説明

配線体接続構造体

【課題】 柔軟な配線体と電気回路との接続を、高い信頼性で低コストに実現することができると共に、使用時に柔軟な配線体が伸縮を繰り返しても、配線が切断されにくい配線体接続構造体を提供する。
【解決手段】 配線体接続構造体1は、エラストマー製の第一基材11と、エラストマーおよび導電材を含む第一配線12と、を有する第一配線体10と、第二基材21と、第二配線22と、を有する第二配線体20と、を備える。配線体接続構造体1には、第一配線体10の第一端部13と第二配線体20の第二端部23とが、導電接着層30を介して表裏方向に重なる大剛性区間50と、大剛性区間50に連なり、第一配線体10を含み、大剛性区間50よりも剛性が小さい中剛性区間51と、中剛性区間51に連なり、第一配線体10からなり、中剛性区間51よりも剛性が小さい小剛性区間52と、が区画される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマーを利用した柔軟で伸縮可能な配線体と、回路基板のコネクタに接続可能な他の配線体と、を電気的に接続した配線体接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマーを利用して、柔軟なセンサ、アクチュエータ等の開発が進められている。柔軟なセンサ、アクチュエータでは、エラストマーからなる基材や誘電膜等の変形に、電極や配線が追従可能であることが要求される。例えば、エラストマーからなる誘電膜の表裏両面に、一対の電極を配置して静電容量型センサを構成することができる。この場合、センサに荷重が加わると、誘電膜は変形する。この際、電極は、誘電膜の変形を妨げないように、誘電膜の変形に応じて伸縮可能であることが望ましい。同様に、電極に接続される配線も、誘電膜および電極の変形に追従して伸縮可能であることが望ましい。したがって、電極や配線を、エラストマーに導電性カーボンや金属粉末を配合した導電材料から形成する試みがなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
上記柔軟なセンサ等において、配線の一端部は電極に接続され、他端部は制御装置等の電気回路に接続される。しかし、伸縮する柔軟な配線と電気回路とを安定して接続できる方法は、未だ確立されていない。一方、フレキシブルプリント配線板(FPC)等の既存の回路基板の端子間を電気的に接続する手段としては、異方性を有する導電接着剤等が用いられている(例えば、特許文献3参照)。また、特許文献4には、FPCとFFCとの端子間をはんだ付けにより接合し、接続部分を絶縁フィルムで被覆して補強した接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−43880号公報
【特許文献2】特開2007−173226号公報
【特許文献3】特開平5−25446号公報
【特許文献4】特開2010−27762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エラストマー製の基材表面に、上述した導電材料からなる配線を形成して柔軟な配線体を作製し、当該配線体を電気回路に接続しようとした場合、配線体と、回路基板に設けられた既存のコネクタと、を直接接続する方法が考えられる。既存のコネクタによると、コネクタの電極を配線体に噛み込ませて、配線体と電気回路とを電気的に接続する。しかし、上述したように、配線は、接続される電極、誘電膜の変形に追従して伸縮する。伸縮を繰り返すと、エラストマーの圧縮永久歪みにより、配線にへたりが生じてしまう。この場合、配線体とコネクタとの機械的な噛み合わせによる接続では、接続部分が配線のへたりに追従することはできない。その結果、配線体とコネクタとの接触不良が生じるおそれがある。また、配線体を構成する基材は、エラストマーからなる。配線も、エラストマーを母材とする。このため、配線体の機械的強度は比較的小さい。したがって、コネクタの噛み込みにより、配線等に亀裂が生じるおそれがある。このように、エラストマーを利用した柔軟な配線体を既存のコネクタに接続した場合、接続部分の信頼性に問題がある。したがって、柔軟な配線体を、既存のコネクタに直接接続することは難しい。
【0006】
また、柔軟な配線体を、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブルプリント配線板(FPC)等の既存の配線体の一端部と接続し、FFC等の他端部を回路基板のコネクタに接続することにより、柔軟な配線体を、間接的に回路基板のコネクタに接続する方法が考えられる。この方法においては、柔軟な配線体とFFC等とを、導電接着剤等により接着させる。
【0007】
上述したように、柔軟な配線体では、配線が基材と共に伸縮する。一方、FFC等の配線体は伸縮しない。また、柔軟な配線体の剛性は、FFC等の剛性と比較して、極めて小さい。このため、柔軟な配線体が伸縮すると、接着部において、FFC等の先端に応力が集中する。その結果、柔軟な配線体が伸縮を繰り返すうちに、FFC等の先端との境界付近において、柔軟な配線体の配線が切断されるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、柔軟な配線体と電気回路との接続を、高い信頼性で低コストに実現することができると共に、使用時に柔軟な配線体が伸縮を繰り返しても、配線が切断されにくい配線体接続構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明の配線体接続構造体は、エラストマー製の第一基材と、該第一基材に配置されエラストマーおよび導電材を含む第一配線と、を有する第一配線体と、第二基材と、該第二基材に配置される第二配線と、を有する第二配線体と、を備え、該第一配線体の第一端部と該第二配線体の第二端部とが、導電接着層を介して表裏方向に重なる大剛性区間と、該大剛性区間に連なり、該第一配線体を含み、該大剛性区間よりも剛性が小さい中剛性区間と、該中剛性区間に連なり、該第一配線体からなり、該中剛性区間よりも剛性が小さい小剛性区間と、が区画されることを特徴とする。
【0010】
本発明の配線体接続構造体によると、第一配線体の一端部(第一端部)と第二配線体の一端部(第二端部)とが、導電接着層により接続される。第一配線体は、エラストマー製の第一基材と、エラストマーを母材とする第一配線と、を備え、伸縮可能である。本発明の配線体接続構造体によると、第二配線体の他端部(第二端部とは異なる端部)を回路基板のコネクタに接続することにより、伸縮可能な第一配線体を、間接的に回路基板のコネクタに接続することができる。第二配線体としては、例えば、FFC、FPC等の既存の配線体を使用することができる。FFC等の既存の配線体は、ZIF(Zero Insertion Force)コネクタ等の既存のコネクタに、接続することができる。したがって、本発明の配線体接続構造体によると、信頼性の高い既存の接続技術を活かして、柔軟で伸縮可能な第一配線体を、回路基板のコネクタに接続することができる。これにより、第一配線体とコネクタとの接続を、低コストで実現することができる。よって、本発明の配線体接続構造体の実用性は高い。
【0011】
また、第一配線体と第二配線体とは、導電接着層により接着される。このため、噛み込みによる機械的な接続と比較して、接触不良を生じにくい。また、導電接着層は、導電性と接着性との両方を備える。よって、他の部材で接続する場合と比較して、小型化、薄型化しやすい。
【0012】
本発明の配線体接続構造体においては、第一端部と第二端部とが表裏方向に重なる大剛性区間と、大剛性区間から第一配線体側に連なる中剛性区間と、中剛性区間に連なり第一配線体からなる小剛性区間と、が区画される。各々の区間の剛性を比較すると、大剛性区間>中剛性区間>小剛性区間となる。
【0013】
例えば、第二配線体としてFFC等を用いた場合、上述したように、柔軟な第一配線体と第二配線体との剛性の差は大きい。したがって、第一配線体と第二配線体とを部分的に積層させて接続する場合、第一端部と第二端部との積層区間と、それに連なる第一配線体からなる区間と、の境界で、剛性が大きく変化する。このため、第一配線体が伸縮すると、両区間の境界に配置される第二端部の先端に、応力が集中しやすい。
【0014】
