説明

配筋情報取得装置及び配筋情報取得方法

【課題】立体的に配置された鉄筋の配筋情報を取得する。
【解決手段】撮影者は、撮影対象部位2を決定し(S702)、撮影対象部位2の鉄筋のうち、4隅の鉄筋にマーカMKを取り付け、1の鉄筋に方位確認用マーカDMKを取り付ける(S703)。次に、鉄筋内側の中心部付近に全方位カメラ3を挿入し(S706)、その中心部から360度全周囲の鉄筋を全方位カメラ3で撮影し(S707)、撮影した全周囲画像のデータを全方位カメラ3から携帯端末4に取り込む(S708)。携帯端末4は、取り込まれた全周囲画像を方位確認用マーカDMKに基づいて平面画像に展開する(S709)。続いて、展開した平面画像において方位確認用マーカDMK及びマーカMKを検出することにより、その平面画像を4面の画像に分割する(S710)。さらに、分割した各面の画像に対して画像処理を行い、鉄筋の径長やピッチを計算する(S711)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における鉄筋の本数、径長、間隔、材質等の配筋情報を取得する配筋情報取得装置及び配筋情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事の現場においては、鉄筋コンクリート構造物の鉄筋を撮影し、その撮影した画像をコンピュータで処理すること(画像処理)により、鉄筋の本数、径及びピッチを計測する。そのとき、撮影対象となる鉄筋(対象鉄筋)は、通常、後方に位置する別の鉄筋や、様々な背景と重なるので、対象鉄筋の画像が不鮮明になり、画像処理の結果として計測される径長等の精度が悪くなる。そこで、画像処理による計測結果の精度を向上させるために、対象鉄筋だけを鮮明に撮影できるように、その後方に白いボードを設置するとともに、マーカを対象鉄筋に貼付する必要がある。特許文献1には配筋情報取得装置及びその方法が開示されており、段落0032にはマーカの貼付に関して記載されており、段落0033には白いボードの設置に関して記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−122008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の配筋情報取得方法には、以下のような問題点がある。
(1)白いボードは、その形状を工夫しない限り、スペースの狭い鉄筋内に挿入できない。すなわち、対象鉄筋の後方に白いボードをうまく設置できない。
(2)日射や外部の照明により、白いボードに対象鉄筋の影が映り、鉄筋径を誤計測するおそれがある。
(3)柱や梁は通常、四角い形状をしており、従来の面的な計測方法を用いた際には、その一面計測を4回実施しなければならない。また、型枠が組まれた状態では、鉄筋の撮影及び計測ができない。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、立体的に配置された鉄筋の配筋情報を取得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、同一方向に延びるように、かつ、軸心の位置が多角形状になるように配設された複数の鉄筋からなり、当該多角形の各隅に位置し、予め大きさの取得されているパターンが多角形の内側に向けて付された鉄筋を含む鉄筋群を、その中心部から撮影した全周囲画像のデータである全周囲画像データを情報処理装置により処理し、前記鉄筋の径長を含む配筋情報を取得する方法であって、前記情報処理装置が、全周囲画像データを2次元の平面画像データに展開するステップと、展開した前記平面画像データを、隣接する2つの前記パターンが画像データの両端に位置する一面画像データに分割するステップと、分割した前記一面画像データを、一方の前記パターンから他方の前記パターンへ向かって走査することにより、前記鉄筋の径のピクセル数を計測するステップと、前記パターンの大きさ及び前記鉄筋の径のピクセル数に基づいて、前記鉄筋の径長を計算するステップと、を実行することを特徴とする。
【0007】
この方法によれば、鉄筋群の中心部から全周囲を撮影するので、立体的に配置された鉄筋の画像を1回で撮影することができる。そして、撮影した鉄筋の全周囲画像を平面画像に展開し、平面画像を一面画像に分割した後、予め大きさの分かっているパターン及びその大きさを用いて、一面画像から鉄筋の径長を求めることができる。
【0008】
また、本発明は、同一方向に延びるように、かつ、軸心の位置が四角形状になるように配設された複数の鉄筋からなり、当該四角形の各隅に位置し、予め大きさの取得されている第1パターンが四角形の内側に向けて付された鉄筋と、前記第1パターンと区別可能な第2パターンが四角形の内側に向けて付された他の鉄筋とを含む鉄筋群を、その中心部から撮影した全周囲画像のデータである全周囲画像データを情報処理装置により処理し、前記鉄筋の径長を含む配筋情報を取得する方法(配筋情報取得方法)であって、前記情報処理装置が、全周囲画像データを前記第2パターンに基づいて2次元の平面画像データに展開するステップと、前記第1パターン及び前記第2パターンに基づいて、展開した前記平面画像データを、隣接する2つの前記第1パターンが画像データの両端に位置する一面画像データに分割するステップと、分割した前記一面画像データにおいて、一方の前記第1パターンから他方の前記第1パターンへ向かって連続する黒のピクセルをカウントすることにより、前記鉄筋の径のピクセル数を計測するステップと、前記鉄筋の仮想ピクセル数として、前記一面画像データにおいて、前記第1パターンの付されていない鉄筋の位置に存在すると仮定した前記第1パターンのピクセル数を計算するステップと、前記第1のパターンの大きさ、前記鉄筋の径のピクセル数及び仮想ピクセル数に基づいて、前記鉄筋の径長を計算するステップと、を実行することを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、鉄筋群の中心部から全周囲を撮影するので、立体的に配置された鉄筋の画像を1回で撮影することができる。そして、撮影した鉄筋の全周囲画像を平面画像に展開し、平面画像を一面画像に分割した後、一面画像において、第1パターンの付されていない鉄筋に関して、付されていると仮定したときのピクセル数を計算することにより、その鉄筋の径長を求めることができる。
