説明

配合組成物

【課題】抗菌・殺菌作用を有するカチオン性界面活性剤の抗菌・殺菌作用を向上させ、低濃度での効果的な抗菌・殺菌作用を実現し、皮膚や眼等に対しても安全性の高い配合組成物を提供する。
【解決手段】抗菌・殺菌作用を有する特定のカチオン性界面活性剤、および特定のノニオン性界面活性剤を含有する配合組成物に関する。カチオン性界面活性剤の重量濃度が0.1〜5.0ppmであることが好ましく、前記カチオン性界面活性剤1重量部に対して、前記ノニオン性界面活性剤が3重量部以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカチオン性界面活性剤の抗菌活性を、ノニオン性界面活性剤によって向上させた配合組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カチオン性界面活性剤は抗菌・殺菌作用を有することから、従来、抗菌剤、殺菌剤、消毒剤等として使用されている。例えば、家庭での食器等の家庭用洗浄剤、水洗トイレ用洗浄剤、芳香剤や消臭剤、化粧品、シャンプー、リンス、繊維や合成樹脂、木材、日用品等の抗菌加工、食品工業用洗浄剤、医療器具類や患部の消毒剤、医療用洗浄剤、環境用除菌剤等に幅広く使用されている。
【0003】
従来から抗菌剤等として使用されているカチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩(臭化セチルアンモニウム)、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)、アルキルピリジニウム塩(セチルピリジニウムクロライド)等の第4級アンモニウム塩が挙げられる(例えば、非特許文献1等参照)。
【0004】
しかしながら、これらの第4級アンモニウム塩は、皮膚や眼等への刺激が大きいなど人体に対する安全性について欠点があった。また、その他の界面活性剤などでも、高濃度で使用することが多く、やはり人体に対する安全性について欠点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「防菌防黴剤事典−原体編−」、日本防菌防黴学会、1998年3月20日発行、P51〜55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定のカチオン性界面活性剤の抗菌・殺菌作用を向上させ、低濃度での効果的な抗菌・殺菌作用を実現し、皮膚や眼等に対しても安全性の高い配合組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく検討したところ、特定のカチオン性界面活性剤に、特定のノニオン性界面活性剤を配合すると、カチオン性界面活性剤の抗菌・殺菌作用を向上させることができるので、低濃度で使用でき、皮膚や眼等への刺激性を低減できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、
下記一般式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、Rと同一であっても異なっていてもよい。RとRは炭素数1〜4のアルキル基であって、同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオンであり、ハロゲンイオンまたはヒドロキシイオンである。)で表される化合物、および
下記一般式(2):
【化2】

(式中Rは、直鎖又は分岐状の炭素数12〜18のアルキル基を示し、nおよびmは任意の整数である。)
で表され、HLBが5〜15である化合物
を含有する配合組成物に関する。
【0009】
一般式(1)において、RおよびRで表される置換基が炭素数8〜18のアルキル基であり、RおよびRで表される置換基がメチル基であることが好ましい。
【0010】
一般式(2)において、Rで表される置換基が直鎖状の炭素数12〜16のアルキル基であることが好ましい。
【0011】
また、一般式(1)で表される化合物の重量濃度が0.1〜5.0ppmであることが好ましい。
【0012】
さらに、一般式(1)で表される化合物1重量部に対して、一般式(2)で表される化合物が3重量部以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定のカチオン性界面活性剤に、特定のノニオン性界面活性剤を配合することにより、カチオン性界面活性剤の抗菌・殺菌作用を向上させることができることから、低濃度でも抗菌・殺菌作用を発揮し、皮膚や眼等に使用した場合であっても刺激を抑えることができる。そのため、本発明の配合組成物は、家庭での食器等の家庭用洗浄剤、水洗トイレ用洗浄剤、芳香剤や消臭剤、化粧品、シャンプー、リンス、繊維や合成樹脂、木材、日用品等の抗菌加工、食品工業用洗浄剤、医療器具類や患部の消毒剤、医療用洗浄剤、環境用除菌剤等に広く好適に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の配合組成物は、下記一般式(1):
【化3】

(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、Rと同一であっても異なっていてもよい。RとRは炭素数1〜4のアルキル基であって、同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオンであり、ハロゲンイオンまたはヒドロキシイオンである。)
で表される化合物、および
下記一般式(2):
【化4】

