説明

配車システム

【課題】例えば、携帯電話等から配車要求があった場合でも、決まった配車場所についてはその説明を簡略化することができ、タクシー利用者及び配車オペレータの利便性を向上する。
【解決手段】配車管理装置3に顧客情報DB32を設け、顧客を判別するための顧客情報と配車場所を指定する位置情報とを対応付けて記憶しておく。顧客から配車要求があった際に、配車管理装置3は操作入力部35により入力される顧客情報をもとに顧客情報DB32から該当する位置情報を検索し位置情報を含む配車情報を作成する。このようにして作成された配車情報を配車対象となる移動局装置4に向け送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば業務用無線機によるタクシー配車用AVM(Automatic Vehicle Monitoring)システムに用いられる配車管理のための配車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタクシー配車用AVMシステム等の無線通信システムでは、移動局である車両(タクシー)の現在位置を、GPS(Global Positioning System)により移動局自身が検出して記憶している。そして、各移動局は基地局との間で動態位置情報を基地局からの定期的なポーリング信号に従い、移動局へ車両番号毎に割り当てられた専用の送信スロットで返送する。基地局では移動局全車両を順にポーリングを行い、全ての移動局の位置動態情報を把握する。なお、基地局は少なくとも1つあって、管理センタに接続されており、管理センタにて顧客情報や配車の管理等を行っている。
【0003】
管理センタには、顧客情報を管理するデータベースが設けられ、顧客の氏名、住所(付け位置)、電話番号等が記憶されている。顧客から配車要求があった場合には、該当する顧客情報をこのデータベースから読み出し、配車対象の移動局に送信する。
なお、管理センタにおいて、移動局から通知される位置情報の到達結果を各移動局に送信する手法が提案されている。これにより、管理センタ側で移動局の位置を確実に把握することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−204101公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、固定電話より配車要求があった場合は、かかってきた電話番号に対応する顧客の住所情報(付け位置)を上記データベースから読み出し、配車対象となる移動局に送信していた。しかし、最近の携帯電話等の普及により、顧客は場所を選ばずに配車要求を行うようになり、電話番号と付け位置とが一致しなくなるという問題があった。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、例えば、携帯電話等から配車要求があった場合でも、決まった配車場所についてはその説明を簡略化することができ、タクシー利用者及び配車オペレータの利便性を向上させることのできる配車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明に係わる配車システムは、車両に搭載される移動局装置と、前記移動局装置と無線回線を介して接続され、顧客からの配車要求に応じて前記車両に配車指示を行う配車管理装置とを具備する配車システムであって、前記配車管理装置は、前記顧客を判別するための顧客情報と配車場所を指定する位置情報とを対応付けて登録する登録手段と、前記顧客の配車要求時に指定される顧客情報をもとに前記登録手段から該当する位置情報を検索する検索手段と、前記検索された位置情報を含む配車情報を作成する作成手段と、前記作成された配車情報を前記移動局装置に向け送信する送信手段とを具備し、前記移動局装置は、前記配車管理装置から前記無線回線を介して通知される配車情報を受信する受信手段と、前記受信された配車情報に含まれる位置情報に基づいて配車場所の位置を提示する提示手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
上記構成では、例えば、配車管理装置に顧客情報を管理するデータベースを設け、顧客を判別するための顧客情報と配車場所を指定する位置情報とを対応付けて登録しておく。顧客から配車要求があった際に、入力される顧客情報をもとにデータベースから該当する位置情報を検索し位置情報を含む配車情報を作成し、配車対象となる移動局装置に向け送信するものである。
【0009】