【0010】
また、本発明の上記配筋情報取得方法において、前記情報処理装置が、前記平面画像データを前記一面画像データに分割するステップにおいて、前記平面画像データのうち、前記第2パターンを含み、かつ、両端に前記第1パターンが位置する画像データを前記一面画像データとして抽出し、その後、右方向又は左方向に前記第1パターンを探索し、両端に前記第1パターンが位置する3個の画像データを順次前記一面画像データとして抽出することとしてもよい。
【0011】
また、本発明の上記配筋情報取得方法において、前記情報処理装置が、前記鉄筋の仮想ピクセル数を計算するステップにおいて、2πを前記平面画像データの横幅のピクセル数で除算することにより、1ピクセルあたりの角度を算出し、前記1ピクセルあたりの角度、前記第1パターンの大きさ及びピクセル数に基づいて、前記全周囲画像データを撮影したカメラと、両端の前記第1パターンとの間の距離である第1パターン距離を計算し、三角関数の余弦定理を含む三角形の定理を用いて、2つの前記第1パターン距離及びその間の角度、前記カメラからみたときの前記鉄筋の角度に基づいて、前記カメラと、前記鉄筋との間の距離である鉄筋距離を計算し、前記第1パターンの大きさ、前記1ピクセルあたりの角度及び前記鉄筋距離に基づいて、前記鉄筋の仮想ピクセル数を計算することとしてもよい。
この方法におけるカメラ・鉄筋間距離の計算では、まず、余弦定理を用いて2つの第1パターン距離及びその間の角度から、2つの第1パターン間の距離を計算する。次に、三角形の面積を2つ方法で表すことにより、カメラから2つの第1パターン間の線に降ろした垂線の長さを計算する。そして、垂線の長さ及び鉄筋の角度から、鉄筋距離を計算する。
【0012】
また、本発明の上記配筋情報取得方法において、前記情報処理装置が、三角関数の余弦定理を用いて、2の鉄筋の前記鉄筋距離及びその角度に基づいて、前記2の鉄筋間のピッチを計算するステップをさらに実行することとしてもよい。
この方法によれば、カメラと、2本の鉄筋との間の距離及びその角度が分かるので、三角関数の余弦定理を用いることにより、2本の鉄筋の中心線間の距離、すなわち、ピッチを求めることができる。
【0013】
また、本発明の上記配筋情報取得方法において、前記鉄筋群には、前記鉄筋に垂直に配置された補強筋が含まれ、前記情報処理装置が、前記補強筋の仮想ピクセル数として、前記一面画像データにおいて、前記第1パターンの付されていない前記補強筋上における所定の列位置に存在すると仮定した前記第1パターンのピクセル数を計算するステップと、前記一面画像データにおいて、前記列位置から上下方向に向かって連続する黒のピクセルをカウントすることにより、前記補強筋の径のピクセル数を計測するステップと、前記第1のパターンの大きさ、前記補強筋の仮想ピクセル数及び径のピクセル数に基づいて、前記補強筋の径長を計算するステップと、をさらに実行することとしてもよい。
この方法によれば、第1パターンの付されていない補強筋に関して、付されていると仮定したときのピクセル数を計算することにより、その補強筋の径長を求めることができる。
【0014】
また、本発明の上記配筋情報取得方法において、前記情報処理装置が、前記一面画像データにおいて、前記列位置から上下方向へ向かってピクセルを探索し、2の補強筋間のピッチのピクセル数を計測するステップと、前記第1のパターンの大きさ、前記補強筋の仮想ピクセル数及び前記ピッチのピクセル数に基づいて、前記2の補強筋間のピッチを計算するステップと、をさらに実行することとしてもよい。
この方法によれば、2本の補強筋間のピッチのピクセル数を計測することにより、補強筋間のピッチを求めることができる。
【0015】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、立体的に配置された鉄筋の配筋情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】配筋情報システム1の構成を示す図である。
【図2】携帯端末4のハードウェア構成を示す図である。
【図3】管理サーバ5のハードウェア構成を示す図である。
【図4】配筋情報取得システム1に記憶されるデータの構成を示す図であり、(a)は携帯端末4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示し、(b)は管理サーバ5の記憶部55に記憶されるデータの構成を示す。
【図5】異形鉄筋の状態を定義する図であり、(a)はリブ位置0°の状態を示し、(b)はリブ位置90°の状態を示し、(c)はリブ位置60°の状態を示す。
【図6】携帯端末4の鉄筋規格情報452の構成例を示す図である。
【図7】鉄筋画像の撮影方法を示すフローチャートである。
【図8】携帯端末4による画像処理を示すフローチャートである。
【図9】携帯端末4による鉄筋径推定の処理を示すフローチャートである。
【図10】マーカの例を示す図である。
【図11】実際の異形鉄筋の例を示す図である。
【図12】(a)は撮影対象の例を示し、(b)は撮影対象外の例を示す。
【図13】鉄筋にマーカMK及び方位確認用マーカDMKが付された様子を示す図である。
【図14】鉄筋撮影の様子を示す図である。
【図15】(a)は全周囲画像を示し、(b)は平面画像を示す。
【図16】図15(b)の平面画像を分割した画像を示す図であり、(a)は上面を示し、(b)は右面を示し、(c)は下面を示し、(d)は左面を示す。
【図17】一面画像を示す図である。
【図18】(a)は全方位カメラ3と、マーカとの間の実距離Distの計算に関する図を示し、(b)は全方位カメラ3及び両端のマーカからなる三角形の計算に関する図を示し、(c)は全方位カメラ3と、各鉄筋Rbとの間の距離DistRbの計算に関する図を示し、(d)は鉄筋間のピッチの計算に関する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る配筋情報取得システムは、建設現場において、立体的に配置された異形鉄筋のうち、隅にある鉄筋にマーカ(パターン)を付し、全方位カメラを用いて、当該マーカを付した鉄筋を含む異形鉄筋を撮影し、携帯端末(配筋情報取得装置)を用いて撮影画像から異形鉄筋の本数、径長及びピッチ等の配筋情報を求め、径長の分布から各鉄筋の種類(規格、公称直径や呼び径)を推定するものである。これによれば、現場で簡単に精度よく、立体的に配置された鉄筋の配筋情報を取得できるので、設計図面情報と比較、照合することにより、その場で出来形の正当性を判断することができる。