(式中Rは、直鎖又は分岐状の炭素数12〜18のアルキル基を示し、nおよびmは任意の整数である。)
で表され、HLBが5〜15である化合物
を含有する。ここで、前記一般式(1)で表される化合物は、本明細書中において「化合物(1)」といい、前記一般式(2)で表され、HLBが5〜15である化合物は、本明細書中において「化合物(2)」という。
【0015】
前記化合物(1)はカチオン性界面活性剤であり、配合組成物において抗菌・殺菌作用を奏する有効成分として機能する。抗菌・殺菌作用を有するカチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の芳香族置換基を有するカチオン性界面活性剤も知られているが、これらの界面活性剤では、前記化合物(2)であるノニオン性界面活性剤を配合することによる抗菌・殺菌作用の向上効果は見られない。
【0016】
前記一般式(1)において、Rは炭素数8〜18のアルキル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、Rと同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜4又は炭素数8〜18のアルキル基が好ましく、炭素数8〜18のアルキル基がより好ましい。また、RとRは炭素数1〜4のアルキル基であって、同一であっても異なっていてもよく、メチル基が好ましい。Xは対イオンであり、ハロゲンイオンまたはヒドロキシイオンである。ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン、塩化物イオン、臭化物イオンが挙げられる。このようなカチオン性界面活性剤であれば、化合物(2)を配合することによって、優れた抗菌・殺菌作用が発揮される。
【0017】
化合物(1)の具体例としては、たとえばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジミリスチルジメチルアンモニウムクロライド、ジセチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらの中でも、化合物(2)との併用によって抗菌・殺菌作用がより向上される点で、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよびジデシルジメチルアンモニウムクロライドが好ましく、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
【0018】
前記化合物(2)は、ノニオン性界面活性剤であり、Rは直鎖又は分岐状(イソ型)のいずれでも使用することができる。
【0019】
前記一般式(2)において、Rは直鎖又は分岐状(イソ型)の炭素数12〜18のアルキル基を示す。Rの炭素数が11以下および19以上であるアルキル基では、化合物(1)の抗菌・殺菌作用を向上させることができない。Rで表される置換基が直鎖状の場合、炭素数12〜16のアルキル基が好ましく、炭素数12〜14のアルキル基がより好ましい。Rで表される置換基が分岐状(イソ型)の場合、炭素数14〜18のアルキル基が好ましく、炭素数16〜18のアルキル基がより好ましい。
【0020】
前記化合物(2)はHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)が、5〜15である。HLBが5未満又は15を超えると、化合物(1)の抗菌・殺菌作用を向上させることができない。ここで、化合物(2)において、エチレンオキシド(EO)やプロピレンオキシド(PO)の付加モル数とHLBは概ね相関することが知られており、HLBの調整のためにEOやPOの付加モル数を変更することは、当該分野で周知の方法により行うことができる。また、HLB値は、当該分野で周知のいくつかの方法により算出することができるが、本発明においてはグリフィン法により算出した。
【0021】
一般式(2)において、nおよびmは任意の整数であるが、とくにRが直鎖状である場合、nは2〜11の整数であることが好ましく、mは0〜7であることが好ましい。また、n+m=2〜11を満たすことがより好ましい。化合物(2)において、エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム又はブロック付加体のいずれであってもよく、Rにプロピレンオキシドが直接結合したものも含まれる。
【0022】
化合物(2)の具体例としては、たとえばPOEラウリルエーテル、POEトリデシルエーテル、POEミリスチルエーテル、POEペンタデシルエーテル、POEセチルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEイソラウリルエーテル、POEイソトリデシルエーテル、POEイソミリスチルエーテル、POEイソペンタデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソオレイルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEアルキル(C12〜13)エーテル、POEアルキル(C12〜14)エーテル、POEアルキル(C12〜15)エーテル、POEアルキル(C14〜15)エーテル、POEアルキル(C16〜18)エーテル、POE・POPラウリルエーテル、POE・POPトリデシルエーテル、POE・POPミリスチルエーテル、POE・POPペンタデシルエーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPオレイルエーテル、POE・POPステアリルエーテル、POE・POPイソラウリルエーテル、POE・POPイソトリデシルエーテル、POE・POPイソミリスチルエーテル、POE・POPイソペンタデシルエーテル、POE・POPイソセチルエーテル、POE・POPイソオレイルエーテル、POE・POPイソステアリルエーテル、POPラウリルエーテル、POPトリデシルエーテル、POPミリスチルエーテル、POPペンタデシルエーテル、POPセチルエーテル、POPオレイルエーテル、POPステアリルエーテル、POPイソラウリルエーテル、POPイソトリデシルエーテル、POPイソミリスチルエーテル、POPイソペンタデシルエーテル、POPイソセチルエーテル、POPイソオレイルエーテル、POPイソステアリルエーテル等が挙げられる。これらの中でも化合物(1)の抗菌・殺菌作用がより向上される点で、POEラウリルエーテル、POEトリデシルエーテル、POEミリスチルエーテル、POEペンタデシルエーテル、POEセチルエーテル、POEイソミリスチルエーテル、POEイソペンタデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソオレイルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POE・POPラウリルエーテル、POE・POPトリデシルエーテル、POE・POPミリスチルエーテル、POE・POPペンタデシルエーテルおよびPOE・POPセチルエーテルが好ましく、POEラウリルエーテル、POEイソステアリルエーテルおよびPOE・POPラウリルエーテルが特に好ましい。