この点、本発明の配線体接続構造体によると、大剛性区間における第二端部の先端側には、剛性が中程度の中剛性区間が隣接される。すなわち、中剛性区間の剛性は、大剛性区間の剛性より小さく、第一配線体からなる小剛性区間の剛性より大きい。このため、大剛性区間と中剛性区間との剛性の差は、大剛性区間と小剛性区間との剛性の差よりも小さくなる。したがって、第二端部の先端から第一配線体方向(大剛性区間→中剛性区間→小剛性区間と連なる方向)における、剛性の変化が緩和される。これにより、第二端部の先端に、応力が集中しにくくなる。その結果、第二端部の先端との境界付近における、第一配線の断線が抑制される。このように、本発明の配線体接続構造体によると、第一配線体が伸縮を繰り返しても、第一配線は切断されにくい。すなわち、本発明の配線体接続構造体は、耐久性に優れる。
【0015】
各々の区間の剛性は、区間を構成する個々の部材の剛性の総和である。すなわち、区間を構成する部材(例えば、第一基材、第一配線等)の各々について剛性を算出し、それらの総和を当該区間の剛性とすればよい。部材の剛性は、当該部材のヤング率に、当該部材の表裏方向厚さを乗じて、算出すればよい(ヤング率×厚さ)。
【0016】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記大剛性区間は、表裏方向厚さが最も厚い厚肉区間であり、前記中剛性区間は、該厚肉区間よりも表裏方向厚さが薄い中肉区間であり、前記小剛性区間は、該中肉区間よりも表裏方向厚さが薄い薄肉区間である構成とする方がよい。
【0017】
本発明の配線体接続構造体においては、第一端部と第二端部とが表裏方向に重なる厚肉区間と、厚肉区間から第一配線体側に連なる中肉区間と、中肉区間に連なり第一配線体からなる薄肉区間と、が区画される。各々の区間の厚さを比較すると、厚肉区間>中肉区間>薄肉区間となる。すなわち、各々の区間の剛性を比較すると、厚さの順に、厚肉区間>中肉区間>薄肉区間となる。
【0018】
本構成によると、表裏方向の厚さを変えることにより、厚肉区間、中肉区間、薄肉区間の順に剛性が小さくなる配線体接続構造体を、容易に実現することができる。換言すれば、第二端部の先端から第一配線体方向における剛性の変化が小さい配線体接続構造体を、容易に実現することができる。
【0019】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記大剛性区間および前記中剛性区間には、前記第二配線体の表面および前記第一配線体の表面を覆うように、表側カバー部材が配置され、該大剛性区間には、表側から裏側に向かって、少なくとも、該表側カバー部材、前記第二端部、前記導電接着層、前記第一端部が積層され、該中剛性区間には、表側から裏側に向かって、少なくとも、該表側カバー部材、該第一配線体が積層される構成とする方がよい。
【0020】
大剛性区間における第二配線体の表面、つまり第二端部の表面に、表側カバー部材を配置すると、大剛性区間は、少なくとも、表側カバー部材、第二端部(第二配線体)、導電接着層、および第一端部(第一配線体)から構成される。同様に、中剛性区間における第一配線体の表面に、表側カバー部材を配置すると、中剛性区間は、少なくとも、表側カバー部材、および第一配線体から構成される。また、小剛性区間は、第一配線体のみから構成される。
【0021】
本構成によると、表側カバー部材の厚さや、表側カバー部材を構成する材料のヤング率により、大剛性区間および中剛性区間の剛性を調整することができる。また、各区間の厚さを、少なくとも四層からなる大剛性区間(厚肉区間)、少なくとも二層からなる中剛性区間(中肉区間)、一層からなる小剛性区間(薄肉区間)、の順に薄くすることができる。このように、本構成によると、順に剛性が異なる大剛性区間、中剛性区間、小剛性区間が区画された配線体接続構造体を、容易に実現することができる。換言すれば、第二端部の先端から第一配線体方向における剛性の変化が小さい配線体接続構造体を、容易に実現することができる。
【0022】
上述したように、導電接着層には、接着性に加えて導電性も必要である。このため、導電接着層を構成する材料を、接着性に優れるという点だけで選択することはできない。例えば、表側カバー部材を、大剛性区間および中剛性区間において、第二配線体の表面および第一配線体の表面を一体的に覆うように配置する。これにより、導電接着層の接着力を補うことができる。すなわち、仮に導電接着層と第一配線体との接着力が充分ではない場合であっても、表側カバー部材により、第一配線体と第二配線体とを、強固に固定することができる。
【0023】
(3−1)好ましくは、上記(3)の構成において、表側カバー部材は弾性材料から構成され、該弾性材料のヤング率は0.1MPa以上10MPa以下である構成とする方がよい。
【0024】
表側カバー部材は、中剛性区間において、第一配線体の表面を覆うように配置される。このため、表側カバー部材には、第一配線体の伸縮に追従できるように、柔軟性が必要となる。この点、本構成によると、表側カバー部材は、上記ヤング率を有する弾性材料から構成される。したがって、第一配線体の動きに追従可能である。
【0025】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記大剛性区間および前記中剛性区間には、前記第一配線体の裏面を覆うように、裏側カバー部材が配置され、該大剛性区間には、表側から裏側に向かって、少なくとも、前記第二端部、前記導電接着層、前記第一端部、該裏側カバー部材が積層され、該中剛性区間には、表側から裏側に向かって、少なくとも、該第一配線体、該裏側カバー部材が積層される構成とする方がよい。
【0026】
大剛性区間における第一配線体の裏面、つまり第一端部の裏面に、裏側カバー部材を配置すると、大剛性区間は、少なくとも、第二端部(第二配線体)、導電接着層、第一端部(第一配線体)、および裏側カバー部材から構成される。同様に、中剛性区間における第一配線体の裏面に、裏側カバー部材を配置すると、中剛性区間は、少なくとも、第一配線体、および裏側カバー部材から構成される。また、小剛性区間は、第一配線体のみから構成される。
【0027】
本構成によると、裏側カバー部材の厚さや、裏側カバー部材を構成する材料のヤング率により、大剛性区間および中剛性区間の剛性を調整することができる。また、各区間の厚さを、少なくとも四層からなる大剛性区間(厚肉区間)、少なくとも二層からなる中剛性区間(中肉区間)、一層からなる小剛性区間(薄肉区間)、の順に薄くすることができる。このように、本構成によると、順に剛性が異なる大剛性区間、中剛性区間、小剛性区間が区画された配線体接続構造体を、容易に実現することができる。換言すれば、第二端部の先端から第一配線体方向における剛性の変化が小さい配線体接続構造体を、容易に実現することができる。
【0028】
(4−1)好ましくは、上記(4)の構成において、裏側カバー部材は弾性材料から構成され、該弾性材料のヤング率は0.1MPa以上10MPa以下である構成とする方がよい。
【0029】
裏側カバー部材は、大剛性区間および中剛性区間において、第一配線体の裏面を覆うように配置される。このため、上記表側カバー部材と同様に、第一配線体の伸縮に追従できるように、柔軟性が必要となる。この点、本構成によると、裏側カバー部材は、上記ヤング率を有する弾性材料から構成される。したがって、第一配線体の動きに追従可能である。
【0030】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、さらに、前記大剛性区間において、前記第二端部の先端と、前記第一配線と、の間に介装される介装部材を備える構成とする方がよい。
【0031】
本構成によると、大剛性区間において、第二端部の先端と第一配線との間に、介装部材が介在している。このため、第一配線体が伸縮して、第二配線体(第二端部)の先端に応力が生じても、介装部材が緩衝材になることにより、当該応力が第一配線へ加わりにくい。したがって、第一配線の断線が抑制される。つまり、本構成によると、第一配線体が伸縮を繰り返しても、第一配線は切断されにくい。
【0032】
