説明

配線基板およびその製造方法

【課題】比較的低温で、低抵抗かつピッチの狭い配線を有する配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の配線基板の製造方法は、基材11と、基材11の一方の面11aに設けられた受理層12と、受理層12上に導電性インクにより形成された金属銀からなる配線13と、を備えた配線基板10の製造方法であって、基材11の一方の面11aに、ラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液を塗布して未硬化の塗膜を形成した後、その塗膜を乾燥させることにより受理層12を形成する工程Aと、β−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含む導電性インクを用い、印刷により、受理層12上に配線パターンを形成した後、この配線パターンが形成された基材11を加熱することにより、受理層12上に配線13を形成する工程Bと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、比較的低温で加熱して金属銀を形成することが可能な導電性インクを用い、印刷により、従来よりもピッチが狭い配線を形成した配線基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属銀は、導電性に優れることから、配線(導電体)を形成するための材料として用いられている。一般的な金属銀の製造方法としては、例えば、粒子状の酸化銀をバインダーに分散させ、これに還元剤を添加してペーストを調製し、このペーストを基材などに塗布して加熱する方法が挙げられる。このように、還元剤の存在下で250℃の高温で加熱することにより、酸化銀が還元され、還元により生成された金属銀が相互に融着して、金属銀を含む被膜が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、銀ナノ粒子を溶媒に分散した導電性インクを用いて、基材の表面に形成した受理層にこの導電性インクを印刷して、金属銀からなる配線を形成する方法も開示されている(例えば、特許文献1参照)。この配線の形成方法では、受理層に、導電性インクに含まれる溶媒や保護剤を吸収させ、受理層の表面に金属ナノ粒子のみを残した後、約150℃で30分程度加熱処理することにより、金属銀からなる配線が形成される(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、これらの導電性インクを用いた配線の形成方法は、高温、もしくは長時間加熱処理する必要があるため、紙や熱可塑性樹脂などの耐熱性に劣る材質からなる基材への配線の形成は困難であった。
そこで、比較的低温で加熱しても金属銀を形成することが可能な導電性インクとして、銀塩を溶媒に溶解した導電性インクが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
ところが、この銀塩を含む導電性インクを用いて、基材の表面に形成した受理層にこの導電性インクを印刷したところ、この導電性インクは全て受理層に吸収されてしまい、結果として得られた配線は抵抗値が高すぎて、配線として十分に機能しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−134878号公報
【特許文献2】特開2006−193594号公報
【特許文献3】特開2009−114232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、比較的低温で、低抵抗かつピッチの狭い配線を有する配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線基板は、基材と、該基材の一方の面に設けられた受理層と、該受理層上に導電性インクにより形成された金属銀からなる配線と、を備えた配線基板であって、前記受理層は、ラテックスとポリビニルアルコールを含んでなり、前記導電性インクは、下記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含むインクであることを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
ただし、上記の式(1)において、Rは、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、R−CY−、CY−、R−CHY−、RO−、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基、RN−、水酸基、アミノ基、または、(RO)CY−である。
【0011】
ただし、Yは同一または異なり、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子または水素原子である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C19脂肪族炭化水素基、または、フェニル基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C16脂肪族炭化水素基である。RおよびRは同一または異なり、それぞれ直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C18脂肪族炭化水素基である。
【0012】
上記の式(1)において、Xは、同一または異なり、それぞれ水素原子、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、RO−、RS−、R−CO−、R−CO−O−、ハロゲン、ベンジル基、フェニル基、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基である。
【0013】
ただし、Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C10脂肪族炭化水素基、チオフェニル基、フェニル基、ジフェニル基、または、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基である。
【0014】
本発明の配線基板の製造方法は、基材と、該基材の一方の面に設けられた受理層と、該受理層上に導電性インクにより形成された金属銀からなる配線と、を備えた配線基板の製造方法であって、基材の一方の面に、ラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液を塗布して未硬化の塗膜を形成した後、該塗膜を乾燥させることにより、前記基材の一方の面に受理層を形成する工程Aと、下記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含む導電性インクを用い、印刷により、前記受理層上に配線パターンを形成した後、前記配線パターンが形成された基材を加熱することにより、前記受理層上に配線を形成する工程Bと、を有することを特徴とする。
【0015】
【化2】

【0016】
ただし、上記の式(1)において、Rは、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、R−CY−、CY−、R−CHY−、RO−、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基、RN−、水酸基、アミノ基、または、(RO)CY−である。
