説明

重合性化合物及びそれを用いて得られる高分子化合物

【課題】現像液への親和性に優れ、半導体製造の微細なパターン形成に用いられる高分子化合物及び該高分子化合物を製造する為の新規重合性化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(ca−1)又は(cb−1)で表されることを特徴とする重合性化合物、及び、これを重合することによって得られる高分子化合物。


A、Z、Z、Ta、Tb、Tc及びLは、それぞれ独立に、所定の基、結合又は原子を表す。m、n、p、q及びrは、それぞれ独立に、所定の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーや光導波路、光ディスク基板、フォトレジストなどの光学材料及びその原料、医薬・農薬中間体、その他各種工業製品などに使用される高分子化合物の原料として有用な新規重合性化合物、それを用いて得られる高分子化合物に関する。また、本発明は、KrF、ArF、Fエキシマレーザー用化学増幅型レジスト材料、ArF液浸露光用化学増幅型レジスト材料、X線、電子線、EUV(極端紫外光)用化学増幅型レジスト材料に用いる高分子化合物の原料として有用な新規重合性化合物、及びそれを用いて得られる高分子化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学増幅レジストは遠紫外線光等の放射線の照射により露光部に酸を発生させ、この酸を触媒とする反応によって、活性放射線の照射部と非照射部の現像液に対する溶解性を変化させ、パターンを基板上に形成する。
【0003】
KrFエキシマレーザーを露光光源とする場合には、主として248nm領域での吸収の小さい、ポリ(ヒドロキシスチレン)を基本骨格とする樹脂を主成分とするため、高感度、高解像度で、かつ良好なパターンを形成し、従来のナフトキノンジアジド/ノボラック樹脂系に比べて良好な系となっている。
【0004】
一方、更なる短波長の光源、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を露光光源として使用する場合は、芳香族基を有する化合物が本質的に193nm領域に大きな吸収を示すため、上記化学増幅系でも十分ではなかった。このため、脂環炭化水素構造を有する樹脂を含有するArFエキシマレーザー用レジストが開発されてきている。
更に、上記脂環炭化水素構造を有する樹脂にラクトン構造を有する繰り返し単位を含有させることで性能が向上することが見出されている。例えば特許文献1には脂環ラクトン構造を有する繰り返し単位を含有する樹脂を用いたレジスト組成物が記載されている。
しかしながら、レジストとしての総合性能の観点から、使用される樹脂、光酸発生剤、添加剤、溶剤等の適切な組み合わせを見い出すことが極めて困難であるのが実情であり、更に線幅100nm以下のような微細なパターンを形成する際には、単に解像力だけでなくラインパターンのラインエッジラフネス性能の改良が求められていた。
ここで、ラインエッジラフネスとは、レジストの特性に起因して、レジストのラインパターンと基板界面のエッジが、ライン方向と垂直な方向に不規則に変動した形状を呈することをいう。このパターンを真上から観察するとエッジが凸凹(±数nm〜数十nm程度)に見える。この凸凹は、エッチング工程により基板に転写されるため、凸凹が大きいと電気特性不良を引き起こし、歩留まりを低下させることになる。しかしながら、このラクトン構造を有する繰り返し単位は現像液への親和性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−146143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規重合性化合物及びそれを用いて得られる新規高分子化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記に示す本発明に到達したものである。
【0008】
(1) 下記一般式(ca−1)又は(cb−1)で表されることを特徴とする重合性化合物。
【0009】
【化1】

【0010】
Aは、置換基を有していてもよいメタクリル基、置換基を有していてもよいアクリル基、又は置換基を有していてもよいノルボルネン基を表す。
は、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
は、それぞれ独立に、単結合又は置換基を有していてもよい鎖状若しくは環状アルキレン基を表す。
Ta及びTbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Taが複数個ある場合には、Ta同士が結合して、環を形成しても良い。Tbが複数個ある場合には、Tb同士が結合して、Tbが置換するベンゼン環とともに、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環を形成しても良い。
Tcは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
Lは、それぞれ独立に、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はエーテル結合を表す。
mは、1〜28の整数を表す。
nは、0〜11の整数を表す。
pは、0〜5の整数を表す。
qは、0〜5の整数を表す。
rは、0〜5の整数を表す。
【0011】
(2) 下記一般式(ca−2)又は(cb−2)で表されることを特徴とする(1)に記載の重合性化合物。
【0012】
【化2】

