説明

重合体およびその組成物を調製する方法

【課題】低い多分散性、低温粘度特性、高温粘度特性、剪断安定性の少なくとも1つの特性を有しかつ分散および/または粘度調整特性を与えることができる重合体;およびそれらの組成物を調製する方法の提供。
【解決手段】本発明は、以下の工程を使用して重合体を調製する方法を提供する:(1)遊離ラジカル開始剤;チオカルボニルチオ基および遊離ラジカル脱離基を含有する連鎖移動剤;およびラジカル重合可能モノマーを接触させて、重合体鎖を形成する工程;および(2)工程(1)の前記重合体鎖を、多価カップリング剤、重合禁止剤、グラフト化アシル化剤、アミンおよび潤滑粘性のあるオイルの少なくとも1種と接触させる工程。本発明は、さらに、この重合体の組成物および使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、チオカルボニル化合物の存在下にて重合体を調製する方法に関する。本発明はまた、この重合体を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
塗装組成物および/または潤滑粘性のあるオイルにおけるレオロジー調整剤(または粘度調整剤)あるいは分散剤としての重合体の使用は、周知である。典型的には、レオロジー調整特性を有する重合体は、25,000またはそれより高い数平均分子量を有する。対照的に、分散特性を有する重合体は、25,000未満の数平均分子量を有する。
【0003】
所望の低温および高温粘度特性および他の粘度特性を与えるために潤滑粘性のあるオイルにおける粘度調整剤または分散剤を使用することは、周知である。粘度調整剤の例には、ポリメタクリレート、ポリ(無水マレイン酸−co−スチレンスチレンエステル)またはポリオレフィンが挙げられる。粘度調整剤の性能は、多数の要因により決定され、これらには、(1)バランスのとれた粘度;(2)剪断安定性;(3)低温粘度特性;および(4)分子量により、決定される。もし、通常の直鎖粘度調整剤の分子量が高くなるなら、その粘度は、高くなるのに対して、剪断安定性が低下し、逆もまた正しい。しばしば、これにより、追加量の低温粘度調整剤を必要とする調合物が生じる。しかしながら、追加量の低温粘度調整剤の存在は、低温粘度特性に対して悪影響を及ぼす。
【0004】
特許文献1は、ミクロゲルおよび星形重合体を調製する方法を開示している。この方法は、原子移動ラジカル重合および可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を包含する。このミクロゲルは、マルチ−オレフィン性モノマーと反応させてプレポリマーから形成され、形成された生成物は、10〜10の重量平均分子量を有する。
【0005】
特許文献2(Visgerら)は、少なくとも3個の重合体アームを含有する放射状重合体を調製する安定化遊離ラジカル重合方法を開示している。この方法では、その重合体の末端に活性重合部位を維持するために、安定化遊離ラジカル剤が使用される。この方法は、さらに、少なくとも1種のカップリング剤を加えて、この重合体のその末端にある活性重合部位と反応させて放射状重合体を形成する工程を包含する。
【0006】
特許文献3および特許文献4は、リビング特性を有する遊離ラジカル重合方法を開示しており、これは、ジチオ連鎖移動剤を使用する。この方法は、形成される重合体の多分散性および分子量を制御する。これらの重合体は、自動車および再仕上げ被覆における結合剤として、有用である。
【0007】
特許文献5は、遊離ラジカルモノマーを重合するための連鎖移動剤としてのS,S’−ビス−(α,α−二置換−α−酢酸)−トリチオカーボネート化合物を開示している。これらのトリチオカーボネート化合物は、遊離ラジカル重合をリビングにするだけでなくテレケリック重合体を形成するのに適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第00/02939号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,369,162号明細書
【特許文献3】国際公開第98/01478号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,642,318号明細書
【特許文献5】米国特許第6,596,899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
低い多分散性、改良された低温粘度特性、改良された高温粘度特性、改良された剪断安定性の少なくとも1つを有しかつ分散および/または粘度調整特性を与えることができる重合体があれば、有利となる。本発明は、低い多分散性、低温粘度特性、高温粘度特性、剪断安定性の少なくとも1つの特性を有しかつ分散および/または粘度調整特性を与えることができる重合体;およびそれらの組成物を調製する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、重合体を調製する方法を提供し、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)以下の(i)、(ii)および(iii)を接触させて、重合体鎖を形成する工程:
(i)遊離ラジカル開始剤;
(ii)チオカルボニルチオ基および遊離ラジカル脱離基を含有する連鎖移動剤;および
(iii)ラジカル重合可能モノマー;
ここで、工程(1)の該プロセスは、リビング特性を備えた制御されたラジカル重合プロセスである;そして工程(1)から得た該重合体鎖の少なくとも約50%は、多価カップリング剤と反応できる反応性末端基を含有する;
および必要に応じて、工程(2)または(3)の1つまたはそれ以上:
(2)工程(1)の該重合体と多価カップリング剤とを接触させて、星形重合体を形成する工程;
(3)工程(1)または工程(2)の該重合体と重合禁止剤とを接触させる工程;および
(4)工程(1)または工程(2)または工程(3)の該重合体と潤滑粘性のあるオイルとを混合して、潤滑組成物を形成する工程。
【0011】
本発明は、さらに、以下を含有する潤滑組成物を提供する:
(a)可逆的付加−開裂連鎖移動制御ラジカル重合プロセスに由来の重合体;および
(b)潤滑粘性のあるオイル。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
重合体を調製する方法であって、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)以下の(i)、(ii)および(iii)を接触させて、重合体鎖を形成する工程:
(i)遊離ラジカル開始剤;
(ii)チオカルボニルチオ基および遊離ラジカル脱離基を含有する連鎖移動剤;および
(iii)ラジカル重合可能モノマー;
ここで、工程(1)の該プロセスは、リビング特性を備えた制御されたラジカル重合プロセスである;そして工程(1)から得た該重合体鎖の少なくとも約50%は、多価カップリング剤と反応できる反応性末端基を含有する;
および必要に応じて、工程(2)または(3)の1つまたはそれ以上:
(2)工程(1)により調製された該重合体と多価カップリング剤とを接触させて、星形重合体を形成する工程;
(3)工程(1)または工程(2)により調製された該重合体と重合禁止剤とを接触させる工程;および
(4)工程(1)または工程(2)または工程(3)により調製された該重合体と潤滑粘性のあるオイルとを混合して、潤滑組成物を形成する工程。
(項目2)
前記連鎖移動剤が、式(Ia)または(Ib)で表わされる、項目1に記載の方法:
【化1】


ここで、
Zは、別個に、水素、ハロゲン(例えば、塩素、臭素またはヨウ素)、ヒドロカルビル基、あるいは該チオカルボニル基の炭素に直接結合されたヘテロ原子を含有する基であって、該基は、酸素、窒素、リンまたはイオウを含むヘテロ原子を含有する;
Z’は、別個に、重合体鎖を含む部分、ヒドロカルビル基、ヘテロ原子であって、該ヘテロ原子は、酸素、窒素、リンまたはイオウを含み、さらに、必要に応じて置換した直鎖または分枝アルキル基および/またはアリール基に取り込まれた少なくとも1個の炭素原子を含有する;
Qは、共役基である;
qは、0〜10の整数である;
pは、1〜200の整数である;そして
Rは、遊離ラジカル重合を開始できる遊離ラジカル脱離基である、
方法。
(項目3)
連鎖移動剤が、0に等しいqを有し、そして該連鎖移動剤が、式(Ic)または(Id)で表わされる、項目2に記載の方法:
【化2】


ここで、
Zは、別個に、水素、ハロゲン(例えば、塩素、臭素またはヨウ素)、ヒドロカルビル基、あるいは該チオカルボニル基の炭素に直接結合されたヘテロ原子を含有する基であって、該基は、酸素、窒素、リンまたはイオウを含むヘテロ原子を含有する;
Z’は、別個に、重合体鎖を含む部分、ヒドロカルビル基、ヘテロ原子であって、該ヘテロ原子は、酸素、窒素、リンまたはイオウを含み、さらに、必要に応じて置換した直鎖または分枝アルキル基および/またはアリール基に取り込まれた少なくとも1個の炭素原子を含有する;
pは、1〜200の整数である;そして
Rは、遊離ラジカル重合を開始できる遊離ラジカル脱離基である、
方法。
(項目4)
連鎖移動剤が、式(Ie)または(If)で表わされる、項目2に記載の方法:
【化3】


