説明

部材の貫通孔構造の検査方法

従来技術による部材の貫通孔の検査方法は一般にサーモグラフによる詰まり検出に高温ガスを使用する。本発明による部材(10)の貫通孔構造の検査方法によれば、これは、カメラ(13)の波長範囲に少なくとも1つの吸収端を有する媒体が使用され、この媒体がカメラ画像(13)において不透明にて現われるようにすることによって簡単化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による部材の貫通孔構造の検査方法に関する。
【0002】
部材の貫通孔、例えばガスタービン翼のレーザによって穿孔された特に冷却孔は、しばしば円筒形とは異なる複雑な形状を有する。孔の有効通流直径、部材壁内での孔の姿勢、これらの孔のディフューザ(横断面積が拡張された流出範囲)の位置並びに姿勢および位置ずれが、例えば鋳造、レーザまたは腐食の各プロセスにおける許容誤差もしくはそれぞれの製造条件に基づいて変化する。
タービン翼のブレード輪郭における冷却空気孔の有効性は、これらの上述の寸法の複雑な相互作用からもたらされる。これらの上述の寸法は、今日の時点まで自動化することができず、大きな技術的労力なしに算定もしくは測定することはできなかった。
【0003】
従来の方法によれば、加熱された部材表面の検出を介して貫通孔の通過性が検査される。つまり、孔が詰まっている場合、貫通孔における材料の加熱が生じない。この方法の欠点は、僅かな開口(孔の部分閉鎖)も空気を通流させ、材料を加熱することにある。サーモグラフ画像においては、部分的に閉鎖された孔と開いた孔とを殆ど区別することができない。
【0004】
西独特許出願公開第3533186号明細書も独国特許出願公開第19720461号明細書も、加熱されたガスが冷却空気孔を通り抜けさせられるサーモグラフ法を開示している。温かい空気の供給は多大な装置費用を意味する。従来のサーモグラフ法は温かい空気によって加熱される部材表面の温度分布を検出する。しかしながら、得られた情報から、貫通孔の仕上がり状態を逆推論することはできない。
【0005】
従って、本発明の課題はこの問題を克服することにある。
【0006】
この課題は、請求項1による部材の貫通孔構造の検査方法によって解決される。
【0007】
従属請求項にはこの方法の他の有利な実施態様が記載されている。
【0008】
貫通孔から流出するガス煙の流れを、作成されたカメラ画像および画像解析によって視覚化すると、貫通孔の形成および姿勢に対する多数の情報が提供され、かつプロセスの制御および設計の検証が可能になる。
【0009】
図1は本発明による方法を実施することのできる装置1を示し、
図2は本発明による方法により撮影されたカメラ画像を示す。
【0010】
図1による装置1は、とりわけ、画面を備えたコンピュータ3を含み、このコンピュータ3にはカメラ13、例えば赤外線カメラ13が接続され、場合によっては照明源28および他の制御要素19が接続されている。
例えばコンピュータ3には部材10の内部における媒体(ガス、液体)の流れを制御する媒体供給装置7も接続されている。
部材10の表面22における貫通孔25(図2)から、この媒体は、例えば存在するディフューザのところで再び流出する。
【0011】
部材10すなわち少なくとも1つの貫通孔25が照射源28により照射される。照射源28は特定の波長範囲を有する。照射源28は周囲光であってもよい。照射源28の光線は部材10の表面22に当たり、そこで反射および吸収される。反射された光線はカメラ13によって撮影される。
媒体は、照射源28によって使用された1つ又は複数の波長の範囲に少なくとも1つの吸収線、吸収端または吸収帯を有する。
貫通孔25の範囲では媒体が照射源の光線を吸収するので、貫通孔25の範囲に現われる照射源28の光線は少なくとも弱められ、カメラ13には達しないかまたは弱められて達する。
従って、照射源28の波長または波長範囲はカメラ13によって識別可能である。
【0012】
部材10の表面22は例えば赤外線カメラ13によって撮影される。表面22全体を測定するために、例えば部材10は、移動可能な、例えば回転可能な位置調整ユニット16上に配置されている。部材10を固定配置し、赤外線カメラ13を部材10の表面22に対して相対的に移動させるようにしてもよい。部材10および位置調整ユニット16が3つの全ての空間方向に移動可能であってもよい。
媒体、例えばガスは、本発明によれば、照射源28の使用された1つ又は複数の波長の範囲に吸収能を有する。
媒体は、例えば、3〜5μmの波長範囲に吸収帯を有する二酸化炭素(CO2)である。従って、照射源28は3〜5μmの波長範囲に少なくとも1つの波長を有する。カメラは照射源28の少なくともこの1つの波長を識別することができる。
