説明

配線基板

【課題】半導体素子の電極端子を半導体素子接続パッドに半田を介して安定して接続することが可能な実装安定性に優れた配線基板を提供すること。
【解決手段】外周側から1番目の列L1〜3番目の列L3を有して格子状に配列形成された半導体素子接続パッド5と、2番目の列L2および3番目の列L3の半導体素子接続パッド5から1番目の列L1の半導体素子接続パッド5の間を通って外側へ延びる引出配線4aと、半導体素子接続パッド5を引出配線4aの一部とともに1番目の列L1〜3番目の列L3毎に露出させるスリット状の開口部7aを有するソルダーレジスト層7とを備えて成る配線基板10であって、引出配線4aは、半導体素子接続パッド5とともに開口部7a内に露出する部位が1番目の列L1と2番目の列L2と3番目の列L3とで全て同じ方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載するために用いられる配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示すように、下面に電極端子Tが格子状に配置された半導体素子Sをフリップチップ接続により搭載する配線基板として、ビルドアップ配線基板40が知られている。ビルドアップ配線基板40の上面中央部には、半導体素子Sを搭載するための搭載部40aが形成されている。また、ビルドアップ配線基板40の下面は、外部電気回路基板に接続するための外部接続面となっている。このビルドアップ配線基板40は、コア基板21の上下面にビルドアップ樹脂層25およびビルドアップ配線導体26を交互に積層したものである。
【0003】
コア基板21には樹脂系絶縁材料から成る複数の絶縁層22が積層されており、その上面から下面にかけて複数のスルーホール23が形成されている。また各絶縁層22の表面およびスルーホール23内には銅箔や銅めっき層から成るコア用の配線導体24が被着形成されている。コア基板21の上下面に積層されたビルドアップ樹脂層25は、樹脂系絶縁材料から成り、その上面から下面にかけてコア用の配線導体24を底面とする複数のビアホール27が形成されている。そして、このビルドアップ樹脂層25の表面およびビアホール27の内部に銅めっき層から成るビルドアップ配線導体26が被着形成されている。さらに上下のビルドアップ絶縁層25およびビルドアップ配線導体26上には、上面側のビルドアップ配線導体26の一部を搭載部40aにおいて半導体素子Sの電極端子Tに接続するための半導体素子接続パッド28として露出させる開口部30aおよび下面側のビルドアップ配線導体26の一部を外部接続面において外部電気回路基板の配線導体と接続するための外部接続パッド29として露出させる開口部30bを有するソルダーレジスト層30が被着されている。ビルドアップ配線基板40は、このような構成をとることによって、高密度な多層配線構造を実現している。なお、半導体素子Sの電極端子Tの下端には半導体素子接続パッド28と接続するための鉛フリー半田から成る半田バンプBが被着されている。
【0004】
そして、半導体素子接続パッド28上に半導体素子Sの電極端子Tを載置し、その状態で半田バンプBを加熱溶融することによって半導体素子Sがビルドアップ配線基板40上に実装される。
【0005】
しかしながら、この従来のビルドアップ配線基板40においては、コア基板21の上下面にビルドアップ絶縁層25およびビルドアップ配線導体26をさらに積層しており、コア基板21の絶縁層22および配線導体24と合わせた絶縁層および配線導体の層数が多くなってしまう。そのため、絶縁層や配線導体を形成するための材料費が多くかかってしまったり、製造工程が複雑になったりして配線基板の製造コストが高くなり、市場が要求する安価で高密度配線の配線基板を提供することが困難であった。
【0006】
そこで、コア基板の上下にビルドアップ層を積層せずに、コア基板のみで高密度配線基板を実現することが望まれていた。しかしながら、例えば4層の配線導体を有するコア基板のみで高密度配線基板を実現しようとした場合、配線導体を展開するための層数が少ないために例えば、図4にソルダーレジスト層を除いた要部上面図に示すように、搭載部の外周側から3番目の列L3および2番目の列L2に位置する半導体素子接続パッド38から引出配線36aを最外周の列L1の半導体素子接続パッド38の間を通して搭載部の外側へ引き出す必要がでてくる。
【0007】
例えば、半導体素子接続パッド38に必要な直径φが50μmで半導体素子接続パッド38のピッチPが176μm、引出配線36aの線幅Wおよび隣接間隔Gがそれぞれ25μmである場合、図5に示すように、各半導体素子接続パッド38を個別に露出させる開口部50aをソルダーレジスト層50に設けようとすると、製造上のバラツキを考慮して開口部50aの直径を80μm程度とする必要がある。そのため、開口部50aの縁からこれに隣接する引出配線36aまでの距離Dが10μm程度となってしまい、この部分の開口50aの縁を起点としてソルダーレジスト層50に剥がれが発生してしまいやすくなる。
【0008】
