説明

配線基板およびその実装構造体ならびに配線基板の製造方法

【課題】本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板およびその実装構造体ならびに配線基板の製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明の一形態にかかる配線基板3は、基材11および樹脂部10を含む基体7と、該基体7の一主面に部分的に形成された第1導電層13aと、基体7の他主面に部分的に形成された第2導電層13bと、基体7を貫通して第1導電層13aおよび第2導電層13bに接続したスルーホール導体8とを備え、該スルーホール導体8は、第2導電層13bから第1導電層13aに向かって幅が狭くなっており、第2導電層13bの厚みは、第1導電層13aの厚みよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器およびその周辺機器)等に使用される配線基板およびその実装構造体ならびに配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における実装構造体としては、配線基板に電子部品を実装したものが使用されている。
【0003】
特許文献1には、両面銅張積層板にレーザ加工を行って貫通スルーホールを形成し、該貫通スルーホールをメッキ金属で封止した配線基板が記載されている。
【0004】
ところで、両面銅張積層板にレーザ加工を行う際、レーザの入射側には熱が強く印加されるため、絶縁基材を構成する樹脂材料に損傷が生じやすい。それ故、貫通スルーホールのレーザ入射側において、絶縁基材とメッキ金属との剥離が生じて該メッキ金属に断線が生じやすくなり、ひいては配線基板の電気的信頼性が低下しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000‐77809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板およびその実装構造体ならびに配線基板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態にかかる配線基板は、基材および樹脂部を含む基体と、該基体の一主面に部分的に形成された第1導電層と、前記基体の他主面に部分的に形成された第2導電層と、前記基体を貫通して前記第1導電層および前記第2導電層に接続したスルーホール導体とを備え、該スルーホール導体は、前記第2導電層から前記第1導電層に向かって幅が狭くなっており、前記第2導電層の厚みは、前記第1導電層の厚みよりも大きい。
【0008】
本発明の一形態にかかる実装構造体は、上記配線基板と、該配線基板の前記第1導電層側の主面に実装され、前記第1導電層に電気的に接続された電子部品とを備える。
【0009】
本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法は、基材および樹脂部を含む基体と、該基体の一主面に形成された第1導電材料層と、前記基体の他主面に形成された第2導電材料層とを備え、前記第2導電材料層の厚みが前記第1導電材料層の厚みよりも大きい積層板を準備する工程と、前記積層板の前記第2導電材料層側の主面にレーザ光を照射することによって、前記第2導電材料層側から前記第1導電材料層側に向かって前記基体にスルーホールを形成する工程と、前記スルーホール内にスルーホール導体を形成する工程と、前記第1導電材料層をパターニングして第1導電層を形成する工程と、前記第2導電材料層をパターニングして第2導電層を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態にかかる配線基板およびその実装構造体ならびに配線基板の製造方法に
よれば、レーザ光の入射側における基体の損傷を低減し、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板および実装構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態にかかる実装構造体を厚み方向に切断した断面図であり、図1(b)は、図1(a)の第2ランド部15bと第2ビア導体14bとの接続態様を表す平面図である。
【図2】図2(a)および(c)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図3】図3(a)および(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る実装構造体を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1(a)に示した実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、電子部品2がフリップチップ実装された配線基板3と、電子部品2および配線基板3に接続された導体バンプ4と、を含んでいる。
【0014】
電子部品2は、例えばICまたはLSI等の半導体素子として機能するものであり、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウムまたは炭化珪素等の半導体材料により形成することができる。この電子部品2は、厚みが例えば0.1mm以上1mm以下に設定されており、平面方向(XY平面方向)および厚み方向(Z方向)への熱膨張率が例えば3ppm/℃以上5ppm/℃以下に設定されている。