従って、カメラ画像において、このガスは不透明な物質として周囲から区別することができる。CO2ガスが特に適している。なぜならば、CO2ガスは例えば冷却媒体として用いられる空気と同じ流体動力学特性を有するからである。
個々の貫通孔25におけるカメラ画像の評価は、貫通孔25から流出する媒体の濃度分布もしくは伝播方向をもたらす。煙状のCO2の順次噴出時における濃度分布および濃度値の積分から、それぞれの貫通孔の量およびそれにともなう貫流容量の算定が可能である。この情報により、例えばレーザプロセスおよび腐食プロセスの製造パラメータを個々の貫通孔25に最適に適合させることができる。
【0013】
立体透視画による観察もしくはカメラ13および部材10の観察角度の変化は、ディフューザおよびこれに接する外側輪郭範囲にわたる媒体煙の3次元の広がりの算定を可能にする。これにより、例えば貫通孔25およびディフューザにおける流れ分布の数値モデルを検証することができる。
【0014】
更に、ガス煙の分析によって、孔直径に関する他のメッセージや流出角度等の流出特性への孔形状の影響を的確に捉えることができる。
【0015】
流れる媒体は、部材10と同一の温度を有することができ、従って従来の公知のサーモグラフ法と違って加熱される必要がない。
しかしながら、加熱によってカメラ13の使用された波長範囲に吸収帯が得られる場合、媒体を加熱してもよい。
温かいガスの流出挙動を検査するために、貫通孔25に温かいガスまたは流体を貫流させてもよい。例えば、室温よりも高い温度を有するガスも運転中にタービン翼の冷却孔を通して流れる。
【0016】
制御要素19は、例えばカメラ13、照射源28および部材10の運動と媒体流7とを互いに調整する。
【0017】
図2は、本発明による方法により撮影されたカメラ画像を示す。貫通孔25を備えた部材10の表面22上に、流出する媒体が、例えばはっきりと明るく現われる表面22に対して黒く現われる。
【0018】
貫通孔25から流出した後のガスの流出範囲も例えば周囲に対して黒く現われる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による方法を実施することのできる装置の概略構成図
【図2】本発明による方法により撮影されたカメラ画像を示す図
【符号の説明】
【0020】
1 本発明による方法を実施することのできる装置
3 コンピュータ
7 媒体供給装置
10 部材
13 カメラ
16 位置調整ユニット
19 制御要素
22 表面
25 貫通孔
28 照射源又は照明源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が貫通孔(25)を通して流出し、その間にカメラ(13)による部材(10)の視覚的な撮影が行なわれる部材(10)の貫通孔構造の検査方法において、部材(10)が照射源(28)により照射され、媒体が照射源(28)の少なくとも1つの波長に少なくとも1つの吸収線または吸収端または吸収帯を有することを特徴とする部材の貫通孔構造の検査方法。
【請求項2】
部材(10)は、貫通孔として冷却孔を備えたタービン翼であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
媒体としてガス状の二酸化炭素が使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
カメラ(13)にとって識別可能な波長は3〜5μmの波長範囲を含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
媒体は、媒体の範囲のカメラ画像が不透明に現われるように選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
カメラ(13)として赤外線カメラが使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
照射源(28)の少なくとも波長または波長範囲がカメラ(13)によって識別可能であることを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−518032(P2006−518032A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552454(P2004−552454)
【出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010172
【国際公開番号】WO2004/046700
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】