説明

酢酸菌セラミドを含む肌機能改善用組成物

【課題】 本発明は、経口摂取することにより、保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果を有する肌機能改善用組成物の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、酢酸菌セラミド、酢酸菌から極性溶媒を用いて抽出された酢酸菌セラミド、もしくは酢酸菌セラミドを含有する酢酸菌の細胞破砕物、を有効成分として含有する肌機能改善用組成物を提供する。溶媒としては、水、グリセリン、アルコール、ケトン、氷酢酸、又はこれらの混合溶媒が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口摂取により、保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果を有する肌機能改善用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物由来のセラミドは、人間の皮膚器官の構成成分であり、経口摂取により保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果があることが知られている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0003】
セラミドは、脂肪、グリセロ脂質、及びステロール脂質を除く脂質を指すものであって、セラミドには、上記したように小麦、米、ダイズ等の植物より抽出したもの、牛脳などの動物から抽出したもの、酵母などの真核微生物や、スフィンゴモナスなどの原核微生物から抽出したものがある。しかし、BSE問題などにより牛脳などの動物由来のセラミドは経口摂取することは敬遠される傾向があり、また、その食経験がないことよりスフィンゴモナスなどの微生物は経口摂取が敬遠されている。
【0004】
従って、経口摂取によって、保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果を期待する場合は、小麦、米、ダイズ等の植物から抽出されたセラミドが利用されていた。
【0005】
しかしながら、小麦、米、ダイズ等の植物から抽出されたセラミドを経口摂取した場合は、その効果は十分なものではなく、より効果の強いものが求められていた。
【0006】
本発明は、酢酸菌由来のセラミドを有効成分とすることを特徴とする肌機能改善組成物に関するものであるが、酢酸菌セラミドにおいて、植物セラミドを越えたきわめて顕著な美容効果があること、しかもその効果が経口摂取によって奏されることは、従来知られておらず、新規である。
【非特許文献1】「フレグランス・ジャーナル(Fragrance Journal)」、23巻、p.81〜89、1995年
【非特許文献2】「バイオインダストリー(Bioindustry)」、19巻、p.16〜26、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、植物セラミドよりも効果が高く、経口摂取することにより、保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の効果を有する肌機能改善用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、醸造酢製造菌として古来より使用されており、安全性の高いことが認知されている酢酸菌に着目した。
【0009】
そして、本発明者らは、醸造酢の生産に用いられている酢酸菌から抽出した酢酸菌セラミドを経口摂取することにより、保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果があることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、酢酸菌セラミドを有効成分として含有することを特徴とする肌機能改善用組成物に関する。
また、請求項2に記載の本発明は、酢酸菌セラミドを含有する酢酸菌の細胞破砕物を有効成分として含有することを特徴とする肌機能改善用組成物に関する。
さらに、請求項3に記載の本発明は、酢酸菌セラミドが酢酸菌から極性溶媒を用いて抽出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の肌機能改善用組成物に関する。
また、請求項4に記載の本発明は、飲食品であることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の肌機能改善用組成物に関する。
