説明

配線形成用基板およびその製造方法ならびにそれを用いた配線基板および電子デバイス

【課題】良好な絶縁性と配線密着性を両立した配線基板を製造することが可能な配線形成用基板およびその製造方法ならびにそれを用いた配線基板および電子デバイスを提供する。
【解決手段】基板上に多孔質層が設けられた配線形成用基板であって、
前記多孔質層の厚さが10μm以上であり、
前記多孔質層の空隙率が10%以上であり、
前記多孔質層は、平均粒子径が0.1μm以上である無機粒子と無機系結着剤とを含有し、
前記無機系結着剤が、リン酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウムおよび塩化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種である配線形成用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に用いられる配線形成用基板およびその製造方法ならびにそれを用いた配線基板および電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路や集積回路などに使われる配線基板の製造方法として、例えば、特許文献1には、「基板の上方に微小空隙型の受容層が設けられ、前記受容層上、又は前記受容層上と前記受容層中とに、導電性微粒子及び有機金属化合物のうちの少なくとも一方どうし、又は前記導電性微粒子と前記有機金属化合物とが結合してなることを特徴とする導電膜パターン」を用いることが開示されている([請求項1][請求項12])。また、特許文献1には、受容層として、多孔性シリカ粒子、アルミナ、アルミナ水和物のうちの少なくとも一つとバインダーとを含む多孔質層が開示されている([請求項2])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−6578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、特許文献1に記載の配線基板について検討を行った結果、配線基板の絶縁性は良好だが、配線と受容層(多孔質層)との密着性に問題があることを明らかとした。
【0005】
そこで、本発明は、良好な絶縁性と配線密着性を両立した配線基板を製造することが可能な配線形成用基板およびその製造方法ならびにそれを用いた配線基板および電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、特定の無機系結着剤を用い、所定の空隙率と厚さを有する多孔質層を基板上に設けた配線形成用基板を用いることにより、良好な絶縁性と配線密着性を両立した配線基板を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0007】
(1)基板上に多孔質層が設けられた配線形成用基板であって、
上記多孔質層の厚さが10μm以上であり、
上記多孔質層の空隙率が10%以上であり、
上記多孔質層は、平均粒子径が0.1μm以上である無機粒子と無機系結着剤とを含有し、
上記無機系結着剤が、リン酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウムおよび塩化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種である配線形成用基板。
【0008】
(2)上記無機粒子の平均粒子径が0.1μm〜5μmである上記(1)に記載の配線形成用基板。
【0009】
(3)上記無機系結着剤がリン酸アルミニウムである上記(1)または(2)に記載の配線形成用基板。
【0010】
(4)上記基板が、金属基材上に絶縁層を有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の配線形成用基板。
【0011】
(5)上記金属基材がアルミニウム基材であり、上記絶縁層がアルミニウムの陽極酸化皮膜である上記(4)に記載の配線形成用基板。
【0012】
(6)基板上に多孔質層が設けられた配線形成用基板の製造方法であって、
上記基板上に、平均粒子径が0.1μm以上である無機粒子と、無機系結着剤としてリン酸アルミニウムおよび/またはケイ酸ナトリウムとを含有する塗布液を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
上記塗膜を乾燥させることにより、厚さが10μm以上であり、且つ、空隙率が10%以上である上記多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、
を有する配線形成用基板の製造方法。
【0013】
(7)上記塗膜形成工程の前に、上記基板の表面に陽極酸化処理を施すことにより絶縁層を形成する絶縁層形成工程を有する上記(6)に記載の配線形成用基板の製造方法。
【0014】
(8)上記絶縁層形成工程が、アルミニウム基板の表面に上記陽極酸化処理を施すことにより、上記アルミニウム基板の表面にアルミニウムの陽極酸化皮膜からなる上記絶縁層を形成する工程である上記(7)に記載の配線形成用基板の製造方法。
【0015】
(9)上記多孔質層形成工程において、上記塗膜を100〜300℃で加熱乾燥させる上記(6)〜(8)のいずれかに記載の配線形成用基板の製造方法。
【0016】
(10)上記塗布液中の上記無機系結着剤の含有量が、上記無機粒子100質量部に対して5〜50質量部である上記(6)〜(9)のいずれかに記載の配線形成用基板の製造方法。
【0017】
(11)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の配線形成用基板と、上記多孔質層の少なくとも表面に形成された金属配線層とを有する配線基板。
【0018】
(12)上記(11)に記載の配線基板を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な絶縁性と配線密着性を両立した配線基板を製造することが可能な配線形成用基板およびその製造方法ならびにそれを用いた配線基板および電子デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の配線形成用基板(配線基板)の好適な実施形態の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の電子デバイス(発光素子)の好適な実施態様の一例を示す模式的な断面図である。
【図3】評価に用いた配線パターンを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[配線形成用基板]
以下に、本発明の配線形成用基板について詳細に説明する。
本発明の配線形成用基板は、基板上に多孔質層が設けられた配線形成用基板であって、上記多孔質層の厚さが10μm以上であり、上記多孔質層の空隙率が10%以上であり、上記多孔質層は平均粒子径が0.1μm以上である無機粒子と無機系結着剤とを含有し、上記無機系結着剤がリン酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウムおよび塩化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種である配線形成用の基板である。