また、本発明の配線体接続構造体の製造過程において、第一端部と第二端部とを接着する際には、第一端部と第二端部との間に導電接着剤を挟んで、圧着する。この際、第二端部の先端角部が、導電接着剤を介して第一端部に当接して、第一配線が切断されるおそれがある。この点、本構成によると、第二端部の先端角部は、導電接着層を介して介装部材に当接する。介装部材が緩衝材になることにより、第一配線への応力が軽減される。したがって、本発明の配線体接続構造体の製造時において、第一配線が切断されるおそれは小さい。
【0033】
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、前記第一端部の表面には、前記介装部材に覆われない第一露出領域と、該第一露出領域に連なり該介装部材に表側から覆われる第一被覆領域と、が配置され、前記第二端部の裏面には、該介装部材に覆われない第二露出領域と、該第二露出領域に連なり該介装部材に裏側から覆われると共に前記先端を含む第二被覆領域と、が配置され、該第一露出領域と該第二露出領域とは、前記導電接着層を介して接着され、該第一被覆領域と該第二被覆領域とは、該導電接着層と該介装部材とを介して接着される構成とする方がよい。
【0034】
大剛性区間において、第一露出領域と第二露出領域とは、表裏方向に対向して配置される。第一露出領域では、第一配線が露出している。同様に、第二露出領域では、第二配線が露出している。よって、第一露出領域と第二露出領域とが、導電接着層を介して接着されることにより、第一配線体と第二配線体との導通が確保される。
【0035】
また、第一被覆領域と第二被覆領域とは、表裏方向に対向して配置される。第二被覆領域には第二端部の先端が含まれる。そして、第一被覆領域と第二被覆領域とは、導電接着層と介装部材とを介して接着される。すなわち、大剛性区間において、表側から裏側に向かって、少なくとも第二被覆領域(第二端部の先端)→導電接着層→介装部材→第一被覆領域が配置される。これにより、第二端部の先端に生じた応力は、介装部材の緩衝効果により、第一被覆領域の第一配線に加わりにくい。したがって、第一配線の断線が抑制される。
【0036】
(7)好ましくは、上記(5)または(6)の構成において、前記第一配線体は、前記第一配線を外部から絶縁するカバーフィルムを有し、前記介装部材は、該カバーフィルムである構成とする方がよい。
【0037】
第一配線体において、第一基材の表面に第一配線が形成される場合、第一配線を覆うように、カバーフィルムを配置することが望ましい。こうすると、第一配線を外部から絶縁することができるため、安全性が向上する。また、カバーフィルムの材質により、第一配線の防水性を確保したり、酸化を抑制することもできる。
【0038】
例えば、カバーフィルムを、大剛性区間における第二端部の先端と第一配線との間に介在させる。つまり、上記(6)の構成において、カバーフィルムを、第一被覆領域まで延在して配置する。こうすると、表側から裏側に向かって、第二被覆領域(第二端部の先端)→導電接着層→カバーフィルム→第一被覆領域が配置される。これにより、カバーフィルムを、上記介装部材として機能させることができる。すなわち、本構成によると、カバーフィルム本来の効果に加えて、第一配線の断線を抑制する効果も得ることができる。また、本構成によると、カバーフィルムとは別に、第一配線を保護する介装部材を準備する必要はない。したがって、配線体接続構造体の部品点数を、削減することができる。また、配線体接続構造体の製造も容易になる。
【0039】
(7−1)好ましくは、上記(7)の構成において、カバーフィルムは弾性材料から構成され、該弾性材料のヤング率は0.1MPa以上10MPa以下である構成とする方がよい。
【0040】
カバーフィルムは、第一配線を覆うように、つまり、第一配線体の表面を覆うように配置される。このため、上記表側カバー部材等と同様、第一配線体の伸縮に追従できるように、柔軟性が必要となる。この点、本構成によると、カバーフィルムは、上記ヤング率を有する弾性材料から構成される。したがって、第一配線体の動きに追従可能である。
【0041】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、前記第一配線体は、複数の前記第一配線を有し、前記第二配線体は、複数の前記第二配線を有し、前記導電接着層は、表裏方向に対向する該第一配線と該第二配線とを各々導通させる異方導電接着剤からなる構成とする方がよい。
【0042】
異方導電接着剤は、接着性を有する絶縁樹脂や絶縁ゴム(母材)の中に導電粒子を分散させたものである。異方導電接着剤としては、母材の種類により、熱硬化型異方導電接着剤、熱可塑型異方導電接着剤、紫外線硬化型異方導電接着剤、エラストマー系異方導電接着剤等が挙げられる。異方導電接着剤に圧力を加えると、母材中の導電粒子が接続部材間の一方向に点接触して導通経路を形成する。この状態で固化または硬化することにより、導電性が発現する。なお、本明細書では、化学反応を伴わない可逆的な状態変化を「固化」と称し、架橋反応等の化学反応を伴う不可逆的な状態変化を「硬化」と称す。
【0043】
異方導電接着剤は、一方向の導電性が高い性質(異方導電性)を有する。このため、異方導電接着剤を、表裏方向に対向する第一配線と第二配線との間に介装すると、配線同士を接着することができると共に、異方導電接着剤の厚さ方向(表裏方向)に、配線同士を導通させることができる。この場合、異方導電接着剤の面方向における導電性は低い。したがって、第一配線および第二配線の各々において、隣接する配線同士が導通するおそれはない。
【発明の効果】
【0044】
本発明の配線体接続構造体によると、エラストマーを利用した柔軟で伸縮可能な第一配線体を、第二配線体を介して、低コストかつ高い信頼性で、回路基板のコネクタに接続することができる。また、本発明の配線体接続構造体によると、使用時に、第一配線体の第一配線が切断されにくい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第一実施形態の配線体接続構造体の斜視分解図である。
【図2】同配線体接続構造体の前後方向断面図である。
【図3】第二実施形態の配線体接続構造体の前後方向断面図である。
【図4】第三実施形態の配線体接続構造体の前後方向断面図である。
【図5】第四実施形態の配線体接続構造体の前後方向断面図である。
【図6】第五実施形態の配線体接続構造体の斜視分解図である。
【図7】同配線体接続構造体の前後方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の配線体接続構造体の実施形態について説明する。
【0047】
<第一実施形態>
[構成]
まず、本実施形態の配線体接続構造体の構成について説明する。図1に、本実施形態の配線体接続構造体の斜視分解図を示す。図2に、同配線体接続構造体の前後方向断面図を示す。なお、図1においては、第二配線を透過して示す。図1、図2に示すように、配線体接続構造体1は、第一配線体10と、第二配線体20と、導電接着層30と、表側カバー部材40と、を備えている。
【0048】
第一配線体10は、エラストマーシート11と第一配線12とを有している。エラストマーシート11は、シリコーンゴム製であって、前後方向に延びる帯状を呈している。エラストマーシート11の厚さは約0.5mmであり、ヤング率は4MPaである。エラストマーシート11は、本発明における第一基材に含まれる。
【0049】
第一配線12は、エラストマーシート11の上面(表面)に、合計13本配置されている。第一配線12は、各々、アクリルゴムと銀粉末とを含んで形成されている。第一配線12の厚さは約20μmであり、ヤング率は10MPaである。第一配線12の引張強さは0.3MPaである。第一配線12は、各々、線状を呈している。第一配線12は、各々、前後方向に延在している。13本の第一配線12は、左右方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように配置されている。
【0050】
第一配線体10の後端部には、第一端部13が配置されている。第一端部13の上面には、第一配線12が露出している。
【0051】
第二配線体20は、フレキシブルフラットケーブル(FFC)であり、絶縁基材21と第二配線22とを有している。絶縁基材21は、前後方向に延びる帯状を呈している。絶縁基材21は、第二配線22を挟んで上下方向に積層された、二枚のポリエステル製フィルムからなる。ポリエステル製フィルムの厚さは、各々、約0.1mmである。ポリエステル製フィルムのヤング率は、各々、4GPaである。絶縁基材21は、本発明における第二基材に含まれる。
