説明

配線基板及びその製造方法、ならびに半導体装置及びその製造方法

【課題】フィルム基材の突起電極と半導体素子の電極パッドとを接続する際に印加される応力に対して、実用的に十分な強さで導体配線が保持され、十分な接続安定性が得られて、半導体素子の狭ピッチ化にも対応できる配線基板を提供する。
【解決手段】フィルム基材4と、フィルム基材上に整列して設けられた複数本の導体配線5a、5bと、各導体配線の端部近傍に金属めっきにより形成された突起電極7a、7bとを備える。突起電極の導体配線の幅方向における両端はR面を形成し、突起電極の導体配線の長手方向における両端は垂直面を形成しており、導体配線は、配線幅W1を有する第1導体配線5aと、配線幅W1よりも広い配線幅W2を有する第2導体配線5bとを含み、第1導体配線上の突起電極7aと第2導体配線上の突起電極7bは、高さがほぼ等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップオンフィルム(COF)に用いられるテープキャリア基板のような配線基板及びその製造方法、ならびにその配線基板を用いた半導体装置及びその製造方法に関し、特に、配線基板の導体配線上に形成される突起電極の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム基材を使用したパッケージモジュールの一種として、COF(Chip On Film)が知られている。図10は、従来のCOFの一部分を示す断面図である。このCOFは、柔軟な絶縁性のテープキャリア基板1の上に半導体素子2を搭載し、封止樹脂3により保護した構造を有し、フラットパネルディスプレイの駆動用ドライバーとして主に使用されている。
【0003】
テープキャリア基板1は、ポリイミドなどの絶縁性のフィルム基材4の上に複数本の銅などの導体配線5が整列して設けられたもので、この導体配線5に対して半導体素子2上の電極パッド6が突起電極7を介して接続されている。導体配線5上には必要に応じて金属めっき被膜8、および絶縁樹脂であるソルダーレジスト9の層が形成されている。
【0004】
突起電極7は、テープキャリア基板1上の導体配線5に対して、または半導体素子2上の電極パッド6に対して形成されている。特許文献1では、図11(a)、(b)に示すように、突起電極7は、フィルム基材4上の導体配線5に対して金属めっきを施すことにより形成されている。(a)は平面図、(b)は(a)におけるF−F線に沿った断面図である。この突起電極7は、導体配線5を横切って導体配線5の両側の領域に亘り、導体配線5の上面および両側面に接合されている。従って、(突起電極7の幅S1)>(導体配線5の配線幅S2)である。それにより、突起電極7は横方向に加わる力に対する安定性が十分である。またこの突起電極7は、中央部が両側よりも高くなった中高形状とされていて、半導体素子2上の電極パッド6に対して位置合わせがずれても、不適当な電極パッド6に接続される恐れは少ない。
【特許文献1】特許第3565835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12(a)は、特許文献1に記載された半導体装置を示す平面図である。なお、テープキャリア基板1の裏側から見た状態が図示されているが、見易さを考慮して、フィルム基材4を破線で示し、他の要素を実線で示す。(b)は(a)におけるG−G線に沿った断面図である。
【0006】
上述のように複数の導体配線5が整列して設けられたテープキャリア基板1上に、半導体素子2を実装する際に、荷重や超音波を印加することにより導体配線5の突起電極7の近傍に応力が加わり、断線5xが発生するという問題があった。
【0007】
このような断線不良は、COFの多出力化に伴って、半導体素子2の電極パッド6の狭ピッチ化により導体配線5の狭幅化が要求され、導体配線5の強度がさらに低下する傾向にあることから、非常に深刻な問題となる。
【0008】
