説明

酸素吸収性樹脂、酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性容器

【課題】優れた酸素吸収性能を有する酸素吸収性樹脂を提供する。
【解決手段】少なくとも下記モノマー(A)および(B)を重合させて得ることができる、ガラス転移温度が−8℃〜15℃の酸素吸収性樹脂を提供する。モノマー(A):下記(i)及び(ii)からなる群より選ばれるモノマー(i)下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているモノマー、(a)炭素−炭素二重結合基、(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素2重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該電子供与性置換基と複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基とがシス位に位置しているモノマー;モノマー(B):芳香環を有するモノマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収性樹脂、それを含む酸素吸収性樹脂組成物及びそれを用いた酸素吸収性容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装容器としては、軽量で透明且つ易成形性等の利点を有するため、各種プラスチック容器が使用されている。
プラスチック容器は、金属容器やガラス容器と比べると、酸素バリア性が劣るため、容器内に充填された内容物の化学的酸化や好気性菌による品質低下が問題になる。
これを防止するために、プラスチック容器の中には容器壁を多層構造とし、少なくとも一層を酸素バリア性に優れている樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体の層を設けているものがある。さらには、容器内部に残存する酸素及び容器外部から侵入してくる酸素を除去するために、酸素吸収層を設けた容器がある。酸素吸収層に用いられる酸素吸収剤(脱酸素剤)には、例えば、鉄粉等の還元性物質を主剤とするもの(特許文献1参照。)がある。
【0003】
しかし、鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂に配合して、包装材料の容器壁に用いる方法は、酸素吸収性能が大きいという点では満足できるものであるが、樹脂を固有の色相に着色するために、透明性が要求される包装の分野には使用できないという用途上の制約がある。
また、樹脂系の酸素吸収性材料として、炭素−炭素不飽和結合を有する樹脂と遷移金属触媒を含む酸素吸収性樹脂組成物(特許文献2〜4参照。)、及び環状オレフィン(シクロヘキセン)構造と遷移金属触媒(特にCo塩)を含む酸素吸収性樹脂組成物(特許文献5及び6参照。)が開示されている。しかしながら、前者は酸素吸収に伴う分子鎖切断により低分子量の有機成分が臭気成分として発生するという問題がある。また、後者は、酸素吸収部位が環構造であるために、前者における低分子量の臭気成分の発生をある程度抑制することができるが、遷移金属触媒(Co塩)を使用しており、さらには紫外線等の放射線の照射により反応を活性化させているために、想定した酸素吸収部位以外での反応も生じ易く、その結果分解成分物が発生する。
【0004】
【特許文献1】特公昭62−1824号公報
【特許文献2】特開2001−39475号公報
【特許文献3】特表平8−502306号公報
【特許文献4】特許3183704号公報
【特許文献5】特表2003−521552号公報
【特許文献6】特開2003−253131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、遷移金属触媒の添加や放射線照射処理を必要としない、優れた酸素吸収性能を有する酸素吸収性樹脂、特に初期の酸素吸収性能に優れる酸素吸収性樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも下記モノマー(A)および(B)を重合させて得ることができる、ガラス転移温度が−8℃〜15℃の酸素吸収性樹脂を提供する。
モノマー(A):下記(i)及び(ii)からなる群より選ばれるモノマー
(i)下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているモノマー、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素2重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子が複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基と結合しており、該電子供与性置換基と複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基とがシス位に位置しているモノマー;
モノマー(B):芳香環を有するモノマー。
また、本発明は、少なくとも下記モノマー(A)〜(D)を共重合させて得ることができるコポリエステルである酸素吸収性樹脂を提供する。
モノマー(A):下記(i)及び(ii)からなる群より選ばれるモノマー
(i)下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸又はその誘導体、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素2重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子が複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基と結合しており、該電子供与性置換基と複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基とがシス位に位置しているジカルボン酸又はその誘導体;
モノマー(B):芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体、芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体のうち少なくとも1種;
モノマー(C):ジオール;
モノマー(D):脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれるモノマー。
さらに、本発明は、前記酸素吸収性樹脂を含む酸素吸収性樹脂組成物を提供する。
さらに、本発明は、前記酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層を有する酸素吸収性容器を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の酸素吸収性樹脂および酸素吸収性樹脂組成物によれば、遷移金属触媒の不在下においても優れた酸素吸収性能を有することにより、低分子量の臭気成分の発生を有効に抑制しつつ、実用的な酸素吸収性能を発現する酸素吸収性材料、特に初期の酸素吸収性能に優れる酸素吸収性材料が実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の酸素吸収性樹脂は、少なくとも下記モノマー(A)および(B)を重合させて得ることができる、ガラス転移温度が−8℃〜15℃の酸素吸収性樹脂である。
モノマー(A):下記(i)及び(ii)からなる群より選ばれるモノマー
(i)下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているモノマー、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素2重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子が複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基と結合しており、該電子供与性置換基と複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基とがシス位に位置しているモノマー;
モノマー(B):芳香環を有するモノマー。
【0009】
モノマー(A)(i)の脂環構造は、環内に複素原子を含む複素環構造であってもよい。また、単環式又は多環式のいずれであってもよく、多環式の場合、該炭素を含まない環は芳香環であってもよい。脂環構造は、好ましくは3〜12員単環又は多環構造であり、より好ましくは5又は6員単環構造であり、さらに好ましくは6員単環構造である。3及び4員環構造はひずみエネルギーが大きく容易に開環して鎖状構造となり易い。また、7員環以上では環が大きくなるにつれて合成が困難となるため、工業的に使用するには不利である。特に6員環構造はエネルギー的に安定であり、合成も容易であることから好ましい。さらに、前記脂環構造は構造(a)及び構造(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を含んでおり、好ましくは構造(a)の炭素−炭素二重結合基を脂環構造に含む。