【0015】
なお、電子部品2の熱膨張率は、市販のTMA装置を用いてJISK7197‐1991に準じた測定方法により測定される。以下、各部材の熱膨張率は、電子部品2と同様に測定される。
【0016】
配線基板3は、コア基板5と、該コア基板5の上下に形成された一対の配線層6と、を含んでいる。この配線基板3は、一主面に電子部品2が実装され、他主面がマザーボード(図示せず)に実装される。
【0017】
コア基板5は、配線基板3の強度を高めるものであり、基体7と、該基体7を厚み方向に貫通するスルーホールTに形成された筒状のスルーホール導体8と、該スルーホール導体8の内部に配された柱状の絶縁体9と、を含んでいる。
【0018】
基体7は、コア基板5の主要部をなして剛性を高めるものであり、樹脂部10と、樹脂部10により被覆された基材11と、該樹脂部10により被覆された無機絶縁フィラーと、を含んでいる。基体7の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下に設定されている。基体7の平面方向への熱膨張率は、例えば5ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定され、基体7の厚み方向への熱膨張率は、例えば15ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば15GPa以上45GPa以下に設定されている。
【0019】
なお、基体7のヤング率は、MTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。以下、各部材のヤング率は、基体7と同様に測定される。
【0020】
基体7の樹脂部10は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂
等の熱硬化性樹脂により形成することができる。なお、基体7の樹脂部10は、例えばフッ素樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂を用いても構わない。
【0021】
基体7の基材11としては、繊維により構成された織布を用いることができ、基材11を構成する繊維としては、例えばガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維または金属繊維等を使用することができる。なお、基材11として、不織布または繊維を一方向に配列したもの(UD)を使用しても構わない。
【0022】
基体7の無機絶縁フィラーは、基体7を高剛性および低熱膨張にするものであり、例えば酸化ケイ素等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0023】
スルーホール導体8は、コア基板5の上下の配線層6を電気的に接続するものであり、例えば銅等を含む導電材料により形成することができる。
【0024】
ここで、スルーホール導体8が被着されるスルーホールTは、底面が円形の柱状であって、コア基板5のマザーボード側から電子部品2側に向かって幅狭となるようにテーパー状に形成されている。その結果、スルーホールTを電子部品2側で小径化することができ、配線を微細化することができる。このテーパー状のスルーホールTは、レーザ加工により形成され、レーザ光の入射側から出射側に向かって幅狭となる。
【0025】
絶縁体9は、後述するビア導体14の支持面を形成するものであり、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料により形成することができる。
【0026】
一方、コア基板5の上下には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。配線層6は、基体7上に積層された複数の絶縁層12と、基体7上または絶縁層12上に形成された導電層13と、絶縁層12を厚み方向に貫通するビア孔Vに形成され、導電層13に接続されたビア導体14と、を含んでいる。
【0027】
絶縁層12は、導電層13を支持する支持部材として機能するだけでなく、導電層13同士の短絡を防ぐ絶縁部材として機能するものであり、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂材料と、該樹脂材料により被覆された、酸化ケイ素等の粒子からなる無機絶縁フィラーとを含んでいる。この絶縁層12は、厚みが例えば5μm以上40μm以下に設定され、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば15ppm/℃以上45ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば5GPa以上40GPa以下に設定されている。
【0028】
導電層13は、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線として機能するものであり、例えば銅等を含む導電材料により形成することができる。この導電層13は、厚みが4μm以上15μm以下に設定され、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば16ppm/℃以上19ppm/℃以下に設定され、ヤング率が60GPa以上130GPa