【0013】
Raは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
は、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい鎖状若しくは環状アルキレン基を表す。
Ta及びTbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Taが複数個ある場合には、Ta同士が結合して、環を形成しても良い。Tbが複数個ある場合には、Tb同士が結合して、Tbが置換するベンゼン環とともに、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環を形成しても良い。
Tcは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
Lは、それぞれ独立に、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はエーテル結合を表す。
mは、1〜28の整数を表す。
nは、0〜11の整数を表す。
pは、0〜5の整数を表す。
qは、0〜5の整数を表す。
rは、0〜5の整数を表す。
【0014】
(3) 下記一般式(ca−3)又は(cb−3)で表されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の重合性化合物。
【0015】
【化3】

【0016】
Ra’は、水素原子又はメチル基を表す。
Ta及びTbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Taが複数個ある場合には、Ta同士が結合して、環を形成しても良い。Tbが複数個ある場合には、Tb同士が結合して、Tbが置換するベンゼン環とともに、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環を形成しても良い。
Tdは水素原子又はメチル基を表す。
m’は1〜10の整数を表す。
n’は0〜2の整数を表す。
pは0〜5の整数を表す。
【0017】
(4) qが0又は1であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の重合性化合物。
(5) nが0〜5の整数を表し、mが1〜10の整数を表すことを特徴とする、(1)、(2)及び(4)のいずれかに記載の重合性化合物。
(6) rが0又は1であることを特徴とする、(1)、(2)、(4)及び(5)のいずれかに記載の重合性化合物。
【0018】
(7) Zがエーテル結合又はエステル結合であることを特徴とする、(1)、(2)及び(4)〜(6)のいずれかに記載の重合性化合物。
(8) Z又はZ’が置換基を有していてもよい鎖状アルキレン基であることを特徴とする、(1)、(2)及び(4)〜(7)のいずれかに記載の重合性化合物。
【0019】
(9) n’が1又は2であることを特徴とする、(3)に記載の重合性化合物。
(10) m’が1又は2であることを特徴とする、(3)又は(9)に記載の重合性化合物。
【0020】
(11) (1)〜(10)のいずれかに記載の重合性化合物を重合することによって得られることを特徴とする高分子化合物。
【0021】
本発明は、以下の形態も好ましい。
(12) Zがエステル結合であることを特徴とする、(1)、(2)及び(4)〜(8)のいずれかに記載の重合性化合物。
(13) Z又はZ’の鎖状アルキレン基が、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はイソプロピレン基であることを特徴とする、(1)、(2)、(4)〜(8)及び(12)のいずれかに記載の重合性化合物。
【0022】
(14) mが1又は2であることを特徴とする、(1)、(2)、(4)〜(8)、(12)及び(13)のいずれかに記載の重合性化合物。
(15) pが0〜2の整数を表すことを特徴とする、(1)、(2)、(4)〜(8)、及び(12)〜(14)のいずれかに記載の重合性化合物。
(16) pが5であり、Tbが全てフッ素原子であることを特徴とする、(1)、(2)、(4)〜(8)、及び(12)〜(14)のいずれかに記載の重合性化合物。
【0023】
(17) pが0〜2の整数を表すことを特徴とする、(3)、(9)及び(10)のいずれかに記載の重合性化合物。
(18) pが5であり、Tbが全てフッ素原子であることを特徴とする、(3)、(9)及び(10)のいずれかに記載の重合性化合物。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、新規重合性化合物及びそれを用いて得られる新規高分子化合物を提供することができ、特に該高分子化合物は半導体分野のパターン形成において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0026】
[一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物]
本発明の重合性化合物は、ラクトン構造を有しており、具体的には一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される。
【0027】
【化4】