次に、本発明の配線形成用基板の構成について、図1を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明の配線形成用基板(配線基板)の好適な実施形態の一例を示す断面模式図である。
図1(A)に示すように、本発明の配線形成用基板1は、基板2上に多孔質層3が設けられ、多孔質層3が無機粒子4と無機系結着剤5と微小空隙6を含有する配線形成用基板である。
また、図1(B)に示すように、本発明の配線形成用基板1は、配線基板の絶縁性がより良好となり、また、絶縁性が不十分な基板も配線基板として使用し得るという理由から、基板2が、金属基材7上に絶縁層8が設けられた絶縁基板であるのが好ましい。
【0023】
〔多孔質層〕
上記多孔質層は、後述する無機粒子と無機系結着剤を含有し、無機系結着剤によって互いの一部が結着した多数の無機粒子からなる集合体であって、多数の無機粒子の粒子間などに微小空隙が形成された多孔質体である。
このような集合体(多孔質体)を構成する多孔質層を用いることにより、多孔質層上に金属配線層を形成した際に、金属配線層を形成する材料の一部が多孔質層(特に、微小空隙)中に入り込み、残部が多孔質層上に形成される。
【0024】
また、上記多孔質層は、基板の表面の全面に形成されていてもよいが、基板の表面の少なくとも一部、すなわち、後述する金属配線層が形成される部分(配線パターン)に形成されることが好ましい。
【0025】
本発明においては、上記多孔質層の厚さは、10μm以上であり、10〜50μmであるのが好ましく、20〜40μmであるのがより好ましい。
上記多孔質層の厚さが10μm以上であると、配線基板の絶縁性が良好となる。また、上記多孔質層の厚さが50μm以下であると、可撓性が保持され、後述する金属配線層を形成する際の取扱性等が良好なる。
【0026】
ここで、上記多孔質層の膜厚の測定方法は、以下に示す通りである。
まず、多孔質層を設けた基板を折り曲げて作製した破断面を超高分解能走査型電子顕微鏡(例えば、S−4000、日立製作所社製)によって観察して撮影する。なお、観察倍率は、膜厚等により適宜調整して行う。具体的には、倍率100〜10000倍であるのが好ましい。また、観察範囲は、断面長として100μm以上の部分を観察するものとする。
次いで、上記方法で得られた画像データ(写真)の多孔質部分について、観察範囲の中で最も厚くなる部分の膜厚を測定し、それを換算した値を上記多孔質層の膜厚とする。
【0027】
また、上記多孔質層の空隙率は、10%以上であり、10〜50%であるのが好ましく、20〜40%であるのがより好ましい。
上記多孔質層の空隙率が10%以上であると、配線基板の配線密着性が良好となる。また、上記多孔質層の空隙率が50%以下であると、可撓性が保持され、後述する金属配線層を形成する際の取扱性等が良好なり、また、後述する金属配線層の形成性(塗布性)も良好となる。
【0028】
ここで、空隙率は、幾何学法により測定した全空隙率をいうが、本発明においては、嵩密度をアルキメデス法により算出し、真密度を気相置換法(ピクノメータ法)により測定し、得られた結果を下記式(1)に代入した値を空隙率とした。
空隙率(%)={1−(嵩密度/真密度)}×100・・・(1)
【0029】
更に、上記多孔質層の表面の算術平均粗さRaは、後述する金属配線層の形成性(塗布性)の観点から、0.5〜3μmであるのが好ましく、0.5〜1.0μmであるのが好ましい。
【0030】
<無機粒子>
上記多孔質層が有する無機粒子の平均粒子径は、0.1μm以上であり、0.1μm〜5μmであるのが好ましく、0.5〜2μmであるのがより好ましい。
上記無機粒子の平均粒子径が0.1μm以上であると、後述する無機系結着剤により結着する際に粒子間に適切な空隙を確保することができ、上記多孔質層を多孔質体とすることができる。
また、上記無機粒子の平均粒子径が5μm以下であると、上記多孔質層と後述する基板との密着性が良好となる。
【0031】
ここで、平均粒子径とは、上記無機粒子の粒子径の平均値をいい、本発明においては、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された50%体積累積径(D50)をいう。
【0032】
本発明においては、上記無機粒子は特に限定されず、例えば、従来公知の金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸化物などを用いることができ、中でも、金属酸化物を用いるのが好ましい。
上記無機粒子としては、具体的には、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、極微細炭酸カルシウムなど)、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムなどの炭酸塩; 硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸化物;また、その他に、カルシウムカーボネート、方解石、大理石、石膏、カオリンクレー、焼成クレー、タルク、セリサイト、光学ガラス、ガラスビーズなどが挙げられる。
この中でも、後述する無機系結着剤との親和性が良好となる理由から、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0033】
また、本発明においては、上記無機粒子は、2種類以上の粒子や、2種類以上の平均粒子径を有する粒子を併用してもよい。
種類や平均粒子径の異なる粒子を併用することにより、上記多孔質層の強度の向上や、上記多孔質層と基板との密着強度の向上を図ることができる。また、上記多孔質層の表面における配線の印刷性が改善する効果も期待できる。
【0034】
更に、本発明においては、上記無機粒子の形状は特に限定はされず、例えば、球状、多面体状(例えば、20面体状、12面体状等)、立方体状、4面体状、いわゆるコンペイトウ形状、板状、針状等いずれであってもよい。
これらのうち、断熱性に優れる理由から、球状、多面体状、立方体状、4面体状、コンペイトウ形状が好ましく、入手が容易で断熱性により優れる理由から、球状であるのがより好ましい。
【0035】
後述する本発明の配線基板をLEDなどの発光素子用の基板として用いる場合は、反射率の観点から、屈折率が1.5〜1.8の無機粒子を用いることが好ましい。
上記屈折率を満たす無機粒子としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、大理石、石膏、カオリンクレー、タルク、セリサイト、光学ガラス、ガラスビーズなどが挙げられる。
【0036】
<無機系結着剤>