そして、請求項5に記載の本発明は、飲食品が食酢であることを特徴とする請求項4に記載の肌機能改善用組成物に閲する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の酢酸菌セラミドを含有した肌機能改善組成物は、直接、酢酸菌セラミドを経口摂取することにより保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果がある。また、酢酸菌セラミドを含有する酢酸菌の細胞破壊物又は酢酸菌の極性溶媒抽出物を有効成分として含有させても、同様の肌機能改善効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明で用いる酢酸菌セラミドは、ヒト型セラミドのスフィンゴイド塩基部分のスフィンゴシンの前駆体であるスフィンガニンと脂肪酸がアミド結合した構造を有しており、例えば次のようにして得ることができる。
【0014】
例えば、酢酸菌を原料として、極性溶媒を用いて抽出し、これを酢酸菌セラミドとして使用してもよいし、得られた抽出物を更に有機溶媒で再結晶させてもよい。
【0015】
有機溶媒としては、アルコール、脂肪族カルボン酸エステル、ケトン等、有機溶剤であればすべてのものが、単用又は2種以上併用される。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等各種低級アルコールが例示され、脂肪族カルボン酸エステルとしては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の分枝又は直鎖の飽和脂肪酸のほか、各種の不飽和脂肪酸のアルコールエステル、例えば上記アルコールのエステルが例示される。
【0016】
ケトンとしては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルケトン等が例示される。
【0017】
酢酸菌セラミドの抽出に使用する極性溶媒としては、水、グリセリン、アルコール、ケトン、氷酢酸など極性溶媒であればすべてのものが単用又は2種以上併用することができる。アルコール、ケトンとしては、上記に例示したものが適宜使用可能である。
【0018】
酢酸菌体から、極性溶媒を用いて酢酸菌セラミドを抽出するには、例えば、酢酸菌菌体自体、又は酢酸菌菌体を適当に超音波等で破砕した後、極性溶媒で酢酸菌セラミドを抽出し、得られた抽出液はそのまま酢酸菌セラミドとして使用することができる。
【0019】
抽出は、湿潤菌体又は乾燥菌体と溶剤とを充分に接触させて行なえばよく、常法が適宜適用される。例えば、乾燥菌体の場合、有機溶剤(必要あれば、その0.1〜10倍、通常はそれと同量程度の水を加え)を菌体1kgに対して0.5〜30リットル、通常は5〜15リットル程度加え、よく混合した後、遠心分離や濾過等の分離処理を行って上層を回収したり、あるいは、ソックスレー抽出器を用いて、乾燥菌体10kgに対して上記と同量のアルコール等の有機溶剤を加えて加熱還流し、得られた抽出液を減圧乾固した後、0.5〜15リットル程度、通常は2〜8リットルのケトン類等の有機溶剤を加えて溶解し、沈澱物を分離した後の濾液(上清)を抽出液として回収すればよい。
【0020】
また、溶媒(例えば、クロロホルム、アルコール、水の混液)を用いて抽出した後、下層を脂質粗画分として回収し、これに苛性ソーダや苛性カリその他のアルカリ溶液を加えて弱アルカリ分解し、アルカリ安定脂質を得、これを酢酸菌セラミドとしてよい。更に所望する場合、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー等で処理し、例えば、クロロホルム、酢酸の混合溶媒で洗浄した後、クロロホルム、アルコールの混合溶媒で溶出される画分を酢酸菌セラミドとして使用してもよい。
【0021】
このようにして得られた抽出液は、そのまま、酢酸菌セラミドとして使用することができるが、更に、抽出液の処理物も使用することができ、処理物としては例えば、抽出液の濃縮物、ペースト化物、乾燥物、希釈物が使用できるほか、精製物、例えば、液体クロマトグラフィーや向流分配法などで酢酸菌セラミドを分離精製し、またそれを採取して、酢酸菌セラミドとして用いることもできる。なお、本発明において、酢酸菌セラミドには、精製物のほか、粗精製物や含有物も包含され、これらの処理物も含まれる。
【0022】
また、酢酸菌セラミドは、酢酸菌体、特にその細胞膜に存在するので、抽出工程を経ることなく酢酸菌をそのまま酢酸菌セラミドとして使用したり、含有させたりしてもよい。更にまた、体内での吸収を考慮して、高圧ホモジナイザー、フレンチプレスなど高圧式破砕機や、超音波式破砕機を用いて細胞破壊したものをそのまま酢酸菌セラミドとして使用したり、含有させたりしてもよい。酢酸菌の破砕処理は、上記のほか、常法によって適宜実施することができる。
