説明

部材キッティング指示装置及びこれを用いた部材キッティング指示システム

【課題】複数の作業者がキッティング作業を行う場合でも、効率よくキッティング作業を行えるようにした部材キッティング指示装置及びこれを用いた部材キッティング指示システムを得る。
【解決手段】制御装置10の制御機能1は、作業指示端末20からの加速度センサ22の出力を受けると、次のキッティング作業指示を出すべく、端末位置管理機能により、作業指示端末20の位置及び他の作業指示端末の位置を把握し、指示重複判定機能により作業指示端末20及び他の作業指示端末の位置が、予め設定された作業干渉範囲内にあるかどうかを判定し、作業干渉範囲内にある場合には、作業順序の変更を行ったのち、作業指示端末20にキッティング作業指示を送るとともに、作業対象部材が保管された部材識別装置30に配置された発光表示機31を点灯させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の部材を保管する倉庫から、必要な部材を取り出す場合に取り出す部材を指示する部材キッティング指示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の部材を保管する倉庫から必要なときに必要な部材を必要な個数取り出す作業であるキッティング作業が、キッティング指示装置の支援の下に行われていた。
従来のキッティング指示装置としては、複数の部材を保管する倉庫において、部材を収納している各棚にランプ、表示器を取付け、外部制御装置からのキッティング開始指示により、ランプを点灯させて、発光表示によりキッティング対象部品の位置を示してキッティングを支援するもの(例えば、特許文献1)や、また、ハンディーターミナル等の表示器に棚番、数量、商品コード等のキッティング情報を表示し、キッティングを支援するものなど、多数存在していた(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−345218号公報(第3〜4頁、図1)
【特許文献2】特開平4−129902号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のキッティング指示装置では、複数の作業者が同時にキッティング作業を行う状況下で、同時期に同じ種類、または収納棚が近接している部材に対してキッティングする状況が生じた場合には、対象部材の収納位置に設置してある発光表示機が発光したとしても、複数の作業者の内、どの作業者への指示であるかの判断が困難であり、固定端末及び携帯端末でいちいち収納位置を確認する作業が必要であり、キッティング作業の作業性を損ねていた。
また、ハンディーターミナル等の表示器に棚番、数量、商品コード等のキッティング情報を表示し、キッティングを支援するものでも、複数の作業者が同時にキッティング作業を行う場合には、キッティング作業が干渉するという問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、複数の作業者がキッティング作業を行う場合でも、効率よくキッティング作業を行えるようにした部材キッティング指示装置及びこれを用いた部材キッティング指示システムを得ることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる部材キッティング指示装置においては、キッティング作業の対象部材が保管された保管装置に配置された発光表示機を点灯させる発光手段、
キッティング作業を行う作業者が保持する作業指示端末にキッティング作業指示を伝達する伝達手段、
作業指示端末の位置情報を受信する位置情報受信手段、
作業指示端末からのキッティング作業の完了通知を受信する作業完了受信手段、
この作業完了受信手段からの完了通知の受信に応じて、作業指示端末の位置を把握し、キッティング作業の対象部材及び作業順序が予め定められたキッティングリストを基にして、伝達手段に次のキッティング作業指示を伝達させるとともに発光手段に次のキッティング作業に対応する発光表示機を点灯させるよう、制御する制御手段を備え、
制御手段は、
2つのキッティング作業が干渉する保管装置の作業範囲を作業干渉範囲として予め設定する作業干渉範囲設定手段と、
位置情報受信手段により作業指示端末の位置情報を受信したとき、作業干渉範囲内に他の作業指示端末が存在するかどうかを判定する指示重複判定手段と、
この指示重複判定手段によって作業干渉範囲内に他の作業指示端末が存在すると判定された場合に、キッティング作業の作業順序を変更する作業順序変更手段とを有し、
作業順序変更手段により作業順序が変更された場合には、次のキッティング作業を作業順序が変更されたキッティング作業とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、キッティング作業の対象部材が保管された保管装置に配置された発光表示機を点灯させる発光手段、
