押当部(31)間の距離W1が、第二の部材(5)の係合爪(7)の脚部(71)の厚み、つまり図4の左右方向の幅W2以下となることが好ましい。この長さ関係となっていることで、係合時に押当部(31)が係合爪(7)を開口壁(43)に押し当て、位置規制する効果を得られる。
【0017】
係合爪(7)を開口(4)へ取り付ける作業として、まず、第一の面(2)と第二の面(6)とが並行となる位置関係とし、頭部(74)を押当部(31)と開口縁(44)間の係合空間(41)へ位置させる。またこのとき、係合爪(7)の先端部(76)は開口(4)の長辺と向き合う状態、係合爪(7)の背面(72)は架橋体(3)の押当部(31)と向き合う状態に位置させる。そのまま、第一の面(2)と第二の面(6)とを近づける向きに力を第二の部材(5)に与える。このとき、W1とW2は上述した寸法関係により(本実施形態ではW1<W2)、係合爪(7)の頭部(74)よりの傾斜部(75)が開口縁(44)に当接する。さらに力を与え続けると、傾斜部(75)と開口縁(44)との当接部は頭部(74)付近から先端部(76)に向けて移動するが、このとき、係合爪(7)の背面(72)によって押当部(31)を自由空間(42)内へ押す力がかかる。これにより架橋体(3)は自由空間(42)内へ弾性変形をし、係合爪(7)が係合空間(41)内を通ることを許容する。図5はその状態を示した平面図であり、破線部は係合爪(7)である。また図6は図5のA-A断面図であり、破線部は弾性変形前の押当部(31)の位置を示す。破線部の位置にあった押当部(31)は係合爪(7)が係合空間(41)内を進むにつれて、矢印A方向に弾性変形し、実線部の位置をとる。
【0018】
その後続けて、第二の部材(5)に対して力を与え続け、爪部(73)全体を第一の面(2)の裏面側へ位置させる。爪部(73)全体が第一の面(2)の裏面側に位置することで、爪部(73)の先端部(76)が開口壁(43)から離れ、係合爪(7)に対して自由空間(42)方向へ働く力が無くなる。これにともない係合爪(7)に働く力は弾性変形していた架橋体(3)の復元力のみとなる。この復元力は図7で示す矢印B方向に働き、弾性変形していた押当部(31)が、弾性変形前の位置に戻ろうとする力である。これにともない、押当部(31)と当接している背面(72)に対し、図7における右向きの力が働き、係合爪(7)の脚部(71)が開口壁(43)に押し当てられる状態となることで、位置決めがされる。また、爪部(73)の底面(77)は第一の部材(1)の裏面側に位置する。このように底面(77)と第一の部材(1)の裏面とが当接することで、係合爪(7)が係合空間(41)から抜ける方向への抜け止めとなり、第一の部材(1)と第二の部材(5)とが係合される。このように、第一の部材(1)と第二の部材(5)の係合作業は、係合爪(7)を開口(4)内へ挿通させる方向に力を与えるという容易な作業で行われる。
【0019】
係合の解除は図6、7と逆の動作で行われ、これは図8に図示される。まず、係合爪(7)の脚部(71)が開口壁(43)から離れる方向である矢印C方向へ第二の部材(5)をスライド移動させる。これにより、押当部(31)は係合爪(7)の背面(72)によって矢印D方向へ押され、自由空間(42)方向へ撓まされる。その後、爪部(73)の底面(77)が第一の部材(1)の裏面から離れる位置まで係合爪(7)を移動させ、係合爪(7)が開口(4)(係合空間(41))から抜け出るための空間を確保する。爪部(73)が抜け出るための空間を確保した後は、矢印E方向に移動させる。このとき、爪部(73)が第一の部材(1)の厚み内に位置した状態では、爪部(73)の先端が開口壁(43)に当接する。一方、係合爪(7)の背面(72)と架橋体(3)の押当部(31)とが当接する。これにより、外部から図8の左右方向に対して力を与える必要は無く、取外し作業者は図8の矢印E方向にのみ力を与えるだけでよい。このように、係合の解除に必要とされる動作は、係合爪(7)を矢印C、E方向へ動かす作業のみでよい。