【0052】
第二配線22は、絶縁基材21の内部に、合計13本埋設されている。第二配線22は、錫めっきされた銅箔である。第二配線22の厚さは約0.1mmであり、ヤング率は約100GPaである。第二配線22は、各々、線状を呈している。第二配線22は、各々、前後方向に延在している。13本の第二配線22は、左右方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように配置されている。
【0053】
第二配線体20の前端部には、第二端部23が配置されている。第二端部23の下方においては、絶縁基材21の下面(裏面)に第二配線22が露出するように、絶縁基材21が剥がされている。つまり、第二端部23の下面には、第二配線22が露出している。また、第二配線体20の後端部は、コネクタ(図略)に接続されている。コネクタは、電気回路基板(図略)に設置されている。
【0054】
導電接着層30は、エポキシ樹脂中にニッケル粒子が分散された異方導電接着剤からなる。導電接着層30は、シート状を呈している。導電接着層30の厚さは約5μmであり、ヤング率は4GPaである。導電接着層30は、第一端部13と第二端部23との間に介装されている。これにより、第一端部13の上面と第二端部23の下面とは、導電接着層30を介して接着されている。第一端部13の上面の第一配線12の幅および間隔は、第二端部23の下面の第二配線22の幅および間隔と同じである。つまり、第一端部13の上面の第一配線12と、第二端部23の下面の第二配線22とは、導電接着層30を介して導通している。
【0055】
表側カバー部材40は、シリコーンゴム製であって、前後方向断面において配置面の形状に沿った階段状を呈している。表側カバー部材40の厚さは、約0.5mmである。表側カバー部材40のヤング率は、4MPaである。表側カバー部材40は、第二端部23の上面と、その前方に連なる第一配線体10の上面の一部(後述する中肉区間51における第一配線体10の上面)と、を一体的に覆っている。
【0056】
配線体接続構造体1には、前後方向に連なる、厚肉区間50と、中肉区間51と、薄肉区間52と、が区画されている。厚肉区間50には、上方から下方に向かって、表側カバー部材40と、第二端部23と、導電接着層30と、第一端部13と、が積層されている。厚肉区間50の前方には、第二端部23の最前端230が配置されている。最前端230は、本発明における先端に含まれる。中肉区間51は、厚肉区間50の前方に連続して配置されている。中肉区間51には、上方から下方に向かって、表側カバー部材40と、第一配線体10と、が積層されている。中肉区間51の上下方向厚さは、厚肉区間50の上下方向厚さよりも薄い。薄肉区間52は、中肉区間51の前方に連続して配置されている。薄肉区間52は、第一配線体10からなる。薄肉区間52の上下方向厚さは、中肉区間51の上下方向厚さよりも薄い。
【0057】
[製造方法]
次に、配線体接続構造体1の製造方法について説明する。配線体接続構造体1の製造方法は、配線体準備工程と、配置工程と、圧着工程と、表側カバー部材接着工程と、を有する。
【0058】
配線体準備工程においては、第一配線体10と第二配線体20とを準備する。すなわち、第一配線体10については、エラストマーシート11の上面に、配線用塗料を所定のパターンでスクリーン印刷する。これにより、13本の第一配線12を形成する。第二配線体20については、市販のFFCを用いればよい。
【0059】
配置工程においては、第一配線体10と異方導電接着剤と第二配線体20とを、積層配置する。具体的には、まず、第一配線体10の第一端部13の上面に、硬化前のペースト状の異方導電接着剤を塗布する。次に、異方導電接着剤に重ねて、第二配線体20の第二端部23を配置する。この際、第一端部13の第一配線12と第二端部23の第二配線22とが各々対向するように、第一端部13と第二端部23とを配置する。
【0060】
圧着工程においては、異方導電接着剤を硬化させることにより、対向する第一配線12、第二配線22同士を、上下方向に導通可能に接着する。具体的には、第一端部13と異方導電接着剤と第二端部23とが積層された部分(厚肉区間50に相当)を、第二配線体20側から加熱すると共に、上下方向に加圧する。これにより、異方導電接着剤が硬化して、導電接着層30が形成される。その結果、第一端部13と、第二端部23と、が接着される。
【0061】
表側カバー部材接着工程においては、シート状の表側カバー部材40を、第一端部13の上面および中肉区間51における第一配線体10の上面に、接着剤により接着する。このようにして、配線体接続構造体1が製造される。
【0062】
[作用効果]
次に、配線体接続構造体1の作用効果について説明する。配線体接続構造体1によると、第二配線体20の前端部は第一配線体10に、後端部は電気回路基板に設置されているコネクタに、各々接続されている。これにより、柔軟で伸縮可能な第一配線体10を、既存の第二配線体20を介して、低コストかつ高信頼性で、電気回路基板に接続することができる。
【0063】
また、表側カバー部材40は、厚肉区間50における第二端部23の上面と、その前方に連なる中肉区間51における第一配線体10の上面と、を一体的に覆うように配置されている。これにより、導電接着層30の接着力を補うことができる。つまり、表側カバー部材40を配置することにより、第一配線体10と第二配線体20とを、強固に固定することができる。
【0064】
また、表側カバー部材40を配置することにより、配線体接続構造体1において、厚さが異なる厚肉区間50と、中肉区間51と、薄肉区間52と、が区画されている。各区間の剛性は、厚肉区間50→中肉区間51→薄肉区間52の順に小さい。厚肉区間50の前方に配置されている第二端部23の最前端230には、中肉区間51が隣接されている。これにより、最前端230から第一配線体10方向における剛性の変化を、小さくすることができる。したがって、第一配線体10が伸縮を繰り返しても、第二端部23の最前端230に、応力が集中しにくい。その結果、第二端部23の最前端230との境界付近における、第一配線12の断線が抑制される。このように、配線体接続構造体1によると、使用時における第一配線12の断線を抑制することができる。よって、配線体接続構造体1は、耐久性に優れる。
【0065】
また、表側カバー部材40、エラストマーシート11は、ヤング率が等しいシリコーンゴムからなる。したがって、表側カバー部材40は、第一配線体10の動きに追従可能である。
【0066】
配線体接続構造体1によると、第一配線体10と第二配線体20とは、導電接着層30により接着されている。このため、噛み込みによる機械的な接続と比較して、接触不良を生じにくい。また、導電接着層30は、導電性と接着性との両方を備えている。よって、他の部材で接続する場合と比較して、配線体接続構造体1を小型化、薄型化しやすい。
【0067】
また、導電接着層30は、異方導電接着剤からなる。これにより、対向する第一配線12、第二配線22同士を接着することができると共に、上下方向に導通させることができる。一方、導電接着層30の左右方向における導電性は低い。このため、第一端部13において、左右方向に隣接する第一配線12同士が導通するおそれはない。同様に、第二端部23において、左右方向に隣接する第二配線22同士が導通するおそれはない。このように、導電接着層30によると、対向する複数の配線12、22同士を、まとめて接着および導通させることができる。
【0068】
また、異方導電接着剤として、エポキシ樹脂を主剤とする熱硬化型接着剤を使用している。異方導電接着剤の硬化は、150℃程度の低温で、かつ10〜15秒程度の短時間で完了する。このため、第一配線体10を構成するシリコーンゴム、アクリルゴムは熱膨張しにくい。よって、硬化時の加熱により、予め形成されていた第一配線12の幅や位置が変化するおそれは小さい。また、配線体接続構造体1を製造する圧着工程において、熱膨張しにくい第二配線体20側から加熱する。これにより、第一配線体10を構成するエラストマーの熱膨張を、抑制することができる。その結果、第一配線12の位置ずれ等が抑制され、対向する第一配線12、第二配線22同士を、確実に導通させることができる。
【0069】
<第二実施形態>