ここで、
Jは、別個に、シアノ、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、およびカルボン酸アミドまたはイミドを含む基である;
は、別個に、ヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、必要に応じて、Rで規定された官能基で置換されている;そして
は、別個に、シアノ基、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、ヨウ素または臭素)、またはヒドロカルビル基(例えば、直鎖または分枝アルキル基、あるいは1個〜50個の炭素原子を含有するアリール基)である、
方法。
(項目5)
前記連鎖移動剤が、−S−C(=S)−基を含み、ジェミナルジメチル基が、該イオウに直接結合されている、項目1に記載の方法。
(項目6)
項目1に記載の方法により得られる、直鎖または星形重合体。
(項目7)
前記星形重合体が、工程(1)の前記生成物の重合によりまず最初にアームを形成し、続いて、該アームを前記多価カップリング剤と接触させることにより、形成される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記星形重合体が、ブロック−アーム星形重合体またはヘテロ−アーム星形重合体である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記星形重合体が、約5000〜約5,000,000のMを有するか、あるいは、該星形重合体が、約10,000〜約400,000のMを有する、項目1に記載の方法。
(項目10)
工程(1)の前記重合体が、約2未満の多分散性を有する、項目1に記載の方法。
(項目11)
工程(2)の前記重合体が、約2より高い多分散性を有する、項目1に記載の方法。
(項目12)
工程(1)の前記重合体鎖が、約1.5未満の多分散性を有する、項目1に記載の方法。
(項目13)
工程(1)の前記重合体鎖が、約5,000〜約300,000のMを有する、項目1に記載の方法。
(項目14)
工程(2)の前記重合体が、約3またはそれ以上の多分散性を有する、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記星形重合体が、該星形重合体上に存在している約2個〜約50個のアームを有する、項目1に記載の方法。
(項目16)
さらに、工程(1)の前記重合体鎖と窒素含有モノマーとを反応させる工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記窒素含有モノマーが、それぞれ、式(IIa)または(IIb)のヒドロカルビル置換アクリルアミドまたはヒドロカルビル置換メタクリルアミドまたは(メタ)アクリレートモノマーを含む、項目16に記載の方法:
【化4】


ここで、
Qは、水素またはメチルであり、一実施態様では、Qは、メチルである;
各Rは、別個に、水素、あるいは1個〜8個または1個〜4個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である;
各Rは、別個に、水素、あるいは1個〜2個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、一実施態様では、各Rは、水素である;そして
gは、1〜6の整数である、
方法。
(項目18)
前記窒素含有モノマーが、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、およびN−ビニルカプロラクタム、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノブチルアクリルアミドジメチルアミンプロピル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドまたはそれらの混合物である、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記多価カップリング剤が、以下の一般式である、項目1に記載の方法;
W−(Y)
ここで、
Yは、アルキルラジカルまたは酸素中心ラジカルと共有結合的に反応できる官能性である;
Wは、ヒドロカルビル基である;そして
n=2またはそれ以上である、
方法。
(項目20)
前記多価カップリング剤が、架橋(メタ)アクリル酸モノマーまたは架橋ジビニル非アクリルモノマーである、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記多価(メタ)アクリル酸モノマーが、ポリアミンのポリオールまたはメタクリルアミドのアクリレートまたはメタクリレートエステルである、項目1に記載の組成物。
(項目22)
前記多価不飽和(メタ)アクリル酸モノマーが、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、マンニトールヘキサアクリレート、4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、分子量200〜4000のポリエチレングリコールのビス−アクリレートおよびメタクリレート、ポリカプロラクトンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサメチレンジオールジアクリレートまたはヘキサメチレンジオールジメタクリレートあるいはアルキレンビス−(メタ)アクリルアミドを含む、項目1に記載の組成物。
(項目23)
前記ラジカル重合可能モノマーが、(メタ)アクリル酸モノマー、ビニル芳香族モノマー、または(メタ)アクリル酸モノマー以外のアシル化剤である、項目1に記載の方法。
(項目24)
少なくとも2種のモノマーから誘導された星形重合体を含有する組成物であって、該組成物は、以下を含有する:
(a)少なくとも50重量%のC12〜C15アルキル置換(メタ)アクリレートモノマー;および
(b)50重量%未満の該C12〜C15アルキル(メタ)アクリレートモノマー以外のアルキル(メタ)アクリレートモノマーであって、該アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、1個〜30個の炭素原子を含有する;
(c)該組成物は、必要に応じて、20重量%未満のスチレンを含有する;そして
(d)該組成物は、必要に応じて、10重量%未満のアルキルメタクリルアミドを含有する;
および潤滑粘性のあるオイル。
(項目25)
前記星形重合体が、約7個またはそれ以上のアームを含有する、項目24に記載の組成物。
(項目26)
以下を含有する、潤滑組成物:
(a)可逆的付加−開裂連鎖移動制御ラジカル重合プロセスに由来の重合体;および
(b)潤滑粘性のあるオイル。
(項目27)
前記潤滑粘性のあるオイルが、変速機油、ギヤ油、油圧作動液または内燃機関潤滑剤である、項目26に記載の潤滑組成物。
(項目28)
前記組成物が、濃縮物の形態である、項目26に記載の潤滑組成物。
(項目29)
前記組成物が、低温粘度特性、高温粘度特性、剪断安定性、粘度指数改善またはそれらの混合を含む少なくとも1つの特性を与える、項目26に記載の組成物の使用。
(項目30)
さらに、金属不活性化剤、清浄剤、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、分散剤粘度調整剤、極圧剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、腐食防止剤、発泡防止剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の性能添加剤を含有する、項目26に記載の組成物。
(項目31)
前記可逆的付加−開裂連鎖移動制御ラジカル重合体が、前記潤滑組成物の1重量%〜50重量%で存在している;前記潤滑粘性のあるオイルが、該潤滑組成物の30重量%〜98.9重量%で存在している;そして他の性能添加剤が、該潤滑組成物の0.01重量%〜20重量%で存在している、項目26に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、上記重合体を調製する方法を提供する。
【0013】
一実施態様では、本発明は、重合体を調製する方法を提供し、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)以下の(i)、(ii)および(iii)を接触させて、重合体鎖を形成する工程:
(i)遊離ラジカル開始剤;
(ii)チオカルボニルチオ基および遊離ラジカル脱離基を含有する連鎖移動剤;および
(iii)ラジカル重合可能モノマー;
ここで、工程(1)の該プロセスは、リビング特性を備えた制御されたラジカル重合プロセスである;そして工程(1)から得た該重合体鎖の少なくとも約50%は、多価カップリング剤と反応できる反応性末端基を含有する;
および工程(2)〜(4)の少なくとも1つ:
(2)工程(1)の該重合体と多価カップリング剤とを接触させて、星形重合体を形成する工程;
(3)工程(1)または工程(2)の該重合体と重合禁止剤とを接触させる工程;
(4)工程(1)または工程(2)または工程(3)の該重合体と潤滑粘性のあるオイルとを混合して、潤滑組成物を形成する工程であって、
ここで、該連鎖移動剤には、ジチオ安息香酸クミル、ジ−またはトリチオベンゾエート、ジチオフタレートまたはジチオアセテートを含まない。
【0014】
一実施態様では、本発明は、重合体を調製する方法を提供し、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)以下の(i)、(ii)および(iii)を接触させて、重合体鎖を形成する工程:
(i)遊離ラジカル開始剤;
(ii)式(Ie)または(If)で表わされるチオカルボニルチオ基および遊離ラジカル脱離基を含有する連鎖移動剤:
【0015】
【化5】

