説明

部材のビス止め構造

【課題】ビス止め時のブラケットの回転を抑制し、無用な位置ずれやガタつきを無くしながら、確実にブラケットを固定することのできる部材のビス止め構造を得る。
【解決手段】金属パイプ製のステアリングメンバ1の周壁の外周円筒面に、取付対象の樹脂成形品であるダクトのブラケット3の取付座4の平坦な座面4bを当接させ、その状態でブラケット3を、取付座4の座面4bとステアリングメンバ1の周壁の外周円筒面の接する位置に貫通させたビス10で固定した構造において、取付座4の座面4bに、該座面4bとステアリングメンバの周壁の外周円筒面との間の隙間を埋める凸部5を設け、ビス10をステアリングメンバ1の周壁に設けたねじ孔1aにねじ込んだ際の締め付け力により凸部5を塑性変形させつつ、ブラケット3をビス10でステアリングメンバ1の周壁に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のステアリングメンバにエアコンユニットのダクトをビス止め固定した部分等に適用される、部材のビス止め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、例えば、ステアリングメンバにエアコンユニットが近接している関係から、エアコンユニットのダクトをステアリングメンバに直接ビス止め固定することが一般的に行われている。
【0003】
図6は、エアコンユニットの樹脂製ダクトに一体成形したブラケット103を、円形パイプ状のステアリングメンバ101にビス110で固定した部分の構造を示している。
【0004】
この場合、ステアリングメンバ101の周壁にブラケット103の取付座104の座面104bを当接させ、その状態で、ブラケット103を、座面104bとステアリングメンバ101の接する位置に貫通させたビス110で、ステアリングメンバ101の周壁に固定している。
【0005】
しかし、ステアリングメンバ101の周壁の外周面は円筒面になっているため、その外周円筒面にブラケット103の平坦な座面104bを当接させた状態で、ビス110で固定する際に、ビス110のねじ込みトルクによって座面104bが回転してしまい、その結果、ブラケット103を一体化したダクトに変形や位置ずれが起こる場合があった。
【0006】
一方、図7に示すように、パイプ状の部材201にブラケット203をボルトで固定する場合に、ブラケット203の取付座204の座面204bに、パイプ状の部材201の外周円筒面に沿った当接面を有する当壁205を予め設けておくことで、取付時の回転を防止しながら、安定した状態でブラケット203をボルト止めする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−127643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図7に示したように、ブラケット203の取付座204の座面204bに、パイプ状の部材201の外周円筒面に沿った当接面を有する当壁205を設けておく場合は、確かに、回転を防止しながら、ガタつきなくブラケット203を固定することができるが、多少とも、ブラケット203の向きとパイプ状の部材201の向きが合っていないと、きれいにフィットしないままに、ボルトでブラケット203を強制的に固定してしまうことになり、ブラケット203に無用な力がかかってしまうことになりかねない。
【0008】
したがって、図6に示すような樹脂製ダクトのブラケット103に、図7の当壁を設ける案を採用した場合、ダクトにまで無理な力が及ぶことになり、ダクトの変形による空調性能の悪化に繋がるおそれがある。
【0009】
現実的には、エアコンユニットのダクトに設けたブラケット103の向きと、ステアリングメンバ101の向きが最初から精度良く合っている確率は低いので、多少の方向ずれを許容しながら無理なく確実に固定することができる構成が理想である。
【0010】
このため、ブラケット103の取付座104の座面104bを、当壁205(図8参照)などを有しない平坦な面のまま、ステアリングメンバ101の周壁の外周円筒面に当接させる、という条件を満たしながら、ブラケットの回転を抑制し、かつ安定した状態でダクトを固定できるのが好適である。