【0023】
酢酸菌体破砕物の場合も抽出物と同様であって、酢酸菌を破砕して(通常、湿菌体に0.5〜2倍量の水を加えた後に破砕処理する)得られた破砕物をそのまま酢酸菌セラミドとして使用できるほか、上記と同様に処理して得た各種処理物も酢酸菌セラミドとして使用することができる。
【0024】
本発明において用いられる酢酸菌としては、特に制限はなく、例えば、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、アサイア属(Asaia)またはアシドモナス属(Acidomonas)に属する酢酸菌が例示される。
【0025】
さらに詳細には、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)の酢酸菌としては、グルコンアセトバクター・ハンゼニイ(Gluconacetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、グルコンアセトバクター・インタメデイウス(Gluconacetobacter intermedius)、グルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)などが例示される。
【0026】
また、グルコノバクター属(Gluconobacter)としては、グルコノバクター・フラトウリ(Gluconobacter frateurii)、グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus)などが例示される。
【0027】
さらに、アセトバクター属(Acetobacter)の酢酸菌としては、アセトバクター・トロピカリス(Acetobacter tropicalis)、アセトバクター・インドネシエンシス(Acetobacter indonesiensis)、アセトバクター・シジギイ(Acetobacter syzygii)、アセトバクター・シビノンゲンシス(Acetobacter cibinongensis)、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)、アセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)、アセトバクター・オルレアネンシス(Acetobacter orleanensis)、アセトバクター・ロバニエンシス(Acetobacter lovaniensis)、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・ポモラム(Acetobacter pomorum)などが例示される。
【0028】
さらに、アサイア属(Asaia)の酢酸菌としては、アサイア・ボゴレンシス(Asaia bogorensis)、アサイア・シアメンシス(Asaia siamensis)などが例示される。
【0029】
また、アシドモナス属(Acidomonas)の酢酸菌は、アシドモナス・メタノリカ(Acidomonas methanolica)などが例示される。
【0030】
酢酸菌としては、上記のほか、寄託菌、市販菌、食酢や種酢に含有されている酢酸菌等も適宜使用可能である。寄託菌としては次のものが非限定的に例示される。
【0031】
アセトバクター・トロピカリス(Acetobacter tropicalis) NBRC 16470、同インドネシエンシス(A.indonesiensis) NBRC 16471、同シジギイ(A.syzygii) NBRC 16604、同シビノンゲンシス(A.cibinongensis) NBRC 16605、同オリエンタリス(A.orientalis) NBRC 16606、同パスツリアヌス(A.pasteurianus) DSM 3509、同オルレアネンシス(A.orleanensis) NBRC 13752、同ロバニエンシス(A.lovaniensis) NBRC 13753、同アセチ(A.aceti)NBRC 14818、同ポモラム(A.pomorum) DSM 11825など。
【0032】
グルコンアセトバクター・ハンゼニイ(Gluconacetobacter hansenii) NBRC 14820、同ジアゾトロフィカス(Ga.diazotrophicus) DSM 5601、同インタメデイウス(Ga.intermedius) DSM 11804、同サッカリ(Ga.sacchari) DSM 12717など、
グルコノバクター・フラトウリ(Gluconobacter frateurii) NBRC 3264、同セリナス(G.cerinus) NBRC 3267など、
