説明

部品内蔵基板実装体及びその製造方法並びに部品内蔵基板

【課題】小型化が可能であると共に内蔵される電子部品のレイアウトの自由度を高めつつ、内蔵された電子部品の放熱特性の向上を図る。
【解決手段】部品内蔵基板実装体100は、部品内蔵基板1と、これが実装された実装基板2とからなる。部品内蔵基板1は、第1〜第4プリント配線基材10〜40を熱圧着により一括積層した構造を備える。第2プリント配線基材20の第2樹脂基材21に形成された開口部29内には電子部品90が内蔵されている。第4プリント配線基材40の実装面2a側にはバンプ49が形成されている。電子部品90の裏面91aに接続されたサーマルビア14及びサーマル配線13を介して、各層のサーマルビア及びサーマル配線を通り、バンプ49から実装基板2に電子部品90の熱が伝わって、実装基板2にて放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品が内蔵された部品内蔵基板を実装基板に実装した部品内蔵基板実装体及びその製造方法並びに部品内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体などの電子部品は小型化や高集積化が求められており、CoC(Chip on Chip)やPoP(Package on Package)等の三次元パッケージ技術や電子部品を内蔵する部品内蔵基板の採用が拡大化する傾向にある。これらのパッケージ技術等においては、搭載される電子部品の放熱特性を十分に考慮した構造設計が重要となる。
【0003】
一般的に用いられるシリコン半導体からなる電子部品では、例えばTj温度(半導体素子温度)が175℃以上になると、半導体素子自体が破壊されてしまう可能性があり、Tj温度が80℃〜100℃の範囲内となるように熱設計が行われている。特に、部品内蔵基板においては、内蔵された電子部品(ICチップや受動部品)の周囲が配線金属材料(例えば、熱伝導係数が約370W/mkの銅)に比べて、熱伝導係数が約1/1000倍の絶縁樹脂材料(例えば、熱伝導係数が約0.2W/mkのエポキシ樹脂やポリイミド樹脂)により覆われていることから、放熱特性を考慮した構造設計が必要である。
【0004】
このように放熱特性を考慮した部品内蔵基板として、下記特許文献1に開示された電子部品内蔵型配線基板が知られている。この電子部品内蔵型配線基板は、内蔵された電子部品の電極形成面とは反対側の面にサーマルビアを形成することで、このサーマルビアから表層の放熱基板を介して電子部品の熱を外気に放熱する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−205124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された電子部品内蔵型配線基板では、サーマルビア及び放熱基板を介して熱を外気にのみ放熱する構造であるため、電子部品の放熱特性を十分に向上させているとは言い難く、更なる放熱特性の向上を図る余地がある。また、放熱基板の厚さ分だけ基板全体の厚さが増してしまうため、例えば実装基板に実装した場合には全体の高さが増えてしまい、小型化などの要求に十分に応えられる構造とは言い難い。更に、放熱基板を電子部品の近傍に配置する必要があるため、電子部品のレイアウトの自由度が制限されてしまうという問題がある。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、小型化が可能であると共に内蔵される電子部品のレイアウトの自由度が高く、部品内蔵基板に内蔵された電子部品の放熱特性の向上を図ることができる部品内蔵基板実装体及びその製造方法並びに部品内蔵基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る部品内蔵基板実装体は、樹脂基材に配線パターン及びビアが形成されたプリント配線基材を複数積層すると共に電子部品を内蔵してなる部品内蔵基板を、実装基板の実装面上に実装した部品内蔵基板実装体であって、前記部品内蔵基板は、前記複数のプリント配線基材の少なくとも一部が、前記配線パターンにサーマル配線を含み、前記ビアにサーマルビアを含み、表層に形成されたバンプを介して前記実装基板に実装されると共に、前記内蔵された電子部品の電極形成面と反対側の面が、前記サーマルビア及び前記サーマル配線を介して前記バンプに接続され、前記バンプを介して前記実装基板に熱的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る部品内蔵基板実装体によれば、部品内蔵基板に内蔵された電子部品の電極形成面とは反対側の面が、サーマルビア、サーマル配線及び部品内蔵基板の表層に形成されたバンプを介して実装基板に接続されている。