説明

酸化物超電導線材、酸化物超電導線材の製造装置、並びに酸化物超電導線材の製造方法

【課題】超電導線材の外気に対する気密性を維持しつつ、超電導線材の位置決めを容易かつ正確に行うことができる酸化物超電導線材の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化物超電導線材の製造方法は、テープ状の安定化層および安定化層上に形成されたはんだ層を有する保護用線材を、はんだ層が内側となるように保護用線材の幅方向の中間部を中心に折り曲げて折り曲げ部を有する折り曲げ体を形成する折り曲げ工程S1と、金属基材と中間層と酸化物超電導層と保護層とを積層させて備えたテープ状の超電導積層体を折り曲げ体の内面に沿わせて折り曲げ体の内側に超電導積層体を収容する収容工程S2と、折り曲げ体により超電導積層体を囲み、超電導積層体の周囲に存在するはんだ層を溶融凝固させて超電導積層体を固定する固定工程S3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物超電導線材、酸化物超電導線材の製造装置、並びに酸化物超電導線材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物超電導線材は、一例として、テープ状の金属基材の上に、イットリウム系などの希土類系(Re123)超電導体の薄膜を設けることによって製造される。この種の酸化物超電導線材として、図13に示す如く、銀の安定化層上にはんだを介して安価な銅の安定化層を設けた構造の超電導線材が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この従来の超電導線材200は、基板201上に、中間層202、キャップ層203、超電導層204、保護層205がこの順に設けられ、該保護層205の表面に金属製の安定化層206が設けられ、全体が絶縁被膜210により覆われている。
ここでたとえば、安定化層206は、良導電性を有する銅などの金属層からなり、たとえば、はんだ付の銅の金属テープを銀からなる保護層205の表面205aに貼り合わせてはんだ付けすることで形成されている。
【0003】
また、特許文献2に記載の高温超電導線材では、2枚の安定化金属層の間に2つの高温超電導線材部品が、安定化金属層に平行に並べて配置されている。高温超電導線材部品と、2枚の安定化金属層の間は、はんだで満たされている。高温超電導線材部品は、金属基板の上に中間層を介して、Re123系等の高温超電導材料を含む高温超電導層が形成されたものである。
【0004】
特許文献3に記載の構造においても、導電性を有し板状に形成された2枚のスタビライザストリップの間に、スタビライザストリップに垂直に2つの高温超電導体(HTS)インサートが並べて配置された構造が提案されている。2枚のスタビライザストリップの間は、導電性で通気性のない充填剤材料で充填されている。HTSインサートは、基板、1または複数の緩衝層、HTS層、キャップ層を含んで多層構造に形成されている。
特許文献4に記載の導体では、超電導複合セラミックテープの周りにシートが配置されている。シート同士を溶接することで、密封構造を構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−60074号公報
【特許文献2】特開2008−243588号公報
【特許文献3】特表2009−503794号公報
【特許文献4】特許第3949960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記安定化層206として用いられる銅は、事故電流のバイパスとして使用するため、20μm〜150μmの厚さが必要とされる。メッキは電界を使った結晶成長であるため、プロセスに時間がかかる。なおかつ、超電導線材のように長いものをメッキするためにはバッチ処理が難しいため、通常より大型のメッキ浴を使用しなければならない。また、超電導層は、水分によりダメージを受けることが避けられないため、液相プロセスなどでメッキ浴などの水溶液に浸す前に、あらかじめ超電導層の周面を保護するなどの工夫が必要となる。
超電導層を含む線材を直接はんだ浴中に投入する方法も提案されているが、この方法では線材全体にはんだが載ってしまい、線材の厚さを制御することが困難である。また、はんだ浴を維持するためには大電力が必要であり、銅のシートを貼り合わせて使用するときには不要な電力を消費するため、環境負荷が大きい問題がある。
【0007】
特許文献2および3における高温超電導線材等では、板状の2枚の部材の間に充填されたはんだ内に高温超電導線材部品を配置しているので、板状部材に対して高温超電導線材部品を精度良く配置することが困難である。
また、特許文献4に記載された導体では、セラミックテープの周りにシートを配置しているので、セラミックテープに対するシートの端部の位置が安定せず、導体を再現性高く製造することができない。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、超電導積層体の外気に対する気密性を維持しつつ、超電導積層体の保護用線材に対する位置決めを容易かつ正確に行うことができる酸化物超電導線材、そしてこの酸化物超電導線材を製造する酸化物超電導線材の製造装置、並びに酸化物超電導線材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、テープ状の安定化層および前記安定化層上に形成されたはんだ層を有する保護用線材を、前記はんだ層が内側となるように前記保護用線材の幅方向の中間部を中心に折り曲げて折り曲げ部を有する折り曲げ体を形成する折り曲げ工程と、金属基材と中間層と酸化物超電導層と保護層とを積層させて備えたテープ状の超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせて前記折り曲げ体の内側に前記超電導積層体を収容する収容工程と、前記折り曲げ体により前記超電導積層体を囲み、前記超電導積層体の周囲に存在する前記はんだ層を溶融凝固させて前記超電導積層体を固定する固定工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記収容工程では、前記超電導積層体の一方の側面を折り曲げ部の内面に突き当てることが好ましい。