【0028】
Aは、置換基を有していてもよいメタクリル基、置換基を有していてもよいアクリル基又は置換基を有していてもよいノルボルネン基を表す。置換基を有するメタクリル基、置換基を有するアクリル基又は置換基を有するノルボルネン基の置換基は、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくはフッ素原子である。Aは好ましくは、無置換のメタクリル基、カルボニル基のα位のメチル基がトリフルオロメチル基に置き換えられたメタクリル基(α−(トリフルオロメチル)アクリル基)、無置換のアクリル基、カルボニル基のα位の水素原子がフッ素原子に置き換えられたアクリル基(α−フルオロアクリル基)であり、より好ましくは無置換のメタクリル基又は無置換のアクリル基である。
【0029】
は、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。好ましくは、単結合、エーテル結合又はエステル結合であり、より好ましくはエーテル結合又はエステル結合であり、更に好ましくはエステル結合である。
前記qが2以上の場合、Zで表される複数の基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
は、それぞれ独立に、単結合又は置換基を有していてもよい鎖状若しくは環状アルキレン基を表し、好ましくは置換基を有していてもよい鎖状若しくは環状アルキレン基を表す。
好ましい鎖状アルキレン基としては炭素数が1〜10の鎖状のアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜5であり、更に好ましくは炭素数1〜3であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。
好ましい環状アルキレン基としては、炭素数3〜20の環状アルキレン基であり、例えば、シクロヘキシレン、シクロペンチレン、ノルボルニレン、アダマンチレン等が挙げられる。
で表される基としてより好ましくは鎖状アルキレン基である。
鎖状アルキレン基、環状アルキレン基は特に限定されず置換基を有することができる。鎖状アルキレン基及び環状アルキレン基上の置換基として、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜15、更に好ましくは炭素数1〜7であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、更に好ましくは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜7であり、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜15、更に好ましくは炭素数2〜7であり、例えば、−(C=O)CH、−(C=O)C、−(C=O)−n−C、−(C=O)−i−C等)、アルキルオキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜15、更に好ましくは炭素数2〜7であり、例えば、−(C=O)OCH、−(C=O)OC、−(C=O)O−n−C、−(C=O)O−i−C等)、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基、ビニル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜14であり、例えば、フェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)等が挙げられる。
前記qが2以上の場合、Zで表される複数の基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
Ta及びTbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、好ましくはハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくはハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基である。
Ta、Tbのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。好ましくは、フッ素原子である。
Ta、Tbのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基の具体例は、Zの説明で挙げた鎖状若しくは環状アルキレン基上の置換基としての、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
Ta、Tbのアリール基は、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、例えば、フェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
Ta、Tbのアミド基としては、好ましくは炭素数2〜7のアミド基であり、例えば、−NH(C=O)CH、−NH(C=O)C、−NH(C=O)−n−C、−NH(C=O)−i−C等が挙げられる。
Ta、Tbのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アミド基、アリール基は特に限定されず置換基を有することができ、そのような置換基の具体例は、Zの説明で挙げた鎖状若しくは環状アルキレン基上の置換基の具体例と同様である。
Taが複数個ある場合には、Ta同士が結合して、環を形成しても良い。Ta同士が結合して形成する環としては、5〜7員環の、脂環炭化水素環又はヘテロ環が挙げられ、5又は6員環であることが好ましい。
Tbが複数個ある場合には、Tb同士が結合して、Tbが置換するベンゼン環とともに、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環を形成しても良い。Tb同士が結合して、ベンゼン環とともに形成する縮合環としては、多環芳香族炭化水素が挙げられ、好ましくは炭素数10〜14であり、例えば、ナフタレン、アントラセン等が挙げられる。
【0032】
Tcは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
Tcのハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよいアリール基はTa、Tbと同様のものをあげることができる。
Tcで表される基において、好ましいものは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基であり、より好ましいものは、水素原子、メチル基又はエチル基であり、最も好ましいものは、水素原子又はメチル基である。
【0033】
Lはカルボニル基、カルボニルオキシ基又はエーテル結合(−O−)を表す。rが2以上の整数である場合には、(L)rは、Lがr個で組み合わされてなる基を示し、複数のLは同一であっても、異なっていてもよい。
【0034】
mは、1〜28の整数を表す。好ましくは1〜10の整数、より好ましくは1〜5の整数、最も好ましくは1又は2である。
nは、0〜11の整数を表す。好ましくは0〜5の整数、より好ましくは0、1又は2、最も好ましくは1又は2である。
pは、0〜5の整数を表す。好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜2の整数、最も好ましくは1である。但し、Tbが全てフッ素原子の場合、pは5であることが好ましい。
qは、0〜5の整数を表す。好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0〜1の整数、最も好ましくは0である。
rは、0〜5の整数を表す。好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0〜1の整数、最も好ましくは0である。
【0035】
一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される化合物中の以下に示すラクトン構造は、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体でもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体が混合して用いてもよい。1種の光学異性体である場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上である。
【0036】
【化5】