キッティング作業を行う作業者が保持する作業指示端末にキッティング作業指示を伝達する伝達手段、
作業指示端末の位置情報を受信する位置情報受信手段、
作業指示端末からのキッティング作業の完了通知を受信する作業完了受信手段、
この作業完了受信手段からの完了通知の受信に応じて、作業指示端末の位置を把握し、キッティング作業の対象部材及び作業順序が予め定められたキッティングリストを基にして、伝達手段に次のキッティング作業指示を伝達させるとともに発光手段に次のキッティング作業に対応する発光表示機を点灯させるよう、制御する制御手段を備え、
制御手段は、
2つのキッティング作業が干渉する保管装置の作業範囲を作業干渉範囲として予め設定する作業干渉範囲設定手段と、
位置情報受信手段により作業指示端末の位置情報を受信したとき、作業干渉範囲内に他の作業指示端末が存在するかどうかを判定する指示重複判定手段と、
この指示重複判定手段によって作業干渉範囲内に他の作業指示端末が存在すると判定された場合に、キッティング作業の作業順序を変更する作業順序変更手段とを有し、
作業順序変更手段により作業順序が変更された場合には、次のキッティング作業を作業順序が変更されたキッティング作業とするので、複数の作業者がキッティング作業を行う場合でも、効率よくキッティング作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による部材キッティング指示システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による部材キッティング指示装置の制御機能を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による部材キッティング指示装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1について、図に基づき説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による部材キッティング指示システムを示す構成図である。
図1において、部材キッティングシステムは、部材の保管エリアに配置され、各トレー内に種類の同じ複数の部材を保管する部材識別装置30(保管装置)と、作業者によって保持され、作業者にキッティング作業指示を行う作業指示端末20と、天井などに配置され、作業指示端末20のRFID(radio frequency identification)タグからの識別コードを読み取るRFIDターミナル40と、作業指示端末20からの情報を元にして、部材識別装置30と作業指示端末20を制御する制御装置10とにより構成されている。この制御装置10が部材キッティング指示装置である。
【0010】
部材識別装置30は、倉庫などの棚に配置され、それぞれ1種類の部材を複数保管するトレーごとにキッティング作業位置を知らせる発光表示機31が設けられている。この発光表示機31は識別できるように識別コードがそれぞれに設定されている。
作業指示端末20は、作業者によって保持され、作業指示端末20の位置を知らせるために識別コードを発信するRFIDタグ21と、作業指示端末20に加わる外力(加速度)を検出する加速度センサ22と、キッティング開始指示の情報を表示する表示部23とが設けられている。RFIDタグ21は、ICと小型アンテナが組み込まれたタグで、電波を介して情報を発信するようになっている。作業指示端末20は、さらに、加速度センサ22の出力を識別コードとともに制御装置10に送信し、制御装置10から識別コードとともにキッティング作業指示を受信するための通信機能を有している。
RFIDターミナル40は、RFIDタグ21からの識別コードを読み取り、作業指示端末20の位置を把握するようになっている。
【0011】
制御装置10は、記憶装置を有するコンピュータによって形成され、次のように構成されている。
制御装置10の各機能は、CPUを有する制御機能1(制御手段)によって制御される。制御機能1は、予め作成されたキッティングリスト12を基にして、キッティング作業を指示するが、詳細については図2に示す。
外力受信機能2(作業完了受信手段)は、作業指示端末20の加速度センサ22にて検出される外力の情報を作業指示端末20から受信する。端末位置受信機能4(位置情報受信手段)は、RFIDターミナル40を介して、複数の作業指示端末20より伝達される各作業指示端末20の識別コード及び位置情報を受信する。
伝達機能9(伝達手段)は、キッティング作業位置、キッティング数量等のキッティング開始指示を識別コードとともに、無線通信により作業指示端末20に伝送する。発光機能11(発光手段)は、無線または有線による通信により、識別コードによって発光表示機31を特定し、キッティング作業位置の発光表示機31を発光させる。