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記折り曲げ工程において、前記保護用線材が幅方向の両端部が揃うように折り曲げられて前記折り曲げ体が形成され、前記固定工程では、前記折り曲げ体の前記両端部間を前記はんだ層により閉塞することが好ましい。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記収容工程の前に、前記超電導積層体を幅方向に分割する分割工程を備え、前記収容工程では、前記分割後の前記超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせることが好ましい。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記収容工程では、前記分割後の前記超電導積層体の分割した側の側面が前記折り曲げ部側となるように、前記折り曲げ体に対して前記分割後の前記超電導積層体を配置することが好ましい。
【0011】
また、本発明の酸化物超電導線材の製造装置は、テープ状の安定化層および前記安定化層上に形成されたはんだ層を有する保護用線材を、前記はんだ層が内側となるように前記保護用線材の幅方向の中間部を中心に折り曲げて折り曲げ部を有する折り曲げ体を形成する折り曲げ機構と、金属基材と中間層と酸化物超電導層と保護層とを積層させて備えたテープ状の超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせて前記折り曲げ体の内側に前記超電導積層体を収容する収容機構と、前記折り曲げ体により前記超電導積層体を囲み、前記超電導積層体の周囲に存在する前記はんだ層を溶融凝固させて前記超電導積層体を固定する固定機構と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の酸化物超電導線材の製造装置において、テープ状の前記超電導積層体を巻き付けて備え、前記超電導積層体を送り出し可能な第1リール装置と、テープ状の前記保護用線材を巻き付けて備え、前記保護用線材を送り出し可能な第2リール装置と、送り出された前記超電導積層体および前記折り曲げ体を、前記超電導積層体が前記折り曲げ体の内側に配置されるように案内する搬送ローラと、前記固定機構により形成された酸化物超電導線材を巻き取る巻き取り装置と、を備え、前記折り曲げ機構は、前記折り曲げ体を送り出す送り出し方向に直交する方向の中間部に曲がった形状の曲がり支持部を有する支持台と、前記曲がり支持部の内面に対して接近および離間可能とされた押し当て部材と、を有し、記収容機構は、前記超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせて移動させる押し出し部材を有し、前記固定機構は、前記折り曲げ体および前記折り曲げ体の内側に収容された前記超電導積層体を加熱する加熱部と、前記超電導積層体に前記折り曲げ体を押し付ける加圧ローラと、を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明の酸化物超電導線材は、金属基材と中間層と酸化物超電導層と保護層とを積層させて備えたテープ状の超電導積層体と、テープ状の安定化層および前記安定化層上に形成されたはんだ層を有する保護用線材に、前記はんだ層が内側となるように前記保護用線材の幅方向の中間部を中心に折り曲げて折り曲げ部を形成した折り曲げ体と、を備える酸化物超電導線材であって、前記超電導積層体は、前記折り曲げ体の内面に沿わせるとともに、前記保護用線材により囲われた状態で前記はんだ層により前記安定化層に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の酸化物超電導線材において、前記折り曲げ体は、幅方向の両端部を揃えて形成され、前記両端部間は前記はんだ層により閉塞されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法および酸化物超電導線材の製造装置によれば、折り曲げ部を形成した折り曲げ体の内面に超電導積層体を沿わせて、折り曲げ体に対して超電導積層体を位置決めする。このため、超電導積層体の位置決めを容易かつ正確に行うことができる。折り曲げ体により超電導積層体を囲んだ状態で、はんだ層により超電導積層体の外周面に折り曲げ体の安定化層を気密に接続することができる。
収容工程では、超電導積層体を折り曲げ部の内面に突き当てるので、折り曲げ体に対して超電導積層体を確実に位置決めすることができる。
また、本酸化物超電導線材の製造方法では、折り曲げ工程において折り曲げ体は幅方向の両端部が揃うように折り曲げられ、固定工程では折り曲げ体の両端部間ははんだ層により閉塞される。したがって、超電導積層体を確実に気密に保持するとともに、製造された酸化物超電導線材の外形をコンパクトにすることができる。
【0016】
収容工程の前に分割工程を備え、収容工程では分割後の超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせるため、超電導積層体が幅方向に長い場合であっても幅寸法を好適に調節することができる。
酸化物超電導線材の製造方法において、収容工程では、分割後の超電導積層体の分割された側の側面が折り曲げ部側となるように超電導積層体を配置する。超電導積層体の分割された側の側面には保護層は形成されていないので、超電導積層体の分割された側の側面を折り曲げ部側に配置することで、この分割された側の側面を確実に保護することができる。
