説明

重合性化合物及び重合性組成物

【課題】溶媒溶解性が良好で、配向制御能や光学特性に優れる重合性化合物及び重合性組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される重合性化合物、及び該重合性化合物を含有する重合性組成物。


(一般式(1)中、M1及びM2は各々独立して水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2は、各々独立して直接結合又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、アルキレンオキシ基若しくはアルキレンオキシカルボニルオキシ基を表し、X3は分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、Y1及びY2はエステル結合等を表し、環A、B、C及びDは2,6−ナフチレン等の環構造を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4つの環を有し、且つ、両端に(メタ)アクリロイルオキシ基を2官能有する新規な重合性化合物及び該重合性化合物を含有する重合性組成物に関する。該重合性組成物は、安定した溶媒溶解性及び配向制御に優れた効果を奏し、かかる重合性組成物を重合してなる重合体は、配向保持に優れ、位相差フィルム、偏光板、光偏光プリズム、ディスプレイ用の光学フィルム等の光学材料として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
液晶物質はTN型やSTN型に代表されるディスプレイ表示等の液晶分子の可逆的運動を利用した表示媒体への応用以外にも、その配向性と屈折率、誘電率、磁化率、弾性率、熱膨張率等の物理的性質の異方性を利用して、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、輝度向上フィルム、ローパス・フィルター、各種光フィルター等の光学材料への応用が検討されている。
【0003】
上記光学材料は、例えば、重合性官能基を有する液晶化合物又は該液晶化合物を含有する重合性組成物を液晶状態で均一に配向させた後、液晶状態を保持したまま紫外線等のエネルギー線を照射して光重合により硬化させることによって製造することができるが、この液晶化合物の配向状態を均一にかつ半永久的に固定化することが求められる。
【0004】
また、重合体は重合性組成物を基板に塗布して重合することによって得られるが、膜厚が均一な重合体を得るためには重合性組成物を溶剤に溶かしたものを塗工する方法が好ましく用いられる。該重合性組成物が溶剤に対して不溶であると、液晶化合物の配向制御に大きな支障をきたすため、重合性化合物又はそれを含む重合性組成物の溶媒溶解性が良好であることが必要とされる。
【0005】
上記光学材料に用いられる重合性化合物としては、重合性官能基が(メタ)アクリル基である化合物が、重合反応性が高く、高い透明性を有する重合物が得られるので、利用が盛んに検討されている。
重合性官能基として(メタ)アクリル基を2官能有する重合性化合物は、例えば、特許文献1〜7に提案されている。しかし、これらの重合性化合物を用いた場合、重合時に結晶が析出したり、配向の均一制御が困難になる場合があるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−116534号公報
【特許文献2】特開2002−145830号公報
【特許文献3】特開2003−315553号公報
【特許文献4】特開2005−263789号公報
【特許文献5】特開平11−130729号公報
【特許文献6】特開2005−309255号公報
【特許文献7】国際公開第2006/049111号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、溶媒溶解性が良好で、配向制御能や光学特性に優れる重合性化合物及び重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1記載の発明)は、下記一般式(1)で表される重合性化合物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
【化1】

(一般式(1)中、M1及びM2は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、
1及びX2は、各々独立して、直接結合、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレンオキシ基(ただし、酸素原子は隣接する環に結合する)、又は、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレンオキシカルボニルオキシ基を表し、
3は分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、該アルキレン基中の−CH2−は酸素原子で置換されていてもよいが、連続して酸素原子で置換されない。
1及びY2は、各々独立して、直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有してもよく不飽和結合を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルキレン基、又は、これらの組み合わせからなる連結基を表し、
環A、B、C及びDは、各々独立して、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン及び2,6−ナフチレンからなる群から選択される環構造を表し、該環構造は置換基を有していてもよく、該置換基は、ハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、−CO−O−R1、−CO−R2又は−O−CO−R3であり、R1、R2及びR3は分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。)
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)は、上記一般式(1)において、環A、B、C及びDで表される環構造の少なくとも一つが2,6−ナフチレンである請求項1記載の重合性化合物を提供するものである。
【0011】
本発明(請求項3記載の発明)は、上記一般式(1)において、Y1及びY2が、−CO−O−又は−O−CO−である請求項1又は2記載の重合性化合物を提供するものである。
【0012】
また、本発明(請求項4記載の発明)は、請求項1〜3の何れかに記載の重合性化合物を含有する重合性組成物を提供するものである。
【0013】
また、本発明(請求項5記載の発明)は、さらに少なくとも一種の液晶化合物を含有する請求項4記載の重合性組成物を提供するものである。
【0014】
また、本発明(請求項6記載の発明)は、上記重合性化合物の含有量と上記液晶化合物の含有量との合計を100質量部としたとき、上記重合性化合物の含有量が1〜30質量部である請求項5記載の重合性組成物を提供するものである。
【0015】
また、本発明(請求項7記載の発明)は、上記液晶化合物が下記一般式(2)で表される請求項5又は6記載の重合性組成物を提供するものである。
【0016】
【化2】