【0020】
以上より、本発明によれば、第一の部材(1)と第二の部材(5)を組付ける際には係合爪(7)を係合空間(41)内へ挿通する方向にのみ力を与えることで係合可能であり、また、係合解除時には、係合爪(7)で架橋体(3)を撓ませる方向へ力を与えた後、係合時と反対の方向へ係合爪(7)を動かすのみでよい。
また、係合状態においても架橋体(3)が係合爪(7)を開口壁(43)へ押圧するため、第一の部材(1)と第二の部材(5)との係合が安易に解除されることがなく、良好な係合構造を得られる。
【0021】
図9は本発明の第二実施形態であり、第一の部材(1’)の裏面近くに、第三の部材(8)が位置しながらも、第二の部材(5’)を係合している状態を示す断面図である。従来の係合構造、係合爪の形状では、開口部に取り付ける際の撓み代を係合爪に備えるため、係合爪の長さをその分確保することが必要となる。しかしながら第二の実施形態では、係合爪にその撓み代を確保する必要がなく、長さが短い係合爪(7)でも係合することが可能となる。
このように本発明は、上述した効果に加えて、第一の部材(1)と第二の部材(5)とを係合した状態において、係合爪(7)の頭部(74)付近に第三の部材(8)が存在する場合や、第一の部材(1)や第二の部材(5)が薄肉の部材である場合にも、有効な係合構造である。
【符号の説明】
【0022】
1、1’:第一の部材
2:第一の面
3:架橋体
31,31’:押当部
32:腕部
33:曲部
4:開口
41:係合空間
42:自由空間
43:開口壁
44:開口縁
5、5’:第二の部材
6:第二の面
7:係合爪
71:脚部
72:背面
73:爪部
74:頭部
75:傾斜部
76:先端部
77:底面
8:第三の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口と、前記開口の向き合う縁を架橋する可撓性の架橋体を有する第一の部材と、
係合爪を有する第二の部材とを備え、
前記係合爪は第二の部材から延出する脚部と、前記脚部の先端に形成された爪部とを有し、
前記架橋体を撓ませながら前記係合爪を前記開口に進入させ、その後、前記爪部を第一の部材の一側に突出させることで第一の部材と第二の部材とを組付ける部品係合構造において、
前記開口に挿通された前記係合爪は、前記係合爪を前記開口へ進入させた際に撓まされていた前記架橋体が形状復帰することによって、前記脚部が前記開口の縁に押圧されることを特徴とする部品係合構造
【請求項2】
前記架橋体は前記開口の向き合う縁からそれぞれ延出する腕部と、前記腕部と連続して形成された押当部と、前記腕部と前記押当部との間に位置する曲部を有し、
前記押当部と前記開口の縁との間隔は、前記脚部の厚みより小さく、前記開口に挿通した前記脚部は、前記押当部によって前記開口の縁に押圧されることを特徴とする請求項1に記載の部品係合構造。
【請求項3】
前記架橋体の弾性変形方向は、前記係合爪が前記開口へ挿通する方向に対して垂直な方向であることを特徴とする請求項1または2に記載の部品係合構造。
【請求項4】
前記第一の部材は略平坦な第一の面を有し、前記第二の部材は略平坦な第二の面を有し、
前記係合爪は前記第一の面から面外方向へ延出して形成されており、
前記第一の部材と前記第二の部材とを組付けた状態では、前記第一の面と前記第二の面が向き合う位置となることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の部品係合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−255802(P2010−255802A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109134(P2009−109134)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(390031451)株式会社林技術研究所 (83)
【Fターム(参考)】