酸化物超電導線材の製造装置は、第1リール装置、第2リール装置、搬送ローラおよび巻き取り装置を備えるので、超電導積層体、保護用線材および酸化物超電導線材を容易に搬送し、巻き取ることができる。
【0017】
また、本発明の酸化物超電導線材によれば、折り曲げ体の内面に超電導積層体を沿わせることで、折り曲げ体に対して超電導積層体が位置決めされる。超電導積層体は折り曲げ体により囲われた状態ではんだ層により折り曲げ体の安定化層と接続されているので、超電導積層体を外気から密封することができる。
折り曲げ体は幅方向の両端部を揃えて形成され、両端部間ははんだ層により閉塞されているため、超電導積層体を確実に気密に保持するとともに、酸化物超電導線材の外形をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の酸化物超電導線材の横断面図である。
【図2】同酸化物超電導線材の超電導積層体の斜視図である。
【図3】保護用線材の一例を示す横断面図である。
【図4】同酸化物超電導線材を製造する本発明の製造装置の一例を示す構成図である。
【図5】同製造装置の折り曲げ機構の一例を説明する図である。
【図6】同製造装置の収容機構の一例を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態の酸化物超電導線材の製造方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る製造装置の折り曲げ機構の他の例を説明する図である。
【図9】同製造装置を使用した酸化物超電導線材の製造方法の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態の酸化物超電導線材の横断面図である。
【図11】本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法において超電導積層体を分割する場合の一例を示す図である。
【図12】本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法において超電導積層体を幅狭の構成とした場合を示す図である。
【図13】従来の酸化物超電導線材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態を、図1から図9を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の酸化物超電導線材1の横断面図であり、図2は、同酸化物超電導線材1の一部を構成する超電導積層体10の斜視図である。
図1に示すように、酸化物超電導線材1は、テープ状の超電導積層体10と、超電導積層体10の外周面を囲うように取り付けられた折り曲げ体20Aとを備えている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の超電導積層体10は、テープ状の金属基材11の上に、拡散防止層12、ベッド層13、中間層14、キャップ層15、酸化物超電導層16および保護層17をこの順に積層させて構成されている。
【0021】
本実施形態の超電導積層体10に適用できる金属基材11は、通常の超電導積層体の基材として使用でき、高強度で一定の柔軟性があればよく、長尺のケーブルとするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。例えば、ステンレス鋼、ハステロイ(登録商標、米国ヘインズ社製商品名)等のニッケル合金等の各種金属材料、もしくはこれら各種金属材料上にセラミックスを配したもの等が挙げられる。各種耐熱性の金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。
なかでも、市販品であれば、ハステロイが好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。金属基材11の厚さは、目的に応じて適宜調整すればよく、通常は、10〜500μmである。
【0022】
ベッド層13は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層13は、必要に応じて配され、例えば、イットリア(Y)、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)等から構成される。このベッド層13は、例えばスパッタ法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10〜200nmである。
本実施形態においては、金属基材11とベッド層13との間に拡散防止層12が介在されているが、この拡散防止層12は必須の構成ではない。拡散防止層12は、金属基材11の構成元素拡散を防止する目的で形成されたもので、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、あるいは希土類金属酸化物等から構成され、その厚さは例えば10〜400nmである。なお、拡散防止層の結晶性は問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すればよい。
【0023】
このように金属基材11とベッド層13との間に拡散防止層12を介在させるのは、中間層14やキャップ層15及び酸化物超電導層16等の他の層を形成する際に、加熱されたり、熱処理されたりする結果として熱履歴を受けるが、そのときに金属基材11の構成元素の一部がベッド層13を介して酸化物超電導層16側に拡散することを抑制するためである。本実施形態のように、拡散防止層12とベッド層13の2層構造とすることで、金属基材11側からの元素拡散を効果的に抑制することができる。金属基材11とベッド層13との間に拡散防止層12を介在させる場合の例としては、拡散防止層12としてAl、ベッド層13としてYを用いる組み合わせを挙げることができる。