以下に設定されている。
【0029】
ビア導体14は、厚み方向に互いに離間した導電層13同士を相互に接続するものであり、例えば銅等を含む導電材料により形成することができる。このビア導体14は、例えば、コア基板5に向かって幅狭となる柱状に形成されるとともに底面が円形状に形成されており、ビア導体14の貫通方向に沿った断面における最大幅は、例えば15μm以上40μm以下に設定され、ビア導体14の貫通方向に沿った断面における最小幅は、例えば10μm以上30μm以下に設定され、各方向への熱膨張率が例えば16ppm/℃以上19ppm/℃以下に設定され、ヤング率が60GPa以上130GPa以下に設定され
ている。
【0030】
ここで、便宜上、絶縁層12の内、基体7の電子部品2側の主面に配された絶縁層12を第1絶縁層12aとし、基体7のマザーボード側の主面に配された絶縁層12を第2絶縁層12bとする。なお、本実施形態において、第1絶縁層12aの厚みと第2絶縁層12bの厚みは同一であり、第1絶縁層12aの厚みは、第2絶縁層12bの厚みの例えば0.9倍以上1.1倍以下に設定されている。
【0031】
また、導電層13の内、基体7の第1絶縁層12a側の主面に配された導電層13を第1導電層13aとし、基体7の第2絶縁層12b側の主面に配された導電層13を第2導電層13bとし、第2絶縁層12bの第2導電層13bと反対側の主面に配された導電層13を第3導電層13cとする。なお、上述したスルーホールTは、第2導電層13bから第1導電層13aに向かって幅狭なテーパー状となっている。
【0032】
また、第2導電層13bは、平板状であって円柱状の第1ランド部15aを有しており、第3導電層13cは、平面視したときに第1ランド部15aと重なる位置に配された平板状であって円柱状の第2ランド部15bを有している。第1ランド部15aの厚み方向に沿った断面における幅は、例えば40μm以上100μm以下に設定され、第2ランド部15bの厚み方向に沿った断面における幅は、例えば40μm以上100μm以下に設定されている。また、第1ランド部15aの厚み方向に沿った断面における幅は、第2ランド部15bの厚み方向に沿った断面における幅と同一に設定されており、第2ランド部15bの厚み方向に沿った断面における幅の例えば0.9倍以上1.1倍以下に設定されている。また、第1ランド部15aと第2ランド部15bとは、平面視にて図心が同じ箇所に配されており、第1ランド部15aと第2ランド部15bとの平面視における図心同士の距離は、平面視にて円形状である第1ランド部15aおよび第2ランド部15bの径の例えば10%以下である。
【0033】
また、ビア導体14の内、第1絶縁層12aを貫通するビア導体14を第1ビア導体14aとし、第2絶縁層12bを貫通するビア導体14を第2ビア導体14bとし、第3絶縁層12cを貫通するビア導体14を第3ビア導体14cとする。
【0034】
ところで、第2導電層13bから第1導電層13aに向かって幅狭なテーパー状のスルーホールTを基体7に形成する際、基体7は、第2導電層13a側からレーザ光が入射されるため、第2導電層13b側において熱が印加されやすい。
【0035】
一方、本実施形態の配線基板3においては、第2導電層13bの厚みが第1導電層13aの厚みよりも大きい。その結果、基体7よりも熱伝導率の高い第2導電層13bの厚みを大きくすることによって、レーザ光の熱を良好に拡散させることができるため、基体7の第2導電層13b側における損傷を低減することができる。したがって、第2導電層13b側におけるスルーホールT内壁とスルーホール導体8との剥離を低減することができるため、スルーホール導体8の断線を低減することができ、ひいては信頼性に優れた配線基板3を提供することができる。
【0036】
さらに、基体7の第2導電層13b側における損傷を低減することによって、第2導電層13b側におけるスルーホールT内壁で樹脂部10と基材11との剥離を低減することができる。したがって、該剥離箇所へのスルーホール導体8の侵入を低減することができるため、隣接するスルーホール導体8同士の絶縁信頼性を高め、ひいてはスルーホール導体8を近接させて高密度化することができる。
【0037】
その上、第1導電層13aの厚みを小さくすることによって、基体7の電子部品2側に配された第1導電層13aを微細化することができ、ひいては電子部品2側の配線層6を
高密度化することができる。
【0038】
なお、第1導電層13aの厚みは、例えば5μm以上15μm以下に設定され、第2導電層13bの厚みは、例えば8μm以上18μm以下に設定されている。また、第2導電層13bの厚みは、第1導電層13aの厚みの例えば1.2倍以上1.7倍以下に設定されている。
【0039】
ところで、第2導電層13bの厚みを第1導電層13aの厚みよりも大きくすると、基体7の上下に配された第1導電層13aと第2導電層13bとの体積に差が出やすい。
【0040】