特に、図13に示したように、フィルム基材4上に整列して設けられた複数の導体配線のうち、両側に他の導体配線が近接して配置された領域の導体配線5aに比べて、半導体素子搭載領域2aの長辺方向の両端に位置する導体配線5bや、短辺方向に位置する導体配線5c、および孤立した位置の導体配線5dに応力が集中し断線しやすい傾向がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、フィルム基材の突起電極と半導体素子の電極パッドとを接続する際に印加される応力に対して、実用的に十分な強さで導体配線が保持され、十分な接続安定性が得られて、半導体素子の狭ピッチ化にも対応できる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の配線基板は、フィルム基材と、前記フィルム基材上に整列して設けられた複数本の導体配線と、前記各導体配線の端部近傍に金属めっきにより形成された突起電極とを備える。上記課題を解決するために、前記突起電極の前記導体配線の幅方向における両端はR面を形成し、前記突起電極の前記導体配線の長手方向における両端は垂直面を形成しており、前記導体配線は、配線幅W1を有する第1導体配線と、配線幅W1よりも広い配線幅W2を有する第2導体配線とを含み、前記第1導体配線上の前記突起電極と前記第2導体配線上の前記突起電極は、高さがほぼ等しいことを特徴とする。
【0011】
本発明の配線基板の製造方法は、複数本の導体配線が整列して設けられたフィルム基材を用い、前記フィルム基材における前記導体配線が設けられた面にフォトレジストを形成し、前記フォトレジストに、前記整列している導体配線を横切って前記導体配線の両側の領域を含む形状を有する長孔状パターンの開口部を形成して、前記長孔状パターン中に前記導体配線の一部を露出させ、前記フォトレジストの長孔状パターンを通して、露出した前記導体配線の一部に金属めっきを施して突起電極を形成する方法である。上記課題を解決するために、前記導体配線として、配線幅W1を有する第1導体配線と、配線幅W1よりも広い配線幅W2を有する第2導体配線とが設けられた前記フィルム基材を用い、前記金属めっきによる前記突起電極を形成する工程を、前記導体配線の幅に対する前記金属めっきにより形成される前記突起電極の高さの関係として、前記導体配線の幅の増大に伴って、前記突起電極の高さが増大する領域A、前記領域Aよりも高い前記突起電極が形成され前記突起電極の高さが最大値に達する領域B、及び前記領域Bよりも低い前記突起電極が形成され前記突起電極の高さが減少する領域Cが順次現われる条件の範囲において行い、前記第1導体配線の配線幅W1を前記領域Aの範囲内で設定し、前記第2導体配線の配線幅W2を前記領域Cの範囲内で設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の配線基板によれば、半導体素子を実装する際に、突起電極近傍の導体配線に断線が起こりやすい部位には幅の広い導体配線を設けて導体配線の強度を向上させ、半導体素子の実装に際しての荷重や超音波の印加に伴う応力に抗して、突起電極近傍の導体配線の断線を防止することができる。さらに、幅の広い導体配線の突起電極の高さを、幅の狭い導体配線の突起電極と同等の高さにすることにより、接続対象の電極パッドに良好に接続可能である。また、幅の広い導体配線は断線しやすい部位のみとすることにより、狭パッド化にも対応することができる。
【0013】
上記構成の配線基板の製造方法によれば、配線幅が広くなると電流密度は高くなるが、電解めっきの反応が進み導体配線周辺のめっき液のイオン濃度が低下することにより、めっき成長が抑制されていくことを利用して、配線幅の相違する導体配線に同等の高さの突起電極を容易に形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の上記構成の配線基板において、前記突起電極は金属めっきにより形成されたものであり、前記突起電極を前記金属めっきにより形成する工程において、前記導体配線の幅の変化に伴って変化する前記突起電極の形成高さの最大値をhBとし、前記第1導体配線に形成された前記突起電極の高さをh1、前記第2導体配線に形成された前記突起電極の高さをh2とするとき、前記突起電極の高さの差の関係が下記の式を満足するように配線幅W1および配線幅W2が設定されていることが好ましい。
【0015】
|h1−h2|<(hB−h1)、および|h1−h2|<(hB−h2)
また、前記第2導体配線は、導体配線の配列の端部の位置または孤立した位置の少なくとも一方に配置されていることが好ましい。
【0016】
また、前記突起電極の導体配線幅方向の両端のR面の曲率半径は、前記第2導体配線上の前記突起電極の方が前記第1導体配線上の前記突起電極よりも大きいことが好ましい。
【0017】
本発明の上記構成の配線基板の製造方法において、前記第1導体配線に形成される前記突起電極の高さをh1、前記第2導体配線に形成される前記突起電極の高さをh2、前記領域Bの配線幅の導体配線に形成される前記突起電極の高さをhBとするとき、前記突起電極の高さの差の関係が下記の式を満足するように配線幅W1および配線幅W2を設定することが好ましい。
【0018】
|h1−h2|<(hB−h1)、および|h1−h2|<(hB−h2)