したがって、携帯電話等から配車要求が行われた場合でも、指定された配車場所がすでに登録されている場合には、顧客から居場所を聞き出す時間を省くことができる。これにより、タクシー利用者及び配車オペレータの利便性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、この発明に係わる配車システムは、前記配車管理装置において、前記登録手段は、前記顧客情報に対応付けてそれぞれ異なる配車場所を指定する複数の位置情報を登録し、前記作成手段は、前記検索手段により検索された位置情報が複数あるとき、いずれかの位置情報を選択して、この選択された位置情報を含む配車情報を作成することを特徴とする。
【0011】
すなわち、配車管理装置において顧客から配車要求を受け付けると、顧客情報をもとに複数の配車場所が選択肢として提示される。このように構成することにより、配車オペレータはさらに効率よく配車指示を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
したがってこの発明によれば、例えば、携帯電話等から配車要求があった場合でも、決まった配車場所についてはその説明を簡略化することができ、タクシー利用者及び配車オペレータの利便性を向上させることのできる配車システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、配車システムの一実施形態を示す概略構成図で、GPSを利用したタクシー配車用AVMシステムの一実施例である。
図1において、基地局11,12,13,・・・は、無線通信可能な範囲(カバーエリア)を形成する無線基地局装置である。管理センタ5は、複数の基地局11,12,13,・・・と専用線を介して接続される。移動局(タクシー車両)21,22,23,・・・は、上記基地局11が形成する基地局カバーエリア内に位置するタクシー車両である。
【0014】
移動局21,22,23,・・・は、基地局11を介して管理センタ5とポーリング方式による通信を行う。管理センタ5からの指示によりポーリング信号P1が基地局11を介して全移動局21,22,23,・・・に送信されると、各移動局21,22,23,・・・は、このポーリング信号P1に対するポーリング応答信号P21,P22,P23,・・・をそれぞれ順番に送信する。また、各移動局21,22,23,・・・は、GPS衛星6から位置情報を受けて、車両の位置情報(経度、緯度)を取得することができる。位置情報は、車両の動態情報(実車、空車等)と共に、ポーリング応答信号P21,P22,P23,・・・により管理センタ5に送信される。
【0015】
図2に、図1に示す配車システムにおける全車ポーリング方式のタイミングチャートを示す。基地局11は、基地局カバーエリア内の全ての移動局21,22,23,・・・に対して移動局車両番号1〜nを指定したポーリング信号を送信する。例えば、図1の移動局21が移動局車両番号1、移動局22が移動局車両番号2、移動局23が移動局車両番号3、・・・、移動局2nが移動局車両番号nというように各移動局に固有の車両番号(車番)が設定されている。移動局21,22,23,・・・は、予め指定された車両番号から送信するタイミングを計算し、計算された送信スロットでポーリング応答信号を返送する。基地局11は休止期間の経過後に次の移動局車両番号n+1〜mを指定したポーリング信号を送信し、同じ動作を繰り返すことで基地局カバーエリア内の全移動局21,22,23,・・・の動態位置情報を定期的に収集することができる。
【0016】
図3は、管理センタ5に設けられる配車管理装置の構成を示すブロック図である。配車管理装置3は、制御部31と、顧客情報データベース(顧客情報DB)32と、顧客情報登録プログラム33と、配車情報送信プログラム34と、操作入力部35と、表示部36と、通信インタフェース(通信I/F)37とを備える。通信インタフェース(通信I/F)37は、制御部31による制御の下、上記基地局11,12,13,・・・との間で通信を行う。
【0017】
顧客情報DB32には、顧客の電話番号、顧客名、住所等を含む顧客情報と、配車場所を指定する付け位置情報とが対応付けて記憶される。なお、本実施形態では、顧客を判別するために電話番号を用いるものとする。また、これに限らず顧客を識別するために付与された顧客IDや種々の情報により顧客を判別するようにすることもできる。さらに、顧客情報DB32から読み出された顧客情報を、配車管理装置3において表示または修正、変更を行うようにしても良い。
【0018】
制御部31により顧客情報登録プログラム33が実行されると、配車オペレータから操作入力部35により入力される顧客情報が顧客情報DB32に記憶される。さらに、制御部31は、この顧客情報に対応付けて当該顧客の付け位置情報とを顧客情報DB32に記憶する。配車情報送信プログラム34は、配車要求時に操作入力部35により入力される電話番号をもとに顧客情報DB32から該当する付け位置情報を検索し、付け位置の選択肢として表示部36に提示する。そして、制御部31は、選択された付け位置情報を含む配車情報を作成して配車対象となる移動局に向け送信する。