そこで、図6に示すように、半導体素子接続パッド38の各列L1,L2,L3毎にスリット状の開口部50aを設けることにより各半導体素子接続パッド38を露出させることが考えられる。しかしながら、この場合、各列L1,L2,L3の半導体素子接続パッド38とともに開口部50a内の露出する引出配線36aの半導体素子接続パッド38から延びる方向がそれぞれ異なっており、そのため、開口部50aから露出する半導体素子接続パッド38およびこれに接続された引出配線36aの露出形状および面積が各列L1,L2,L3で異なったものとなる。その結果、半導体素子接続パッド38上に半導体素子の電極端子を載置し、半田バンプを加熱溶融させることによって半導体素子を配線基板上に実装すると、各列L1,L2,L3における半導体素子接続パッド38と半田との接続状態が不均一なものとなり、半導体素子を安定して実装することができないという問題点を誘発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−313167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、搭載部の外側から3番目の列および2番目の列に位置する半導体素子接続パッドからの引出配線を最外周の列の半導体素子接続パッドの間を通して搭載部の外側へ引き出す場合に、各半導体素子接続パッドおよびこれに接続された引出配線のソルダーレジスト層からの露出形状および面積を同一のものとし、半導体素子の電極端子を半導体素子接続パッドに半田を介して安定して接続することが可能な実装安定性に優れた配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の配線基板は、上面中央部に半導体素子が搭載される搭載部を有する絶縁基板と、前記搭載部に外周側から1番目の列および2番目の列および3番目の列を有して格子状に配列形成された半導体素子接続パッドと、前記2番目の列および3番目の列の半導体素子接続パッドから前記1番目の列の半導体素子接続パッドの間を通って前記絶縁基板の上面を前記搭載部の外側へ延びる引出配線と、前記絶縁基板の上面に被着されており、前記半導体素子接続パッドを該半導体素子接続パッドから延びる前記引出配線の一部とともに前記1番目の列と2番目の列と3番目の列毎に露出させるスリット状の開口部を有するソルダーレジスト層とを備えて成る配線基板であって、前記引出配線は、前記半導体素子接続パッドとともに前記開口部内に露出する部位が前記1番目の列と2番目の列と3番目の列とで全て同じ方向に延びていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配線基板によれば、半導体素子接続パッドから延びる引出配線は、半導体素子接続パッドとともにソルダーレジスト層の開口部内に露出する部位が半導体素子接続パッドの配列における外周側から1番目の列と2番目の列と3番目の列とで全て同じ方向に延びていることから、各半導体素子接続パッドおよびこれに接続された引出配線のソルダーレジスト層からの露出形状および面積が同一のものとなり、その結果、半導体素子の電極端子を半導体素子接続パッドに半田を介して安定して接続することが可能な実装安定性に優れた配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の配線基板における実施形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示す配線基板の要部上面図である。
【図3】図3は、従来の配線基板を示す概略断面図である。
【図4】図4は、従来の配線基板の別の例を説明するためのソルダーレジスト層を除去した要部上面図である。
【図5】図5は、図4に示す配線基板にソルダーレジスト層を被着させた場合の一例を示す要部上面図である。
【図6】図6は、図4に示す配線基板にソルダーレジスト層を被着させた場合の別の例を示す要部上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の配線基板について図1および図2を基にして説明する。図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本例の配線基板10は、主として絶縁基板1と配線導体4とソルダーレジスト層7とから構成されており、その上面中央部に半導体素子Sを搭載するための搭載部10aを有している。絶縁基板1は、例えばガラスクロス基材にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた厚みが30〜200μm程度の3層の絶縁層3を熱硬化させた樹脂系電気絶縁材料から成り、その上面から下面にかけては直径が50〜300μm程度のスルーホール2が形成されている。
【0015】
絶縁基板1の内部および上下面およびスルーホール2の内壁には、厚みが10〜20μm程度の銅箔や銅めっき層等の銅から成る配線導体4が被着形成されている。これらの配線導体4のうち絶縁基板1の内部および上下面の所定のもの同士がスルーホール2を介して互いに電気的に接続されている。また、絶縁基板1の上面における配線導体4の一部は、搭載部10aにおいて、半導体素子Sの電極端子Tが接続される半導体素子接続パッド5を形成しており、絶縁基板1の下面における配線導体4の一部は外部電気回路基板に接続するための外部接続パッド6を形成している。そして、半導体素子接続パッド5には、半導体素子Sの電極端子Tが半田を介して接続され、外部接続パッド6は外部電気回路の配線導体に半田ボールを介して接続される。
