説明

部品実装装置および部品実装方法

【課題】複数の実装レーンを備えた部品実装装置において、基板種の変更に伴う機種切替え作業を、生産中の実装レーンの稼働を停止させることなく、且つオペレータの安全を損なうことなく実行することが可能な部品実装装置および部品実装方法を提供する。
【解決手段】第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2を備え、独立実装モード、交互実装モードを選択可能に構成された部品実装装置1において、実装対象となる基板種の変更に伴う機種切替え作業を実行するに際し、部品供給部においてオペレータの身体の一部または異物が進入可能な開口部19の近傍に設けられたテープフィーダ浮き検出センサ17がオペレータの手指26などの身体の一部または異物を検出したならば、当該部品供給部の属する実装レーンとは反対側の実装レーンに属する部品実装機構による作業動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電子部品を実装する部品実装装置および部品実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板に実装して実装基板を製造する電子部品実装システムは、半田接合用のペーストが印刷された後の基板を対象として、電子部品を実装する複数の部品実装装置を連結して構成されている。近年電子業界においては生産形態の多様化が進展したことに伴って、部品実装分野においても多品種少量生産型の生産形態が増加している。このため、部品実装システムにおいては、生産対象の基板種の切替えに伴う機種切替え作業の頻度が増加しており、部品実装の生産現場では生産性の向上を目的として機種切替え作業を効率的に行うための各種の方策が提案されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献例に示す先行技術においては、実装作業を実行する実装モードのほかに作業者が機種切替のための作業を行う段取りモードを選択可能とし、段取りモードでは、可動部が障害物を検知した状態や機器の開閉カバーの開放を検知した場合などにおいても動力電源部を通電状態とするようにしている。これにより、段取り作業が終了した後の実装作業再開時に原点復帰の操作を行う必要がないという効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−133800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで部品実装装置として、基板を搬送する基板搬送機構および基板に部品を実装する部品実装機構より成る2つの独立した実装レーンを備えた構成の部品実装装置が知られている。このような構成とすることにより、2つの実装レーンによって2種類の異なる基板を対象として、同時並行的に部品実装作業を実行することができる。しかしながら、このような構成の部品実装装置において1つの生産ロットの終了のタイミングは各実装レーン毎に異なっていることから、基板種の変更に伴う機種切替え作業はそれぞれの実装レーン毎に行う必要がある。装置稼働率を向上させる観点からは、生産継続中の実装レーンの稼働は停止させないで、生産ロットが終了した実装レーンのみを対象として機種切り替え作業を行えることが望ましい。
【0005】
ところがこの機種切替え作業は、部品実装機構に部品を供給するテープフィーダなどの部品供給装置の入れ替えや、部品実装機構に用いられる吸着ノズルの入れ替えなど、オペレータによる手動作業を伴うことから、一方側の実装レーンが生産状態で他方側の実装レーンにおいて機種切替え作業を可能とするためには、従来技術においてはオペレータの安全が損なわれないように両方の実装レーンを停止させる必要があり、機種切替えを高頻度で実行すると生産性の低下を余儀なくされていた。このため、複数の実装レーンを備えた部品実装装置において、基板種の変更に伴う機種切替え作業を、一方側の実装レーンの稼働を停止させることなく、且つオペレータの安全を損なうことなく実行することが可能な部品実装装置および部品実装方法が求められていた。
【0006】
そこで本発明は、複数の実装レーンを備えた部品実装装置において、基板種の変更に伴う機種切替え作業を、生産中の実装レーンの稼働を停止させることなく、且つオペレータの安全を損なうことなく実行することが可能な部品実装装置および部品実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部品実装装置は、上流側装置から受け渡された基板を基板搬送方向に搬送し、前記基板を位置決めして保持する基板保持部をそれぞれ有する第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構と、前記第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のそれぞれの側方に設けられ、前記基板に実装される部品を供給する第1の部品供給部、第2の部品供給部と、前記第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のそれぞれに対応して設けられ前記第1の部品供給部、第2の部品供給部から実装ヘッドによって部品を取り出して前記第1の基板搬送機構の基板保持部、前記第2の基板搬送機構の基板保持部に保持された基板に実装する第1の部品実装機構、第2の部品実装機構と、前記第1の基板搬送機構、第1の部品供給部、第1の部品実装機構より構成される第1の実装レーンおよび前記第2の基板搬送機構、第2の部品供給部、第2の部品実装機構より構成される第2の実装レーンを制御する実装制御部と、前記第1の部品供給部、第2の部品供給部の少なくとも1つにおいて、オペレータの身体の一部または異物が進入可能な開口部の近傍に設けられた光学センサとを備え、前記実装制御部は、前記第1の実装レーン、第2の実装レーンのいずれかにおいて、実装対象となる基板種の変更に伴う機種切替え作業を実行するに際し、前記センサが前記身体の一部または異物を検出したならば、当該センサが設けられた前記部品供給部の属する実装レーンとは反対側の実装レーンに属する部品実装機構による作業動作を停止させる。
【0008】
