説明

重合体の製造方法、重合体及びその用途

【課題】潤滑油成分として好適に用いられる重合体を提供すること。
【解決手段】重合体が、ビニルエ−テル化合物の重合体又は共重合体であって、重合体の重量平均分子量が300〜50000であり、かつ、分子量分布のピ−ク強度の最大値に該当する分子量の3倍以上の分子量を有する重合体の含有量が全重合体の1重量%以下である重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な重合体の製造方法、主にその製造方法によって製造される重合体及びその重合体の用途に関する。さらに詳しくは、連鎖移動剤の供給方法を調整して重合反応を行う重合体の製造方法、主としてそのような方法によって製造される分子量分布が狭い重合体、及びその重合体の潤滑油への用途に関する。
【背景技術】
【0002】
モノマーを重合してオリゴマ−やポリマ−などの重合体を製造する場合、分子量分布が狭い重合体であることが好ましい場合がある。分子量分布が広い重合体を産業界で、種々の用途に実用化すると、必要な性能を発揮しがたいことがあるからである。例えば、分子量分布が広い重合体を冷凍機用潤滑油に使用すると、潤滑油と冷媒であるフロン等との溶解性が低下する。
【0003】
従って、目的の重合体の分子量分布が狭く、シャ−プな重合体の製造は極めて重要な技術課題であり、その技術開発が要望されている。そのような分子量分布が狭い重合体を製造する方法には、触媒の種類や量を選定する、連鎖移動剤の量を制御する、重合停止剤の使用方法を調節する、あるいは反応温度、反応時間を制御するなどの方法が考えられる。
【0004】
しかし、これらいずれの方法を用いても、工業的規模で分子量分布を狭く制御することは難しく、特に製造方法によらず分子量分布の狭い重合体を製造できるポリアルキレングリコ−ルなどの例が知られているのみである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分子量分布が狭くシャ−プな重合体の製造方法、主としてそのような方法で製造される重合体、及びその重合体の性質を利用した潤滑油への用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、モノマーを重合して得られる重合体の分子量分布が重合時に使用する連鎖移動剤の供給方法を調整することによって制御できること、分子量分布が特定条件を満たす重合体は潤滑油に使用した場合に特有な効果を発揮すること等を見いだし、かかる知見に基づいて完成したものである。従って、本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
〔1〕触媒の存在下でモノマーを逐次供給しながら重合する重合体の製造方法において、連鎖移動剤を逐次供給することを特徴とする重合体の製造方法。
〔2〕連鎖移動剤の供給開始から供給終了までの期間が、モノマー供給期間の1/2以上の期間である上記〔1〕に記載の重合体の製造方法。
〔3〕連鎖移動剤を予めモノマーと混合し、連鎖移動剤とモノマーとの混合物を逐次反応系に供給することを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の重合体の製造方法。
【0008】
〔4〕連鎖移動剤を気化させて、反応系の気相部に供給することを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕のいずれかに記載の重合体の製造方法。
〔5〕モノマーが一般式(1)で表される炭化水素系ビニル化合物から選ばれた1種又は2種以上の化合物である上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1〜R4は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)
〔6〕モノマーが一般式(2)で表されるビニルエ−テル化合物から選ばれた1種又は2種以上の化合物である上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R5〜R7はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R8は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭化水素基、pはその平均値が0〜10の数を示し、R5〜R9は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよく、またR8Oが複数ある場合には、複数のR8Oは同一でも異なっていてもよい。)
〔7〕モノマーが、一般式(2)で表されるビニルエ−テル化合物から選ばれた1種又は2種以上の化合物、及び一般式(1)で表される炭化水素系ビニル化合物から選ばれた1種又は2種以上の化合物である上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、R5〜R7はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R8は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭化水素基、pはその平均値が0〜10の数を示し、R5〜R9は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよく、またR8Oが複数ある場合には、複数のR8Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R1〜R4は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)
〔8〕重合反応がカチオン重合反応である上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の重合体の製造方法。
〔9〕重合体の重量平均分子量が300〜50000であり、重合体の分子量分布(〔重量平均分子量〕/〔数平均分子量〕)が2.5以下である上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【0017】
〔10〕重合体の分子量分布曲線におけるピ−ク強度の最大値に該当する分子量の3倍以上の分子量を有する重合体の含有量が全重合体の1重量%以下である上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の重合体の製造方法。
〔11〕上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法により重合し、次いで水素化する重合体の製造方法。
【0018】
〔12〕重合体がビニルエ−テル化合物の重合体又は共重合体であって、重合体の重量平均分子量が300〜50000であり、かつ、分子量分布曲線のピ−ク強度の最大値に該当する分子量の3倍以上の分子量を有する重合体の含有量が全重合体の1重量%以下である重合体。
〔13〕上記〔12〕に記載の重合体を水素化して得られる重合体。
【0019】
〔14〕重合体の構成単位が一般式(3)で表され、又は重合体の構成単位が一般式(3)及び(4)で表され、その末端が一般式(5)又は(6)及び一般式(7)又は(8)で表される上記〔13〕に記載の重合体。
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、R5〜R7はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R8は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭化水素基、pはその平均値が0〜10の数を示し、R5〜R9は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよく、またR8Oが複数ある場合には、複数のR8Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R1〜R4は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、R5〜R9及びpは前記一般式(3)と同じ)
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、R1〜R4は前記一般式(4)と同じ)
【0028】
【化9】

