説明

配線基板および電気機器

【課題】基板の共通化を図ることが可能であり、また、部品の実装状態の検査を簡単化できる配線基板およびこの配線基板を用いた電気機器を提供すること。
【解決手段】1は基板であり、複数個のランド2を有しており、各ランド2には必要に応じて印刷された導電路3が接続されている。6は所定のランド2、2間に実装された面実装部品であり、その両端側の端子8を対応するランド2、2に半田により固着されている。部品の固着が不要なランドには識別マーク9を施す。基板に所要の部品を実装した後(部品の固着の前または後のいずれかあるいは両方等)、実装状態を検査する際、部品が固着されていないランドがあっても、そのランドへの部品の固着の必要性が識別マークによって判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電気部品等を装着した配線基板およびこの配線基板をケース体に収容してなる電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に電気部品を装着する配線基板にあって、所要の電気部品が所定の箇所に実装されているか否かの検査は、目視によって部品表や回路図等と対比して行われているのが一般的であった。
【0003】
これに対して、基板の共通化および目視検査作業の簡単化を目的とする技術として特許文献1のものが提案されている。特許文献1の技術は、共通のプリント基板を用いて複数タイプの回路構成を行うものであって、各タイプに共通して実装される部品と、一定のタイプについてのみ実装される部品と、のプリント基板における各実装位置に、これら2種類の部品を区別すべく異なった識別マークを印刷表示するというものである。
【0004】
このものは、識別マークによって、未実装部品が共通実装部品であるか、選択的実装部品であるかを、視覚的に識別する。そして、共通実装部品であれば、実装すべき部品が欠品していることになり、一方、選択的実装部品の場合には、回路図や部品表を参照して欠品なのか実装不要なのかを識別する、とされている。
【特許文献1】実開平5−8974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の配線基板は、プリント基板における各実装位置に、部品を区別すべく異なった識別マークを印刷表示してしまうものであるため、プリント基板の共通化を図るとはいえ、その適用範囲には制限を受け、また、印刷表示後の回路変更には対応できないという問題がある。
【0006】
本発明は、基板の共通化を図ることが可能であり、また、部品の実装状態の検査を簡単化できる配線基板およびこの配線基板を用いた電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の配線基板は、部品を固着するための複数個のランドを有する基板と;複数個のランドの内の所定のランドに固着された部品と;複数個のランドの内、部品を固着不要のランドに施された識別マークと;を具備していることを特徴とする。
【0008】
本発明および以下の各発明において、特に言及しない限り、各構成の定義または許容範囲は以下のとおりである。
【0009】
基板は、その材質、形状、用途等は特に限定されずどのようなものも許容する。また、ランドとは、部品を固着するためのものであって、部品の端子等を固着するものであり、パッド等別名で称されることもある。固着とは、電気接続を兼ねるものであってもよいし、機械的接続を主とするものであってもよい。その固着手段としては、半田が容易かつ低コストという点で一般的であるが、溶接等ほかの手段も用い得るものである。
【0010】
部品としては、チップ部品と称されるような面実装部品やリード端子を有するディスクリート部品等どのようなものであってもよい。
【0011】
識別マークは、ランドに施されるが一部が基板上に及ぶものであってもよい。識別マークは部品を固着必要なランドの色と異なるものが視認上好ましい。また、部品の固着手段として半田を用いる場合には、ランドへの半田の付着を防止し、かつ、半田の色と異なることが同様の理由により好ましい。例えばランドが銅色系の場合、赤色系、青色系、黄色形等明確に異なるものが好ましい。また、半田の付着を防止するものとしては、絶縁性の塗料、接着剤、シート等を用いることができる。
【0012】
しかし、人間の視覚によらず、X線、紫外線等を利用する等他の手段で実装状態を検査するようにしてもよく、その場合には、X線、紫外線等に感応し易い材料を用いることが好適である。
【0013】
いずれにしても、識別マークは配線基板の製作作業以前に施されればよく、その形状、付与手段は限定されない。