(一般式(2)中、M3及びM4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、
4及びX5は、各々独立して、直接結合、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレンオキシ基(ただし、酸素原子は隣接する環に結合する)、又は、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10アルキレンオキシカルボニルオキシ基を表し、
3及びY4は、各々独立して、直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有してもよく不飽和結合を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルキレン基、又は、これらの組み合わせからなる連結基を表し、
環E、F及びGは、各々独立に、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン及び2,6−ナフチレンからなる群から選択される環構造を表し、該環構造は置換基を有していてもよく、該置換基は、ハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、−CO−O−R4、−O−CO−R5又は−CO−R6であり、R4、R5及びR6は分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、
mは0〜3の整数を表し、mが2以上の場合、複数あるY4及び環Gは各々異なるものであってもよい。)
【0017】
また、本発明(請求項8記載の発明)は、さらにラジカル重合開始剤を含有する請求項4〜7の何れかに記載の重合性組成物を提供するものである。
【0018】
また、本発明(請求項9記載の発明)は、請求項4〜8の何れかに記載の重合性組成物を光重合させることにより作製された重合体を提供するものである。
【0019】
また、本発明(請求項10記載の発明)は、請求項9記載の重合体を使用してなるディスプレイ用光学フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の重合性化合物、及び該重合性化合物を含有する重合性組成物は、溶媒溶解性及び他の液晶化合物との相溶性に優れる。該重合性化合物又は該重合性組成物を液晶状態で配向制御して光重合させることにより作製された本発明の重合体は、配向制御性、光学特性等に優れ、光学材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の重合性化合物、該重合性化合物を含有する本発明の重合性組成物及び該重合組成物を光重合させることにより作製される本発明の重合体について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明の重合性化合物について説明する。
上記一般式(1)中のX1、X2及びX3で表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン等が挙げられ、該アルキレン基中の−CH2−が酸素原子で置換されたものであってもよい。但し、連続して酸素原子で置換されない。
【0023】
上記一般式(1)中のX1及びX2で表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレンオキシ基としては、例えば、上記アルキレン基の末端に酸素原子が結合したものが挙げられ、酸素原子は、必ず隣接する環に結合する。
【0024】
上記一般式(1)中のX1及びX2で表される分岐を有してもよいアルキレンオキシカルボニルオキシ基としては、例えば、上記アルキレン基の末端に、−O−CO−O−が結合したものが挙げられ、−O−CO−O−は必ず隣接する環に結合する。
【0025】
上記一般式(1)中のY1及びY2で表される直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有してもよく不飽和結合を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルキレン基、又はこれらの組み合わせからなる連結基としては、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−(CH2a−、−(CH2a−O−、−O−(CH2a−、−O−(CH2a−O−、−(CH2a−O−CO−、−CO−O−(CH2a−、−(CH2a−CO−O−、−O−CO−(CH2a−、−(CH2a−O−CO−O−、−O−CO−O−(CH2a−、−O−(CH2a−O−CO−、−CO−O−(CH2a−O−、−O−(CH2a−CO−O−、−O−CO−(CH2a−O−、−O−(CH2a−O−CO−O−、−O−CO−O−(CH2a−O−、−(CH2CH2O)b−、−(OCH2CH2b−等が挙げられる。尚、前記aは2〜8の整数を表し、前記bは1〜3の整数を表す。
【0026】