【0029】
(式中、R5〜R9及びpは前記一般式(3)と同じ)
【0030】
【化10】

【0031】
(式中、R1〜R4は前記一般式(4)と同じ)
〔15〕上記〔10〕又は〔11〕に記載された製造方法によって製造された重合体又は、上記〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載の重合体を主成分とする圧縮式冷凍機用潤滑油。
【発明の効果】
【0032】
本発明の効果は以下のとおりである。
(1)触媒の存在下でモノマーを逐次供給しながら重合する重合体の製造方法において、連鎖移動剤を逐次供給して重合体を製造すると、その重合体は分子量分布が狭く、シャ−プになる。
(2)重合体がポリビニルエ−テル化合物の重合体又は共重合体であって、重合体の重量平均分子量が300〜50000であり、かつ、分子量分布曲線のピ−ク強度の最大値に該当する分子量の3倍以上の分子量を有する重合体の含有量が全重合体の1重量%以下である重合体を主成分とする冷凍機用潤滑油は、冷媒との溶解性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
〔重合体の製造方法〕
本発明の重合体の製造方法は、触媒の存在下、モノマーを逐次供給しながら重合する重合方法において、連鎖移動剤を逐次供給することを特徴とする重合体の製造方法である。
【0034】
連鎖移動剤を一時に供給するのではなく、逐次供給して重合すれば、重合体の分子量分布を制御し、分子量分布が狭い重合体が製造される効果がある。この方法は、ラジカル重合、イオン重合を問わず、また、塊状重合、溶液重合等のいずれの重合様式であっても適用できる。この方法で製造される重合体の分子量は特に制限はないが、重量平均分子量がおよそ300〜50000,さらには300〜10000,特に300〜5000の重合体を製造する場合に好ましく、有効である。
【0035】
ここでいう「連鎖移動剤」とは、広く連鎖移動機能を有する化合物をいい、例えば、ラジカル重合においてはエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クロロホルム等が、アニオン重合においては水、アルコ−ル類等が、カチオン重合においては水、アルコ−ル類、アミン類等の化合物が例示できる。この連鎖移動剤を「逐次供給する」とは、反応初期等に一時に供給するのではなく、重合反応期間中に分散して供給することをいう。
【0036】
従って、分散して供給するかぎり、断続的に供給しても、連続的に供給しても良い。この場合、モノマー供給期間(時間)に対する連鎖移動剤を供給する期間(時間)の割合が高い程、分子量分布を狭くする効果が顕著であり、その割合が、1/2以上であること、さらには3/4以上、特に1/1つまり、全期間供給することが好ましい。
【0037】
特に好ましい態様は、モノマーの供給量に概略比例して連鎖移動剤を供給する方法であり、その点で、モノマーの全供給期間を通じて、連鎖移動剤を連続的に供給する方法が好ましい。具体的には、モノマーとは別に連鎖移動剤を反応系に単独で供給する方法や、連鎖移動剤をモノマーと混合して、モノマーとの混合物とし供給する方法が挙げられる。
【0038】
また、連鎖移動剤を単独で供給する場合、これを加熱・気化して気体状態で、反応系に供給することもできる。この場合、気化した連鎖移動剤を反応系の気相部分へ供給すると、連鎖移動剤が液界面から溶け込み、均一に反応部分に作用し、また気相部での過重合を防止できため、より分子量分布が狭い重合体を得られる場合がある。この気化した連鎖移動剤は、窒素ガス等の同伴ガスとともに供給することもできる。
【0039】
なお、モノマーを逐次供給することを前提にする本発明の重合方法は、反応性が高いモノマーを重合する場合、モノマーを反応初期に一時に供給することにより重合反応が暴走する等の危険を防止する効果もある。本発明でいう「触媒」は、重合反応を促進する物質であって、狭義のいわゆる重合触媒と重合開始剤とを含む意味である。従って、触媒として、いわゆる重合触媒と重合開始剤のいずれか一方のみを使用する場合と、両者を併用する場合がある。なお、ここでいう、重合触媒には通常の有体の触媒のみでなく、光、熱、放射線等の無体のものをも含む概念である。
【0040】
本発明の重合体の製造方法は、上記触媒の存在下、モノマーを逐次供給しつつ、連鎖移動剤を逐次供給して、目的の重合体が得られる反応温度、反応圧力、反応時間重合させればよい。本発明に用いるモノマーは特に制限はなく、あらゆるモノマーが対象である。ビニル化合物について言えば、炭化水素系モノマー、極性モノマー及び環状モノマーがあり、炭化水素系モノマー(炭化水素系ビニル化合物)の場合は、一般式(1)で表されるものが含まれる。
【0041】
【化11】

