説明

配線基板及び磁気ディスク装置

【課題】 ランドに部品を固着する際の位置ずれの発生を抑制することができ、小型化及び高密度化に対応可能でかつ信頼性の高い配線基板及び磁気ディスク装置を提供する。 【解決手段】 貫通孔2は配線基板本体1の端部に形成されている。貫通孔2の周囲に形成されたランド3は、配線基板本体1の端部側と、この端部側とは反対側に、ランドが一部欠落した部位が対称に形成された形状とされている。このランド3に、半田4によって部品5が固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び磁気ディスク装置に係り、特に小型の磁気ディスク装置用等として好適な配線基板及びこのような配線基板を有する磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器や電子機器の高機能化、小型軽量化の進展に伴い、大容量ディジタル情報をストレージするための代表的な装置である磁気ディスク装置においてもその小型化が求められている。このような小型の磁気ディスク装置は、ディスク等が収容されているディスクエンクロージャのサイズ自体が小さく、そこに内蔵され、または取り付けられた各配線基板についても小型化への対応が必要である。
【0003】
上記のような配線基板としては、配線基板本体の端部にネジ止め用の貫通孔を設け、この貫通孔に取り付け用のネジを挿入して装置本体等にネジ止めする構造としたものが知られている。また、この取り付け部分においてアースをとる構造とするため、貫通孔の周囲に導電性を有する材料からなる環状のパッドや、C字状のパッドを設けることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】米国特許第4851614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、磁気ディスク装置等では、その小型化に対応するため、配線基板においても高密度化及び小型化が進められている。このため、前述したネジ止め用の貫通孔等については、できるだけ配線基板本体の端部に近付けて配置し、電気回路を形成するのに使用可能な領域を広く確保することが望まれる。また、上記のネジ止め用ネジについても、できるだけ配線基板本体から突出することのない構造とし、厚さ方向の寸法を圧縮することが望まれる。
【0005】
ネジ止め用ネジの頭が配線基板本体から突出しないようにする構造の一例を図11に示す。すなわち、図11では、配線基板本体1のネジ止め用の貫通孔2の周囲に、ランド30を設けておき、このランド30に半田4等の固着材により、ワッシャー状の部品5を固定する。このワッシャー状の部品5は、中央部に、貫通孔2より小径とされ、ネジ6が挿入される挿入孔5aを有し、この部品5の上面によって、ネジ6の頭を受けるようになっている。かかる構造とすれば、ネジ6の上面と、配線基板本体1の上面とを略同一面とした状態で、配線基板本体1を磁気ディスク装置本体20等に固定することができる。
【0006】
上記の貫通孔2及びランド30は、前述したとおり、配線基板本体1の端部に配置することが望ましい。しかしながら、配線基板本体1の端部には、その製造工程における制約から、配線パターンやランドを設けることのできない領域が、例えば、0.3mm程度ある。このため、貫通孔2及びランド30を配線基板本体1の端部に近付けて配置すると、図12(a)に示すように、ランド30の形状が、環状ではなく、配線基板本体1の端部側が欠落した略C字状等となってしまう。
【0007】
しかしながら、ランド3の形状がC字状の場合、図12(b)に示すように、ランド30に、半田4及び部品5を載せてリフロー炉で加熱、溶融して半田付けする際に、図12(c)に示すように、部品5が端部と反対側(図中左側)に位置ずれを起こす確率が高くなることが判明した。そして、部品5が位置ずれを起こした状態で固着されると、配線基板を磁気ディスク装置本体等にネジ止めする際に、配線基板と磁気ディスク装置本体との間に位置ずれが生じ、電気的な接続を行うコネクタ等に応力が発生し、接続不良等の製品の不良発生率が高くなるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記のような従来の事情に対処してなされたもので、ランドに部品を固着する際の位置ずれの発生を抑制することができ、小型化及び高密度化に対応可能でかつ信頼性の高い配線基板及び磁気ディスク装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の配線基板は、所定形状の導体パターンが形成された配線基板本体と、前記配線基板本体の端部近傍に設けられ、前記配線基板本体の端部側と、この端部側とは反対側に、一部欠落した部位が対称に形成された形状のランドと、前記ランドに固着材により固定された部品とを具備したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の配線基板は、所定形状の導体パターンが形成された配線基板本体と、前記配線基板本体の端部近傍に設けられたネジ止め用の貫通孔と、前記貫通孔の周囲に形成され、前記配線基板本体の端部側と、この端部側とは反対側に、一部欠落した部位が対称に形成された形状のランドと、前記ランドに固着材により固定され、中央部にネジが挿入される挿入孔が形成された板状の部品とを具備したことを特徴とする。
【0011】