ここで、RおよびRおよびJは、以下で定義されている;および
(iii)ラジカル重合可能モノマー;
ここで、工程(1)の該プロセスは、リビング特性を備えた制御されたラジカル重合プロセスである;そして工程(1)から得た該重合体鎖の少なくとも約50%は、多価カップリング剤と反応できる反応性末端基を含有する;
および工程(2)〜(4)の少なくとも1つ:
(2)工程(1)の該重合体と多価カップリング剤とを接触させて、星形重合体を形成する工程;
(3)工程(1)または工程(2)の該重合体と重合禁止剤とを接触させる工程;
(4)工程(1)または工程(2)または工程(3)の該重合体と潤滑粘性のあるオイルとを混合して、潤滑組成物を形成する工程。
【0016】
必要に応じて、この方法は、さらに、工程(1)および/または(2)において、重合のための媒体を包含する。一実施態様では、この方法は、工程(2)を省き、形成された重合体は、直鎖重合体である。
【0017】
一実施態様では、この星形重合体は、アルカリ金属またはケイ素を含まず、そしてアニオン重合法またはグループ移動重合法(group−transfer polymerization methods)により調製されない。
【0018】
この重合体を調製する方法は、一実施態様では、可逆的付加−開裂連鎖移動(以下、RAFTと呼ぶ)制御ラジカル重合方法であり、これは、リビング特性を有すると考えられている。
【0019】
RAFT技術の詳細な説明およびその重合機構は、「Handbook of Radical Polymerisation」(Krzysztof Matyjaszewski and Thomas P.Davis著、Copyright 2002、John Wiley and Sons Incにより出版)(以下、「Matyjaszewskiら」と呼ぶ)の12章、629〜690ページで示されている。RAFT重合の機構は、Matyjaszewskiらのセクション12.4.4の664〜665ページで示されている。提案された機構の別の詳細な説明は、PCT出願98/01478の8ページ、25行目〜9ページ、30行目で示されている。
【0020】
このRAFT重合方法は、伝播ラジカル(a propagating radical)が発生し、これは、重合体鎖を形成する。工程(1)から得られた重合体鎖の少なくとも50%は、他のモノマー(例えば、多価カップリング剤)と反応できる反応性末端基を含有する。別の実施態様では、工程(1)から得られた重合体鎖の少なくとも60%は、反応性末端基を含有し、別の実施態様では、工程(1)から得られた重合体鎖の少なくとも70%は、反応性末端基を含有する。全般的に、この方法は、鎖平衡化(chain
equilibration)のための機構を提供し、そしてリビング特性を有する重合から成る。
【0021】
一実施態様では、この重合方法は、可逆的付加−開裂連鎖移動(RAFT)により、この場合、その星形重合体アームは、工程(1)のプロセスに続いて工程(1)のアームを多価カップリング剤と接触することにより、形成される。
【0022】
一般に、この多価カップリング剤は、完全には消費され得ないが、この星形重合体の形成は、多価カップリング剤の残留濃度がそれ以上変わらないとき、完了する。あるいは、この反応の完了は、形成された星形重合体の量またはサイズを測定することにより、決定され得る。これは、公知のレオロジー技術またはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、決定され得る。
【0023】
工程(1)および/または(2)のプロセスは、一実施態様では、15℃〜200℃、別の実施態様では、35℃〜180℃、別の実施態様では、60℃〜150℃、別の実施態様では、80℃〜130℃の範囲の温度で、実行される。工程(3)のプロセスは、一実施態様では、20℃〜260℃、別の実施態様では、60℃〜150℃の温度で、実行され得る。工程(4)のプロセスは、一実施態様では、15℃〜200℃、別の実施態様では、15℃〜180℃、別の実施態様では、20℃〜150℃、別の実施態様では、20℃〜130℃の範囲の温度で、実行される。
【0024】
この重合方法は、バッチ操作、半バッチ操作、連続工程、フィード工程またはバルク工程として、実行され得る。この方法は、乳濁液、溶液または懸濁液中でなされ得る。
【0025】
本発明は、さらに、上記プロセスにより得られる(または得ることができる)直鎖または星形重合体を提供する。星形重合体上のアームの数は、多数のパラメータにより制御され得、これらには、工程(1)から得られる物質の量、これらの鎖のリビング特性、およびカップリング剤の量が挙げられる。当業者は、工程(1)から得た物質とカップリング剤との比が高くなると、少ないアーム(従って、低い数平均分子量)を有する星形重合体が生じることを理解する。アームの数は、多価カップリング剤の量を変えることにより、反応温度を高くすることにより、または工程(2)中に追加遊離ラジカル開始剤を加えることにより、制御され得る。一実施態様では、得られた星形重合体上のアームの数は、最終星形重合体の分子量をアームの分子量で割ることにより決定され得、カップリング前に除去されたアリコートから決定され得る。
【0026】
一実施態様では、この星形重合体のアームは、ダイブロックAB型共重合体、別の実施態様では、トリブロックABA型共重合体、別の実施態様では、テーパードブロック重合体、別の実施態様では、交互ブロック重合体である。
【0027】
上記プロセスにより得られた重合体は、一実施態様では、ブロック−アーム星形重合体、別の実施態様では、ヘテロ−アーム星形重合体である。ブロック共重合体は、しばしば、制御された重合中にてモノマーを順次加えることにより、調製される。例えば、上記工程(1)のラジカル重合可能モノマーは、2種またはそれ以上あるいは3種またはそれ以上の重合可能モノマーを含み得、続いて、他のモノマーを引き続いて加えて、直鎖ブロック共重合体が調製される。工程(2)では、直鎖ブロック共重合体は、カップリングされて、ブロック−アーム星形共重合体が形成される。理想的なブロック共重合体を製造するプロセスは、一般に、次のモノマーを加える前に、その重合において、実質的に全ての第一モノマーが消費される必要があることが理解される。第一モノマーの消費前に次のモノマーを加えると、テーパードブロック共重合体が形成される。テーパード共重合体は、重合体鎖の長さが変わる組成を有する。例えば、このテーパード共重合体は、一端にて、比較的に純粋な第一モノマーから構成され、また、他端にて、比較的に純粋に第二モノマーから構成される。この重合体の中央は、これらの2種のモノマーの勾配組成になりやすい。このテーパードブロック共重合体はまた、工程(2)においてカップリングされ得、ブロック−アーム星形重合体が形成される。
【0028】
このブロック−アーム星形重合体は、2種またはそれ以上のモノマーから誘導された重合体アームを含有し、この場合、これらのモノマーは、同じアーム上にある。このブロック−アーム星形重合体のさらに詳細な説明は、「Anionic polymerisation,Principles and Practical Applications」(Henry Hsieh and Roderic Quirkによる)(Marcel Dekker,Inc,New York,1996)(以下、Hsiehらと呼ぶ)の13章(pp.333−368)で示されている。
【0029】
このヘテロ−アームまたは「ミクト−アーム(mikto−arm)」星形重合体は、Hsiehらで規定されているように、分子量、組成またはそれらの両方が互いに変わり得るアームを含有し、例えば、所定星形重合体のアームの一部は、1つの重合体型であり、一部は、第二重合体型である。さらに複雑なヘテロ−アーム星形重合体は、3種またはそれ以上の重合体アームの一部とカップリング剤とを組み合わせることにより、形成され得る。一実施態様では、ヘテロ−アーム星形重合体は、工程(2)の前に、リビング特性を備えた重合体のいくつかのバッチを組み合わせることにより、調製され得る。
【0030】
一般に、工程(1)が実行され得る時間長は、この多価カップリング剤と接触させる前に、重合体鎖へのラジカル重合可能モノマーの高い変換を可能にするのに十分である。残留しているモノマーは、そのカップリングモノマーと共重合されて、そのコアの架橋密度を低下させる。そのコアの架橋密度が星形重合体は、ラジカル重合可能モノマーの重合体鎖への高い変換の前に、このラジカル重合可能モノマーに多価カップリング剤を接触させることにより、得られる。この多価カップリング剤を加えるときをモニターするために、公知の分析技術(例えば、GPCまたはIR)が使用され得る。上記プロセスにより得られた重合体は、一実施態様では、単独重合体であり、別の実施態様では、共重合体である。
【0031】
工程(1)の前記重合体鎖は、一実施態様では、1000〜500,000、別の実施態様では、5,000〜300,000、別の実施態様では、10,000〜100,000の重量平均分子量Mを有する。工程(2)の星形重合体は、一実施態様では、5000〜5,000,000、別の実施態様では、10,000〜600,000、別の実施態様では、10,000〜400,000、別の実施態様では、15,000〜400,000の重量平均分子量Mを有する。一実施態様では、このMは、10,000〜20,000の範囲である。
【0032】
工程(1)の上記プロセスにより得られた重合体は、一実施態様では、1.5未満、別の実施態様では、1.4未満、別の実施態様では、1.3未満(例えば、1.25〜1または1.2〜1.1)の多分散性(PDI、すなわち、M/M)を有する。
【0033】
一実施態様では、この星形重合体は、2より高い、一実施態様では、3またはそれ以上、別の実施態様では、4またはそれ以上、別の実施態様では、5またはそれ以上の多分散性を有する。この多分散性の上限は、30または20または15または10を含み得る。適当な範囲の例には、2〜30、3〜15または3〜10が挙げられる。
【0034】
工程(2)の後に得られた重合体は、しばしば、工程(1)から得られた未カップリング重合体鎖の量が変わることが原因で、1.5に等しいかそれより高い多分散性を有する。一実施態様では、工程(2)の星形重合体は、2未満の多分散性を有する。一実施態様では、2種またはそれ以上の星形重合体は、カップリングされると考えられ(これはまた、星−星カップリング(star−to−star coupling)と呼ばれる)、その多分散性は、2に等しいかそれより高い。この星形カップリング重合体の多分散性は、部分的には、工程(1)から得られた未カップリング重合体鎖の量が変わること、および/または工程(2)の星−星カップリングが原因である。
【0035】
この多分散性はまた、一実施態様では、重合前に連鎖移動剤を加えることにより、別の実施態様では、重合の過程において連鎖移動剤を加えることにより、制御され得る。
【0036】
一実施態様では、本明細書中で記述された方法により調製される重合体は、星形重合体および直鎖重合体の混合物を含む。該混合物の多分散性は、上記範囲と同じまたは類似している。
【0037】
(連鎖移動剤)
RAFT重合プロセスは、一般に、チオカルボニルチオ基を含有する連鎖移動剤を使用する。この連鎖移動剤は、0.05〜10,000または0.1〜5000の移動定数を有し得る。一実施態様では、チオカルボニルチオ基および遊離ラジカル脱離基を含有する連鎖移動剤は、式(Ia)〜(Ig)で表わされる:
【0038】
【化6】