【0037】
上記立体構造の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
【化6】

【0039】
式(i)で表される立体構造となる原料(以下に示す合成ルートにおける出発原料)は、天然物として存在しており、安価かつ容易に入手することができ、式(ii)で表される立体構造は、式(i)で表される立体構造の立体反転によって得ることができる。式(iii)で表される立体構造となる原料は、L−グルコースから合成することができ、式(iv)で表される立体構造は、式(iii)で表される立体構造の立体反転によって得ることができる。
一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される化合物が1種の光学異性体である場合、式(i)で表される立体構造を有する光学異性体であることが好ましい。
【0040】
一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される化合物の合成方法は、特に限定されないが、例えば以下のような合成ルートで合成することができる(AがCH=C(Ra)−COO−を示し(ここでRaは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す)、q=0、r=0である場合を代表例として示す)。
【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物は、下記一般式(ca−2)又は(cb−2)で表されることが好ましい。
【0044】
【化9】

【0045】
Raは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、より好ましくは、水素原子又はメチル基である。
、Ta、Tb、Tc、L、m、n、p、q及びrは、それぞれ、一般式(ca−1)又は(cb−1)のZ、Ta、Tb、Tc、L、m、n、p、q及びrと同義であり、好ましい例も同様である。
’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい鎖状若しくは環状アルキレン基を表し、その好ましい例及び具体例は、一般式(ca−1)又は(cb−1)のZにおける、置換基を有していてもよい鎖状若しくは環状アルキレン基と同義である。
【0046】
一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物は、下記一般式(ca−3)又は(cb−3)で表されることがより好ましい。
【0047】
【化10】