【0023】
ここで、「POE」はポリオキシエチレンを、「POP」はポリオキシプロピレンを示す。
【0024】
本発明においては、化合物(1)と化合物(2)とを併用することで、化合物(1)の抗菌・殺菌作用を向上させることができる。そのため、化合物(1)の濃度は、特に限定されないが、0.1〜5.0ppmであることが好ましく、0.1〜3.0ppmであることがより好ましい。下限は0.3ppmがより好ましい。上限は2.0ppmがより好ましく、1.0ppmがさらに好ましく、0.8ppmが特に好ましい。この範囲内であれば、化合物(2)と併用したときの化合物(1)の抗菌・殺菌作用の向上効果がより顕著である。また、従来、この範囲内であれば、化合物(1)の抗菌・殺菌作用は見られなかったが、化合物(2)と併用すると、このような低濃度の範囲内でも抗菌・殺菌作用に優れる組成物とすることができる。このことから、従来、抗菌・殺菌作用がないとして使用されてこなかった低濃度であっても、本発明によれば使用可能である。そして、組成物中への抗菌剤の配合量については、人体への安全性を考慮して限りなく低濃度であることが求められるが、本発明によれば、低濃度で安全性および抗菌性ともに優れる組成物を得ることができる。
【0025】
ここで、化合物(1)の濃度は、使用時の濃度であって、例えば、濃縮洗浄剤など、使用時に水で希釈されることを想定した組成物においては希釈後の濃度を意味する。例えば、トイレ用洗浄剤のうち、容器に充填し、水洗トイレのタンク上部の手洗い部に備え付けて使用される、いわゆるオンタンク型の液体洗浄組成物の場合、フラッシュによって水を流すと、容器内の組成物が一定量排出され、水と一緒にタンク内に溜まるが、この時のタンク内の濃度を意味する。
【0026】
また、本発明の配合組成物は、化合物(1)1重量部に対して、化合物(2)が3重量部以上配合されることが好ましく、その上限としては30重量部が好ましく、25重量部がより好ましい。化合物(2)の濃度が30重量部を超えると、組成物としては優れた抗菌・殺菌作用を有するものの、化合物(2)の配合量あたりの抗菌・殺菌作用の向上効果が抑えられる傾向がある。具体的には、化合物(1)の濃度が0.3ppmである場合、化合物(2)を1〜8ppm程度配合することが好ましい。
【0027】
本発明の配合組成物には、必要に応じて、機能性成分、pH調整剤、キレート剤、粘度調整剤、懸濁剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等の色素等の成分を適当量含有することもできる。機能性成分としては、たとえば芳香成分、消臭成分、防虫成分等が挙げられる。芳香成分としては、例えば、ラベンダー、レモン、オレンジ、ジャスミン、ペパーミント等の天然香料;リモネン、ターピノレン、ゲラニオール、シトロネロール、酢酸エチル等の合成香料; 及びこれらのブレンド香料等が挙げられる。また、消臭成分としては、例えば、イネ、松、ヒノキ、笹等の植物の抽出物; 脱塩型ベタイン化合物;変性有機酸化合物;トリエタノールアミン;安定化二酸化塩素;アルデヒド化合物等が挙げられる。防虫成分としては、例えば、ヒノキチオール、ヒバ油、アリルイソチオシアネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、プロパノール、1,8−シネオール等が挙げられる。これらの機能性成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明の配合組成物は、抗菌剤、殺菌剤、消毒剤等として使用される。例えば、家庭での食器等の家庭用洗浄剤、水洗トイレ用洗浄剤などの洗浄剤類、芳香剤や消臭剤、化粧品、シャンプー、リンス、繊維や合成樹脂、木材、日用品等の抗菌加工、食品工業用洗浄剤、医療器具類や患部の消毒剤、医療用洗浄剤、環境用除菌剤等に広く使用できる。
【実施例】
【0029】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1
滅菌精製水(大塚製薬株式会社製)を用いて、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(一般式(1)において、R、R=デシル基、R、R=メチル基)(三洋化成工業株式会社製)の6000ppm水溶液を調製した。調製した6000ppm水溶液を100倍希釈して60ppm水溶液とした後、さらに100倍希釈して0.6ppm水溶液を調製した。その水溶液に、表1に記載したポリオキシエチレンラウリルエーテル(一般式(2)において、R=ラウリル基)(ブラウノンEL−1502.2、青木油脂工業株式会社製)を各濃度(4、6、8、10ppm)となるように添加、撹拌して配合組成物を作製した。
【0031】
実施例2〜9および比較例1〜7
ブラウノンEL−1502.2の代わりに、表1に記載した一般式(2)で表される化合物(ノニオン性界面活性剤)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で配合組成物を作製した。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例10〜12および比較例8〜10
ブラウノンEL−1502.2の代わりに、表2に記載した一般式(2)で表される化合物(ノニオン性界面活性剤(Rが分岐状))を使用した以外は、実施例1と同様の方法で配合組成物を作製した。
【0034】
【表2】