【0010】
構造(b)の複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、ホルミル基、アミド基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等が挙げられる。好ましくは、複素原子が酸素を含んでいる官能基又は該官能基から誘導される結合基であり、例えば水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、ホルミル基、アミド基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合である。さらに好ましくは、カルボキシル基、酸無水物基及びエステル結合である。これらの官能基及び結合基を有するモノマー(A)は、比較的簡単な合成反応により調製できるため、工業的に使用する際に有利である。
構造(b)の芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ジフェニル環などが挙げられる。好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環である。
また、構造(a)及び(b)の両方に結合し脂環構造に含まれている炭素原子は、1個の水素原子と結合していることが好ましい。炭素原子に結合している2個の水素原子のうちの一つが例えばアルキル基で置換され、その結果水素原子が1個となることにより、酸素吸収性能はさらに向上する。
【0011】
モノマー(A)(ii)の不飽和脂環構造は、環内に複素原子を含む複素環構造であってもよい。また、単環式又は多環式のいずれであってもよく、多環式の場合、電子供与性置換基と結合している炭素原子を含まない環は芳香環であってもよい。不飽和脂環構造は、好ましくは3〜12員単環又は多環構造であり、より好ましくは5又は6員単環構造であり、さらに好ましくは6員単環構造である。特に、6員環構造はエネルギー的に安定であり、合成も容易であることから本発明の樹脂構造として好ましい。
【0012】
モノマー(A)(ii)の電子供与性置換基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、及びこれらの誘導体等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基である。さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
【0013】
モノマー(A)(ii)の複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、ホルミル基、アミド基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等が挙げられる。好ましくは、複素原子が酸素を含んでいる官能基又は該官能基から誘導される結合基であり、例えば水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、ホルミル基、アミド基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合である。さらに好ましくはカルボキシル基、酸無水物基及びエステル結合である。これらの官能基及び結合基を有する本形態の樹脂は、比較的簡単な合成反応により調製できるため、工業的に使用する際に有利である。
【0014】
モノマー(A)はジカルボン酸またはその誘導体であることが好ましい。ジカルボン酸及びその誘導体はポリエステルやポリアミド等の原料モノマーとして容易に重合することができる。また、モノマー(A)における複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基が、前記ジカルボン酸のカルボキシル基またはその誘導体を兼ねる様な構造は、モノマー構造が単純化され、比較的簡単な合成反応により調製できるため、工業的な利用を考慮するとより好ましい。なお、誘導体には、エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物、置換体、オリゴマーなどが含まれる。
【0015】
モノマー(A)は、好ましくはテトラヒドロフタル酸又はその誘導体若しくはテトラヒドロ無水フタル酸又はその誘導体であり、より好ましくはメチルテトラヒドロフタル酸又はその誘導体若しくはメチルテトラヒドロ無水フタル酸又はその誘導体である。モノマー(A)(i)としてさらに好ましくはΔ3−テトラヒドロフタル酸誘導体又はΔ3−テトラヒドロ無水フタル酸誘導体であり、さらに好ましくは4−メチル−Δ3−テトラヒドロフタル酸又はその誘導体若しくは4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸又はその誘導体である。特に好ましくは、4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸である。モノマー(A)(ii)としてさらに好ましくはcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロフタル酸又はその誘導体若しくはcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸又はその誘導体であり、特に好ましくはcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸である。テトラヒドロ無水フタル酸誘導体は無水マレイン酸とブタジエン、イソプレン及びピペリレン等のジエンとのディールス・アルダー反応によって非常に容易に合成することができる。例えば、トランス−ピペリレン及びイソプレンを主成分とするナフサのC5留分を無水マレイン酸と反応させた、cis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸と4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸の混合物、さらにはその混合物を立体異性化或いは構造異性化したものが製造されている。
これらは、安価で市販されており、工業的な使用を考慮すると好ましい。4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸を構造異性化した4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸は、モノマー(A)(i)として好ましい。また、cis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸は、モノマー(A)(ii)として好ましい。この他、モノマー(A)(i)として、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
モノマー(A)(i)及びモノマー(A)(ii)はそれぞれ単独で使用されても良く、両者が混合されていても、さらに他の成分を含んでいても良い。上述のように工業的に製造され、市販されているメチルテトラヒドロ無水フタル酸は異性体混合物となっているものがほとんどであり、少なくともモノマー(A)(i)或いはモノマー(A)(ii)のどちらかが含まれていれば、本発明のモノマー原料として好適に使用できる。
【0016】
モノマー(A)を含む原料を重合して得ることができる本発明の樹脂は、酸素との反応性が極めて高いことから、遷移金属触媒の不在下において、放射線処理を施すことなく実用的な酸素吸収性能を発現することができる。本発明の酸素吸収性樹脂において、モノマー(A)由来の脂環構造の比率は、好ましくは0.7〜10meq/gである。より好ましくは、0.9〜8.5meq/gであり、さらに好ましくは、1.2〜7.0meq/gであり、1.5〜5.5meq/gであるのが特に好ましい。上記範囲内の場合には、実用的な酸素吸収性能を有し、重合時及び成形時のゲル化を抑制でき、且つ酸素吸収後も色相の変化や強度低下の少ない酸素吸収性樹脂が得られる。
【0017】
モノマー(B)の芳香環を有するモノマーとしては、芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体、或いは芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体であることが好ましい。これらのモノマーの場合、ポリエステルやポリアミドの原料モノマーとして容易に重合することができる。
モノマー(B)の芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェニルマロン酸、フェニレンジ酢酸、フェニレンジ酪酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、p−フェニレンジカルボン酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基が芳香環に直接結合しているジカルボン酸又はその誘導体であり、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。特に、モノマー(B)がテレフタル酸又はテレフタル酸エステルである場合が好ましい。ここで、誘導体には、エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物、置換体、オリゴマーなどが含まれる。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