【0012】
図2は、この発明の実施の形態1による部材キッティング指示装置の制御機能を示す構成図である。
図2において、CPUを有する制御機能1は、キッティング情報管理機能3と、端末位置管理機能5と、作業干渉範囲設定機能6(作業干渉範囲設定手段)と、指示重複判定機能7(指示重複判定手段)と、作業順序変更機能8(作業順序変更手段)とを有する。
キッティング情報管理機能3は、キッティング開始前に外部から予め与えられるキッティング作業位置、キッティング数量、キッティング作業順序、等の情報を纏めたキッティングリスト12を管理する。このキッティングリストは例えばオーダごとに作成され、記憶装置に格納される。端末位置管理機能5は、端末位置受信機能4により受信された作業指示端末20の識別コード及び位置情報を基に、作業指示端末20間の位置関係を管理する。
作業干渉範囲設定機能6は、キッティング作業を指示するときの作業位置が重複することにより作業性の低下を招く恐れのある作業干渉範囲を予め設定しておく。指示重複判定機能7は、ある1つのキッティング作業位置を決定しようとしたとき、この作業位置に対して、上述した作業干渉範囲に他の作業指示端末20への指示が重複しているか否かの判定をする。
作業順序変更機能8は、指示重複判定機能7の判定で、作業指示端末20への指示が重複していれば、作業干渉範囲外にある別のキッティング作業位置の作業になるようにキッティング作業順序を変更する。
伝達機能9は、指示重複判定機能7の判断で、作業指示端末20への指示が位置的に重複していなければ、キッティング作業位置、キッティング数量等のキッティング開始指示を作業指示端末20に伝達する。発光機能11は、伝達機能9による伝達と同時にキッティング作業位置の発光表示機31を発光させる。
【0013】
図3は、この発明の実施の形態1による部材キッティング指示装置の動作を示すフローチャートである。
【0014】
次に、動作について、図3のフローチャートに従って説明する。図3では、作業者と制御装置10の動作を説明している。
本発明におけるキッティング作業においては、作業者は、作業指示端末20を1人1台ずつ携帯することとし、作業指示端末20は、作業者の数だけ存在するが、便宜上1台のみのフローにて説明する。
まず、作業者は作業指示端末20を振ることで(A)、作業指示端末20の加速度センサ22が外力を感知し、制御装置10へキッティング開始要求を入力し、キッティング作業が開始される(ST1)。また、この外力を感知することで、同時に制御装置10は、作業者が携帯する作業指示端末20のRFIDタグ21からの電波により作業指示端末20の位置を把握する(ST2)。
【0015】
次に、予め与えられたキッティングリストの作業順序に従い、先頭順位の1部材をキッティング開始指示の暫定候補として決定する(ST3)。次に、この暫定候補に対して、キッティング作業開始前に予め設定した作業干渉範囲に、すでにキッティング作業を行っている他の作業指示装置20が存在しないかどうかを判別する(ST4)。その結果、存在しなければ(ST4:YES)、この暫定候補をキッティング開始部材と決定し(ST5)、作業指示端末20の表示部23にキッティング作業位置、数量等の情報を伝達表示させ(ST6−1)、また、同時に対象部材を保管しているキッティング作業位置に設置している部材識別装置30の発光表示機31を発光表示させ(ST6−2)、この指示に従って、作業者はキッティング作業を開始する(B)。
【0016】
一方、作業干渉範囲内にある他の作業指示端末20への作業指示が存在すれば(ST4:NO)、次の作業順序の部材に移ることとするが、まず、キッティングリストに、次に作業予定の未作業の部材が残っているか否かの判定をする(ST7)。残っていれば(ST7:YES)、作業順序を1つ下げ(ST8)、この部材を暫定候補と決定し(ST3)、以下、同様にキッティング開始指示の重複判定を行い、キッティング開始部材を決定し、作業を進めていく。
一方、キッティングリスト内に次に作業予定の未作業が残っていなければ(ST7:NO)、キッティングリストの作業順序の先頭に戻り(ST9)、キッティング開始部材が決定するまで、キッティング開始指示の重複判定を繰り返す。
これらの動作により、作業者間での作業干渉を避けたキッティング開始指示が可能となり、作業待ちによるロス軽減、作業能率向上に繋がる。
【0017】
次に、1つの部材に対するキッティング作業が完了すると(C)、作業指示端末20を振り(D)、制御装置10にキッティング作業完了入力を行い(ST10)、キッティングリストから完了した部材を削除する(ST12)。また同時に、作業指示端末20の位置を把握する(ST11)。
そして、最後に、全ての部材に対してキッティング作業を行ったか否かの完了判定を実施し(ST13)、全部材への作業が完了していれば(ST13:YES)、キッティング指示を終了する、