上記一般式(1)中の環A、B、C及びDで表される環構造の置換基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)中の環A、B、C及びDで表される環構造の置換基の分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(1)中の環A、B、C及びDで表される環構造の置換基の分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、イソデシルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(1)中のR1、R2及びR3で表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基とは、上記と同じものが挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)で表される重合性化合物の具体的な構造としては、下記化合物No.1〜18が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
本発明の重合性化合物の中でも、上記一般式(1)において、Y1及びY2が−CO−O−又は−O−CO−の何れかである重合性化合物は溶媒溶解性に優れるため好ましく、環A、B、C及びDの少なくとも一つが2,6−ナフチレンである重合性化合物は、光学屈折率異方性が高いため好ましい。
【0034】
本発明の重合性化合物は、その製造方法については特に限定されず、公知の反応を応用して製造することができる。例えば、先ず、カルボキシル基を有するフェノール化合物又はナフトール化合物の水酸基に対して、トリメチルシリル、ベンジルエーテル、ジヒドロピラン等の水酸基を保護できる化合物に置換させて水酸基保護中間体を得る。次に、フェノール化合物又はナフトール化合物の水酸基並びにアルコール化合物に対して、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物をエステル化させることにより、(メタ)アクリロイルオキシ中間体を得る。そして、(メタ)アクリロイルオキシ中間体と水酸基保護中間体を下記〔化5〕に示す反応式に従って、エステル結合させて、Y1を形成する。次に、水酸基を保護する化合物を脱離させてアルコール体とし、該アルコール体の水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリロイルオキシ化合物とを、下記〔化5〕に示す反応式に従って反応させてY2を形成することにより、本発明の重合性化合物を得ることができる。
さらに別法として、〔化6〕に示す反応式のように、(メタ)アクリロイルオキシ液晶化合物を製造する際、反応温度、(メタ)アクリル酸当量を制御することで、(メタ)アクリロイルオキシ中間体と共に、二量化中間体を規定量生成させることができる。該二量化中間体及び上記アルコール体の水酸基を下記〔化5〕に示す反応式に従って反応させてY2を形成させることにより、本発明の重合性化合物及び液晶化合物を含む本発明の重合性組成物を製造することができる。
尚、下記〔化5〕に示す反応式により得られる本発明の重合性化合物は、Y1又はY2が−CO−O−又は−O−CO−であるものであり、(メタ)アクリロイルオキシ基は、R7部分及びR8部分それぞれに含まれている。
【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
本発明の重合性化合物は、必要に応じて液晶材料に配合されて、液晶配向固定化能、光学特性に優れた光学用材料として好ましく用いられ、液晶配向膜、液晶配向制御剤、コーティング材、保護板作製材料等に用いることができる。
【0038】
次に、本発明の重合性組成物について説明する。
本発明の重合性組成物は、本発明の重合性化合物を含有するもので、光学材料として好ましく用いられる。本発明の重合性組成物は、本発明の重合性化合物のほかに、さらに液晶化合物を含有することができる。尚、ここでいう液晶化合物には、従来既知の液晶化合物及び液晶類似化合物並びにそれらの混合物が含まれる。
【0039】
上記液晶化合物としては、上記一般式(2)で表される重合性化合物が配向制御に優れるため、好ましく用いられる。
【0040】
上記一般式(2)中のX3及びX4で表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、アルキレンオキシ基及びアルキレンオキシカルボニルオキシ基としては、上記一般式(1)中のX1及びX2と同じものが挙げられる。
【0041】
上記一般式(2)中のY3及びY4で表される直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有してもよく不飽和結合を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルキレン基、又はこれらの組み合わせからなる連結基としては、上記一般式(1)中のY1及びY2と同じものが挙げられる。
【0042】
上記一般式(2)中の環E、F及びGで表される環構造の置換基としては、上記一般式(1)中の環A、B、C、Dで表される環構造の置換基と同じものが挙げられる。
【0043】
上記一般式(2)中の環E、F及びGで表される環構造を置換する置換基中のR4〜R6としては、上記一般式(1)中の環A,B,C及びDで表される環構造を置換する置換基中のR1〜R3と同じものが挙げられる。
【0044】
上記一般式(2)で表される液晶化合物の具体的な構造としては、〔化7〕〜〔化12〕に示す構造の液晶化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。
【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
【化12】