本発明の部品実装方法は、上流側装置から受け渡された基板を基板搬送方向に搬送し、前記基板を位置決めして保持する基板保持部をそれぞれ有する第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構と、前記第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のそれぞれの側方に設けられ、前記基板に実装される部品を供給する第1の部品供給部、第2の部品供給部と、前記第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のそれぞれに対応して設けられ前記第1の部品供給部、第2の部品供給部から実装ヘッドによって部品を取り出して前記第1の基板搬送機構の基板保持部、前記第2の基板搬送機構の基板保持部のいずれかに保持された基板に実装する第1の部品実装機構、第2の部品実装機構と、前記第1の部品供給部、第2の部品供給部のうちの少なくとも1つにおいて、オペレータの身体の一部または異物が進入可能な開口部の近傍に設けられた光学センサとを備えた部品実装装置によって、前記基板に部品を実装する部品実装方法であって、前記第1の基板搬送機構、第1の部品供給部、第1の部品実装機構より構成される第1の実装レーンおよび第2の基板搬送機構、第2の部品供給部、第2の部品実装機構より構成される第2の実装レーンを制御する実装制御工程において、前記第1の実装レーン、第2の実装レーンのいずれかにおいて、実装対象となる基板種の変更に伴う機種切替え作業を実行するに際し、前記光学センサが前記身体の一部または異物を検出したならば、当該光学センサが設けられた前記部品供給部の属する実装レーンとは反対側の実装レーンに属する部品実装機構による作業動作を停止させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の実装レーン、第2の実装レーンのいずれかにおいて、実装対象となる基板種の変更に伴う機種切替え作業を実行するに際し、部品供給部においてオペレータの身体の一部または異物が進入可能な開口部の近傍に設けられた光学センサが身体の一部または異物を検出したならば、当該光学センサが設けられた部品供給部の属する実装レーンとは反対側の実装レーンに属する部品実装機構による作業動作を停止させることにより、生産中の実装レーンの作業動作に起因する危険がオペレータに及ぶことがなく、複数の実装レーンを備えた部品実装装置において、基板種の変更に伴う機種切替え作業を、生産中の実装レーンの稼働を停止させることなく、且つオペレータの安全を損なうことなく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態の部品実装装置の平面図
【図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置の断面図
【図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
【図4】本発明の一実施の形態の部品実装装置における実装ヘッドの可動限界領域の説明図
【図5】本発明の一実施の形態の部品実装装置における実装ヘッドの可動限界領域の説明図
【図6】本発明の一実施の形態の部品実装方法における部品実装作業処理のフロー図
【図7】本発明の一実施の形態の部品実装方法における機種切替え作業の安全確保方法の説明図
【図8】本発明の一実施の形態の部品実装方法における機種切替え作業の安全確保方法の説明図
【図9】本発明の一実施の形態の部品実装方法における機種切替え作業の安全確保方法の説明図
【図10】本発明の一実施の形態の部品実装方法における機種切替え作業の安全確保方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2を参照して、部品実装装置1の構成について説明する。図1において、基台1aの中央部には、第1の基板搬送機構2A、第2の基板搬送機構2Bが、X方向(基板搬送方向)に設けられており、それぞれ上流側装置から受け渡された基板4をX方向下流側へ搬送する。第1の基板搬送機構2A、第2の基板搬送機構2Bはそれぞれ基板保持部3を有し、上流側から搬送された基板4は基板保持部3によって以下に説明する部品実装機構による実装作業位置に位置決め保持される。
【0012】
第1の基板搬送機構2A、第2の基板搬送機構2Bのそれぞれの外側方には、基板4に実装される部品を供給する第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bが設けられている。図2に示すように、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bには、複数のテープフィーダ6が配置された台車7が装着されており、テープフィーダ6は供給リール8から部品を収納保持したキャリアテープ引き出してピッチ送りすることにより、これらの部品を部品実装機構による部品取り出し位置に供給する。実装対象となる基板種の切替えに際しては、台車7を第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bに対して着脱することにより、複数のテープフィーダ6を一括して交換することができる。
【0013】
なお本実施の形態においては、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bのいずれにもテープフィーダ6が配列された台車7を装着する例を示しているが、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bのいずれか一方は、トレイフィーダなどテープフィーダ6以外のパーツフィーダが配置されている構成であってもよい。すなわち、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bの少なくとも1つにはキャリアテープに保持された部品を供給するテープフィーダ6が並列して装着されている。
【0014】
基台1aのX方向の一端部にはリニア駆動機構を備えたY軸移動テーブル10がY方向に水平に配設されており、Y軸移動テーブル10には同様にリニア駆動機構を備えた第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bが、ガイドレール10aに沿ってスライド自在に結合されている。第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bにはそれぞれ第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13BがX方向にスライド自在に装着されている。Y軸移動テーブル10及び第1のX軸移動テーブル11A、Y軸移動テーブル10及び第2のX軸移動テーブル11Bはそれぞれ第1のヘッド移動機構12A、第2のヘッド移動機構12Bを構成する。
【0015】
第1のヘッド移動機構12A、第2のヘッド移動機構12Bを駆動することにより、第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13BはX方向及びY方向に水平移動し、下端部に装着された吸着ノズル13aによって、それぞれ第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bのテープフィーダ6から部品を取り出して、第1の基板搬送機構2A、第2の基板搬送機構2Bのそれぞれの基板保持部3に位置決め保持された基板4に実装する。