ここで、
Zは、別個に、水素、ハロゲン(例えば、塩素、臭素またはヨウ素)、ヒドロカルビル基、あるいは該チオカルボニル基の炭素に直接結合されたヘテロ原子を含有する基であって、該基は、酸素、窒素、リンまたはイオウを含むヘテロ原子を含有する;
Z’は、別個に、重合体鎖を含む部分、ヒドロカルビル基、ヘテロ原子であって、該ヘテロ原子は、酸素、窒素、リンまたはイオウを含み、さらに、必要に応じて置換した直鎖または分枝アルキル基および/またはアリール基に取り込まれた少なくとも1個の炭素原子を含有する;
Qは、共役基である;
qは、0〜10、0〜5、0〜3または0〜2または0、1〜10、1〜5、1〜3または1〜2の整数である;
pは、1〜200、1〜100、1〜50または1〜10の整数である;
Jは、別個に、シアノ、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、およびカルボン酸アミドまたはイミドを含む基である;
Rは、遊離ラジカル重合を開始できる遊離ラジカル脱離基である;
各Rは、別個に、ヒドロカルビル基であり、これは、必要に応じて、Rで規定された官能基で置換されている;そして
は、別個に、シアノ基、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、ヨウ素または臭素)、あるいはヒドロカルビル基(例えば、直鎖または分枝アルキル基あるいはアリール基)であり、該ヒドロカルビル基は、1個〜50個、1個〜20個、1個〜10個または1個〜6個の炭素原子を含有する。
【0039】
一実施態様では、この連鎖移動剤が式(Ie)で表わされるとき、Rの炭素は、得られるラジカルの安定化を助けると考えられるので、チオエステルのイオウに直接結合される。一実施態様では、該炭素は、トリアルキル置換炭素(例えば、gem−ジメチル炭素)である。別の実施態様では、該炭素は、置換シアノまたは芳香族基の一部であり、Jとは無関係である。
【0040】
一実施態様では、ジチオエステル連鎖移動剤は、以下で表わされる:
【0041】
【化7】

ここで、R’は、R、RまたはRとして上で定義されている。
【0042】
トリチオカーボネート(−S−C(=S)−S−)(例えば、構造1fまたは1g)が好ましく使用されるか、あるいは、Zは、構造1aまたは1cにおけるイオウ含有化合物であるか、あるいは、Z’は、構造1bまたは1dにおけるイオウ含有化合物である。遊離ラジカル脱離基RまたはRは、遊離ラジカルを安定化すべきである。第三級炭素基(例えば、アルキル基のジェミナルジメチル置換)は、さらに好ましい。このアルキル基は、さらに、カルボキシ基(例えば、カルボン酸)、エステル、またはアミド官能性での置換を含み得る。
【0043】
一実施態様では、この基は、さらに、−S−C(=S)−基を含み、ジェミナルジメチル基は、そのイオウに直接結合されている。一実施態様では、ここで、R基の少なくとも1個は、そのイオウに直接結合されたgemジメチル部分を含有する。一実施態様では、ジメチル基を含有するR基は、さらに、カルボキシ基を含有する。
【0044】
式(Ia)〜(Id)から誘導される適当な連鎖移動剤の例には、米国特許第6,642,318号の28欄、50行目〜37欄、20行目で開示されたものが挙げられる。特定の化合物の例には、1−(2−ピロリジノン)カルボジチオ酸ベンジル、(1,2−ベンゼンジカルボキサミド)カルボジチオ酸ベンジル、1−ピロールカルボジチオ酸2−シアノプロパ−2−イル、1−ピロールカルボジチオ酸2−シアノブタ−2−イル、1−イミダゾールカルボジチオ酸ベンジル、ジチオカルバミン酸N,N−ジメチル−S−(2−シアノプロパ−2−イル)、S−ベンジルジチオカルバミン酸N,N−ジエチル、1−(2−ピロリドン)カルボジチオ酸シアノメチル、ジチオ安息香酸クミル、S−(2−エトキシカルボニルプロパ−2−イル)ジチオカルバミン酸N,N−ジエチル、キサントゲン酸O−エチル−S−(1−フェニルエチル)、S−(2−(エトキシカルボニル)プロパ−2−イル)キサントゲン酸O−エチル、S−(2−シアノプロパ−2−イル)キサントゲン酸O−エチル、S−(2−シアノプロパ−2−イル)キサントゲン酸O−エチル、S−シアノメチルキサントゲン酸O−エチル、S−ベンジルキサントゲン酸O−フェニル、S−ベンジルキサントゲン酸O−ペンタフルオロフェニル、3−ベンジルチオ−5,5−ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1−チオンまたは3,3−ジ(ベンジルチオ)プロパ−2−エンジチオ酸ベンジルが挙げられる。
【0045】
式(Ie)または(If)から誘導される連鎖移動剤の例には、S,S’−ビス−(α、α’−二置換−α’’−酢酸)−トリチオカーボネート、S,S’−ビス−(α、α’−二置換−α’’−酢酸)−トリチオカーボネートまたはs−アルキル−s’−(−(α、α’−二置換−α’’−酢酸)−トリチオカーボネートが挙げられる。さらに詳細な説明は、米国特許第6,596,899号の2欄、38〜64行目および実施例1〜3で教示されている。
【0046】
本発明のジチオエステル連鎖移動剤の適当な例のさらに詳細な説明は、PCT出願98/01478の24ページ、32行目〜26ページ、9行目および実施例1〜18で教示されている。例には、ジチオ安息香酸、4−クロロジチオ安息香酸、ジチオ安息香酸ベンジル、ジチオ安息香酸1−フェニルエチル、ジチオ安息香酸2−フェニルプロパ−2−イル、ジチオ安息香酸1−アセトキシエチル、ヘキサキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス−(2−(チオベンゾイルチオ)プロパ−2−イル)ベンゼン、ジチオ安息香酸1−(4−メトキシフェニル)エチル、ジチオ酢酸ベンジル、ジチオ酢酸エトキシカルボニルメチル、ジチオ安息香酸2−(エトキシカルボニル)プロパ−2−イル、ジチオ安息香酸2,4,4−トリメチルペンタ−2−イル、ジチオ安息香酸2−(4−クロロフェニル)プロパ−2−イル、ジチオ安息香酸3−ビニルベンジル、ジチオ安息香酸4−ビニルベンジル、ジエトキシホスフィニルジチオギ酸S−ベンジル、トリチオ過安息香酸第三級ブチル、4−クロロジチオ安息香酸2−フェニルプロパ−2−イル、1−ジチオナフタレン酸2−フェニルプロパ−2−イル、ジチオ安息香酸4−シアノペンタン酸、テトラチオテレフタル酸ジベンジル、トリチオ炭酸ジベンジル、ジチオ安息香酸カルボキシメチル、またはジチオベンゾエート末端基を有するポリ(エチレンオキシド)が挙げられる。
【0047】
一実施態様では、このジチオエステル連鎖移動剤は、単独で使用され、別の実施態様では、ジチオエステル連鎖移動剤の混合物が使用される。
【0048】
本発明で存在している連鎖移動剤の量は、一実施態様では、モノマー1モルあたり、0.001〜0.10モル、別の実施態様では、モノマー1モルあたり、0.001〜0.05モル、さらに別の実施態様では、モノマー1モルあたり、0.001〜0.01または0.03モルである。存在している連鎖移動剤の量の例には、モノマー1モルあたり、0.002〜0.006モル、0.003〜0.008モルまたは0.003〜0.005モルが挙げられる。
【0049】
(遊離ラジカル開始剤)
本発明の遊離ラジカル開始剤は、公知であり、そしてペルオキシ化合物、過酸化物、ヒドロペルオキシド、およびアゾ化合物が挙げられ、これらには、熱的に分解して、遊離ラジカルを供給する。他の適当な例は、J.Brandrup and E.H.Immergut,Editor,「Polymer Handbook」、2nd edition,John Wiley and Sons,New York(1975),II−1〜II−40ページで記載されている。遊離ラジカル開始剤の例には、遊離ラジカル発生試薬から誘導されたものが挙げられ、例には、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、メタクロロ過安息香酸t−ブチル、過酸化t−ブチル、第二級ブチルペルオキシジカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化t−アミル、過酸化クミル、t−ブチルパーオクトエート(peroctoate)、m−クロロ過安息香酸t−ブチル、アゾビスイソバレロニトリルまたはそれらの混合物が挙げられる。一実施態様では、この遊離ラジカル発生試薬は、過酸化t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化t−アミル、過酸化クミル、t−ブチルパーオクトエート、m−クロロ過安息香酸t−ブチル、アゾビスイソバレロニトリルまたはそれらの混合物である。市販の遊離ラジカル開始剤には、Ciba Specialty Chemicals製のTrigonox(商標)−21が挙げられる。
【0050】
この遊離ラジカル開始剤は、一実施態様では、工程(1)(iii)のモノマーの全重量を基準にして、0.01〜10重量パーセント、別の実施態様では、工程(1)(iii)のモノマーの全重量を基準にして、0.05〜2重量パーセントで、存在している。遊離ラジカル開始剤とジチオエステル連鎖移動剤とのモル比は、一実施態様では、0.2〜2:1、別の実施態様では、0.8:1〜1.2:1、さらに別の実施態様では、1.1〜1.2:1、例えば、0.8〜0.9:1である。他の実施態様では、遊離ラジカル開始剤とジチオエステル連鎖移動剤とのモル比は、0.05〜1:1、または0.2:1〜0.8:1、または0.3〜0.5:1である。
【0051】
(ラジカル重合可能モノマー)
このラジカル重合可能モノマーには、(メタ)アクリル酸モノマー、窒素含有モノマー、不飽和無水物またはビニル芳香族モノマーが挙げられる。
【0052】
本明細書中で使用する「(メタ)アクリル酸モノマー」には、アクリル酸、アクリル酸のエステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸のエステル、メタクリルアミド、およびメタクリロニトリルが挙げられる。一実施態様では、この(メタ)アクリル酸モノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリルアミド、または(メタ)アクリロニトリルである。一実施態様では、この(メタ)アクリル酸モノマーは、(メタ)アクリル酸から誘導された(メタ)アクリル酸エステル(これは、しばしば、メタクリレートと呼ばれる)またはアクリル酸のエステル(これは、しばしば、アクリレートと呼ばれる)である。
【0053】
(メタ)アクリル酸モノマーのエステルについて、一実施態様では、そのエステル基のアルコール誘導部分に存在している炭素原子の数は、1個〜50個、別の実施態様では、2個〜30個、別の実施態様では、6個〜26個、さらに別の実施態様では、8個〜18個である。(メタ)アクリル酸モノマーのエステルは、しばしば、8個〜10個の炭素原子、12個〜15個の炭素原子または16個〜18個の炭素原子を含有するエステル基のアルコール誘導部分との混合物として、市販されている。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステルの例は、飽和アルコールから誘導されたもの(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸2−第三級ブチルヘプチル、(メタ)アクリル酸3−イソプロピルヘプチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸5−メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸5−メチルトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸5−イソプロピルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸4−第三級ブチルオクタデシル、(メタ)アクリル酸5−エチルオクタデシル、(メタ)アクリル酸3−イソプロピルオクタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸セチルエイコシル、(メタ)アクリル酸ステアリルエイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシルおよび/または(メタ)アクリル酸エイコシルテトラトリアコンチル);不飽和アルコールから誘導された(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸オレイル);および(メタ)アクリル酸シクロアルキル(例えば、(メタ)アクリル酸3−ビニル−2−ブチルシクロヘキシルまたは(メタ)アクリル酸ボルニル)が挙げられる。
【0055】
長鎖アルコール誘導基を有するエステル化合物は、例えば、(メタ)アクリレートと長鎖脂肪アルコールとの反応により得られ、この反応では、エステル(例えば、種々の鎖長のアルコール基を有する(メタ)アクリレート)の混合物が一般に得られる。これらの脂肪アルコールには、MonsantoのOxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900およびOxo Alcohol(登録商標)1100;ICIのAlphanol(登録商標)79;CondeaのNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610およびAlfol(登録商標)810;Ethyl CorporationのEpal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810;Shell AGのLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびDobanol(登録商標)25 L;Condea Augusta(現在は、Sasol)、MilanのLial(登録商標)125;Henkel KGaA(現在は、Cognis)のDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)だけでなく、Ugine KuhlmannのLinopol(登録商標)7−11およびAcropol(登録商標)91が挙げられる。
【0056】
このビニル芳香族モノマーには、スチレン、置換スチレンおよびそれらの混合物が挙げられる。置換スチレンモノマーは、官能基(例えば、ヒドロカルビル基、ハロ−、アミノ−、アルコキシ−、カルボキシ−、ヒドロキシ−、スルホニル基またはそれらの混合物)を含む。これらの官能基には、この芳香族モノマーのビニル基に対してオルト位置、メタ位置またはパラ位置に位置しているものが挙げられ、そのオルト位置またはパラ位置に位置している官能基は、特に有用である。一実施態様では、これらの官能基は、そのパラ位置に位置している。アルコキシ官能基は、1個〜10個の炭素原子、一実施態様では、1個〜8個の炭素原子、別の実施態様では、1個〜6個の炭素原子、さらに別の実施態様では、1個〜4個の炭素原子を含有し得る。1個〜4個の炭素原子を含有するアルコキシ官能基は、低級アルコキシ基と呼ばれている。
【0057】
置換スチレンモノマーのヒドロカルビル基は、一実施態様では、1個〜30個の炭素原子、別の実施態様では、1個〜20個の炭素原子、別の実施態様では、1個〜15個の炭素原子、別の実施態様では、1個〜10個の炭素原子を含有する。ヒドロカルビル基を含有する適当な置換スチレンの例には、アルファ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン(これは、しばしば、ビニルトルエンと呼ばれている)、パラ−第三級ブチルスチレン、アルファ−エチルスチレン、パラ−低級アルコキシスチレンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
(窒素含有化合物での官能化)
一実施態様では、この重合体は、窒素含有化合物(例えば、窒素含有モノマー、あるいは窒素含有モノマー以外のアミンまたはアミド)とさらに反応されて、分散剤を形成する。適当なアミンの例には、アミノヒドロカルビル置換アミン(例えば、4−アミノジフェニルアミン)、ヒドロカルビル置換モルホリン(例えば、4−(3−アミノプロピル)モルホリンまたは4−(2−アミノエチル)モルホリン)が挙げられる;そして窒素含有モノマーには、(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル(例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノアルキル)が挙げられる。一実施態様では、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノアルキルのアルキル基は、プロピルであり、別の実施態様では、エチルである。
【0059】
(メタ)アクリル酸モノマーのアミドには、アクリルアミドまたはメタクリルアミド(例えば、ヒドロカルビル置換アクリルアミドまたはヒドロカルビル置換メタクリルアミド)が挙げられる。一実施態様では、このヒドロカルビル基中に存在している炭素原子の数は、1個〜40個、別の実施態様では、1個〜20個、別の実施態様では、2個〜16個、さらに別の実施態様では、2個〜8個である。
【0060】
一実施態様では、このヒドロカルビル置換アクリルアミドまたはヒドロカルビル置換メタクリルアミドは、それぞれ、式(IIa)または(IIb)の(メタ)アクリレートモノマーである:
【0061】
【化8】