【0017】
ただし、Yは同一または異なり、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子または水素原子である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C19脂肪族炭化水素基、または、フェニル基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C16脂肪族炭化水素基である。RおよびRは同一または異なり、それぞれ直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C18脂肪族炭化水素基である。
【0018】
上記の式(1)において、Xは、同一または異なり、それぞれ水素原子、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、RO−、RS−、R−CO−、R−CO−O−、ハロゲン、ベンジル基、フェニル基、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基である。
【0019】
ただし、Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C10脂肪族炭化水素基、チオフェニル基、フェニル基、ジフェニル基、または、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配線基板によれば、ラテックスとポリビニルアルコールを主成分とする受理層上に、β−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含む導電性インクにより形成された金属銀からなる配線が設けられているので、受理層上にて、導電性インクのにじみが抑えられ、導電性インクによる導電性を保ったまま、ピッチの狭い配線が得られる。また、受理層により、導電性インクのにじみが抑えられているので、導電性インクを焼成してなる配線は、金属銀が稠密な被膜をなしており、抵抗値が低くなる。
【0021】
本発明の配線基板の製造方法によれば、ラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液を用いて受理層を形成した後、その受理層上にβ−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含む導電性インクからなる配線パターンを形成するので、受理層上に塗布した導電性インクのにじみが抑えられ、導電性インクによる導電性を保ったまま、ピッチの狭い配線を形成することができる。また、受理層により、導電性インクのにじみが抑えられるので、導電性インクを焼成してなる配線は、金属銀が稠密な被膜をなしており、抵抗値が低くなる。さらに、従来よりも比較的低温で導電性インクを焼成して、金属銀からなる配線を形成することができるので、紙や熱可塑性樹脂などの耐熱性に劣る材質からなる基材の表面にも、印刷により、配線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の配線基板の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の配線基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の配線基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の配線基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の配線基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の配線基板およびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0024】
「配線基板」
図1は、本発明の配線基板の一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の配線基板10は、基材11と、基材11の一方の面11aに設けられた受理層12と、受理層12の基材11と接する面とは反対側の面(以下、「一方の面」という。)12aに導電性インクにより形成された金属銀からなる配線13とから概略構成されている。
なお、配線基板10において、受理層12の一方の面12aに配線13が設けられていることを、受理層12上に配線13が設けられているということもある。
【0025】
受理層12上に設けられた配線13を形成する金属銀は、その大部分(図1において符号13Aで示す部分)が受理層12の一方の面12aに存在し、その一部(図1において符号13Bで示す部分)が受理層12内に存在している。これにより、受理層12上では、配線13Aが抵抗値の低い配線を形成し、受理層12内(一方の面12a側の領域)では、配線13Bが、配線13Aを受理層12に固定するアンカーとして機能する。
【0026】
基材11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材;セラミックスからなる基材;ガラスからなる基材;金属からなる基材;シリコンからなる基材などが用いられる。
【0027】
受理層12は、基材11の一方の面11aに、ラテックスとポリビニルアルコールを所定の割合で含む水溶液を塗布して形成した未硬化の塗膜を乾燥させて形成されたものであり、ラテックスとポリビニルアルコールを主成分として含む樹脂層である。
【0028】
ラテックスとしては、SBR系ラテックス、MBR系ラテックスなどが用いられる。
SBR系ラテックスは、スチレンとブタジエンを主成分とする合成ゴムのラテックスである。
MBR系ラテックスは、メタクリル酸メチルとブタジエンを主成分とする合成ゴムのラテックスである。
【0029】
ポリビニルアルコールとしては、特に限定されないが、受理層12に導電性インクからなる配線13を形成した場合に、インクのにじみがより抑えられることから、中間ケン化または部分ケン化されたポリビニルアルコールが好ましい。
中間ケン化されたポリビニルアルコールとは、ケン化度が91〜98%程度のものをいう。
部分ケン化されたポリビニルアルコールとは、ケン化度が70〜90%程度のものをいう。
【0030】
受理層12の厚みは、特に限定されないが、後述するように、受理層12上に、導電性インクを用いて配線パターンを形成することによって、導電性インクの一部を受理層12内に浸透させながらも、導電性インクの大部分を受理層12の一方の面12aに存在させるためには、上記のラテックスとポリビニルアルコールを所定の割合で含む水溶液の塗工量を0.03g/m〜1.33g/mとすることが好ましい。
【0031】
配線13をなす金属銀を形成する導電性インクは、下記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物を含むインクである。
このβ−ケトカルボン酸銀は、210℃以下の低温で加熱することにより、速やかに金属銀を形成する物質である。
【0032】
【化3】

【0033】
上記の式(1)において、Rは、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、R−CY−、CY−、R−CHY−、RO−、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基、RN−、水酸基、アミノ基、または、(RO)CY−である。