【0016】
すなわち、第1のヘッド移動機構12A及び第1の実装ヘッド13A、第2のヘッド移動機構12B及び第2の実装ヘッド13Bの組み合わせは、第1の基板搬送機構2A、第2の基板搬送機構2Bのそれぞれに対応して設けられ、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bから部品を取り出して、第1の基板搬送機構2A、第2の基板搬送機構2Bのそれぞれの基板保持部3に保持された基板4に実装する第1の部品実装機構、第2の部品実装機構を構成する。
【0017】
第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bの下面側には、それぞれ第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bと一体的に移動する基板認識カメラ14が備えられている。第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bがそれぞれ第1の基板搬送機構2A、第2の基板搬送機構2Bの基板4上に移動することにより、基板認識カメラ14はそれぞれの基板4を撮像する。また第1の部品供給部5Aと第1の基板搬送機構2A、第2の部品供給部5Bと第2の基板搬送機構2Bとの間には、部品認識カメラ15及びノズル収納部16が配設されている。
【0018】
第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bから部品を取り出した第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bが部品認識カメラ15の上方を移動することにより、部品認識カメラ15は第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bに保持された状態の部品を撮像する。ノズル収納部16には複数種類の吸着ノズル13aが実装対象の部品種に対応して収納されており、第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bをノズル収納部16にアクセスさせてノズル交換動作を行わせることにより、吸着ノズル13aを部品種に応じて交換することができる。
【0019】
そして基板認識カメラ14の撮像結果を認識処理部25(図3参照)によって認識処理することにより、基板4における部品実装位置が認識され、部品認識カメラ15の撮像結果を認識処理することにより第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bに保持された状態の部品の識別や位置ずれ検出が行われる。第1の部品実装機構、第2の部品実装機構による部品実装動作においては、これらの認識結果を加味して搭載位置が補正される。
【0020】
部品実装装置1において、第1の基板搬送機構2A、第1の部品供給部5A、第1のヘッド移動機構12A及び第1の実装ヘッド13Aは、第1の基板搬送機構2Aに沿って搬送される基板4に対して部品実装作業を実行する第1の実装レーンL1を構成する。同様に、第2の基板搬送機構2B、第2の部品供給部5B、第2のヘッド移動機構12B及び第2の実装ヘッド13Bは、第2の基板搬送機構2Bを連結した一連の基板搬送レーンに沿って搬送される基板4に対して部品実装作業を実行する第2の実装レーンL2を構成する。
【0021】
上述の第1の実装レーンL1,第2の実装レーンL2は、図2に示すように、Y軸移動テーブル10,第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bの上方を覆う全体カバー部材18によって閉囲されている。全体カバー部材18のY方向の両端部に設けられた保護カバー部18aは、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bにおいてテープフィーダ6が配列された台車7の上方に外側から延入して、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bとそれぞれの部品実装機構の可動範囲,すなわち第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bの移動可能範囲とを隔てている。これにより、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bを対象として作業を行うオペレータが、動作状態の第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bに接触することがなく、作業時のオペレータの安全が確保される。
【0022】
図2の拡大図に示すように、保護カバー部18aの端部には、テープフィーダ6の部品取出し位置6aの上方に対応して、吸着ノズル13aによって部品を吸着するために必要な所定開口サイズの開口部19が設けられている。部品実装動作においては、第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bがそれぞれの第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bに移動する。そして吸着ノズル13aを開口部19を介して昇降させることにより(矢印a)、テープフィーダ6の部品取出し位置6aから部品をピックアップする。
【0023】
第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bにおいて、台車7に配列されたテープフィーダ6の先端部の上方であって開口部19の開口範囲には、テープフィーダ浮き検出センサ17が配設されている。テープフィーダ浮き検出センサ17は遮光型の光学センサであり、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bに台車7が装着された状態におけるテープフィーダ6の装着状態の異常の有無、例えば台車7に配列されたテープフィーダ6がフィーダベースから浮き上がった状態となっているか否かを検出するために設けられている。本実施の形態においては、テープフィーダ6の装着状態を検出する目的以外にも、テープフィーダ浮き検出センサ17を機種切替え作業時におけるオペレータの安全確保の目的にも用いるようにしている。
【0024】