このため、電子部品の熱がサーマルビア、サーマル配線及びバンプを放熱経路として伝わって、効率よく確実に実装基板に放熱される。実装基板は電子部品や部品内蔵基板と比べると十分に面積が広いので、放熱媒体としては放熱基板よりも良好であり、従来のような放熱基板を設ける必要がない。これにより、小型化が可能であると共に電子部品のレイアウトの自由度を高めつつ、内蔵された電子部品の放熱特性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の一つ実施形態においては、前記電子部品が、前記プリント配線基材の積層方向の前記サーマル配線と前記実装基板との間に配置されている。
【0011】
また、本発明の他の実施形態においては、前記サーマル配線が、前記プリント配線基材の積層方向の前記電子部品と前記実装基板との間に配置されている。
【0012】
本発明に係る部品内蔵基板実装体の製造方法は、樹脂基材に配線パターン及びビアが形成されたプリント配線基材を複数積層すると共に電子部品を内蔵してなる部品内蔵基板を、実装基板の実装面上に実装した部品内蔵基板実装体の製造方法であって、複数の樹脂基材にサーマル配線を含む前記配線パターン及びサーマルビアを含む前記ビアを形成すると共に、前記複数の樹脂基材のうちの少なくとも一つに前記電子部品を内蔵する開口部を形成して複数のプリント配線基材を形成する工程と、前記電子部品の電極形成面と反対側の面が、前記サーマルビアを介して前記サーマル配線と接続されるように前記複数のプリント配線基材を熱圧着して一括積層し前記部品内蔵基板を形成する工程と、前記部品内蔵基板の表層に前記サーマル配線と接続されるバンプを形成する工程と、前記バンプを介して前記部品内蔵基板を前記実装基板の実装面上に実装する工程とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る部品内蔵基板実装体の製造方法によれば、部品内蔵基板に内蔵された電子部品の電極形成面とは反対側の面が、サーマルビアを介してサーマル配線に接続され、部品内蔵基板の表層にサーマル配線と接続されるバンプを形成して実装基板に実装するので、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0014】
本発明に係る部品内蔵基板は、樹脂基材に配線パターン及びビアが形成されたプリント配線基材を複数積層すると共に電子部品を内蔵してなる部品内蔵基板であって、前記複数のプリント配線基材の少なくとも一部が、前記配線パターンにサーマル配線を含み、前記ビアにサーマルビアを含み、表層に形成されたバンプを介して実装基板に実装されると共に、前記内蔵された電子部品の電極形成面と反対側の面が、前記サーマルビア及び前記サーマル配線を介して前記バンプに接続されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る部品内蔵基板によれば、内蔵された電子部品の電極形成面と反対側の面が、サーマルビア及びサーマル配線を介して表層のバンプに接続されているので、このバンプを介して実装基板に熱的に接続されることにより、内蔵された電子部品の放熱特性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型化が可能であると共に内蔵される電子部品のレイアウトの自由度を高めつつ、内蔵された電子部品の放熱特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る部品内蔵基板実装体の構造を示す断面図である。