本実施形態の配線体接続構造体と、第一実施形態の配線体接続構造体と、の相違点は、表側カバー部材に代えて、裏側カバー部材を配置した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0070】
まず、本実施形態の配線体接続構造体の構成について説明する。図3に、本実施形態の配線体接続構造体の前後方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図3に示すように、配線体接続構造体1は、第一配線体10と、第二配線体20と、導電接着層30と、裏側カバー部材41と、を備えている。
【0071】
裏側カバー部材41は、シリコーンゴム製であって、矩形シート状を呈している。裏側カバー部材41の厚さは、約0.5mmである。裏側カバー部材41のヤング率は、4MPaである。裏側カバー部材41は、厚肉区間50における第一端部13の下面(裏面)と、その前方に連なる中肉区間51における第一配線体10の下面と、を一体的に覆っている。
【0072】
配線体接続構造体1には、前後方向に連なる、厚肉区間50と、中肉区間51と、薄肉区間52と、が区画されている。厚肉区間50には、上方から下方に向かって、第二端部23と、導電接着層30と、第一端部13と、裏側カバー部材41と、が積層されている。厚肉区間50の前方には、第二端部23の最前端230が配置されている。中肉区間51は、厚肉区間50の前方に連続して配置されている。中肉区間51には、上方から下方に向かって、第一配線体10と、裏側カバー部材41と、が積層されている。中肉区間51の上下方向厚さは、厚肉区間50の上下方向厚さよりも薄い。薄肉区間52は、中肉区間51の前方に連続して配置されている。薄肉区間52は、第一配線体10からなる。薄肉区間52の上下方向厚さは、中肉区間51の上下方向厚さよりも薄い。
【0073】
次に、配線体接続構造体1の製造方法について説明する。配線体接続構造体1の製造方法は、配線体準備工程と、配置工程と、圧着工程と、裏側カバー部材接着工程と、を有する。先の三つの工程(配線体準備工程、配置工程、圧着工程)は、上記第一実施形態と同じである。続く裏側カバー部材接着工程において、シート状の裏側カバー部材41を、第一端部13の下面および中肉区間51における第一配線体10の下面に、接着剤により接着する。
【0074】
本実施形態の配線体接続構造体1は、第一実施形態の配線体接続構造体と共通する部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態の配線体接続構造体1によると、裏側カバー部材41は、厚肉区間50における第一端部13の下面と、その前方に連なる中肉区間51における第一配線体10の下面と、を一体的に覆うように配置されている。これにより、配線体接続構造体1において、厚さ(剛性)が異なる厚肉区間50と、中肉区間51と、薄肉区間52と、が区画されている。厚肉区間50の前方に配置されている第二端部23の最前端230には、中肉区間51が隣接されている。これにより、最前端230から第一配線体10方向における剛性の変化を、小さくすることができる。したがって、第一配線体10が伸縮を繰り返しても、第二端部23の最前端230に、応力が集中しにくい。その結果、第二端部23の最前端230との境界付近における、第一配線12の断線が抑制される。このように、配線体接続構造体1によると、使用時における第一配線12の断線を抑制することができる。よって、配線体接続構造体1は、耐久性に優れる。
【0075】
また、裏側カバー部材41、エラストマーシート11は、ヤング率が等しいシリコーンゴムからなる。したがって、裏側カバー部材41は、第一配線体10の動きに追従可能である。
【0076】
<第三実施形態>
本実施形態の配線体接続構造体と、第一実施形態の配線体接続構造体と、の相違点は、表側カバー部材に加えて、裏側カバー部材を配置した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0077】
まず、本実施形態の配線体接続構造体の構成について説明する。図4に、本実施形態の配線体接続構造体の前後方向断面図を示す。なお、図2、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。図4に示すように、配線体接続構造体1は、第一配線体10と、第二配線体20と、導電接着層30と、表側カバー部材40と、裏側カバー部材41と、を備えている。各々の部材の構成については、上記第一、第二実施形態と同じである。よって、ここでは説明を省略する。
【0078】
配線体接続構造体1には、前後方向に連なる、厚肉区間50と、中肉区間51と、薄肉区間52と、が区画されている。厚肉区間50には、上方から下方に向かって、表側カバー部材40と、第二端部23と、導電接着層30と、第一端部13と、裏側カバー部材41と、が積層されている。厚肉区間50の前方には、第二端部23の最前端230が配置されている。中肉区間51は、厚肉区間50の前方に連続して配置されている。中肉区間51には、上方から下方に向かって、表側カバー部材40と、第一配線体10と、裏側カバー部材41と、が積層されている。中肉区間51の上下方向厚さは、厚肉区間50の上下方向厚さよりも薄い。薄肉区間52は、中肉区間51の前方に連続して配置されている。薄肉区間52は、第一配線体10からなる。薄肉区間52の上下方向厚さは、中肉区間51の上下方向厚さよりも薄い。
【0079】
次に、配線体接続構造体1の製造方法について説明する。配線体接続構造体1の製造方法は、配線体準備工程と、配置工程と、圧着工程と、カバー部材接着工程と、を有する。先の三つの工程(配線体準備工程、配置工程、圧着工程)は、上記第一実施形態と同じである。続くカバー部材接着工程において、シート状の表側カバー部材40を、第一端部13の上面および中肉区間51における第一配線体10の上面に、接着剤により接着する。同様に、シート状の裏側カバー部材41を、第一端部13の下面および中肉区間51における第一配線体10の下面に、接着剤により接着する。
【0080】
本実施形態の配線体接続構造体1は、第一実施形態および第二実施形態の配線体接続構造体と共通する部分については、両実施形態と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態の配線体接続構造体1によると、表側カバー部材40と裏側カバー部材41との両方が配置されている。このため、薄肉区間52と比較して、中肉区間51の剛性を、より大きくすることができる。
【0081】
<第四実施形態>
本実施形態の配線体接続構造体と、第一実施形態の配線体接続構造体と、の相違点は、表側カバー部材を配置せず、前後方向において第一基材の厚さを変化させた点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0082】
まず、本実施形態の配線体接続構造体の構成について説明する。図5に、本実施形態の配線体接続構造体の前後方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図5に示すように、配線体接続構造体1は、第一配線体10と、第二配線体20と、導電接着層30と、を備えている。
【0083】
第一実施形態と同様に、第一配線体10は、エラストマーシート11と第一配線12とを有している。エラストマーシート11は、シリコーンゴム製であって、前後方向に延びる帯状を呈している。エラストマーシート11のヤング率は、4MPaである。エラストマーシート11の厚さは、後方において徐々に厚くなっている。すなわち、薄肉区間52におけるエラストマーシート11の厚さは、約0.5mmである。薄肉区間52において、エラストマーシート11の厚さは、略一定である。一方、中肉区間51におけるエラストマーシート11の厚さは、後方に向かって徐々に厚くなっている。また、厚肉区間50におけるエラストマーシート11の厚さは、中肉区間51に連続して後方に向かって厚くなり、最後端付近では略一定になっている。エラストマーシート11の最後端付近の厚さは、約1mmである。
【0084】