すなわち、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bに設けられた開口部19は、台車7を分離した状態においてオペレータによるアクセスが可能であることから、オペレータの身体の一部または異物が開口部19を介して進入した状態で第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bが動作すると、不安全状態を招くおそれがある。このような不安全状態を防止するため、ここでは、テープフィーダ浮き検出センサ17をオペレータの安全確保用の光学センサとして用いるようにしている。
【0025】
例えば、テープフィーダ浮き検出センサ17がオペレータの手先や作業ツールなど、身体の一部または異物を検出したならば、検出信号は実装制御部20(図3)に伝達される。そして実装制御部20のインターロック処理部20bは、当該テープフィーダ浮き検出センサ17が設けられた部品供給部の属する実装レーンとは反対側の実装レーンに属する部品実装機構による作業動作を停止させる。すなわち本実施の形態においては、オペレータの安全確保用の光学センサとして、テープフィーダ6の装着状態の異常の有無を検出するために設けられたテープフィーダ浮き検出センサ17を用いるようにしている。
【0026】
次に図3を参照して、制御系の構成を説明する。図3において、実装制御部20は、記憶部21に記憶された各種のデータに基づき、部品実装装置1を構成する以下の各部を制御する。すなわち、実装制御部20は、第1の基板搬送機構2A、第1の部品供給部5A、第1の部品実装機構(第1のヘッド移動機構12A、第1の実装ヘッド13A)より構成される第1の実装レーンL1および第2の基板搬送機構2B、第2の部品供給部5B、第2の部品実装機構(第2のヘッド移動機構12B、第2の実装ヘッド13B)より構成される第2の実装レーンL2を制御する。
【0027】
ここで実装制御部20は、内部処理機能としての安全動作処理部20a、インターロック処理部20bを備えている。安全動作処理部20aは、部品実装作業におけるオペレータの安全を確保するために予め定められた動作条件に従って各部の動作を規定する処理を行う。またインターロック処理部20bは、予め定められた所定のインターロック条件に従って、オペレータの安全を損なうおそれのある機構各部の動作を禁止する処理を行う。これらの処理においては、以下に説明する各種のデータが参照される。
【0028】
ここで、部品実装装置1における第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2の作業形態を示す作業モードについて説明する。本実施の形態においては、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2の第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bが作業対象とする範囲によって、第1の作業モード、第2の作業モードの2つの作業モードが設定されており、実装対象に応じて適宜選択される。すなわち第1の作業モードは、1つの実装ヘッドとこの実装ヘッドの作業対象となる基板を搬送する基板搬送機構との対応関係が固定された作業モードであり、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2においてそれぞれ個別独立に部品実装作業が実行される(いわゆる独立実装モード)。換言すれば第1の作業モードでは、一の部品実装機構によってこの部品実装機構に対応した基板搬送機構の基板保持部3に保持された基板4のみを対象として部品実装作業を実行させる。
【0029】
これに対し、第2の作業モードでは、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2に属するそれぞれの実装ヘッドは、自己の属する実装レーンの基板搬送機構のみならず、対向する実装レーンの基板搬送機構をも作業対象とする。すなわちこの作業モードでは、各実装ヘッドは2つの基板搬送機構によって搬送される基板に対して交互に部品実装作業を実行する(いわゆる交互実装モード)。換言すれば、第2の作業モードでは、一の部品実装機構によって第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のいずれの基板保持部3に保持された基板4をも対象として部品実装作業を実行させる。
【0030】
このように、第1の作業モード、第2の作業モードでは実装ヘッドの動作態様が異なるため、記憶部21には、第1の作業モードに対応した第1の実装データ22、第2の作業モードに対応した第2の実装データ23が記憶されている。すなわち、実装制御部20が第1の実装データ22に基づいて第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2を制御することにより、独立実装モードによる部品実装作業が実行される。そして実装制御部20が第2の実装データ23に基づいて第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2を制御することにより、交互実装モードによる部品実装作業が実行される。
【0031】
本実施の形態においては、第1の実装データ22、第2の実装データ23にはそれぞれ第1の可動限界領域、第2の可動限界領域を特定する第1の可動限界領域データ22a、第2の可動限界領域データ23aが含まれている。第1の可動限界領域、第2の可動限界領域は、実装データを構成する動作プログラム上で実装ヘッドの水平方向の移動が許容される限界領域であり、いわばソフトウェアによって設定された実装ヘッドの移動許容リミットである。ここでは、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2においてそれぞれの実装ヘッドの水平方向の移動が許容される限界領域が、第1の作業モード、第2の作業モードのそれぞれに対応して、相異なる領域として設定されている。
【0032】
ここで、図4,図5を参照して、第1の可動限界領域、第2の可動限界領域について説明する。まず図4は、第1の作業モードに対応して設定される第1の可動限界領域R1A,R1Bを示している。第1の可動限界領域R1Aは、第1の実装レーンL1において第1のヘッド移動機構12Aによって移動する第1の実装ヘッド13Aの水平方向の移動が許容される領域を示しており、ここでは第1の作業モードにおいて、第1の実装ヘッド13Aが第1の基板搬送機構2Aの基板保持部3に保持された基板4の全範囲をカバーするために必要十分な移動領域として設定される。すなわち、第1の可動限界領域R1Aの外側の限界領域は第1の実装ヘッド13Aが第1の部品供給部5Aから部品を取り出すために必要な移動範囲によって規定され、内側の限界領域は第1の基板搬送機構2Aにおける基板保持部3の周縁部に所定の余裕幅を加えた範囲として規定される。