【0048】
Ra’は、水素原子又はメチル基を表す。
Ta及びTbは、それぞれ、一般式(ca−1)又は(cb−1)のTa及びTbと同義であり、好ましい例も同様である。
Tdは水素原子又はメチル基を表す。
m’は1〜10の整数を表す。好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1又は2である。
n’は0〜2の整数を表す。好ましくは1又は2である。
pは0〜5の整数を表す。好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜2の整数、最も好ましくは1である。但し、Tbが全てフッ素原子の場合、pは5であることが好ましい。
【0049】
以下に、本発明の重合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
下記化学式において、Raは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Tdは、水素原子又はメチル基を表す。
【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
[一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物に対応する繰り返し単位を有する高分子化合物]
一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物に対応する繰り返し単位を有する高分子化合物は、一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物の1種以上を重合することによって得られる。
【0055】
本願の高分子化合物は、一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物に対応する繰り返し単位に加えて、適宜、他の繰り返し単位を有していても良い。この場合、一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物に対応する繰り返し単位は、高分子化合物の全繰り返し単位に対し、例えば1〜100mol%とされ、好ましくは3〜100mol%、更に好ましくは5〜100mol%、最も好ましくは10〜100mol%とされる。
【0056】
本発明の重合性化合物に対応する繰り返し単位を有する高分子化合物は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種(一般式(ca−1)又は(cb−1)で表される重合性化合物、及び、必要に応じて使用されるコモノマー)及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の高分子化合物を溶解する溶媒が挙げられる。
【0057】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応液の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0058】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0059】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0060】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
【0061】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0062】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0063】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
【0064】
本発明の重合性化合物に対応する繰り返し単位を有する高分子化合物の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、より好ましくは2,000〜20,000、更により好ましくは3,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜10,000である。
分散度(分子量分布)は、通常1〜3であり、好ましくは1〜2.6、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1.4〜1.7の範囲のものが使用される。
【0065】
本発明の重合性化合物に対応する繰り返し単位を有する高分子化合物は、アルカリ現像液に対する親和性に優れるため、例えば、酸分解性樹脂、及び、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有するポジ型レジスト組成物に添加されることにより、レジスト膜の現像性が優れたものになり、良好なパターンを形成することができる。
また、本発明の重合性化合物に対応する繰り返し単位を有する高分子化合物は、酸分解性基を有する繰り返し単位をコモノマー成分として更に含有することによって、アルカリ現像液に対する親和性が優れた酸分解性樹脂と成り得るため、このような酸分解性樹脂に加えて、例えば、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有するポジ型レジスト組成物から得られるレジスト膜についても、その現像性は優れたものになり、良好なパターンを形成することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0067】
実施例1(化合物(c)の合成)
【0068】
【化15】

【0069】
1、2−O−イソプロピリデン−α−D−グルクロノ−6、3−ラクトン(a)200.0g〔東京化成工業株式会社〕にテトラヒドロフラン(THF)1Lを加え、撹拌溶解させ、窒素雰囲気下、0℃まで冷却し、トリエチルアミン187.2gを加えた。その後、メタクリル酸無水物214.6gを滴下し、滴下終了後、1時間撹拌した。25℃に放冷し、更に4時間撹拌し、原料(a)が消失していることを確認し、酢酸エチル4Lを加え、1規定塩酸、炭酸水素ナトリウム、蒸留水(2回)で洗浄し、有機層を濃縮した。化合物(b)の種結晶を加えて粉体化させ、ヘキサン/酢酸エチルを用いて、再結晶し、化合物(b)を162.0g得た。
【0070】
上記で得られた化合物(b)30.0g、トルエン150mL、4−tert−ブチルシクロヘキサノン19.5g、硫酸0.3g、p−メトキシフェノール0.3gを加え、窒素雰囲気下、70℃で14時間撹拌し、化合物(b)が消失していることを確認し、炭酸水素ナトリウム粉体を入れ中和した。酢酸エチル500mLを加え、蒸留水300mLで3回洗浄し、有機層を濃縮した。得られた混合物をカラムクロマトグラフィーで単離精製を行ない、目的物(c)を12.7g得た。
化合物(c)のH−NMR(ppm、CDCl): 0.82(9H、s)、0.90−1.10(1H、m)、1.18−1.50(4H、m)、1.50−1.82(4H、m)、1.98(3H、s)、4.86(1H、d)、4.90(1H、d)、5.09(1H、dd)、5.55(1H、d)、5.68−5.76(1H、m)、6.02(1H、d)、6.31(1H、s)
【0071】
実施例2(化合物(g)の合成)
【0072】
【化16】