上記多孔質層が有する無機系結着剤は、リン酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウムおよび塩化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種(以下、本段落においては「リン酸アルミニウム等」という。)である。
ここで、一般的に、無機粒子を結着させるためには、焼結を行うことが知られているが、特定の空隙を確保するためには、焼結の進行を制御する必要があった。
これに対し、本発明においては、リン酸アルミニウム等を無機系結着剤として用いることにより、所定の厚さと空隙率を有する多孔質層を焼結せずに形成することができる。また、形成される多孔質層は、経年変化にも強く、更に、形成時に無機系結着剤が基板とも反応するため、基板との密着性も良好となる。
これは、リン酸アルミニウム等が、結着の初期において糊に似た挙動を示し、また、後述する比較例で使用した有機バインダー(例えば、エポキシ樹脂等)よりも無機粒子同士の空隙を保持する力が強いためであると考えられる。
【0037】
(リン酸アルミニウム)
上記リン酸アルミニウムは、狭義のリン酸アルミニウムだけではなく、リン酸アルミニウムの他に、例えば、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
また、上記リン酸アルミニウムとしては、市販のリン酸と市販の硫酸アルミニウム(または、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、および、これらの混合物)とを水の存在下で反応させて得ることができる。さらに、塩化アルミニウムは水酸化アルミニウムの反応を触媒的に進行させる役割を有すると考えられるため、上記反応においては、水酸化アルミニウムと塩化アルミニウムの両方を添加することが好ましく、塩化アルミニウムの量が水酸化アルミニウムの量に対して、5〜10%であることが好ましい。なお、反応物の中和が必要な場合は水酸化ナトリウム溶液を用いることができ、硫酸アルミニウムは、硫酸とアルミナとを反応させて製造してもよい。
【0038】
本発明においては、上記リン酸アルミニウムと共に、リン酸塩化合物を用いてもよい。
上記リン酸塩化合物としては、水に不溶性であれば特に限定されず、その具体例としては、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム、リン酸ガリウム、リン酸ランタン、リン酸チタニウム、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
また、上記リン酸塩化合物を上記リン酸アルミニウムと併用する場合、50質量%以上がリン酸アルミニウムであるのが好ましい。
【0039】
(ケイ酸ナトリウム)
上記ケイ酸ナトリウムは、ケイ酸ソーダまたは水ガラスとも呼ばれるものであり、メタケイ酸のナトリウム塩であるNa2SiO3が一般的だが、その他に、Na4SiO4、Na2Si25、Na2Si49なども用いることができる。
メタケイ酸のナトリウム塩は、二酸化ケイ素を炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムと融解して得ることができる。
【0040】
(塩化アルミニウム)
上記塩化アルミニウムは、無水塩化アルミニウム、塩化アルミニウム6水和物、ポリ塩化アルミニウム(水酸化アルミニウムを塩酸に溶解させて生成する塩基性塩化アルミニウムの重合体)のいずれであってもよい。
【0041】
上記多孔質層には、上記無機粒子と無機系結着剤以外に、他の化合物を含有してもよい。他の化合物としては、例えば、分散剤、反応促進剤等が挙げられ、また、これらと、上記無機粒子と無機系結着剤との反応生成物等も挙げられる。
【0042】
〔基板〕
本発明の配線形成用基板に用いられる基板は特に限定されず、例えば、金属基材、樹脂基材、ガラス基材等を用いることができ、これらを一種単独で用いてもよく、2種以上を併用ないし積層してもよい。
上記金属基材としては、具体的には、例えば、バルブ金属(例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等)、鋼板等が挙げられる。
また、上記樹脂基材としては、具体的には、例えば、ポリイミド等が挙げられる。
【0043】
本発明においては、上記基板は、配線基板の絶縁性がより良好となる理由から、上記金属基材上に絶縁層を有する基板であるのが好ましく、具体的には、アルミニウム基材上にアルミニウムの陽極酸化皮膜を有する基板であるのがより好ましい。
次に、好適態様であるアルミニウム基材およびアルミニウムの陽極酸化皮膜について説明する。
【0044】
<アルミニウム基材(金属基材)>
本発明の配線形成用基板に好適に用いられるアルミニウム基材は、公知のアルミニウム基板を用いることができ、純アルミニウム基板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;等を用いることもできる。
ここで、上記合金板に含まれてもよい異元素としては、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等が挙げられ、合金中の異元素の含有量は、10質量%以下であるのが好ましい。
このようなアルミニウム基材は、組成や調製方法(例えば、鋳造方法等)等については特に限定されず、国際公開第2010/150810号の[0031]〜[0051]段落に記載された組成、調製方法等を適宜採用することができる。
また、上記アルミニウム基材の厚みは、0.1〜2.0mm程度であるのが好ましく、0.15〜1.5mmであるのがより好ましく、0.2〜1.0mmであるのがさらに好ましい。この厚さは、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
【0045】
<アルミニウムの陽極酸化皮膜(絶縁層)>
アルミニウムの陽極酸化皮膜は、上記アルミニウム基材の表面に設けられる絶縁層である。
上記陽極酸化皮膜は、上記アルミニウム基材とは別のアルミニウム基材の陽極酸化皮膜であってもよいが、絶縁層の形成欠陥を防ぐ観点から、上記アルミニウム基板の表面の深さ方向の一部に後述する陽極酸化処理を施すことにより、陽極酸化処理が施されなかった部分(すなわちアルミニウム基材上)に形成される陽極酸化皮膜であるのが好ましい。
また、上記陽極酸化皮膜の厚さは1〜200μmであるのが好ましい。1μm未満であると絶縁性に乏しく耐電圧が低下し、一方、200μmを超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜層の厚さは、20μm以上が好ましく、40μm以上がさらに好ましい。
【0046】
[配線形成用基板の製造方法]
以下に、本発明の配線形成用基板の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、基板上に多孔質層が設けられた配線形成用基板の製造方法であって、上記基板上に、平均粒子径が0.1μm以上である無機粒子と無機系結着剤としてリン酸アルミニウムおよび/またはケイ酸ナトリウムとを含有する塗布液を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、上記塗膜を乾燥させることにより、厚さが10μm以上であり、且つ、空隙率が10%以上である上記多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、を有する配線形成用基板の製造方法である。