【0042】
(式中、R1〜R4は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)
前記一般式(1)の炭化水素基は、直鎖、分岐鎖の飽和又は不飽和炭化水素基、及び環状飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基を含む。前記一般式(1)で表される好適な炭化水素系ビニルモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、各種アルキル置換スチレン等を挙げることができる。
【0043】
次に、モノマーがビニル化合物のうち、極性モノマーであるビニルエ−テル化合物を重合する場合を例に本発明の製造方法をより具体的に説明する。本発明に用いるビニルエ−テルモノマーとしては一般式(2)で表わされるものが挙げられる。
【0044】
【化12】

【0045】
(式中、R5〜R7はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R8は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭化水素基、pはその平均値が0〜10の数を示し、R5〜R9は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよく、またR8Oが複数ある場合には、複数のR8Oは同一でも異なっていてもよい。)
前記一般式(2)におけるR5〜R7は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。ここで炭化水素基とは、具体的にはメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,各種ブチル基,各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種ヘプチル基,各種オクチル基のアルキル基、シクロペンチル基,シクロヘキシル基,各種メチルシクロヘキシル基,各種エチルシクロヘキシル基,各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基,各種メチルフェニル基,各種エチルフェニル基,各種ジメチルフェニル基のアリール基、ベンジル基,各種フェニルエチル基,各種メチルベンジル基のアリールアルキル基を挙げることができる。なお、これらのR5〜R7としては、特に水素原子が好ましい。
【0046】
一方、前記一般式(2)におけるR8は、炭素数1〜10、好ましくは2〜10の二価の炭化水素基を示すが、ここで炭素数1〜10の二価の炭化水素基とは、具体的にはメチレン基;エチレン基;フェニルエチレン基;1,2−プロピレン基;2−フェニル−1,2−プロピレン基;1,3−プロピレン基;各種ブチレン基;各種ペンチレン基;各種ヘキシレン基;各種ヘプチレン基;各種オクチレン基;各種ノニレン基;各種デシレン基の二価の脂肪族基、シクロヘキサン;メチルシクロヘキサン;エチルシクロヘキサン;ジメチルシクロヘキサン;プロピルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式基、各種フェニレン基;各種メチルフェニレン基;各種エチルフェニレン基;各種ジメチルフェニレン基;各種ナフチレン基などの二価の芳香族炭化水素基、トルエン;キシレン;エチルベンゼンなどのアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分にそれぞれ一価の結合部位を有するアルキル芳香族基、キシレン;ジエチルベンゼンなどのポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有するアルキル芳香族基などを挙げることができる。これらの中で炭化数2〜4の脂肪族基が特に好ましい。
【0047】
なお、前記一般式(2)におけるpはR8Oの繰り返し数を示し、その平均値が0〜10、好ましくは0〜5の範囲の数である。R8Oが複数ある場合には、複数のR8Oは同一でも異なっていてもよい。さらに、前記一般式(2)におけるR9は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基を示すが、この炭化水素基とは、具体的にはメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,各種ブチル基,各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種ヘプチル基,各種オクチル基,各種ノニル基,各種デシル基のアルキル基、シクロペンチル基,シクロヘキシル基,各種メチルシクロヘキシル基,各種エチルシクロヘキシル基,各種プロピルシクロヘキシル基,各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基,各種メチルフェニル基,各種エチルフェニル基,各種ジメチルフェニル基,各種プロピルフェニル基,各種トリメチルフェニル基,各種ブチルフェニル基,各種ナフチル基などのアリール基、ベンジル基,各種フェニルエチル基,各種メチルベンジル基,各種フェニルプロピル基,各種フェニルブチル基のアリールアルキル基などを挙げることができる。
【0048】