【0014】
本発明の作用としては、まずは部品の固着が不要なランドには識別マークを施す。基板に所要の部品を実装した後(部品の固着の前または後のいずれかあるいは両方等)、実装状態を検査する際、部品が固着(または固着前の装着状態)されていないランドがあっても、そのランドに部品の固着が必要か否かが識別マークによって容易に判断できる。
【0015】
また、ランドへの識別マーク付与は実際に基板への部品実装の一連の作業の初期時に、または部品実装の作業の準備段階として行うことが可能であり、このため、基板自体に識別マークを印刷してしまうものに比較して回路変更に伴う部品の実装変更に容易に対応可能となる。これにより、基板の共通化の範囲も広げ易い。
【0016】
請求項2に記載の配線基板は、請求項1記載の発明において、部品の少なくとも一部が面実装部品であり、識別マークは前記面実装部品を基板に接着するための接着剤をランドに付着することによって形成されていることを特徴とする。
【0017】
近時は、基板への面実装部品の実装には自動化された実装装置が用いられ、この実装装置は、予め設定された実装プログラムにより、まず、部品を装着するランドに対応する基板の表面に接着剤を付着し、ついで、面実装部品を基板上に配置して部品を前記接着剤にて仮止めする。
【0018】
したがって、部品の固着不要なランドを予めプログラミングしておくことにより、前述の接着剤の付着時に、部品の固着不要なランド上に接着剤を付着することで識別マークを施すことができる。本発明において、識別マークを施すランドは、面実装部品用またはディスクリート部品用のいずれであってもよい。
【0019】
本発明によれば、請求項1記載の発明と同様に、実装状態を検査する際に、部品が装着されていないランドがあっても、そのランドに部品の装着が必要か否かが識別マークによって容易に判断できる。
【0020】
また、接着剤をランドに付着することによって識別マークを形成するので、基板の各ランドにリフローにより半田付けしても、識別マークにより特定ランドへの半田の付着を防止する。したがって、半田付け後もそのランドに部品の装着が必要か否かを識別可能となる。
【0021】
さらに、自動化された実装装置を使用し、面実装部品仮止め用の接着剤を利用する場合には、識別マークの付与自体が容易であるとともに、回路変更に伴う実装部品の変更があっても、プログラムの変更により部品不要ランドへの識別マーク付与変更が容易となる。
【0022】
請求項3に記載の電気機器は、ケース体と;ケース体にされた請求項1または2記載の配線基板と;を具備していることを特徴とする。
【0023】
本発明の電気機器は、例えば携帯電話機のようにそのものが使用者に操作されるようなものでも、ある装置に内蔵されて駆動装置や制御装置として作用するもの等どのようなものであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明は、部品の固着が不要なランドに識別マークを施したから、所要の部品を実装した後に実装状態を検査する際に、部品が装着されていないランドがあっても、そのランドに部品の装着が必要か否かが容易に判断できる。
【0025】
また、基板自体に識別マークを印刷してしまうものに比較して、回路変更に伴う部品の実装変更に容易に対応可能となる。
【0026】
請求項2の発明は、さらに、接着剤をランドに付着することによって識別マークを形成するから、識別マークにより特定ランドへの半田の付着を防止でき、半田付け後もそのランドに部品の装着が必要か否かの識別が可能となる。
【0027】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の発明の効果を有する配線基板を用いるから、製作が簡単で安価な配線基板を備えた電気機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図1および図2を参照して説明する。
【0029】
図1は対向する一対のランドに識別マークを有している状態を示す部分拡大平面図、図2は図1のものと同じ基板を使用し、複数個のランドには識別マークが無く、全てのランドに部品が固着されている状態を示す部分拡大平面図である。
【0030】
図1および図2において、1は基板であり、複数個のランド2を有している。各ランド2には必要に応じて印刷された導電路3が接続されている。また、導電路3にはこれも必要に応じてレジスト層4が施されている。
【0031】
5は後述する部品6を基板1上に仮止めするための接着剤であり、図2においては3対のランド2、2間の基板1上にそれぞれ2点ずつ付着されている。また、図1においては2対のランド2、2間の基板1上に2点ずつ付着されている。