ここで、基板、無機粒子および無機系結着剤としては、上述した本発明の配線形成用基板で説明したものと同様のものを用いることができる。
次に、本発明の製造方法が有する各処理工程について、所望により有していてもよい任意の処理工程とともに説明する。
【0047】
〔粗面化処理〕
本発明の製造方法においては、後述する塗膜形成工程の前に、所望により設ける絶縁層(例えば、アルミニウムの陽極酸化皮膜)と金属基材(例えば、アルミニウム基材)との密着性を向上させる観点から、予め基板(例えば、アルミニウム基板)の表面に粗面化処理を施すことができる。
上記粗面化処理としては、例えば、アルミニウム基板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法;アルミニウム基板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法;アルミニウム基板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法;アルミニウム基板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法;等が挙げられる。これらの方法において、上記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
【0048】
中でも、他の処理(アルカリエッチング処理等)の条件にもよるが、大波構造、中波構造および小波構造が重畳した表面形状を形成させるには、機械的粗面化処理、硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理および塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法が好適に挙げられる。また、大波構造および小波構造が重畳した表面形状を形成させるには、塩酸を主体とする電解液を用い、アノード反応にあずかる電気量の総和を大きくした電気化学的粗面化処理のみを施す方法が好適に挙げられる。
各粗面化処理の詳細については、国際公開第2010/150810号の段落[0055]〜[0083]に記載されている。
【0049】
〔絶縁層形成工程(陽極酸化処理)〕
本発明の製造方法は、後述する塗膜形成工程の前に、上記基板(例えば、アルミニウム基板)の表面に陽極酸化処理を施すことにより絶縁層(例えば、アルミニウムの陽極酸化皮膜)を形成する絶縁層形成工程を有するのが好ましい。
【0050】
上記陽極酸化処理は特に限定されず、従来行われている方法で行うことができる。
上記陽極酸化処理に用いられる溶液としては、具体的には、例えば、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、マロン酸、クエン酸、酒石酸、ホウ酸、等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
上記陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜層量となるように調整される。
【0052】
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム基板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。アルミニウム基板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム基板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/dm2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム基板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
【0053】
陽極酸化処理のその他の詳細については、国際公開第2010/150810号の段落[0091]〜[0094]に記載されている。
【0054】
上記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜は、多孔質であっても無孔質であってもよい。多孔質である場合、その平均ポア径が5〜1000nm程度であり、平均ポア密度が1×106〜1×1010/mm2程度である。
【0055】
〔封孔処理〕
本発明においては、上記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に対して、封孔処理を施してもよい。
上記封孔処理としては、例えば、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。
具体的には、例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特開平5−202496号公報、特開平5−179482号公報等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
また、他の封孔処理としては、例えば、特開平6−35174号公報の段落[0016]〜[0035]に記載されているようなゾルゲル法による封孔処理等も好適に挙げられる。
【0056】
〔塗膜形成工程〕
上記塗膜形成工程は、基板上に、平均粒子径が0.1μm以上である無機粒子と、リン酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウムおよび塩化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機系結着剤とを含有する塗布液を塗布して塗膜を形成する工程である。
【0057】
<塗布液>
上記塗布液は、上記無機粒子と上記無機系結着剤とを含有する溶液であれば特に限定されないが、上記無機粒子と上記無機系結着剤とを含有するスラリーであるのが好ましい。
また、上記塗布液中の上記無機系結着剤の含有量は、上記無機粒子100質量部に対して5〜50質量部であるのが好ましい。
【0058】
本発明においては、上記無機系結着剤として上記リン酸アルミニウムを用いる場合、上記塗布液は、リン酸、水酸化アルミニウムおよび水を含有する混合液を利用し、この混合液中でリン酸と水酸化アルミニウムを液中で反応させることによりリン酸アルミニウムを生成させた反応溶液を用いることができる。なお、リン酸アルミニウムが生成していることは、赤外分光光度計で形成した多孔質層の表面を分析すれば容易に確認することができる。