【0033】
また第1の可動限界領域R1Bは、第2の実装レーンL2において第2のヘッド移動機構12Bによって移動する第2の実装ヘッド13Bの水平方向の移動が許容される領域を示しており、ここでは第1の作業モードにおいて、第2の実装ヘッド13Bが第2の基板搬送機構2Bの基板保持部3に保持された基板4の全範囲をカバーするために必要十分な移動領域として設定される。同様に第1の可動限界領域R1Bの外側の限界領域は第2の実装ヘッド13Bが第2の部品供給部5Bから部品を取り出すために必要な移動範囲によって規定され、第2の基板搬送機構2Bにおける基板保持部3の周縁部に所定の余裕幅を加えた範囲が第1の可動限界領域R1Bとなる。
【0034】
次に図5(a)、(b)は、第2の作業モードに対応して設定される第2の可動限界領域R2A,R2Bを示している。図5(a)に示す第2の可動限界領域R2Aは、第1の実装レーンL1において第1のヘッド移動機構12Aによって移動する第1の実装ヘッド13Aの水平方向の移動が許容される領域を示しており、ここでは第2の作業モードにおいて、第1の実装ヘッド13Aが第1の基板搬送機構2A,第2の基板搬送機構2Bそれぞれの基板保持部3に保持された基板4の全範囲をカバーするために必要十分な移動領域として設定される。すなわち、第2の可動限界領域R2Aの外側の限界領域は第1の実装ヘッド13Aが第1の部品供給部5Aから部品を取り出すために必要な移動範囲によって規定され、内側の限界領域は第2の基板搬送機構2Bにおける基板4の周縁部に所定の余裕幅を加えた範囲として規定される。
【0035】
また 図5(b)に示す第2の可動限界領域R2Bは、第2の実装レーンL2において第2のヘッド移動機構12Bによって移動する第2の実装ヘッド13Bの水平方向の移動が許容される領域を示しており、ここでは第2の作業モードにおいて、第2の実装ヘッド13Bが第1の基板搬送機構2A,第2の基板搬送機構2Bそれぞれの基板保持部3に保持された基板4の全範囲をカバーするために必要十分な移動領域として設定される。すなわち、第2の可動限界領域R2Bの外側の限界領域は第2の実装ヘッド13Bが第2の部品供給部5Bから部品を取り出すために必要な移動範囲によって規定され、内側の限界領域は第1の基板搬送機構2Aにおける基板4の周縁部に所定の余裕幅を加えた範囲として規定される。
【0036】
このように、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2においてそれぞれの実装ヘッドの水平方向の移動が許容される限界領域を、第1の作業モード、第2の作業モードのそれぞれに対応して、相異なる領域として設定することにより、以下のような効果を得る。すなわち、第1の作業モードにて部品実装装置1が稼働している状態において、一方側の実装レーンにおける機種切替え作業を実行する場合には、稼働中の対向する実装レーンの実装ヘッドが当該機種切り替え作業中の実装レーンの領域に進入すると、状況によってはオペレータと実装ヘッドとの接触による不安全全状態が生じるおそれがある。このような場合にあっても、本実施の形態においては第1の作業モードでの実装ヘッドの移動限界領域が設定されていることから、稼働中の実装レーンの実装ヘッドが機種切り替え作業中の実装レーンの領域に進入する事態が発生せず、オペレータの安全が確保される。
【0037】
ヘッド退避位置データ24は、第1の作業モードにおいて一方側の実装レーンにて機種切替え作業を実行する際に、オペレータの安全のために第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bを退避させる退避位置[P](図8〜図10参照)を規定するデータである。この退避位置[P]の詳細及び技術的意義については、後述の動作例にて詳述する。認識処理部25は、基板認識カメラ14、部品認識カメラ15による撮像結果を認識処理する。これにより、実装対象の基板4の部品実装点が認識されるとともに、第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bに保持された状態の部品が認識される。認識結果は実装制御部20に伝達され、第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bによる基板4への部品搭載動作においては、実装制御部20はこの認識結果を加味して第1のヘッド移動機構12A、第2のヘッド移動機構12Bを制御する。
【0038】
テープフィーダ浮き検出センサ17による検出結果は、実装制御部20に伝達される。このとき、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bにテープフィーダ6が配列された台車7が装着されている場合には、テープフィーダ浮き検出センサ17の検出結果に基づき、実装制御部20はテープフィーダ6の装着状態の異常を報知する。また機種切替え作業中において、テープフィーダ浮き検出センサ17からの検出信号を実装制御部20が受信した場合には、実装制御部20は予め設定されたインターロック条件に従って、インターロック処理部20bによってオペレータの安全確保に必要な動作制御処理を行う。
【0039】
次に、部品実装装置1を第1の作業モード(独立実装モード)にて稼働させる過程において、一方側の実装レーン(ここでは第1の実装レーンL1)を対象とした機種切替え作業を、他方側の実装レーン(ここでは第2の実装レーンL2)における生産を継続しながら実行する際のオペレータの安全確保策について、図6の部品実装作業処理フローに則して、各図を参照しながら説明する。
【0040】
図6において、まず最初に、図3に示す第1の実装データ22、第2の実装データ23にそれぞれ含まれる第1の可動限界領域、第2の可動限界領域を設定する(ST1)。すなわち、図4に示すように、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2に対応してそれぞれ第1の可動限界領域R1A,R1Bを設定し、さらに図5に示すように、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2に対応してそれぞれ第2の可動限界領域R2A,R2Bを設定する(ST1)。
【0041】
次いで、上述のように第1の可動限界領域R1A,R1B、第2の可動限界領域R2A,R2Bがそれぞれ設定された第1の実装データ22、第2の実装データ23を記憶部21に記憶させる(実装データ記憶工程)(ST2)。すなわちここでは、実装データ記憶工程に先立って、第1の実装データ22、第2の実装データ23に、第1の可動限界領域R1A,R1B、第2の可動限界領域R2A,R2Bを、第1の作業モード、第2の作業モードのそれぞれに対応して、相異なる領域として設定するようにしている。