【0019】
≪システムの構成と概要≫
図1は、配筋情報システム1の構成を示す図である。配筋情報取得システム1は、建設現場における全方位カメラ3及び携帯端末4と、事務所における管理サーバ5とを備える。全方位カメラ3と、携帯端末4との間は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等による接続でデータの送受信が可能である。携帯端末4と、管理サーバ5との間は、無線通信等によりデータの送受信が可能である。
【0020】
全方位カメラ3は、鉄筋を含む柱、梁、床、壁等の撮影対象部位2を撮影するものであって、例えば、全方位ミラー、CCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)イメージセンサ等を備えることにより360度の全周囲を撮影できるものが用いられる。携帯端末4は、携帯型情報処理機器であり、全方位カメラ3から撮影したデジタル画像を取り込んで配筋情報を生成し、管理サーバ5から設計図面情報を受信し、配筋情報と、設計図面情報とを比較、照合することにより、出来形が正当か否かを判定する。なお、携帯端末4は、PC(Personal Computer)やサーバで代用してもよい。管理サーバ5は、設計図面情報や工事写真情報を記憶する記憶部55を備え、それらの情報を携帯端末4と送受信する。
【0021】
≪装置の構成≫
図2は、携帯端末4のハードウェア構成を示す図である。携帯端末4は、通信部41、表示部42、入力部43、処理部44及び記憶部45を備える。通信部41は、全方位カメラ3や管理サーバ5とデータ通信を行う部分であり、例えば、USBポートやNIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部42は、処理部44からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部43は、オペレータがデータ(例えば、鉄筋規格情報等のデータ)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部44は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、携帯端末4全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部45は、処理部44からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0022】
図3は、管理サーバ5のハードウェア構成を示す図である。管理サーバ5は、通信部51、表示部52、入力部53、処理部54及び記憶部55を備える。通信部51は、無線ネットワークを介して携帯端末4とデータ通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。表示部52は、処理部54からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ等によって実現される。入力部53は、オペレータがデータ(例えば、設計図面情報等のデータ)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部54は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、管理サーバ5全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部55は、処理部54からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0023】
≪データの構成≫
図4は、配筋情報取得システム1に記憶されるデータの構成を示す図である。図4(a)は、携帯端末4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示す。記憶部45は、画像処理プログラム451及び鉄筋規格情報452を記憶する。画像処理プログラム451は、全方位カメラ3で撮影された画像データから配筋情報を取得し、設計図面情報との適合性を判定する処理を行うプログラムであり、当該処理の必要に応じて処理部44の指示により記憶部45から読み出される。鉄筋規格情報(鉄筋種類情報)452は、径長の分布から鉄筋の規格(種類)を求めるために用いられるテーブル情報である。その詳細は、別途説明する。
【0024】
図4(b)は、管理サーバ5の記憶部55に記憶されるデータの構成を示す。記憶部55は、設計図面情報551及び工事写真情報552を予め記憶する。設計図面情報551は、鉄筋等、建造物の設計に係る図面情報(異形鉄筋の径長を含む)であり、管理者により記憶部55に登録され、必要に応じて管理サーバ5から携帯端末4に送信される。工事写真情報552は、実際の建設現場における建造物の写真情報であり、全方位カメラ3で撮影された写真情報が、携帯端末4経由で管理サーバ5に送信され、記憶部55に記憶される。
【0025】
図5は、異形鉄筋の状態を定義する図である。異形鉄筋は、建物の構造用材料の一つであり、鉄製の棒を圧延して表面に凹凸を設けた棒状の鋼材である。凹凸として、図5に示すように、節と、リブとが設けられている。鉄筋の軸線に対して垂直な方向から見た(撮影した)場合、リブの位置(角度)によって異形鉄筋の径長が異なる。以下、リブが正面に向いた状態をリブ位置0°として、3つの状態について説明する。
【0026】
図5(a)は、リブ位置0°の状態を示す。この状態のリブは、正面に位置するので、径長には影響しない。図面に向かって右側の節と、左側の節とは、軸線方向に沿って交互に設けられている。従って、異形鉄筋の径長としては、節を含まない径長d0と、1つの節を含む径長d1とが抽出される。