【0035】
(評価方法)
得られた配合組成物の殺菌効果を、以下の方法で評価した。
【0036】
(1)被検菌株として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732)を用い、本菌株をSCD寒天培地(Soybean−Casein Digest Agar、日本製薬株式会社製)に白金耳で画線し、35℃で18〜24時間前培養した。
【0037】
(2)前培養した被検菌株をニュートリエントブロス培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)に約10cfu/mlとなるように懸濁した(以下、菌液とする)。
【0038】
(3)50ml容の滅菌遠沈管(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)に、以下のA〜Dの各溶液を9.9ml分注した。その後、各遠沈管に菌液0.1mlをそれぞれ接種して、10mlとし、25℃で3時間静置培養した。
A溶液:滅菌生理食塩水(大塚製薬株式会社)のみ(ブランク)
B溶液:0.3ppmジデシルジメチルアンモニウムクロライド(化合物(1))のみの水溶液
C溶液:4〜10ppm濃度の各種ノニオン性界面活性剤(表1および2に記載の一般式(2)で表される化合物)のみの水溶液
D溶液:実施例1〜12及び比較例1〜10の水溶液
【0039】
(4)接種3時間後のA〜Dの各溶液から0.1mlずつを採取し、適宜リン酸緩衝生理食塩水(和光純薬工業株式会社)を用いて希釈系列を調製した後、原液および各希釈液0.1mlをそれぞれSCDLP寒天培地(Soybean−Casein Digest Agar with Lecithin&Polysorbate 80、日本製薬株式会社)に塗抹し、35℃で18〜24時間培養して生菌数をそれぞれ測定した。
【0040】
(5)以下の式に従いB〜Dの各溶液の抗菌活性値を算出した。各溶液において、抗菌活性値が大きい、即ち、ブランクAに対して生菌数の減少が大きいほど、抗菌性が高いことを示す。
抗菌活性値=log[A(滅菌生理食塩水のみ)の菌数]―log[B〜Dの各溶液それぞれの菌数]
【0041】
算出したB〜Dの各溶液の抗菌活性値を用いて、一般式(2)で表される化合物との併用による、化合物(1)の抗菌・殺菌作用の向上効果を算出した。D溶液(化合物(1)と一般式(2)で表される化合物とを含む水溶液)の抗菌活性値dからB溶液(化合物(1)のみの水溶液)の抗菌活性値bを差し引いた値(d−b)を「向上効果値」として求め、得られた向上効果値を以下の判定基準によって評価した。
【0042】
向上効果値の判定基準:
1未満 : ×
1以上1.5未満 : △
1.5以上2.0未満 : 〇
2.0以上 : ◎
【0043】
また、「向上効果値」をD溶液中の一般式(2)で表される化合物の各濃度で除算し、「一般式(2)で表される化合物1ppm当たりの抗菌活性値」を算出した。
【0044】
その評価結果を表1および2に示す。括弧内の数値は「一般式(2)で表される化合物1ppm当たりの抗菌活性値」を示す。
【0045】
表1および2に示したとおり、化合物(2)と併用することで、化合物(1)の抗菌・殺菌作用を向上させることができた。また、組成物として優れた抗菌・殺菌作用を有する場合でも、化合物(1)0.3ppmに対して、化合物(2)を10ppm配合すると、「化合物(2)1ppm当たりの抗菌活性値」が抑えられる傾向が見られた。すなわち、化合物(1)1重量部に対して、化合物(2)3〜30重量部程度である場合にとくに優れた抗菌・殺菌作用の向上効果が発揮され、化合物(1)0.3ppmに対しては、化合物(2)が1ppm〜8ppmの場合にとくに好ましかった。
【0046】
さらに、化合物(1)として、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドに代えて、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドおよびジアルキルジメチルアンモニウムクロライド(C=12〜18混合品)等でも実施したところ、同様に優れた抗菌・殺菌作用の向上効果を示したが、なかでもジデシルジメチルアンモニウムクロライドがとくに良好な向上効果を示した。一方、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等では、化合物(2)を配合することによる向上効果は得られなかった。
【0047】
本発明の配合組成物について、前述した実施例以外の処方例を、処方例1〜91として以下に示す。なお、表中の各成分の単位はppmである。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
【表10】