このビニルエーテルモノマーとしては、例えばビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル−n−プロピルエーテル;ビニル−イソプロピルエーテル;ビニル−n−ブチルエーテル;ビニル−イソブチルエーテル;ビニル−sec−ブチルエーテル;ビニル−tert−ブチルエーテル;ビニル−n−ペンチルエーテル;ビニル−n−ヘキシルエーテル;ビニル−2−メトキシエチルエーテル;ビニル−2−エトキシエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−1−メチルエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−2−メチルエーテル;ビニル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−1,4−ジメチル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−1,4,7−トリメチル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−2,6−ジオキサ−4−ヘプチルエーテル;ビニル−2,6,9−トリオキサ−4−デシルエーテル;1−メトキシプロペン;1−エトキシプロペン;1−n−プロポキシプロペン;1−イソプロポキシプロペン;1−n−ブトキシプロペン;1−イソブトキシプロペン;1−sec−ブトキシプロペン;1−tert−ブトキシプロペン;2−メトキシプロペン;2−エトキシプロペン;2−n−プロポキシプロペン;2−イソプロポキシプロペン;2−n−ブトキシプロペン;2−イソブトキシプロペン;2−sec−ブトキシプロペン;2−tert−ブトキシプロペン;1−メトキシ−1−ブテン;1−エトキシ−1−ブテン;1−n−プロポキシ−1−ブテン;1−イソプロポキシ−1−ブテン;1−n−ブトキシ−1−ブテン;1−イソブトキシ−1−ブテン;1−sec−ブトキシ−1−ブテン;1−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−1−ブテン;2−エトキシ−1−ブテン;2−n−プロポキシ−1−ブテン;2−イソプロポキシ−1−ブテン;2−n−ブトキシ−1−ブテン;2−イソブトキシ−1−ブテン;2−sec−ブトキシ−1−ブテン;2−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−2−ブテン;2−エトキシ−2−ブテン;2−n−プロポキシ−2−ブテン;2−イソプロポキシ−2−ブテン;2−n−ブトキシ−2−ブテン;2−イソブトキシ−2−ブテン;2−sec−ブトキシ−2−ブテン;2−tert−ブトキシ−2−ブテンなどを挙げることができる。
【0049】
これらのビニルエーテルモノマーは、公知の方法により製造することができる。上記のモノマーのうち、エチルビニルエ−テルとイソプロピルビニルエ−テル又はイソブチルビニルエ−テルの混合物であり、その割合が100〜50:0〜50(モル%)、さらには100〜70:0〜30(モル%)のものが特に好ましい。
【0050】
なお、モノマーとしてビニルエ−テル化合物と炭化水素系モノマーを併用することも可能である。従って、上記一般式(2)のビニルエ−テル化合物と上記一般式(1)の炭化水素系ビニル化合物とを併用し、両者の共重合体つまり、一般式(2)のモノマー1種又は2種以上と一般式(1)のモノマー1種又は2種以上を原料モノマーとして重合することもできる。
【0051】
この場合、上記一般式(2)のモノマーと一般式(1)のモノマーとの混合割合は100〜50:0〜50(モル%)、さらには、95〜70:5〜30(モル%)である場合が好ましい。次に、上記のモノマーを重合する場合に使用する触媒(重合触媒)は、ブレンステッド酸類、ルイス酸類、有機金属化合物類等があり、ブレンステッド酸類としては、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられ、ルイス酸類としては、三フッ化ホウ素及びその錯体類、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛、塩化第二鉄などが挙げられる。また、有機金属化合物類としては、ジエチル塩化アルミニウム、エチル塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛などが挙げられる。
【0052】
これらのうち、三フッ化ホウ素及びその錯体類、例えば、三フッ化ホウ素の水錯体、アルコ−ル(メチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、n−プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、イソブチルアルコ−ル等の)錯体、ジエチルエ−テル錯体が特に好ましい。なお、上記の触媒とともに重合開始剤を併用すると反応が促進する場合がある。
【0053】
次に、このモノマーの重合反応に用いる連鎖移動剤としては、水、アルコ−ル類、フエノ−ル類等がある。ここで、アルコ−ル類としては、例えばメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、イソブタノ−ル、sec−ブタノ−ル、tert−ブタノ−ル、各種ペンタノ−ル、各種ヘキサノ−ル、各種ヘプタノ−ル、各種オクタノ−ルなどの炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコ−ル、アリルアルコ−ルなどの炭素数3〜10の不飽和脂肪族アルコ−ルなどが挙げられる。
【0054】
これらのうちメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、イソブタノ−ル、sec−ブタノ−ル、tert−ブタノ−ル、各種ペンタノ−ル、各種ヘキサノ−ル等低級炭化水素のアルコ−ルが好ましく、なかでもエタノ−ルが好ましい。なお、重合反応には溶媒を用いて行ってもよい。その場合使用する溶剤は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の直鎖又は分岐の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン等の極性化合物で不活性な溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は製造する重合体の分子量によって異なり、一般に分子量が大きい程反応系の粘度が上昇するため、通常目的の重合体の分子量が大きい場合は溶媒を多量に投入する。