【0027】
図5(b)は、リブ位置90°の状態を示す。この状態のリブは両端に位置し、節はリブに含まれるので、異形鉄筋の径長としては、両端のリブを含む径長d2が抽出される。
【0028】
図5(c)は、リブ位置60°の状態を示す。この状態のリブは、突起の高さによっては径長に影響を与える。図面に向かって右側の節は見えるが、左側の節は見えない。従って、異形鉄筋の径長としては、節を含まない径長d3と、1つの節を含む径長d4とが抽出される。なお、図11は、実際の異形鉄筋の例を示す図である。
【0029】
図6は、携帯端末4の鉄筋規格情報452の構成例を示す図である。鉄筋規格情報452は、撮影した鉄筋画像における径長の分布からリブ位置を推定し、さらに該当する鉄筋の規格(種類)を特定するためのテーブル情報であり、呼び径4521、公称直径4522及びリブ位置4523を含むレコードから構成される。呼び径4521は、異形鉄筋の呼び径を示す。公称直径4522は、呼び径4521の異形鉄筋について一般に言われる直径(径長)を示す。リブ位置4523は、リブが正面の状態を0°とした場合のリブの位置(角度)を示すものであり、そのリブ位置4523が0〜60[°]、60〜75[°]及び75〜90[°]の3つの場合に対してそれぞれ径長の下限値及び上限値が示されている。なお、節やリブの形状や大きさに応じて径長の見え方が変わるので、リブ位置4523の範囲は、2つに分けてもよいし、4つ以上に分けてもよい。
【0030】
鉄筋径の推定においては、まず、径長の分布から3つのリブ位置4523のうち、1つが推定され、径長の中央値(median)を下限値及び上限値の範囲と比較、照合し、呼び径4521及び公称直径4522の鉄筋規格を特定する。その詳細は、後記する。
【0031】
≪システムの処理≫
図7は、鉄筋画像の撮影方法を示すフローチャートである。これは、建設現場において、撮影者が全方位カメラ3を用いて鉄筋を撮影し、その撮影画像を携帯端末4に転送し、携帯端末4を用いて撮影画像から配筋情報を取得する手順を示すものである。ここで、撮影の対象となるのは、例えば、図12(a)に示すように、同一方向に延びるように配設された複数の鉄筋からなる鉄筋群の中心部から周囲をみたときに2本以上の鉄筋が重ならないように、各鉄筋の軸心が最外周のみに(例えば、四角形状に)配置されているものである。逆に言えば、例えば、図12(b)に示すように、鉄筋群の中心部から4隅をみたときに、2本の鉄筋が重なって配置されているものは、撮影の対象外になる。また、鉄筋のうち、補強筋は主筋に対して垂直に配置されるものとする。
【0032】
まず、撮影者は、全方位カメラ3によりキャリブレーションボードを撮影し、カメラパラメータを取得する(S701)。これは、カメラキャリブレーションと呼ばれるもので、格子模様や等間隔ドットを印刷した紙であるボードを撮影することにより、全方位カメラ3の歪み等を検出するものである。
【0033】
次に、撮影者は、鉄筋を含む撮影対象部位2を決定する(S702)。そして、撮影対象の複数の鉄筋からなる鉄筋群のうち、所定の場所にマーカを取り付ける(S703)。例えば、図13に示すように、マーカMK(パターン、第1パターン)を4隅の各角筋に1つずつ、面方向を確認するための方位確認用マーカDMK(第2パターン)をある鉄筋(他の鉄筋)に1つ、合計5つのマーカを、鉄筋群の中心部(内側)に向けて取り付ける。このとき、5つのマーカは、各鉄筋の軸方向に対して同じ位置(例えば、各鉄筋が鉛直方向に延設されていれば、同じ高さ)に取り付ける。方位確認用マーカDMKは、撮影対象部位2においてユニークな形状のパターンであって、角筋に取り付けたマーカMKと区別可能であり、例えば、2つのマーカMKを縦に連結したものである。
【0034】
マーカは、自然界に存在しない特徴的な形状であり、事前にその大きさ(寸法)が分かっているものであって、マーカの大きさと、撮影した画像におけるマーカ内のピクセル数とから1ピクセル当たりの長さ(1ピクセル長)を求め、一方、2つのマーカ間をスキャンすることで両端の間にある鉄筋を認識し、さらには、撮影対象部位2と、全方位カメラ3との間の距離を推定するために用いられる。図10は、マーカの例を示す図である。クロスマーカ及び円形マーカが示されている。鉄筋にマーカを付与することにより、全方位カメラ3から同一の距離にあるマーカ及び鉄筋を撮影できるため、撮影された画像データにおいて、マーカと鉄筋との間で1ピクセル当たりの長さが等しくなるので、精度よく径長やピッチを求めることができる。
【0035】
ここで、撮影対象部位2の鉄筋が梁であれば(S704の梁)、上面に背景シートを設置する(S705)。これによれば、背景シートで後方を見えなくすることにより、対象の鉄筋を鮮明に撮影することができる。一方、撮影対象部位2の鉄筋が柱であれば(S704の柱)、S705の処理をスキップする。なお、背景シートを設置しない面に関しては、型枠を背景として用いるものとする。
【0036】
続いて、撮影者は、鉄筋内側の中心部付近に全方位カメラ3を挿入し(S706)、その中心部から360度全周囲の鉄筋を全方位カメラ3で撮影し(S707)、撮影した画像のデータを全方位カメラ3から携帯端末4に取り込む(S708)。図14に示すように、撮影者は、カメラ固定材を用いて全方位カメラ3を固定し、携帯端末4を操作することにより、鉄筋を撮影し、撮影した画像を受信する。なお、撮影対象の鉄筋が梁の場合には、その上面を背景シートで覆ってから撮影する。また、携帯端末4の代わりに、ノートPCを用いてもよい。
【0037】
携帯端末4は、取り込まれた全周囲画像を平面画像(パノラマ画像)に展開する(S709)。例えば、図15(a)に示す全周囲画像を方位確認用マーカDMKの右側(又は左側)の線に沿って切り開くようにして、図15(b)に示す平面画像に展開する。この平面画像は連続していて、その右端と、左端とは、同一の線(図15(a)に示す方位確認用マーカDMKの右側の線)である。このとき、全方位カメラ3が全方位ミラーとして双曲面ミラーを備えることにより、縦方向(垂直方向)に関しては、歪みのない形に展開することが容易に可能である。なお、全周囲画像を平面画像に展開するプログラムは、例えば、全方位ミラーに付属するソフトウェアとして提供される。