また、前記突起電極の高さh1とh2が等しくなるよう配線幅W1および配線幅W2を設定することが好ましい。
【0019】
また、前記領域Aの導体配線幅W1は13〜17μm、前記領域Bの導体配線幅WBは18〜22μm、前記領域Cの導体配線幅W2は23〜27μmであるように設定することができる。
【0020】
本発明の半導体装置は、上記いずれかの構成の配線基板と、前記配線基板上に搭載された半導体素子とを備え、前記突起電極を介して、前記半導体素子の電極パッドと前記導体配線とが接続されている。
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記いずれかの構成の配線基板を用い、前記導体配線上の突起電極が形成された領域を覆って封止樹脂を形成した後、前記配線基板上に、半導体素子をその電極パッドが前記突起電極と対向するように載置し、前記半導体素子の前記電極パッドと前記導体配線とを、前記突起電極との接合を介して接続する。
【0022】
この製造方法において、前記半導体素子の電極パッドと前記突起電極とを接続する際に、両者を互いに当接させ押圧しながら、当接部に超音波を印加することが好ましい。
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1(a)は本発明の一実施形態における配線基板の一部を示す平面図、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面図、図1(c)は図1(a)におけるB−B断面図である。図2は同配線基板の一部を示す斜視図である。
【0025】
図1および図2において、テープキャリア基板1は、絶縁性のフィルム基材4と、その上に整列して設けられた複数本の導体配線5a、5b、5c、5dと、各導体配線5a〜5dの上に各々形成された突起電極7a、7b、7c、7dとを備えている。図1(c)あるいは図2に示されるように、導体配線5a〜5dの幅方向における突起電極7a〜7dの両端はR面を形成している。また、導体配線5a〜5dの長手方向における突起電極7a〜7dの両端は垂直面を形成している。なお、以下の説明において、導体配線5a〜5dを一括して総称する場合は導体配線5と記す。突起電極7a〜7dを総称する場合は突起電極7と記す。
【0026】
本実施の形態のテープキャリア基板1の特徴は、両側に他の導体配線が近接して配置された領域である標準的な部位に配置された導体配線5aの幅W1に対して、半導体素子を実装する際の荷重や超音波の応力の影響を受けやすい部位に配置された導体配線5b〜5dの幅W2の方が広く形成されていることである。すなわち、半導体素子搭載領域の長手方向の両端に位置する導体配線5b、短辺方向に位置する導体配線5c、および、孤立した位置の導体配線5dなどの、応力集中の起こり易い部位に配置された導体配線は幅W2が広く形成されている。それにより、導体配線5b〜5dにおける突起電極7b〜7dの近傍部の断線が抑制される。
【0027】
さらに、導体配線5aとは幅の異なる導体配線5b〜5d上の突起電極7b〜7dの高さについては、突起電極7aの高さと同等になるように形成されている。後述するように、突起電極7a〜7dは導体配線5a〜5d上に金属めっきにより形成される。ところが、金属めっきは導体配線の表面から等方成長するため、導体配線の幅に比例して、突起電極の高さが高くなる傾向がある。突起電極の高さが異なると、半導体素子を実装する際に接続不良を起こす危険性がある。つまり、高い突起電極に隣接する低い突起電極には、半導体素子を実装する際に十分な荷重および超音波が加わり難い。そのため、低い突起電極は半導体素子の電極パッドに到達しなかったり、接続が不安定な状態になるおそれがある。そこで、狭い導体配線5a上の突起電極7aと、半導体素子の電極パッドとの接続を安定化させるために、本実施の形態においては、図2に示すように、幅の広い導体配線5b〜5d上の突起電極7b〜7dと、幅の狭い導体配線5a上の突起電極7aとが同等の高さになるように調整する。従って、突起電極の導体配線幅方向の両端のR面の曲率半径は、配線幅が広い導体配線5b〜5d上の突起電極7b〜7dの方が、配線幅の狭い導体配線5a上の突起電極7aよりも大きい。幅の相違する導体配線上に金属めっきにより同等の高さの突起電極を形成する方法については、後述する。
【0028】
次に、本発明の実施の形態におけるテープキャリア基板1の製造方法について説明する。図3、図4はテープキャリア基板の製造工程図であり、図3は前半工程を示し、図4は後半工程を示す。各図における左列はそれぞれ、テープキャリア基板の半導体素子搭載部の平面図である。右列はそれぞれ、左列の半導体素子搭載部に対応する拡大断面図であり、図3(a1)におけるC−C線に沿った位置での断面を示す。