【0034】
ただし、Yは同一または異なり、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子または水素原子である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C19脂肪族炭化水素基、または、フェニル基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C16脂肪族炭化水素基である。RおよびRは同一または異なり、それぞれ直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C18脂肪族炭化水素基である。
【0035】
上記の式(1)において、Xは、同一または異なり、それぞれ水素原子、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、RO−、RS−、R−CO−、R−CO−O−、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ベンジル基、フェニル基、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)である。
【0036】
ただし、Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C10脂肪族炭化水素基、チオフェニル基、フェニル基、ジフェニル基、または、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基である。
【0037】
Rが直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基である場合、Rとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられ、例えば、−C2n+1、−C2n−1、または、−C2n−3(nは1〜20の整数)で表される基であってもよい。また、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基は、1以上の水素基が、フッ素原子、塩素原子または臭素原子に置換されていてもよい。
【0038】
Rが置換されたフェニル基である場合、その置換基としては、R−、RO−、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基などが挙げられ、フェニル基のo−、m−、p−のいずれかが置換されていてもよい。
【0039】
におけるC〜C19の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられ、例えば、−C2n+1、−C2n−1、または、−C2n−3(nは1〜19の整数)で表される基であってもよい。
【0040】
におけるC〜C20の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられ、例えば、−C2n+1、−C2n−1、または、−C2n−3(nは1〜20の整数)で表される基であってもよい。
【0041】
におけるC〜C16の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられ、例えば、−C2n+1、−C2n−1、または、−C2n−3(nは1〜16の整数)で表される基であってもよい。
【0042】
およびRにおけるC〜C18の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられ、例えば、−C2n+1、−C2n−1、または、−C2n−3(nは1〜18の整数)で表される基であってもよい。
【0043】
Xが置換されたフェニル基、ベンジル基もしくはジフェニル基の場合、その置換基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基などが挙げられ、o−、m−、p−のいずれかが置換されていてもよい。
【0044】
Xが直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基である場合、Xとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられ、例えば、−C2n+1、−C2n−1、または、−C2n−3(nは1〜20の整数)で表される基であってもよい。
【0045】
XがRO−、RS−、R−CO−、または、R−CO−O−である場合、Rとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられ、例えば、−C2n+1、−C2n−1、または、−C2n−3(nは1〜10の整数)で表される基であってもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)などが挙げられ、o−、m−、p−のいずれかが置換されていてもよい。
【0046】
また、上記の式(1)において、一方のXには、基が結合しておらず、他方のXのみに、=CH−C−NOが結合した構造であってもよい。
【0047】
上記の式(1)において、「アルキル基」は、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基などが挙げられる。また、「アルケニル基」は、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基および2−ブテニル基などが挙げられる。また、「アルキニル基」は、特に限定されないが、例えば、エチニル基およびプロパルギル基などが挙げられる。また、「シクロアルキル基」は、特に限定されないが、例えば、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。また、「シクロアルケニル基」は、特に限定されないが、例えば、1,3−シクロヘキサジエニル基、1,4−シクロヘキサジエニル基およびシクロペンタジエニル基などが挙げられる。
また、上記の式(1)において、各種炭化水素基は、1以上の水酸基が、フッ素原子、塩素原子または臭素原子に置換されていてもよい。
【0048】
導電性インクでは、上記の式(1)において、Rが直鎖の飽和C〜C20脂肪族炭化水素基であり、かつ、Xが互いに異なり、それぞれが水素原子と、直鎖の飽和C〜C20脂肪族炭化水素基またはベンジル基とからなることが好ましく、Rが直鎖の飽和C〜C脂肪族炭化水素基であり、かつ、Xが互いに異なり、それぞれが水素原子と、直鎖の飽和C〜C脂肪族炭化水素基またはベンジル基とからなることがより好ましい。
【0049】
導電性インクでは、上記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、アセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、α−エチルアセト酢酸銀およびα−n−ブチルアセト酢酸銀が好ましい。
上記の式(1)で表される化合物の中でも、これらのβ−ケトカルボン酸銀は、後述するように焼結により金属銀への分解を行った際に、得られる金属銀に残存する原料や不純物の濃度を十分に低減できることから特に好ましい。相対的に不純物が少ない金属銀である程、例えば、さらに、相対的に析出する銀同士の接触がよくなり、導通し易くなり、抵抗率が下がるという優れた効果を奏する。