【0024】
中間層14は、単層構造あるいは複層構造のいずれでも良く、その上に積層される酸化物超電導層16の結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から選択される。中間層14の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示することができる。
この中間層14をイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度15゜以下)で成膜するならば、中間層14の上に形成するキャップ層15の結晶配向性を良好な値(例えば結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層15の上に成膜する酸化物超電導層16の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できるようにすることができる。
【0025】
中間層14の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、0.005〜2μmの範囲とすることができる。
中間層14は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する)、化学気相成長法(CVD法)等の物理的蒸着法;塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。特に、IBAD法で形成された金属酸化物層は結晶配向性が高く、酸化物超電導層16やキャップ層15の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、下地の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、GdZr、MgO又はZrO−Y(YSZ)からなる中間層14は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
【0026】
キャップ層15は、中間層14の表面に対してエピタキシャル成長し、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層15は、前記金属酸化物層からなる中間層14よりも高い面内配向度が得られる。
キャップ層15の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層15の材質がCeOである場合、キャップ層15は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
【0027】
このキャップ層15は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタ法等で成膜することができる。PLD法によるキャップ層15の成膜条件としては、金属基材11の温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。
キャップ層15の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましく、300nm以上であれば更に好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、300〜1000nmとすることが好ましい。
【0028】
酸化物超電導層16は公知のもので良く、具体的には、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のものを例示できる。この酸化物超電導層16として、他にY123(YBaCu7−X)又はGd123(GdBaCu7−X)等を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。
酸化物超電導層16の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層16は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等の物理的蒸着法;塗布熱分解法(MOD法)等で積層することができ、なかでも生産性の観点から、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)、PLD法又はCVD法を用いることが好ましい。
【0029】
ここで前述のように、良好な配向性を有するキャップ層15上に酸化物超電導層16を形成すると、このキャップ層15上に積層される酸化物超電導層16もキャップ層15の配向性に整合するように結晶化する。よってキャップ層15上に形成された酸化物超電導層16は、結晶配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層16を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、金属基材11の厚さ方向にc軸が配向し、金属基材11の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って、得られた酸化物超電導層16は、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、金属基材11の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流密度が得られる。
【0030】