一方、本実施形態においては、第2導電層13bの平面視における面積は、第1導電層13aの平面視における面積よりも小さい。すなわち、第2導電層13bの残銅率が第1導電層13aの残銅率よりも小さい。その結果、第2導電層13bの厚みを第1導電層13aの厚みよりも大きくした場合において、基体7の上下に配された第1導電層13aと第2導電層13bとの体積の差を低減することができるため、該体積の差に起因した基体7の反りを低減することができ、ひいては配線基板の信頼性を高めることができる。
【0041】
なお、第1導電層13aの残銅率は、例えば50%以上70%以下に設定され、第2導電層13bの残銅率は、例えば40%以上60%以下に設定されている。また、第2導電層13bの残銅率は、第1導電層13bの残銅率の例えば1.2倍以上1.5倍以下に設定されている。ここで、第1導電層13aの残銅率は、配線基板3の第1導電層13aが形成された層を平面視した場合において、該層全体における第1導電層13aが占める割合を測定することによって求められる。また、第2導電層13bの残銅率は、第1導電層13aと同様に求められる。また、第1導電層13aおよび第2導電層13bの残銅率は、第1導電層13aおよび第2導電層13bに形成されるパーフォレーション(貫通孔)の大きさや数を調節することによって、調節することができる。
【0042】
一方、本実施形態において、第2ビア導体14bの最大幅は、第1ビア導体14aの最大幅よりも小さい。ここで、本実施形態においては、上述した如く、第1絶縁層11aの厚みと第2絶縁層11bの厚みは同一であり、且つ第2導電層13aの厚みが大きいため、第2ビア導体14bを第1ビア導体14aと同様の条件で形成すると、第2ビア導体14bの最小幅は第1ビア導体14aよりも大きくなりやすいが、第2ビア導体14bの最大幅を第1ビア導体14aの最大幅よりも小さくすることによって、第2ビア導体14bの最小幅を第1ビア導体14aの最小幅に近づけつつ、第2ビア導体14bを小型化することができる。
【0043】
さらに、第2ビア導体14bの最小幅は、第1ビア導体14aの最小幅と同一であることが望ましい。その結果、第2ビア導体14bと第2導電層13bとの接続信頼性を担保することができる。
【0044】
なお、第1ビア導体14aの最大幅は、例えば15μm以上35μm以下に設定され、第2ビア導体14bの最大幅は、例えば10μm以上30μm以下に設定されている。また、第2ビア導体14bの最大幅は、第1ビア導体14aの最大幅の例えば0.6倍以上0.8倍以下に設定されている。
【0045】
また、第1ビア導体14aの最小幅は、例えば10μm以上30μm以下に設定され、第2ビア導体14bの最小幅は、例えば5μm以上25μm以下に設定されている。また、第2ビア導体14bの最小幅は、第1ビア導体14aの最小幅の例えば0.9倍以上1.1倍以下に設定されている。
【0046】
また、この第2ビア導体14bは、複数形成されているとともに第2導電層13bの第1ランド部15aおよび第3導電層13cの第2ランド部15bに接続されている。その結果、複数の第2ビア導体14bによって第1ランド部15aと第2ランド部15bとを接続するため、第2ビア導体14bの最大幅を第1ビア導体14aよりも小さくしたとしても、第1ランド部15aと第2ランド部15bとの接続強度を高めることができる。
【0047】
この第2ランド部15bには、図1(b)に示すように、4つの第2ビア導体14bが接続されていることが望まく、該4つの第2ビア導体14bは十字状に配されていることが望ましい。その結果、複数の第2ビア導体14bそれぞれに応力を分散させることができ、第2ランド部15bと第2ビア導体14bとの接続信頼性を高めることができる。
【0048】
また、第2ランド部15bに接続した第3ビア導体14cは、図1(b)に示すように、平面視において、十字状に配された4つの第2ビア導体14bの図心に配されている。その結果、複数の第2ビア導体14bそれぞれに応力を分散させることができ、第2ランド部15bと第2ビア導体14bとの接続信頼性を高めることができるとともに、第2ランド部15bと第3ビア導体14cとの接続部にて応力を分散させることができ、第2ランド部15bと第3ビア導体14cとの接続信頼性を高めることができる。なお、第3ビア導体14cは、第2ランド部15bの図心に配されていることが望ましい。
【0049】
かくして、上述した実装構造体1は、配線基板3を介して供給される電源や信号に基づいて電子部品2を駆動若しくは制御することにより、所望の機能を発揮する。
【0050】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図2から図3に基づいて説明する。
【0051】
(1)図2(a)ないし(c)に示すように、コア基板5を準備する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0052】
まず、図2(a)に示すように、例えば未硬化樹脂を含む前駆体シートを複数積層するとともに最外層に金属箔を積層し、該積層体を加熱加圧して硬化させることにより、金属箔からなる第1導電材料層13axおよび第2導電材料層13bxが上下に形成された基体7を作製する。次に、図2(b)に示すように、第2導電材料層13bxにレーザ光を照射し(照射方向L)、第2導電材料層13bx側から第1導電層13ax側に向かって基体7を貫通するスルーホールTを形成する。次に、図2(c)に示すように、無電解めっき法、電解めっき法、スパッタリング法または蒸着法またはCVD法等を用いて、スルーホールTの内壁に導電材料を被着させることによって、スルーホール導体8を形成する。次に、エッチング法およびフォトリソグラフィ技術を用いて、第1導電材料層13axをパターニングして第1導電層13aを形成し、第2導電材料層13bxをパターニングして第2導電層13bを形成する。次に、スルーホール導体8に取り囲まれた領域に樹脂材料を充填して絶縁体9を形成する。