モノマー(B)の芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体としては、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)酪酸、2−(4−ヒドロキシフェニル)酪酸、3−ヒドロキシメチル安息香酸、4−ヒドロキシメチル安息香酸、4−(ヒドロキシメチル)フェノキシ酢酸、4−(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、(4−ヒドロキシフェノキシ)酢酸、(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、マンデル酸、2−フェニル乳酸、3−フェニル乳酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基及び水酸基が芳香環に直接結合しているヒドロキシカルボン酸又はその誘導体であり、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。ここで、誘導体には、エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物、置換体、オリゴマーなどが含まれる。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
例えば、モノマー(B)をモノマー(A)とともに原料として使用し、ポリエステルを重合することによって、重縮合時のゲル化を抑え、高重合度の樹脂を得ることができ、押出成形性が向上する。また、結晶性が高くなり、樹脂ペレットのブロッキングを抑制することができるため、成形時のハンドリング性が向上する。さらには、樹脂の機械的強度も向上する。すなわち、高い酸素吸収性能を有し、かつ分解物が少なく、押出成形性、ハンドリング性および機械的強度に優れた樹脂が得られる。
【0018】
少なくともモノマー(A)およびモノマー(B)を重合させて得ることができる本発明の酸素吸収性樹脂としては、例えばモノマー(A)単位およびモノマー(B)単位が任意の結合基を介して連結した樹脂、モノマー(A)単位を含むポリマー主鎖にモノマー(B)単位が任意の結合基を介して結合したペンダントタイプの樹脂、モノマー(B)単位を含むポリマー主鎖にモノマー(A)単位が任意の結合基を介して結合したペンダントタイプの樹脂、及び任意のポリマー主鎖にモノマー(A)単位およびモノマー(B)単位が任意の結合基を介して結合したペンダントタイプの樹脂等が挙げられる。
少なくともモノマー(A)単位およびモノマー(B)単位が任意の結合基を介して連結した樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン等が挙げられる。
【0019】
本発明の酸素吸収性樹脂のガラス転移温度は−8℃〜15℃の範囲であり、好ましくは−8℃〜10℃の範囲であり、より好ましくは−5℃〜8℃の範囲である。ガラス転移温度をこのような範囲とすることで、本発明の酸素吸収性樹脂は優れた酸素吸収性能を有し、特に初期の酸素吸収性能に優れる。
【0020】
少なくともモノマー(A)およびモノマー(B)に、さらにモノマー(C)としてジオールを加えて共重合することにより得られるコポリエステルは、本発明の酸素吸収性樹脂として好ましい。
【0021】
モノマー(C)のジオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−フェニルプロパンジオール、2−(4―ヒドロキシフェニル)エチルアルコール、α,α―ジヒドロキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼン、o−キシレングリコール、m−キシレングリコール、p−キシレングリコール、α,α―ジヒドロキシ−1,4−ジイソプロピルベンゼン、ヒドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ナフタレンジオール、又はこれらの誘導体等が挙げられる。好ましくは、脂肪族ジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールであり、さらに好ましくは、1,4−ブタンジオールである。1,4−ブタンジオールを用いた場合は、樹脂の酸素吸収性能が高く、更に酸化の過程で生じる分解物の量も少ない樹脂が得られる。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
2種類以上を組み合わせて使用する場合、1,4−ブタンジオールとC5以上の脂肪族ジオールの組み合わせが好ましく、さらには1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせが好ましい。このような組み合わせにすることにより、得られる酸素吸収性樹脂のガラス転移温度を容易に制御することができる。1,4−ブタンジオールとC5以上の脂肪族ジオールを組み合わせて使用する場合、その配合比は70:30〜99:1(モル%)が好ましい。さらに好ましくは80:20〜95:5(モル%)である。
【0022】
本発明の酸素吸収性コポリエステル樹脂は、モノマー(A)〜(C)を共重合させることによって得ることができる。前記共重合法としては、当業者に公知の任意の方法を用いることができる。例えば、界面重縮合、溶液重縮合、溶融重縮合及び固相重縮合である。
モノマー(B)に芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体を用いたときは、樹脂中のモノマー(A)単位は、樹脂中に含まれる全てのモノマー単位の10〜40モル%である場合が好ましく、より好ましくは15〜35モル%、さらに好ましくは20〜30モル%である。このとき、モノマー(B)単位は10〜40モル%である場合が好ましく、より好ましくは15〜35モル%、さらに好ましくは20〜30モル%である。上記範囲内の場合には、ハンドリング性が向上し、かつ、優れた酸素吸収性能を有する樹脂が得られる。
モノマー(B)に芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体を用いたときは、モノマー(A)及び(B)単位の組成比は当業者が適宜選択することができる。
【0023】
さらに、上記モノマーとともに、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、又はそれらの誘導体等をモノマー(D)として共重合することが好ましい。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。モノマー(D)を共重合させることによって、得られる酸素吸収性樹脂のガラス転移温度を容易に制御することができる。本発明の酸素吸収性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−8℃〜15℃の範囲であり、より好ましくは−8℃〜10℃の範囲であり、さらに好ましくは−5℃〜8℃の範囲である。ガラス転移温度をこのような範囲とすることで、本発明の酸素吸収性樹脂は優れた酸素吸収性能を有し、特に初期の酸素吸収性能に優れる。
脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘキサン酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。
これらの中でも、アジピン酸、コハク酸が好ましく、特にアジピン酸が好ましい。
【0024】
本発明の酸素吸収性樹脂はモノマー(A)〜(D)を共重合させてコポリエステルとして得ることができる。このとき、樹脂中のモノマー(D)単位は、樹脂中に含まれる全てのモノマー単位の1〜25モル%である場合が好ましく、より好ましくは1〜15モル%、さらに好ましくは2〜10モル%である。
【0025】
重合触媒は必ずとも必要としないが、チタン系、ゲルマニウム系、アンチモン系、スズ系、アルミニウム系等の通常のポリエステル重合触媒が使用可能である。また、含窒素塩基性化合物、ホウ酸及びホウ酸エステル、有機スルホン酸系化合物等の公知の重合触媒を使用することもできる。
さらに、重合の際にはリン化合物等の着色防止剤や酸化防止剤等の各種添加剤を添加することもできる。酸化防止剤を添加することにより、重合中やその後の成形加工中の酸素吸収やラジカル架橋反応を抑制できるため、酸素吸収性樹脂の性能低下やゲル化を抑えることができる。
本発明の酸素吸収性樹脂の数平均分子量は、好ましくは1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜200000である。上記範囲内の数平均分子量の場合には、加工性及び耐久性に優れたフィルムを形成することができる。
