説明

部材の固定構造

【課題】ボスの軸方向に荷重が加わった場合であっても、リブの根元に応力が集中するのを確実に抑えることができる部材の固定構造を提供することを目的とする。
【解決手段】部材の固定構造Mは、基部11から突出するボス12と、基部11とボス12を繋ぐようにボス12から放射状に延びる複数のリブ13とを有する第1部材1と、リブ13の縁部130(支持部131)が接触した状態でボス12の先端12aが固定される基部21を有する第2部材2とを備えている。そして、リブ13の縁部130のうち、ボス12の先端12a側から第1部材1の基部11に向かって形成される部位であり、第1部材1の基部11と第2部材2の基部21との間に露出する部位(側部132)には、切欠133が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材をボスを介して固定するための部材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基部から突出するボスを有する第1部材と、ボスの先端が固定される基部を有する第2部材とを備えた部材の固定構造が知られている(特許文献1参照)。具体的に、この構造では、ボスの周囲に、ボスの補強用もしくは2つの部材の間隔を保持するためのリブが、基部とボスを繋ぐように放射状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−166782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、第1部材のボス付近に、ボスの軸方向に沿った荷重が第1部材側から第2部材側に向けて加わると、リブの根元(リブと基部の間の隅部)に応力が集中するおそれがあったので、応力を確実に分散することが望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、ボスの軸方向に荷重が加わった場合であっても、リブの根元に応力が集中するのを確実に抑えることができる部材の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、基部から突出するボスと、基部とボスを繋ぐようにボスから放射状に延びる複数のリブとを有する第1部材と、
前記リブの縁部が接触した状態で前記ボスの先端が固定される基部を有する第2部材とを備えた部材の固定構造であって、前記リブの縁部のうち、前記ボスの先端側から前記第1部材の基部に向かって形成される部位であり、前記第1部材の基部と前記第2部材の基部との間に露出する部位には、切欠が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、リブの縁部のうちの第1部材の基部と第2部材の基部との間に露出する部位に切欠が形成されるので、第1部材のボス付近に軸方向に沿った荷重が加わった場合には、切欠に応力を集中させることができる。そのため、リブの根元部分に応力が集中するのを確実に抑えることができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記第1部材の基部が、内部に複数の気泡を有する発泡樹脂材料で形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、発泡樹脂材料により軽量化を図ることができるとともに、リブの根元付近に発生する応力を切欠によって小さくすることで強度が低い発泡樹脂材料に対する荷重の影響を少なくすることができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記第1部材の基部が、前記発泡樹脂材料を挟み込む一対のスキン層を有し、前記切欠を、前記リブの根元から前記リブが形成されている側のスキン層の厚み以上の高さに設けたことを特徴とする。
【0011】
ここで、リブの根元からリブが形成されている側のスキン層の厚み以上の高さに切欠を設けた場合には、リブの根元に応力が集中しにくいことが実験やシミュレーション等で確認されている。そのため、請求項3に係る発明によれば、リブの根元へ加わる応力を確実に小さくすることができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記切欠を1つのリブに対して複数設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、応力を複数の切欠に分散させることができるので、応力をより分散させて、リブの根元へ加わる応力をより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ボスの軸方向に荷重が加わった場合であっても、リブの根元部分に応力が集中するのを確実に抑えることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、軽量化を図ることができるとともに、発泡樹脂材料への荷重の影響を、切欠によって少なくすることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、応力が集中する切欠をリブの根元から遠く離すため、リブの根元へ加わる応力を確実に小さくすることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、応力をより分散させて、リブの根元へ加わる応力をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る部材の固定構造を示す分解斜視図である。
【図2】部材の固定構造を示す断面図である。
【図3】1つのリブに切欠を2つ形成した形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、部材の固定構造Mは、板状の第1部材1と、板状の第2部材2とを備えている。なお、第1部材1や第2部材2としては、どのような部材を採用してもよく、例えばドアライニングや当該ドアライングに取り付けるアームレストなどの部材を採用することができる。
【0020】
第1部材1は、板状の基部11と、基部11から第2部材2に向けて突出するボス12と、基部11とボス12を繋ぐようにボス12から放射状(十字状)に延びる4つ(複数)のリブ13とを有している。
【0021】
基部11は、内部に複数の気泡を有する発泡樹脂材料11aと、当該発泡樹脂材料11aを挟み込む一対のスキン層11bとで形成されている。なお、発泡樹脂材料11aとしては、どのような材料を採用してもよく、例えば発泡ポリプロピレンなどを採用することができる。
【0022】
ボス12とリブ13は、一方(第2部材2側)のスキン層11bに一体に形成されている。なお、リブ13については、後で詳述する。
【0023】