【0029】
まず、図3(a1)、(a2)に示すように、複数の導体配線5が表面に整列して形成されたフィルム基材4を用意する。ここでは矩形のフィルム基材4の4辺のそれぞれに沿って複数の導体配線5が配列されており、各導体配線5の延びる方向は対応する辺と直交する方向である。導体配線5は、図1に示したように幅の相違するものが形成されるが、図示の都合上、全て同一の幅で示す。
【0030】
このフィルム基材4の全面に、図3(b1)、(b2)に示すように、フォトレジスト11を形成する。次に図3(c1)、(c2)に示すように、フィルム基材4に形成されたフォトレジスト11の上部に、複数の導体配線5の電極形成領域にめっきを施すための露光マスク12を対向させ、その光透過領域12aを通してフォトレジスト11を露光する。光透過領域12aは、複数の導体配線5の整列方向に沿って複数の導体配線5を横切るように、かつ複数の導体配線5のそれぞれの所定の電極形成領域よりも配線幅方向および配線長さ方向に広い領域を含むように設定される。ここでは光透過領域12aは、フィルム基材4の中央部に対応する四角孔形状に設定されている。
【0031】
その後現像することにより、図3(d1)、(d2)に示すように、フォトレジスト11に光透過領域12aに対応する開口部11aを形成して各導体配線5の一部を露出させる。次に開口部11aを通して各導体配線5の露出部分に金属めっきを施して硬質金属膜13を形成する。次に図3(e1)、(e2)に示すように、フィルム基材4の全面に再びフォトレジスト14を形成する。
【0032】
次に図4(a1)、(a2)に示すように、フィルム基材4に形成されたフォトレジスト14の上部に、突起電極7を形成するための露光マスク15を対向させ、その光透過領域15aを通してフォトレジスト14を露光する。光透過領域15aは、複数の導体配線5の整列方向に沿って複数の導体配線5(および硬質金属膜13)を横切るように延びた矩形の長孔が繋がった四角枠形状である。
【0033】
その後現像することにより、図4(b1)、(b2)に示すように、フォトレジスト14に光透過領域15aに対応する四角枠形状の開口部14aを形成して各導体配線5上の硬質金属膜13の一部を露出させる。次に四角枠形状の開口部14aを通して各導体配線5上の硬質金属膜13の露出部分に金属めっきを施すことにより、図4(c1)、(c2)に示すように、突起電極7を形成する。
【0034】
最後にフォトレジスト12を除去することにより、図4(d1)、(d2)に示すような、導体配線5上に硬質金属膜13を介して突起電極7が形成されたテープキャリア基板1が得られる。
【0035】
なお、図示は省略したが、以上の方法において導体配線5の幅は、配置された部位に応じて後述のように設定される。上述の方法によれば、図4(c1)、(c2)に示した工程で、複数の導体配線5を横切る長孔が繋がった開口部14aを通して金属めっきを施すことにより、突起電極7を図1及び図2に示したような形状に形成することができる。導体配線5の上面のみでなく側面も露出した状態で、その露出面全体に亘って金属めっきが形成されるからである。その際に、金属めっきは導体配線5の上面および側面に成長するので、開口部14aが導体配線5の幅方向に位置ずれしても、一定の形状・寸法に形成され、設計された条件を満足することができる。このことは、開口部14aを形成するための露光マスク15の位置合わせに厳密な精度を必要とせず、調整が容易であることを意味する。
【0036】
開口部14aが導体配線5の長さ方向に位置ずれしても、当該開口部14aは上述した光透過領域15aによって電極形成領域よりも配線長さ方向に広い領域の硬質金属膜13を露出させるように形成されるので、突起電極7が硬質金属膜13からずれることはない。
【0037】
突起電極7を銅で形成する金属めっきの一例としては、めっき液として硫酸銅を用い、0.3〜5A/dm2の条件で電解めっきを行う。電解めっきは、突起電極7を図1(c)に示したような断面形状で、かつ十分な厚みを持たせて形成するために好適な方法である。
【0038】
次に、図1及び図2に示したように、突起電極7aと突起電極7b〜7dの高さを同等にするための方法について説明する。
【0039】