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、ビス止め時のブラケットの回転を抑制し、無用な位置ずれやガタつきを無くしながら、確実にブラケットを固定することのできる部材のビス止め構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、パイプ状の第1部材(1)の周壁の外周円筒面に、第2部材(2)のブラケット(3)の平坦な座面(4b)を当接させ、その状態で上記ブラケット(3)を、上記座面(4b)と上記第1部材(1)の周壁の外周円筒面の接する位置に貫通させたビス(10)で上記第1部材(1)の周壁に固定してなる、部材のビス止め構造において、上記ブラケット(3)の座面(4b)に、該座面(4b)と上記第1部材(1)の周壁の外周円筒面との間の隙間を埋める凸部(5、5B)を設け、上記ビス(10)を上記第1部材(1)の周壁に設けたねじ孔(1a)にねじ込んだ際の締め付け力により上記凸部(5、5B)を塑性変形させつつ、上記ブラケット(3)をビス(10)で上記第1部材(1)の周壁に固定したことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、上記ブラケット(3)の座面(4b)上に、上記ねじ孔(1a)の中心を通りかつ上記第1部材(1)の軸方向に沿う第1の直線(L1)と、上記ねじ孔(1a)の中心を通りかつ上記第1の直線(L1)と垂直な第2の直線(L2)と、で分割される4つの領域(A〜D)を設定し、その4つの領域(A〜D)のうち、上記第1の直線(L1)に対してビス(10)の締め付けに伴う回転方向手前側に隣接する2つの領域(A、C)のいずれか一方に含まれるように、上記凸部(5、5B)を配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、上記第1部材(1)が車両の構造体として使用された金属製の円形パイプであり、上記第2部材(2)が、上記ブラケット(3)を含めて一体成形された樹脂成形品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、ブラケットの座面に凸部を設け、ビスのねじ込みによってその凸部を塑性変形させつつ、ブラケットを第1部材の周壁にビス止めしているので、ブラケットの座面と第1部材の周壁との摩擦を増大させることができて、密着性の向上を図ることができると共に、ビスをねじ込む際のブラケットの回転を防止することができる。したがって、ガタつきや位置ずれを防止することができ、例えば、第1部材に無用な変形が起こるのを防ぐことができると共に、ビス止め時の作業性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、ビスを締め付ける際に、凸部によってクサビ効果を得ることができるので、より確実にブラケットの回転防止を図ることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、樹脂成形された凸部の潰れによって、座面と外周円筒面との密着性を増すことができ、より確実にブラケットの回転防止及びガタつき防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態の説明図で、第1部材であるステアリングメンバに第2部材であるダクトのブラケットをビス止めする部分の構造を示す斜視図、図2は、ビス止め時の途中の状態(上段)とビス止め完了後(下段)の状態を示す図1のII−II矢視断面図、図3は、ブラケットの取付座の座面を示す平面図、図4は、取付座の座面に設けた凸部の位置を示す説明図、図5は、変形例として示す別のブラケットの取付座の座面の平面図である。
【0020】
本実施形態にかかる部材のビス止め構造では、図1に示すように、パイプ状の第1部材であるステアリングメンバ1の周壁の外周円筒面に、第2部材であるダクト2のブラケット3の取付座4の平坦な座面4bを当接させ、その状態でブラケット3を、取付座4の座面4bとステアリングメンバ1の周壁の外周円筒面の接する位置に貫通させたビス10でステアリングメンバ1の周壁に固定してある。
【0021】
その際、図2、図3に示すように、ブラケット3の取付座4の座面4b上のビス通し孔4aから離れた位置には、予め座面4bとステアリングメンバ1の周壁の外周円筒面との間の隙間を埋めるリブ状の凸部5を突設してあり、取付座4のビス通し孔4aに通したビス10の先端を、ステアリングメンバ1の周壁に設けたねじ孔1aにねじ込んだ際の締め付け力によって、凸部5を塑性変形させつつ、ブラケット3の取付座4をビス10でステアリングメンバ1の周壁に固定している。
【0022】
このとき、凸部5は、ビス10の頭部とステアリングメンバ1とで挟み込むことができるよう、少なくとも当該頭部の裏面側となる領域に含まれるように設けるのが好適である。
【0023】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、取付座4の座面4b上に、ねじ孔1aの中心を通りかつステアリングメンバ1の軸方向に沿う第1の直線L1と、ねじ孔1aの中心を通りかつ第1の直線L1と垂直な第2の直線L2とで分割される4つの領域A〜Dを設定し、その4つの領域A〜Dのうち、第1の直線L1に対してビス10の締め付けに伴う回転方向(図4中矢印X方向)手前側に隣接する2つの領域A、Cのいずれか一方に少なくとも一部が含まれるように、凸部5を配置している。
【0024】