本発明の磁気ディスク装置は、所定形状の導体パターンが形成された配線基板本体と、前記配線基板本体の端部近傍に設けられたネジ止め用の貫通孔と、前記貫通孔の周囲に形成され、前記配線基板本体の端部側と、この端部側とは反対側に、一部欠落した部位が対称に形成された形状のランドと、前記ランドに固着材により固定され、中央部にネジが挿入される挿入孔が形成された板状の部品とを有する配線基板と、電気信号の入力/出力を行うヘッドが搭載されたヘッドキャリッジと、前記ヘッドキャリッジに搭載された前記ヘッドにより磁気情報の読み出し/書き込みがなされる磁気ディスクとを有し、前記貫通孔及び前記挿入孔に挿入されたネジにより前記配線基板と固定された磁気ディスク装置本体と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ランドに部品を固着する際の位置ずれの発生を抑制することができ、小型化及び高密度化に対応可能でかつ信頼性の高い配線基板及び磁気ディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の詳細を、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る配線基板の概略構成を示すもので、図1は配線基板全体の平面構成を示し、図2は図1の要部を拡大して示すものであり、図3は、図2のA−A断面構成を示している。
【0015】
図1に示すように、配線基板10を構成する配線基板本体1の端部には、複数(図1では合計3つ)のネジ止め用の貫通孔2が設けられており、これらの貫通孔2には、夫々ワッシャー状の部品5が固着されている。配線基板本体1には、図示しない所定の導体パターンが形成され、所定の電子部品が搭載されている。また、図1において11は後述する磁気ディスク装置本体20と電気的な接続を行うためのコネクタであり、12は磁気ディスク装置本体20のディスクが挿入される開口部である。
【0016】
図2,3に示すように、各貫通孔2の周囲には、ランド3が設けられており、このランド3に対して半田4等の固着材により、部品5が固着されている。部品5は金属等から薄板状に形成されており、その中央部には、後述するネジを挿入するための挿入孔5aが設けられている。部品5の寸法の一例を挙げれば、外径2.8mm、内径1.2mm、厚さ0.1mmである。
【0017】
また、図2に示すように、ランド3は、配線基板本体1の端部側(図2の右側)と、この端部側とは反対側(図2の左側)に、ランドが一部欠落した部位が対称に形成された形状とされている。換言すれば、ランド3は、丸括弧型(()型)の2つの分離された部分が対向するよう配置され、中心軸に対して対称な形状とされている。貫通孔2の寸法の一例を挙げれば、内径2.2mmであり、ランド3の寸法の一例を挙げれば、外径が2.96mm、内径が2.5mmである。なお、本実施形態では、配線基板本体1の端部側のランド3が欠落している部分の形状に合わせて、配線基板本体1に切り込みを入れた形状としてあるが、かかる配線基板本体1の切り込みは、無くても良い。
【0018】
次に、図4を参照して、上記構成のランド3に部品5を固着する際の工程の一例を説明する。図4(a)に示すように、まずランド3の上に固着材としての半田4を配置する。次に、図4(b)に示すように、半田4の上に部品5を載置する。次に、リフロー炉等によって半田4を溶融し、図4(c)に示すように、ランド3と部品5を固着する。この半田4を溶融した際、本実施形態では、ランド3がC型等ではなく、対称に形成されているので、半田が一方に偏って流れることが抑制され、部品5が位置ずれを起こすことを抑制することができる。
【0019】
上記の工程により、ランド3と部品5を固着した際の位置ずれ量について10サンプルの測定を行ったところ、位置ずれ量は、最小値(絶対値)が0.01mm、最大値(絶対値)が0.03mmであった。一方、比較のために前述したC型のランド30について同様な測定を行ったところ、最小値(絶対値)が0.06mm、最大値(絶対値)が0.1mmであった。この結果に示されるように、本実施形態では、従来に比べて、部品5の位置ずれ量を大幅に抑制することができる。
【0020】
図5に示すように、上記構成の配線基板10は、各貫通孔2及び部品5の挿入孔5aに挿入されたネジ6によって磁気ディスク装置本体20とネジ止めされ、磁気ディスク装置が構成される。この際、図6に示すように、部品5の上面によって、ネジ6の頭を受けるようになっており、ネジ6の上面と、配線基板本体1の上面とは略同一面となる。すなわち、ネジ6の頭が配線基板本体1の上面に突出していない状態となる。また、配線基板10と磁気ディスク装置本体20とは、ランド3、ネジ6等を介して、電気的にアース接続される。
【0021】
また、配線基板10と磁気ディスク装置本体20との間の信号線等の電気的な接続は、前述した配線基板10側のコネクタ11と、磁気ディスク装置本体20側に設けられた図示しないコネクタとを接続することによって行われる。この時、ネジ6により、配線基板10と磁気ディスク装置本体20とを正確な位置に固定できるので、コネクタ11等に応力が加わることを防止することができ、磁気ディスク装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0022】
次に、上記構成の配線基板を具備した磁気ディスク装置の構成を説明する。図7に示すように、磁気ディスク装置は、磁気ディスク31、ディスククランパ32、ヘッドキャリッジ33、ヘッド34、ピボット35、ボイスコイルモータ36、ヘッドキャリッジ連絡配線基板37を有する。磁気ディスク装置全体としての大きさは、例えば縦32mm、横24mmである。
【0023】
磁気ディスク31は、円周方向の磁気パターンとして情報を保持する円盤状のメディアであり、その半径方向に移動するヘッドキャリッジ33の先端に設けられたヘッド34により磁気信号の書き込み/読み出しが行われる。ディスククランパ32は、磁気ディスク31の回転中心をその下側に設けられたスピンドルモータ(図示せず)の側に締め付け固定するものである。ヘッドキャリッジ33は、その先端に設けられたヘッド34を磁気ディスク上で浮上させつつ半径方向に移動させるものである。