酸化物超電導層16の上に積層されている保護層17は、Ag等の良電導性を有し、かつ酸化物超電導層16と接触抵抗が低くなじみの良い金属材料からなる層として形成される。保護層17は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層16が超電導状態から常電導状態に遷移しようとした時に、酸化物超電導層16の電流が転流するバイパスとして機能する。
これまで説明してきた超電導積層体10の各構成のうち、拡散防止層12、ベッド層13及びキャップ層15は必須の要素ではなく、超電導積層体10の設計条件により適宜用いられるものである。
【0031】
図1に示すように、折り曲げ体20Aは、テープ状の安定化層21と、安定化層21上に形成されたはんだ層22とを有している。折り曲げ体20Aには、はんだ層22が内側となるように、後述する保護用線材20の幅方向の中間部を中心に2つ折りに折り曲げて折り曲げ部23が形成されている。なお、保護用線材20は、図3に示すように、テープ状の安定化層21上にはんだ層22が配置され、全体として平坦なシート状に形成されているものである。
安定化層21を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、Cu等の比較的安価なものを用いるのが好ましい。これにより、材料コストを低く抑えながら安定化層21を厚膜化することが可能となる。安定化層21の厚さは、20〜150μmが好ましく、50μm程度がより好ましい。
はんだ層22は、たとえば錫で形成され、その厚さは、2〜10μmが好ましく、6μm程度がより好ましい。
【0032】
図1に示すように、超電導積層体10は、折り曲げ体20Aの内面に沿わせ、かつ、一方の側面10aを折り曲げ部23の内面に突き当てて形成されるとともに、折り曲げ体20Aにより囲われた状態で、その周囲を覆っているはんだ層22により安定化層21に一体的に接続されている。
折り曲げ体20Aの安定化層21の両端部21a、21bは、超電導積層体10の他方の側面10bを越えて、揃えた形状に延出されている。両端部21a、21b間は、はんだ層22の一端縁22aにより閉塞されている。
【0033】
次に、以上のように構成された酸化物超電導線材1を製造する酸化物超電導線材の製造装置30(以下、「製造装置30」と称する。)について説明する。
図4に示すように、本実施形態の製造装置30は、テープ状の保護用線材20を折り曲げて折り曲げ部23を有する折り曲げ体20Aを形成する折り曲げ機構40と、折り曲げ体20Aの内側に超電導積層体10を収容する収容機構50と、折り曲げ体20Aに超電導積層体10を固定する固定機構60とを備えている。
さらに詳しくは、製造装置30は、超電導積層体10を巻き付けて備え、超電導積層体10を送り出し可能な第1リール装置31と、保護用線材20を巻き付けて備え、保護用線材20を送り出し可能な第2リール装置32と、送り出された超電導積層体10および折り曲げ体20Aを、超電導積層体10が折り曲げ体20Aの内側に配置されるように案内する搬送ローラ51と、固定機構60により形成された酸化物超電導線材1を巻き取る巻き取り装置33とを備えている。
【0034】
第1リール装置31は、収容機構50に対する超電導積層体10を送り出す送り出し方向Dの上流D1側に配置され、第2リール装置32は、折り曲げ機構40に対する上流D1側に配置されている。第1リール装置31および第2リール装置32は、超電導積層体10の幅方向(水平面に沿う方向)にずらして配置されている。
【0035】
図5に示すように、折り曲げ機構40は、保護用線材20を支持する支持台41と、保護用線材20の幅方向の中間部を押し当てる押し当て部材42とを有している。支持台41は、支持台41における送り出し方向Dに直交する方向の中間部に配置され下方に湾曲した湾曲部(曲がり支持部)41aと、湾曲部41aの端部に接続され、湾曲部41aの端部における接線方向に延びる一対の線状部41bとで構成されている。
押し当て部材42は、支持台41の上方に配置され、上下方向に延びるように形成されている。押し当て部材42は、下端に湾曲部41aの上方の面より小さな曲率半径で円柱を軸線方向に2分割した形状に形成された先端部42aを有している。押し当て部材42は、不図示の駆動機構により上下方向に移動することで、湾曲部41aの内面に対して接近および離間可能とされている。
【0036】
図4に示すように、収容機構50、固定機構60は、折り曲げ機構40の、上流D1とは反対側の下流D2側にこの順で配置されている。
図6に示すように、収容機構50は、水平面に沿う方向に延びる押し出し部材52と、押し出し部材52を水平面に沿う方向に移動させる不図示の駆動機構とを有している。なお、収容機構50が、折り曲げ部23を形成することにより2つ折りに折り曲げられた折り曲げ体20Aを保持する折り曲げ形状保持機構を有するように構成してもよい。
【0037】
図4に示すように、固定機構60は、折り曲げ体20Aおよび超電導積層体10をはんだ層22の融点以上の温度に加熱する本加熱機構(加熱部)61と、超電導積層体10に折り曲げ体20Aを押し付けながら折り曲げ体20Aを徐々に冷却する一対の加圧ローラ62とを有している。
超電導積層体10および折り曲げ体20Aは、本加熱機構61内を挿通することにより所定の温度に加熱される。加圧ローラ62は、不図示のヒータ、および加圧ローラ62の外周面上に取付けられた不図示のブラシを有している。
【0038】
次に、本実施形態の酸化物超電導線材1の製造方法について説明する。以下では、製造装置30を使用した製造方法について説明する。図7は、本実施形態の酸化物超電導線材1の製造方法を示すフローチャートである。
本製造方法は、保護用線材20を折り曲げて折り曲げ部23を有する折り曲げ体20Aを形成する折り曲げ工程S1と、折り曲げ体20Aの内側に超電導積層体10を収容する収容工程S2と、折り曲げ体20Aに超電導積層体10を固定する固定工程S3とを備えている。
