説明

酸無水物末端封鎖結晶ポリエステルを含有する粉末被覆組成物

無定形及び半結晶質ポリエステルを含む熱硬化性被覆組成物が与えられている。それらは、被覆組成物、特に低温粉末被覆用途のための被覆組成物に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末被覆用途、特に低温硬化性粉末被覆用途で用いられる無水カルボン酸末端封鎖結晶ポリエステル含有熱硬化性被覆組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末被覆の適用は、環境に優しい化学的方法であると考えられる。なぜなら、それらの組成物は、液体ペイントで用いられる有機溶媒が著しく少ないか、又は完全に除外されたものだからである。それらを熱的に硬化した場合、取り巻く環境へ放出される揮発性有機化合物(VOC)は殆ど又は全くない。
【0003】
典型的な熱硬化性粉末被覆配合物は、重合体結合剤、硬化剤、顔料、流動助剤、ガス抜き剤、及び硬化用触媒からなる。あらゆる結合剤の中で、ポリエステルは、優れた耐候性及び機械的性質のみならず、良好な外観を与えるので、広く用いられている。ポリエステル樹脂は、それらの鎖末端部にヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する。ヒドロキシル官能性ポリエステルは、ブロックされたイソシアネート硬化剤を用いて配合され、ポリエステル・ウレタン粉末被覆を形成するのが典型的である。カルボキシル官能性ポリエステルは、トリグリシジルイソシアヌレート、TGICのような架橋剤、ポリエポキシ樹脂、及びカルボン酸基と反応して熱硬化性網状組織を形成することができる官能基を含む他の化合物又は重合体を用いて配合することができる。カルボキシル化ポリエステル及びTGIC硬化剤を用いた粉末被覆組成物は、良好な外部耐久性を有する被覆を与え、硬化剤としてポリエポキシ樹脂を用いた粉末被覆は、主に内部用途のためのものである。粉末被覆組成物中のポリエステル樹脂は、通常50℃より高いガラス転移温度を有し、そのことは、粉末被覆組成物が、焼結することなく保存安定性を持つことを可能にしている。
【0004】
粉末被覆配合物は、混合し、押出し、粉末にし、分類し、静電気により基体へ適用されるのが典型的である。次にそれら被覆した部品を上昇させた温度で焼成する。
【0005】
現在、熱硬化性粉末組成物で用いられているポリエステルの大部分は無定形ポリエステルである。ポリエステルが無定形であると、完全な熱硬化性粉末状組成物を調製することが困難になる。なぜなら、それらが矛盾する条件をしばしば満足しなければならなくなるからである。例えば、これらの粉末は取扱い、輸送、及び保存中、再凝集しないようにできるが、それは無定形ポリエステルが充分高いガラス転移温度(Tg)を持たなければならないことを意味する。一方、粉末粒子が凝集し、好ましくは均質で均一な被覆を形成することができるようにするためには、ポリエステルのTgを充分低くし、溶融状態での粘度が確実に低くなるようにする必要があり、そのこと自体により、顔料及び他の固体材料の、前記熱硬化性粉末組成物の配合物中のポリエステルを伴なった良好な濡れを確実に与える。
【0006】
更に、粉末は、最終的硬化を与える結果になる架橋反応が始まる前に平らなフイルムを形成するために熱処理温度で溶融することができなければならない。従って、基体表面を覆って溶融フイルムの良好な広がりを与えるためには、溶融状態のポリエステルの粘度が充分低くなるようにする必要がある。これは、溶融状態の粘度が非常に高いと、溶融フイルムの良好な広がりが妨げられ、被覆の平滑性及び光沢が失われる結果を招くからである。最後に、架橋反応の速度は、温度、硬化剤の量及び(又は)性質、及び場合により用いられる硬化触媒の量及び(又は)性質を変えることにより調節される。
【0007】
これらの全ての理由から、そのような無定形ポリエステルに基づく組成物から、160℃より低い温度で約10〜20分間熱処理することにより被覆を生成させることは、一般には推奨されるものではない。
【0008】
木材、プラスチック、及び中間密度繊維板(MDF)のような熱に敏感な基体上に粉末被覆を適用することについては市場の関心が高まりつつある。これらの要求を満たすためには、硬化温度を150℃より低く低下しなければならない。しかし、低い温度では、粉末の硬化は不完全になる傾向があり、効果的に流動しなくなる傾向がある。不完全な硬化及び低い流動性は、接着性不足、低い化学的耐久性、低い機械的性質、梨地のような多くの性質の欠陥を引き起こすことがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、適用して低温で硬化すると、これらの好ましくない事項を全て解消した仕上げを与える熱硬化性粉末被覆組成物を与えることにある。
【0010】
カルボン酸基含有無定形ポリエステル、特定の無水カルボン酸末端封鎖半結晶質ポリエステル、及びグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂硬化剤を含む結合剤組成物は、適用し、80〜150℃の温度で5〜30分間硬化すると、金属及び非金属表面への良好な接着性、優れた流動性、優れた可撓性、及び化学的耐久性を有する被覆を与えることが、今度全く思いがけず発見された。この組成物は、場合により、ポリエステルのカルボン酸基と反応することができる官能基を有する一種類以上の硬化剤を含んでいてもよい。
【0011】
半結晶質ポリエステルに基づく粉末被覆組成物は、論文及び特許の形で或る数の出版物の主題に既になっており、特に米国特許第4,352,924号、第3,387,214号、第4,937,288号、及び第4,973,646号明細書の主題になっている。