同様に、上記無機系結着剤として上記塩化アルミニウムを用いる場合、上記塗布液は、塩酸、水酸化アルミニウムおよび水を含有する混合液を利用し、この混合液中で塩酸と水酸化アルミニウムを液中で反応させることにより塩化アルミニウムを生成させた反応溶液を用いることができる。なお、塩化アルミニウムが生成していることは、赤外分光光度計で形成した多孔質層の表面を分析すれば容易に確認することができる。
ここで、反応式に従う化学量論比で混合液を調整すると、反応が進むとともに液の粘度が急激に上昇するため、予め若干過剰の水を添加しておくことが望ましい。
また、形成される多孔質層(多孔質体)の微小空隙中にリン酸根または塩酸根が残存することは基板の腐食等を引き起こすため、化学量論比よりも若干過剰の水酸化アルミニウムを添加しておくことが望ましい。
【0059】
<塗布方法>
上記塗布液の塗布方法は特に限定されず、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0060】
〔多孔質層形成工程〕
上記多孔質層形成工程は、上記塗膜形成工程で形成した上記塗膜を乾燥させることにより、厚さが10μm以上であり、且つ、空隙率が10%以上である上記多孔質層を形成する工程である。
ここで、上記塗膜の乾燥条件は特に限定されず、一般的に用いられる方法を選択できるが、リン酸アルミニウムにより無機粒子が結着する反応を進めるために焼成(加熱乾燥)することが好ましい。
また、上記乾燥の温度は、100〜300℃が好ましく、150〜280℃であるのがより好ましく、200〜250℃であるのがさらに好ましい。
水分を除去する観点から100℃以上が好ましく、また、リン酸と水酸化アルミニウムの反応を進めて結着させるには150℃以上が好ましく、さらに、得られたリン酸アルミニウムに残存する吸着水を完全に除去する観点から200℃以上が好ましい。
また、上記基板にアルミニウム基板を用いる場合には、軟化を抑制する観点から、300℃以下であるのが好ましく、さらに、長時間の加熱処理におけるアルミニウム基板の強度変化の観点から、250℃以下で処理する事が望ましい。
乾燥時間に関しては10分〜60分が好ましく、20分〜40分がより好ましい。短時間では反応の進行が不十分であり、長時間になると乾燥温度との関係でアルミニウム基板の強度変化をきたす虞がある。60分以上では製造コスト的にも好ましくない。
また、上記焼成(加熱乾燥)をする場合に、上記塗布液は水分を含む液のため、焼成前に、リン酸アルミニウムが生成反応や結着反応を起こさない100℃以下の温度で乾燥させてもよい。
【0061】
[配線基板]
以下に、本発明の配線基板について詳細に説明する。
本発明の配線基板は、上述した本発明の配線形成用基板と、この配線形成用基板が有する上記多孔質層の少なくとも表面に形成された金属配線層とを有する配線基板である。
次に、本発明の配線基板の構成について、図1を用いて説明する。
【0062】
図1は、本発明の配線形成用基板(配線基板)の好適な実施形態の一例を示す断面模式図である。
図1(A)および(B)に示すように、本発明の配線基板10は、配線形成用基板1の多孔質層3の表面の一部に金属配線層9が設けられた配線基板である。
【0063】
〔金属配線層〕
上記金属配線層は、本発明の配線形成用基板における多孔質層の少なくとも表面に形成される。
ここで、「多孔質層の少なくとも表面に形成される」とは、金属配線層を多孔質層上、または、多孔質層上および多孔質層中に形成させることであり、また、「多孔質層上および多孔質層中に形成させる」とは、金属配線層を形成する材料の一部が多孔質層(特に、微小空隙)中に入り込み、残部が多孔質層上に形成されることをいう。
本発明においては、上記多孔質層が多孔質であるため、その表面に形成される金属配線層は、アンカー効果により多孔質層との密着性が良好となる。
【0064】
上記金属配線層の材料は、電気を通す素材(以下、「金属素材」ともいう。)であれば特に限定されず、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等が挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらのうち、電気抵抗が低い理由からCuを用いるのが好ましい。
また、上記金属配線層は、これらの材料を用いた多層構造であってもよく、例えば、最下層からAg層、Ni層およびAu層をこの順で設ける態様が好適に挙げられる。
【0065】
上記金属配線層の厚さは、目的や用途に応じて所望の厚さとすればよいが、導通信頼性およびパッケージのコンパクト性の観点から、0.5〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、5〜250μmが特に好ましい。
また、上記金属配線層が多層構造である場合、最下層(例えば、Ag層)の厚みは、上記多孔質層中の微小空隙の存在を考慮して、金属配線層全体の厚みの50%以上であるのが好ましく、70〜80%であるのがより好ましい。具体的には、10〜50μmであるのが好ましく、15〜40μmであるのがより好ましい。
同様に、上記金属配線層が多層構造である場合、最上層(例えば、Au層)の厚みは、ワイヤボンディング性を考慮して、0.05〜0.5μmであるのが好ましく、0.1〜0.4μmであるのがより好ましい。
【0066】
上記金属配線層の表面の算術平均粗さRaは、ワイヤボンディング性を考慮して、0.01〜0.6μmであるのが好ましく、0.05〜0.3μmであるのが好ましい。
また、上記金属配線層が多層構造である場合、最下層(例えば、Ag層)の表面の算術平均粗さRaは、0.03〜0.6μmであるのが好ましく、0.05〜0.3μmであるのがより好ましい。
【0067】
<金属配線層の形成>
上記金属配線層の形成方法としては、例えば、上記金属素材および液体成分(例えば、溶媒、樹脂成分など)を含有する金属インクをインクジェット印刷法、スクリーン印刷法等により上記多孔質層上にパターン印刷する方法等が挙げられる。
このような形成方法により、凹凸のある多孔質層の表面に多くの工程を必要とせずに簡易にパターンを有する配線層を形成することができる。
【0068】
また、その他の上記金属配線層の形成方法としては、例えば、電解めっき処理、無電解めっき処理、置換めっき処理などの種々めっき処理の他、スパッタリング処理、蒸着処理、金属箔の真空貼付処理、接着層を設けての接着処理等が挙げられる。
【0069】
[電子デバイス]
以下に、本発明の電子デバイスについて詳細に説明する。
本発明の電子デバイスは、上述した本発明の配線基板を有するデバイスであり、例えば、図2に示す発光素子等が挙げられる。
【0070】
図2は、本発明の電子デバイス(発光素子)の好適な実施態様の一例を示す模式的な断面図である。
ここで、図2に示す発光素子20は、接着剤11により多孔質層3上に実装されたLED12を有する。また、LED12は、蛍光粒子13を混入した透明樹脂14でモールドされており、外部接続用の電極を兼ねた金属配線層9を有する本発明の配線基板10にワイヤボンディングされている。
なお、本発明においては、接着剤、LED、蛍光粒子および透明樹脂については、いずれも従来公知の材料を用い、従来公知の形成方法により形成することができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0072】