【0016】
さらに、絶縁基板1の上下面およびスルーホール2の内部には、配線導体4を覆うようにしてソルダーレジスト層7が被着されている。ソルダーレジスト層7は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂等の感光性を有する熱硬化性樹脂の硬化物から成り、絶縁基板1の上下面での厚みが10〜30μm程であり、スルーホール2の内部を充填している。そして上面側のソルダーレジスト層7には、半導体素子接続パッド5を露出させる開口部7aが形成されているとともに、下面側のソルダーレジスト層7には外部接続パッド6を露出させる開口部7bが形成されている。なお、半導体素子Sの電極端子Tには半導体素子接続パッド4と接続するための鉛フリー半田から成る半田バンプBが被着されている。そして、本例の配線基板においては、半導体素子接続パッド5上に半導体素子Sの電極端子Tを載置し、その状態で半田バンプBを加熱溶融することによって半導体素子Sが配線基板10上に実装される。
【0017】
ところで、本例の配線基板においては、図2に示すように、搭載部10aに形成された半導体素子接続パッド5は、搭載部10aの外周側から1番目の列L1および2番目の列L2および3番目の列L3を有して格子状に配列形成されている。そして、各列の半導体素子接続パッド5からは、搭載部10aの外側に向けて引出配線4aが延び、そのうちの2番目の列および3番目の列の半導体素子接続パッド5から延びる引出配線4aは、1番目の列の半導体素子接続パッド5の間を通って搭載部10aの外側に延びている。この例において、例えば半導体素子接続パッド5の直径φは50μm、半導体素子接続パッド5のピッチPは176μm、引出配線4aの線幅Wおよび隣接間隔Gはそれぞれ25μmである。
【0018】
そして、本例の配線基板10においては、ソルダーレジスト層7に、半導体素子接続パッドの各列L1,L2,L3毎にスリット状の開口部7aを設けることにより各列の半導体素子接続パッド5をその半導体素子接続パッド5から延びる引出配線4aの一部とともに露出させている。なお、開口部7aの縁から半導体素子接続パッド5までの距離は25〜125μmである。さらに、本例の配線基板10においては、引出配線4aは、半導体素子接続パッド5とともに開口部7aから露出する部位が1番目の列L1と2番目の列L2と3番目の列L3とで全て同じ方向に延びており、そのことが重要である。このように、引出配線4aの半導体素子接続パッド5とともに開口部7aから露出する部位が1番目の列L1と2番目の列L2と3番目の列L3とで全て同じ方向に延びていることから、各半導体素子接続パッド5およびこれに接続された引出配線4aのソルダーレジスト層7からの露出形状および面積が同一のものとなり、その結果、半導体素子Sの電極端子Tを半導体素子接続パッド5に半田を介して安定して接続することが可能な実装安定性に優れた配線基板10を提供することができる。なお、この例の場合、引出配線4aの半導体素子接続パッド5とともに開口部7aから露出する部位は、スリット状の開口部7aの開口縁に対して垂直に延びている。このように引出配線4aの半導体素子接続パッド5とともに開口部7aから露出する部位がスリット状の開口部7aの開口縁に対して垂直に延びている場合、各半導体素子接続パッド5およびこれに接続された引出配線4aのソルダーレジスト層7からの露出形状が半田のとの接合に適したものとなるので好ましい。
【符号の説明】
【0019】
1 絶縁基板
4a 引出配線
5 半導体素子接続パッド
7 ソルダーレジスト層
7a 開口部
10a 搭載部
L1 搭載部10aの外周側から1番目の半導体素子接続パッド5の列
L2 搭載部10aの外周側から2番目の半導体素子接続パッド5の列
L3 搭載部10aの外周側から3番目の半導体素子接続パッド5の列
S 半導体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面中央部に半導体素子が搭載される搭載部を有する絶縁基板と、前記搭載部に外周側から1番目の列および2番目の列および3番目の列を有して格子状に配列形成された半導体素子接続パッドと、前記2番目の列および3番目の列の半導体素子接続パッドから前記1番目の列の半導体素子接続パッドの間を通って前記絶縁基板の上面を前記搭載部の外側へ延びる引出配線と、前記絶縁基板の上面に被着されており、前記半導体素子接続パッドを該半導体素子接続パッドから延びる前記引出配線の一部とともに前記1番目の列と2番目の列と3番目の列毎に露出させるスリット状の開口部を有するソルダーレジスト層とを備えて成る配線基板であって、前記引出配線は、前記半導体素子接続パッドとともに前記開口部内に露出する部位が前記1番目の列と2番目の列と3番目の列とで全て同じ方向に延びていることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204733(P2012−204733A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69606(P2011−69606)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】