第2部材2は、樹脂で形成された板状の部材であり、板状の基部21を有している。
【0024】
基部21には、ボス12の先端12aを固定するための孔21aが形成されている。具体的に、ボス12の先端12aは、図2に示すように、基部21の孔21aを貫通した後、加熱された治具で溶融されることで基部21に固着される。より具体的には、基部21には、リブ13の縁部130(支持部131)が接触した状態でボス12の先端12aが固定されるようになっている。
【0025】
<リブの詳細構造>
以下に、リブ13の詳細構造について説明する。
リブ13は、板状に形成されており、その縁部130が、第2部材2の基部21に接触する支持部131と、ボス12の先端12a側から基部11に向かって形成される側部132とを主に有した構成となっている。そして、側部132は、図2に示すように、第1部材1と第2部材2とが固定された状態において、第1部材1の基部11と第2部材2の基部21との間に露出しており、その第2部材2側には、段差状(直角)の切欠133が形成されている。
【0026】
これにより、図2に矢印で示すように、第1部材1側から第2部材2側に向けて第1部材1のボス12付近に軸方向に衝突荷重が加わって、第1部材1の基部11がボス12を中心に下側(第2部材2側)に凹むように撓んだ場合には、切欠133に応力が集中するようになっている。さらに、切欠133が形成されたリブ13は、弾性変形しやすくなっているため、衝突荷重をリブ13の弾性変形によっても吸収することができる。
【0027】
また、切欠133は、4つのすべてのリブ13に形成されている。これにより、各リブ13の根元13aへの応力集中を確実に抑えることが可能となっている。
【0028】
なお、この切欠133は、第2部材2を支持するための切欠ではなく、リブ13の根元13aに応力が集中しないようにするための切欠であるため、第2部材2に接触しない限り、リブ13の根元13a(基部11の裏面111)から遠く離れた位置に設けるのが好ましい。
【0029】
具体的には、切欠133は、リブ13の根元13aからリブ13が形成されている側のスキン層11bの厚み以上の高さとなる位置に設けるのが好ましい。その理由の1つは、実験やシミュレーション等によって、リブ13が形成されている側のスキン層11bの厚み以上の高さ位置に切欠133を設けると、リブ13の根元13aへの応力集中が分散されて基部11への荷重の影響が小さくなることが確認されているからである。また、第2の理由は、リブ13が形成されている側のスキン層11bの厚み未満の高さ位置に切欠を設けると、リブの根元への応力集中は分散されるが切欠に応力が集中しすぎて基部に対して荷重の影響が出るおそれがあることが確認されているからである。
【0030】
以上、本実施形態によれば、切欠133に応力を集中させることができるので、リブ13の根元13aに応力が集中するのを確実に抑えることができる。また、本実施形態では、このようにリブ13の根元13aへの応力集中を抑えることができるので、薄いスキン層11bを有する発泡樹脂材料11aを用いることができ、軽量化を図ることが可能となっている。
【0031】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。なお、以下の説明では、前記実施形態と略同様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0032】
前記実施形態では、1つのリブ13に1つの切欠133を設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば図3に示すように、1つのリブ13に2つ(複数)の切欠133を設けてもよい。これによれば、2つの切欠133に応力を分散させることができるので、リブ13の根元13aに加わる応力をより小さくすることができる。なお、切欠は、3つ以上設けてもよい。
【0033】
前記実施形態では、すべてのリブ13に切欠133を設けたが、本発明はこれに限定されず、少なくとも1つのリブに切欠を設ければよい。また、切欠の形状は、リブの途中で応力分散することが可能であれば、どのような形状であってもよい。
【0034】
前記実施形態では、ボス12の先端12aを溶着することで第2部材2の基部21に固定させたが、本発明はこれに限定されず、例えばボスを第2部材の基部にネジによって締結することで固定してもよい。
【0035】
なお、前記実施形態では、基部11を発泡樹脂材料11aで形成したが、本発明はこれに限定されず、非発泡のポリプロピレンのような樹脂材料で形成してもよい。ただし、前記実施形態のように発泡樹脂材料11aを使用した場合には、軽量化を図ることができるが、荷重が加わったときの強度が発泡しない樹脂材料よりも劣る分、本発明の効果による強度向上が特に有効となっている。
【符号の説明】
【0036】
1 第1部材
2 第2部材
11 基部
11a 発泡樹脂材料
11b スキン層
12 ボス
12a 先端
13 リブ
13a 根元
21 基部
130 縁部
131 支持部
132 側部
133 切欠
M 部材の固定構造


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部から突出するボスと、基部とボスを繋ぐようにボスから放射状に延びる複数のリブとを有する第1部材と、
前記リブの縁部が接触した状態で前記ボスの先端が固定される基部を有する第2部材とを備えた部材の固定構造であって、
前記リブの縁部のうち、前記ボスの先端側から前記第1部材の基部に向かって形成される部位であり、前記第1部材の基部と前記第2部材の基部との間に露出する部位には、切欠が形成されていることを特徴とする部材の固定構造。
【請求項2】
前記第1部材の基部は、
内部に複数の気泡を有する発泡樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の部材の固定構造。
【請求項3】
前記第1部材の基部は、前記発泡樹脂材料を挟み込む一対のスキン層を有し、
前記切欠を、前記リブの根元から前記リブが形成されている側のスキン層の厚み以上の高さに設けたことを特徴とする請求項2に記載の部材の固定構造。
【請求項4】
前記切欠を、1つのリブに対して複数設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の部材の固定構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−214651(P2011−214651A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82761(P2010−82761)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】