上述のとおり、テープキャリア基板1の導体配線5上に金属めっきにより突起電極7を形成する際には、導体配線5表面からめっきが等方成長するため、導体配線5の幅に比例して、突起電極7の高さが高くなってしまう。突起電極7は、電解めっき法などにより銅などを用いて形成するが、その高さはめっき電流、および、めっき時間を一定にした場合、導体配線5の断面積で決定される。この場合、導体配線5の厚みはシード層の厚みで固定されているため、導体配線5の幅が相違することにより、導体配線5の断面積が変化し、電流密度が変化することにより突起電極7の高さも変化する。
【0040】
図5(a)は、各々異なる幅を有する導体配線に金属めっきにより突起電極が形成されたときの、導体配線幅と突起電極高さの関係を示す概念図である。図5(b)は、各々異なる幅を有する導体配線5h、5i、5j、5kに対して金属めっきにより形成された突起電極7h、7i、7j、7kの高さを示す断面図である。同図の突起電極7h〜7kの高さが、図5(a)に同一の参照番号で記されている。図5(a)に示す領域Aでは、導体配線5の幅が広くなると電流密度が徐々に大きくなり、突起電極7の高さが高くなる(7h、7i)。領域Bでは突起電極7の高さが最大になる(7j)。そして、領域Cのようにさらに導体配線5幅が広くなると、逆に突起電極7の高さが低くなっていく(7k)。これは、導体配線5幅が広くなると電流密度は高くなるが、電解めっきの反応が進むと、導体配線5周辺の銅イオン濃度が低下することにより、めっき成長が抑制されていくためである。
【0041】
図6(a)は、半導体素子2の長手方向の両端に位置する導体配線5jを、他の導体配線5iよりも幅広に形成した場合の半導体装置を示す平面図である。(b)は、(a)におけるD−D断面図を示す。この例は、導体配線5i、5jの幅がそれぞれ、図5(a)における領域Aと領域Bより選択された場合に相当する。導体配線5iに形成された突起電極7iに比べて、導体配線5jに形成された突起電極7jの高さが高くなっている。
【0042】
従って、突起電極と電極パッドとを接続するために荷重を印加しながら超音波を印加しても、幅を太くした導体配線5j上の高さの高い突起電極7jに隣接する幅の細い導体配線5i上の高さの低い突起電極7iが電極パッド6に到達しないため、接続させることができない。あるいは、高さの低い突起電極7iが電極パッド6に到達したとしても実装時の荷重や超音波が十分に加わらないため、接続状態が不安定となる。そこで、高さの高い突起電極7jに隣接する高さの低い突起電極7iも電極パッド6に接合させるために、荷重や超音波振幅を大きくし、高さの高い突起電極7jの変形量を大きくすれば、高さの低い突起電極7iも電極パッド6に到達し、荷重や超音波が十分に加わるようになる。しかし、幅の広い導体配線5jに過剰な負荷が加わってしまい、導体配線5jが断線してしまう。
【0043】
これに対して、図7(a)は、半導体素子2の長手方向の両端に、図5(a)の領域Cより選択された幅の導体配線5kを配置することにより、領域Aから選択された導体配線5iよりも幅広に形成した場合の半導体装置を示す平面図である。図7(b)は、(a)におけるE−E断面図を示す。この場合には、図5(a)の領域Aと領域Cの各範囲内で、突起電極7i、7kの高さが同等となる2種類の幅の導体配線5i、5kを選定することにより、幅の狭い導体配線5iと幅の広い導体配線5kを、突起電極の高さを異ならせることなく形成することができる。
【0044】
なお、幅の狭い導体配線5iに形成される突起電極7iの高さをh1、幅の広い導体配線5kに形成される突起電極7kの高さをh2、領域Bの配線幅の導体配線に形成される突起電極の高さをhBとするとき、突起電極の高さの差の関係が下記の式を満足するように導体配線5i、5kの配線幅W1、配線幅W2を設定することが望ましい。
【0045】
|h1−h2|<(hB−h1)、および|h1−h2|<(hB−h2)
図8は、導体配線幅と突起電極の高さとの関係を検証した実験結果である。図5(a)の領域Aとして13〜17μmの導体配線の幅、領域Bとして18〜22μmの導体配線の幅、領域Cとして23〜27μmの導体配線の幅を選択することにより、突起電極の高さを均一に設定することができた。
【0046】
このようにして、図13に示したような、半導体素子搭載領域2aの長手方向の両端に位置する導体配線5b、短辺方向に位置する導体配線5c、および、孤立した位置の導体配線5dなどの、応力集中の起こりやすい部位の導体配線5b、5c、5dとして、領域Cの幅の広い導体配線の幅を選択することにより、導体配線の突起電極近傍部の断線を防止するとともに、突起電極の高さを幅の狭い導体配線上の突起電極と同等にして、接続の安定化を図ることが可能となる。
【0047】