エラストマーシート11の厚さの違いにより、配線体接続構造体1には、前後方向に連なる、厚肉区間50と、中肉区間51と、薄肉区間52と、が区画されている。厚肉区間50には、上方から下方に向かって、第二端部23と、導電接着層30と、第一端部13と、が積層されている。厚肉区間50の前方には、第二端部23の最前端230が配置されている。中肉区間51は、厚肉区間50の前方に連続して配置されている。中肉区間51は、第一配線体10からなる。中肉区間51の上下方向厚さは、厚肉区間50の上下方向厚さよりも薄い。薄肉区間52は、中肉区間51の前方に連続して配置されている。薄肉区間52は、第一配線体10からなる。薄肉区間52の上下方向厚さは、中肉区間51の上下方向厚さよりも薄い。
【0085】
次に、配線体接続構造体1の製造方法について説明する。配線体接続構造体1の製造方法は、配線体準備工程と、配置工程と、圧着工程と、を有する。配線体準備工程においては、第一配線体10と第二配線体20とを準備する。すなわち、第一配線体10については、まず、エラストマーシート11を、後方に向かって厚さが厚くなるように作製する。次に、エラストマーシート11の上面に、配線用塗料を所定のパターンでスクリーン印刷する。これにより、13本の第一配線12を形成する。一方、第二配線体20については、上記第一実施形態と同様に、市販のFFCを用いればよい。また、続く二つの工程(配置工程、圧着工程)は、上記第一実施形態と同じである。
【0086】
本実施形態の配線体接続構造体1は、第一実施形態の配線体接続構造体と共通する部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態の配線体接続構造体1によると、厚肉区間50の前方に配置されている第二端部23の最前端230には、中肉区間51が隣接されている。中肉区間51の厚さは、薄肉区間52の厚さよりも厚い。よって、中肉区間51の剛性は、薄肉区間52の剛性よりも大きい。これにより、最前端230から第一配線体10方向における剛性の変化を、小さくすることができる。したがって、第一配線体10が伸縮を繰り返しても、第二端部23の最前端230に、応力が集中しにくい。その結果、第二端部23の最前端230との境界付近における、第一配線12の断線が抑制される。このように、配線体接続構造体1によると、使用時における第一配線12の断線を抑制することができる。よって、配線体接続構造体1は、耐久性に優れる。また、本実施形態の配線体接続構造体1によると、第一配線体、第二配線体、異方導電接着剤以外に、別途部材を配置することなく、厚肉区間50、中肉区間51、および薄肉区間52が区画された配線体接続構造体を、容易に実現することができる。
【0087】
<第五実施形態>
本実施形態の配線体接続構造体と、第一実施形態の配線体接続構造体と、の相違点は、第一配線体の表面にカバーフィルムを配置した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0088】
まず、本実施形態の配線体接続構造体の構成について説明する。図6に、本実施形態の配線体接続構造体の斜視分解図を示す。図7に、同配線体接続構造体の前後方向断面図を示す。なお、図1、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図6、図7に示すように、配線体接続構造体1は、第一配線体10と、第二配線体20と、導電接着層30と、表側カバー部材40と、を備えている。
【0089】
第一配線体10は、エラストマーシート11と、第一配線12と、カバーフィルム14と、を有している。カバーフィルム14は、シリコーンゴム製であって、前後方向に延びる帯状を呈している。カバーフィルム14の厚さは、約20μmである。カバーフィルム14のヤング率は4MPaであり、引張強さは2.5MPaである。カバーフィルム14は、第一配線体10の上面を、前方から第一端部13上面の所定の位置まで(後述する第一被覆領域13bの後端まで)覆っている。
【0090】
第一端部13の上面には、第一露出領域13aと第一被覆領域13bとが配置されている。第一露出領域13aは、第一端部13の上面後方に配置されている。第一露出領域13aは、カバーフィルム14に覆われていない。つまり、第一露出領域13aでは、第一配線12が露出している。また、第一被覆領域13bは、第一露出領域13aの前方に連続して配置されている。第一被覆領域13bは、カバーフィルム14に上方から覆われている。つまり、第一被覆領域13bでは、エラストマーシート11の上面および第一配線12が、カバーフィルム14に覆われている。
【0091】
同様に、第二端部23の下面には、第二露出領域23aと第二被覆領域23bとが配置されている。第二被覆領域23bは、第二端部23の下面前方に配置されている。第二被覆領域23bは、カバーフィルム14を介して第一被覆領域13bと対向して配置されている。つまり、第二被覆領域23bは、カバーフィルム14に下方から覆われている。第二被覆領域23bには、第二端部23の最前端230が含まれる。また、第二露出領域23aは、第二被覆領域23bの後方に連続して配置されている。第二露出領域23aは、第一露出領域13aと対向して配置されている。第二露出領域23aは、カバーフィルム14に覆われていない。つまり、第二露出領域23aでは、第二配線22が露出している。
【0092】
導電接着層30は、第一端部13と第二端部23との間に介装されている。すなわち、第一露出領域13aと第二露出領域23aとは、導電接着層30を介して接着されている。また、第一被覆領域13bと第二被覆領域23bとは、カバーフィルム14および導電接着層30を介して接着されている。第一露出領域13aの第一配線12と第二露出領域23aの第二配線22とは、導電接着層30を介して導通している。
【0093】
表側カバー部材40は、第二端部23の上面と、その前方に連なる中肉区間51におけるカバーフィルム14の上面(第一配線体10の上面)と、を一体的に覆っている。
【0094】
次に、配線体接続構造体1の製造方法について説明する。配線体接続構造体1の製造方法は、配線体準備工程と、配置工程と、圧着工程と、表側カバー部材接着工程と、を有する。
【0095】
配線体準備工程においては、第一配線体10と第二配線体20とを準備する。すなわち、第一配線体10については、まず、エラストマーシート11の上面に、配線用塗料を所定のパターンでスクリーン印刷する。これにより、13本の第一配線12を形成する。次に、第一配線12を所定の範囲で覆うように、エラストマーシート11の上面にカバーフィルム用塗料を印刷する。これにより、カバーフィルム14を形成する。一方、第二配線体20については、上記第一実施形態と同様に、市販のFFCを用いればよい。
【0096】
配置工程においては、第一配線体10と異方導電接着剤と第二配線体20とを、積層配置する。具体的には、まず、第一端部13の上面に、硬化前のペースト状の異方導電接着剤を塗布する。次に、異方導電接着剤に重ねて、第二配線体20の第二端部23を配置する。この際、第一露出領域13aの第一配線12と第二露出領域23aの第二配線22とが各々対向するように、第一端部13と第二端部23とを配置する。
【0097】
圧着工程においては、異方導電接着剤を硬化させることにより、対向する第一配線12、第二配線22同士を、上下方向に導通可能に接着する。具体的には、第一端部13と異方導電接着剤と第二端部23とが積層された部分(厚肉区間50に相当)を、第二配線体20側から加熱すると共に、上下方向に加圧する。これにより、異方導電接着剤が硬化して、導電接着層30が形成される。その結果、第一露出領域13aと、第二露出領域23aと、が接着される。また、第二被覆領域23bと、第一被覆領域13bを覆うカバーフィルム14と、が接着される。
【0098】
表側カバー部材接着工程においては、シート状の表側カバー部材40を、第一端部13の上面および中肉区間51におけるカバーフィルム14の上面に、接着剤により接着する。このようにして、配線体接続構造体1が製造される。
【0099】