【0053】
一方、本実施形態においては、第2導電材料層13bxの厚みが、第1導電材料層13axの厚みよりも大きい。その結果、レーザ光を用いて、第2導電材料層13bx側から第1導電層13ax側に向かって基体7を貫通する際に、レーザ光の出射側よりも熱が大量に印加されやすい入射側において、基体7よりも熱伝導率の高い第2導電材料層13bxの厚みを大きくすることによって、基体7の第2導電材料層13bx側(レーザ光の入射側)における熱を良好に拡散させることができるため、基体7の第2導電材料層13bx側における損傷を低減することができる。したがって、スルーホールTの第2導電材料層13bx側の内壁にスルーホール導体8を良好に被着させることができ、該スルーホール導体8の断線を低減することができる。
【0054】
さらに、レーザ光を用いて、第2導電材料層13bx側から第1導電層13ax側に向かって基体7を貫通しているため、基体7に第2導電材料層13bx側から第1導電材料層13ax側に向かって幅狭なスルーホールTを形成することができる。その結果、基体7の電子部品2側の主面においてスルーホールTの開口を小型化し、配線密度を高めることができる。
【0055】
その上、第1導電材料層13axの厚みが小さいため、エネルギーが低下して加工性にばらつきが出やすいレーザ光の出射側において、第1導電材料層13axの加工に要するエネルギーを低減して加工性のばらつきを低減し、ひいては各スルーホールTの形状のばらつきを低減することができる。
【0056】
また、第1導電材料層13axの厚みが小さいため、第1導電材料層13axをパターニングする際に容易に微細化することができる。
【0057】
ここで、第1導電材料層13axよりも厚みの大きい第2導電材料層13bxは、第1導電材料層13axに用いる金属箔よりも厚みの大きい金属箔を第2導電材料層13bxに用いることによって、形成することができる。
【0058】
また、第2導電材料層13bxに照射するレーザ光は、YAGレーザまたはYVO4レーザ等のUVレーザを用いることが望ましい。その結果、レーザ光の波長が短いことから銅に吸収されやすいため、基体7に印加される熱を低減しつつ、厚みの大きい第2導電材料層13bxを容易に貫通させることができる。このUVレーザは、レーザ光の波長が例えば200nm以上380nm以下に設定され、レーザ光の1パルス(ショット)当たりのエネルギーが例えば0.1μJ以上100μJ以下に設定され、レーザ光のパルス幅が例えば10ns(ナノ秒)以上100ns以下に設定され、レーザ光のショット数が例えば100以上10,000以下に設定されている。
【0059】
また、第1導電材料層13axおよび第2導電材料層13bxを所望の形状にパターニングすることによって、第1導電層13aおよび第2導電層13bの残銅率を調節することができる。
【0060】
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0061】
(2)図3(a)および(b)に示すように、コア基板5の両側に一対の配線層6を形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0062】
まず、図3(a)に示すように、未硬化の樹脂をコア基板5上に配置し、樹脂を加熱して流動密着させつつ、更に加熱して樹脂を硬化させることにより、コア基板5上に絶縁層12を形成する。次に、YAGレーザまたはYVO4レーザ等のUVレーザを用いて、絶縁層12にビア孔Vを形成し、該ビア孔V内に導電層13の少なくとも一部を露出させる。次に、セミアディティブ法、サブトラクティブ法またはフルアディティブ法等により、貫通孔にビア導体14を形成するとともに絶縁層12上に導電層13を形成する。
【0063】
これらの工程を繰り返すことにより、図3(b)に示すように、配線層6を形成することできる。
【0064】
ここで、UVレーザを用いてビア孔Vを形成することによって、ビア孔Vを小径化することができる。
【0065】
また、ビア孔Vを形成する際にレーザ光の照射エネルギー、ショット数、回転半径また
はアパチャーを調節することによって、第2ビア導体14bの最大幅を第1ビア導体14aの最大幅よりも小さくすることができる。
【0066】
以上のようにして、コア基板5上に配線層6を形成し、配線基板3を作製することができる。なお、本工程を繰り返すことにより、配線層6をより多層化させることができる。
【0067】
(3)配線基板3に導体バンプ4を介して電子部品2をフリップチップ実装することにより、図1(a)に示す実装構造体1を作製することができる。
【0068】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。
【0069】
例えば、上述した実施形態において、配線基板が配線層およびコア基板を含む構成を例に説明したが、配線基板はコア基板のみを含んでいても構わない。
【0070】