【0019】
図4は、移動局21,22,23・・・に設けられる移動局装置4の構成を示すブロック図である。移動局装置4は、制御部41と、無線通信インタフェース(無線通信I/F)42と、GPS受信部43と、配車情報提示プログラム44と、表示部45とを備える。
【0020】
無線通信I/F32は、制御部41による制御の下、無線アンテナにより基地局11,12,13,・・・を介して配車管理装置3との間で通信を行う。GPS受信部43は、GPS衛星から発信される電波を利用して車両の位置情報を取得する。配車情報提示プログラム44は、配車管理装置3から送信された配車情報を無線通信I/F42により受信し、受信された配車情報に含まれる位置情報に基づいて配車場所の位置を液晶表示器(LCD)等の表示部45に表示する。
【0021】
次に、このように構成される配車システムの動作について説明する。
図5は、配車管理装置3の表示部36に表示される画面構成の一例である。管理センタ5へ配車要求の電話があり、配車オペレータが配車管理装置3の操作入力部35からその電話番号を入力すると、制御部31は、入力された電話番号をもとに顧客情報DB32から顧客名、住所等を含む顧客情報と付け位置情報を検索する。
【0022】
入力された電話番号が顧客情報DB32に登録されていない場合は、例えば、汎用電話帳データベース(図示せず)により電話番号から住所を引き出し、配車オペレータから入力された電話番号、顧客名と共に顧客情報DB32に登録する。
一方、顧客が携帯電話等の電話にて配車要求を行った場合は、電話番号からその顧客の居場所を特定できないため、配車オペレータは顧客からタクシーの付け位置を聞き出す。図5に示す画面には地図が表示されており、配車オペレータは、このとき聞き出した場所をこの地図上に付け位置(例えば、図5の星印)として示す。顧客の居場所を地図上に表示するための検索方法は、住所、電話番号、ランドマーク名、店名、交差点名等があるが、手段は問わない。制御部31は、地図上に付け位置が示されると、その地図情報より住所を導き出し住所を表示する。ここで、配車オペレータにより付け位置登録ボタンが押下されると、この住所を付け位置情報として顧客情報DB32に登録する。
【0023】
その後、顧客情報DB32に付け位置が登録された電話番号で配車要求が行われると、制御部31は、この電話番号をもとに顧客情報DB32から顧客情報及び付け位置情報を検索する。検索された顧客情報及び付け位置情報をもとに、顧客の電話番号、顧客名、住所等と共に、登録されている付け位置を選択肢として表示する。このようにすることで、指定された配車場所がすでに登録されている場合に、顧客から居場所を聞き出す時間を省くことができる。また、付け位置を選択肢として表示する際、顧客の使用頻度の高い順に表示させたると、さらに効率的に配車指示を行えるようになる。
【0024】
配車オペレータにより上記選択肢から付け位置が選択されると、配車管理装置3は、顧客名等と選択された付け位置の位置情報とを含む配車情報を作成し、配車対象となる移動局装置4に向け送信する。
また、配車要求のあった場所が選択肢に含まれない場合は、配車オペレータは、再度顧客から居場所を聞き出し、配車管理装置3の地図上に付け位置を示して付け位置を登録する。この操作を繰り返すことにより、顧客から配車要求の電話があった場合に、配車場所が顧客情報DB32に登録してある場合が多くなり、配車する際の付け位置の特定を素早く行うことができる。
【0025】
以上のように上記実施形態では、配車管理装置3に顧客情報DB32を設け、顧客を判別するための顧客情報と配車場所を指定する位置情報とを対応付けて記憶しておく。顧客から配車要求があった際に、配車管理装置3は操作入力部35により入力される顧客情報をもとに顧客情報DB32から該当する位置情報を検索し位置情報を含む配車情報を作成する。また、検索された位置情報が複数存在する場合は、検索された位置情報を選択肢として表示部36に表示し、選択された位置情報を含む配車情報を作成する。このようにして作成された配車情報を配車対象となる移動局装置4に向け送信するようにしている。
【0026】
したがって上記実施形態によれば、例えば、携帯電話等から配車要求があった場合でも、決まった配車場所についてはその説明を簡略化することができ、タクシー利用者及び配車オペレータの利便性を向上し、顧客から配車要求があった際に効率よく配車指示を行うことが可能となる。
【0027】