【0038】
続いて、携帯端末4は、展開した平面画像においてマーカを検出することにより、その平面画像を4面の画像(一面画像)に分割する(S710)。詳細には、図15(b)の平面画像において、方位確認用マーカDMKを含み、かつ、両端にマーカMKを含む面Aを特定し、その後、右方向にマーカMKを探索し、両端にマーカMKを含む面B、C及びDを特定する。そして、図16に示すように、面Aを(a)の上面とし、面Bを(b)の右面とし、面Cを(c)の下面とし、面Dを(d)の左面とする。
【0039】
携帯端末4は、分割した各面の画像に対して画像処理を行い、鉄筋の径長やピッチを計算する(S711)。携帯端末4による画像処理の詳細は、後記する。画像処理の後、携帯端末4の表示部42に計算結果が表示される(S712)。そして、その計算結果が、設計図面情報の鉄筋径、ピッチであれば(S713のYES)、配筋情報が正常であるとして、撮影作業を終了する。一方、計算結果が設計図面情報の鉄筋径、ピッチでなければ(S713のNO)、撮影者は、配筋の是正を現場の作業者に指示し(S714)、是正が実施された後、撮影対象部位2を再度決定し(S702)、撮影作業を行う。
【0040】
図8は、携帯端末4による画像処理を示すフローチャートである。この処理は、携帯端末4が全方位カメラ3から画像データを取得し、内蔵の画像メモリに格納したときに行われる。
【0041】
まず、携帯端末4は、画像処理プログラムを呼び出す(S801)。具体的には、処理部54が、記憶部55から画像処理プログラム451を読み出し、主記憶装置(メインメモリ)にロードし、プログラムカウンタ(制御ポインタ)を画像処理プログラム451の開始アドレスに位置付ける。これにより、携帯端末4の処理部44が画像処理プログラム451に従って処理を開始する。その処理フローがS802〜S815に示される。
【0042】
まず、携帯端末4(処理部44)は、所定の面のデジタル画像、マーカ内基準長[mm]及び平面画像の幅値[mm]を取得する(S802)。所定の面のデジタル画像は、図7のS710で分割した各面の画像である。マーカ内基準長及び平面画像の幅値は、撮影者の操作により入力部53を通じて取得する。なお、マーカ内基準長は、マーカにおける基準となる長さであり、例えば、円形マーカならば、その円の直径の長さが適用される。次に、画像の補正及び二値化を行う(S803)。具体的には、S701で取得したカメラパラメータを用いてデジタル画像の歪み等を補正し、補正したデジタル画像をピクセル値=0又は1の白黒画像に変換する。以下、S804〜S809において、4面の白黒画像を処理し、鉄筋の径長及びピッチを計算する。
【0043】
携帯端末4は、初めに、画像から鉄筋を判別してピクセル単位の鉄筋情報(径長)を作成する(S804)。例えば、図17に示すような各面の画像に対して、画像の端から水平方向又は垂直方向に探索を行い、ピクセルが白から黒に変化する境界線及び黒から白に変化する境界線を探し出すことで、鉄筋の幅[pixel]を計測する。
【0044】
以上により、各面の画像において、垂直方向に配置される主筋に関しては、各行位置(Row値)における鉄筋径のpixel値が求められる。また、水平方向に配置される補強筋に関しては、各カラム位置(列位置、Column値)における鉄筋径のpixel値が求められる。
【0045】
1箇所からの単眼計測を行う際には、寸法基準となるマーカが鉄筋ごとに必要となる。以下、S805〜S808の処理では、計測対象となる各鉄筋に対して、仮に所定の基準長のマーカを貼付した際に計測されるであろう、マーカ(鉄筋の位置に存在すると仮定したパターン)のピクセルサイズ(これを「仮想マーカ」とする)を求める。
【0046】
携帯端末4は、まず、全方位カメラ3と、マーカとの間の距離を計算する式を求める(S805)。ここでは、平面画像は、元々360度の全周囲画像であることから、pixel単位の角度が分かることを利用する。
【0047】
最初に、1pixel当たりの角度[rad]をθrppとおくと、
θrpp=2π/ImageWidth[rad/pixel] ・・・式1
(ImageWidth:S802で取得した、平面画像の幅値[pixel])
続いて、図18(a)に示すように、マーカの径長をMm[mm]、全方位カメラ3と、マーカとの間の実距離をDist[mm]、マーカの両端のなす角度をθとしたとき、次の式2が成り立つ。なお、マーカの径長Mmは、S802で取得したマーカ内基準長である。
tan(θ/2)=Mm/2Dist
∴ Dist=Mm/2tan(θ/2) ・・・式2
【0048】
ただし、マーカの径長Mmは距離Distに対して限りなく小さく、角度θは限りなく0に近いことから、tan(θ/2)≒θ/2となるので、式2は式3のように近似できる。
Dist=Mm/θ ・・・式3
画像においてカウントしたマーカの最大径のpixel数をMpとすると、マーカの両端のなす角度θは、
θ=Mp・θrpp ・・・式4
式3及び4から、
Dist=Mm/(Mp・θrpp) ・・・式5
【0049】
次に、携帯端末4は、全方位カメラ3及び両端に位置するマーカからなる三角形に関する計算を行う(S806)。図18(b)において、左マーカをLM、右マーカをRMとし、全方位カメラ3・左マーカLM間距離をDistL、全方位カメラ3・右マーカRM間距離をDistR、左マーカLM・右マーカRM間距離をDistLRとする。そして、左マーカLM及び右マーカRMを結ぶ直線へ全方位カメラ3から降ろした垂線をNとし、その直線及び垂線の交点をLNとする。さらに、DistL及びDistRのなす角度をθ、DistL及びNのなす角度をθ、N及びDistRのなす角度をθとする。この処理では、三角形に関する定理等を利用して、距離DistL、DistR及び角度θから、垂線Nの長さ及び角度θ、θを計算する。
【0050】
まず、一面画像において、左マーカLMのカラム位置(列位置)をLMcol、右マーカRMのカラム位置をRMcol、角度(rad)あたりのピクセル値をHvalとすると、角度θは、式6で求められる。
θ=|LMcol−RMcol|/Hval ・・・式6