【0051】
また、本発明の重合性組成物には、その他にも、通常一般に使用される液晶化合物を使用することができ、該液晶化合物の具体例としては、特に制限するものではないが、例えば、下記〔化13〕に示す液晶化合物等が挙げられる。
尚、〔化13〕中のW1は水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルケニル基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルコキシアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルカノイルオキシ基又は分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルコキシカルボニル基を表し、W3はシアノ基、ハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルカノイルオキシ基又は分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルコキシカルボニル基を表し、W2及びW4は水素原子、ハロゲン原子又はニトリル基を表す。
【0052】
【化13】

【0053】
また、本発明の重合性組成物においては、上記重合性液晶化合物としては、特に、重合性官能基を有する液晶化合物が好ましく使用される。該重合性官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、フルオロアクリル基、クロロアクリル基、トリフルオロメチルアクリル基、オキシラン環(エポキシ)、オキセタン環、スチレン化合物(スチリル基)、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルケトン基、マレイミド基、フェニルマレイミド基等が好ましい。該重合性官能基を有する液晶化合物としては、通常一般に使用されるものを用いることができ、その具体例としては、特に制限するものではないが、特開2005−15473号公報明細書の段落[0172]〜[0314]に挙げられる化合物、又は、下記〔化14〕〜〔化19〕に示す化合物等が挙げられる
【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
本発明の重合性組成物において、該重合性化合物の含有量と上記液晶化合物の含有量との合計量を100質量部としたとき、本発明の上記一般式(1)で表される重合性化合物の配合割合は、1〜30質量部、特に3〜20質量部となるようにすることが好ましい。本発明の重合性化合物の比率が1質量部より少ないと、本発明の効果が得られない場合があり、30質量部より多いと、重合性組成物の配向制御や膜厚の制御が困難となる場合がある。
また、特に他の液晶化合物との相溶性を高めたい場合には、本発明の重合性化合物の比率を高くする(具体的には3〜20質量部)ことが好ましい。特に配向の均質性を高めたい場合には、本発明の重合性化合物の比率が3〜20質量部となるように、上記液晶化合物を併用することが好ましい。
【0061】
本発明の重合性組成物は、必要に応じて用いられる他の単量体(エチレン性不飽和結合を有する化合物)をラジカル重合開始剤と共に溶剤に溶解して溶液にすることができる。
【0062】
上記他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、第二ブチル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アリルオキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−フェニルエチル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ジフェニルメチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ペンタクロルフェニル(メタ)アクリレート、2−クロルエチル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロル(メタ)アクリレート、フェニル−α−ブロモ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0063】
上記他の単量体は、本発明の重合性組成物を用いて作製される重合体の配向制御、及び光学特性の効果が損なわれない範囲で使用することができるが、これらの効果を確実に確保するために、他の単量体の含有量は、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、特に30質量部以下が好ましい。
【0064】
上記ラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミン、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0065】
また、上記ラジカル重合開始剤と増感剤の組合せも好ましく使用することができる。かかる増感剤としては、例えば、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤及び/又は上記増感剤を添加する場合、それらの添加量は、それぞれ、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0.1〜3質量部の範囲内がより好ましい。
【0066】
上記溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチレン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。溶剤は単一化合物であってもよいし、または混合物であってもよい。これらの溶剤の中でも、沸点が60〜250℃のものが好ましく、60〜180℃のものが特に好ましい。60℃より低いと塗布工程で溶媒が揮発して膜の厚さにムラが生じやすく、250℃より高いと脱溶媒工程で減圧しても溶媒が残留したり、高温での処理による熱重合を誘起したりして配向性が低下する場合がある。
【0067】
また、本発明の重合性組成物には、選択反射波長及び液晶との相溶性を調節することを目的として、光学活性化合物を添加することができる。かかる他の光学活性化合物を添加する場合、その添加量は、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。かかる光学活性化合物としては、例えば下記〔化20〕〜〔化38〕の化合物を挙げることができる。
【0068】
【化20】