〔配線形成用基板の作製〕
(比較例1)
以下に示す組成のバインダー液A100gに、無機粒子としてアルミナゾル(アルミナゾル520、平均粒子径:0.01μ以下、日産化学社製)を100g添加し、撹拌することにより、多孔質層形成溶液を調製した。
調製した多孔質層形成溶液を鋼板基板(SUS304−2B、0.8mm厚、能勢鋼材社製)上に塗布して塗膜を形成した後に、180℃で5分間乾燥させることにより、鋼板基板上に多孔質層が形成された配線形成用基板を作製した。
なお、多孔質層におけるリン酸アルミニウム(無機系結着剤)の存在は、赤外分光法(IR)により確認した。
<バインダー液Aの組成>
・リン酸85% (和光純薬) 48g
・水酸化アルミニウム(和光純薬) 11g
・水 41g
【0073】
作製した配線形成用基板の多孔質層の膜厚は、配線形成用基板の断面写真を超高分解能走査型電子顕微鏡(S−4000、日立製作所社製)により撮影し、得られた画像データの多孔質層部分の厚さの値から換算して求めた。結果を下記第1表に示す。
また、多孔質層の空隙率は、嵩密度をアルキメデス法により算出し、真密度を気相置換法(ピクノメータ法)により測定し、得られた結果を上記式(1)に代入した値を算出した。この結果を下記第1表に示す。
更に、多孔質層の表面について、JIS B0601:2001に記載された算術平均粗さRaを測定した。この結果を下記第1表に示す。
【0074】
(比較例2〜8、実施例1〜35)
比較例1で使用した無機粒子および基板を下記第1表に示すものに変更した以外は、比較例1と同様の手法により配線形成用基板を作製した。
なお、比較例4および6〜8ならびに実施例31〜35は、以下に示すように無機粒子の添加量やバインダー液も変更した。
具体的には、比較例4は、上記バインダー液Aに対する無機粒子の添加量を100gから10gに変更した。
また、比較例6は、リン酸アルミニウム(バインダー液Aにおけるリン酸および水酸化アルミニウム)を使用せず、無機粒子のみを塗布した。
また、比較例7は、上記バインダー液Aの代わりに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールGH17、日本合成化学社製)と水とを質量比1:1になるように混合したバインダー液Bを100g使用した。
また、比較例8は、上記バインダー液Aの代わりに、低粘度エポキシ樹脂(Z−1、日新レンジ社製)10gを用いた。
また、実施例31は、上記バインダー液Aの代わりに、富山化学社製の3号ケイ酸ソーダ原液(比重1.4)と水とを質量比1:1になるように混合したバインダー液Cを100g使用した。
また、実施例32〜35は、上記バインダー液Aの代わりに、以下に示す組成のバインダー液Dを100g用い、それに対して無機粒子を150g添加した。
<バインダー液Dの組成>
・塩酸85% (和光純薬) 46.9g
・水酸化アルミニウム(和光純薬) 11g
・水 90g
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
上記第1表中、無機粒子としては、以下のものを用いた。
・アルミナゾル:アルミナゾル520(平均粒子径:0.01μ以下、日産化学社製)
・アルミナA:AL−160SG−3(平均粒子径:0.52μm、昭和電工社製)について、ボールミルを用いて、ジルコニアビーズとともに粉砕し、粒径測定装置を用いて平均粒子径が0.05μmとなったもの。
・アルミナB:AL−160SG−3(平均粒子径:0.52μm、昭和電工社製)について、ボールミルを用いて、ジルコニアビーズとともに粉砕し、粒径測定装置を用いて平均粒子径が0.10μmとなったもの。
・アルミナC:AL−160SG−3(平均粒子径:0.52μm、昭和電工社製)
・アルミナD:A42−2(平均粒子径:4.7μm、昭和電工社製)
・アルミナE:A−12(平均粒子径:30μm、昭和電工社製)
【0078】
・水酸化アルミニウム:ハイジライトH43M(平均粒子径:0.75μm、昭和電工社製)
・二酸化ケイ素:HPS(R)−1000(平均粒子径:1μm、東亞合成社製)
・水酸化カルシウム:CSH(平均粒子径:1μm、宇部マテリアル社製)
・酸化マグネシウム:ピュアマグ(R)FNM−G(平均粒子径:0.5μm、タテホ化学工業社製)
・酸化イットリウム:微粒子タイプ(平均粒子径:1μm、信越化学工業社製)
・酸化亜鉛:LPZINC−2(平均粒子径:2μm、堺化学工業社製)
・酸化チタン:TA−100(平均粒子径:0.6μm、富士チタン工業社製)
・酸化ジルコニウム:KZ−0Y−LSF(平均粒子径:0.2μm、共立マテリアル社製)
【0079】
・硫酸バリウムA:BF−1(平均粒子径:0.05μm、東新化成社製)
・硫酸バリウムB:B−30(平均粒子径:0.3μm、東新化成社製)
・硫酸バリウムC:W−1(平均粒子径:1.5μm、竹原化学工業株社製)
・硫酸バリウムD:W−6(平均粒子径:5μm、竹原化学工業社製)
・硫酸バリウムE:W−10(平均粒子径:10μm、竹原化学工業社製)
【0080】
硫酸バリウムC/アルミナC:上述した硫酸バリウムCとアルミナCとを1:3の比率で混合したもの
水酸化カルシウム/アルミナC:上述した水酸化カルシウムとアルミナCとを1:3の比率で混合したもの
アルミナB/アルミナC:上述したアルミナBとアルミナCとを1:3の比率で混合したもの
【0081】
上記第1表中、基板としては、以下のものを用いた。
・鋼板:SUS304−2B(0.8mm厚、能勢鋼材社製)
・ガラス板:ソーダライムガラス(3mm厚、市販品)
・基板A:1050材(厚み0.8mm、日本軽金属社製)に対して以下に示す脱脂処理およびデスマット処理を施した基板
・基板B:基板Aに対して更に以下に示す陽極酸化処理を施した基板
・アルミナ(焼結体):京セラ社製のアルミナ(A−476)を加工して0.3mm厚としたもの
・窒化アルミニウム(焼結体):トクヤマ社製の窒化アルミニウム(シェイパルM soft)を加工して0.3mm厚としたもの
・溶融アルミニウムメッキ鋼板:アルスター鋼板(3mm厚、日新製鋼社製)に対して基板Bと同様の陽極酸化処理を施した基板
【0082】
<基板Aの処理条件>
(脱脂処理)
アルミニウム板(1050材、厚み0.8mm、日本軽金属社製)に、水酸化ナトリウム濃度が27質量%であり、アルミニウムイオンが濃度6.5質量%である、温度70℃の水溶液をスプレー管から20秒間吹き付けた。その後、ニップローラで液切りし、更に、後述する水洗処理を行った後、ニップローラで液切りした。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを80mm間隔で有する構造を有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理した。
(酸性水溶液中でのデスマット処理)
上記脱脂処理の後、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸1%水溶液を用い、液温35℃でスプレー管から5秒間吹き付けて行った。その後、ニップローラで液切りした。