【0012】
EP521992B1には、無定形及び半結晶質ポリエステル樹脂を含む粉末被覆組成物が記載されている。半結晶質樹脂は、10〜70mgKOH/gの酸価を有する。結晶質ポリエステルを添加する目的は、粉末被覆の流動性を改良することにある。
【0013】
米国特許第4,937,288号明細書には、カルボキシル官能性アクリル重合体、結晶質ポリエステル、及びβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤からなる改良された流動性を有する粉末被覆系が記載されている。この結晶質ポリエステルは、約150〜750mgKOH/gの酸価を有する。この系は、β−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤に限定されており、低温硬化性粉末被覆に関係するものではない。
【0014】
米国特許第6,407,181号明細書には、グリシジル(メタ)アクリレート共重合体及び低粘度カルボン酸官能性ポリエステルに基づく粉末被覆組成物が記載されており、それは、熱に敏感な基体上に用いて滑らかな耐候性の光沢の低い被覆を与える。この特許によれば、低粘度カルボン酸官能性ポリエステルは、一般に線状であるが、4つの官能性を与えるため無水トリメリト酸で末端封鎖してもよい。前記ポリエステルは、20〜60mgKOH/gの酸価及び40〜80℃のガラス転移温度を有する。希望する光沢減少により、低粘度ポリエステルは、結晶質ポリエステルと置換するか又はそれと混合することができる。結晶質ポリエステルも、その製造方法も、その特許には記載されていない。グリシジル(メタ)アクリレート含有共重合体は、硬化剤として用いられている。
【0015】
本発明によれば、結合剤を含む熱硬化性被覆組成物が与えられ、この場合その結合剤の100重量部は、
(A) 15〜100mgKOH/gの酸価を有するカルボン酸基含有無定形ポリエステル、1〜50重量部、
(B) 多塩基性有機カルボン酸の無水物と、ヒドロキシル基含有半結晶質ポリエステルとの反応生成物を含む、カルボン酸基含有半結晶質ポリエステル、1〜50重量部、
(C) 150〜1500g/当量のエポキシ当量(epoxy equivalentweight)を有するグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂、1〜90重量部、
(D) 重合体1gについて1.0〜5.0ミリ当量のエポキシのエポキシ当量を有するグリシジル基含有(メタ)アクリレート共重合体、0〜85重量部、
(E) (C)及び(D)とは異なり、ポリエステル(A)及び(B)のカルボン酸基と反応することができる官能基を有する硬化剤、0〜20重量部、
を含む。
【0016】
前記熱硬化性組成物は、金属及び熱に敏感な基体上に低温硬化性粉末を適用するのに特に適しており、それは、優れた被覆外観及び機械的性質を与える。
【0017】
本発明は、従来の低温硬化性粉末被覆で起きている低い流動性、良くない外観及び劣った機械的性質の問題を解決する。
【0018】
本発明による組成物で用いられるカルボキシル官能性無定形ポリエステル(A)は、ポリ酸成分に関して、50〜100モル%のテレフタル酸又はイソフタル酸、又はそれらの混合物、及び50〜0モル%の別の脂肪族、脂環式、又は芳香族ポリ酸、及びポリオール成分に関して、40〜100モル%のネオペンチルグリコール、及び60〜0モル%の別の脂肪族及び(又は)脂環式ポリオールから構成されているのが好ましい。無定形ポリエステルの分岐は、ポリ酸又はポリオールを配合することにより得ることができる。
【0019】
本発明による組成物で用いられるカルボキシル官能性半結晶質ポリエステル(B)は、トリメリト酸及び(又は)ピロメリト酸無水物の無水基と、ヒドロキシル基含有半結晶質ポリエステル(b)との開環反応により得るのが好ましい。このヒドロキシル基含有半結晶質ポリエステル(b)は、ポリ酸成分に関して、70〜100モル%のテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又は4〜16個の炭素原子を有する直鎖ジカルボン酸、及び30〜0モル%の別の脂肪族、脂環式、又は芳香族ポリ酸、及びポリオール成分に関して、70〜100モル%の、2〜16個の炭素原子を有する脂環式又は直鎖脂肪族ポリオール、及び30〜0モル%の別の脂肪族又は脂環式ポリオールから構成されているのが好ましい。このヒドロキシル基含有ポリエステル(b)は、15〜70mgKOH/gのヒドロキシル価を有するのが好ましい。
【0020】
本発明による組成物で用いられるグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂(C)は、ビスフェノールAから、又はフェノール又はクレゾールノボラック型のものから得られたものであるのが好ましい。
【0021】
本発明による組成物で、場合により用いられるグリシジル基含有アクリル共重合体(D)は、10〜90モル%のグリシジル基含有単量体、及び90〜10モル%の、グリシジル基含有単量体と共重合体することができる一種類以上の他の単量体から製造されたものであるのが好ましい。
【0022】
本発明による組成物で、場合により用いられるポリエステル(E)のカルボン酸基と反応する官能基を有する硬化剤は、ポリエポキシ又はβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物であるのが好ましい。
【0023】