本発明の酸素吸収性樹脂は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の酸素吸収性樹脂は、押出成形や射出成形等の溶融加工用樹脂としてだけではなく、適当な溶剤に溶解させて塗料として使用することもできる。塗料として使用する場合には、例えばイソシアネート系硬化剤を配合して、2液硬化型ドライラミネート用接着剤として使用することもできる。
【0026】
本発明の酸素吸収性樹脂は、酸素との反応性が極めて高いことから、遷移金属触媒(酸化触媒)の不在下において、放射線処理を施すことなく実用的な酸素吸収性能を発現することができる。本発明の酸素吸収性樹脂の反応性は、樹脂合成時や成形加工時等、樹脂の受ける熱履歴により活性化される。積極的に熱を与えて反応性を高めたり、逆に熱履歴を抑えることにより反応を抑制したりすることも可能である。例えば、反応性を抑えた場合には、放射線照射処理を施して反応性を高めることもできる。
本発明の酸素吸収性樹脂に放射線処理を施す場合に使用される放射線は、電子線、陽子線及び中性子線等の粒子線や、ガンマ線、X線、可視光線及び紫外線などの電磁波である。この中でも特に、低エネルギー放射線である可視光線、紫外線等の光が好ましく、より好ましくは紫外線である。紫外線の照射条件としては、例えば積算光量100〜10000mJ/cm2のUV−Aが好ましい。紫外線照射のタイミングは、特に限定されないが、酸素吸収性容器として使用する場合は、酸素吸収性能を効果的に活用するために、容器成形後、内容品を充填して密封する直前が好ましい。
【0027】
本発明の酸素吸収性樹脂は、モノマー(A)由来の脂環構造以外にはアリル水素を有さないのが好ましい。アリル水素は比較的引き抜かれ易いために、酸素の攻撃を受けやすい。脂環構造以外の直鎖構造部にアリル水素を有する場合には、該アリル位での酸素酸化に伴う分子鎖切断により低分子量の分解成分が生じ易くなる。
本発明の樹脂には、モノマー(A)由来の反応性の高い脂環構造以外に、他の脂環構造を含んでいてもよく、また、他の脂環構造内に、モノマー(A)由来の構造に含まれない比較的反応性の低いアリル水素を含んでいてもよい。この様な樹脂構造の場合、モノマー(A)由来の反応性の高い脂環構造で発生したラジカルの連鎖移動により、比較的反応性の低い脂環内アリル水素が活性化され、酸素吸収性能が向上することがあるため好ましい。
【0028】
本発明の酸素吸収性樹脂は、さらに他の熱可塑性樹脂を配合して酸素吸収性樹脂組成物としてもよい。前記熱可塑性樹脂としては、任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。
例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体等のポリオレフィン、無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等或いはこれらの混合物等が挙げられる。
好ましくは、前記熱可塑性樹脂はポリエチレンであり、特に、低密度ポリエチレンが好ましい。より好ましくは、エチレンと1-アルケンを共重合した線状低密度ポリエチレンである。前記酸素吸収性樹脂と線状低密度ポリエチレンをブレンドして成形したフィルム及びシートは、耐衝撃性に優れる。前記1-アルケンとして、1-プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1−オクテン及びこれらの混合物を用いることができる。
共重合する1-アルケンは、好ましくは2〜30重量%であり、より好ましくは2〜20重量%である。
エチレンと1-アルケンの共重合においては、従来からのチーグラーナッタ触媒を用いたものでもシングルサイト触媒を用いたものでも所望の分子構造を有するものであれば適宜選択することができるが、シングルサイト触媒を用いて重合することにより、確実に各分子量成分に亘って共重合組成比の変動を抑制することが防止できる。その結果、分子構造が均一となり、酸素吸収性樹脂のラジカル連鎖移動のために熱可塑性樹脂の酸化が誘発される場合にも、酸化が各分子鎖間で均一に進行することによって、分子切断による分解物の発生を抑制することができるため、好ましい。好適な触媒としては、メタロセン系触媒が挙げられる。他の触媒としてはポストメタロセン系触媒に位置づけられるオレフィン重合用触媒、特にフェノキシイミン触媒(FI触媒)が好適である。
【0029】
前記した線状低密度ポリエチレンとしては、例えば、メタロセン系触媒を重合触媒として使用したエチレンと1−ブテンの共重合体、エチレンと1−ヘキセンの共重合体、エチレンと1−オクテンの共重合体が好ましい。
また、前述した樹脂のシングルサイト触媒による重合は、工業的に可能な方法であればどのような方法でも良いが、最も広く使用されている点から液相法で行うのが好ましい。
前記熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、前記熱可塑性樹脂中には充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂又はゴム等の添加剤が含まれていても良い。但し、酸化防止剤が添加されている場合には酸素吸収性樹脂の酸素吸収反応を阻害する場合があるため、添加量を少量に制御することが好ましい。前記熱可塑性樹脂中の酸化防止剤添加量として好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下であり、特に好ましくは0ppmである。
酸素吸収性樹脂組成物中の酸素吸収性樹脂の配合量は、好ましくは3〜80重量%であり、より好ましくは10〜60重量%であり、さらに好ましくは20〜50重量%である。上記範囲内の場合には、実用的な酸素吸収性能を有し、かつ、酸素吸収後も色相の変化や強度低下の少ない酸素吸収性樹脂組成物が得られる。
【0030】
本発明の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物には、さらに可塑剤を配合することができる。ここで言う可塑剤とは、本発明の酸素吸収性樹脂と相溶し、ガラス転移温度を低下させる作用があるもの全てを含む。
前記可塑剤としては、フタル酸エステル系、アジピン酸エステル系、アゼライン酸エステル系、セバシン酸エステル系、リン酸エステル系、トリメリット酸エステル系、クエン酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系、塩素化パラフィン系などが挙げられる。具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸−ジ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルリシノール酸メチル、アジピン酸−ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、エタンジオールモンタン酸エステル、1,3−ブタンジオールモンタン酸エステル、ステアリン酸イソブチル、ポリ(1,3−ブタンジオールアジピン酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール・アジピン酸、ラウリル酸)エステル、ポリ(1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、アジピン酸オクチルアルコール)エステルなどが挙げられる。前記酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物中の可塑剤の添加量は、好ましくは0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%であり、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0031】
本発明の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物には、さらにラジカル開始剤や光増感剤等の種々の添加剤を配合することができる。
ラジカル開始剤及び光増感剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン及びそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類等の一般に光開始剤として知られているものが使用される。かかる光ラジカル開始剤は、安息香酸系又は第三級アミン系等、公知慣用の光重合促進剤の一種又は二種以上と組み合わせて用いることができる。
その他の添加剤としては、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂又はゴム等の添加剤が挙げられ、それ自体公知の処方に従って添加することができる。例えば、滑剤を配合することにより、スクリューへの樹脂の食い込みが改善される。滑剤としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、流動、天然又は合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、ステアリン酸、ラウリン酸等脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系又はビスアミド系のもの、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、及びそれらの混合系が一般的に用いられる。また、酸化防止剤を配合する場合には、上述のように添加量を少量に制御することが好ましい。