【0032】
前記部品6は、ランド2、接着剤5等を示すために仮想線で示している。部品6は、前記接着剤5にて基板1に仮止めされるが、シルク印刷により形成された枠7に沿って配置することによって、部品6の端子8は対応するランド2上に位置するように配置される。そして、その両端側の端子8、8を対応するランド2、2に半田(図示しない。)により固着されている。
【0033】
識別マーク9は、図1において相対向する1対のランド2、2の上に形成されている。すなわち、部品の固着が不要と予め判明している1対のランド2、2それぞれの上に2点接着剤を付着されることにより形成されている。この接着剤は前記仮止めの接着剤5と同じ材料である。
【0034】
次に、本実施形態の作用を、作業ステップとともに以下に説明する。
<ステップ1>
共通基板の用意。すなわち、回路構成全体の内の大部分が共通であるが、一部の回路部品が機種毎に必要であったり不要であったりする場合に、これらの機種群を一群として全ての回路部品を装着し得るようにランドを形成した基板を製作する。
<ステップ2>
回路構成の決定。製作しようとする機種に対応した回路の選定。
<ステップ3>
実装装置のプログラミング。部品の自動実装装置による部品仮止め用の接着剤の付着、識別マークの付着、部品の装着に関する位置、順序等のプログラムをステップ2で選定した回路に適応するように設定する。
<ステップ4>
実装装置により面実装部品仮止め用および識別マーク用接着剤の付着。
<ステップ5>
面実装部品の基板上への配置(仮止め)。
<ステップ6>
接着剤の乾燥、必要に応じて実装状態の検査。部品の欠品があれば、追加等の処置をとる。
<ステップ7>
リフロー半田付け。
<ステップ8>
実装状態の検査。最終製品に近い状態での検査となり、部品の欠品があれば、不良品として除外、修正等の処置をとる。
【0035】
なお、上記実施形態では、3対のランドについて2とおりの使用状態のみを示したが、これに限らず、さらに多数個のランドの場合や多数の組合せの場合も実施可能である。
【0036】
図3は本発明の電気機器の一実施形態および使用例を示す斜視図である。電気機器30はケース体31に図1に示したような配線基板(図示しない。)を収容している。そして、本実施形態における電気機器30は、放電灯の点灯装置として作用するものである。
【0037】
すなわち、図3において32は照明器具であり、前記電気機器30は照明器具本体33内に配設されている。そして、照明器具本体33には一対のソケット34が取付けられ、このソケット34に放電灯としての蛍光ランプ35が装着されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による配線基板の一実施形態を示し、対向する一対のランドに識別マークを有している状態を示す部分拡大平面図。
【図2】図1のものと同じ基板を使用し、複数個のランドには識別マークが無く、全てのランドに部品が固着されている状態を示す部分拡大平面図。
【図3】本発明による電気機器の一実施形態の一使用例としての照明器具を示す斜視図。
【符号の説明】
【0039】
1…基板
2…ランド
3…導電路
5…接着剤
6…部品
9…識別マーク
30…電気機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を固着するための複数個のランドを有する基板と;
複数個のランドの内の所定のランドに固着された部品と;
複数個のランドの内、部品を固着不要のランドに施された識別マークと;
を具備していることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
部品の少なくとも一部が面実装部品であり、識別マークは前記面実装部品を基板に接着するための接着剤をランドに付着することによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
ケース体と;
ケース体に収容された請求項1または2記載の配線基板と;
を具備していることを特徴とした電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−124021(P2009−124021A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298087(P2007−298087)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】