以上の配線基板において、フィルム基材4としては一般にポリイミドが用いられる。必要に応じて、PET、PEI等の絶縁フィルム材料を用いてもよい。導体配線は通常、銅を用いて、厚み3〜20μmの範囲内で形成される。必要に応じて、フィルム基材と導体配線との間にエポキシ系の接着剤を介在させてもよい。
【0048】
また、突起電極7は、導体配線5の所定部分に跨がるように形成される。つまり突起電極7は、図1(a)に示すように、導体配線5を幅方向に横切って導体配線の片側からもう片側に亘って形成されている。横切る方向は、導体配線5の長手方向(長さ方向)に対して直交する方向であり、この方向が好ましい。上述のとおり、半導体素子を実装する際に荷重や超音波振幅による応力の影響を受けやすい、長手方向の両端、短辺、および孤立して形成される導体配線5がある場合は、その部位の導体配線5の幅を広くして強度を強くする。導体配線5の長さ方向における突起電極7の断面は、図1(b)に示すように実質的に長方形である。導体配線5の幅方向における突起電極7の断面形状は、図1(c)に示すように、導体配線5の上面および両側面に接合された逆凹形であり、且つ中央部が両側よりも高くなった中高形状である。突起電極7の厚みは、導体配線5の上面から上方への厚みの方が、導体配線5の側面から横方向への厚みよりも大きい。突起電極7は導体配線5の両側でフィルム基材の表面に接している。
【0049】
突起電極7は上述した形状に形成されることにより、実用的に十分な強さで導体配線5上に保持される。まず、突起電極7は導体配線5の上面だけではなく両側面にも接合されているので、横方向に加わる力に対する安定性が十分である。
【0050】
また突起電極7は平坦な上面を持つのでなく中高であるため、半導体素子2の電極パッド6と適切に接続される。第1に、突起電極7と電極パッド6との位置合わせにずれがあっても、上面が平坦である場合と比べて、突起電極7は隣接する不適当な電極パッド6と接続され難い。第2に、突起電極7と電極パッド6とを接続させる際に、突起電極7の凸状の上面によって電極パッド6の表面に清浄面を露出させることができ、良好な電気的接続が得られる。第3に、突起電極7と電極パッド6との接続を、半導体素子2とテープキャリア基板1との間に樹脂層を介在させた状態で行う場合、突起電極7の凸状の上面によって樹脂層を容易に排除することができる。
【0051】
ただし、以上の効果を得るためには、上述したように突起電極7が導体配線5の両側でフィルム基材4の表面に接するように形成されていることは必須ではない。しかしこのような構造を有することで、横方向に加わる力に対して最も安定して導体配線5に保持される。また導体配線5の長さ方向における突起電極7の断面が実質的に長方形であることも必須ではない。しかしこのような構造は、半導体素子2の電極パッド6との接続性能が最も良好になるものであり、しかも製造が容易である。さらに、突起電極7の導体配線5上面から上方への厚みが導体配線5側面から横方向への厚みよりも大きいことも必須ではない。しかしこのような構造は、テープキャリア基板1のうねり等による導体配線5と半導体素子2との間のショートを抑制し、且つ隣接する導体配線5上の突起電極7とのショートを回避するために効果的である。この形状は、めっきを用いた製造方法により形成される。突起電極7に銅を用いる場合には、突起電極7と導体配線5とに金属めっき、例えば金めっき等の軟質な金属めっきを施すことが望ましい。
【0052】
次に、上述したテープキャリア基板1上に半導体素子2を実装して半導体装置を製造する方法について説明する。
【0053】
第1の方法では、まず図9(a)に示すように、テープキャリア基板1と半導体素子2とを位置合わせして対向させる。次に(b)に示すように、ボンディングツール16により互いに向かって押圧して、突起電極7a、7bと電極パッド6とを当接させながら、その当接部にボンディングツール16を介して超音波を印加することにより、突起電極77a、7bと電極パッド6とを接合させる。その際に、フィルム基材4上に整列して設けられた導体配線5bの突起電極7b近傍に応力が加わるが、断線しやすい長辺側の両端や、短辺、および、孤立して形成された導体配線の幅を広くすることにより、導体配線の断線を防止することができる。そして、突起電極7a、7bの高さが均一なため、接続の安定化を図ることができる。
【0054】
そして、接合後に、図9(b)に示すように、テープキャリア基板1と半導体素子2との間に封止樹脂3を充填する。また突起電極7a、7bの凸状の先端部が電極パッド6の表面層に当接した状態で振動するため、電極パッド6に新生面を露出させる効果が顕著になり、良好に接合される。
【0055】