一方、作業が完了していなければ(ST13:NO)、キッティングリストの作業順序の先頭に戻り、以下、同様にキッティング開始部材を決定し、作業を繰り返す。
【0018】
これにより、複数種類の部材の保管エリア内において、複数のキッティング作業者が作業指示端末20を1台ずつ携帯し、作業指示端末20からのキッティング開始指示に従い、各々が異なるキッティング作業を同時期に並行して行う環境下で、1種類の部材のキッティング作業が終わるたびに各作業者の位置関係を把握し、このため、次のキッティング開始指示を与える時に、作業者間での作業干渉を避けたキッティング作業開始指示を行うことが可能となる。これにより、キッティング作業待ちによるロスが軽減され、作業能率の向上に繋がる。
また、加速度センサ22を用いることで、ボタンを押す等の動作をすることなく、作業指示端末20を振るという簡単な動作により、制御装置10への作業進捗情報の伝達が可能となり、次のキッティング作業へと円滑な移行が行える。
【0019】
なお、上述の実施の形態1の説明では、作業指示端末20に加速度センサ22を設けたが、これに替えて、作業指示端末20上にて作業開始/完了を登録するための押しボタンを設けても、同様の効果を得ることができる。
【0020】
実施の形態1によれば、1種類の部材のキッティングが終わるたびに作業者の位置を把握し、保管エリアでの作業者同士のキッティング作業の干渉が起こらないように発光表示機を点灯させるようにしたので、複数の作業者によるキッティング作業を効率化することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 制御機能
2 外力受信機能
3 キッティング情報管理機能
4 端末位置受信機能
5 端末位置管理機能
6 作業干渉範囲設定機能
7 指示重複判定機能
8 作業順序変更機能
9 伝達機能
10 制御装置
11 発光機能
12 キッティングリスト
20 作業指示装置
21 RFIDタグ
22 加速度センサ
23 表示部
30 部材識別装置
31 発光表示機
40 RFIDターミナル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッティング作業の対象部材が保管された保管装置に配置された発光表示機を点灯させる発光手段、
上記キッティング作業を行う作業者が保持する作業指示端末にキッティング作業指示を伝達する伝達手段、
上記作業指示端末の位置情報を受信する位置情報受信手段、
上記作業指示端末からのキッティング作業の完了通知を受信する作業完了受信手段、
この作業完了受信手段からの上記完了通知の受信に応じて、上記作業指示端末の位置を把握し、キッティング作業の対象部材及び作業順序が予め定められたキッティングリストを基にして、上記伝達手段に次のキッティング作業指示を伝達させるとともに上記発光手段に上記次のキッティング作業に対応する上記発光表示機を点灯させるよう、制御する制御手段を備え、
上記制御手段は、
2つのキッティング作業が干渉する上記保管装置の作業範囲を作業干渉範囲として予め設定する作業干渉範囲設定手段と、
上記位置情報受信手段により上記作業指示端末の位置情報を受信したとき、上記作業干渉範囲内に他の作業指示端末が存在するかどうかを判定する指示重複判定手段と、
この指示重複判定手段によって上記作業干渉範囲内に他の作業指示端末が存在すると判定された場合に、上記キッティング作業の作業順序を変更する作業順序変更手段とを有し、
上記作業順序変更手段により作業順序が変更された場合には、上記次のキッティング作業を上記作業順序が変更されたキッティング作業とすることを特徴とする部材キッティング指示装置。
【請求項2】
請求項1記載の部材キッティング指示装置、
キッティング作業を行う作業者によって保持され、上記部材キッティング指示装置によって指示されるキッティング作業指示を表示する表示部を有する作業指示端末、
上記キッティング作業の対象部材が保管された保管装置に配置され、上記キッティング作業制御装置によって点灯される発光表示機を備えたことを特徴とする部材キッティング指示システム。
【請求項3】
上記作業指示端末は、外力の加わったことを検出する加速度センサを有し、
上記キッティング作業の完了時に上記作業指示端末が振られることにより、上記キッティング作業の完了が上記部材キッティング指示装置に伝達されることを特徴とする請求項2記載の部材キッティング指示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−143976(P2011−143976A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3916(P2010−3916)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】