【0055】
以上の原材料等を使用して、ビニルエ−テル化合物の重合体を次のように製造する。なお、以下の重合反応はカチオン重合反応の例である。
(1)まず、反応槽に触媒を投入する。触媒としてのいわゆる重合開始剤の投入量としては、重合体の分子量が300〜50000のものを得る場合は通常全モノマー量の1/10000〜1/2(モル)である。
【0056】
一方、いわゆる重合触媒の投入量は、重合開始剤量の1/600〜1/30(モル)の割合で配合する。重合触媒の量が重合開始剤の1/600未満では、重合反応の速度が遅くなることがあり、1/30以上では、副反応が起こる場合があり、また重合物が着色することがある。なお、溶媒を使用する場合は、触媒投入前に配合するのが好ましい。
(2)次いで、反応温度と反応圧力を設定する。
【0057】
反応温度は通常0〜100℃,好ましくは0〜50℃の範囲の温度で行う。また反応圧力は通常3kg/cm2以下で行う。
(3)続いて、連鎖移動剤とモノマーを逐次供給する。連鎖移動剤の供給量は、通常モノマーに対し0.02〜1.0重量%であり、これを連続的又は断続的に逐次供給する。
(4)以上の条件を維持しながら反応終了まで重合を続ける。
【0058】
反応は発熱を伴うので、通常除熱しながら実施する。反応は通常1〜10時間程度実施する。なお必要に応じて反応系を不活性ガス等でパ−ジして行う。以上の方法で、目的の分子量分布が狭い重合体を得ることができる。なお、上述の重合方法で得られた重合体を、より安定な化合物にするために、さらに、水素化することが好ましい。
【0059】
水素化の方法は特に制限はなく、いかなる方法でもよい。例えば、ニッケル−シリカアルミナ、ニッケル−ジルコニア、ニッケル−珪藻土などの担持型ニッケル触媒の存在下、水素圧力3〜80kg/cm2,好ましくは3〜50kg/cm2,特に好ましくは10〜50kg/cm2,反応温度90〜200℃、好ましくは100〜170℃で水素化する方法によって効率よく行うことができる。
【0060】
また、この水素化反応は、懸濁床回分式、固定床連続式のいずれの方法でもよい。
〔重合体〕
本発明の重合体は、ビニルエ−テル化合物の重合体又は共重合体であって、重合体の重量平均分子量が300〜50000であり、かつ、分子量分布のピ−ク強度の最大値に該当する分子量の3倍以上の分子量を有する重合体の含有量が全重合体の1重量%以下である重合体である。
【0061】
すなわち、本発明の重合体は、分子量分布,すなわち分子量分布曲線のピ−ク強度の最大値に該当する分子量の3倍以上の分子量を有する重合物の含有量が前記重合体の1重量%以下である。ここでいう、分子量分布曲線とは、通常ゲルパ−ミィエ−ションクロマトグラフィ−(以下「GPC」という)によって得られる曲線(クロマトグラム)をいう。図を用いて説明すると、図1は、分子量分布曲線、つまり、GPCクロマトグラムの概念図であり、縦軸がピ−ク強度、横軸が分子量を表している。この図で、(1)がピ−ク強度が最大値の点、すなわち主成分の重合体に該当する分子量の点である。また、(2)が主成分の分子量の3倍の分子量に該当する点である。従って、本発明の重合体は、図1の分子量分布曲線で、(2)の点より右側の面積が分子量分布曲線の全面積の1%以下であることになる。なお、このGPCによる分子量分布曲線の面積比は、通常重量%に相当する。
【0062】
以上のことは、本発明の重合体の分子量分布は狭く、シャ−プであることを示している。さらにまた、本発明の重合体は、〔重量平均分子量〕/〔数平均分子量〕で表した分子量分布が2.5以下、さらには2.0、特に1.5以下であることが好ましい。ここでいう分子量分布も、GPCによって得られる重量平均分子量と数平均分子量の比から求められる。
【0063】
この分子量分布の理論的下限は,1.00であるが、通常小さい場合でも1.05程度になるから、分子量分布の範囲は1.05〜2.5,さらには1.05〜1.5が好ましい範囲である。ついで、本発明の重合体は、ビニルエ−テル化合物の重体又は共重合体であって、重合体の重量平均分子量が300〜50000、好ましくは300〜10000、特に好ましくは300〜5000のものである。
【0064】
ここでいうモノマーとしてのビニルエ−テル化合物は、ビニルエ−テル化合物が主成分であればよく、一定量以下のビニルエ−テル化合物以外のモノマー、例えば炭化水素系ビニル化合物を含んでいてもよい。従って、本発明の重合体は、ビニルエ−テル化合物の重合体又は共重合体の他に、少なくとも1種のビニルエ−テル化合体と少なくとも1種の炭化水素系ビニル化合物との共重合体をも含む概念である。
【0065】
ビニルエ−テル化合体と炭化水素系ビニル化合物の割合は、100〜50:0〜50(モル%)、さらには、100〜70:0〜30(モル%)であるものが好ましい。なお、上記の共重合体には、ランダム重合体及びブロック重合体が含まれる。以上述べたビニルエ−テル化合物の重合体又は共重合体は、通常末端アセタ−ル基等を有するが、これを除去した重合体であれば、さらに安定な重合体となる。末端アセタ−ル基等を除去した重合体は、上述の重合体を水素化することによって得ることができる。
【0066】
上記の重合物の製造方法については、特に制限はないが、前述の〔重合体の製造方法〕で述べた方法によって、重合し、必要に応じて水素化することにより製造すれば、効率的に製造できる。上記のビニルエ−テル化合物の重合体又は共重合体の代表例としては、一般式(3)で表される構成単位、又は一般式(3)と一般式(4)で表される構成単位からなり、その重合体の末端が一般式(5)又は(6)及び一般式(7)又は(8)である重合体が挙げられる。
【0067】
【化13】