【0073】
4−シクロヘキサノンカルボン酸エチル(d)150.0gにメタノール300.0gを加えて撹拌し、25℃で水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム35.3gと蒸留水300.0gの混合液)を滴下した。3時間後、化合物(d)が消失していることを確認し、濃塩酸45.7g中に反応溶液を滴下した。酢酸エチル2400gを加えて、蒸留水で5回洗浄し、有機層を濃縮して、化合物(e)を63g得た。
上記で得られた化合物(e)43.7g、クロロホルム394.0g、1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール77.6g、ジメチルアミノピリジン3.8gを加えて撹拌し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩64.9gを加えて、25℃で3時間撹拌し、化合物(e)が消失しているのを確認し、1規定塩酸に反応溶液を滴下した。撹拌後、有機層を取り出し、1規定塩酸で2回、蒸留水で5回洗浄し、有機層を濃縮し、化合物(f)を70.0g得た。
化合物(f)32.1g、化合物(b)26.0gを用いて、実施例1と同様の方法で、目的物(g)を10.0g得た。
化合物(g)のH−NMR(ppm、CDCl):1.52−2.10(8H、m)、2.00(3H、s)、2.52−2.66(1H、m)、4.85(1H、d)、4.93(1H、d)、5.09(1H、dd)、5.54(1H、d)、5.70−5.76(1H、m)、5.70(1H、sep)、6.04(1H、d)、6.31(1H、s)
【0074】
実施例3(化合物(h)の合成)
【0075】
【化17】

【0076】
ペンタフルオロベンズアルデヒド20.7g、化合物(b)25.0gを用いて、実施例1と同様の方法で、目的物(h)を12.0g得た。
化合物(h)のH−NMR(ppm、CDCl): 2.02(3H、s)、4.93(1H、d)、5.02(1H、d)、5.31(1H、dd)、5.66(1H、d)、5.70−5.78(1H、m)、6.16(1H、d)、6.20(1H、s)、6.32(1H、s)
【0077】
実施例4(化合物(i)の合成)
【0078】
【化18】

【0079】
4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド22.1g、化合物(b)30.0gを用いて、実施例1と同様の方法で、目的物(i)を13.5g得た。
化合物(i)のH−NMR(ppm、CDCl): 2.03(3H、s)、5.03(1H、d)、5.10(1H、d)、5.17(1H、dd)、5.56(1H、d)、5.76(1H、s)、6.07(1H、s)、6.19(1H、d)、6.34(1H、s)、7.56(2H、d)、7.67(2H、d)
【0080】
実施例5(化合物(j)の合成)
【0081】
【化19】

【0082】
3、5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド24.5g、化合物(b)24.0gを用いて、実施例1と同様の方法で、目的物(j)を14.0g得た。
化合物(j)のH−NMR(ppm、CDCl): 1.98(3H、s)、4.86(1H、dd)、4.98(1H、d)、5.02(1H、d)、5.54(1H、d)、5.70−5.78(1H、m)、6.10(1H、s)、6.24(1H、d)、6.31(1H、s)、7.96(3H、s)
【0083】
実施例6(化合物(k)の合成)
【0084】
【化20】

【0085】
4−tert−ブチルベンズアルデヒド20.6g、化合物(b)30.0gを用いて、実施例1と同様の方法で、目的物(k)を14.3g得た。
化合物(k)のH−NMR(ppm、CDCl): 1.34(9H、s)、2.20(3H、s)、5.01(1H、dd)、5.09(1H、d)、5.15(1H、dd)、5.56(1H、d)、5.70−5.80(1H、m)、6.00(1H、d)、6.17(1H、dd)、6.33(1H、d)、7.30−7.50(4H、m)
【0086】
実施例7(ポリマー(1)の合成)
【0087】
【化21】

【0088】
窒素雰囲気下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)10.1gを三口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに化合物(g)36.3g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し2.5mol%をPGMEA96.8gに溶解させた溶液を4時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に80℃で4時間反応させた。反応液を放冷後メタノール1300g/蒸留水150gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(1)が25.1g得られた。
得られたポリマー(1)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で13000、分散度(Mw/Mn)は1.38であった。
【0089】
実施例8(ポリマー(2)の合成)
【0090】
【化22】

【0091】
窒素雰囲気下、PGMEA9.0gを三口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに化合物(g)25.4g、化合物(1)4.9g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し7.5mol%をPGMEA81.2gに溶解させた溶液を4時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に80℃で4時間反応させた。反応液を放冷後メタノール1080g/蒸留水120gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(2)が16.5g得られた。
得られたポリマー(2)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で4000、分散度(Mw/Mn)は1.42であった。
【0092】
実施例9(ポリマー(3)の合成)
【0093】
【化23】