ここで、
Qは、水素またはメチルであり、一実施態様では、Qは、メチルである;
各Rは、別個に、水素、あるいは1個〜8個または1個〜4個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である;
各Rは、別個に、水素、あるいは1個〜2個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、一実施態様では、各Rは、水素である;そして
gは、1〜6または1〜3の整数である。
【0062】
適当な窒素含有モノマーまたはヒドロカルビル置換アクリルアミドまたはヒドロカルビル置換メタクリルアミドの例には、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、およびN−ビニルカプロラクタム、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリル酸モノマー以外のアシル化剤に由来のラジカル重合可能モノマーには、マレイン酸またはその無水物、フマル酸、イタコン酸またはその無水物、あるいはそれらの混合物が挙げられる。
【0064】
一実施態様では、この重合体は、さらに、アシル化剤およびアミンでグラフトされて、分散剤粘度調整剤(これは、しばしば、DVMと呼ばれる)が形成され、これは、分散剤特性および粘度調整特性の両方を示すので、そう呼ばれている。
【0065】
一実施態様では、この多価(メタ)アクリル酸モノマーは、ポリオールのアクリル酸またはメタクリル酸エステル、あるいはポリアミンのメタクリルアミドである。
【0066】
一実施態様では、この重合体を調製するのに使用される(メタ)アクリル酸モノマーは、10個〜15個の炭素原子を含有するエステルアルキル基を含み、これは、この星形重合体にて、一実施態様では、これらのアルキル基の少なくとも50%、別の実施態様では、これらのアルキル基の少なくとも60%、別の実施態様では、これらのアルキル基の少なくとも70%、別の実施態様では、これらのアルキル基の少なくとも80%で、存在している。
【0067】
(多価カップリング剤)
本発明は、必要に応じて、さらに、多価カップリング剤またはそれらの混合物を含む。本発明の多価カップリング剤には、以下の一般式のものが挙げられる;
W−(Y)
ここで、
Yは、アルキルラジカルまたは酸素中心ラジカルと共有結合的に反応できる官能性である;
Wは、ヒドロカルビル基である;そして
n=2またはそれ以上、3またはそれ以上、あるいは4またはそれ以上である。
【0068】
一実施態様では、Yは、オレフィン反応部位である。一実施態様では、この多価カップリング剤は、多官能性モノマー(または架橋モノマー)である。例には、多価(メタ)アクリル酸モノマーまたは多価ジビニル非アクリルモノマーが挙げられる。
【0069】
一実施態様では、この多価ジビニル非アクリルモノマーは、ジビニルベンゼンである。一実施態様では、この多価(メタ)アクリル酸モノマーは、ポリオールまたはポリアミンのアクリル酸またはメタクリル酸エステル(例えば、ポリアミンのアミド(例えば、ポリアミンのメタクリルアミドまたはアクリルアミド))である。一実施態様では、この多価(メタ)アクリル酸モノマーは、アクリル酸またはメタクリル酸ポリオール、あるいはポリアミンの縮合生成物である。
【0070】
このポリオールは、一実施態様では、2個〜20個の炭素原子、別の実施態様では、3個〜15個の炭素原子、別の実施態様では、4個〜12個の炭素原子を含有する;そして存在しているヒドロキシル基の数は、一実施態様では、2個〜10個、別の実施態様では、2個〜4個、別の実施態様では、2個である。ポリオールの例には、エチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、アルカンジオール(例えば、1,6−ヘキサンジオール)、またはトリオール(例えば、トリメチロールプロパン、オリゴマー化トリメチロールプロパン(例えば、Perstorp Polyolsから販売されているBoltorn(登録商標)物質))が挙げられる。ポリアミンの例には、ポリアルキレンポリアミン、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンエキサミンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0071】
この多価不飽和(メタ)アクリル酸モノマーの例には、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、マンニトールヘキサアクリレート、4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、分子量200〜4000のポリエチレングリコールのビス−アクリレートおよびメタクリレート、ポリカプロラクトンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサメチレンジオールジアクリレートまたはヘキサメチレンジオールジメタクリレートあるいはアルキレンビス−(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0072】
多価カップリング剤の量は、アームとして予め調製された重合体をコア(これは、単量体、オリゴマーまたは重合体形状で、このカップリング剤を含有する)上にカップリングして星形重合体を得るのに適当な量であり得る。上記のように、適当な量は、いくつかの変動が関与し得るとしても、最小限の実験を使って、当業者により容易に決定され得る。例えば、もし、過剰なカップリング剤を使用するなら、あるいは、もし、この重合体アームの形成に由来する過剰な未反応モノマーが系内に残留しているなら、星形の形成よりも架橋が起こり得る。典型的には、重合体アームとカップリング剤とのモル比は、50:1〜1.5:1(または1:1)、または30:1〜2:1、または10:1〜3:1、または7:1〜4:1、または4:1〜1:1)であり得る。他の実施態様では、重合体アームとカップリング剤とのモル比は、50:1〜0.5:1、または30:1〜1:1、または7:1〜2:1であり得る。所望の比は、このアームの長さを考慮して調節され得、長いアームは、時には、短いアームよりも多くのカップリング剤を許容するか必要とする。典型的には、調製された物質は、潤滑粘性のあるオイルに可溶である。
【0073】
(任意の重合禁止剤)
本発明の一実施態様では、この方法は、重合禁止剤を加える工程を包含する。この禁止剤は、さらなるラジカル反応を遅らせるか停止する。これは、星形−星形カップリング、または所望の物質が調製された後に起こり得る他の反応を制限するのに有用である。重合禁止剤の例には、ヒドロキノンモノメチルエーテルまたはそれらの誘導体が挙げられる。他の公知の種類の重合禁止剤には、ジアリールアミン、イオウカップリングオレフィン、またはヒンダードフェノールが挙げられる。
【0074】
(重合用の任意の媒体)
本発明は、必要に応じて、重合用の媒体を含む。あるいは、この重合は、この媒体が実質的に存在しない状態(すなわち、遊離ラジカル開始剤、ジチオエステル連鎖移動剤およびラジカル重合可能モノマーの純粋な反応混合物)で、実行され得る。
【0075】
本明細書中で使用する「実質的に存在しない」との用語は、この重合用の媒体が、一実施態様では、存在しているモノマーの量の5重量%未満、別の実施態様では、存在しているモノマーの量の2重量%未満、別の実施態様では、存在しているモノマーの量の0.5重量%未満、さらに別の実施態様では、存在しているモノマーの量の0重量%未満であることを意味する。
【0076】
この重合用の媒体は、一般に、それらの反応物が、しばしば、実質的に不活性で通常液状の有機希釈剤に溶解性であるものである。例には、潤滑粘性のあるオイル(例えば、ハロゲン含量が低いオイル)またはアルキル芳香族化合物(例えば、トルエン、キシレンおよびナフタレン)が挙げられる。ラジカル条件下にて水素原子を容易に移動する溶媒は、好ましくは、避けられる。これらの生成物は、好ましくは、この反応媒体に溶解性である。いくつかの実施態様では、この重合用の媒体は、0ppm〜3000ppm、あるいは1ppm〜2000ppmまたは10ppm〜1000ppmの範囲のイオウ含量を有する。
【0077】
一実施態様では、工程(2)により調製される重合体は、以下の重合体アームを含む:
(a)アルキル基の少なくとも50%〜100%で存在している10個〜15個の炭素原子を含有するアルキルエステル基;
(b)アルキル基の0%〜20%、30%または40%で存在している6個〜9個の炭素原子を含有するアルキルエステルアルキル基;
(c)アルキル基の0%〜18%または20%または30%で存在している1個〜5個の炭素原子を含有するアルキルエステルアルキル基;
(d)アルキル基の0%〜2%で存在している16個〜30個(または16個〜18個)の炭素原子を含有するアルキルエステル基;および
(e)重合体アームの0重量%〜10重量%で存在している窒素含有モノマー。
【0078】
一実施態様では、工程(2)により調製される重合体は、以下の重合体アームを含む:
(a)アルキル基の少なくとも50%〜100%で存在している10個〜18個の炭素原子を含有するアルキルエステル基;
(b)アルキル基の0%〜20%、30%または40%で存在している6個〜9個の炭素原子を含有するアルキルエステルアルキル基;
(c)アルキル基の0%〜18%または20%または30%で存在している1個〜5個の炭素原子を含有するアルキルエステルアルキル基;
(d)アルキル基の0%〜2%で存在している19個〜30個の炭素原子を含有するアルキルエステル基;および
(e)重合体アームの0重量%〜10重量%で存在している窒素含有モノマー。
【0079】
(潤滑粘性のあるオイル)
この潤滑油組成物には、潤滑粘性のある天然油または合成油、水素化分解、水素化、ハイドロフィニッシングから誘導されたオイル、および未精製油、精製油および再精製油、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0080】
天然油には、動物油および植物油、鉱油およびそれらの混合物が挙げられる。合成油には、炭化水素油、シリコンベース油、リン含有酸の液状エステルが挙げられる。合成油は、フィッシャー−トロプシュ気液合成手順だけでなく他の気液オイルにより、生成され得る。一実施態様では、本発明の重合体組成物は、気液オイルで使用するとき、有用である。しばしば、フィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスは、ヒドロ異性化(hydroisomerised)され得る。
【0081】
潤滑粘性のあるオイルはまた、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesで指定されたように、定義され得る。一実施態様では、この潤滑粘性のあるオイルは、API 第I族、第II族、第III族、第IV族、第V族、第VI族またはそれらの混合物、別の実施態様では、API 第I族、第II族、第III族またはそれらの混合物を含む。もし、この潤滑粘性のあるオイルがAPI 第II族、第III族、第IV族、第V族または第VI族オイルであるなら、その潤滑油の40重量%まで、別の実施態様では、最大で5重量%までのAPI 第I族オイルが存在し得る。
【0082】
この潤滑粘性のあるオイルは、一実施態様では、この組成物の15重量%〜99.9重量%、別の実施態様では、この組成物の30重量%〜98.9重量%、別の実施態様では、この組成物の40重量%〜97.9重量%、別の実施態様では、この組成物の50重量%〜94.5重量%で、存在している。
【0083】
(本発明の潤滑組成物)
本発明は、さらに、以下を含有する潤滑組成物を提供する:
(a)可逆的付加−開裂連鎖移動制御ラジカル重合プロセスに由来の重合体;および
(b)潤滑粘性のあるオイル。
【0084】
一実施態様では、本発明は、さらに、直鎖(メタ)アクリレートまたはスチレンを含有する重合体を含む組成物を提供する。一実施態様では、本発明は、さらに、7個またはそれ以上のアーム、別の実施態様では、8個またはそれ以上のアーム、別の実施態様では、10個またはそれ以上のアーム、別の実施態様では、12個またはそれ以上のアーム、さらに別の実施態様では、16個またはそれ以上のアームを含有する(メタ)アクリレート星形重合体を含む組成物を提供する。この(メタ)アクリレート 星形重合体上に存在しているアームの数は、一実施態様では、200本未満、別の実施態様では、100本未満、別の実施態様では、40本未満、別の実施態様では、30本未満、別の実施態様では、20本未満である。この星形重合体上に存在しているアームの数に適当な範囲の例には、2本〜50本、2本〜25本、3本〜15本、3本〜30本、10本〜50本または12本〜40本が挙げられる。
【0085】
一実施態様では、本発明の方法は、少なくとも2種のモノマーから誘導された星形重合体を調製し、該組成物は、以下を含有する:
(a)少なくとも50重量%のC12〜C15アルキル置換(メタ)アクリレートモノマー;および
(b)50重量%未満の該C12〜C15アルキル(メタ)アクリレートモノマー以外のアルキル(メタ)アクリレートモノマーであって、該アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、1個〜30個の炭素原子を含有する;
(c)必要に応じて、20重量%未満のスチレン;および
(d)必要に応じて、10重量%未満のアルキルメタクリルアミド。
【0086】
一実施態様では、この(メタ)アクリレート 星形重合体は、水素化共役ジエン、フマル酸ジアルキル、N−アルキルマレイミドおよびN−アリールマレイミドの少なくとも1種を含まない。
【0087】
(他の性能添加剤)
本発明の組成物は、必要に応じて、さらに、少なくとも1種の他の性能添加剤を含む。他の性能添加剤には、金属不活性化剤、清浄剤、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、分散剤粘度調整剤、極圧剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、腐食防止剤、発泡防止剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤およびそれらの混合物が挙げられる。
【0088】
存在している他の性能添加剤を合わせた全量は、オイルを含まない基準で、この組成物の0重量%〜25重量%、一実施態様では、0.01重量%〜20重量%、別の実施態様では、0.1重量%〜15重量%、さらに別の実施態様では、0.5重量%〜10重量%の範囲である。これらの他の性能添加剤の1種またはそれ以上が存在し得るものの、これらの他の性能添加剤は、互いに対して異なる量で存在していることが通例である。
【0089】
酸化防止剤には、ジチオカルバミン酸モリブデン、硫化オレフィン、ヒンダードフェノール、ジフェニルアミンが挙げられる;清浄剤には、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属と1種またはそれ以上のフェネート、硫化フェネート、スルホネート、カルボン酸、リン含有酸、モノ−および/またはジチオリン酸、サリゲニン、サリチル酸アルキル、サリキサレートとの中性またはオーバーベース化、ニュートン性または非ニュートン性塩基性塩が挙げられる。分散剤には、N−置換長鎖アルケニルスクシンイミドだけでなく、それらの種々の後処理したバージョンが挙げられる;後処理分散剤には、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物およびリン化合物との反応によるものが挙げられる。
【0090】
耐摩耗剤には、チオリン酸金属、特に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、リン酸エステルまたはそれらの塩、ホスファイト;およびリン含有カルボン酸エステル、エーテルおよびアミドのような化合物が挙げられる;耐スカッフィング剤には、有機スルフィドおよびポリスルフィド(例えば、ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−第三級ブチルポリスルフィド、ジ−第三級ブチルスルフィド、硫化ディールス−アルダー付加物またはアルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカーバメート)が挙げられる;そして極圧(EP)剤には、塩素化ワックス、有機スルフィドおよびポリスルフィド(例えば、ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジテルペン、硫化テルペン、および硫化ディールス−アルダー付加物)が挙げられる。リン硫化炭化水素、チオカルバミン酸金属(例えば、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛)およびバリウムヘプチルフェノール二酸もまた、本発明の組成物で使用され得る。
【0091】
さらに、本発明はまた、摩擦調整剤を含有し得、これらには、脂肪アミン、エステル(例えば、ホウ酸塩グリセロールエステル、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ酸塩脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸塩アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物、アルキルリン酸のアミン塩が挙げられる;粘度調整剤には、スチレン−ブタジエンの水素化共重合体、エチレン−プロピレン重合体、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレン重合体、水素化イソプレン重合体、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエン共重合体、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸アルキル、および無水マレイン酸−スチレン共重合体のエステルが挙げられる;分散剤−粘度調整剤(これは、しばしば、DVMと呼ばれる)には、官能化ポリオレフィン(例えば、無水マレイン酸とアミンとの反応生成物で官能化したエチレン−プロピレン共重合体、アミンで官能化したポリメタクリレート)、またはアミンと反応させたエステル化スチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0092】
他の性能添加剤(例えば、腐食防止剤であって、これには、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸またはその無水物および脂肪酸(例えば、オレイン酸)とポリアミンとの縮合生成物が挙げられる;金属不活性化剤であって、これには、ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾトリアゾールの誘導体が挙げられる;消泡剤であって、これには、アクリル酸エチルとアクリル酸2−エチルヘキシルおよび必要に応じて酢酸ビニルとの共重合体が挙げられる;解乳化剤であって、これには、リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)重合体が挙げられる;流動点降下剤であって、これには、無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドが挙げられる;およびシール膨潤剤であって、これには、Exxon Necton−37(商標)(FN 1380)およびExxon Mineral Seal Oil(FN 3200)が挙げられる)もまた、本発明の組成物で使用され得る。
【0093】
(工業用途)
本発明は、上記プロセスにより星形重合体を生成する種々の用途に有用である。例えば、変速機油、ギヤ油、油圧作動液または内燃機関潤滑剤において上記組成物を使用すると、許容できる低温および高温粘度特性、剪断安定性、分散性、粘度指数向上特性またはそれらの混合を含む少なくとも1つの特性が得られる。分散性には、また、分散剤粘度調整剤特性が挙げられる。
【0094】
一実施態様では、この潤滑組成物は、ギヤ油であり、別の実施態様では、自動変速機油であり、別の実施態様では、クランク室潤滑のための内燃機関油である。
【0095】
この重合体は、潤滑粘性のあるオイル中にて、一実施態様では、この組成物の0.1重量%〜60重量%、別の実施態様では、この組成物の1重量%〜50重量%、別の実施態様では、この組成物の2重量%〜45重量%、別の実施態様では、この組成物の5重量%〜40重量%で、存在している。
【0096】
もし、本発明が、濃縮物(これは、追加オイルと混ぜ合わされ得、全部または一部、完成潤滑剤を形成する)の形状であるなら、潤滑粘性のあるオイル中の本発明の重合体および他の任意の性能添加剤と希釈油との比は、80:20〜10:90(重量基準)の範囲を含む。
【0097】
この重合体が調製されて潤滑粘性のあるオイルと混合されないとき、その重合体は、塗装用途で使用され得る。塗装用途には、腐食および酸化防止剤、耐久性剤、顔料、相溶性剤(compatibilisers)、熱可塑性エラストマー、分散剤またはレオロジー制御剤、金属箔および他の添加剤が挙げられる。
【0098】
以下の実施例は、本発明を例示する。これらの実施例は、全てを網羅するものではなく、本発明の範囲を限定するとは解釈されない。
【実施例】
【0099】
(実施例1〜16−RAFT重合による狭多分散性直鎖PMAs)
=モノマーのg/(開始剤のモル数+CTAのモル数)の式に従って、開始剤および連鎖移動剤の量を変えることにより、異なる重量平均分子量(Mw)およびモノマー組成の一連のPMAs(ポリメタクリレート)を調製する。室温で、28.3L/hrで流れる窒素入口、中速機械攪拌機、熱電対および水冷式冷却器を備え付けた容器にて、モノマーであるTrigonox(商標)−21(開始剤)、CTA(連鎖移動剤)およびオイル(30重量%)を混ぜ合わせ、そして混合を確実にするために、Nブランケット下にて、20分間撹拌する。窒素の流れを14.2L/hrまで低下させ、その混合物を、4時間にわたって、90℃まで加熱するように設定する。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および多分散性(PDI)(これらは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した)について得られた結果を、表1で示す:
【0100】
【表1】