超電導積層体10および保護用線材20は、一対の搬送ローラ51、および一対の加圧ローラ62の間をそれぞれ通され、一対の搬送ローラ51および巻き取り装置33により下流D2側に搬送される。
【0039】
まず、折り曲げ工程S1において、図5に示すように、安定化層21が支持台41側に位置するように支持台41上に保護用線材20を配置した状態で、不図示の駆動機構により、上方からはんだ層22に押し当て部材42の先端部42aを押し当てる。これにより、保護用線材20が、はんだ層22が内側となるように保護用線材20の幅方向の中間部を中心に折り曲げられて、折り曲げ部23を有する折り曲げ体20Aが形成される。このとき、折り曲げ体20Aは、幅方向の両端部21a、21bが揃うように折り曲げられる。
本実施形態では、折り曲げ部23は、保護用線材20の幅方向に湾曲した形状となっている。
次に、収容工程S2において、図6に示すように、不図示の駆動機構により押し出し部材52を移動させ、折り曲げ体20Aの内面に沿わせて超電導積層体10を挿入し、超電導積層体10の一方の側面10aを折り曲げ部23の内面に突き当てる。
【0040】
続いて、固定工程S3において、本加熱機構61によりはんだ層22を錫の融点以上の温度まで加熱することで、超電導積層体10の周囲に存在するはんだ層22を溶融させる。そして、加圧ローラ62により超電導積層体10の両側から保護用線材20を押し当てることで、超電導積層体10の外形に沿って折り曲げ体20Aを変形させ、折り曲げ体20Aにより超電導積層体10を囲ませる。そして、ヒータの温度を調節してはんだ層22の温度を錫の融点より低い温度に徐々に冷却することで溶融させたはんだ層22を凝固させる。図1に示すように、安定化層21の両端部21a、21b間をはんだ層22の一端縁22aにより閉塞し、この両端部21a、21bを圧着することで、はんだ層22により超電導積層体10に折り曲げ体20Aの安定化層21を気密に接続する。
このとき、両端部21a、21bから外側にはみ出たはんだ層22を加圧ローラ62の外周面上に取付けられたブラシで除去する。
以上の工程により、酸化物超電導線材1が製造される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の酸化物超電導線材1の製造方法および酸化物超電導線材の製造装置30によれば、折り曲げ部23を形成した折り曲げ体20Aの内面に超電導積層体10を沿わせて、折り曲げ体20Aに対して超電導積層体10を位置決めする。このため、超電導積層体10の位置決めを容易に行うことができる。折り曲げ体20Aにより超電導積層体10を囲んだ状態で、はんだ層22により超電導積層体10の外周面に折り曲げ体20Aの安定化層21を気密に接続することができる。
収容工程S2では、超電導積層体10の一方の側面10aを折り曲げ部23の内面に突き当てるので、折り曲げ体20Aに対して超電導積層体10を確実に位置決めすることができる。
また、本酸化物超電導線材の製造方法では、折り曲げ工程S1において折り曲げ体20Aは両端部20a、20bが揃うように折り曲げられ、固定工程S3では折り曲げ体20Aの両端部20a、20b間ははんだ層22により閉塞される。したがって、超電導積層体10を確実に気密に保持するとともに、製造された酸化物超電導線材1の外形をコンパクトにすることができる。
【0042】
超電導積層体10が、拡散防止層12、ベッド層13、およびキャップ層15を有するので、製造された酸化物超電導層16の結晶配向性を良好にして、酸化物超電導線材1の電気的特性を向上させることができる。
製造装置30は、第1リール装置31、第2リール装置32、搬送ローラ51および巻き取り装置33を備えるので、超電導積層体10、保護用線材20および酸化物超電導線材1を容易に搬送し、巻き取ることができる。
【0043】
また、本実施形態の酸化物超電導線材1によれば、折り曲げ体20Aの内面に超電導積層体10を沿わせることで、折り曲げ体20Aに対して超電導積層体10が位置決めされる。超電導積層体10は折り曲げ体20Aにより囲われた状態ではんだ層22により折り曲げ体20Aの安定化層21と接続されているので、超電導積層体10を外気から密封することができる。
そして、折り曲げ体20Aは両端部20a、20bを揃えて形成され、両端部20a、20b間ははんだ層22により閉塞されているため、超電導積層体10を確実に気密に保持するとともに、酸化物超電導線材1の外形をコンパクトにすることができる。
【0044】
なお、本実施形態の製造装置30においては、折り曲げ機構40に代えて図8に示すような折り曲げ機構70を備えてもよい。この折り曲げ機構70は、支持台41の湾曲部41aに代えて下方に屈曲した屈曲部(曲がり支持部)71aを有する支持台71と、押し当て部材42に代えて、下方に向けて略V字状に尖って形成された先端部72aを有する押し当て部材72とを有している。
折り曲げ機構70をこのように構成することで、折り曲げ機構70により保護用線材20に形成される折り曲げ部73は、保護用線材20の幅方向に屈曲した形状となり、折り曲げ部73を有する折り曲げ体20Bが形成される。
【0045】
図9に示すように、折り曲げ体20Bは、本実施形態と同様に、収容工程S2において、押し出し部材52を移動させ、折り曲げ体20Bの内面に沿わせて超電導積層体10を挿入し、超電導積層体10の一方の側面10aを折り曲げ部73の内面に突き当てる。
この場合においても、固定工程S3において、加圧ローラ62により超電導積層体10の両側から折り曲げ体20Bを押し当てることで、超電導積層体10の外形に沿って折り曲げ体20Bが変形し、図1に示す酸化物超電導線材1が製造される。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図10から図12を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10に示すように、本実施形態の酸化物超電導線材81は、前記実施形態の酸化物超電導線材1より幅が狭く構成されていることのみが異なる。