【0069】
【化21】

【0070】
【化22】

【0071】
【化23】

【0072】
【化24】

【0073】
【化25】

【0074】
【化26】

【0075】
【化27】

【0076】
【化28】

【0077】
【化29】

【0078】
【化30】

【0079】
【化31】

【0080】
【化32】

【0081】
【化33】

【0082】
【化34】

【0083】
【化35】

【0084】
【化36】

【0085】
【化37】

【0086】
【化38】

【0087】
また、本発明の重合性組成物には、空気界面側に分布する排除体積効果を有する界面活性剤をさらに含有させることができる。該界面活性剤としては、重合性組成物を支持基板等に塗布することを容易にしたり、液晶相の配向を制御したりする等の効果を与えるものが好ましい。かかる界面活性剤としては、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。界面活性剤を使用する場合、その好ましい使用量は、界面活性剤の種類、組成物の成分比等に依存するが、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜1質量部の範囲内がより好ましい。
【0088】
また、本発明の重合性組成物には、必要に応じて添加物をさらに含有させてもよい。重合性組成物の特性を調製するための添加物としては、例えば、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、無機物及び有機物等の微粒子化物、並びにポリマー等の機能性化合物が挙げられる。
【0089】
上記保存安定剤は、重合性組成物の保存安定性を向上させる効果を付与することができる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。これらを添加する場合は、本発明の重合性化合物及び上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0090】
上記酸化防止剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルホスファイト、トリアルキルホスファイト等が挙げられる。
【0091】
上記紫外線吸収剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物又はニッケル錯塩系化合物等によって紫外線吸収能をもたせたものを用いることができる。
【0092】
上記微粒子化物は、光学(屈折率)異方性(Δn)を調整したり、重合体の強度を上げたりするために用いることができる。上記微粒子化物の材質としては無機物、有機物、金属等が挙げられる。凝集防止のため、上記微粒子化物としては、0.001〜0.1μmの粒子径のものが好ましく、0.001〜0.05μmの粒子径のものがさらに好ましい。また、粒子径の分布がシャープであるものが好ましい。上記微粒子化物を使用する場合は、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0093】
上記無機物としては、セラミックス、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライポンタイト、ZnO、TiO2、CeO2、Al23、Fe23、ZrO2、MgF2、SiO2、SrCO3、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Ga(OH)3、Al(OH)3、Mg(OH)2、Zr(OH)4等が挙げられる。また、炭酸カルシウムの針状結晶等の微粒子は光学異方性を有し、このような微粒子によって重合体の光学異方性を調節できる。
上記有機物としては、カーボンナノチューブ、フラーレン、デンドリマー、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0094】
上記ポリマーは、重合体の電気特性や配向性を制御することができる。上記ポリマーとしては、上記溶剤に可溶性の高分子化合物が好ましく使用することができる。かかる高分子化合物としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエポキサイド、ポリエステル、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0095】
以上に述べた本発明の重合性化合物以外の任意成分(但し、液晶化合物、ラジカル重合開始剤及び溶剤を除く)は、特に制限無く、作製される重合体の特性を損なわない範囲で適宜使用することができるが、好ましくは、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、全任意成分の合計で好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下となるようにする。
【0096】
次に、本発明の重合体について説明する。
本発明の重合体は、例えば、上記重合性組成物を溶剤に溶解して溶液とした後、支持基板に塗布して、重合性組成物中の液晶分子を配向させた状態で脱溶媒し、次いでエネルギー線を照射して重合することにより得ることができる。
【0097】
上記支持基板としては、特に限定されないが、好ましい例としては、ガラス板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、シリコン板、反射板、シクロオレフィンポリマー、方解石板等が挙げられる。このような支持基板上に、後述のようにポリイミド配向膜又はポリビニルアルコール配向膜を施したものが、特に好ましく使用することができる。
【0098】
上記支持基板に本発明の重合性組成物の溶液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、該方法としては、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法及び流延成膜法等が挙げられる。尚、本発明の重合体の膜厚は用途等に応じて適宜選択されるが、好ましくは、0.001〜30μm、より好ましくは0.001〜10μm、特に好ましくは0.005〜8μmの範囲から選択される。
【0099】
本発明の重合性組成物中の液晶分子を配向させる方法としては、例えば、支持基板上に事前に配向処理を施す方法が挙げられる。配向処理を施す好ましい方法としては、各種ポリイミド系配向膜又はポリビニルアルコール系配向膜からなる液晶配向層を支持基板上に設け、ラビング等の処理を行う方法が挙げられる。また、支持基板上の重合性組成物に磁場や電場等を印加する方法等も挙げられる。
【0100】
本発明の重合性組成物を重合させる方法は、光、電磁波又は熱を用いる公知の方法を適用できる。光又は電磁波による重合反応としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、リビング重合等が挙げられる。これらの重合反応によれば、重合性組成物が液晶相を示す条件下で、重合を行なわせることが容易である。また磁場や電場を印加しながら架橋させることも好ましい。支持基板上に形成した液晶(共)重合体は、そのまま使用してもよいが、必要に応じて、支持基板から剥離したり、他の支持基板に転写したりして使用してもよい。
【0101】
上記光の好ましい種類は、紫外線、可視光線、赤外線等である。電子線、X線等の電磁波を用いてもよい。通常は、紫外線または可視光線が好ましい。好ましい波長の範囲は150〜500nmである。さらに好ましい範囲は250〜450nmであり、最も好ましい範囲は300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、またはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等が挙げられるが、高圧水銀ランプ又は超高圧水銀ランプを使用することが好ましい。光源からの光はそのまま重合性組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(または特定の波長領域)を重合性組成物に照射してもよい。好ましい照射エネルギー密度は、2〜5000mJ/cm2であり、さらに好ましい範囲は10〜3000mJ/cm2であり、特に好ましい範囲は100〜2000mJ/cm2である。好ましい照度は0.1〜5000mW/cm2であり、さらに好ましい照度は1〜2000mW/cm2である。光を照射するときの温度は、重合性組成物が液晶相を有するように設定できるが、好ましい照射温度は100℃以下である。100℃以上の温度では熱による重合が起こりうるので良好な配向が得られない場合がある。
【0102】
本発明の重合体は、光学異方性を有する成形体として利用することができる。この成形体は、例えば、位相差板(1/2波長板、1/4波長板等)、偏光素子、二色性偏光板、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜等の光学フィルム等に用いて光学補償に使用することができる。他に、液晶レンズ、マイクロレンズ等の光学レンズ、高分子分散型液晶(PDLC)電子ペーパー、デジタルペーパー等の情報記録材料にも利用することができる。
【実施例】
【0103】
以下、合成例、実施例、比較例及び評価例をもって本発明を更に説明する。しかしながら、本発明は以下の合成例等によって制限を受けるものではない。尚、下記合成例1は、本発明の重合性化合物の実施例を示すものであり、下記実施例1及び2はそれぞれ、本発明の重合性組成物及び重合性組成物を用いた本発明の重合体の実施例を示すものである。また、下記評価例1〜4においては、実施例1及び比較例1の重合性組成物及びこれらの重合性組成物から得られた塗工膜並びに実施例2及び比較例2の重合体の物性を評価した。
【0104】
〔合成例1〕(化合物No.7の製造)
化合物No.7を以下のステップ1〜3の手順に従って合成した。
【0105】
<ステップ1>中間体1の合成(ジヒドロピランの付加反応)
下記中間体1の化合物を、〔化39〕に示す反応式に従い、以下の手順で合成した。
【0106】
【化39】