【0050】
導電性インクに含まれる孤立電子対を有する化合物は、アミン化合物、チオール化合物およびリン化合物からなる群から選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
【0051】
孤立電子対を有する化合物のうち、アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物、4級アミン塩化合物、環状アミン化合物などが挙げられる。
【0052】
1級アミンとしては、モノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(シクロアルキル)アミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、置換されたモノアルキルアミン、置換されたモノアリールアミン、置換されたモノシクロアルキルアミン、置換されたモノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミンなどが挙げられる。
【0053】
モノアルキルアミンとしては、例えば、モノC1−19アルキルアミンが挙げられる。モノアルキルアミンとしては、具体的には、プロピルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、t−ブチルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)が好ましく、プロピルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、t−ブチルアミンがより好ましい。
【0054】
モノアリールアミンとしては、例えば、モノC6−10アリールアミンが挙げられる。
【0055】
モノ(シクロアルキル)アミンとしては、例えば、モノC3−7シクロアルキルアミンが挙げられる。モノ(シクロアルキル)アミンとしては、具体的には、シクロヘキシルアミンが好ましい。
【0056】
モノ(ヘテロアリール)アミンとしては、例えば、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択される1種または2種以上の原子を1つ以上含む、6〜12員のヘテロアリール基を含むモノ(ヘテロアリール)アミンが挙げられる。
【0057】
置換されたモノアルキルアミンの置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
置換されたモノアルキルアミンとしては、例えば、アリール基で置換されたモノC1−9アルキルアミンが挙げられる。置換されたモノアルキルアミンとしては、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミンが好ましく、2−フェニルエチルアミンがより好ましい。
【0058】
置換されたモノアリールアミンの置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
置換されたモノアリールアミンとしては、例えば、臭素原子で置換されたモノC6−10アリールアミンが挙げられる。置換されたモノアリールアミンとしては、具体的には、2−ブロモベンジルアミンが好ましい。
【0059】
置換されたモノ(シクロアルキル)アミンの置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
置換されたモノシクロアルキルアミンとしては、例えば、C1−5アルキルで置換されたモノC3−7シクロアルキルアミンが挙げられる。置換されたモノシクロアルキルアミンとしては、具体的には、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが好ましい。
【0060】
置換されたモノ(ヘテロアリール)アミンの置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
置換されたモノ(ヘテロアリール)アミンとしては、例えば、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択される1種または2種以上の原子を1つ以上含む、6〜12員のヘテロアリール基を含む置換されたモノ(ヘテロアリール)アミンが挙げられる。
【0061】
ジアミンとしては、例えば、C1−10アルキレンジアミンが挙げられる。ジアミンとしては、具体的には、エチレンジアミンが好ましい。
【0062】
2級アミンとしては、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、ジ(ヘテロアリール)アミン、置換されたジアルキルアミン、置換されたジアリールアミン、置換されたジシクロアルキルアミン、置換されたジ(ヘテロアリール)アミンなどが挙げられる。
【0063】
ジアルキルアミンとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC1−9アルキルを含むC1−9アルキルアミンが挙げられる。ジアルキルアミンとしては、具体的には、メチルヘキシルアミンが好ましい。
【0064】
ジアリールアミンとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC6−10アリールを含むジC6−10アリールアミンが挙げられる。
【0065】
ジ(シクロアルキル)アミンとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC3−7シクロアルキルを含むジC3−7シクロアルキルアミンが挙げられる。
【0066】
ジ(ヘテロアリール)アミンとしては、例えば、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択される1種または2種以上の原子を1つ以上含む、6〜12員の、互いに同一または異なっていてもよいヘテロアリール基を含むジ(ヘテロアリール)アミンが挙げられる。
【0067】
置換されたジアルキルアミンの置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
置換されたジアルキルアミンとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい、水酸基で置換されたC1−9アルキルを含むジC1−9アルキルアミンが挙げられる。置換されたジアルキルアミンとしては、具体的には、ジエタノールアミン、メチルベンジルアミンなどが好ましい。
【0068】
置換されたジアリールアミンの置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
置換されたジアリールアミンとしては、例えば、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択される1種または2種以上の原子を1つ以上含む、6〜12員のヘテロアリール基を含む置換されたモノ(ヘテロアリール)アミンが挙げられる。
【0069】
置換されたジシクロアルキルアミンの置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0070】
置換されたジ(ヘテロアリール)アミンの置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0071】