【0042】
そして部品実装装置1による部品実装作業が開始されると、実装制御部20が、記憶部21に記憶された実装データに基づいて、第1の実装レーンL1および第2の実装レーンL2を制御することにより(実装制御工程)、上流側から搬入される基板4を対象として部品を実装する部品実装作業を実行する(ST3)。ここで、第1の作業モードによって部品実行作業を継続して実行する過程において、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2のいずれかにて、1つの基板種を対象とする生産ロットが完了したならば、当該実装レーンを対象として、機種切替え作業が実行される(ST4)。
【0043】
第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2のいずれかにおいて、実装対象となる基板種の変更に伴う機種切替え作業を実行するに際しては、作業を行うオペレータの安全確保を目的として、以下に説明する安全確保策が実行される。すなわち、まず安全動作処理部20aの機能により、機種切替えの対象となる実装レーンの実装ヘッドを、予め設定された所定の退避位置に退避させる(ST5)。ここでは第1の実装レーンL1が機種切替え作業の対象となっており、第1の実装ヘッド13Aを、図7に示す退避位置[P]に移動させて、Y軸移動テーブル10のリニアモータ機構が備えたブレーキ機能により位置を固定する(実装ヘッド退避工程)。なお第2の実装レーンL2が機種切替え作業の対象となる場合には、第1の実装レーンL1側に同様に設定された退避位置[P]に、第2の実装ヘッド13Bを退避させる。
【0044】
このように第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bが退避位置[P]に位置していることは、Y軸移動テーブル10に内蔵されたリニアエンコーダ機能(図示省略)によって検出され、検出結果は実装制御部20に伝達される。すなわち、Y軸移動テーブル10に内蔵されたリニアエンコーダ機能は、第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bが退避位置[P]に停止していることを検出する位置検出手段として機能する。そして実装制御部20は、第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bが退避位置[P]に位置していることを、この位置検出手段により確認した場合にのみ、反対側の実装レーンにおける部品実装作業を開始させるように、インターロック条件が設定されている。
【0045】
機種切替え作業に際しては、図7,図8に示すように、対象となる第1の実装レーンL1の第1の部品供給部5Aから、テープフィーダ6が配列された台車7を引き出して、次基板種に対応したテープフィーダ6と交換するフィーダ交換作業が実行される。このとき、第1の部品供給部5Aにおいては、保護カバー部18aの端部に設けられた開口部19の下方に位置する台車7が除去されることから、開口部19は開放状態となり、図7,図8に示すように、オペレータが手指26や作業ツールなどの異物を開口部19を介して部品実装機構を構成する可動機構の動作領域に進入させることが可能な状態となる。この状態では、オペレータが不用意に開口部19から進入させた手指26に実装ヘッドなどの可動機構が接触することによる事故が予測されることから、本実施の形態においては、以下に説明する複数段階の安全確保策によって、オペレータの安全を確保に万全を期すようにしている。
【0046】
まず第1は、第1の実装データ22に設定された第1の可動限界領域により、第2の実装ヘッド13Bの移動が制限されることによる安全確保効果である。すなわち第2の実装レーンL2において生産継続中にあっても、第2の実装ヘッド13Bは第1の可動限界領域R1Bを超えて第1の実装レーンL1側には移動しないように制御プログラム上で移動リミットが設けられていることから、第1の実装レーンL1の第1の部品供給部5Aを対象として作業を行うオペレータが、第2の実装ヘッド13Bの動作によって不安全な状態となる事態が発生しない。
【0047】
次に第1の部品供給部5Aに配置されたテープフィーダ浮き検出センサ17の検出結果とリンクされた、第2の実装ヘッド13Bの動作上のインターロックによる安全確保効果である。すなわち、本実施の形態においては、第1の部品供給部5Aから台車7を分離除去した状態においても、テープフィーダ浮き検出センサ17の検出機能をON状態にしておく。これにより、図7,図7に示すように、何らかの理由でオペレータの身体の一部である手指26または作業ツールなどの異物を下方から開口部19を介して進入させると、これらの進入物はテープフィーダ浮き検出センサ17の検出光軸17aが遮光されることによって検出される(ST6)。そしてテープフィーダ浮き検出センサ17がこれらの進入物を検出したならば、インターロック処理部20bは、機種切替え作業時に既に停止状態にある第1の実装ヘッド13Aのみならず、生産動作中の反対側の第2の実装レーンL2の部品実装機構による第2の実装ヘッド13Bの作業動作を停止させる(ST7)。これにより、第2の実装ヘッド13Bが制御異常によって誤動作したような場合にあっても、第2の実装ヘッド13Bが第1の部品供給部5Aに向かって移動することがない。このインターロックにより、上述の制御プログラム上で設定された可動限界領域による安全確保策が、何らかの理由で正常に機能しなかった場合にあっても、オペレータの安全が確保される。
【0048】
さらに本実施の形態においては、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2のいずれかにおいて、実装対象となる基板種の変更に伴う機種切替え作業を実行するに際し、前述の第1の実装ヘッド13A、第2の実装ヘッド13Bを退避させるための退避位置[P]を、以下に説明する条件を満たす位置に設定する。すなわち退避位置[P]は、当該実装レーンに属する部品実装機構の実装ヘッドを、部品供給部と部品実装機構の可動範囲とを隔てる保護カバー部18aに設けられた開口部19を介してオペレータが身体の一部または異物を進入させる行為をブロックすることが可能な位置であって、且つ当該実装レーンとは反対側の実装レーンに属する部品実装機構の作業動作によってオペレータの安全が損なわれないような位置に設定される。
【0049】