表1の脚注:
は、CTA/T−21の比である;
12〜15MAは、C12〜C15メタクリル酸アルキルである;
MMAは、メタクリル酸メチルである;
2−EHMAは、メタクリル酸2−エチルヘキシルである;
CTAは、連鎖移動剤である;
T−21は、Trigonox(商標)−21である;
CDBは、ジチオ安息香酸クミルである;そして
12−TTCは、2−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニル−2−メチル−プロピオン酸である。
【0101】
(実施例17〜22−RAFT重合による狭多分散性直鎖ブロック/テーパード共重合体)
モノマーを2つの部分で加える(この場合、第二モノマー部分はまた、追加の少量(開始剤仕込みの約10重量%)の遊離ラジカル開始剤(表2を参照)を含有する)こと以外は、実施例1〜16と類似のプロセスにより、ブロック内で変わるモノマー組成および異なる全分子量を有する一連のブロック共重合体を調製する。実施例17〜19では、第一部分は、C12〜15MAを含有し、これを、4時間重合させた後、第二モノマーを加えて、ブロック/テーパード共重合体を形成させる。実施例20〜21では、第一部分は、C12〜15MAおよび2−EHMAの混合物を含有し、これを重合させると、ランダム第一ブロックが形成される。第二モノマー部分としてスチレンを加えると、ブロック/テーパード共重合体が形成される。モノマーの第一部分がC12〜15MAおよびMMAの混合物であること以外は、実施例20〜21と類似の様式で、実施例22を調製する。
【0102】
【表2】