第2の方法では、図9(c)に示すように、テープキャリア基板1の突起電極7a、7bの形成領域を覆って封止樹脂3を塗布した上で、テープキャリア基板1と半導体素子2とを位置合わせして対向させる。その後、図9(b)に示したように、ボンディングツール16により互いに向かって押圧して、突起電極7a、7bと電極パッド6とを当接させ、その当接部にボンディングツール16を介して超音波を印加することにより突起電極7a、7bと電極パッド6とを接合させる。また接合と同時に封止樹脂3の仮硬化を完了させる。この際、突起電極7a、7bが中高で凸状であるため、封止樹脂6が突起電極7a、7bの両脇に効果的に排除され、突起電極7a、7bと電極パッド6とが容易に当接する。第2の方法においても、突起電極7a、7bの凸状の先端部が電極パッド6の表面層に当接した状態で振動するため、電極パッド6に新生面を露出させる効果が顕著になり、良好に接合される。
【0056】
これらの製造方法を実施する際に上述のとおり、フィルム基材4上に整列して設けられた導体配線の突起電極近傍部に応力が加わるが、断線しやすい長辺側の両端や、短辺、および、孤立して形成された導体配線5の幅が広く形成されているので、導体配線5の断線を防止することができ、また、突起電極7の高さが均一なため、接続の安定化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の配線基板によれば、実装のために超音波を印加しても断線を生じ難く、十分な接続安定性が確保される。従って、画像表示パネル等へ搭載する半導体装置などの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態におけるテープキャリア基板の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、及び(c)は(a)におけるB−B断面図
【図2】同テープキャリア基板の一部を示す斜視図
【図3】同テープキャリア基板の製造方法の前半工程を示した製造工程図
【図4】同テープキャリア基板の製造方法の後半工程を示した製造工程図
【図5】同製造方法により形成される導体配線幅と突起電極の高さの関係を示した概念図
【図6】(a)は同製造方法より形成された不都合な例のテープキャリア基板を用いた半導体装置の平面図、(b)は(a)におけるD−D同断面図
【図7】(a)は同製造方法より形成された良好な例のテープキャリア基板を用いた半導体装置の平面図、(b)は(a)におけるE−E同断面図
【図8】同テープキャリア基板上の導体配線幅と突起電極の高さとの関係を検証した実験結果を示す図
【図9】同テープキャリア基板上に半導体素子を実装して半導体装置を製造する方法を示す工程断面図
【図10】従来例の半導体装置を示す断面図
【図11】(a)は従来例のテープキャリア基板の一部を示す平面図、(b)は(a)のF−F断面図
【図12】(a)は従来例のテープキャリア基板の突起電極と半導体素子の電極パッドとの接続部分の断線を示す平面図、(b)は(a)のG−G断面図
【図13】従来のテープキャリア基板上に半導体素子を実装する時に応力が加わりやすい部位を示した平面図
【符号の説明】
【0059】
1 テープキャリア基板(配線基板)
2 半導体素子
2a 半導体素子搭載領域
3 封止樹脂
4 フィルム基材(絶縁性基材)
5、5a〜5d、5h〜5k 導体配線
5x 断線
6 電極パッド
7、7a〜7d、7h〜7k 突起電極
8 金属めっき皮膜
9 ソルダーレジスト
11、14 フォトレジスト
11a、14a 開口部
12、15 露光マスク
12a、15a 開口部
13 硬質金属膜
16 ボンディングツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材と、前記フィルム基材上に整列して設けられた複数本の導体配線と、前記各導体配線の端部近傍に金属めっきにより形成された突起電極とを備えた配線基板において、
前記突起電極の前記導体配線の幅方向における両端はR面を形成し、前記突起電極の前記導体配線の長手方向における両端は垂直面を形成しており、
前記導体配線は、配線幅W1を有する第1導体配線と、配線幅W1よりも広い配線幅W2を有する第2導体配線とを含み、
前記第1導体配線上の前記突起電極と前記第2導体配線上の前記突起電極は、高さがほぼ等しいことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記突起電極は金属めっきにより形成されたものであり、前記突起電極を前記金属めっきにより形成する工程において、前記導体配線の幅の変化に伴って変化する前記突起電極の形成高さの最大値をhBとし、前記第1導体配線に形成された前記突起電極の高さをh1、前記第2導体配線に形成された前記突起電極の高さをh2とするとき、前記突起電極の高さの差の関係が下記の式を満足するように配線幅W1および配線幅W2が設定されている請求項1に記載の配線基板。