(Hval=ImageWidth/2π[pixel/rad])
【0051】
距離DistL及びDistRは、左マーカLM及び右マーカRMのpixel数を用いて、式5により算出でき、三角関数の余弦定理により、次の式7を用いて距離DistLRが求められる。
DistLR=DistL+DistR−2DistL・DistR・cosθ
∴ DistLR=√(DistL+DistR−2DistL・DistR・cosθ) ・・・式7
【0052】
一方、左マーカLM、右マーカRM及び全方位カメラ3からなる三角形の面積を2つの方法で表すことにより、次の式8を用いて垂線Nの長さが求められる。
DistL・DistR・sinθ/2=DistLR・N/2
∴ N=DistL・DistR・sinθ/DistLR ・・・式8
角度θ、θは、次の式9により求められる。
θ=cos−1(N/DistL) ・・・式9
θ=cos−1(N/DistR)
続いて、携帯端末4は、全方位カメラ3と、各鉄筋Rbとの間の距離DistRbを求める(S807)。
【0053】
まず、鉄筋のうち、一面画像において垂直に配置される主筋について説明する。この処理では、式8の垂線N及び式9の角度θを用いて、左マーカLMと鉄筋Rbとのなす角度φから、全方位カメラ3と、鉄筋Rbとの間の距離を計算する。なお、右マーカRMを基準にして、式9の角度θを用いてもよい。
【0054】
図18(c)に示すように、主筋は左マーカLM及び右マーカRMを結ぶ直線上にあると仮定し、鉄筋Rbのカラム位置をRbcolとすると、角度φは次の式10により求められる。
φ=|Rbcol−LMcol|/Hval ・・・式10
また、鉄筋Rbと垂線Nとのなす角度δは、次の式11により求められる。
δ=θ−φ (φ<θ;RbがLMと、LNとの間にある場合) ・・・式11
φ−θ (φ≧θ;RbがLNと、RMとの間にある場合)
【0055】
以上から、距離DistRbは、次の式12により求められる。これにより、全方位カメラ3と、すべての主筋との間の距離を求めることができる。
DistRb=N/cosδ ・・・式12
そして、携帯端末4は、各鉄筋の仮想マーカ(ピクセル数)を求める(S808)。式5から、式13が成立する。
Mp=Mm/(Dist・θrpp) ・・・式13
【0056】
全方位カメラ3及び仮想マーカの距離Distは、全方位カメラ3及び鉄筋の距離DistRbに近似するので、仮想マーカのピクセル数Mpは、次の式14により求められる。
Mp=Mm/(DistRb・θrpp) ・・・式14
【0057】
次に、主筋と垂直に配置される補強筋について説明する。ここで取り扱っている画像においては、上下方向の歪みがないので、上下方向のmm値はpixel値との比例関係により求められる。これによれば、一面画像において、水平に配置され、上下方向に並ぶ複数の補強筋に関しては、対象となるカラム位置にある仮想マーカ(補強筋上の列位置に存在すると仮定したパターンのピクセル数)を1つ作成し、そのカラム位置から上下方向に探索して補強筋の径のpixel値を計測することにより、その列位置におけるすべての補強筋の径長を計算することができる。なお、補強筋の仮想マーカは、式10のRbcolに所定のカラム位置を代入することにより、主筋と同様に計算する。
【0058】
さらに、携帯端末4は、各鉄筋の径を推定する(S809)。鉄筋径を推定することによって、鉄筋の種類を特定する。この処理の詳細は、サブルーチンの処理として別途説明する。
【0059】
次に、携帯端末4は、デジタルカメラ3の座標(位置)、姿勢及び設計図面情報を取得する(S810)。デジタルカメラ3の座標は、例えば、GPS(Global Positioning System)機器を接続することにより、撮影画像に付与される位置情報として取得する。デジタルカメラ3の姿勢は、撮影時のカメラ姿勢を検知する機能(デジタルカメラ3又は接続機器の機能)により取得する。設計図面情報は、携帯端末4が、管理サーバ5の記憶部55に記憶された設計図面情報551を受信することにより、取得する。そして、撮影された画像の対象部位(工事箇所)を特定し、該当する設計図面情報との適合性を判定する(S811)。例えば、推定した異形鉄筋の径長と、設計図面情報に含まれる異形鉄筋の径長との適合性を判定する。
【0060】
図面通りできていれば(S812のYES)、携帯端末4は、設計図面情報及び認識情報を表示部42に出力する(S813)。設計図面情報は、図面上の鉄筋の対象部位、座標、本数、ピッチ、径長等である。認識情報は、実際の鉄筋の本数、ピッチ及び径長である。図面通りできていなければ(S812のNO)、異常内容を示す配筋異常情報、設計図面情報及び認識情報を表示部42に出力する(S814)。なお、適合性の判定結果を表示部42に出力するのではなく、通信部41を通じて他の装置に送信することも可能である。
【0061】
図9は、携帯端末4による鉄筋径推定の処理を示す図である。これは、画像処理プログラムのうち、鉄筋径の推定サブルーチンの処理であり、二値化した画像データから、各鉄筋の連続的な径長を抽出し、その径長データを整形してデータの個数及び最頻値を求め、最頻値を個数で除した値(径長データのばらつきの指標値)に応じて鉄筋の規格を特定するものである。
【0062】
まず、携帯端末4は、配筋方向に1pixelずつの連続的な径長[pixel]を抽出する(S901)。詳細には、携帯端末4は、各鉄筋の径長のpixel値をmm値に変換するとともに、各鉄筋間のピッチを計算する。
【0063】
主筋の径に関しては、S804で計測したピクセル数をWp、実際の径長をWmとすると、主筋の径長Wmは、次の式15により求められる。
Wm=Wp・Mm/Mp ・・・式15
【0064】
主筋間のピッチ[mm]に関しては、各主筋の仮想マーカを求めた際の、左マーカLMとのなす角度φを利用して求める。図18(d)に示すように、全方位カメラ3と、2本の鉄筋Rb、Rbとのなす角度αは、次の式16のようになる。
α=|φ−φ| ・・・式16
【0065】
式12により2本の主筋までの距離DistRb、DistRbが分かり、式16により2本の主筋のなす角度αが分かるので、2本の主筋間のピッチDistRbRbは、三角関数の余弦定理に基づいて、次の式17により算出される。