3級アミンとしては、トリアルキルアミン、モノアリールジアルキルアミン、モノ(シクロアルキル)ジアルキルアミンなどが挙げられる。
【0072】
トリアルキルアミンとしては、例えば、トリ(C1−19アルキル)アミンが挙げられる。トリアルキルアミンとしては、具体的には、ジメチルオクタデシルアミンなどが好ましい。
【0073】
モノアリールジアルキルアミンとしては、例えば、モノC6−10アリールジ(C1−6アルキル)アミンが挙げられる。
【0074】
モノ(シクロアルキル)ジアルキルアミンとしては、例えば、モノ(C3−7シクロアルキル)ジ(C1−6アルキル)アミンなどが挙げられる。モノ(シクロアルキル)ジアルキルアミンとしては、具体的には、ジメチルシクロヘキシルアミンなどが好ましい。
【0075】
4級アミン塩としては、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物などが挙げられる。
【0076】
テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物としては、例えば、テトラ(C1−19アルキル)アンモニウムハロゲン化物が挙げられる。テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物としては、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラドデシルアンモニウムブロミドなどが好ましい。
【0077】
環状アミン化合物としては、ピリジンが好ましい。
【0078】
孤立電子対を有する化合物のうち、チオール化合物としては、モノアルキルチオール、モノアリールチオールなどが挙げられる。
【0079】
モノアルキルオールとしては、例えば、モノ(C1−19アルキル)チオールが挙げられる。モノアルキルオールとしては、具体的には、ドデシルチオールなどが好ましい。
【0080】
孤立電子対を有する化合物のうち、リン化合物としては、(アルキル)P、(アリール)P、(置換アルキル)P、(置換アリール)P、ホスホン酸エステルなどが挙げられる。
【0081】
(アルキル)Pとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC1−9アルキルを含む(C1−9アルキル)Pが挙げられる。(C1−9アルキル)Pとしては、具体的には、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンが好ましい。
【0082】
(アリール)Pとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC6−10アリールを含む(C6−10アリール)Pが挙げられる。
【0083】
(置換アルキル)Pの「置換アルキル」の置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
(置換アルキル)Pとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい置換C1−9アルキルを含む(置換C1−9アルキル)Pが挙げられる。(置換C1−9アルキル)Pとしては、具体的には、亜リン酸トリブチルが好ましい。
【0084】
(置換アリール)Pの「置換アリール」の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
(置換アリール)Pとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい置換C6−10アリールを含む(置換C6−10アリール)Pが挙げられる。
【0085】
ホスホン酸エステルとしては、例えば、アルキルスルホン酸ジアルキルエステル、置換アルキルホスホン酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。
アルキルスルホン酸ジアルキルエステルとしては、C1−6アルキルホスホン酸ジ(C1−6アルキル)エステルが挙げられる。
置換アルキルホスホン酸ジアルキルエステルとしては、置換C1−6アルキルホスホン酸ジ(C1−6アルキル)エステルが挙げられ、具体的には、ジエチルホスホノ酢酸エチルが好ましい。
【0086】
導電性インクでは、上記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀は、孤立電子対を有する化合物としては1級アミン化合物、リン化合物、2級アミン化合物およびチオール化合物が好ましく、1級アミン化合物、リン化合物がより好ましく、1級アミン化合物がさらに好ましい。
【0087】
導電性インクでは、上記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物との含有率は、β−カルボン酸銀(A)と孤立電子対を有する化合物(B)のモル比(A):(B)として、例えば、1:1.5以上、200以下、好ましくは1:2以上、200以下、より好ましくは1:3以上、200以下である。
【0088】
導電性インクは、さらに溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素および水からなる群から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0089】
アルコールとしては、例えば、水酸基を1〜5個有する炭素数1〜9までの脂肪族炭化水素が挙げられる。
水酸基を1〜5個有する炭素数1〜9までの脂肪族炭化水素としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナンノール、エチレングリコール、グリセロールなどが挙げられる。
アルコールとしては、例えば、水酸基を1〜3個有する炭素数1〜5の脂肪族炭化水素が好ましい。水酸基を1〜3個有する炭素数1〜5の脂肪族炭化水素としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセロールなどが挙げられる。
【0090】
ケトンとしては、(アルキル)C=O、(アルキル)(アリール)C=O、(アリール)C=O、(置換アルキル)C=O、(置換アルキル)(アリール)C=O、(アルキル)(置換アリール)C=O、(置換アリール)C=O、環状ケトンなどが挙げられる。
【0091】
(アルキル)C=Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC1−9アルキルを含む(C1−9アルキル)C=Oが挙げられる。(アルキル)C=Oとしては、具体的には、2,2−ジメチル−3−ヘキサノンが好ましい。
【0092】
(アルキル)(アリール)C=Oとしては、(C1−9アルキル)(C6−10アリール)C=Oが挙げられる。
【0093】
(アリール)C=Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC6−10アリールを含む(C6−10アリール)C=Oが挙げられる。
【0094】
(置換アルキル)C=Oの「置換アルキル」の置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
(置換アルキル)C=Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい置換C1−9アルキルを含む(置換C1−9アルキル)C=Oが挙げられる。
【0095】