アサイア・ボゴレンシス(Asaia bogorensis) NBRC 16594、同シアメンシス(A.siamensis) NBRC 16457など、
アシドモナス・メタノリカ(Acidomonas methanolica) DSM 5432など。
【0033】
これらの酢酸菌は酢酸発酵に用いられ、大量に増殖する。なお、酢酸菌は、ナタデココ、カスピ海ヨーグルト、紅茶きのこなどで食経験があり、また、食酢発酵においては発酵後に廃棄されており安価に入手することができる。
【0034】
本発明に係る酢酸菌セラミドを含有する肌機能改善組成物の形態としては、錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤、顆粒剤、散剤等の剤形に製剤化したものが例示され、例えば、医薬品、経口化粧品、サプリメント等として使用することができる。さらに、飲食品の形態としては、具体的には、キャンデイ、ガム、ゼリー等の菓子、食パン、米飯等の主食品、アルコール飲料、牛乳、食酢飲料等の飲料等の飲料、また、醤油、味噌、食酢等の調味料等が挙げられる。
【0035】
本発明において、食品中の酢酸菌セラミドの割合は、0.0001〜5重量%、好ましくは、0.001〜1重量%である。酢酸菌セラミドの添加量が0.0001重量%未満では、保湿、肌荒れ、シワ防止等の美容効果が発現しづらく、また、5重量%を越えると該組成物製造時の粘度が上昇し、また着色や香味の劣化がおこり、経口摂取に適さなくなるので好ましくない。
【0036】
本発明の肌機能改善用組成物としての酢酸菌セラミドの投与量は、成人1日当たり0.01mg〜1000mg、好ましくは0.1mg〜100mgである。成人1日当たり0.1mg未満の投与量では、保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果が少なく、100mgを越えると消化吸収ができなくなる恐れがある。
【0037】
本発明の肌機能改善用組成物は酢酸菌セラミドを有効成分として含有するが、それ以外の各種原料とを混合・均一化した後に、必要に応じて界面活性剤を混合して、安定化を図ることもできる。これらの界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびレシチンなどを用いることができる。
【0038】
また、本発明によれば、食酢その他酢酸菌含有飲食品を破砕処理したり、酢酸菌を飲食品に添加した後これを破砕処理したり、酢酸菌の破砕処理物(その処理物も含む、以下同じ)を飲食品に添加したり、酢酸菌体又はその破砕処理物の溶剤抽出物(その処理物も含む、以下同じ)を飲食品に添加したりすることによって、肌機能改善組成物を製造することもできる。したがって、本発明は、これらの破砕処理物や飲食品は、肌機能改善のために経口摂取されるものである旨の表示を付した肌機能改善組成物を提供するものであって、調味や単なる飲用といった通常の用途に使用される食酢等の飲食品とは明確に区別されるものである。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
<ヒト皮膚器官培養を用いた酢酸菌セラミドの抗シワ活性>
酢酸菌セラミドの抗シワ活性を以下の要領で実施した。
【0041】
まず、酢酸菌セラミドは、以下の方法で調製した。すなわち、酢酸菌(Acetobacter aceti NBRC 14818)の100g乾燥菌体からクロロホルム−メタノール系の溶媒(グロロホルム:メタノール:水=1:1:0.8)5リットルで抽出し、その後、2層分離を行い、下層を脂質粗画分として回収した。次に、0.4N NaOHにより脂質粗画分を弱アルカリ分解し、アルカリ安定脂質を得た。
【0042】
得られたアルカリ安定脂質を、クロロホルムで平衡化したシリカゲルカラムにかけ、クロロホルム:酢酸=100:1の溶媒で洗浄後、クロロホルム:メタノール=97:3の溶媒で溶出して得られた画分を乾固して、約0.5gの酢酸菌セラミドを得た。
【0043】
また、対照物として、ヒト型セラミド(Ceramide: Matreya社製)、及びヒト型糖セラミド(Ceramide β−D−glucoside from brain: Matreya社製)、植物型糖セラミド(Ceramide β−D−glucoside from plant: Matreya社製)を用いた。
【0044】
これらの試料を用い、下記の(1)〜(8)に示す抗シワ活性評価系により、酢酸菌セラミドの抗シワ活性を、改変ブロノフ拡散チャンバーを用いて、ヒト型糖セラミド、ヒト型セラミド、植物型糖セラミドと比較評価した。改変ブロノフ拡散チャンバーは、図1にその概略を示した。図中、PBSは生理食塩水、PG−biocompatible polymerはポリエチレングリコール−生物両立性ポリマー、Human skin sliceはヒト皮膚薄片、Culture mediumは培養液を、それぞれ示す。