具体的には、図8に示すように、部品認識カメラ15の上方に第1の実装ヘッド13Aが位置するように、退避位置[P]を設定する。これにより、開口部19の上方に第1のX軸移動テーブル11Aが位置して、開口部19から手指26などを進入させた場合に、第1のX軸移動テーブル11Aや第1の実装ヘッド13Aによって手指26などの第1の基板搬送機構2A、第2の基板搬送機構2B側への進入が妨害される。
【0050】
さらに、退避位置[P]の設定においては、生産中の反対側の実装ヘッドの暴走を想定して、退避位置[P]に待機中の実装ヘッドに反対側の実装ヘッドが衝突しても、オペレータの安全が確保されるように考慮されている。すなわち退避位置[P]は、実装ヘッドが部品供給部にアクセスして部品をピックアップするための開口部19よりも基板搬送機構側に当該実装ヘッドが位置し、且つ反対側の実装レーンに属する部品実装機構の実装ヘッドが制御異常により暴走して当該実装レーンの実装ヘッドに衝突した場合にあっても、開口部19内に進入した手指26などの身体の一部または異物が、衝突により移動する実装ヘッドと開口部19の端部との間に挟み込まれないだけの移動代を確保可能な位置に設定される。
【0051】
図9、図10を参照して、このような退避位置[P]の詳細及び移動代について説明する。図9は、機種切替え作業中の第1の実装レーンL1において、退避位置[P]にて待機中の第1の実装ヘッド13Aに、制御異常によって第2の実装レーンL2側から暴走(矢印b)した第2の実装ヘッド13Bが衝突した状態を示している。第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bを共通のY軸移動テーブル10によって駆動する構成において、第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bの移動プレート27A、27Bには、干渉センサ28を構成する近接部28a、検出部28bがそれぞれ装着されている。動作途中において第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bが相互に接近して、近接部28aと検出部28bとが所定距離まで近接すると干渉センサ28から干渉信号が出力され、第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bのいずれもが停止するようになっている。
【0052】
しかしながら、干渉センサ28が正常に作動しない場合には、停止中の第1のX軸移動テーブル11Aに動作中の第2のX軸移動テーブル11Bが衝突する事態が発生し得る。このため、本実施の形態においては、このような干渉センサ28の作動不良による第1のX軸移動テーブル11Aと第2のX軸移動テーブル11Bとの衝突が発生した場合にあってもオペレータの安全が確保されるように、第1のX軸移動テーブル11Aの退避位置[P]を適正位置に設定するようにしている。図10(a)は、機種切替え側の実装レーンにて第1の実装ヘッド13Aが、部品認識カメラ15の上方近傍に設定された退避位置[P]に退避した状態を示している。ここでは退避位置[P]は、開口幅C1を有する開口部19の端部から、距離Aだけ隔てた位置に設定されている。
【0053】
次いで図10(b)に示すように、第2の実装ヘッド13Bが第2の実装レーンL2側から移動し(矢印c)、図10(c)に示すように、待機して停止状態の第1の実装ヘッド13Aに衝突する(矢印d)。そしてこの衝突により、停止状態の第1の実装ヘッド13Aは、退避位置[P]から第2の実装ヘッド13Bの移動方向と同方向へ移動する(矢印e)。これにより、第1の実装ヘッド13Aは、退避位置[P]から移動代Bだけ移動する。移動代Bは、第1の実装ヘッド13Aを退避位置[P]に位置固定するブレーキ機構の制動力と衝突時の第2の実装ヘッド13Bの衝突速度などによって規定される。そしてこの衝突により、第1の実装ヘッド13Aは、図10(d)に示すように、開口部19の上方へはみ出した位置へ移動する。
【0054】
このとき第1の実装ヘッド13Aが開口部19の上方を覆うように移動すると、開口部19内にオペレータの手指26が進入している場合には、第1の実装ヘッド13Aと開口部19の端部との間で手指26が挟み込まれる事態が発生する。そこで、このような労働災害につながりかねない不安全状態を防止するため、本実施の形態においては、上述のような場合にあっても、開口部19の端部と第1の実装ヘッド13Aとの間に手指26が挟み込まれない十分な残留隙間C2が存在するように、退避位置[P]の位置を設定する。
【0055】
すなわち残留隙間C2は、距離Aと開口幅C1との和から移動代Bを減じた寸法であり、C2=A+C1−Bで表される。ここで、開口幅C1は固定値で既知であり、移動代Bも衝突側の実装ヘッドのヘッド移動速度や停止状態の実装ヘッドのブレーキ強度などの動作条件などに基づいて試行により求めることができる。したがって、距離Aを適切に設定することにより、オペレータの手指26が開口部19内に進入した状態にあっても、手指26が第1の実装ヘッド13Aと保護カバー部18aの端面との間に挟み込まれる不安全状態が発生しないように、十分な大きさの残留隙間C2を確保することができる。
【0056】
そして本実施の形態においては、機種切替え実行側の実装レーンにおいて実装レーンが上述の退避位置[P]に位置していることを前述の位置検出手段によって検出し、この位置検出が正常になされていることを確認して、反対側の実装レーンにおける部品実装動作を開始するようにしている。これにより、実装ヘッドが正規の退避位置[P]に位置しない状態で、機種切替え作業および反対側実装レーンでの部品実装作業が実行されることがなく、安全確保策が確実に保証される。
【0057】
上記説明したように、本実施の形態に示す部品実装装置では、第1の作業モードによる装置稼働中の機種切り替え作業におけるオペレータの安全を、複数段の安全確保策によって確保するようにしている。すなわち、まず第1段の安全確保策として、第1の実装レーンL1、第2の実装レーンL2において実装ヘッドの水平方向の移動が許容される領域を、制御プログラム上で設定された可動限界領域として設定することにより、反対側の実装レーンの実装ヘッドが機種切替え側の実装レーンに進入することを防止する。
【0058】
次に、第2段の安全確保策として、第1の部品供給部5A、第2の部品供給部5Bに設けられた開口部19からオペレータが手指26などの身体の一部や異物を進入させた場合に、これらの進入物をテープフィーダ浮き検出センサ17によって検出し、この検出結果に基づいて反対側の実装レーンの実装ヘッドの動作を停止させるようにしている。さらに、上述の第1段、第2段の安全確保策が何らかの理由によって正常に作動しなかった場合を想定して、第3段の安全確保策として、機種切替え側の実装ヘッドの退避位置[P]を、反対側の実装レーンの実装ヘッドが暴走して、退避位置にある実装ヘッドに衝突した場合にあってもなおオペレータの安全が確保されるような位置に設定するようにしている。