【0068】
(式中、R5〜R7はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R8は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭化水素基、pはその平均値が0〜10の数を示し、R5〜R9は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよく、またR8Oが複数ある場合には、複数のR8Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0069】
【化14】

【0070】
(式中、R1〜R4は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)
【0071】
【化15】

【0072】
(式中、R5〜R9及びpは前記一般式(2)と同じ)
【0073】
【化16】

【0074】
(式中、R1〜R4は前記一般式(4)と同じ)
【0075】
【化17】

【0076】
(式中、R5〜R9及びpは前記一般式(3)と同じ)
【0077】
【化18】

【0078】
(式中、R1〜R4は前記一般式(4)と同じ)
この中で、構成単位が一般式(3)で表され、重合体の末端が一般式(5)と一般式(7)で表される重合体で、一般式(3),(5)及び(7)のpが0で、R9がエチル基である構成単位とpが0でR9がイソプロピル基若しくはイソブチル基である構成単位からなり、その割合が100〜50:0〜50(モル比)、さらには100〜70:0〜30の重合体が特に好適に用いられる。
〔重合体の冷凍機用潤滑油への用途〕
上記重合体は種々の用途に利用できる。例えば、溶剤、潤滑油、接着剤、樹脂などに有用であり、主成分に該当する分子量の3倍以上の分子量を有する重合体が1重量%以上の重合体と比較して、流動性、安定性及びそれぞれ固有の性能が向上する効果がある。
【0079】
特に、上記重合体は冷凍機用潤滑油として有効であり、冷媒であるハイドロフルオロカ−ボン(HFC)との溶解性が著しく向上する。また、冷媒がアンモニア、ハイドロカーボン、二酸化炭素等の場合も同様である。従って、本発明の重合体が適用される冷凍機に用いられる冷媒としては、ハイドロフルオロカーボン,フルオロカーボン,ハイドロカーボン,エーテル,二酸化炭素又はアンモニア冷媒が用いられる。これらの中でハイドロフルオロカーボン冷媒としては、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a),ジフルオロメタン(R32),ペンタフルオロエタン(R125)及び1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、混合冷媒の例としては、R32とR125とR134aとの重量比23:25:52の混合物(以下、R407Cと称する。),重量比25:15:60の混合物,R32とR125との重量比50:50の混合物(以下、R410Aと称する。),R32とR125との重量比45:55の混合物(以下、R410Bと称する。),R125とR143aとR134aとの重量比44:52:4の混合物(以下、R404Aと称する。),R125とR143aとの重量比50:50の混合物(以下、R507と称する。)などを挙げることができる。
【実施例】
【0080】
本発明について、更に、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例で用いた試験方法は、以下のとおりである。
〔分子量分布の測定方法〕
高速液体クロマトグラフィ−(高速GPC)による溶出曲線から重量平均分子量と数平均分子量を求め、重量平均分子量/数平均分子量を分子量分布として算出した。測定条件は下記の通りである。
【0081】
カラム:TSK G3000H8+G2000H8+G1000H8
移動相:特級THF
流速:1.4ml/min
試料溶解方法:移動相溶媒に溶解(サンプル濃度 2mg/ml)
試料注入量:400μl
検出器:RI(示差屈折)検出器、セル温度40℃
検量線作成用標準試料:ポリエチレングリコ−ル及びポリスチレン