【0045】
(1)ヒト摘出皮膚片(インフォームドコンセント済み)を、改変ブロノフ拡散チャンバー(図1に概略を示した)に組込んだ。皮下側の培養液に本発明の酢酸菌セラミドならびに対照物を添加した。
(2)酢酸菌セラミドならびに対照物を添加後、2時間後に、皮膚片に紫外線A波(UV−A)を3J/cm2の強度で、1日当り2回照射した。なお、ランプと検体の間に珪酸ガラスを挟んだ。
(3)皮膚片を器官培養した。なお、培養基はDMEMab培地(+)10%FBS(ウシ胎児血清)を用いた。
(4)毎日同様な処理を行い、5〜10目間、器官培養を行った。
(5)器官培養終了跡、チャンバーから皮膚片を単離し、実体顕微鏡/CCDビデオカメラで皮膚表面を撮影し、皮膚表面写真を得た。
(6)その後、皮膚表面に対して、シリコンゴムでレプリカ作製を行い、そのレプリカの写真を撮影して、レプリカ写真を得た。
(7)上記(6)で作製したレプリカの表面凸凹形状をスキャンして、ラインヒストグラムを作成した。
【0046】
(8)上記の(1)〜(7)の手順で皮膚表面写真、レプリカ写真、凸凹形状を投影したラインヒストグラムを元にして、抗シワ活性をPOOR、MEDIUM、GOOD、EXCELLENTの4段階に分けて評価した。なお、線状の皮溝が短く少数で規則的な場合は肌理(キメ)として認定しシワとは見なさなかった。また、広幅の皮溝で太くて長く陰影が濃い場合は、シワと認定した。なお、評価において、POORは劣る、MEDIUMは普通、GOODは良好、EXCELLENTは卓越している、をそれぞれ示す。
【0047】
この抗シワ活性評価系は、体内で吸収した物質の皮膚への効果を見ることに優れており、真皮に分布する毛細血管を通してセラミドなどの有効成分が皮膚へ送達され、その結果、角質層セラミド/スクワレンによる細胞間質の保湿力増強、真皮での細胞外マトリックス構築促進、繊維芽細胞の増殖促進などの効能発現について調べるのに適している。
【0048】
また、この皮膚片は4週間培養してもコラーゲン合成を95%以上維持しているので生存していることが実証されている。
【0049】
そして、試験に供したヒト型糖セラミドはヒト型セラミドに糖が結合した物質であり、共にヒト生体内でその存在が確認されている。
【0050】
また、植物糖セラミドは植物由来のセラミドが共通して有する構造でセラミド部分に糖が結合しているのを特徴として有し、今までにヒト生体内での存在は示されていない。それぞれの経口摂取したセラミドの一部はそのままの構造で吸収され作用すると考えられる。
上記の結果を表1に示した。
【0051】
表1
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名称 評価 評価の根拠
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヒト型糖セラミド EXCELLENT 肌理があって幅広や長いシワがない。
酢酸菌セラミド GOOD 広幅陥没がほぼ無い。細く短いシワが散見、総
じて平滑である。
ヒト型セラミド MEDIUM 皮膚表面は皮丘が僅かに存在する程度でシワ
が殆どないが、表面レプリカでは広幅で陰影
の濃い皮溝が目立つ。
植物型糖セラミド MEDIUM 幅広で長いシワが見られる。
無投与区 POOR 随所に広幅の陥没部が認められる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0052】
表1に示したように、酢酸菌セラミドは植物型糖セラミドよりも優れた抗シワ活性を有し、このことより酢酸菌セラミドは経口摂取により保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果があることが確認できた。
【0053】
(実施例2)
<ヒト皮膚器官培養を用いた酢酸菌セラミド体内吸収分解物の抗シワ活性>
経口摂取したセラミドの一部は分解され吸収され作用すると考えられる。
【0054】
試験に供したスフィンゴシン(D−erythro−sphingoside: Avanti社製)はヒト型セラミドならびにヒト型糖セラミドの脂肪酸ならびに糖部分が分解遊離したスフィンゴイド塩基部分の物質である。
【0055】
また、スフィンガニン(D−erythro−sphingosine: Avanti社製)は酢酸菌セラミドの脂肪酸部分が分解遊離したスフィンゴイド塩基部分の物質であり、共にヒト生体内でその存在が確認されている。
【0056】