【図2】同部品内蔵基板実装体の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】同部品内蔵基板実装体を製造工程毎に示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る部品内蔵基板実装体の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る部品内蔵基板実装体と比較例の部品内蔵基板実装体との放熱特性の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係る部品内蔵基板実装体及びその製造方法並びに部品内蔵基板を詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る部品内蔵基板実装体の構造を示す断面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る部品内蔵基板実装体100は、部品内蔵基板1と、この部品内蔵基板1が実装面2a上に実装された実装基板2とからなる。
【0020】
部品内蔵基板1は、第1プリント配線基材10と、第2プリント配線基材20と、第3プリント配線基材30と、第4プリント配線基材40とを熱圧着により一括積層した構造を備えている。また、部品内蔵基板1は、第2プリント配線基材20の第2樹脂基材21に形成された開口部29内に、第1及び第3プリント配線基材10,30に挟まれた状態で内蔵された電子部品90を備えている。更に、部品内蔵基板1は、第4プリント配線基材40の実装面2a側に形成されたバンプ49を備えている。
【0021】
第1〜第4プリント配線基材10〜40は、それぞれ第1〜第4樹脂基材11,21,31,41と、これら第1〜第4樹脂基材の少なくとも片面に形成された信号用配線32,42及びサーマル配線13,23,33,43とを備える。
【0022】
また、第1〜第4プリント配線基材10〜40は、それぞれ第1,第3,第4樹脂基材11,31,41に形成されたビアホール内に充填形成されたサーマルビア14,34,44と第2樹脂基材21に形成されたビアホール内に第2樹脂基材21の両面を導通するように形成されたサーマルビア24及び信号用ビア35,45を備える。これら第1〜第4プリント配線基材10〜40は、例えば片面銅張積層板(片面CCL)や両面銅張積層板(両面CCL)などを用いてもよい。
【0023】
本例では、第2プリント配線基材20が両面CCLに基づき形成され、それ以外が片面CCLに基づき形成されている。従って、第2プリント配線基材20のサーマル配線23は第2樹脂基材21の両面に形成され、サーマルビア24はこれら両面のサーマル配線23を層間接続している。この場合、サーマルビア24は、例えば一方のサーマル配線23を貫通させることなく他方のサーマル配線23側から形成した貫通孔内にめっきを施した構造からなり、銅めっきにより形成される。このとき、貫通孔内をめっきする代わりに導電ペーストを充填させた構造としてもよい。
【0024】
第1〜第4樹脂基材11〜41は、それぞれ例えば厚さ25μm程度の樹脂フィルムにより構成されている。ここで、樹脂フィルムとしては、例えば熱可塑性のポリイミド、ポリオレフィン、液晶ポリマーなどからなる樹脂フィルムや、熱硬化性のエポキシ樹脂からなる樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0025】
電子部品90は、例えばICチップなどの半導体部品や受動部品等であり、図1における電子部品90は、再配線を施したWLP(Wafer Level Package)を示している。電子部品90の電極形成面91bに複数の再配線電極91が形成されている。信号用配線32,42及びサーマル配線13〜43は、銅箔などの導電材をパターン形成してなる。信号用ビア35,45及びサーマルビア14,34,44は、ビアホール内にそれぞれ充填された導電ペーストからなり、サーマルビア24はめっきにより形成される。サーマル配線及びサーマルビアは、一部を除いて電子部品90の外周側に配置されるように形成されている。
【0026】
導電ペーストは、例えばニッケル、金、銀、亜鉛、アルミニウム、鉄、タングステンなどから選択される少なくとも1種類の低電気抵抗の金属粒子と、ビスマス、インジウム、鉛などから選択される少なくとも1種類の低融点の金属粒子とを含む。そして、導電ペーストは、これらの金属粒子に錫を成分として含有させ、エポキシ、アクリル、ウレタンなどを主成分とするバインダ成分を混合したペーストからなる。
【0027】
このように構成された導電ペーストは、含有された錫と低融点の金属が200℃以下で溶融し合金を形成することができ、特に銅や銀などとは金属間化合物を形成することができる特性を備える。なお、導電ペーストは、例えば粒子径がナノレベルの金、銀、銅、ニッケル等のフィラーが、上記のようなバインダ成分に混合されたナノペーストで構成することもできる。