本酸化物超電導線材81は、幅が超電導積層体10の幅の半分になるように形成された(半裁された)テープ状の超電導積層体90と、超電導積層体90の外周面を囲うように取り付けられた折り曲げ体100Aとを備えている。
折り曲げ体100Aは、テープ状の安定化層101と、安定化層101上に形成されたはんだ層102とを有している。折り曲げ体100Aには、はんだ層102が内側となるように、保護用線材100の幅方向の中間部を中心に折り曲げて折り曲げ部103が形成されている。
【0047】
次に、本実施形態の酸化物超電導線材81の製造方法について説明する。
本酸化物超電導線材81の製造方法は、前記実施形態の酸化物超電導線材1の製造方法の各工程に加えて、収容工程S2の前に、超電導積層体10を幅方向に分割する分割工程を備えている。
まず、図11に示すように、超電導積層体10を幅方向に分割して一対の超電導積層体90を形成する。そして、図4に示すように製造装置30の第1リール装置31に超電導積層体90を、第2リール装置32に保護用線材100を、それぞれ巻き付けておく。ここで、保護用線材100は、保護用線材20を幅方向に2分割したものである。
【0048】
続いて行われる折り曲げ工程S1は、前記第1実施形態と同様なので説明を省略する。
次に、収容工程S2において、図12に示すように、折り曲げ体100Aの内面に沿わせて超電導積層体90を挿入し、超電導積層体90の分割された側の側面90aを折り曲げ部103の内面に突き当てる。
続いて行われる固定工程S3は、前記第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の酸化物超電導線材81の製造方法によれば、超電導積層体90の外気に対する気密性を維持しつつ、超電導積層体90の位置決めを容易に行うことができる。
さらに、収容工程S2の前に分割工程を備え、収容工程では超電導積層体90を折り曲げ体100Aの内面に沿わせるため、超電導積層体10が幅方向に長い場合であっても幅寸法を好適に調節することができる。
収容工程S2では、超電導積層体90の分割された側の側面90aが折り曲げ部103側となるように超電導積層体90を配置する。超電導積層体90の側面90aには保護層17は形成されていないので、超電導積層体90の側面90aを折り曲げ部103側に配置することで、この分割された側の側面90aを確実に保護することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、折り曲げ体100A内において、超電導積層体90の分割された側の側面90aが折り曲げ部103とは反対側に配置されるように構成してもよい。固定工程S3において、超電導積層体90がはんだ層22により十分に閉塞できる場合などが考えられるからである。
【0051】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
例えば、前記第1実施形態および第2実施形態では、はんだ層として錫を用いたが、はんだ層の材料は特に限定されず、錫−銀系合金や錫−ビスマス系合金等を適宜用いることができる。
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、折り曲げ体の内面に沿わせて超電導積層体を挿入し、超電導積層体の一方の側面を折り曲げ部の内面に突き当てるとした。しかし、超電導積層体の一方の側面を折り曲げ部の内面に突き当てることは必須ではない。く、折り曲げ部の内面に突き当てなくても、折り曲げ体に対する超電導積層体の位置決めは可能であるからである。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
前記第2実施形態の酸化物超電導線材81を、以下に説明するような手順で作製した。
保護用線材100として、Cu製の安定化層101の厚さが50μm、はんだ層102の厚さが10μmにそれぞれ設定されたものを用いた。
幅10mm、厚さ0.1mmのハステロイ(米国ヘインズ社、商品名)製の金属基材11の上に、IBAD法により1.2μm厚のGdZr(GZO;中間層14)を形成し、さらに中間層14の上にPLD法により1.0μm厚のCeO(キャップ層15)を成膜した。次に、キャップ層15の上にPLD法により1.0μm厚のGdBaCu7−X(酸化物超電導層16)を形成し、さらに酸化物超電導層16の上に10μm厚の銀層(保護層17)を形成して超電導積層体10を作製した。
超電導積層体10を幅方向に半裁することで5mm幅の超電導積層体90を作製した。なお、超電導積層体90の臨界電流(超電導状態で流すことができる最大の電流量)は、100Aであった。
保護用線材100に折り曲げ部103を形成して折り曲げ体100Aとし、超電導積層体90を折り曲げ体100Aで囲み、折り曲げ体100Aを超電導積層体90に溶融させたはんだ層22で接続させることで、酸化物超電導線材81を10m作製した。作製した酸化物超電導線材81内の超電導積層体90の臨界電流は、超電導積層体90単体での臨界電流から低下することはなかった。
【0053】
10mの酸化物超電導線材81から30cmのサンプルを切り出し、サンプルの端面に銀によるスッパタを施し、さらにこの端面にゴムキャップにより封をした。このように準備したサンプルを、温度85℃、湿度85%の雰囲気中で、1000時間保持したが、臨界電流の低下は見られなかった。
この試験経過から、酸化物超電導線材81が十分な気密性(防水性)を有することが分かった。
【符号の説明】
【0054】
1、81 酸化物超電導線材
10、90 超電導積層体