【0094】
窒素雰囲気下、PGMEA10.9gを三口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに化合物(g)21.8g、化合物(2)5.1g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し5.0mol%をPGMEA97.6gに溶解させた溶液を4時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に80℃で4時間反応させた。反応液を放冷後メタノール1300g/蒸留水150gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(3)が20.2g得られた。
得られたポリマー(3)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で8000、分散度(Mw/Mn)は1.32であった。
【0095】
実施例10(ポリマー(4)の合成)
【0096】
【化24】

【0097】
窒素雰囲気下、PGMEA91.3gを三口フラスコに入れ、これを85℃に加熱した。これに化合物(c)76.1g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し3.0mol%をPGMEA137.0gに溶解させた溶液を4時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に85℃で4時間反応させた。反応液を放冷後メタノール2700g/蒸留水300gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(4)が53.3g得られた。
得られたポリマー(4)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で3800、分散度(Mw/Mn)は1.29であった。
【0098】
実施例11(ポリマー(5)の合成)
【0099】
【化25】

【0100】
窒素雰囲気下、PGMEA85.7gを三口フラスコに入れ、これを85℃に加熱した。これに化合物(j)46.8g、化合物(3)19.9g、化合物(4)4.7g、1−ドデカンチオール3.6g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し3.0mol%をPGMEA200.0gに溶解させた溶液を4時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に85℃で4時間反応させた。反応液を放冷後メタノール2000g/蒸留水220gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(5)が57.1g得られた。
得られたポリマー(5)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で4100、分散度(Mw/Mn)は1.26であった。
【0101】
実施例12(ポリマー(6)の合成)
【0102】
【化26】

【0103】
窒素雰囲気下、PGMEA76.0gを三口フラスコに入れ、これを85℃に加熱した。これに化合物(h)63.3g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し4.0mol%をPGMEA177.3gに溶解させた溶液を4時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に85℃で4時間反応させた。反応液を放冷後メタノール1800g/蒸留水200gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(6)が44.3g得られた。
得られたポリマー(6)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で6300、分散度(Mw/Mn)は1.35であった。
【0104】
実施例13(ポリマー(7)の合成)
【0105】
【化27】

【0106】
窒素雰囲気下、シクロヘキサノン62.8gを三口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに化合物(c)29.6g、化合物(4)7.1g、化合物(2)8.2g、重合開始剤AIBN(和光純薬製)をモノマーに対し7.0mol%をシクロヘキサノン116.7gに溶解させた溶液を6時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘプタン1100g/酢酸エチル450gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(7)が33.7g得られた。
得られたポリマー(7)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で7800、分散度(Mw/Mn)は1.46であった。
【0107】
実施例14(ポリマー(8)の合成)
【0108】
【化28】

【0109】
窒素雰囲気下、シクロヘキサノン94.0gを三口フラスコに入れ、これを65℃に加熱した。これに化合物(k)15.5g、化合物(5)8.9g、化合物(4)4.7g、化合物(2)18.2g、重合開始剤V−65(和光純薬製)をモノマーに対し1.5mol%をシクロヘキサノン174.5gに溶解させた溶液を6時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に65℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘプタン1700g/酢酸エチル700gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(8)が38.6g得られた。
得られたポリマー(8)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で9800、分散度(Mw/Mn)は1.58であった。
【0110】
実施例15(ポリマー(9)の合成)
【0111】
【化29】