また上記実施形態によれば、タクシー業務用のGPSを利用したAVMシステム等の無線通信システムに好適である。これは、ポーリング方式のタクシー配車用AVMシステムにおいて、管理センタから基地局を経由して複数のタクシーへのポーリング信号に各タクシーの動作指定情報を付加して発信し、これを受信した各タクシーは当該タクシーの位置情報と状態情報を基地局へ返信し、各タクシーは前記動作指定情報に従って、タクシーの動作を管理センタが制御するものであり、このようなシステムにより、ポーリング処理による各タクシーのデータ収集がされ、配車要求のあった迎車場所周辺の顧客情報を流用して効率の良い配車を行うことができるタクシー配車用AVMシステムを実現するものである。
【0028】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した本発明の実施の形態においては、基地局が1つの場合について説明したが、複数の基地局に渡ってポーリング配信エリアの設定を行うことにより、複数の基地局にまたがる地区に対してポーリング配信を行い、各移動局からの返信による移動局データの収集及び移動局との通話を適切に行うことができる。また、図1に示すシステムでは、複数の基地局が各々の地域をカバーエリアとした場合を示しているが、同一の地域を周波数の異なる複数の基地局でカバーする場合等もある。
【0029】
また、顧客情報DB32に登録された顧客情報や付け位置の情報をインターネット等の所定のサイトから顧客が必要に応じて追加/変更を行えるように構成することも可能である。このようにすると、顧客は予め付け位置を追加/変更しておくことで、配車要求時に配車場所の詳細を配車オペレータに説明する手間を省くことができる。その他にも、配車管理装置3及び移動局装置4の構成、及びこの発明を実現する各プログラム群の処理手順と処理内容についても、この発明を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0030】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に係わる配車システムの一実施形態を示す概略構成図。
【図2】図1に示す配車システムにおける全車ポーリング方式のタイミングチャート。
【図3】図1に示す管理センタに設けられる配車管理装置の構成を示すブロック図。
【図4】図1に示す移動局に設けられる移動局装置の構成を示すブロック図。
【図5】図3に示す配車管理装置の表示部に表示される画面構成の一例を示す図。
【符号の説明】
【0032】
11,12,13・・・…基地局、21,22,23・・・…移動局、5…管理センタ、6…GPS衛星、P1…ポーリング信号、P21,P22,P23・・・…ポーリング応答信号、3…配車管理装置、31…制御部、32…顧客情報データベース、33…顧客情報登録プログラム、34…配車情報送信プログラム、35…操作入力部、36…表示部、37…通信インタフェース、4…移動局装置、41…制御部、42…無線通信インタフェース、43…GPS受信部、44…配車情報提示プログラム、45…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される移動局装置と、前記移動局装置と無線回線を介して接続され、顧客からの配車要求に応じて前記車両に配車指示を行う配車管理装置とを具備する配車システムであって、
前記配車管理装置は、
前記顧客を判別するための顧客情報と配車場所を指定する位置情報とを対応付けて登録する登録手段と、
前記顧客の配車要求時に指定される顧客情報をもとに前記登録手段から該当する位置情報を検索する検索手段と、
前記検索された位置情報を含む配車情報を作成する作成手段と、
前記作成された配車情報を前記移動局装置に向け送信する送信手段と
を具備し、
前記移動局装置は、
前記配車管理装置から前記無線回線を介して通知される配車情報を受信する受信手段と、
前記受信された配車情報に含まれる位置情報に基づいて配車場所の位置を提示する提示手段と
を具備することを特徴とする配車システム。
【請求項2】
前記配車管理装置において、前記登録手段は、前記顧客情報に対応付けてそれぞれ異なる配車場所を指定する複数の位置情報を登録し、前記作成手段は、前記検索手段により検索された位置情報が複数あるとき、いずれかの位置情報を選択して、この選択された位置情報を含む配車情報を作成することを特徴とする請求項1記載の配車システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−264786(P2007−264786A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85961(P2006−85961)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】