〔二層分離温度の測定〕試料0.45gを耐圧ガラスアンプルに秤量し、これを真空配管及びハイドロフルオロカ−ボン混合冷媒(R410A)配管に接続した。アンプルを室温で真空脱気後、R410A冷媒2.55gを液体状で採取した。次いで、アンプルを封じ、恒温槽中で室温から−50℃まで徐徐に冷却して層分離が始まる温度を測定した。
〔比較例1〕エチルアルコ−ル2248g、イソブチルアルコ−ル402g,三フッ化ホウ素ジエチルエ−テル錯体21.4g及びイソノナン15.2リットルを100リットルの反応容器に仕込んだ後、反応温度を45℃に保持した。この反応容器へエチルビニルエ−テル41.5kgとイソブチルビニルエ−テル6.4kgの混合物を5時間連続的に供給した。得られた重合物のGPCによる分子量分布曲線は、分子量920をピ−ク強度の最大値とするものであり、また、分子量がピ−ク強度の最大値の分子量×3(=2760)以上の重合体は1.58%であった。
〔実施例1〕比較例1の、エチルビニルエ−テルとイソブチルビニルエ−テルの混合物の代わりに、ここ混合部に更に、エタノ−ル1000ppm(48g)を加えた混合物を連続的に供給したこと以外は、比較例1と同様の方法で重合した。
【0082】
得られた重合物の高速GPCによる分子量分布曲線は、分子量910をピ−ク強度の最大値とするものであり、また、分子量がピ−ク強度の最大値の分子量×3(=2730)以上の重合体は0.81%であった。また、分子量分布は1.18であった。
〔比較例2〕エチルアルコ−ル26kg、イソブチルアルコ−ル5kg,三フッ化ホウ素ジエチルエ−テル錯体250g及びトルエン379kgを3m3の反応容器に仕込んだ後、反応温度を25℃に保持した。この反応容器へエチルビニルエ−テル520kgとイソブチルビニルエ−テル80kgの混合物を8時間連続的に供給した。得られた重合物の高速GPCによる分子量分布曲線は、分子量780をピ−ク強度の最大値とするものであり、また、分子量がピ−ク強度の最大値の分子量×3(=2340)以上の重合体は1.33%であった。
〔実施例2〕比較例2の製造条件で、エチルビニルエ−テルとイソブチルビニルエ−テルの混合物を連続的に供給している期間、反応装置の気相部を攪拌翼で攪拌しながらエタノ−ルを60℃に加熱した窒素ガスとともに200g/時間の速度で気相部へ供給して重合体を製造した。また、分子量分布は1.19であった。
【0083】
得られた重合物の高速GPCによる分子量分布曲線は、分子量750をピ−ク強度の最大値とするものであり、また、分子量がピ−ク強度の最大値の分子量×3(=2250)以上の重合体は0.68%であった。
〔比較例3〕含水トルエン(水分350ppm)60ml、三フッ化ホウ素ジエチルエ−テル錯体1.0gを200mlの4つ口フラスコに入れ、反応温度25℃に保持した。そこへスチレン41.7gを約45分かけて連続的に供給して重合した。得られた重合物の高速GPCによる分子量分布曲線は、分子量3730をピ−ク強度の最大値とするものであり、また、分子量がピ−ク強度の最大値の分子量×3(=11190)以上の重合体は4.10%であった。
〔実施例3〕比較例3のスチレンに代えて、スチレンにエタノ−ル300ppm(0.04g)加えた混合物を供給して重合体を製造した。得られた重合物の高速GPCによる分子量分布曲線は、分子量3330をピ−ク強度の最大値とするものであり、また、分子量がピ−ク強度の最大値の分子量×3(=9990)以上の重合体は2.93%であった。また、分子量分布は2.20であった。
〔実施例4、5及び比較例4,5〕実施例1、2及び比較例1,2で得た重合体を水素化し、その水素化物の冷媒R410Aに対する二層分離温度を測定した。測定結果を表1に示した。
【0084】
なお、水素化方法は次のようにして行った。
触媒の調整
SUS316L製2リットルのオ−トクレ−ブにニッケル珪藻土触媒(日揮化学社製、商品N113)12g及びイソオクタン300gを仕込んだ。オ−トクレ−ブ内を窒素置換し、次いで水素置換したのち、水素圧を30kg/cm2Gとし昇温し140℃で30分間保持後、室温まで冷却した。オ−トクレ−ブ内を窒素置換したのち、オ−トクレ−ブにアセトアルデヒドジエチルアセタ−ルを20g加え、再び窒素置換し、次いで水素置換後、水素圧を30kg/cm2Gとして昇温した。130℃で30分間保持後、室温まで冷却した。昇温によりオ−トクレ−ブ内の圧力が上昇する一方、アセトアルデヒドジエチルアセタ−ルが反応することにより、水素圧力の減少が認められた。圧力が減少し、30kg/cm2G以下となった場合は水素を足し30kg/cm2Gとした。室温まで冷却脱圧し、次いで、オ−トクレ−ブ内を窒素置換した後脱圧した。