(置換アルキル)(アリール)C=Oの「置換アルキル」の置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
(置換アルキル)(アリール)C=Oとしては、例えば、(置換C1−9アルキル)(C6−10アリール)C=Oが挙げられる。
【0096】
(アルキル)(置換アリール)C=Oの置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
(アルキル)(置換アリール)C=Oとしては、例えば、(C1−9アルキル)(置換C6−10アリール)C=Oが挙げられる。
【0097】
(置換アリール)C=Oの置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
(置換アリール)C=Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい置換C6−10アリールを含む(置換C6−10アリール)C=Oが挙げられる。
【0098】
環状ケトンとしては、例えば、C4−10シクロアルカノンが挙げられる。環状ケトンとしては、具体的には、シクロヘキサノンが好ましい。
【0099】
エステルとしては、例えば、炭素数が2〜20のカルボン酸と、炭素数1〜6の脂肪族アルコールとのエステルなどが挙げられる。エステルとしては、具体的には、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メチルブチルエステル、ヘキサン酸エステルなどが好ましい。
【0100】
エーテルとしては、(アルキル)Oなどが挙げられる。
(アルキル)Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC1−9アルキルを含む(C1−9アルキル)Oが挙げられる。(アルキル)Oとしては、具体的には、ジエチルエーテルが好ましい。
【0101】
芳香族炭化水素としては、炭素数6〜24の芳香族炭化水素および置換された炭素数6〜24の芳香族炭化水素が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、具体的には、ベンゼン、トルエンなどが挙げられ、これらの中でもトルエンが好ましい。
【0102】
脂肪族炭化水素としては、炭素数1〜9の脂肪族炭化水素が挙げられる。
炭素数1〜9の脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンなどが挙げられる。炭素数1〜9の脂肪族炭化水素としては、具体的には、ヘキサン、イソオクタンなどが挙げられ、これらの中でもイソオクタンが好ましい。
【0103】
シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素としては、シアノ基またはハロゲン原子で1〜6置換された炭素数1〜9の脂肪族炭化水素が挙げられる。シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素としては、具体的には、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられ、これらの中でもアセトニトリル、クロロホルムが好ましい。
【0104】
アリール基で置換されたモノC1−9アルキルアミン、ジC1−9アルキルアミン、(C1−9アルキル)P、(置換C1−9アルキル)P、(C1−9アルキル)C=O、(C1−9アルキル)(C6−10アリール)C=O、(置換C1−9アルキル)C=O、(置換C1−9アルキル)(C6−10アリール)C=O、(C1−9アルキル)(置換C6−10アリール)C=O、(C1−9アルキル)Oなどにおける炭素数1〜9までのアルキル(C1−9アルキル)とは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、sec−ペンチル、t−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、3−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、4−エチルペンチル、1,1−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、4,4−ジメチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、2−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、4−メチルヘプチル、5−メチルヘプチル、6−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、5−エチルヘキシル、1,1−ジメチルヘキシル、2,2−ジメチルヘキシル、3,3−ジメチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、1−プロピルペンチル、および、2−プロピルペンチルなどの直鎖状または分岐状のアルキルであり、好適には炭素数3〜6のものである。
【0105】
モノC6−10アリールアミン、C6−10アリールアミン、モノC6−10アリールジ(C1−6アルキル)アミン、(C6−10アリール)P、(置換C6−10アリール)P、(C1−9アルキル)(C6−10アリール)C=O、(C6−10アリール)C=O、(置換C1−9アルキル)(C6−10アリール)C=O、(C1−9アルキル)(置換C6−10アリール)C=O、(置換C6−10アリール)C=Oなどにおける炭素数6〜10のアリール(すなわちC6−10アリール)としては、例えば、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0106】
モノC3−7シクロアルキルアミン、ジC3−7シクロアルキルアミン、モノ(C3−7シクロアルキル)ジ(C1−6アルキル)アミンなどにおける炭素数3〜7のシクロアルキル(すなわちC3−7シクロアルキル)としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルなどが挙げられ、より好適には炭素数1〜4のもの、シクロプロピル、シクロブチルが挙げられる。
【0107】
窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択される1種または2種以上の原子を1つ以上含む、3〜12員のヘテロアリールとしては、窒素原子1〜4個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えば、ピロリル、ピロニリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピラゾリジニル、ピペラジニルなど;酸素原子1個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えば、フラニルなど;硫黄原子1個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えば、チエニルなど;酸素原子1〜2個および窒素原子1〜3個有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えば、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、モルホリニルなど;硫黄原子1または2個および窒素原子1〜3個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えば、チアジアゾリル、チアゾリジニルなど;窒素原子1〜5個を有する7〜12員、好ましくは9または10員の縮合複素環基、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリジル、テトラゾロピリダジニル、ジヒドロトリアゾピリダジニルなど;硫黄原子1〜3個を有する7〜12員、好ましくは9または10員の縮合複素環基、例えば、ジチアナフタレニル、ベンゾチオフェニルなど;酸素原子1〜2個および窒素原子1〜3個を有する7〜12員、好ましくは9または10員の縮合複素環基、例えば、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリルなど;硫黄原子1または2個および窒素原子1〜3個を有する7〜12員、好ましくは9または10員の縮合複素環基、例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリルなど;などが挙げられる。