本発明のカルボキシル官能性無定形ポリエステル(A)は、15〜100mgKOH/g、好ましくは30〜70mgKOH/gの酸価を有する。
【0024】
好ましくは、カルボキシル官能性無定形ポリエステルは、
− ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、1100〜15000、一層好ましくは1600〜8500の数平均分子量、
− ASTM D3418に従って示差走査熱量測定により20℃/分の加熱勾配で測定して、40〜80℃のガラス転移温度(Tg)、
− ASTM D4287−88に従って、200℃で測定して、5〜15000mPa.sの範囲のICIコーン(cone)及びプレート(plate)粘度、
を有する。
【0025】
本発明による無定形ポリエステルの酸成分は、50〜100モル%のテレフタル酸又はイソフタル酸又はそれらの混合物、及び0〜50モル%の、一種類以上の脂肪族、脂環式、又は芳香族ポリ酸、例えば、フマール酸、マレイン酸、無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、トリメリト酸、又はピロメリト酸等、又は対応する酸無水物から選択された別のポリ酸成分から構成されているのが好ましい。
【0026】
本発明による無定形ポリエステルのグリコール成分は、40〜100モル%のネオペンチルグリコール、及び0〜60モル%の、一種類以上の脂肪族、脂環式グリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンポリオール、1,6−ヘキサンポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンポリオール、2−プチル−2−エチル−1,3−プロパンポリオール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール等から選択された別のグリコール成分から構成されているのが好ましい。
【0027】
本発明で用いられるカルボキシル官能性半結晶質ポリエステル(B)は、好ましくは30〜120mgKOH/g、一層好ましくは50〜100mgKOH/g、最も好ましくは70〜100mgKOH/gのカルボキシル価を有する。
【0028】
好ましくは、カルボキシル官能性半結晶質ポリエステルは、更に、
− 1100〜17000、一層好ましくは1400〜11200の範囲の数平均分子量、
− ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の加熱勾配で測定して、50〜150℃の溶融領域、
− ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の加熱勾配で測定して、40℃より低いガラス転移温度(Tg)、
− ASTM D3415に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定して、少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも10J/gの結晶化度、
− ASTM D4287−88に従って100℃で測定して、少なくとも10mPa.sのICI(コーン/プレート)粘度、
を特徴とする。
【0029】
本発明による半結晶質ポリエステルの酸成分は、70〜100モル%の、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又は4〜16個の炭素原子を有する直鎖ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリアデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸等、混合物として又は単独で用いたもの、及び30〜0モル%の、別の脂肪族、脂環式、又は芳香族ポリ酸、例えば、フマール酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等、から構成されているのが好ましい。
【0030】
本発明による半結晶質ポリエステルのグリコール成分は、70〜100モル%の、2〜16個の炭素原子を有する脂環式又は直鎖脂脂肪族ポリオール、例えば、1,4−シクロヘキサンポリオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタノール、又は4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、エチレングリコール、1,3−プロパンポリオール、1,4−ブタンポリオール、1,5−ペンタンポリオール、1,6−ヘキサンポリオール、1,7−ヘプタンポリオール、1,8−オクタンポリオール、1,9−ノナンポリオール、1,10−デカンポリオール、14−テトラデカンポリオール、1,16−ヘキサデカンポリオール等、混合物として又は単独で用いたもの、及び30〜0モル%の、別の脂肪族グリコール、例えば、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンポリオール、2−プチル−2−エチル−1,3−プロパンポリオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート等、から構成されているのが好ましい。
【0031】
本発明の組成物で用いられるグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂(C)は、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールエポキシノボラックから選択されるのが好ましい。