【0085】
ビニルエ−テル重合体の水素化
上記の触媒の調整で得た触媒入りオ−トクレ−ブを開放し、液層をデカンテ−ションで除去したのち実施例1で得られた重合物400gを入れた。オ−トクレ−ブ内を窒素置換し、次いで水素置換したのち、水素圧を30kg/cm2Gとし昇温した。140℃で2時間保持後、室温まで冷却した。昇温によりオ−トクレ−ブ内の圧力が上昇する一方、反応の進行により水素圧力の減少が認められた。圧力が減少した場合、適時水素を加えオ−トクレ−ブ内を30kg/cm2Gとした。オ−トクレ−ブ内を窒素置換した後脱圧し、反応液を回収してイソオクタン100gを加え、ろ過して触媒を除いた。ろ液をロ−タリ−エバポレ−タで減圧処理して溶媒及び軽質分を除去して実施例4の試料を得た。
【0086】
同様の方法で、実施例2,比較例1及び比較例2の重合体から実施例5、比較例4及び比較例5の試料を得た。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の重合体は潤滑油、特に冷凍機用潤滑油の成分として好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の重合方法によって得られる重合体のGPCによる分子量分布曲線の概念図である。
【符号の説明】
【0090】
(1)分子量分布曲線のピ−ク強度が最大値に該当する分子量の点
(2)分子量分布曲線のピ−ク強度が最大値に該当する分子量の3倍の分子量の点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体が、ビニルエ−テル化合物の重合体又は共重合体であって、重合体の重量平均分子量が300〜50000であり、かつ、分子量分布のピ−ク強度の最大値に該当する分子量の3倍以上の分子量を有する重合体の含有量が全重合体の1重量%以下である重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の重合体を水素化して得られる重合体。
【請求項3】
重合体の構成単位が一般式(3)で表され、又は重合体の構成単位が一般式(3)及び(4)で表され、その末端が一般式(5)又は(6)及び一般式(7)又は(8)で表される請求項2に記載の重合体。
【化1】

(式中、R5〜R7はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R8は炭素数1〜10の二価の炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭化水素基、pはその平均値が0〜10の数を示し、R5〜R9は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよく、またR8Oが複数ある場合には、複数のR8Oは同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中R1〜R4は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)
【化3】

(式中、R5〜R9及びpは前記一般式(3)と同じ)
【化4】

(式中,R1〜R4は前記一般式(4)と同じ)
【化5】

(式中、R5〜R9及びpは前記一般式(3)と同じ)
【化6】

(式中,R1〜R4は前記一般式(4)と同じ)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の重合体を主成分とする圧縮式冷凍機用潤滑油。

【図1】
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【公開番号】特開2009−52050(P2009−52050A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264226(P2008−264226)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【分割の表示】特願平11−246325の分割
【原出願日】平成11年8月31日(1999.8.31)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】