また、植物糖セラミドの脂肪酸ならびに糖部分が分解遊離したスフィンゴイド塩基部分の主要な物質はスフィンガジエンであり、小腸上皮細胞のモデル培養細胞であるCaco−2での吸収効率試験で、スフィンガジエンはスフィンゴシンよりも吸収効率が著しく劣ることが示されている(例えば、「ジャーナル・オブ・ニュートリション(Journal of Nutrition)」、133巻、p.2777〜2782、2003年参照)。
【0057】
以上のことから、ヒト型糖セラミドならびにヒト型セラミドの分解物であるスフィンゴシン、酢酸菌セラミドの分解物であるスフィンガニンの抗シワ活性について比較評価した。
【0058】
評価系は実施例1で用いたものと同様の抗シワ活性評価系を同条件で使用した。
以上の結果を表2に示す。
【0059】
(表2)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名称 評価 評価の根拠
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スフィンガニン EXCELLENT 皮膚表面も表面レプリカもシワが殆ど存在しない。
スフインゴシン GOOD 皮膚表面は皮丘が幾つか見られるが、表面レプリカでは広幅の皮溝はない。
無投与区 POOR 随所に広幅の陥没部が認められる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0060】
表2の結果から、スフィンガニンがスフィンゴシンよりも優れた抗シワ活性が確認できたことより、経口投与によって一部分解された場合であっても酢酸菌セラミドは高い抗シワ活性を示すことが期待できる。このことより酢酸菌セラミドは経口摂取により保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果があることが期待できる。
【0061】
(実施例3)
<アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた酢酸菌セラミドの肌機能改善効果>
アトピー性皮膚炎のモデルマウスとして4週齢のNC/Nga Tnd Crj系オスマウスを使用した。NC/Nga Tnd Crj系オスマウスは、SPF飼育環境下では肉眼的所見として異常を呈さないが、空気中の微生物制御を行っていない通常飼育環境下では、肌荒れ、保湿能力の低下等の強い皮膚炎症状を自然発症するマウスである。
【0062】
酢酸菌セラミドとして、2−Hydroxy−C16−Dihydroceramide(MATREYA社製)を使用した。
【0063】
群は無投与対照区ならびに酢酸菌セラミド投与区の2群を設定し、それぞれ10匹を1群とした。無投与対照区はAIN93G(オリエンタル酵母工業社製)を自由摂取させた。酢酸菌セラミド投与区は、AIN93Gに酢酸菌セラミドを0.15%外割添加した飼料を自由摂取させた。
【0064】
試験開始22日後に毛刈りしたマウス腹部および足蹠5w/v%PiCl溶液を150μl/匹になるように塗布し感作した。
【0065】
感作後4日目から毛刈した背部および左右の耳(内側両側)に0.8w/v%PiCl溶液を150μl/匹になるように塗布し誘発した。投与は67日間行い、1回/週あたりで自由飲水量を測定し、一日あたりの摂水量を算出した。結果を図2に示した。
【0066】
図2の結果から、飼育週齢の増加に従い対照区ならびに酢酸菌セラミド投与区ともに摂水量の増加傾向にあるが、対照区では酢酸菌セラミド投与区に比較して摂水量の増加が多く、皮膚から蒸散した水分を補給するために大量の水分摂取が必要であると考えられる。このことより明らかに経口摂取によって酢酸菌セラミドが保湿、肌荒れ防止改善、シワ防止改善等の美容効果を有するといえる。
【0067】
(実施例4)
<錠剤の調製>
酢酸菌としてAcetobacter aceti NBRC 14818を用い、その酢酸発酵液10キロリッターを高速遠心機器(8000rpm、20分)で集菌し、湿菌体10Kgを得た。得られた湿菌体10Kgを蒸留水にて洗浄後に大型凍結乾燥機で凍結減圧乾固し、乾燥菌体1.8Kgを得た。
【0068】
得られた乾燥菌体1Kgをエタノール10リッターとともにソックスレー抽出器に仕込み、20時間加熱還流した。得られた抽出液を減圧乾固し、5リットルのアセトンに溶解した。沈殿物をろ過で除去し、ろ液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固し、淡黄褐色の酢酸菌セラミド1.5gを得た。
【0069】
得られた酢酸菌セラミド1g(0.7重量%)、結晶セルロース35g(26.9重量%)、乾燥コーンスターチ67g(51.5重量%)、乳糖22g(16.9重量%)、ステアリン酸カルシウム2g(1.5重量%)、および結合剤としてポリビニルピロリドン3g(2.3重量%)を加え、混合粉末化した後に、ゼラチン硬カプセルに充填した。