【0032】
ビスフェノールA系フェノール樹脂は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応から製造されるのが典型的であり、この場合、エピクロロヒドリンの過剰量がエポキシ樹脂の数平均分子量を決定する。W.G.ポッター(Potter)「エポキシド樹脂」(Epoxide Resins)〔Springer-Verlag, ニューヨーク(1970)〕、及びY.タナカ、A.オカダ、I.トミズカ、「エポキシ樹脂の化学及び技術」(Epoxy Resins Chemistry and Tecnology)〔C.A.メイ(May)、Y.タナカ編集、Marcel Dekker、ニューヨーク(1973)〕第2章、第9頁〜第134頁、参照。
【0033】
フェノール及びクレゾールエポキシノボラックは、一般にホルムアルデヒドと、フェノール又はクレゾールとの酸を触媒とした縮合により製造される。
【0034】
ノボラックのエピクロロヒドリンによるエポキシド化は、エポキシノボラックを与える。シェル(Shell)からのエピコーテ(Epikote)1055、チバ(Ciba)からのアラルダイト(Araldite)GT7004、又はアラルダイトECN9699、ダウ(Dow)からのD.E.R.664、及びシェルからのエポン(EPON)2002のような市販のエポキシ樹脂は、グリシジル基含有ポリフェノキシの典型的な例である。
【0035】
本発明の組成物で、場合により用いられるグリシジル基含有アクリル共重合体(D)は、重合体1g当たりエポキシ1.0〜5.0ミリ当量のエポキシ当量を有する。
【0036】
好ましくは、グリシジル基含有アクリル共重合体は、更に、
− 1000〜15000の範囲の数平均分子量、
− ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の加熱勾配で測定して、40〜85℃ガラス転移温度(Tg)、
− 200℃で、少なくとも100mPa.sのICIコーン及びプレート粘度、
を特徴とする。
【0037】
本発明のアクリル共重合体を製造するのに用いられるグリシジル基含有単量体は、10〜90の範囲のモル%で用いられるのが好ましく、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、及びアクリルグリシジルエーテルからなる群から選択されるのが好ましい。それらは単独又は二種類以上の混合物として用いることができる。
【0038】
エポキシ基含有単量体と共重合可能な他の単量体は、10〜90の範囲のモル%で用いるのが好ましく、
− 40〜100モル%のアクリル又はメタクリルエステル単量体、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−デシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、アリルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、メタリルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、及びフェニルメタクリレート、
− 0〜60モル%の他のエチレン系不飽和共重合可能な単量体、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン及びクロロ置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル及びフッ化ビニリデン、及び酢酸ビニル、
から選択される。
【0039】
本発明による組成物で、場合により用いられる、ポリエステルのカルボン酸基と反応することができる官能基を有する硬化剤(E)は、
− 例えば、イソシアヌル酸トリグリシジル(TGIC)、テレフタル酸ジグリシジル、トリメリト酸トリグリシジル、又はそれらの混合物、及びチバにより夫々製造されているアラルダイトPT910、又はPT912のように、室温で固体であり、1分子当たり少なくとも二つのエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、
− 米国特許第4,727,111号、第4,788,255号、第4,076,917号、EP322,834及びEP473,380で言及されているもののような、少なくとも一つ、好ましくは二つのビス(β−ヒドロキシアルキル)アミド基を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド、
から選択されるのが好ましい。
【0040】
本発明によるカルボン酸基含有無定形ポリエステル(A)、及びヒドロキシル基含有半結晶質ポリエステル(b)は、当分野でよく知られている慣用的エステル化技術を用いて製造することができる。ポリエステルは、一つ以上の反応工程からなる方法に従って製造されるのが好ましい。
【0041】
これらのポリエステルを製造するために、撹拌器、不活性ガス(窒素)導入口、熱電対、水冷凝縮器に接続された蒸留カラム、水分離器、及び真空連結管を具えた慣用的反応器を用いる。
【0042】
ポリエステルを製造するのに用いられるエステル化条件は慣用的なものであり、即ち、標準エステル化触媒、例えば、酸化ジブチル錫、二ラウリン酸ジブチル錫、トリオクタン酸n−ブチル錫、硫酸、又はスルホン酸を、反応物の0.05〜1.50重量%の量で用いることができ、場合により色安定化剤、例えば、フェノール系酸化防止剤、例えば、イルガノックス(Irganox)1010(チバ)、又はホスホナイト(phosphonite)−及び亜燐酸エステル−型安定化剤、例えば亜燐酸トリブチルを、反応物の0〜1重量%の量で添加することができる。