【0028】
その他、導電ペーストは、上記ニッケル等の金属粒子が、上記のようなバインダ成分に混合されたペーストで構成することもできる。この場合、導電ペーストは、金属粒子同士が接触することで電気的接続が行われる特性となる。導電ペーストのビアホールへの充填方法としては、例えば印刷工法、スピン塗布工法、スプレー塗布工法、ディスペランス工法、ラミネート工法、及びこれらを併用した工法などを用いることができる。
【0029】
バンプ49は、半田などからなり、第4プリント配線基材40の第4樹脂基材41の実装面2a側に形成された信号用配線42及びサーマル配線43上のソルダーレジスト48が被覆していない部分に形成されている。部品内蔵基板1は、これらバンプ49を介して実装基板2の実装面2a上に実装されている。なお、第1〜第4プリント配線基材10〜40は、接着層9を介して積層されている。接着層9は、エポキシ系やアクリル系接着剤など、揮発成分が含まれた有機系接着剤などからなる。
【0030】
このように構成された部品内蔵基板実装体100では、電子部品90が、第1プリント配線基材10のサーマル配線13と実装基板2との間に配置される構造となる。こうして部品内蔵基板1に内蔵された電子部品90の熱は、次のような放熱経路を辿って実装基板2に伝えられる。すなわち、電子部品90の熱は、電子部品90の電極形成面91bとは反対側の裏面91aから、この裏面91aに接続された第1プリント配線基材10のサーマルビア14に伝わる。
【0031】
サーマルビア14に伝わった熱は、第1プリント配線基材10のサーマル配線13から、電子部品90の外周側に形成されたサーマルビア14を通って、第2プリント配線基材20のサーマル配線23に伝わり、その後、サーマルビア24及びサーマル配線23を介して第3プリント配線基材30のサーマルビア34に伝わる。
【0032】
サーマルビア34に伝わった熱は、第3プリント配線基材30のサーマル配線33を通って、第4プリント配線基材40のサーマルビア44に伝わり、サーマル配線43を介してバンプ49に伝わる。こうして、バンプ49に伝わった熱は、このバンプ49を介して部品内蔵基板1よりも面積の大きな実装基板2に伝わり、実装基板2から放熱される。
【0033】
このような構造により、部品内蔵基板1に内蔵された電子部品90で発生した熱の殆どが、従来のような放熱基板が不要な構造の部品内蔵基板1から実装基板2に伝わって放熱されることとなる。これにより、部品内蔵基板実装体100の小型化が可能であると共に電子部品90のレイアウトの自由度を高めることができ、部品内蔵基板1に内蔵された電子部品90の放熱特性の向上を図ることができる。
【0034】
次に、第1の実施形態に係る部品内蔵基板実装体100の製造方法について説明する。
図2は、部品内蔵基板実装体の製造工程を示すフローチャートである。図3は、部品内蔵基板実装体を製造工程毎に示す断面図である。まず、一方の面に導体層が形成された、例えば片面銅張積層板(片面CCL)等の樹脂基材を複数準備し(ステップS100)、エッチングなどを行って、それぞれに信号用配線及びサーマル配線等の配線パターンを形成する(ステップS102)。
【0035】
次に、樹脂基材に接着剤を貼り付けるなどして接着層を形成し(ステップS104)、レーザ加工機などによってビアホールを形成する(ステップS106)。そして、ビアホールに導電ペーストを充填して信号用ビア及びサーマルビアを形成する(ステップS108)。ここまでの処理で、図3(a)に示すような第1プリント配線基材10や、図3(c)に示すような第3プリント配線基材30、或いは第4プリント配線基材40などの、配線パターン及びビアを有する基本的なプリント配線基材を複数作製する。
【0036】
一方、図3(b)に示すような第2プリント配線基材20は、例えば両面銅張積層板(両面CCL)等の第2樹脂基材21に、一方のサーマル配線23(詳細にはサーマル配線23に接続するランド部)を貫通させないように他方のサーマル配線23(詳細にはサーマル配線23に接続するランド部)側から貫通孔を形成し、貫通孔内にめっきしてサーマルビア24を形成した後、開口部29を形成する(ステップS110)。こうして、第1〜第4プリント配線基材10〜40が準備される。
【0037】