DistRbRb
=√(DistRb+DistRb−2DistRb・DistRb・cosα)・・・式17
【0066】
補強筋の径に関しては、上記の式15により求められる。補強筋のピッチに関しては、pixel値をPpとし、mm値をPmとすると、補強筋A・B間のピッチPmは、次の式18のようになる。なお、Row値は、当該補強筋の中心線の、一面画像における行位置である。
Pp=|補強筋AのRow値−隣接する補強筋BのRow値| ・・・式18
Pm=Pp・Mm/Mp
【0067】
次に、携帯端末4は、データの整形として、配筋方向にマーカから±500[pixel]における径長を抜き出す(S902)。そして、抜き出した1000個の径長の中央値Mを取得する(S903)。この場合、中央値Mは、500番目の径長と、501番目の径長との平均値になる。さらに、データの整形として、1000個の径長データのうち、0.8M〜1.2Mに該当するデータを抜き出す(S904)。そして、抜き出した径長データの個数Nを取得する(S905)。さらに、データの整形として、N×0.01個未満のデータを削除する(S906)。これによれば、径長データの個数Nの1%に満たない個数のデータを除外するので、測定誤差等によって極端に大きい、又は、極端に小さい径長データ等を排除することができる。その後、整形終了後のデータ個数Ni及び最頻値Ymaxを取得する(S907)。
【0068】
そこで、Ymax/Niの値を求め、その値に応じて鉄筋の状態(リブ位置)を推定する。これは、異形鉄筋には節及びリブが設けられているため、鉄筋の向きによって節及びリブの見え方が変わり、抽出される径長データの分布も変わるので、逆に径長データのばらつきの指標値から鉄筋の向きを推定するものである。
【0069】
まず、Ymax/Niの値が0.35未満の場合(S908のYES)、鉄筋の状態(リブ位置)が0°〜60°であり(S909)、データ整形後の中央値Miを取得し(S910)、記憶部45の鉄筋規格情報452(図6参照)におけるリブ位置4523のうち、0〜60の欄を参照する(S911)。Ymax/Niの値が0.35以上、かつ、0.45未満の場合(S912のYES)、鉄筋の状態(リブ位置)が60°〜75°であり(S913)、データ整形後の中央値Miを取得し(S914)、記憶部45の鉄筋規格情報452におけるリブ位置4523のうち、60〜75の欄を参照する(S915)。Ymax/Niの値が0.45以上の場合(S912のNO)、鉄筋の状態(リブ位置)が75°〜90°であり(S916)、データ整形後の中央値Miを取得し(S917)、記憶部45の鉄筋規格情報452におけるリブ位置4523のうち、75〜90の欄を参照する(S918)。
【0070】
鉄筋規格情報452を参照した結果、中央値Miに対応する鉄筋規格(呼び径4521及び公称直径4522)が存在するか否かを判定する(S919)。具体的には、中央値Miを含む径長の下限値と上限値の組合せが各欄にあるか否かを判定する。存在すれば(S919のYES)、該当した鉄筋規格を取得する。存在しなければ(S919のNO)、計測が失敗したことになる(S921)。これによれば、鉄筋のリブ位置(向き)に対応した鉄筋規格情報452を用いるので、どの角度から撮影したとしても、精度よく鉄筋規格を取得することができる。
【0071】
以上本発明の実施の形態について説明したが、図1に示す配筋情報取得システム1の各装置を機能させるために、各装置の処理部で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る配筋情報取得システム1が実現されるものとする。なお、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0072】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、建設現場において、複数の鉄筋が配置され、型枠が組まれた状態であっても、その鉄筋群の中心部に全方位カメラ3を挿入し、360度全周囲の鉄筋を撮影することにより、鉄筋の径長やピッチを計測することが可能である。次に、全方位カメラ3を鉄筋の中心部に固定し、全周囲画像を撮るので、計測対象が立体的な鉄筋(例えば、四角形状に組まれた柱筋や梁筋等)であっても、1回の撮影で済む。そして、撮影した全周囲画像のデータを携帯端末4に取り込み、その全周囲画像を平面画像に展開し、さらに平面画像を一面画像に分割した後、画像処理することにより、主筋及び補強筋の配筋情報を同時に取得することができる。
【0073】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、上記実施の形態においては、図9のS903で1000個の径長データから中央値を取得するものとしたが、他の代表値(例えば、最頻値等)を取得するようにしてもよい。また、マーカは円形に限らず、例えば、正面から見たときに四角形のものであってもよい。そして、上記実施の形態においては、方位確認用マーカDMKを用いるようにしたが、必ずしも方位を特定する必要がない場合や、その他(例えば、いずれか1の鉄筋だけが他の鉄筋と区別可能な形状を有する等)により方位が特定できる場合には、方位確認用マーカDMKを用いることなく、4隅のマーカMKだけでもよい。
【0074】
さらに、主筋が四角形状に配置された状態について説明したが、主筋が三角形や五角形以上の多角形状に配置された状態であってもよい。そのように主筋を配置した場合には、各隅に位置する主筋にマーカMKを付与するものとする。
【符号の説明】
【0075】
1 配筋情報取得システム
2 撮影対象部位
3 全方位カメラ
4 携帯端末(配筋情報取得装置、情報処理装置)
44 処理部
45 記憶部
451 鉄筋規格情報(鉄筋種類情報)
5 管理サーバ
Lm、L、Lt カメラからの距離
DMK 方位確認用マーカ(第2パターン)
MK マーカ(パターン、第1パターン)
Pm 補強筋間のピッチのmm値(ピッチ)
Pp 補強筋間のピッチのpixel値(ピッチのピクセル数)
Wm 鉄筋の径長