本実施形態の配線体接続構造体1は、第一実施形態の配線体接続構造体と共通する部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態の配線体接続構造体1によると、第一被覆領域13bと第二被覆領域23bとは、カバーフィルム14を介して接着されている。すなわち、第二被覆領域23bに含まれる第二端部23の最前端230と、第一被覆領域13bの第一配線12と、の間には、カバーフィルム14が介在している。このため、第一配線体10が伸縮して、第二端部23の最前端230に応力が生じても、カバーフィルム14が緩衝材になることにより、当該応力が第一配線12に加わりにくい。また、カバーフィルム14の引張強さは、第一配線12の引張強さよりも大きい。このため、第二端部23の最前端230から応力が加わっても、カバーフィルム14は破断しにくい。したがって、配線体接続構造体1によると、使用時における第一配線12の断線を抑制することができる。すなわち、配線体接続構造体1は、耐久性に優れる。
【0100】
また、配線体接続構造体1の製造過程において、第一端部13と異方導電接着剤と第二端部23との積層区間を加圧した場合、第二端部23の最前端230の角部は、導電接着剤を介してカバーフィルム14に当接する。カバーフィルム14が緩衝材になることにより、第一配線12への応力が軽減される。したがって、圧着時に第一配線12が切断されにくい。
【0101】
また、配線体接続構造体1において、第一配線体10の上面は、カバーフィルム14により被覆されている。このため、第一配線12を外部から絶縁することができ、安全性が高い。また、第一配線12の防水性を確保することができると共に、酸化を抑制することができる。また、配線体接続構造体1によると、カバーフィルム14を、第一被覆領域13bにまで延在させている。これにより、上述した第一配線12の断線抑制効果を得ることができる。つまり、第一配線12を保護するために、第二端部23の最前端230と、第一配線12と、の間に介装する介装部材を、別途準備する必要はない。したがって、配線体接続構造体1によると、部品点数が少なくて済み、製造も容易である。
【0102】
<その他>
以上、本発明の配線体接続構造体の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0103】
例えば、表側カバー部材、裏側カバー部材の材料としては、弾性を有する材料であれば特に限定されない。第一配線体の伸縮に追従可能な柔軟性を確保するという観点から、両カバー部材の材料のヤング率は、0.1MPa以上10MPa以下であることが望ましい。両カバー部材の材料としては、上記実施形態のシリコーンゴムの他、例えば、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、各種の熱可塑性エラストマー等が好適である。
【0104】
また、表側カバー部材、裏側カバー部材の柔軟性等を考慮すると、両カバー部材の厚さは、各々、第一基材と同じ、あるいは第一基材よりも薄いことが望ましい。
【0105】
上記第五実施形態では、第一配線体のカバーフィルムを、介装部材として使用した。例えば、カバーフィルムを配置しない場合には、第二端部の先端と第一配線との間に、別途、介装部材を配置することができる。また、介装部材とは別体として、カバーフィルムを配置してもよい。
【0106】
介装部材を配置する場合、介装部材は第一配線と比較して、機械的強度が大きいことが望ましい。例えば、介装部材の引張強さを、1MPa以上10MPa以下とするとよい。引張強さは、JIS K 6251(2004)に準じて測定すればよい。本明細書における引張強さの値は、試験片としてダンベル状3号形を使用して測定された値である。また、上記第五実施形態のように、カバーフィルムを介装部材として用いる場合には、カバーフィルムに必要な柔軟性等を考慮して、介装部材(カバーフィルム)のヤング率を、0.1MPa以上10MPa以下とするとよい。
【0107】
第一配線の断線抑制効果を向上させるという観点から、介装部材の厚さは厚い方が望ましい。例えば、介装部材の厚さを、第一配線と同じ、あるいは第一配線よりも厚くすることが望ましい。ただし、上記第五実施形態のように、カバーフィルムを介装部材として用いる場合には、カバーフィルムの柔軟性を確保する必要がある。したがって、介装部材(カバーフィルム)の厚さを、第一基材と同じ、あるいは第一基材よりも薄くすることが望ましい。
【0108】
第一配線体、第二配線体の配線数は、特に限定されない。例えば、各々の配線体に一本ずつ配置されていてもよい。また、複数の配線が配置されている場合には、隣接する配線同士の導通を防止する必要がある。したがって、複数の配線を有する第一端部と第二端部との間に、介装部材を配置する場合には、介装部材を絶縁材料で構成すればよい。
【0109】
介装部材の材料としては、上記実施形態のシリコーンゴムの他、例えば、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、各種の熱可塑性エラストマー等が好適である。なお、これらの材料は、カバーフィルムの材料としても好適である。
【0110】
上記実施形態では、大剛性区間、中剛性区間、小剛性区間を、各々、厚さの異なる厚肉区間、中肉区間、薄肉区間により構成した。しかし、大剛性区間、中剛性区間については、剛性が異なれば、厚さが同じであってもよい。また、大剛性区間(厚肉区間)に連なる中剛性区間(中肉区間)の長さ(前出図2における前後方向長さ)は、特に限定されない。例えば、中剛性区間を、大剛性区間の表裏方向厚さの5倍以上の長さにするとよい。
【0111】
上記実施形態では、第二配線体として、FFCを使用した。しかし、第二配線体はFFCに限定されない。第二配線体として、例えば、フレキシブルプリント配線板(FPC)等を使用してもよい。FPCによると、エッチングにより、容易に所望の配線パターンを形成することができる。このため、隣り合う第二配線間の間隔を変化させたり、第二配線同士を接合して集約することが容易である。また、第二配線体を接続するコネクタの種類は、特に限定されない。例えば、FPC、FFC等と接続可能な既存のコネクタ(ZIFコネクタ等)を使用すればよい。
【0112】
第一配線体の第一基材を構成するエラストマーとしては、上記実施形態のシリコーンゴムの他、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、各種の熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0113】
また、第一配線体の第一配線は、エラストマーと導電材とを含む。エラストマーは、第一基材材料のエラストマーと同じでもよく、異なっていてもよい。上記実施形態のアクリルゴムの他、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン等が好適である。導電材の種類は、特に限定されない。例えば、銀、金、銅、ニッケル等の金属粉末、導電性を有するカーボン粉末等が好適である。所望の導電性を発現させるため、エラストマーにおける導電材の充填率は、配線の体積を100vol%とした場合の20vol%以上であることが望ましい。一方、導電材の充填率が65vol%を超えると、エラストマーへの混合が困難となり、成形加工性が低下する。加えて、配線の伸縮性が低下する。このため、導電材の充填率は、50vol%以下であることが望ましい。
【0114】
配線の形成方法は、特に限定されない。例えば、まず、配線の形成成分を含む配線用塗料から、未加硫の薄膜状の配線を作製する。次に、当該配線を第一基材の表面に配置して、所定の条件下でプレスして加硫接着すればよい。また、配線用塗料を、第一基材の表面に印刷し、その後、加熱により乾燥させて、塗料中の溶剤を揮発させてもよい。印刷法によると、加熱時に、乾燥と同時に、エラストマー分の架橋反応を進行させることもできる。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、パッド印刷、リソグラフィー等が挙げられる。なかでも、高粘度の塗料も使用可能であり、塗膜厚さの調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。配線用塗料は、配線の形成成分(エラストマー、導電材、添加剤等)を溶剤に混合して、調製すればよい。この場合、所望の粘度になるように、固形分濃度を調整するとよい。
【0115】
上記実施形態では、導電接着層として、エポキシ樹脂(熱硬化型接着剤)を母材とする異方導電接着剤を使用した。熱硬化型接着剤の主剤としては、上記エポキシ樹脂の他、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン等を使用することができる。主剤の種類に応じて、適宜、硬化剤等の添加剤を組み合わせればよい。なお、第一配線体、第二配線体の配線数が各々一本の場合には、導電接着層に異方性がなくてもよい。