【0059】
このように、2つの実装レーンのそれぞれが個別に部品実装作業を実行する独立実装モードにて稼働中の部品実装装置1において、一方側の実装レーンで機種切替え作業を実行し、且つ反対側の実装レーンで生産を継続する場合において、上述のようにオペレータの安全確保策を複数段に講じることにより、反対側の実装レーンを稼働させながら機種切り替え作業を実行するという従来では不可能とされた作業形態が実現される。すなわち複数の実装レーンを備えた部品実装装置において、基板種の変更に伴う機種切替え作業を、一方側の実装レーンの稼働を停止させることなく、且つオペレータの安全を損なうことなく実行することができる
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の部品実装装置および部品実装方法は、複数の実装レーンを備えた部品実装装置において、基板種の変更に伴う機種切替え作業を、一方側の実装レーンの稼働を停止させることなく、且つオペレータの安全を損なうことなく実行することができるという効果を有し、配線基板に部品を実装して実装基板を製造する分野において有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 部品実装装置
2A 第1の基板搬送機構
2B 第2の基板搬送機構
3 基板保持部
4 基板
5A 第1の部品供給部
5B 第2の部品供給部
6 テープフィーダ
7 台車
9 キャリアテープ
10 Y軸移動テーブル
11A 第1のX軸移動テーブル
11B 第2のX軸移動テーブル
12A 第1のヘッド移動機構
12B 第2のヘッド移動機構
13A 第1の実装ヘッド
13B 第2の実装ヘッド
13a 吸着ノズル
17 テープフィーダ浮き検出センサ
18 全体カバー部材
18a 保護カバー部
19 開口部
[P] 退避位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側装置から受け渡された基板を基板搬送方向に搬送し、前記基板を位置決めして保持する基板保持部をそれぞれ有する第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構と、
前記第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のそれぞれの側方に設けられ、前記基板に実装される部品を供給する第1の部品供給部、第2の部品供給部と、
前記第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のそれぞれに対応して設けられ前記第1の部品供給部、第2の部品供給部から実装ヘッドによって部品を取り出して前記第1の基板搬送機構の基板保持部、前記第2の基板搬送機構の基板保持部に保持された基板に実装する第1の部品実装機構、第2の部品実装機構と、
前記第1の基板搬送機構、第1の部品供給部、第1の部品実装機構より構成される第1の実装レーンおよび前記第2の基板搬送機構、第2の部品供給部、第2の部品実装機構より構成される第2の実装レーンを制御する実装制御部と、
前記第1の部品供給部、第2の部品供給部の少なくとも1つにおいて、オペレータの身体の一部または異物が進入可能な開口部の近傍に設けられた光学センサとを備え、
前記実装制御部は、前記第1の実装レーン、第2の実装レーンのいずれかにおいて、実装対象となる基板種の変更に伴う機種切替え作業を実行するに際し、前記センサが前記身体の一部または異物を検出したならば、当該センサが設けられた前記部品供給部の属する実装レーンとは反対側の実装レーンに属する部品実装機構による作業動作を停止させることを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの部品供給部にはキャリアテープに保持された部品を供給するテープフィーダが並列して装着されており、前記光学センサは、前記テープフィーダの装着状態の異常の有無を検出するために設けられたテープフィーダ浮き検出用センサであることを特徴とする請求項1記載の部品実装装置。
【請求項3】
上流側装置から受け渡された基板を基板搬送方向に搬送し、前記基板を位置決めして保持する基板保持部をそれぞれ有する第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構と、前記第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のそれぞれの側方に設けられ、前記基板に実装される部品を供給する第1の部品供給部、第2の部品供給部と、前記第1の基板搬送機構、第2の基板搬送機構のそれぞれに対応して設けられ前記第1の部品供給部、第2の部品供給部から実装ヘッドによって部品を取り出して前記第1の基板搬送機構の基板保持部、前記第2の基板搬送機構の基板保持部のいずれかに保持された基板に実装する第1の部品実装機構、第2の部品実装機構と、前記第1の部品供給部、第2の部品供給部のうちの少なくとも1つにおいて、オペレータの身体の一部または異物が進入可能な開口部の近傍に設けられた光学センサとを備えた部品実装装置によって、前記基板に部品を実装する部品実装方法であって、
前記第1の基板搬送機構、第1の部品供給部、第1の部品実装機構より構成される第1の実装レーンおよび第2の基板搬送機構、第2の部品供給部、第2の部品実装機構より構成される第2の実装レーンを制御する実装制御工程において、前記第1の実装レーン、第2の実装レーンのいずれかにおいて、実装対象となる基板種の変更に伴う機種切替え作業を実行するに際し、前記光学センサが前記身体の一部または異物を検出したならば、当該光学センサが設けられた前記部品供給部の属する実装レーンとは反対側の実装レーンに属する部品実装機構による作業動作を停止させることを特徴とする部品実装方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの部品供給部にはキャリアテープに保持された部品を供給するテープフィーダが並列して装着されており、前記光学センサとして、前記テープフィーダの装着状態の異常の有無を検出するために設けられたテープフィーダ浮き検出用センサを用いることを特徴とする請求項3記載の部品実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−151332(P2012−151332A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9649(P2011−9649)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】