【0032】
本発明の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物は、粉末、粒状又はシート等の形状で、密封包装体内の酸素吸収に使用することができる。また、ライナー、ガスケット用又は被覆形成用の樹脂やゴム中に配合して、包装体内の残留酸素吸収に用いることができる。特に、本発明の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物は、これを含む少なくとも一層と、他の樹脂の層からなる積層体の形で酸素吸収性容器として使用することが好ましい。
【0033】
本発明の酸素吸収性容器は、上記の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物からなる層(以下、酸素吸収層という)を少なくとも一層有している。
本発明の酸素吸収性容器を構成する酸素吸収層以外の層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等の無機材料或いは紙等から、その使用態様や要求される機能により適宜選択できる。例えば、上述の本発明の酸素吸収性樹脂に配合できる熱可塑性樹脂の一例として列挙した熱可塑性樹脂、金属箔、無機蒸着フィルムを挙げることができる。
本発明の酸素吸収性容器においては、酸素吸収性樹脂或いは酸素吸収性樹脂組成物の効果をより高めるために、少なくとも酸素吸収層の外側には酸素バリア層を設けることが好ましい。このような構成にすることにより、外部から容器内に透過する酸素及び容器内に残存した酸素を効果的に吸収し、容器内の酸素濃度を長期間にわたって低く抑えることができる。
酸素バリア層には酸素バリア性樹脂を使用することができる。酸素バリア性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、好ましくは、25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、好ましくは、99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。酸素バリア性樹脂の他の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリグリコール酸等を挙げることができる。また、上記の酸素バリア性樹脂や他のポリアミド樹脂等に、モンモリロナイト等の無機層状化合物等を配合したナノコンポジット材も好適に使用できる。
【0034】
また、特に本発明の酸素吸収性容器がパウチ等のフィルム容器の場合には、アルミニウムなどの軽金属箔、鉄箔、ブリキ箔、表面処理鋼箔等の金属箔、蒸着法により二軸延伸PETフィルム等の基材に形成された金属薄膜や金属酸化物薄膜、又はダイヤモンドライクカーボン薄膜を酸素バリア層として用いることができる。また、二軸延伸PETフィルム等の基材フィルムに酸素バリアコーティングを施したバリアコーティングフィルムを使用することもできる。
金属薄膜を構成する材料としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、錫、銅、珪素等が挙げられ、特にアルミニウムが好ましい。
金属酸化物薄膜を構成する材料としては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウムなどが挙げられ、特にシリカとアルミナが好ましい。なお、用いられる材料は2種以上を併用してもよく、同種或いは異種材料で積層されていてもよい。
このような薄膜の蒸着は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション等の物理気相成長法(PVD法)、或いはプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等の公知の方法によって行われる。
酸素バリアコーティングを構成する材料としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、多糖類等の高水素結合性樹脂や、塩化ビニリデン系樹脂、エポキシアミン等が挙げられる。またこれらの材料に、モンモリロナイト等の無機層状化合物等を配合することも好ましい。
また、本発明の酸素吸収性容器として、上述の酸素バリア性樹脂に酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物を配合した酸素吸収性バリア層を有するものも好ましい。この場合、必ずしも他に酸素バリア単独層および酸素吸収単独層を設ける必要が無いため、層構造を単純化できる。
【0035】
酸素吸収性容器の製造には、それ自体公知の成型法を用いることができる。
例えば、樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて押出成形を行うことで多層フィルム、多層シート、多層パリソン又は多層パイプ等が成形できる。また、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、同時射出法や逐次射出法等の共射出成形によりボトル成型用の多層プリフォームを製造することができる。このような多層フィルム、パリソン、プリフォームをさらに加工することにより、酸素吸収性多層容器を得ることができる。
フィルム等の包装材料は、種々の形態のパウチや、トレイ・カップの蓋材として用いることができる。パウチとしては、例えば、三方又は四方シールの平パウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。製袋は公知の製袋法で行うことができる。また、フィルム又はシートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器が得られる。
多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができる。また、予め形成された単層及び多層フィルムをドライラミネーションによって積層することもできる。例えば、熱可塑性樹脂層/酸素吸収層/熱可塑性樹脂(シーラント)層から成る3層共押出フィルムに透明蒸着フィルムをドライラミネーションにより積層する、ドライラミネートにより積層した2軸延伸PETフィルム/アルミ箔の2層フィルムに酸素吸収層/シーラント層の2層をアンカー剤を介して押出コートする、又はドライラミネートにより積層したバリアコーティングフィルム/ポリエチレンの2層フィルムにポリエチレン単層フィルムをポリエチレンベースの酸素吸収性樹脂組成物を介してサンドイッチラミネーションする方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、パリソン、パイプ又はプリフォームを一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易にボトルやチューブを成形できる。また、パイプ、プリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
本発明の酸素吸収性容器は、容器壁を介して外部から透過してくる酸素を有効に遮断し、容器内に残存した酸素を吸収する。そのため、容器内の酸素濃度を長期間低いレベルに保ち、内容物の酸素が係わる品質低下を防止し、シェルフライフを向上させる容器として有用である。
特に、酸素存在下で劣化しやすい内容品、例えば、食品ではコーヒー豆、茶葉、スナック類、米菓、生・半生菓子、果物、ナッツ、野菜、魚・肉製品、練り製品、干物、薫製、佃煮、生米、米飯類、幼児食品、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、乳製品等、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、緑茶、コーヒー等、その他では医薬品、化粧品、電子部品等が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。各値は以下の方法により測定した。
(1)数平均分子量(Mn)及び分子量分布指数(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製;HLC−8120型GPC)により、ポリスチレン換算で測定した。溶媒にはクロロホルムを使用した。
(2)コポリエステル樹脂中の各モノマー単位の組成比
核磁気共鳴分光法(1H−NMR、日本電子データム社製;EX270)により、樹脂中の各モノマー単位の組成比を算出した。酸成分については、テレフタル酸由来のベンゼン環プロトン(8.1ppm)、イソフタル酸由来のベンゼン環プロトン(8.7ppm)、テレフタル酸及びイソフタル酸から誘導されたエステル基に隣接するメチレンプロトン(4.3〜4.4ppm)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、コハク酸及びアジピン酸から誘導されたエステル基に隣接するメチレンプロトン(4.1〜4.2ppm)、コハク酸由来のメチレンプロトン(2.6ppm)、アジピン酸由来のメチレンプロトン(2.3ppm)のシグナルの面積比から組成比をそれぞれ算出した。溶媒には基準物質としてテトラメチルシランを含む重クロロホルムを使用した。