表2の脚注:
PSは、ポリスチレンである;
PC12〜15MAは、ポリC12−15メタクリル酸アルキルである;
P(C12〜15MA/MMA)は、C12−15メタクリル酸アルキルとメタクリル酸メチルとの共重合体である;
12〜15MA/2−EHMAは、C12〜15メタクリル酸アルキルとメタクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体である;
PEHMAは、メタクリル酸2−エチルヘキシルの重合体である;そして
PMMAは、ポリメタクリル酸メチルである。
【0103】
(実施例23〜36 DVBでカップリングされたポリメタクリレートのランダム星形共重合体)
以下の表3で示すように、開始剤およびジビニルベンゼン(DVB)の量を変えることにより、異なる全分子量の一連のポリメタクリレート星形重合体を調製する。28.3L/hrで流れる窒素入口、中速機械攪拌機、熱電対および水冷式冷却器を備え付けた容器にて、室温で、C12〜15メタクリレート(70重量%)、メタクリル酸2−エチルヘキシル(30重量%)、Trigonox(商標)−21(1当量)、ジチオ安息香酸クミル(2当量)およびオイル(26重量%)を混ぜ合わせ、そして混合を確実にするために、Nブランケット下にて、20分間撹拌する。窒素の流れを14.2L/hrまで低下させ、その混合物を、4時間にわたって、90℃まで加熱するように設定する。この反応フラスコにDVBを充填し、その混合物を、90℃で、最長で12時間撹拌する。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、多分散性、星形重合体上のアームの数、星形重合体に変換された重合体アームの量に基づいた星形重合体への転化率について得られた結果を、表3で示す:
【0104】
【表3】