【0108】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0109】
導電性インクは、粘度が、例えば、0.5mPa・s以上、50000mPa・s以下、好ましくは0.5mPa・s以上、100mPa・s以下、より好ましくは0.5mPa・s以上、20mPa・s以下である。
導電性インクの粘度が0.5mPa・s以上、16mPa・s以下の範囲にあれば、このインクを、例えば、インクジェット法において好適に用いることができる。また、導電性インクの粘度が0.5mPa・s以上、50000mPa・s以下の範囲にあれば、このインクを、例えば、グラビア印刷法において好適に用いることができる。
なお、この粘度は、振動式粘土測定方法により、室温下にて測定した値である。
【0110】
導電性インクは、表面張力が、例えば、5mN/m以上、100mN/m以下、好ましくは10mN/m以上、80mN/m以下、より好ましくは20mN/m以上、60mN/m以下である。
導電性インクの表面張力が5mN/m以上、100mN/m以下の範囲にあれば、このインクを、例えば、インクジェット法において好適に用いることができる。
なお、この表面張力は、気泡発生時の圧力変化測定方法により、室温下、気泡周波数0.1Hz〜10Hzの条件下で測定した値である。
【0111】
導電性インクにおいて、上記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀は、孤立電子対を有する化合物が1級アミン化合物、2級アミン化合物である場合、溶媒としては、水、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、イソオクタンなどの低級炭化水素、シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素が好ましく、アルコール、エーテル、エステル、ケトンがさらに好ましい。
また、上記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀は、孤立電子対を有する化合物がリン化合物である場合、溶媒としては、水、アルコール、エーテル、エステル、ケトンのような酸素原子を含む溶媒が好ましく、アルコールがさらに好ましい。
【0112】
導電性インクは、印刷時、すなわち、印刷に要する時間において、十分に安定である。その結果、このインクを用いて安定した印刷が可能である。
また、このインクは、低温〜室温において安定した保存が可能であり、例えば、比較的長期にわたって低温(冷蔵庫など)で保存した後のインクを用いて、室温下にて安定に印刷することができる。
【0113】
この配線基板10によれば、ラテックスとポリビニルアルコールを主成分とする受理層12上に、β−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含む導電性インクにより形成された金属銀からなる配線13が設けられているので、受理層12上にて、導電性インクのにじみが抑えられ、導電性インクによる導電性を保ったまま、ピッチの狭い配線13が得られる。また、受理層12により、導電性インクのにじみが抑えられているので、導電性インクを焼成してなる配線13は、金属銀が稠密な被膜をなしており、抵抗値が低くなる。
【0114】
「配線基板の製造方法」
次に、図2〜5を参照して、この実施形態の配線基板の製造方法を説明する。
まず、基材11の一方の面11aに、上述のラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液を塗布して未硬化の塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥させることにより、図2に示すように、基材11の一方の面11aに受理層12を形成する(工程A)。
【0115】
この工程Aにおいて、基材11の一方の面11aに、ラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液を塗布する方法としては、例えば、印刷法、コーティング法などが用いられる。
印刷法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法などが挙げられる。
ラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液の塗布量は、目的とする受理層12の厚みに応じて適宜調整される。
【0116】
また、工程Aにおいて、上記の未硬化の塗膜を、室温〜110℃にて、1分〜5分間乾燥する。
【0117】
次いで、図3、4に示すように、上述のような導電性インク14を用い、印刷により、受理層12上に導電性インク14からなる配線パターン15を形成した後、この配線パターン15が形成された基材11を加熱することにより、図5に示すように、受理層12上に配線13を形成し(工程B)、配線基板10を得る。
すなわち、受理層12上に形成した導電性インク14からなる配線パターン15を加熱することにより、導電性インク14に含まれる溶媒は揮発するとともに、β−ケトカルボン酸銀が焼成して、金属銀からなる被膜状の配線13が形成される。
【0118】
この工程Bにおいて、受理層12の一方の面12aに、導電性インク14を塗布する方法としては、例えば、印刷法、コーティング法などが用いられる。
印刷法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法などが挙げられ、これらの中でもインクジェット印刷法が好ましい。
導電性インク14の塗布量は、目的とする配線13の厚みに応じて適宜調整される。
【0119】
また、工程Bにおいて、配線パターン15が形成された基材11を、80〜200℃、好ましくは80〜150℃、より好ましくは140℃で加熱する。
【0120】
ところで、工程Bにおいて、図4に示すように、受理層12上に導電性インク14からなる配線パターン15を形成すると、導電性インク14の大部分(図4において符号14Aで示す部分)が受理層12の一方の面12aに存在するものの、導電性インク14の一部(図4において符号14Bで示す部分)が受理層12内に浸透する。この受理層12内に浸透した導電性インク14Bにも当然、β−ケトカルボン酸銀が含まれるので、加熱後の受理層12内には、図5に示すように、導電性インク14が焼成してなる金属銀からなる配線13Bが形成される。すなわち、受理層12上に塗布した導電性インク14は、その一部が受理層12内に浸透するものの、大部分が所定の形状(配線パターン15の形状)をなして受理層12上に存在するため、受理層12上に塗布した導電性インク14のにじみが大幅に抑えられる。