10a、90a 側面
11 金属基材
14 中間層
16 酸化物超電導層
17 保護層
20、100 保護用線材
20A、20B、100A 折り曲げ体
21、101 安定化層
22、102 はんだ層
23、73 折り曲げ部
30 酸化物超電導線材の製造装置
31 第1リール装置
32 第2リール装置
33 巻き取り装置
40、70 折り曲げ機構
41a 湾曲部(曲がり支持部)
42、72 押し当て部材
50 収容機構
51 搬送ローラ
52 押し出し部材
60 固定機構
61 本加熱機構(加熱部)
62 加圧ローラ
71 支持台
71a 屈曲部(曲がり支持部)
D 送り出し方向
S1 折り曲げ工程
S2 収容工程
S3 固定工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の安定化層および前記安定化層上に形成されたはんだ層を有する保護用線材を、前記はんだ層が内側となるように前記保護用線材の幅方向の中間部を中心に折り曲げて折り曲げ部を有する折り曲げ体を形成する折り曲げ工程と、
金属基材と中間層と酸化物超電導層と保護層とを積層させて備えたテープ状の超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせて前記折り曲げ体の内側に前記超電導積層体を収容する収容工程と、
前記折り曲げ体により前記超電導積層体を囲み、前記超電導積層体の周囲に存在する前記はんだ層を溶融凝固させて前記超電導積層体を固定する固定工程と、
を備えることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項2】
前記収容工程では、前記超電導積層体の一方の側面を折り曲げ部の内面に突き当てることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項3】
前記折り曲げ工程において、前記保護用線材が幅方向の両端部が揃うように折り曲げられて前記折り曲げ体が形成され、
前記固定工程では、前記折り曲げ体の前記両端部間を前記はんだ層により閉塞することを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項4】
前記収容工程の前に、前記超電導積層体を幅方向に分割する分割工程を備え、
前記収容工程では、前記分割後の前記超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項5】
前記収容工程では、前記分割後の前記超電導積層体の分割された側の側面が前記折り曲げ部側となるように、前記折り曲げ体に対して前記分割後の前記超電導積層体を配置することを特徴とする請求項4に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項6】
テープ状の安定化層および前記安定化層上に形成されたはんだ層を有する保護用線材を、前記はんだ層が内側となるように前記保護用線材の幅方向の中間部を中心に折り曲げて折り曲げ部を有する折り曲げ体を形成する折り曲げ機構と、
金属基材と中間層と酸化物超電導層と保護層とを積層させて備えたテープ状の超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせて前記折り曲げ体の内側に前記超電導積層体を収容する収容機構と、
前記折り曲げ体により前記超電導積層体を囲み、前記超電導積層体の周囲に存在する前記はんだ層を溶融凝固させて前記超電導積層体を固定する固定機構と、
を備えることを特徴とする酸化物超電導線材の製造装置。
【請求項7】
テープ状の前記超電導積層体を巻き付けて備え、前記超電導積層体を送り出し可能な第1リール装置と、
テープ状の前記保護用線材を巻き付けて備え、前記保護用線材を送り出し可能な第2リール装置と、
送り出された前記超電導積層体および前記折り曲げ体を、前記超電導積層体が前記折り曲げ体の内側に配置されるように案内する搬送ローラと、
前記固定機構により形成された酸化物超電導線材を巻き取る巻き取り装置と、
を備え、
前記折り曲げ機構は、前記保護用線材を送り出す送り出し方向に直交する方向の中間部に曲がった形状の曲がり支持部を有する支持台と、前記曲がり支持部の内面に対して接近および離間可能とされた押し当て部材と、を有し
前記収容機構は、前記超電導積層体を前記折り曲げ体の内面に沿わせて移動させる押し出し部材を有し、
前記固定機構は、前記折り曲げ体および前記折り曲げ体の内側に収容された前記超電導積層体を加熱する加熱部と、前記超電導積層体に前記折り曲げ体を押し付ける加圧ローラと、を有することを特徴とする請求項6に記載の酸化物超電導線材の製造装置。
【請求項8】
金属基材と中間層と酸化物超電導層と保護層とを積層させて備えたテープ状の超電導積層体と、
テープ状の安定化層および前記安定化層上に形成されたはんだ層を有する保護用線材に、前記はんだ層が内側となるように前記保護用線材の幅方向の中間部を中心に折り曲げて折り曲げ部を形成した折り曲げ体と、
を備える酸化物超電導線材であって、
前記超電導積層体は、前記折り曲げ体の内面に沿わせるとともに、前記保護用線材により囲われた状態で前記はんだ層により前記安定化層に接続されていることを特徴とする酸化物超電導線材。
【請求項9】
前記折り曲げ体は、幅方向の両端部を揃えて形成され、
前記両端部間は前記はんだ層により閉塞されていることを特徴とする請求項8に記載の酸化物超電導線材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−48850(P2012−48850A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187386(P2010−187386)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】