|h1−h2|<(hB−h1)、および|h1−h2|<(hB−h2)
【請求項3】
前記第2導体配線は、導体配線の配列の端部の位置または孤立した位置の少なくとも一方に配置されている請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記突起電極の導体配線幅方向の両端のR面の曲率半径は、前記第2導体配線上の前記突起電極の方が前記第1導体配線上の前記突起電極よりも大きい請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
複数本の導体配線が整列して設けられたフィルム基材を用い、
前記フィルム基材における前記導体配線が設けられた面にフォトレジストを形成し、前記フォトレジストに、前記整列している導体配線を横切って前記導体配線の両側の領域を含む形状を有する長孔状パターンの開口部を形成して、前記長孔状パターン中に前記導体配線の一部を露出させ、
前記フォトレジストの長孔状パターンを通して、露出した前記導体配線の一部に金属めっきを施して突起電極を形成する配線基板の製造方法において、
前記導体配線として、配線幅W1を有する第1導体配線と、配線幅W1よりも広い配線幅W2を有する第2導体配線とが設けられた前記フィルム基材を用い、
前記金属めっきによる前記突起電極を形成する工程を、前記導体配線の幅に対する前記金属めっきにより形成される前記突起電極の高さの関係として、前記導体配線の幅の増大に伴って、前記突起電極の高さが増大する領域A、前記領域Aよりも高い前記突起電極が形成され前記突起電極の高さが最大値に達する領域B、及び前記領域Bよりも低い前記突起電極が形成され前記突起電極の高さが減少する領域Cが順次現われる条件の範囲において行い、
前記第1導体配線の配線幅W1を前記領域Aの範囲内で設定し、前記第2導体配線の配線幅W2を前記領域Cの範囲内で設定することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記第1導体配線に形成される前記突起電極の高さをh1、前記第2導体配線に形成される前記突起電極の高さをh2、前記領域Bの配線幅の導体配線に形成される前記突起電極の高さをhBとするとき、前記突起電極の高さの差の関係が下記の式を満足するように配線幅W1および配線幅W2を設定する請求項5に記載の配線基板の製造方法。
|h1−h2|<(hB−h1)、および|h1−h2|<(hB−h2)
【請求項7】
前記突起電極の高さh1とh2が等しくなるよう配線幅W1および配線幅W2を設定する請求項5または6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記領域Aの導体配線幅W1は13〜17μm、前記領域Bの導体配線幅WBは18〜22μm、前記領域Cの導体配線幅W2は23〜27μmである請求項5〜7のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線基板と、前記配線基板上に搭載された半導体素子とを備え、前記突起電極を介して、前記半導体素子の電極パッドと前記導体配線とが接続された半導体装置。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線基板を用い、
前記導体配線上の突起電極が形成された領域を覆って封止樹脂を形成した後、
前記配線基板上に、半導体素子をその電極パッドが前記突起電極と対向するように載置し、
前記半導体素子の前記電極パッドと前記導体配線とを、前記突起電極との接合を介して接続する半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体素子の電極パッドと前記突起電極とを接続する際に、両者を互いに当接させ押圧しながら、当接部に超音波を印加する請求項10に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−214370(P2007−214370A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32738(P2006−32738)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】