また、上述した実施形態において、配線層が絶縁層を2層含む構成を例に説明したが、配線層は、絶縁層を1層含んでいても構わないし、絶縁層を3層以上含んでいても構わない。
【0071】
また、上述した実施形態において、第1絶縁層および第2絶縁層の厚みが同一である構成を例に説明したが、第1絶縁層の厚みは、第2絶縁層の厚みよりも大きくても構わない。この場合、第2導電層の厚みが第1導電層の厚みよりも大きいことに起因した基体の反りを低減することができる。
【0072】
また、上述した実施形態において、電子部品側の配線層の層数とマザーボード側の配線層の層数が同一である構成を例に説明したが、電子部品側の配線層の層数は、マザーボード側の配線層の層数よりも多くても構わない。この場合、第2導電層の厚みが第1導電層の厚みよりも大きいことに起因した基体の反りを低減することができるとともに、電子部品側の配線層を高密度化することができる。
【0073】
また、上述した実施形態において、基体7の熱膨張率の分布について詳細に説明してないが、基体7は、第1導電層側から第2導電層側に向かって熱膨張率が小さくなっていても構わない。この場合、第2導電層の厚みが第1導電層の厚みよりも大きいことに起因した基体の反りを低減することができる。
【0074】
また、上述した実施形態の(1)の工程において、第1導電材料層よりも厚みの大きい第2導電材料層を形成する方法として、第1導電材料層に用いる金属箔よりも厚みの大きい金属箔を第2導電材料層に用いる方法を例に説明したが、第1導電材料層よりも厚みの大きい第2導電材料層を形成する方法としては、第1導電材料層および第2導電材料層を形成した後に第1導電材料層を選択的にエッチングする方法を用いても構わないし、無電解めっき法、電解めっき法、スパッタ法、蒸着法またはCVD法によって第1導電材料層および第2導電材料層を基体に被着させ、該被着量を調節する方法を用いても構わない。
【符号の説明】
【0075】
1 実装構造体
2 電子部品
3 配線基板
4 導体バンプ
5 コア基板
6 配線層
7 基体
8 スルーホール導体
9 絶縁体
10 樹脂部
11 基材
12 絶縁層
13 導電層
14 ビア導体
15a 第1ランド部
15b 第2ランド部
T スルーホール
V ビア孔
L 照射方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および樹脂部を含む基体と、該基体の一主面に部分的に形成された第1導電層と、前記基体の他主面に部分的に形成された第2導電層と、前記基体を貫通して前記第1導電層および前記第2導電層に接続したスルーホール導体とを備え、
該スルーホール導体は、前記第2導電層から前記第1導電層に向かって幅が狭くなっており、
前記第2導電層の厚みは、前記第1導電層の厚みよりも大きいことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第2導電層の平面視における面積は、前記第1導電層の平面視における面積よりも小さいことを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記基体の前記第1導電層側の主面に配された第1絶縁層と、
該第1絶縁層を貫通して前記第1導電層に接続した第1ビア導体と、
前記基体の前記第2導電層側の主面に配された第2絶縁層と、
該第2絶縁層を貫通して前記第2導電層に接続した第2ビア導体と
をさらに備え、
前記第2ビア導体の最大幅は、前記第1ビア導体の最大幅よりも小さいことを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項3に記載の配線基板において、
前記第2絶縁層の前記第2導電層と反対側の主面に配された第3導電層をさらに備え、前記第2導電層は、平板状の第1ランド部を有しており、
前記第3導電層は、平板状の第2ランド部を有しており、
前記第2ビア導体は、複数形成されているとともに前記第1ランド部および前記第2ランド部に接続されていることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板と、
該配線基板の前記第1導電層側の主面に実装され、前記第1導電層に電気的に接続された電子部品と
を備えたことを特徴とする実装構造体。
【請求項6】
基材および樹脂部を含む基体と、該基体の一主面に形成された第1導電材料層と、前記基体の他主面に形成された第2導電材料層とを備え、前記第2導電材料層の厚みが前記第1導電材料層の厚みよりも大きい積層板を準備する工程と、
前記積層板の前記第2導電材料層側の主面にレーザ光を照射することによって、前記第2導電材料層側から前記第1導電材料層側に向かって前記基体にスルーホールを形成する工程と、
前記スルーホール内にスルーホール導体を形成する工程と、
前記第1導電材料層をパターニングして第1導電層を形成する工程と、
前記第2導電材料層をパターニングして第2導電層を形成する工程と
を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−156368(P2012−156368A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15257(P2011−15257)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】