【0043】
ポリエステル化は、一般に、最初は常圧で、次にもし必要ならば夫々の処理工程が終わった時に減圧下で、130℃から約190〜250℃へ徐々に上昇させる温度で行い、希望のヒドロキシル及び(又は)酸価を有するポリエステルが得られるまでこれらの操作条件を維持する。エステル化度は、反応中に形成された水の量、得られたポリエステルの性質、例えば、ヒドロキシル価、酸価、及び粘度を決定することにより監視する。
【0044】
カルボン酸基含有半結晶質ポリエステル(B)は、一般に無水カルボン酸の酸無水物基とヒドロキシル基含有半結晶質ポリエステル(b)のヒドロキシル基との120〜200℃の温度での開環反応により得られる。
【0045】
カルボン酸基含有無定形及び半結晶質ポリエステルに、場合により架橋触媒を添加してもよい。これらの触媒は、硬化中、熱硬化性粉末組成物の架橋反応を促進するために添加される。そのような触媒の例には、アミン(例えば、2−フェニルイミダゾリン)、ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)、アンモニウム塩(例えば、臭化テトラブチルアンモニウム、又は塩化テトラプロピルアンモニウム)、ホスホニウム塩〔例えば、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(BETP)、又は塩化テトラプロピルホスホニウム〕が含まれる。これらの触媒は、結合剤の重量に関し、0.1〜5%の量で用いるのが好ましい。
【0046】
本発明による組成物で用いられるカルボン酸基含有半結晶質ポリエステルは、カルボン酸無水物、例えば、無水トリメリト酸の少なくとも1モル、好ましくは2モルの酸無水物基と、15〜70mgKOH/gのヒドロキシル価を有するヒドロキシル官能性プレポリマーの1モルとの開環反応から製造された、カルボン酸無水物末端封鎖半結晶質ポリエステルであるのが一層好ましく、前記プレポリマーは、
● 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び直鎖脂肪族C2−C16ポリオール又は
● 直鎖脂肪族C4−C16ポリ酸及び直鎖脂肪族C2−C16ポリオール又は脂環式ポリオール、
の重縮合から製造されたものである。
【0047】
特に好ましいカルボン酸無水物末端封鎖半結晶質ポリエステルは、2モルの酸無水物、特に無水トリメリト酸と、
● 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びエチレングリコール、1,4−ブタンポリオール、又は1,6−ヘキサンポリオール、又は
● 1,12−ドデカン二酸及びエチレングリコール、1,4−ブタンポリオール、1,6−ヘキサンポリオール、又は1,4−シクロヘキサンジメタノール、又は
● 1,4−シクロヘキサンジメタノール及びコハク酸、アジピン酸、又はアゼライン酸、
の縮合により製造されたヒドロキシル官能性プレポリマーの1モルとの開環反応により製造されたものである。
【0048】
これらの無水トリメリト酸末端封鎖半結晶質ポリエステルは、鋭い溶融領域、高度の結晶性、架橋剤の反応可能基に対する大きな反応性、従来法では既知の半結晶質ポリエステルで見出されるものとは異なった性質を有する。
【0049】
それらは、本発明の熱硬化性粉末被覆組成物に用いると、大きな反応性、優れた流動性及び良好な保存安定性を与える。
【0050】
グリシジル基含有アクリル共重合体(D)は、慣用的重合法により、塊重合、エマルジョン重合、又は有機溶媒による溶液重合により製造することができる。用いられる溶媒の性質は、大して重要ではないが、但しそれは不活性で、単量体及び合成された共重合体を容易に溶解するものとする。適当な溶媒には、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン等が含まれる。単量体は、一般に遊離ラジカル重合開始剤(過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、アゾ−ビス−イソブチロニトリル等)の存在下で0.1〜4.0重量%の単量体を表す量で共重合される。
【0051】
分子量及びその分布についての良好な制御を達成するために、連鎖移動剤、好ましくはメルカプタン型のもの、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデカンチオール、イソ−オクチルメルカプタン、又は炭素ハロゲン化物型のもの、例えば、四臭化炭素、ブロモトリクロロメタン等を反応中に添加することもできる。連鎖移動剤は、重合に用いられる単量体の10重量%までの量で通常用いられる。
【0052】
グリシジル基含有アクリル共重合体を製造するために、撹拌器、凝縮器、不活性ガス(例えば、窒素)導入口及び出口、及び計量ポンプ供給系を具えた円筒状二重壁反応器を一般に用いる。重合は、慣用的条件で行われる。即ち、重合を溶液で行う場合、例えば、反応器へ先ず有機溶媒を導入し、不活性雰囲気(窒素、二酸化炭素等)中で還流温度まで加熱し、次に、必要な単量体の均質な混合物、遊離ラジカル重合開始剤、及び必要な場合には連鎖移動剤を数時間に亙って徐々に溶媒へ添加する。次に反応混合物を、撹拌しながら指示された温度で或る時間維持する。次に、溶媒を、得られた共重合体から真空中で除去する。
【0053】