【0070】
このようにして調製された錠剤は、肌機能改善組成物として、有用に経口摂取可能であることが充分に期待される。
【0071】
(実施例5)
<ゼリーの製造>
酢酸菌としてAcetobacter aceti NBRC 14818を用い、その酢酸発酵液10キロリッターを高速遠心機器(8000rpm、20分)で集菌し、湿菌体10Kgを得た。得られた湿菌体10Kgを等量の蒸留水に分散させた。分散させた20kgの酢酸菌分散液を高圧ホモジナイザー(20000psi)に3回通過させ細胞破壊処理を施した後に、大型凍結乾燥機で凍結減圧乾固し、乾燥菌体粉末1.5Kgを得た。
【0072】
得られた乾燥菌体粉末8g(0.8重量%)、砂糖250g(25重量%)、カラギーナン1.6g(0.16重量%)、ローカストビーンガム0.8g(0.08重量%)、キサンタンガム0.8g(0.08重量%)を混合均一化し、粉体混合物を得た。鍋に300gの水を計量し、黒糖30g(3.0重量%)を溶解し、さらに還元水あめ150g(15重量%)を混合し、先に得た粉体混合物をダマができないように攪拌しながら、更に混合した。それらを均一に攪拌し、残りの水258.8gを加え、加温した。溶液温度が85℃10分間加熱溶解後、流水で冷却し酢酸菌体含有ゼリー食品を得た。
【0073】
このようにして調製されたゼリーは、肌機能改善用組成物として、有効に経口摂取可能であることが期待できる。
【0074】
(実施例6)
<飲料の製造>
酢酸菌としてAcetobacter aceti NBRC 14818を用い、その酢酸発酵液10キロリッターを高速遠心機器(8000rpm、20分)で集菌し、湿菌体10Kgを得た。得られた湿菌体10Kgを食酢100リッターに分散させた。分散させた酢酸菌分散液を高圧ホモジナイザー(20000psi)に3回通過させ細胞破壊処理を施した。その溶液を500ml容の瓶に分注し、75℃まで加温により殺菌し酢酸菌体含有食酢を得た。
【0075】
このようにして調製された飲料は、肌機能改善用組成物として、有効に経口摂取可能であることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】改変ブロノフ拡散チャンバーの模式図を示す図である。
【図2】アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた酢酸菌セラミドの肌機能改善効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸菌セラミドを有効成分として含有することを特徴とする肌機能改善用飲食品組成物。
【請求項2】
酢酸菌セラミドを含有する酢酸菌の細胞破砕物を有効成分として含有することを特徴とする肌機能改善用飲食品組成物。
【請求項3】
酢酸菌セラミドが酢酸菌から極性溶媒を用いて抽出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の肌機能改善用飲食品組成物。
【請求項4】
該組成物が飲食品、あるいは、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、散剤、液剤の少なくともひとつの経口摂取用剤形に製剤化したものであること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の肌機能改善用飲食品組成物。
【請求項5】
飲食品が食酢であること、を特徴とする請求項4に記載の肌機能改善用飲食品組成物。
【請求項6】
酢酸菌含有飲食品を破砕処理すること、を特徴とする肌機能改善用飲食品組成物の製造方法。
【請求項7】
酢酸菌を飲食品に添加した後、破砕処理すること、を特徴とする肌機能改善用飲食品組成物の製造方法。
【請求項8】
酢酸菌体の破砕処理物を飲食品に添加すること、を特徴とする肌機能改善用飲食品組成物の製造方法。
【請求項9】
酢酸菌体破砕物の極性溶媒抽出物を飲食品に添加すること、を特徴とする肌機能改善用飲食品組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−56695(P2008−56695A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285801(P2007−285801)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【分割の表示】特願2005−13382(P2005−13382)の分割
【原出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【Fターム(参考)】