Wp 鉄筋の径のピクセル数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向に延びるように、かつ、軸心の位置が多角形状になるように配設された複数の鉄筋からなり、当該多角形の各隅に位置し、予め大きさの取得されているパターンが多角形の内側に向けて付された鉄筋を含む鉄筋群を、その中心部から撮影した全周囲画像のデータである全周囲画像データを情報処理装置により処理し、前記鉄筋の径長を含む配筋情報を取得する方法であって、
前記情報処理装置は、
全周囲画像データを2次元の平面画像データに展開するステップと、
展開した前記平面画像データを、隣接する2つの前記パターンが画像データの両端に位置する一面画像データに分割するステップと、
分割した前記一面画像データを、一方の前記パターンから他方の前記パターンへ向かって走査することにより、前記鉄筋の径のピクセル数を計測するステップと、
前記パターンの大きさ及び前記鉄筋の径のピクセル数に基づいて、前記鉄筋の径長を計算するステップと、
を実行することを特徴とする配筋情報取得方法。
【請求項2】
同一方向に延びるように、かつ、軸心の位置が四角形状になるように配設された複数の鉄筋からなり、当該四角形の各隅に位置し、予め大きさの取得されている第1パターンが四角形の内側に向けて付された鉄筋と、前記第1パターンと区別可能な第2パターンが四角形の内側に向けて付された他の鉄筋とを含む鉄筋群を、その中心部から撮影した全周囲画像のデータである全周囲画像データを情報処理装置により処理し、前記鉄筋の径長を含む配筋情報を取得する方法であって、
前記情報処理装置は、
全周囲画像データを前記第2パターンに基づいて2次元の平面画像データに展開するステップと、
前記第1パターン及び前記第2パターンに基づいて、展開した前記平面画像データを、隣接する2つの前記第1パターンが画像データの両端に位置する一面画像データに分割するステップと、
分割した前記一面画像データにおいて、一方の前記第1パターンから他方の前記第1パターンへ向かって連続する黒のピクセルをカウントすることにより、前記鉄筋の径のピクセル数を計測するステップと、
前記鉄筋の仮想ピクセル数として、前記一面画像データにおいて、前記第1パターンの付されていない鉄筋の位置に存在すると仮定した前記第1パターンのピクセル数を計算するステップと、
前記第1のパターンの大きさ、前記鉄筋の径のピクセル数及び仮想ピクセル数に基づいて、前記鉄筋の径長を計算するステップと、
を実行することを特徴とする配筋情報取得方法。
【請求項3】
請求項2に記載の配筋情報取得方法であって、
前記情報処理装置は、
前記平面画像データを前記一面画像データに分割するステップにおいて、
前記平面画像データのうち、前記第2パターンを含み、かつ、両端に前記第1パターンが位置する画像データを前記一面画像データとして抽出し、
その後、右方向又は左方向に前記第1パターンを探索し、両端に前記第1パターンが位置する3個の画像データを順次前記一面画像データとして抽出する
ことを特徴とする配筋情報取得方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の配筋情報取得方法であって、
前記情報処理装置は、
前記鉄筋の仮想ピクセル数を計算するステップにおいて、
2πを前記平面画像データの横幅のピクセル数で除算することにより、1ピクセルあたりの角度を算出し、
前記1ピクセルあたりの角度、前記第1パターンの大きさ及びピクセル数に基づいて、前記全周囲画像データを撮影したカメラと、両端の前記第1パターンとの間の距離である第1パターン距離を計算し、
三角関数の余弦定理を含む三角形の定理を用いて、2つの前記第1パターン距離及びその間の角度、前記カメラからみたときの前記鉄筋の角度に基づいて、前記カメラと、前記鉄筋との間の距離である鉄筋距離を計算し、
前記第1パターンの大きさ、前記1ピクセルあたりの角度及び前記鉄筋距離に基づいて、前記鉄筋の仮想ピクセル数を計算する
ことを特徴とする配筋情報取得方法。
【請求項5】
請求項4に記載の配筋情報取得方法であって、
前記情報処理装置は、
三角関数の余弦定理を用いて、2の鉄筋の前記鉄筋距離及びその角度に基づいて、前記2の鉄筋間のピッチを計算するステップ
をさらに実行することを特徴とする配筋情報取得方法。
【請求項6】
請求項2に記載の配筋情報取得方法であって、
前記鉄筋群には、前記鉄筋に垂直に配置された補強筋が含まれ、
前記情報処理装置は、
前記補強筋の仮想ピクセル数として、前記一面画像データにおいて、前記第1パターンの付されていない前記補強筋上における所定の列位置に存在すると仮定した前記第1パターンのピクセル数を計算するステップと、
前記一面画像データにおいて、前記列位置から上下方向に向かって連続する黒のピクセルをカウントすることにより、前記補強筋の径のピクセル数を計測するステップと、
前記第1のパターンの大きさ、前記補強筋の仮想ピクセル数及び径のピクセル数に基づいて、前記補強筋の径長を計算するステップと、
をさらに実行することを特徴とする配筋情報取得方法。
【請求項7】
請求項6に記載の配筋情報取得方法であって、
前記情報処理装置は、
前記一面画像データにおいて、前記列位置から上下方向へ向かってピクセルを探索し、2の補強筋間のピッチのピクセル数を計測するステップと、
前記第1のパターンの大きさ、前記補強筋の仮想ピクセル数及び前記ピッチのピクセル数に基づいて、前記2の補強筋間のピッチを計算するステップと、
をさらに実行することを特徴とする配筋情報取得方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図18】
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【図1】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−87569(P2012−87569A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236617(P2010−236617)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(504454060)株式会社アプライド・ビジョン・システムズ (11)
【Fターム(参考)】