本発明の熱硬化性組成物の結合剤系は、無定形ポリエステル(A)及び半結晶質ポリエステル(B)中に存在するカルボキシル基の1当量当たり、0.3〜2.0好ましくは0.6〜1.7当量の、ポリフェノキシ樹脂(C)、場合によりアクリル共重合体(D)、及び硬化剤(E)からのエポキシ基が存在するようなやり方で一般に構成されている。特定の熱硬化性ポリエステル混合物(A)及び(B)は、粉末ペイント成分を予め混合するために利用できるような機械的混合手順を用いて無定形及び半結晶質ポリエステルを乾式混合することにより得ることができる。
【0054】
別法として、無定形及び半結晶質ポリエステルは、慣用的円筒状二重壁反応器を用い、或は、例えば、ベトール(Betol)BTS40を用いた押出しにより混合し、溶融物にすることができる。
【0055】
上に記載した必須成分の外に、本発明の範囲内の組成物は、流動調節剤、例えば、レジフロー(Resiflow)P−67〔エストロン(Estron)〕、モダフロー(Modaflow)(モンサント)、アクロナール(Acronal)4F(BASF)等、及びガス抜き剤、例えば、ベンゾイン(Benzoin)(BASF)等を含んでいてもよい。配合物には、チヌビン(Tinuvin)900(チバ)のようなUV光吸収剤、チヌビン144(チバ)により代表される立体障害アミン光安定化剤、チヌビン312及び1130(チバ)のような他の安定化剤、イルガノックス1010(チバ)のような酸化防止剤、及びホスホナイト又は亜燐酸エステル型の安定化剤も添加することができる。
【0056】
着色及び無色の両方のラッカーを製造することができる。本発明の組成物には、種々の染料及び顔料を用いることができる。有用な顔料及び染料の例には、金属酸化物、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等、金属水酸化物、金属粉末、硫化物、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩、例えば、珪酸アンモニウム、カーボンブラック、タルク、陶土、重晶石、紺青、リード・ブルー(lead blue)、有機レッド、有機マルーン(maroon)等である。
【0057】
本発明による組成物の成分は、混合機又は混和機(例えば、ドラム混合機)中で乾式混合することにより混合することができる。次に予め混合したものを、一軸押出し機、例えば、BUSS−Ko−Kneter、又は二軸押出し機、例えば、PRISM又はAPVにより50〜120℃の範囲の温度で均質にする。押出し物を、冷却後、10〜150μmの範囲の粒径を有する粉末に粉砕する。粉末組成物を、静電コロナ(CORONA)銃又はトリボ(TRIBO)銃のような粉末銃を用いて基体上に付着させることができる。一方、流動床法のようなよく知られた粉末付着法を用いることもできる。付着後、粉末を80〜150℃の温度に加熱し、粒子を一緒に流動融着させ、滑らかで均一な、凹みのない連続的被覆を基体表面上に形成する。
【0058】
次の例は、本発明を一層よく理解させるために与えられており、それらに限定されるものではない。
【0059】
例A
無水トリメリト酸末端封鎖結晶質ポリエステルを、次の成分混合物に基づいて製造した:

成分 重量部(g)
ドデカン二酸 4127.2
1,4−ブタンポリオール 1784.2
無水トリメリト酸 721.3
ファスキャット(Fascat)4102 13.2
ファスキャット4102は、アトフィナ(Atofina)から入手できるブチル錫トリス(2−エチルヘキサノエート)である。
【0060】
ドデカン二酸、1,4−ブタンポリオール、及びファスキャット4102を反応容器へ入れ、窒素雰囲気中で全ての成分が溶融するまで加熱した。反応混合物の温度を、徐々に220℃へ上昇させた。混合物を撹拌し、5mgKOH/gより低い酸価が得られるまで220℃に維持した。次に反応混合物を、170〜190℃へ冷却し、次に無水トリメリト酸を添加した。反応混合物が透明になり、70〜80mgKOH/gの酸価が得られるまでその温度を維持した。真空を適用して水を除去し、重縮合を完結させた。反応混合物を容器から受容器へ移し、室温へ冷却して固体生成物を与えた。得られたポリエステルは、78mgKOH/gの酸価、ブルックフィールド・コーン及びプレート粘度計で測定して100℃で5.5ポアズの溶融粘度、示差走査熱量測定(DSC)で測定して58.9℃の溶融温度を持っていた。
【0061】
例B
無水トリメリト酸末端封鎖結晶質ポリエステルを、次の成分混合物に基づいて製造した:

成分 重量部(g)
ドデカン二酸 3692.0
1,6−ヘキサンポリオール 2143.8
無水トリメリト酸 729.3
ファスキャット4102 12.6
【0062】
ドデカン二酸、1,6−ヘキサンポリオール、及びファスキャット4102を反応容器へ入れ、窒素雰囲気中で全ての成分が溶融するまで加熱した。反応混合物の温度を、徐々に230℃へ上昇させた。混合物を撹拌し、5mgKOH/gより低い酸価が得られるまで230℃に維持した。次に反応混合物を、170〜190℃へ冷却し、次に無水トリメリト酸を添加した。反応混合物が透明になり、70〜80mgKOH/gの酸価が得られるまでその温度を維持した。真空を適用して水を除去し、重縮合を完結させた。反応混合物を容器から受容器へ移し、室温へ冷却して固体生成物を与えた。得られたポリエステルは、76mgKOH/gの酸価、ブルックフィールド・コーン及びプレート粘度計で測定して100℃で6.5ポアズの溶融粘度、示差走査熱量測定(DSC)で測定して60.0℃の溶融温度を持っていた。
【0063】
例C
カルボン酸基含有無定形ポリエステルを、次の成分混合物に基づいて製造した:

成分 重量部(g)
テレフタル酸 5389.1