【0112】
窒素雰囲気下、シクロヘキサノン48.0gを三口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに化合物(i)8.0g、化合物(6)11.9g、化合物(4)7.9g、化合物(1)18.8g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し3mol%をシクロヘキサノン89.2gに溶解させた溶液を6時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘプタン1400g/酢酸エチル600gの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥するとポリマー(9)が38.5g得られた。
得られたポリマー(9)の重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で13200、分散度(Mw/Mn)は1.66であった。
【0113】
実施例16
上記で得られたポリマー(7)2g、トリフェニルスルホニウムペンタフルオロベンゼンスルホネート80mg、トリ−n−オクチルアミン7mg、メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)4mgをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル=6/4(質量比)の溶剤を用いて、固形分濃度5質量%となるように調整し、これを0.1μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過してポジ型レジスト組成物を得た。
一方、スピンコーターにてヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上にブリューワーサイエンス社製反射防止膜DUV−42を600オングストローム均一に塗布し、100℃で90秒間ホットプレート上で乾燥した後、190℃で240秒間加熱乾燥を行った。その後、上記ポジ型レジスト組成物をスピンコーターで塗布し110℃で90秒乾燥を行い、膜厚180nmのレジスト膜を形成させた。このレジスト膜に対し、マスクを通してArFエキシマレーザーステッパー(ASML社製 NA=0.75、2/3輪帯)で露光し、露光後直ぐに120℃で90秒間ホットプレート上で加熱した。更に2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、100nmのラインアンドスペース1:1のパターンを得た。
また、ポリマー(7)の代わりに、上記で得られたポリマー(2)、(3)、(5)、(8)、(9)の各々を使用した場合においても、同様にパターンを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(ca−1)又は(cb−1)で表されることを特徴とする重合性化合物。
【化1】

Aは、置換基を有していてもよいメタクリル基、置換基を有していてもよいアクリル基、又は置換基を有していてもよいノルボルネン基を表す。
は、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
は、それぞれ独立に、単結合又は置換基を有していてもよい鎖状若しくは環状アルキレン基を表す。
Ta及びTbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Taが複数個ある場合には、Ta同士が結合して、環を形成しても良い。Tbが複数個ある場合には、Tb同士が結合して、Tbが置換するベンゼン環とともに、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環を形成しても良い。
Tcは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
Lは、それぞれ独立に、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はエーテル結合を表す。
mは、1〜28の整数を表す。
nは、0〜11の整数を表す。
pは、0〜5の整数を表す。
qは、0〜5の整数を表す。
rは、0〜5の整数を表す。
【請求項2】
下記一般式(ca−2)又は(cb−2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の重合性化合物。
【化2】

Raは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
は、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい鎖状若しくは環状アルキレン基を表す。
Ta及びTbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Taが複数個ある場合には、Ta同士が結合して、環を形成しても良い。Tbが複数個ある場合には、Tb同士が結合して、Tbが置換するベンゼン環とともに、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環を形成しても良い。
Tcは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
Lは、それぞれ独立に、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はエーテル結合を表す。
mは、1〜28の整数を表す。
nは、0〜11の整数を表す。
pは、0〜5の整数を表す。
qは、0〜5の整数を表す。
rは、0〜5の整数を表す。
【請求項3】
下記一般式(ca−3)又は(cb−3)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合性化合物。
【化3】

Ra’は、水素原子又はメチル基を表す。
Ta及びTbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアミド基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Taが複数個ある場合には、Ta同士が結合して、環を形成しても良い。Tbが複数個ある場合には、Tb同士が結合して、Tbが置換するベンゼン環とともに、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環を形成しても良い。
Tdは水素原子又はメチル基を表す。
m’は、1〜10の整数を表す。
n’は、0〜2の整数を表す。
pは、0〜5の整数を表す。
【請求項4】
qが0又は1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の重合性化合物。
【請求項5】
nが0〜5の整数を表し、mが1〜10の整数を表すことを特徴とする、請求項1、2及び4のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項6】
rが0又は1であることを特徴とする、請求項1、2、4及び5のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項7】
がエーテル結合又はエステル結合であることを特徴とする、請求項1、2及び4〜6のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項8】
又はZ’が置換基を有していてもよい鎖状アルキレン基であることを特徴とする、請求項1、2及び4〜7のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項9】
n’が1又は2であることを特徴とする、請求項3に記載の重合性化合物。
【請求項10】
m’が1又は2であることを特徴とする、請求項3又は9に記載の重合性化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の重合性化合物を重合することによって得られることを特徴とする高分子化合物。

【公開番号】特開2010−159413(P2010−159413A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281057(P2009−281057)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】