【0107】
窒素雰囲気下において、2−ヒドロキシヘキシルオキシ−6−ナフトエ酸15g、パラトルエンスルホン酸(PTS)0.20g、及びクロロホルム100gを混合後、氷浴して6℃以下まで冷却し、ジヒドロピラン10.6gを滴下した。滴下後、氷浴を外して室温に戻し、3時間攪拌した。水を加えて油水分離し、油層が中性になるまで水洗した。水洗後、硫酸マグネシウムを加えて脱水してろ過を行い、その残渣に、ヘキサン120mlを加えた懸濁液を25℃で30分攪拌し、白色結晶18.0g(収率92.9%、純度94.1%)を得た。
【0108】
<ステップ2>中間体2の合成(エステル化反応、続く脱保護反応)
下記中間体2の化合物を、下記〔化40〕に示す反応式に従い、以下の手順で合成した。
【0109】
【化40】

【0110】
窒素雰囲気下、メタンスルホニルクロリド5.8g及び、テトラヒドロフラン(THF)30gを混合し、ドライアイスバスで−30℃以下まで冷却し、上記ステップ1で製造した中間体1の化合物17.0g、トリエチルアミン(TEA)5.6g、及びテトラヒドロフラン(THF)30gを混合した混合溶液を、−25℃以下を維持しながら滴下した。滴下後、−25℃以下を維持しながら1時間攪拌し、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.06g(0.49mmol)を加え、トリエチルアミン(TEA)5.6gを加えた。−20℃以下の温度を維持しながら、2−アクリロイル−6−(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)オキシカルボニルナフタレン17.2g及びテトラヒドロフラン60gを混合した混合溶液を滴下し、次いで0℃まで昇温して2時間攪拌した。次いで、塩酸水溶液を加えて油水分離し、油層が中性になるまで水洗し、パラトルエンスルホン酸13.8gを加えて、室温にて12時間攪拌した。
攪拌後、水、酢酸エチルを加えて油水分離し、油層が中性になるまで水洗した。硫酸マグネシウムを加え、ろ過を行い、その残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/2体積比)により精製し、白色結晶8.3g(収率28.1%)を得た。
【0111】
<ステップ3>化合物No.7の合成
化合物No.7を〔化41〕の反応式に従い以下のようにして合成した。
【0112】
【化41】

【0113】
窒素雰囲気下、ステップ2で製造した中間体2の化合物2g、2−アクリロイルヘキシルオキシ−6−ナフトエ酸0.96g、トリフェニルホスフィン(TPP)0.81g及びテトラヒドロフラン14gを混合し、完全に溶解した。この混合溶液にジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIPAD)0.81gを滴下し、2時間攪拌した。反応終了後、t−ブチルパラクレゾール(BHT)5mg加えてロータリーエバポレーターにて脱溶媒し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1体積比)により精製し、アセトン/ヘキサン混合溶媒にて晶析し、白色結晶を0.8g(収率29.3%)を得た。
得られた生成物について、1H−NMR、赤外吸収スペクトル(IR)の分析の結果、目的物である化合物No.7の化合物と同定した。これらの分析結果を以下に示す。また、化合物No.7の熱転移挙動、及び液晶組成物に混合したときの光学(屈折率)異方性(Δn)の測定方法、並びにそれらの結果を以下に示す。
【0114】
(1)1H−NMR[CDCl3](ppm)
0.8−1.0(5H;m)、1.2−1.4(4H;m)、1.5−1.8(6H;m)、1.8−2.0(6H;m)、3.1(2H;t)、4.0−4.3(6H;m)、4.4(2H;t)、5.8(1H;dd)、6.0−6.1(2H;m)、6.3−6.4(2H;m)、6.6(1H;d)、7.1−7.3(7H;m)、7.4(1H;dd)、7.70(2H;d)、7.75(2H;dd)、7.8(1H;d)、7.9(1H;d)、8.00(1H;dd)、8.05(1H;d)、8.1(1H;dd)、8.2(1H;dd)、8.52(1H;s)、8.70(1H;s)、8.82(1H;s)
【0115】
(2)IR[KBr錠剤法](cm-1
475、590、687、764、856、914、937、988、1018、1069、1123、1169、1196、1273、1339、1389、1474、1628、1728、2866、2936
【0116】
(3)熱転移挙動
得られた化合物No.7について、示差走査熱量分析装置(サーモプラスDSC−8230;(株)リガク製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)、5℃/minの昇温速度で25℃から150℃まで測定した結果、下記の熱転移挙動を確認した。さらに、化合物No.7をガラス板で挟んで作製した試料を、ホットステージ上で温度を上げ、偏光顕微鏡にて光学組織を観察することで液晶相の種類を同定した。
【0117】
【化42】