アジピン酸 598.8
ネオペンチルグリコール 4130.2
無水トリメリト酸 1198.8
ファスキャット4102 25.0
【0064】
テレフタル酸及びアジピン酸を、溶融ネオペンチルグリコール及びファスキャット4102の入った反応容器へ窒素雰囲気中で150℃の温度で入れた。反応混合物の温度を、徐々に230℃へ上昇させた。混合物を撹拌し、5mgKOH/gより低い酸価が得られるまで230℃に維持した。真空を適用して水を除去し、重縮合を完結させた。次に反応混合物を170〜190℃へ冷却し、次に無水トリメリト酸を添加した。反応混合物が透明になり、70〜82mgKOH/gの酸価が得られるまでその温度を維持した。反応混合物を容器から受容器へ移し、室温へ冷却して固体生成物を与えた。得られたポリエステルは、80mgKOH/gの酸価、ブルックフィールド・コーン及びプレート粘度計で測定して175℃で90ポアズの溶融粘度、示差走査熱量測定(DSC)で測定した63.3℃のガラス転移温度を持っていた。
【0065】
例D
グリシジル基含有アクリル共重合体を、次の手順に基づき製造した:
【0066】
撹拌器、水冷凝縮器、窒素導入口、及び温度調節器へ接続された熱電対を具えた5リットルの二重壁フラスコ中に800部の酢酸n−ブチルを入れた。次にフラスコの内容物を加熱し、溶媒中を窒素でパージしながら連続的に撹拌した。125℃で、200部の酢酸n−ブチル中に91部の過安息香酸t−ブチルを入れた混合物を、蠕動ポンプにより215分に亙りフラスコ中へ供給した。供給後、5分で他のポンプを始動し、284部のグリシジルメタクリレート、312部のブチルメタクリレート、及び312部のメチルメタクリレートの混合物を180分以内で供給した。全合成時間は315分であった。
【0067】
酢酸n−ブチルを蒸発させた後、次の特性を有するアクリル共重合体が得られた:
ICI粘度、200℃ 400ポアズ
Mn 2600
【0068】
例E
着色低温硬化性粉末被覆組成物を、次の成分混合物に基づいて製造した:

成分 重量部(g)
例C 136
例Aで製造した結晶質ポリエステル 34
エポン(EPON)2002 170
TiO 150
レジフローP−67 5
ベンゾイン 2
BETP 1.5
【0069】
成分を予め混合し、プリズム(Prism)TSE16PC二軸押出し機で90℃で溶融混合した。押出し物を急冷し、破壊してフレークにし、それらを粒状にし、分類し、金属又はMDFパネルへ静電スプレーし、130℃で20分間硬化した。下の表1に、得られた被覆の性質を報告する。
【0070】
例F
着色低温硬化性粉末被覆組成物を、次の成分混合物に基づいて製造した:

成分 重量部(g)
例C 127.5
例Bで製造した結晶質ポリエステル 42.5
エポン2002 170
TiO 149.5
レジフローP−67 5
ベンゾイン 3.5
BETP 2
【0071】
成分を予め混合し、プリズムTSE16PC二軸押出し機で85℃で溶融混合した。押出し物を急冷し、破壊してフレークにし、それらを粒状にし、分類し、金属又はMDFパネルへ静電スプレーし、130℃で20分間硬化した。下の表1に、得られた被覆の性質を報告する。
【0072】
例G
着色低温硬化性粉末被覆組成物を、次の成分混合物に基づいて製造した:

成分 重量部(g)
例C 127.5
例Bで製造した結晶質ポリエステル 42.5
エポン2002 150
例Dのグリシジルアクリル共重合体 20
TiO 149.5
レジフローP−67 5
ベンゾイン 3.5
BETP 2.0
【0073】
成分を予め混合し、プリズムTSE16PC二軸押出し機で90℃で溶融混合した。押出し物を急冷し、破壊してフレークにし、それらを粒状にし、分類し、金属又はMDFパネルへ静電スプレーし、130℃で25分間硬化した。下の表1に、得られた被覆の性質を報告する。
【0074】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤を含む熱硬化性被覆組成物で、前記結合剤の100重量部は、
(A) 15〜100mgKOH/gの酸価を有するカルボン酸基含有無定形ポリエステル、1〜50重量部、
(B) 多塩基性有機カルボン酸の無水物と、ヒドロキシル基含有半結晶質ポリエステルとの反応生成物を含む、カルボン酸基含有半結晶質ポリエステル、1〜50重量部、
(C) 150〜1500g/当量のエポキシ当量を有するグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂、1〜90重量部、
(D) 重合体1gについて1.0〜5.0ミリ当量のエポキシのエポキシ当量を有するグリシジル基含有(メタ)アクリレート共重合体、0〜85重量部、
(E) (C)及び(D)とは異なり、ポリエステル(A)及び(B)のカルボン酸基と反応することができる官能基を有する硬化剤、0〜20重量部、
を含む熱硬化性被覆組成物。
【請求項2】
カルボン酸基含有無定形ポリエステル(A)が、ポリ酸成分に関して、50〜100モル%のテレフタル酸又はイソフタル酸、又はそれらの混合物、及び0〜50モル%の脂肪族、脂環式、又は芳香族の、テレフタル酸又はイソフタル酸とは異なるポリ酸、及びポリオール成分に関して、40〜100モル%のネオペンチルグリコール、及び0〜60モル%の別の脂肪族及び(又は)脂環式ポリオールから構成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