なお、ステアリングメンバ1は、ステアリングシャフトを貫通させるために車両に設けた構造体であり、金属製の円形パイプで構成されている。また、ダクト2は、エアコンユニットの空気通路を構成するものであり、ブラケット3を含めて全体が樹脂の一体成形品で構成されている。
【0025】
以上の本実施形態によれば、ブラケット3の取付座4の座面4bにリブ状の凸部5を設け、ビス10のねじ込みによってその凸部5を塑性変形させつつ、ブラケット3をステアリングメンバ1の周壁にビス止めしているので、樹脂(リブ状の凸部5)の潰れにより、ブラケット3の取付座4の座面4bとステアリングメンバ1の周壁との摩擦を増大させることができて、取付座4とステアリングメンバ1の密着性の向上を図ることができると共に、ビス10をねじ込む際のブラケット3の回転を防止することができる。したがって、ブラケット3の取付部分のガタつきや位置ずれを防止することができ、例えば、ダクト2に無用な変形が起こるのを防ぐことができると共に、ビス止め時の作業性の向上を図ることができる。
【0026】
特に、凸部5を位置を、ビス10の締め付けに伴う回転方向手前側に隣接する領域に設定したので、凸部5によるクサビ効果を得ることができ、より確実にブラケット3の回転防止を図ることができる。
【0027】
なお、図5に示す例のように、取付座4の座面4b上に、図4に示した2つの領域C、Dにまたがる、より長いリブ状の凸部5Bを形成しておいてもよい。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態にかかる部材のビス止め構造の説明図であって、第1部材であるステアリングメンバに第2部材であるダクトのブラケットをビス止めする部分の構造を示す斜視図。
【図2】図1のII−II矢視断面図であって、(上段)は、ビス止め途中の状態を示す図、(下段)は、ビス止め完了後の状態を示す図。
【図3】本発明の実施形態にかかる部材のビス止め構造のブラケットの取付座の座面を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態にかかる部材のビス止め構造の取付座の座面に設けた凸部の位置を示す図。
【図5】本発明の実施形態の変形例にかかる部材のビス止め構造のブラケットの取付座の座面の平面図。
【図6】従来のビス止め構造の一例を示す図である。
【図7】従来の他のボルト止め構造の例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ステアリングメンバ(第1部材)
1a ねじ孔
2 ダクト(第2部材)
3 ブラケット
4b 座面
5,5B 凸部
10 ビス
L1 第1の直線
L2 第2の直線
A〜D 4つの領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ状の第1部材(1)の周壁の外周円筒面に、第2部材(2)のブラケット(3)の平坦な座面(4b)を当接させ、その状態で前記ブラケット(3)を、前記座面(4b)と前記第1部材(1)の周壁の外周円筒面の接する位置に貫通させたビス(10)で前記第1部材(1)の周壁に固定してなる、部材のビス止め構造において、
前記ブラケット(3)の座面(4b)に、該座面(4b)と前記第1部材(1)の周壁の外周円筒面との間の隙間を埋める凸部(5、5B)を設け、前記ビス(10)を前記第1部材(1)の周壁に設けたねじ孔(1a)にねじ込んだ際の締め付け力により前記凸部(5、5B)を塑性変形させつつ、前記ブラケット(3)をビス(10)で前記第1部材(1)の周壁に固定したことを特徴とする部材のビス止め構造。
【請求項2】
前記ブラケット(3)の座面(4b)上に、前記ねじ孔(1a)の中心を通りかつ前記第1部材(1)の軸方向に沿う第1の直線(L1)と、前記ねじ孔(1a)の中心を通りかつ前記第1の直線(L1)と垂直な第2の直線(L2)と、で分割される4つの領域(A〜D)を設定し、その4つの領域(A〜D)のうち、前記第1の直線(L1)に対してビス(10)の締め付けに伴う回転方向手前側に隣接する2つの領域(A、C)のいずれか一方に含まれるように、前記凸部(5、5B)を配置したことを特徴とする請求項1に記載の部材のビス止め構造。
【請求項3】
前記第1部材(1)が車両の構造体として使用された金属製の円形パイプであり、前記第2部材(2)が、前記ブラケット(3)を含めて一体成形された樹脂成形品であることを特徴とする請求項1または2に記載の部材のビス止め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−14361(P2008−14361A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184283(P2006−184283)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】