【0118】
(4)液晶組成物の光学(屈折率)異方性(Δn)
得られた化合物No.7について、光学(屈折率)異方性(Δn)が0.0979であるエステル系ネマチック液晶に対して10質量%添加した組成物の光学(屈折率)異方性(Δn)は、Δn=0.1080であり、本発明の重合性化合物を添加することで、液晶組成物の光学異方性を上げる効果が奏されることを確認した。
尚、上記エステル系ネマチック液晶としては、下記〔化43〕に示す組成を有する4−n−アルキルシクロヘキサンカルボン酸アルコキシフェニルエステル系の組成物を用いた。また、測定はアッベの屈折率計を用い、20℃にて589nmの単色光を用い測定した。
【0119】
【化43】

【0120】
〔実施例1及び比較例1〕
表1に記載の配合に従って、実施例1−1、1−2及び比較例1−1の重合性組成物をそれぞれ調製した。
【0121】
〔評価例1〕結晶−ネマチック相転移温度(℃)
表1に記載の重合性組成物(実施例1−1、1−2及び比較例1−1)の結晶−ネマチック相転移温度(℃)を測定した。測定は、示差走査熱量分析装置(サーモプラスDSC−8230;(株)リガク製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)、5℃/minの昇温速度で25℃から150℃まで測定して熱転移挙動を求めることにより行なった。また、表1に記載の重合性組成物をガラス板間に挟み、偏光顕微鏡による相形態観察を行って、ネマチック相への転移を確認した。
各々の観察結果について表1に示す。
【0122】
〔評価例2〕溶液安定性
表1に記載の重合性組成物(実施例1−1、1−2及び比較例1−1)の溶液安定性について、以下のようにして評価した。各重合性組成物1.0gを溶媒(メチルエチルケトン)1.0gに添加して溶解して25℃で静置し、目視で結晶の有無を観察した。1時間経過後も結晶が析出しなかった場合は○、15分を超えて1時間以内に結晶が析出しなかった場合は△、15分以内に結晶が析出した場合は×とした。
各々の観察結果について表1に示す。
【0123】
〔評価例3〕配向均質性
(塗工膜の作製1)
表1に記載の重合性組成物について、下記の手順に沿って厚みが約5μmの塗工膜を製作した。
実施例1−1及び1−2の各重合性組成物2.0gを溶媒(メチルエチルケトン)4.0gに添加して溶解し、0.45μmフィルターでろ過処理を実施して、実施例1−1及び1−2の重合性組成物の溶液をそれぞれ調製した。
該重合性組成物の溶液を、ポリイミドを塗布し、ラビングを施したガラス基板上にスピンコーターで塗工した。塗工は膜厚が約5μmになるように、スピンコーターの回転数及び時間を調整して実施した。塗工後、ホットプレートを用いて100℃で3分間乾燥後、室温下で放置して塗工膜を作製した。
【0124】
(塗工膜の作製2)
重合性組成物として比較例1−1の重合性組成物を用いた以外は(塗工膜の作製1)と同様にして、塗工膜を作製した。
【0125】
(配向均質性の評価)
上記塗工膜の作製1及び2で得られた塗工膜の配向均質性について、以下のようにして偏光顕微鏡を用いて評価した。クロスニコル下で試料を設置したステージを回転させることによって、配向状態を観察した。塗工膜を室温で放置後、20時間経過後も均質な配向を維持した場合を○、4時間を超えて20時間以内に均質な配向を維持した場合を△、4時間以内に配向が乱れた場合を×とした。
各々の観察結果について表1に示す。
【0126】
〔実施例2〕重合体の作製
表1に記載の重合性組成物(実施例1−1及び1−2)について、〔評価例3〕の(塗工膜の作製1)の手順のうち、ホットプレートを用いて100℃で3分間乾燥するまでの手順を、同様にして実施して、塗工膜を得た。ホットプレートを用いて100℃で3分間乾燥後、室温で1分間放置した塗工膜に、直ちに高圧水銀灯(120W/cm2)を20秒間照射し、塗工膜を硬化させて重合体を作製した。
【0127】
〔比較例2〕重合体の作製
重合性組成物として比較例1−1の重合性組成物を用いた以外は〔実施例2〕と同様にして、重合体を作製した。
【0128】
〔評価例4〕光学(屈折率)異方性(Δn)
実施例2及び比較例2で得られた各重合体のリターデーション(R)及び膜厚(d)を下記の方法で測定し、各々の測定値を下記の式に算入することにより重合体の光学(屈折率)異方性(Δn)を求めた。
光学(屈折率)異方性(Δn)=リターデーション(R)/膜厚(d)
各々の測定結果について表1に示す。
【0129】
(1)リターデーション(R)の測定
実施例2及び比較例2で得られた各々の重合体に対して、偏光顕微鏡を用いてセナルモン法に基づく複屈折測定法に従い、室温25℃で波長546nmにおける各々のリターデーション(R)を測定した。
【0130】
(2)膜厚(d)の測定
実施例2及び比較例2で得られた各々の重合体に対して、触診式表面形状測定器(Dektak6M;(株)アルバック製)を用いて室温25℃で各々の膜厚(d)を測定した。
【0131】
【表1】