このとき、コポリエステル樹脂の酸成分の組成比は、重合に使用した各モノマーの仕込み量(モル比)とほぼ同等であった。
(3)ガラス転移温度;Tg
示差走査熱量測定器(セイコーインスツルメンツ社製DSC6220)を用いて、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定した。
(4)ハンドリング性
樹脂ペレットのベタつきによるブロッキングの有無を評価した。樹脂を約5mm×5mm×5mmのサイコロ状にカットし、これを50℃の真空乾燥器内で約8時間処理して結晶化させた。得られた結晶化ペレットが押出機ホッパー内でブロッキングする場合を×、ブロッキングしない場合を○、微かにブロッキングする場合を△とした。
(5)酸素吸収量
切り出した20cm2のシート状の試験片を、内容積85cm3の酸素不透過性のスチール箔積層カップに仕込んでアルミ箔積層フィルム蓋でヒートシール密封し、22℃雰囲気下にて保存した。一定時間保存後のカップ内酸素濃度をマイクロガスクロマトグラフ装置(アジレント・テクノロジー社製;M200)にて測定し、樹脂1cm2当たりの酸素吸収量を算出した。
【0038】
(実施例1)
攪拌装置、窒素導入管、Dean−Stark型水分離器を備えた500mlのセパラブルフラスコに、モノマー(A)として4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸を45重量%およびcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸を21重量%含有するメチルテトラヒドロ無水フタル酸混合物(日立化成社製;HN−2200)を83.1g、モノマー(B)としてテレフタル酸(和光純薬社製;TPA)を83.1g、モノマー(C)として1,4−ブタンジオール(和光純薬社製;BG)を180.2g、ポリエステル重合触媒としてチタニウムテトライソプロポキシド(キシダ化学社製)を0.103g、及びトルエン20mlを仕込み、窒素雰囲気中150℃〜200℃で生成する水を除きながら約6時間反応させた。引き続いて反応系よりトルエンを除いた後、最終的に0.1kPaの減圧下、200〜200℃で2〜6時間重合を行い、Tgが10.0℃のゴム状のコポリエステル樹脂Eを得た。このときMnは約7900で、Mw/Mnは15であった。
得られた樹脂Eを、約5mm×5mm×5mmのサイコロ状にカットし、0.1kPa以下の真空下、50℃で8時間乾燥処理したところ、結晶化してブロッキングし難くハンドリング性に優れた樹脂が得られた。さらにこれを200℃のホットプレスにて平均厚み約270μmのシート状に成形して20cm2の試験片を切り出し、酸素吸収量の評価に供した。評価結果をあわせて表1に示す。
【0039】
(実施例2)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが10.4℃のゴム状のコポリエステル樹脂Fを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 74.8g、イソフタル酸(和光純薬社製;IPA) 8.3g、
モノマー(C):BG 180.2g。
このときMnは約8200で、Mw/Mnは9.5であった。
得られた樹脂Fを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例3)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが13.0℃のゴム状のコポリエステル樹脂Gを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 83.1g、
モノマー(C):BG 126.2g、エチレングリコール(キシダ化学社製;EG) 37.2g。
このときMnは約6400で、Mw/Mnは7.5であった。
得られた樹脂Gを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例4)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが7.0℃のゴム状のコポリエステル樹脂Hを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 83.1g、
モノマー(C):BG 162.2g、1,6−ヘキサンジオール(和光純薬社製;HG) 23.6g。
このときMnは約7800で、Mw/Mnは8.9であった。
得られた樹脂Hを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例5)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが4.1℃のゴム状のコポリエステル樹脂Iを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 83.1g、
モノマー(C):BG 144.2g、HG 47.3g。
このときMnは約8100で、Mw/Mnは9.8であった。
得られた樹脂Iを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例6)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが6.6℃のゴム状のコポリエステル樹脂Jを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 74.8g、
モノマー(C):BG 180.2g、
モノマー(D):コハク酸(和光純薬社製;SA) 5.9g。
このときMnは約7700で、Mw/Mnは13.2であった。
得られた樹脂Jを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0044】
(実施例7)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが2.7℃のゴム状のコポリエステル樹脂Kを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 66.5g、
モノマー(C):BG 180.2g、
モノマー(D):SA 11.8g。
このときMnは約8000で、Mw/Mnは13.3であった。
得られた樹脂Kを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例8)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが3.3℃のゴム状のコポリエステル樹脂Lを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 74.8g、
モノマー(C):BG 180.2g、
モノマー(D):アジピン酸(和光純薬社製;AA) 7.3g。
このときMnは約7300で、Mw/Mnは8.9であった。
得られた樹脂Lを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例9)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが2.0℃のゴム状のコポリエステル樹脂Mを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 70.6g、
モノマー(C):BG 180.2g、
モノマー(D):AA 11.0g。
このときMnは約7300で、Mw/Mnは13.6であった。
得られた樹脂Mを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例10)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが−0.3℃のゴム状のコポリエステル樹脂Nを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 66.5g、
モノマー(C):BG 180.2g、
モノマー(D):AA 14.6g。
このときMnは約7500で、Mw/Mnは13.5であった。
得られた樹脂Nを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例11)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが−6.1℃のゴム状のコポリエステル樹脂Oを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 58.1g、
モノマー(C):BG 180.2g、
モノマー(D):AA 21.9g。
このときMnは約6800で、Mw/Mnは10.2であった。
得られた樹脂Oを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例12)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが2.9℃のゴム状のコポリエステル樹脂Pを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 74.8g、