【0024】
ヘッド34は、磁気ディスク31に情報を書き込むための電気信号/磁気信号の変換、および磁気ディスク31から情報を読み出すための磁気信号/電気信号の変換を行うものである。書き込み/読み出しの電気信号は、ヘッドキャリッジ33に接続されたヘッドキャリッジ連絡配線基板37から相互に伝送される。ピボット35は、ヘッドキャリッジ33の移動(旋回)中心として回転自在にヘッドキャリッジ33を支持するものである。ボイスコイルモータ36は、ヘッドキャリッジ33をピボット35中心に旋回させるための駆動源となるものである。
【0025】
ヘッドキャリッジ連絡配線基板37は、ヘッドキャリッジ33に連絡(接続)してヘッド34との間で相互にやり取りされる信号を伝送するものである。この信号には、ボイスコイルモータ36への信号を含んでもよい。また、図示するように、主として信号伝送のためのケーブルとして機能しかつヘッドキャリッジ33の旋回により屈曲状態が変化する部位と、この部位に連続して形状が固定され、主に電子部品の実装を行うための領域とを有する。
【0026】
以上の通り、本実施形態によれば、ランドに部品を固着する際の位置ずれの発生を抑制することができ、小型化及び高密度化に対応可能でかつ信頼性の高い配線基板及び磁気ディスク装置を提供することができる。なお、上記実施形態では、丸括弧型のランド3を使用した場合について説明したが、ランドはかかる形状のものに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、外形が四角形状のランド3a等、対称形状のものであればどのようなものでも良い。また、かかる形状のランド3aを使用した場合、図9に示すように、外形が四角形状の部品5b等を使用することもできる。さらに、ランドの分割数も2に限られるものではなく、例えば、図10に示すランド3bのように対称に4分割されたものでも良く、さらに多数、例えば6分割されたもの等でも良い。さらにまた、部品については、ネジ止め用のワッシャー状のものに限らず、どのような部品でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板の全体概略構成を示す図。
【図2】図1の配線基板の要部構成を拡大して示す図。
【図3】図2の配線基板のA−A断面構成を示す図。
【図4】図1の配線基板の部品の固着工程を示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る磁気ディスク装置の概略構成を示す図。
【図6】図5の配線基板と磁気ディスク装置本体の取り付け部分を拡大して示す図。
【図7】図5の磁気ディスク装置本体の概略構成を示す図。
【図8】本発明の他の実施形態の要部概略構成を示す図。
【図9】本発明のさらに他の実施形態の要部概略構成を示す図。
【図10】本発明のさらに他の実施形態の要部概略構成を示す図。
【図11】従来の配線基板の要部を拡大して示す図。
【図12】図11の配線基板の部品の固着工程を示す図。
【符号の説明】
【0028】
1…配線基板本体、2…貫通孔、3…ランド、4…半田(固着材)、5…部品、10…配線基板、11…コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の導体パターンが形成された配線基板本体と、
前記配線基板本体の端部近傍に設けられ、前記配線基板本体の端部側と、この端部側とは反対側に、一部欠落した部位が対称に形成された形状のランドと、
前記ランドに固着材により固定された部品と
を具備したことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
所定形状の導体パターンが形成された配線基板本体と、
前記配線基板本体の端部近傍に設けられたネジ止め用の貫通孔と、
前記貫通孔の周囲に形成され、前記配線基板本体の端部側と、この端部側とは反対側に、一部欠落した部位が対称に形成された形状のランドと、
前記ランドに固着材により固定され、中央部にネジが挿入される挿入孔が形成された板状の部品と
を具備したことを特徴とする配線基板。
【請求項3】
前記固着材が半田であり、当該半田をリフローにより溶融して前記部品を前記ランドに固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記ランドが、丸括弧状の2つの分離された部位から形成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
所定形状の導体パターンが形成された配線基板本体と、前記配線基板本体の端部近傍に設けられたネジ止め用の貫通孔と、前記貫通孔の周囲に形成され、前記配線基板本体の端部側と、この端部側とは反対側に、一部欠落した部位が対称に形成された形状のランドと、前記ランドに固着材により固定され、中央部にネジが挿入される挿入孔が形成された板状の部品とを有する配線基板と、
電気信号の入力/出力を行うヘッドが搭載されたヘッドキャリッジと、前記ヘッドキャリッジに搭載された前記ヘッドにより磁気情報の読み出し/書き込みがなされる磁気ディスクとを有し、前記貫通孔及び前記挿入孔に挿入されたネジにより前記配線基板と固定された磁気ディスク装置本体と、
を具備することを特徴とする磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−41409(P2006−41409A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222795(P2004−222795)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】