カルボン酸基含有半結晶質ポリエステル(B)が、無水トリメリト酸及び(又は)無水ピロメリト酸の酸無水物基と、15〜70mgKOH/gのヒドロキシル価を有するヒドロキシル基含有半結晶質ポリエステルとの開環反応により得られており、ポリ酸成分に関して、70〜100モル%のテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又は4〜16個の炭素原子を有する直鎖ジカルボン酸、及び0〜30モル%の別の芳香族、脂肪族、又は脂環式ポリ酸、及びポリオール成分に関して、70〜100モル%の、2〜16個の炭素原子を有する脂環式又は直鎖脂肪族ポリオール、及び0〜30モル%の別の脂肪族又は脂環式ポリオールを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
グリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂(C)が、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、又はフェノール又はクレゾールエポキシノボラックである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
グリシジル基含有(メタ)アクリレート共重合体(D)が、10〜90モル%のグリシジル基含有単量体、及び90〜10モル%の、グリシジル基含有単量体と共重合することができる一種類以上の単量体から製造されており、前記(メタ)アクリレート共重合体が、1000〜15000の数平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
硬化剤(E)が、イソシアヌル酸トリグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、トリメリト酸トリグリシジル、又はそれらの混合物、又はβ−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
カルボン酸基含有無定形ポリエステル(A)が、次の性質:
1100〜15000の数平均分子量、
40〜80℃のガラス転移温度(Tg)、及び
5〜15000mPa.sの範囲の200℃でのICI(コーン/プレート)粘度、
を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
カルボン酸基含有無定形ポリエステル(A)が、30〜70mgKOH/gの酸価を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
カルボン酸基含有半結晶質ポリエステル(B)が、次の性質:
30〜120mgKOH/gの酸価、
1100〜17000の範囲の数平均分子量、
50〜150℃の溶融領域、
40℃より低いガラス転移温度(Tg)、
少なくとも5J/gの結晶化度、及び
100℃で少なくとも10mPa.sのICI(コーン/プレート)粘度、を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
(B)の酸価が、50〜100mgKOH/gである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
グリシジル基含有アクリル共重合体(D)が、次の性質:
1000〜15000の範囲の数平均分子量、
ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の加熱勾配で測定して、40〜85℃のガラス転移温度(Tg)、及び
200℃でICI法により測定して、少なくとも100mPa.sのICI(コーン/プレート)粘度、
を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
アミン、ホスフィン、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩触媒からなる群から選択された触媒化合物を、結合剤100重量部について0.1〜5.0重量部含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
更に、
UV光吸収剤及び(又は)立体障害アミン光安定化剤、
流動調節剤、及び(又は)
ガス抜き剤、
を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱硬化性粉末組成物を含有する透明ラッカー。
【請求項15】
更に、顔料、染料、及び充填剤の少なくとも一種類を含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱硬化性粉末被覆組成物。
【請求項16】
静電又は摩擦帯電スプレー銃又は流動化床法により適用することを含む、請求項1〜13及び15のいずれか1項に記載の熱硬化性粉末組成物を適用する方法。
【請求項17】
用いられる被覆材料が、請求項1〜13、及び15のいずれか1項に記載の組成物を含有する粉末被覆組成物である、全体的に又は部分的に被覆した基体。

【公表番号】特表2006−504832(P2006−504832A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548800(P2004−548800)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011957
【国際公開番号】WO2004/041904
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(505000055)サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (10)
【Fターム(参考)】