モノマー(C):BG 171.2g、HG 11.8g、
モノマー(D):AA 7.3g。
このときMnは約7300で、Mw/Mnは11.7であった。
得られた樹脂Pを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例13)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが1.6℃のゴム状のコポリエステル樹脂Qを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 74.8g、
モノマー(C):BG 162.2g、HG 23.6g、
モノマー(D):AA 7.3g。
このときMnは約8000で、Mw/Mnは10.4であった。
得られた樹脂Qを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例14)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが−1.9℃のゴム状のコポリエステル樹脂Rを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 66.5g、
モノマー(C):BG 171.2g、HG 11.8g、
モノマー(D):AA 14.6g。
このときMnは約8100で、Mw/Mnは12.6であった。
得られた樹脂Rを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例15)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが−2.3℃のゴム状のコポリエステル樹脂Sを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 66.5g、
モノマー(C):BG 162.2g、HG 23.6g、
モノマー(D):AA 14.6g。
このときMnは約8000で、Mw/Mnは15.1であった。
得られた樹脂Sを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例16)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが11.4℃のゴム状のコポリエステル樹脂Tを得た。
モノマー(A):cis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸(東京化成社製) 24.0g、
モノマー(B):TPA 24.0g、
モノマー(C):BG 52.1g。
このときMnは約6700で、Mw/Mnは6.6であった。
得られた樹脂Tを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが45.4℃のガラス状のコポリエステル樹脂Uを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 83.1g、
モノマー(C):EG 124.1g。
このときMnは約5200で、Mw/Mnは9.0であった。
得られた樹脂Uを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが−8.7℃のゴム状のコポリエステル樹脂Vを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 83.1g、
モノマー(C):HG 236g。
このときMnは約6900で、Mw/Mnは17.5であった。
得られた樹脂Vを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが51.4℃のガラス状のコポリエステル樹脂Wを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(B):TPA 83.1g、
モノマー(C):1,4−シクロヘキサンジメタノール(和光純薬社製;CHDM) 288.4g。
このときMnは約3900で、Mw/Mnは4.6であった。
得られた樹脂Wを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例4)
モノマー仕込み組成を以下のようにした以外は、実施例1と同様に重合を行い、Tgが−35.5℃のゴム状のコポリエステル樹脂Xを得た。
モノマー(A):HN−2200 83.1g(66重量%がモノマー(A)相当)、
モノマー(C):BG 180.2g、
モノマー(D):AA 73.1g
このときMnは約5300で、Mw/Mnは34.8であった。
得られた樹脂Xを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
以上の実施例1〜16及び比較例1〜4の評価結果から、酸素吸収性樹脂のTgと酸素吸収量の関係を図1に示す。本発明のTgが−8℃〜15℃の範囲である酸素吸収性樹脂が、優れた酸素吸収性能を示すことがわかる。
【0060】
(実施例17)
酸素吸収性樹脂E50重量部と熱可塑性樹脂としてメタロセン系線状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)樹脂(ユメリット140HK、宇部丸善ポリエチレン社製)50重量部を、ラボラトリーミキシングエクストルーダー(東洋精機製作所社製;CS−194AV)を用いて200℃で溶融混錬し、樹脂組成物1を得た。
得られた樹脂組成物1を、200℃のホットプレスにて平均厚み約60μmのフィルム状に成形して20cm2の試験片を切り出し、酸素吸収量の評価に供した。結果を表2に示す。
【0061】
(実施例18)
酸素吸収性樹脂E50重量部と熱可塑性樹脂としてメタロセン系低密度ポリエチレン(m−LDPE)樹脂(エクセレンGMH CB5002、住友化学社製)50重量部を用いた以外は実施例17と同様の処理を行い、樹脂組成物2を得た。
得られた樹脂組成物2を実施例17と同様の評価に供した。結果を表2に示す。
【0062】
(実施例19)
酸素吸収性樹脂M50重量部と熱可塑性樹脂としてm−LLDPE樹脂50重量部を用いた以外は実施例17と同様の処理を行い、樹脂組成物3を得た。
得られた樹脂組成物3を実施例17と同様の評価に供した。結果を表2に示す。
【0063】
(実施例20)
酸素吸収性樹脂M30重量部と熱可塑性樹脂としてm−LLDPE樹脂70重量部を用いた以外は実施例17と同様の処理を行い、樹脂組成物4を得た。
得られた樹脂組成物4を実施例17と同様の評価に供した。結果を表2に示す。
【0064】
(実施例21)
酸素吸収性樹脂E50重量部、熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂(L719、宇部丸善ポリエチレン社製)50重量部、可塑剤としてアセチルクエン酸トリブチル(ATBC、旭化成ファインケム社製)2.5重量部を、ラボラトリーミキシングエクストルーダーを用いて200℃で溶融混錬し、樹脂組成物5を得た。この樹脂組成物5の酸素吸収性樹脂由来のTgは4.6℃であった。
得られた樹脂組成物5を実施例17と同様の評価に供した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
(実施例22)
樹脂Eを1kg調製し、0.1kPa以下の真空下、50℃で8時間乾燥し結晶化した。この粉砕物50重量部と熱可塑性樹脂としてm−LLDPE樹脂50重量部を、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B、東芝機械社製)を用いて、スクリュー回転数100rpmで高真空ベントを引きながら成形温度200℃で溶融混練し、樹脂組成物5を得た。この樹脂組成物は溶融粘度が高く押出成形性に優れている。
さらに、樹脂組成物5を成形温度200℃の条件で、ラボプラストミル(東洋精機社製)を用いてTダイ法によりm−LLDPE樹脂との3層共押出フィルム(LLDPE(15)/樹脂組成物6(60)/m−LLDPE(15)(括弧内は各層の厚み(μm))に成形した。
また、12μm透明蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(凸版印刷社製;GL−AEH)と予め片面にコロナ処理を施したLDPEフィルム(タマポリ社製;V−1)を、蒸着フィルムの蒸着面とLDPEフィルムのコロナ処理面が対向するように2液型ウレタン系接着剤(武田薬品工業社製;タケラックA−315+タケネートA−50)を用いて貼り合わせた後、50℃で3日間キュアして透明蒸着PET/LDPEの2層フィルムを得た。得られた2層フィルムのLDPE側に上述の3層共押出フィルムを熱ラミネーションにより貼り合わせることにより酸素吸収性積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムを、3層共押出フィルムが対向するように重ね合わせ、4辺をヒートシールすることにより有効面積80cm2、内容積15mlの透明平パウチを得た。
この平パウチを22℃で保存し、容器内酸素濃度をマイクロガスクロマトグラフ装置(アジレント・テクノロジー社製;M200)にて追跡した。結果を表3に示す。