【0132】
上記表1の結果より、以下のことが明らかである。
本発明の重合性化合物を用いない場合(比較例1−1)、重合体の膜表面に結晶が発生したり、配向が不均一であったりして、満足できる重合体が得られなかった。
これに対して、本発明の重合性化合物を使用した場合(実施例1−1及び1−2)、配向均質性、溶液安定性が向上し、さらには重合体の光学屈折率異方性が改善されることが明らかとなった。さらに、本発明の重合性化合物を使用した重合性組成物は、ネマチック温度範囲が低温へ広がるため、重合体の生産工程の改善を図ることができる。
【0133】
以上より、本発明の重合性化合物を含有する本発明の重合性組成物を光硬化して得られる重合体は、配向制御性及び光学特性に優れ、光学偏光子、位相差板、視角補償フィルム、輝度向上フィルム及び反射膜等の光学フィルムとして有用であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合性化合物。
【化1】

(一般式(1)中、M1及びM2は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、
1及びX2は、各々独立して、直接結合、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレンオキシ基(ただし、酸素原子は隣接する環に結合する)、又は、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレンオキシカルボニルオキシ基を表し、
3は分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、該アルキレン基中の−CH2−は酸素原子で置換されていてもよいが、連続して酸素原子で置換されない。
1及びY2は、各々独立して、直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有してもよく不飽和結合を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルキレン基、又は、これらの組み合わせからなる連結基を表し、
環A、B、C及びDは、各々独立して、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン及び2,6−ナフチレンからなる群から選択される環構造を表し、該環構造は置換基を有していてもよく、該置換基は、ハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、−CO−O−R1、−CO−R2又は−O−CO−R3であり、R1、R2及びR3は分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)において、環A、B、C及びDで表される環構造の少なくとも一つが2,6−ナフチレンである請求項1記載の重合性化合物。
【請求項3】
上記一般式(1)において、Y1及びY2が、−CO−O−又は−O−CO−である請求項1又は2記載の重合性化合物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の重合性化合物を含有する重合性組成物。
【請求項5】
さらに、少なくとも1種の液晶化合物を含有する請求項4記載の重合性組成物。
【請求項6】
上記重合性化合物の含有量と上記液晶化合物の含有量との合計を100質量部としたとき、上記重合性化合物の含有量が1〜30質量部である請求項5記載の重合性組成物。
【請求項7】
上記液晶化合物が下記一般式(2)で表される請求項5又は6記載の重合性組成物。
【化2】

(一般式(2)中、M3及びM4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、
4及びX5は、各々独立して、直接結合、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレンオキシ基(ただし、酸素原子は隣接する環に結合する)、又は、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10アルキレンオキシカルボニルオキシ基を表し、
3及びY4は、各々独立して、直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有してもよく不飽和結合を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルキレン基、又は、これらの組み合わせからなる連結基を表し、
環E、F及びGは、各々独立に、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン及び2,6−ナフチレンからなる群から選択される環構造を表し、該環構造は置換基を有していてもよく、該置換基は、ハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、−CO−O−R4、−O−CO−R5又は−CO−R6であり、R4、R5及びR6は分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、
mは0〜3の整数を表し、mが2以上の場合、複数あるY4及び環Gは各々異なるものであってもよい。)
【請求項8】
さらに、ラジカル重合開始剤を含有する請求項4〜7の何れかに記載の重合性組成物。
【請求項9】
請求項4〜8の何れかに記載の重合性組成物を光重合させることにより作製された重合体。
【請求項10】
請求項9記載の重合体を使用してなるディスプレイ用光学フィルム。

【公開番号】特開2008−239913(P2008−239913A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86364(P2007−86364)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】