【0056】
処方例1〜91において、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドに代えて、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド(C=12〜18混合品)を配合した組成物を調製した。さらに、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドの濃度について、0.1ppm、0.5ppm、0.8ppm、1.0ppm、2.0ppm、3.0ppm、5.0ppmとし、表3〜10に記載した化合物(2)と1:3〜1:30の割合になるように混合して配合組成物を調製した。
【0057】
いずれも、抗菌活性について実施例と同様の効果を示し、とくに化合物(1)を0.1〜3.0ppmとしたときに、化合物(2)との併用による抗菌・殺菌作用の向上効果に優れていた。また、化合物(1)のなかでは、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドが優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、特定のカチオン性界面活性剤の抗菌・殺菌作用を向上させることができることから、より少量のカチオン性界面活性剤でも優れた抗菌・殺菌作用を発揮し、同じ抗菌・殺菌力で比較すると、従来にくらべて皮膚や眼等への刺激性を低減することができる。よって、本発明の配合組成物は、家庭での食器等の家庭用洗浄剤、水洗トイレ用洗浄剤、芳香剤や消臭剤、化粧品、シャンプー、リンス、繊維や合成樹脂、木材、日用品等の抗菌加工、食品工業用洗浄剤、医療器具類や患部の消毒剤、医療用洗浄剤、環境用除菌剤等に広く好適に使用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、Rと同一であっても異なっていてもよい。RとRは炭素数1〜4のアルキル基であって、同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオンであり、ハロゲンイオンまたはヒドロキシイオンである。)
で表される化合物、および
下記一般式(2):
【化2】

(式中Rは、直鎖又は分岐状の炭素数12〜18のアルキル基を示し、nおよびmは任意の整数である。)
で表され、HLBが5〜15である化合物
を含有する配合組成物。
【請求項2】
一般式(1)において、RおよびRで表される置換基が炭素数8〜18のアルキル基であり、RおよびRで表される置換基がメチル基である請求項1記載の配合組成物。
【請求項3】
一般式(2)において、Rで表される置換基が直鎖状の炭素数12〜16のアルキル基である請求項1または2記載の配合組成物。
【請求項4】
一般式(1)で表される化合物の重量濃度が0.1〜5.0ppmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の配合組成物。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物1重量部に対して、一般式(2)で表される化合物が3重量部以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の配合組成物。

【公開番号】特開2011−73981(P2011−73981A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224246(P2009−224246)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】