【0067】
(実施例23)
樹脂Eの代わりに樹脂Mを1kg調製した以外は、実施例21と同様にして平パウチを得、容器内酸素濃度を追跡した。結果を表3に示す。
【0068】
(実施例24)
樹脂Eを1kg調製し、0.1kPa以下の真空下、50℃で8時間乾燥し、結晶化した。この粉砕物50重量部、熱可塑性樹脂としてLDPE樹脂50重量部、および可塑剤としてATBC2重量部を出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機を用いて、スクリュー回転数100rpmで高真空ベントを引きながら成形温度200℃で溶融混練し、樹脂組成物7を得た。この樹脂組成物は溶融粘度が高く押出成形性に優れている。
さらに、樹脂組成物7を成形温度200℃の条件で、ラボプラストミルを用いてTダイ法によりLDPE樹脂との3層共押出フィルム(LDPE(15)/樹脂組成物7(60)/LDPE(15)(括弧内は各層の厚み(μm))に成形した。
得られた共押出フィルムに、実施例22と同様にして透明蒸着PET/LDPEの2層フィルムを積層して平パウチを作成し、容器内酸素濃度を追跡した。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】酸素吸収性樹脂のTgと酸素吸収量の関係を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記モノマー(A)および(B)を重合させて得ることができる、ガラス転移温度が−8℃〜15℃の酸素吸収性樹脂:
モノマー(A):下記(i)及び(ii)からなる群より選ばれるモノマー
(i)下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているモノマー、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素2重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子が複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基と結合しており、該電子供与性置換基と複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基とがシス位に位置しているモノマー;
モノマー(B):芳香環を有するモノマー。
【請求項2】
モノマー(A)がジカルボン酸又はその誘導体である請求項1記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項3】
モノマー(B)が芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体、芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体のうち少なくとも1種である請求項1又は2記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項4】
少なくともモノマー(A)、モノマー(B)およびモノマー(C)としてジオールを共重合させて得ることができるコポリエステルである請求項1〜3のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項5】
少なくとも下記モノマー(A)〜(D)を共重合させて得ることができるコポリエステルである酸素吸収性樹脂:
モノマー(A):下記(i)及び(ii)からなる群より選ばれるモノマー
(i)下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸又はその誘導体、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素2重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子が複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基と結合しており、該電子供与性置換基と複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基とがシス位に位置しているジカルボン酸又はその誘導体;
モノマー(B):芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体、芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体のうち少なくとも1種;
モノマー(C):ジオール;
モノマー(D):脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれるモノマー。
【請求項6】
ガラス転移温度が−8℃〜15℃である、請求項5記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項7】
モノマー(A)がテトラヒドロフタル酸又はその誘導体若しくはテトラヒドロ無水フタル酸又はその誘導体を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項8】
モノマー(A)がメチルテトラヒドロフタル酸又はその誘導体若しくはメチルテトラヒドロ無水フタル酸又はその誘導体を含む、請求項7記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項9】
モノマー(A)が4−メチル−Δ3−テトラヒドロフタル酸又はその誘導体若しくは4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸又はその誘導体を含む、請求項8記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項10】
モノマー(A)がcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロフタル酸又はその誘導体若しくはcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸又はその誘導体を含む、請求項8又は9記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項11】
モノマー(B)がフタル酸又はその誘導体を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項12】
モノマー(B)がテレフタル酸又はその誘導体を含む、請求項11記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項13】
モノマー(C)が1,4−ブタンジオールを含む、請求項4〜12のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項14】
モノマー(C)が1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールを含む、請求項4〜13のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項15】
モノマー(D)がアジピン酸を含む、請求項5〜14のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項16】
モノマー(D)がコハク酸を含む、請求項5〜15のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項17】
酸化触媒としての遷移金属塩を含有しない請求項1〜16のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂を含む酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項19】
さらに、熱可塑性樹脂を含む請求項18記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項20】
前記熱可塑性樹脂がポリエチレンである、請求項19記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項21】
さらに、可塑剤を含む請求項1〜20のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂又は請求項18〜21のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層を有する酸素吸収性容器。
【請求項23】
酸素吸収層の外側に酸素バリア層を有する請求項22記載の酸素吸収性容器。

【図1】
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【公開番号】特開2008−38126(P2008−38126A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305369(P2006−305369)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】