そして、電子部品90の再配線電極91を、第3プリント配線基材30の信号用ビア35に、電子部品用実装機で位置合わせして、第3プリント配線基材30の接着層9及び信号用ビア35の導電ペーストの硬化温度以下で加熱することによって、電子部品90を仮留め接着する(ステップS112)。
【0038】
その後、第1〜第4プリント配線基材10〜40を、それぞれ位置合わせして例えば加熱温度200℃以下で熱圧着する(ステップS114)ことにより一括積層し、部品内蔵基板1を作製する。そして、図3(d)に示すように、部品内蔵基板1における第4プリント配線基材40の信号用配線42及びサーマル配線43側の第4樹脂基材41上に、ソルダーレジスト48をパターン形成し(ステップS116)、各配線42,43上にバンプ49を形成して(ステップS118)、部品内蔵基板1を実装基板2に実装する(ステップS120)ことで、図1に示すような部品内蔵基板実装体100を製造する。なお、図1に示した第1樹脂基材11上において、サーマル配線13を覆うように図示しないソルダーレジスト48を形成するようにしてもよい。
【0039】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る部品内蔵基板実装体の構造を示す断面図である。図4に示すように、第2の実施形態に係る部品内蔵基板実装体200は、部品内蔵基板1を、実装基板2の実装面2a上にフェイスアップ(天地逆)で実装し、各プリント配線基材10〜40の信号用配線及びサーマル配線の接続態様を第1プリント配線基材10のサーマル配線13のパターンを変更することにより変更した点が、第1の実施形態に係る部品内蔵基板実装体100と相違している。
【0040】
すなわち、この部品内蔵基板実装体200では、部品内蔵基板1における第1プリント配線基材10のサーマル配線13側の第1樹脂基材11上にパターン形成されたソルダーレジスト48が設けられ、信号用配線12及びサーマル配線13上にバンプ49が形成されて、このバンプ49を介して部品内蔵基板1が実装基板2に実装されている。なお、第1及び第2プリント配線基材10,20には、その他、信号用配線22及び信号用ビア15,25が形成されている。
【0041】
このように構成された部品内蔵基板実装体200では、第1プリント配線基材10のサーマル配線13が、電子部品90と実装基板2との間に配置される構造となる。従って、部品内蔵基板1に内蔵された電子部品90の熱は、裏面91aから第1プリント配線基材10のサーマルビア14に伝わり、サーマル配線13及びバンプ49を通って実装基板2に伝えられる。このような構造によると、発熱源である電子部品90と放熱体である実装基板2との実装方向の距離が近くなるので、第1の実施形態に係る部品内蔵基板実装体100よりも更に放熱特性を向上させることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明に係る部品内蔵基板実装体を具体的に説明する。
図5は、本発明の実施例に係る部品内蔵基板実装体と比較例の部品内蔵基板実装体との放熱特性の解析結果を示す図である。図5の縦軸はTj温度を示している。実施例及び比較例共に、上述したような4層構造の部品内蔵基板を実装基板に実装した部品内蔵基板実装体を用いた。
【0043】
比較例1は、電子部品の裏面側にサーマルビアを形成せず、電子部品の電極が実装基板側に配置された構造の部品内蔵基板を実装基板に実装した部品内蔵基板実装体である。また、比較例2は、電子部品の裏面側にサーマルビアを形成し、表層にこのサーマルビアと接続された放熱基板を形成して、電子部品の電極が実装基板側に配置された構造の部品内蔵基板を実装基板に実装した部品内蔵基板実装体である。実施例1及び実施例2は、それぞれ部品内蔵基板実装体100,200と同様の構造とした。
【0044】
Tj温度の解析は、汎用ソフトウェア「ANSYS(登録商標)」を用い、解析の境界条件は次のようなものとした。すなわち、比較例1,2及び実施例1,2について、部品内蔵基板に内蔵された電子部品に1ワット(W)の発熱量を与え、部品内蔵基板実装体の外気との接触面には外気の対流がない静止状態として、4.5W/mkの熱伝達係数で雰囲気温度25℃の環境下にて解析を行った。
【0045】
図5に示すように、解析結果によれば、比較例1,2共にTj温度が115℃近辺となったのに対し、実施例1ではTj温度は97.5℃近辺となり、実施例2では94℃程度となった。このことから、比較例1のようにサーマルビアがないものは言うまでもなく、比較例2のように単純に電子部品の裏面側にサーマルビアや放熱基板を形成しただけでは、部品内蔵基板実装体の放熱特性を向上させることはできないことが判明した。