【0083】
<基板Bの処理条件>
基板Aと同様に作製した基板を陽極とし、陽極酸化処理装置を用いて陽極酸化処理を施した。電解液としては、70g/L硫酸水溶液に硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液(温度20℃)を用いた。また、陽極酸化処理は、基板がアノード反応する間の電圧を25Vとなるように定電圧の電解条件とし、最終的な陽極酸化皮膜の厚みが20μmとなるまで施した。
その後、ニップローラで液切りし、更に、上記の水洗処理に用いたのと同様の構造のスプレー管を用いて水洗処理を行った後、ニップローラで液切りした。
【0084】
〔配線基板の作製〕
配線形成用基板の表面にインクジェット装置(DMP−2831、富士フイルム社製)を用いて銀ナノ粒子インク(XA−436、藤倉化学社製)の希釈液を図3に示す金属配線層9のパターンで打滴することでAg配線(配線幅:100μm)を形成させた。
その後、配線基板全体をローラーで加圧してAg配線の表面を平坦化させ、Ag配線上にニッケル層を形成した。具体的には、奥野製薬社製の無電解ニッケルメッキ液(ICP−ニコロンGM(NP))を用い、温度75℃、pH7.5の条件で25分浸漬処理することにより、平坦化したAg配線上にニッケル層を形成させた。なお、処理後の基板は純水を用いて丁寧に洗浄した。
次いで、奥野製薬社製の置換型無電解金メッキ液(無電ノーブルAU)を用い、ニッケル層上にAu層を形成させた後、奥野製薬社製の還元型無電解金メッキ液(セルフゴールドOKT−IT)を用いてAu層の厚みを増やす処理を行なった。なお、いずれの処理後も基板は純水を用いて丁寧に洗浄した。
なお、各層の厚みおよび算術平均粗さRaは、下記第2表に示す通りである。
【0085】
【表3】

【0086】
〔評価方法〕
作製した各配線基板について、以下に示す評価方法により、配線密着性と絶縁性を評価した。
また、配線形成用基板の耐久性、および、配線基板を反射基板として電子デバイスに用いた際の反射特性も評価するため、配線形成用基板(多孔質層)の膜強度、基板と多孔質層との密着力、および、配線形成用基板の反射率についても測定した。
これらの結果を下記第3表に示す。
【0087】
<配線密着性>
作製した各配線基板に形成した配線を以下の基準で評価した。
〇:光学顕微鏡で観察し、配線がほぼまっすぐであり、テープを貼り付けて剥がしたときに配線層が剥れないもの
〇△:テープを貼り付けて剥がしたときに配線形状が乱れるもの
△:テープを貼り付けて剥がしたときに配線が剥れるもの(多層配線の場合は配線形成用基板とAg層とが剥離するもの)
×:配線が連続せず、抜けが生じているもの
【0088】
<絶縁性>
耐電圧・絶縁抵抗試験機(TOS9200、キクスイ社製)を用い、耐電圧(DC)を測定し評価した。
具体的には、作製した各配線形成用基板を金属製の基材(アルミニウム板)に載せ、多孔質層側にプローブを押し当てて測定し、耐電圧が1kV未満の基板を×、1kV以上1.5kV未満の基板を△、1.5kV以上2kV未満の基板を〇△、2kV以上2.5kV未満の基板を○、2.5kV以上の基板を◎として評価した。
なお、基板自体が絶縁物の場合は、すべて(◎)として標記した。
【0089】
<膜強度>
配線形成用基板の(多孔質層)表面に対して、引掻き試験機で荷重100gを加えたときのキズの程度を以下に示す基準で評価した。
また、0℃〜400℃の間の昇温および降温を1サイクル(4時間/サイクル)とし、100サイクル経過後(ヒートサイクル後)の配線形成用基板に対して、同様の試験を行った。
◎:傷が見えなかった
〇:傷は見えるが膜自体が削れていない
△:傷が見え、かつ、膜自体が削れている
×:引掻きの際に膜が破壊してしまった
【0090】
<密着力>
押し切りカッターで30mm□(平面四角形状)に切断し、剥れなかった基板については高さ3mからコンクリートの地面に落下させ、以下の評価とした。
また、0℃〜400℃の間の昇温および降温を1サイクル(4時間/サイクル)とし、100サイクル経過後(ヒートサイクル後)の配線形成用基板に対して、同様の試験を行った。
◎:剥離しない
〇:一部剥離した
△:剥離した
×:押し切りカッターで切断した際に剥れてしまったもの。
【0091】
<反射率>
作製した配線形成用基板について、反射濃度計(CM2600D、コニカミノルタ社製)を用いて、400〜700nmの全反射率(SPINモードの全平均)を測定した。
【0092】
【表4】

【0093】
(評価結果の考察)
本発明の効果は上記第1表〜第3表に示す結果から明らかであるが、以下、評価結果の考察を詳述する。
比較例1〜3および実施例1〜2では、使用している基板が鋼板である点は同一だが、多孔質層に用いられている無機粒子(アルミナの平均粒子径)が異なる点、ならびに、多孔質層の空隙率および膜厚が異なる点が相違している。
ここで、比較例1および2は、平均粒子径が0.1μm未満の無機粒子を使用し、多孔質層の空隙率が10%未満であり、膜厚も10μm未満と薄いため、配線基板の配線の密着性が悪く、絶縁性が劣ることが分かる。
また、比較例3では、無機粒子の平均粒子経が0.1μm以上(0.52μm)であり、多孔質層の空隙率は10%以上(35%)となっているが、多孔質層の膜厚が5μmと薄いため、配線基板の絶縁性が劣ることが分かる。
一方、実施例1は、無機粒子の平均粒子経が0.1μm以上、多孔質層の空隙率が10%以上、多孔質層の膜厚が10μm以上という要件を全て満たしており、配線基板の配線密着性および絶縁性はともに良好であることが分かる。さらに、実施例2では、多孔質層の空隙率および膜厚が実施例1よりも大きいことにより、配線密着性および絶縁性がさらに良好となることが分かる。
【0094】
実施例3〜11では、基板の種類を変更していると共に、平均粒子径の異なるアルミナ(無機粒子)を用いて、多孔質層の空隙率と膜厚の関係を変えているが、いずれも、無機粒子の平均粒子経が0.1μm以上、多孔質層の空隙率が10%以上、多孔質層の膜厚が10μm以上という要件を全て満たしており、配線基板の配線密着性および絶縁性はともに良好であることが分かる。
ここで、実施例3および4は、基板に絶縁性のガラス基板を用いているため、配線基板の絶縁性は極めて優れていることが分かる。
また、実施例3と4を比較すると、無機粒子の平均粒子径ならびに多孔質層の空隙率および膜厚が大きい実施例4の方が、配線密着性が良好となることが分かる。
【0095】
次に、実施例4と5を比較すると、多孔質層と基板との密着力は、アルミナ基板を使用した実施例5の方が優れていることが分かる。
【0096】
次に、実施例5と実施例6〜8とを比較すると、実施例5で用いたアルミニウム基板(基板A)に陽極酸化処理を施し、基板表面にアルミニウムの陽極酸化皮膜からなる絶縁層を形成させた基板Bを用いることで、配線基板の絶縁性がより良好となることが分かる。
また、多孔質層と基板との密着力も、アルミニウム基板よりも基板Bを用いた方が優れていることが分かる。