ここで、は、DVB:重合体の比であり、ここで、**は、星形重合体への重合体鎖の転化率である。
【0105】
上記表に含まれない実験では、理由は明白ではないが、明らかに非常に高分子量の油不溶性物質が形成された。
【0106】
(実施例37〜41 HDDMAとカップリングされたポリメタクリレートのランダム星形共重合体)
この方法は、モノマー組成が表4で示されるように変えられ、カップリング剤が1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)であり、それ以上のカップリングを阻止するためにヒドロキノンモノメチルエーテル(HQMME)が加えられること以外は、実施例23〜36と類似している。全ての実施例についてのHDDMA:重合体の比は、7:1であり、そして得られた結果を、表5で示す:
【0107】
【表4】

【0108】
【表5】


【0109】
(実施例42〜45:HDDMAとのブロック/テーパード星形共重合体)
この方法は、モノマー組成が表6で示すように変えられ、そしてモノマーが、実施例17〜22で記述されているように、2つの部分で加えられること以外は、実施例37〜41と類似している。全ての実施例についてのHDDMA:重合体の比は、7:1であり、そして得られた結果を、表7で示す:
【0110】
【表6】

【0111】
【表7】


【0112】
(実施例46:アミン官能性を有する星形重合体)
この方法は、共重合体が、C12〜C15メタクリレート(78.2重量%)、メタクリル酸メチル(20.1重量%)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(1.8重量%)のモノマーから形成されること以外は、実施例23〜36で記述したものと同じである。表8は、形成された重合体についての特性データを提示する:
【0113】
【表8】


【0114】
(実施例47〜59:エチレングリコールジメタクリレートを使って調製されたRAFT重合体)
DVBに代えて、エチレングリコールジメタクリレートを使用すること以外は、実施例1〜14と類似の方法により、実施例47〜59を調製する。得られた星形重合体におけるエチレングリコールジメタクリレートと重合体アームとのモル%比は、特に明記しない限り、3:1である。典型的には、これらの重合体は、基油/希釈油の30〜40重量%で、調製される。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、多分散性(PDI)(これらは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した)、星形重合体上のアームの平均数および星形重合体への転化率について得られた結果を、表9で示す:
【0115】
【表9】

表8の脚注
1 得られた星形重合体における1:1のモル%比のエチレングリコールジメタクリレートと重合体アームとから調製された重合体;
2 得られた星形重合体における4:1のモル%比のエチレングリコールジメタクリレートと重合体アームとから調製された重合体;
3 得られた星形重合体における7:1のモル%比のエチレングリコールジメタクリレートと重合体アームとから調製された重合体;
Aは、メタクリル酸ラウリルである;
Bは、無水マレイン酸である;
Cは、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドである;
Dは、メタクリル酸ジメチルアミノエチルである;そして
**は、星形重合体への重合体鎖の転化率である。
【0116】
(潤滑組成物 実施例1〜59)
実施例1〜59の重合体を、それぞれ、4mm/sのPetroCanada基油(これは、0.2重量%の高分子流動点降下剤を含有する)とブレンドすることにより、潤滑組成物1〜59を調製する。この潤滑組成物は、8〜12mm/sのオイルブレンド粘度範囲を有する。ASTM方法D445(100℃)およびD2983(−40℃)を使用して、それぞれ、動粘度(KV)およびブルックフィールド粘度(BV)を測定する。ASTM方法D2270を使用することにより、粘度指数(VI)もまた測定する。この潤滑組成物はまた、CEC DIN 51350 Part 6試験手順で使用されるような四球摩耗試験機器を使用して、KRLテーパードベアリング剪断安定性試験で決定されるような剪断にかける。この機器を、5000N負荷を使って、140℃で、1450rpmで、20時間運転する。この試験から得られた粘度データは、ASTM方法D445で記載されている。実施例23〜36について得られた結果を、表10および11で示す。
【0117】
【表10】

【0118】
【表11】


【0119】
(自動変速機油潤滑組成物1〜59)
7.0〜7.2mm/sの100℃でのオイルブレンド粘度まで重合体を潤滑粘性のあるオイルにブレンドすることにより、自動変速機油潤滑組成物1〜59(ATF実施例)を調製する。このオイルは、さらに、市販の分散剤−阻害剤パッケージを含有する。潤滑組成物1〜46について記述したようにして、粘度測定実験および剪断実験を実行する。これらの組成物のいくつかについて得られた結果を、表12および13に提示する。
【0120】
【表12】

【0121】
【表13】


【0122】
(ギヤ油潤滑組成物1〜59)
実施例1〜59の重合体を、それぞれ、ギヤ油流体にブレンドすることにより、ギヤ油潤滑組成物1〜59を調製する。
【0123】
要約すると、本発明は、分散剤および粘度調整特性(低温粘度特性および剪断安定性を含めて)を有する重合体およびそれらの組成物を調製する方法を提供する。
【0124】
上で引用した各文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。実施例を除いて、他に明らかに指示がなければ、物質の量を特定している本記述の全ての数値量、反応条件、分子量、炭素原子数などは、「約」という用語により修飾されることが分かる。他に指示がなければ、本明細書中で言及した各化学物質または組成物は、その異性体、副生成物、誘導体、および市販等級の物質中に存在すると通常考えられているような他のこのような物質を含有し得る、市販等級の物質であると解釈されるべきである。しかしながら、各化学成分の量は、他に指示がなければ、市販等級の物質に通例存在し得る溶媒または希釈油を除いて、提示されている。本明細書中で示した上限および下限の量、範囲および比は、別個に組み合わされ得ることが分かる。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と併用され得る。本明細書中で使用する「本質的になる」との表現には、問題の組成物の基本的で新規な特性に著しく影響を与えない物質が含まれていてもよい。本明細書中で使用するように、属(またはリスト)のいずれかの要素は、請求項から除外される場合がある。
【0125】
本明細書中で使用する「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」との用語は、通常の意味で使用され、これは、当業者に周知である。具体的には、それは、分子の残部に直接結合した炭素原子を有しそして炭化水素的性質または主として炭化水素的な性質を有する基を意味する。ヒドロカルビル基の例には、以下が挙げられる:
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族置換基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環族置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、および芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基および脂環族置換された芳香族置換基などだけでなく、環状置換基。ここで、この環は、分子の他の部分により、完成されている(例えば、2個の置換基は、一緒になって、環を形成する);
置換された炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基を含有する置換基。この非炭化水素基は、本発明の文脈では、置換基の主な炭化水素的性質を変化させない(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ);および
ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈内では、主として炭化水素的性質を有しながら、環または鎖の中に存在する炭素以外の原子を有するが、その他は炭素原子で構成されている;そして
ヘテロ原子には、イオウ、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、このヒドロカルビル基では、各10個の炭素原子に対し、2個以下の非炭化水素置換基、1局面では、1個以下の非炭化水素置換基が存在する。典型的には、このヒドロカルビル基には、このような非炭化水素置換基は存在しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2012−41559(P2012−41559A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−259388(P2011−259388)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2007−538126(P2007−538126)の分割
【原出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】