【0046】
一方、実施例1,2のように、サーマルビアやサーマル配線を介して部品内蔵基板に内蔵された電子部品の熱を実装基板にて放熱するタイプの部品内蔵基板実装体では、比較例1,2に比べて明らかに放熱特性が向上していることが判明した。特に、実施例2のように、発熱源と放熱体との実装方向の距離が近い構造であれば、放熱特性を更に向上させることができる結果となった。
【符号の説明】
【0047】
1 部品内蔵基板
2 実装基板
2a 実装面
9 接着層
10 第1プリント配線基材
11 第1樹脂基材
12 信号用配線
13 サーマル配線
14 サーマルビア
15 信号用ビア
20 第2プリント配線基材
29 開口部
30 第3プリント配線基材
40 第4プリント配線基材
48 ソルダーレジスト
49 バンプ
90 電子部品
91a 裏面
100,200 部品内蔵基板実装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材に配線パターン及びビアが形成されたプリント配線基材を複数積層すると共に電子部品を内蔵してなる部品内蔵基板を、実装基板の実装面上に実装した部品内蔵基板実装体であって、
前記部品内蔵基板は、前記複数のプリント配線基材の少なくとも一部が、前記配線パターンにサーマル配線を含み、前記ビアにサーマルビアを含み、
表層に形成されたバンプを介して前記実装基板に実装されると共に、前記内蔵された電子部品の電極形成面と反対側の面が、前記サーマルビア及び前記サーマル配線を介して前記バンプに接続され、前記バンプを介して前記実装基板に熱的に接続されている
ことを特徴とする部品内蔵基板実装体。
【請求項2】
前記電子部品は、前記プリント配線基材の積層方向の前記サーマル配線と前記実装基板との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵基板実装体。
【請求項3】
前記サーマル配線は、前記プリント配線基材の積層方向の前記電子部品と前記実装基板との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵基板実装体。
【請求項4】
樹脂基材に配線パターン及びビアが形成されたプリント配線基材を複数積層すると共に電子部品を内蔵してなる部品内蔵基板を、実装基板の実装面上に実装した部品内蔵基板実装体の製造方法であって、
複数の樹脂基材にサーマル配線を含む前記配線パターン及びサーマルビアを含む前記ビアを形成すると共に、前記複数の樹脂基材のうちの少なくとも一つに前記電子部品を内蔵する開口部を形成して複数のプリント配線基材を形成する工程と、
前記電子部品の電極形成面と反対側の面が、前記サーマルビアを介して前記サーマル配線と接続されるように前記複数のプリント配線基材を熱圧着して一括積層し前記部品内蔵基板を形成する工程と、
前記部品内蔵基板の表層に前記サーマル配線と接続されるバンプを形成する工程と、
前記バンプを介して前記部品内蔵基板を前記実装基板の実装面上に実装する工程とを備えた
ことを特徴とする部品内蔵基板実装体の製造方法。
【請求項5】
樹脂基材に配線パターン及びビアが形成されたプリント配線基材を複数積層すると共に電子部品を内蔵してなる部品内蔵基板であって、
前記複数のプリント配線基材の少なくとも一部が、前記配線パターンにサーマル配線を含み、前記ビアにサーマルビアを含み、
表層に形成されたバンプを介して実装基板に実装されると共に、前記内蔵された電子部品の電極形成面と反対側の面が、前記サーマルビア及び前記サーマル配線を介して前記バンプに接続されている
ことを特徴とする部品内蔵基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77691(P2013−77691A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216527(P2011−216527)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【特許番号】特許第5100878号(P5100878)
【特許公報発行日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】