【0121】
なお、上述のラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液を用いて受理層12を形成し、さらに、この受理層12上に、上述の導電性インク14を用いて配線パターン15を形成することによって、導電性インク14の一部を受理層12内に浸透させながらも、導電性インク14の大部分を受理層12の一方の面12aに存在させることができる。
【0122】
この配線基板10の製造方法によれば、上述のラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液を用いて受理層12を形成した後、受理層12上に導電性インク14からなる配線パターン15を形成するので、受理層12上に塗布した導電性インク14のにじみが抑えられ、導電性インク14の導電性を保ったまま、ピッチの狭い配線13を形成することができる。また、受理層12により、導電性インク14のにじみが抑えられるので、導電性インク14を焼成してなる配線13は、金属銀が稠密な被膜をなしており、抵抗値が低くなる。さらに、200℃以下という、従来よりも比較的低温で導電性インク14を焼成して、金属銀からなる配線13を形成することができるので、紙や熱可塑性樹脂などの耐熱性に劣る材質からなる基材の表面にも、印刷により、配線を形成することができる。
【符号の説明】
【0123】
10・・・配線基板、11・・・基材、12・・・受理層、13・・・配線、14・・・導電性インク、15・・・配線パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に設けられた受理層と、該受理層上に導電性インクにより形成された金属銀からなる配線と、を備えた配線基板であって、
前記受理層は、ラテックスとポリビニルアルコールを含んでなり、前記導電性インクは、下記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含むインクであることを特徴とする配線基板。
【化1】

(ただし、上記の式(1)において、Rは、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、R−CY−、CY−、R−CHY−、RO−、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基、RN−、水酸基、アミノ基、または、(RO)CY−である。
ただし、Yは同一または異なり、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子または水素原子である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C19脂肪族炭化水素基、または、フェニル基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C16脂肪族炭化水素基である。RおよびRは同一または異なり、それぞれ直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C18脂肪族炭化水素基である。
上記の式(1)において、Xは、同一または異なり、それぞれ水素原子、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、RO−、RS−、R−CO−、R−CO−O−、ハロゲン、ベンジル基、フェニル基、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基である。
ただし、Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C10脂肪族炭化水素基、チオフェニル基、フェニル基、ジフェニル基、または、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基である。)
【請求項2】
基材と、該基材の一方の面に設けられた受理層と、該受理層上に導電性インクにより形成された金属銀からなる配線と、を備えた配線基板の製造方法であって、
基材の一方の面に、ラテックスとポリビニルアルコールを含む水溶液を塗布して未硬化の塗膜を形成した後、該塗膜を乾燥させることにより、前記基材の一方の面に受理層を形成する工程Aと、
下記の式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含む導電性インクを用い、印刷により、前記受理層上に配線パターンを形成した後、前記配線パターンが形成された基材を加熱することにより、前記受理層上に配線を形成する工程Bと、を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【化2】

(ただし、上記の式(1)において、Rは、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、R−CY−、CY−、R−CHY−、RO−、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基、RN−、水酸基、アミノ基、または、(RO)CY−である。
ただし、Yは同一または異なり、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子または水素原子である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C19脂肪族炭化水素基、または、フェニル基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基である。Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C16脂肪族炭化水素基である。RおよびRは同一または異なり、それぞれ直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C18脂肪族炭化水素基である。
上記の式(1)において、Xは、同一または異なり、それぞれ水素原子、直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、RO−、RS−、R−CO−、R−CO−O−、ハロゲン、ベンジル基、フェニル基、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基である。
ただし、Rは直鎖、分枝または環状の飽和もしくは不飽和C〜C10脂肪族炭化水素基、チオフェニル基、フェニル基、ジフェニル基、または、1個または複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基である。)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−283194(P2010−283194A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136037(P2009−136037)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】