【0116】
異方性の有無によらず、導電接着層を構成する導電接着剤の母材としては、熱硬化型接着剤の他、熱可塑型接着剤、紫外線硬化型接着剤、エラストマー系接着剤等を使用することができる。
【0117】
例えば、熱硬化型接着剤によると、幅広い温度範囲で強固な接着力が得られるという利点がある。また、100℃以上のガラス転移温度(Tg)を容易に実現できるため、熱可塑型接着剤と比較して、使用可能な温度範囲が広いという利点がある。一般に、熱可塑型接着剤よりも、熱硬化型接着剤の方がガラス転移温度が高い。使用温度範囲内にガラス転移が生じる場合、ガラス転移温度以下ではガラス状態であり、高弾性率である。一方、ガラス転移温度を超えると、ゴム状態になるため、急激な弾性率の低下、および急激な熱膨張係数の増大が生じる。このように、ガラス転移温度を境に、導電接着剤の物性が大きく変化すると、弾性率変化に伴う接着強度の変化、熱膨張係数変化による寸法変化、導電性能の変化等が誘起される可能性がある。したがって、ガラス転移温度が高い熱硬化型接着剤によると、信頼性を保障できる温度範囲を広く設定することができる。
【0118】
第一配線体のエラストマーの熱膨張を抑制するという観点から、熱硬化型接着剤は、低温かつ短時間で硬化するものが望ましい。具体的には、硬化温度が、130℃以上180℃以下のものが望ましい。また、硬化時間が60秒以下、さらには20秒以下のものが望ましい。熱硬化型接着剤を母材として使用する場合、エラストマーの熱膨張を抑制するという観点から、第一配線体側に放熱手段を配置した状態で、導電接着剤の硬化を行うとよい。放熱手段としては、放熱板、冷媒による熱交換装置等が挙げられる。また、導電接着剤の物性変化を抑制して、接続部分の信頼性を確保するという観点から、できるだけガラス転移温度(Tg)の高いものが望ましい。例えば、Tgが130℃以上のものが好適である。熱硬化型接着剤を母材とする好適な異方導電接着剤として、京セラケミカル(株)製の異方導電接続材料「TAP0402F」、「TAP0401C」等が挙げられる。
【0119】
紫外線硬化型接着剤の主剤としては、上記熱硬化型接着剤と同様に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を使用することができる。主剤の種類に応じて、適宜、硬化剤等の添加剤を組み合わせればよい。
【0120】
熱可塑型接着剤に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。熱可塑型接着剤を母材とする好適な異方導電接着剤として、サンユレック(株)製の異方導電接着剤「NIR−30E」等が挙げられる。
【0121】
エラストマー系接着剤に使用されるエラストマーとしては、例えば、クロロプレンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。エラストマー系接着剤を母材とする好適な異方導電接着剤として、サンユレック(株)製の異方導電接着剤「NIR−11」、(株)スリーボンド製の「TB3373C」等が挙げられる。
【0122】
母材に充填される導電粒子の種類は、特に限定されない。ニッケル等の金属粒子や、樹脂粒子の表面を金属でめっきした粒子等を使用することができる。導電接着剤の固化または硬化は、使用する母材の種類に応じて、その方法、条件等を適宜決定すればよい。また、導電接着剤の固化または硬化は、厚肉区間を加圧しながら行うことが望ましい。例えば、圧力を、9.8〜490kPa程度とするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の配線体接続構造体は、エラストマーを利用した柔軟なセンサ、アクチュエータ等における伸縮可能な配線体を、電気回路に接続するのに有用である。
【符号の説明】
【0124】
1:配線体接続構造体
10:第一配線体 11:エラストマーシート(第一基材) 12:第一配線
13:第一端部 13a:第一露出領域 13b:第一被覆領域 14:カバーフィルム
20:第二配線体 21:絶縁基材(第二基材) 22:第二配線
23:第二端部 23a:第二露出領域 23b:第二被覆領域
230:最前端(先端)
30:導電接着層
40:表側カバー部材 41:裏側カバー部材
50:厚肉区間 51:中肉区間 52:薄肉区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー製の第一基材と、該第一基材に配置されエラストマーおよび導電材を含む第一配線と、を有する第一配線体と、
第二基材と、該第二基材に配置される第二配線と、を有する第二配線体と、
を備え、
該第一配線体の第一端部と該第二配線体の第二端部とが、導電接着層を介して表裏方向に重なる大剛性区間と、
該大剛性区間に連なり、該第一配線体を含み、該大剛性区間よりも剛性が小さい中剛性区間と、
該中剛性区間に連なり、該第一配線体からなり、該中剛性区間よりも剛性が小さい小剛性区間と、
が区画されることを特徴とする配線体接続構造体。
【請求項2】
前記大剛性区間は、表裏方向厚さが最も厚い厚肉区間であり、
前記中剛性区間は、該厚肉区間よりも表裏方向厚さが薄い中肉区間であり、
前記小剛性区間は、該中肉区間よりも表裏方向厚さが薄い薄肉区間である請求項1に記載の配線体接続構造体。
【請求項3】
前記大剛性区間および前記中剛性区間には、前記第二配線体の表面および前記第一配線体の表面を覆うように、表側カバー部材が配置され、
該大剛性区間には、表側から裏側に向かって、少なくとも、該表側カバー部材、前記第二端部、前記導電接着層、前記第一端部が積層され、
該中剛性区間には、表側から裏側に向かって、少なくとも、該表側カバー部材、該第一配線体が積層される請求項1または請求項2に記載の配線体接続構造体。
【請求項4】
前記大剛性区間および前記中剛性区間には、前記第一配線体の裏面を覆うように、裏側カバー部材が配置され、
該大剛性区間には、表側から裏側に向かって、少なくとも、前記第二端部、前記導電接着層、前記第一端部、該裏側カバー部材が積層され、
該中剛性区間には、表側から裏側に向かって、少なくとも、該第一配線体、該裏側カバー部材が積層される請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の配線体接続構造体。
【請求項5】
さらに、前記大剛性区間において、前記第二端部の先端と、前記第一配線と、の間に介装される介装部材を備える請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の配線体接続構造体。
【請求項6】
前記第一端部の表面には、前記介装部材に覆われない第一露出領域と、該第一露出領域に連なり該介装部材に表側から覆われる第一被覆領域と、が配置され、
前記第二端部の裏面には、該介装部材に覆われない第二露出領域と、該第二露出領域に連なり該介装部材に裏側から覆われると共に前記先端を含む第二被覆領域と、が配置され、
該第一露出領域と該第二露出領域とは、前記導電接着層を介して接着され、該第一被覆領域と該第二被覆領域とは、該導電接着層と該介装部材とを介して接着される請求項5に記載の配線体接続構造体。
【請求項7】
前記第一配線体は、前記第一配線を外部から絶縁するカバーフィルムを有し、
前記介装部材は、該カバーフィルムである請求項5または請求項6に記載の配線体接続構造体。
【請求項8】
前記第一配線体は、複数の前記第一配線を有し、
前記第二配線体は、複数の前記第二配線を有し、
前記導電接着層は、表裏方向に対向する該第一配線と該第二配線とを各々導通させる異方導電接着剤からなる請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の配線体接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−33597(P2012−33597A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170240(P2010−170240)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】