更に、無機粒子の平均粒子経、多孔質層の空隙率および膜厚が大きいほど基板の反射率が高くなることも分かる。
【0097】
実施例11と比較例4を比較すると、多孔質層形成溶液における無機粒子とバインダー液の比率が相違している。具体的には、バインダー液100gに対して、実施例11では無機粒子を100g用い、比較例4では無機粒子を10g用いて調製した溶液で多孔質層を形成した。
この結果、比較例4では多孔質層の空隙率が10%未満となり、多孔質層の膜厚が15μmとなるため、配線密着性および絶縁性がともに劣ることが分かった。
【0098】
実施例11〜13では、基板は共通しているが、平均粒子径の異なるアルミナ(無機粒子)を用いることで、多孔質層の空隙率と膜厚の関係を変えている。いずれの実施例も配線基板の配線密着性および絶縁性はともに良好であったが、平均粒子径が30μmの無機粒子を使用した実施例13では、膜強度が若干劣る結果となった。
【0099】
実施例14〜21では、基板は共通しているが、異なる種類の無機粒子を用いることで、多孔質層の空隙率と膜厚の関係を変えている。この結果、無機粒子の種類によらず、いずれの実施例も配線密着性および絶縁性がともに良好となることが分かる。
【0100】
比較例5および実施例22〜25では、基板は共通しているが、平均粒子径の異なる硫酸バリウム(無機粒子)を用いることで、多孔質層の空隙率と膜厚の関係を変えている。
ここで、比較例5は、平均粒子径が0.1μm未満の無機粒子を使用しており、多孔質層の空隙率が10%未満であるため、配線基板の配線密着性および絶縁性がともに劣ることが分かった。
一方、実施例22〜25では、いずれの実施例も配線基板の配線密着性および絶縁性はともに良好であったが、平均粒子径が10μmの粒子を使用した実施例25では、膜強度と、多孔質層と基板との密着力が、他の実施例に比べて劣る結果となった。
【0101】
実施例26〜29では、異なる2種類の無機粒子を1;3の比率で混合しており、いずれの実施例も配線基板の配線密着性および絶縁性がともに良好となることが分かる。
実施例27と比較例9を比較すると、同一の無機粒子を使用していても、リン酸アルミニウムを使用していない比較例9では、製膜ができず、粉々の状態となり評価できなかった。
また、実施例31の結果から、無機系結着剤をリン酸アルミニウムからケイ酸ナトリウムに代えた場合も配線密着性および絶縁性がともに良好となることが分かり、実施例32〜35の結果から、無機系結着剤をリン酸アルミニウムから塩化アルミニウムに代えた場合も配線密着性および絶縁性がともに良好となることが分かる。
一方、比較例7および8の結果から、有機バインダーを用いた場合は、配線密着性が劣ることが分かる。
ここで、特許文献1(特開2004−6578号公報)では、多孔質層に含まれるバインダーとして、ポリビニルアルコール等の有機バインダーが開示されている(特許文献1[0049])。多孔質層中に有機バインダーを使用した場合は、多孔質層の加熱処理により、有機バインダーは分解(溶融)しても完全に消失することはなく、多孔質層に残存する有機バインダーにより、配線密着性の悪化を招く結果になったものと推測される。また、配線前駆体の融着が抑制されて配線の高抵抗化を招く虞もある。
【符号の説明】
【0102】
1 配線形成用基板
2 基板
3 多孔質層
4 無機粒子
5 無機系結着剤
6 微小空隙
7 金属基材
8 絶縁層
9 金属配線層
10 配線基板
11 接着剤
12 LED
13 蛍光粒子
14 透明樹脂
20 発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に多孔質層が設けられた配線形成用基板であって、
前記多孔質層の厚さが10μm以上であり、
前記多孔質層の空隙率が10%以上であり、
前記多孔質層は、平均粒子径が0.1μm以上である無機粒子と無機系結着剤とを含有し、
前記無機系結着剤が、リン酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウムおよび塩化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種である配線形成用基板。
【請求項2】
前記無機粒子の平均粒子径が0.1μm〜5μmである請求項1に記載の配線形成用基板。
【請求項3】
前記無機系結着剤がリン酸アルミニウムである請求項1または2に記載の配線形成用基板。
【請求項4】
前記基板が、金属基材上に絶縁層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の配線形成用基板。
【請求項5】
前記金属基材がアルミニウム基材であり、前記絶縁層がアルミニウムの陽極酸化皮膜である請求項4に記載の配線形成用基板。
【請求項6】
基板上に多孔質層が設けられた配線形成用基板の製造方法であって、
前記基板上に、平均粒子径が0.1μm以上である無機粒子と、無機系結着剤としてリン酸アルミニウムおよび/またはケイ酸ナトリウムとを含有する塗布液を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を乾燥させることにより、厚さが10μm以上であり、且つ、空隙率が10%以上である前記多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、
を有する配線形成用基板の製造方法。
【請求項7】
前記塗膜形成工程の前に、前記基板の表面に陽極酸化処理を施すことにより絶縁層を形成する絶縁層形成工程を有する請求項6に記載の配線形成用基板の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層形成工程が、アルミニウム基板の表面に前記陽極酸化処理を施すことにより、前記アルミニウム基板の表面にアルミニウムの陽極酸化皮膜からなる前記絶縁層を形成する工程である請求項7に記載の配線形成用基板の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質層形成工程において、前記塗膜を100〜300℃で加熱乾燥させる請求項6〜8のいずれかに記載の配線形成用基板の製造方法。
【請求項10】
前記塗布液中の前記無機系結着剤の含有量が、前記無機粒子100質量部に対して5〜50質量部である請求項6〜9のいずれかに記載の配線形成用基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の配線形成用基板と、前記多孔質層の少なくとも表面に形成された金属配線層とを有する配線基板。
【請求項12】
請求項11に記載の配線基板を有する電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−216748(P2012−216748A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187436(P2011−187436)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】