説明

重合性液晶組成物および光学異方性薄膜

【課題】室温で十分安定したネマチック相を有し、かつ、均一なハイブリッド配向性を示す重合体を得ることを可能にする組成物を提供すること。
【解決手段】第1成分として特定の重合性液晶化合物と、第2成分として下記式で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物(第1成分とは異なる)と、第3成分として特定の重合性化合物(第1成分及び第2成分とは異なる)とを含有する重合性液晶組成物。


[式中、R3およびR4は独立に水素または炭素数1〜10のアルキルであり;P5は特定
の重合性基であり;q3は0〜1の整数であり;j3は1〜10の整数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性官能基を有する液晶化合物を含む重合性液晶組成物、該組成物からなる重合体およびこれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶相を有する重合性化合物は重合によって光学補償(optical compensation)などの機能を有する重合体を与える。これは、液晶分子の配向が重合によって固定されるからである。このような重合体の機能を活用するために、種々の重合性化合物が開発されているが、1つの重合性化合物では充分な機能を満たさないことがある。そのため、幾つかの重合性化合物を用いて組成物を調製し、該組成物を重合させるという試みがなされている。
【0003】
ネマチック状態で配向させた重合性液晶化合物を重合させると、配向状態が固定化されて光学異方性を有するフィルムが得られる。このような光学異方性を有するフィルムは、液晶表示素子の光学補償膜として活用される。中でもハイブリッドネマチック配向が固定化されたフィルムは、ツイステッドネマチック型液晶表示素子の視野角補償素子として使用することができる。また、偏光板と組み合せることにより楕円偏光板として使用することができる。
【0004】
重合性液晶材料を重合して得られる光学異方性を有する液晶薄膜の製造には、次のような特性が求められている。重合前の特性としては、室温で十分安定したネマチック相を有し、さらに、重合前後で均一な配向性を示し、重合後には所望の配向形態を容易に達成し、薄膜の表面にベタつきがない等である。
【0005】
これまでのハイブリッド配向を有する組成物(たとえば、特許文献1および2参照)は、配向に関しては均一で良好であった。しかしながら、重合体の製造工程において、組成物を基板に塗布し、予備焼成した後に、紫外線照射によって重合体を得るまでの間、直ちに結晶が析出することはなかったものの、組成物の室温液晶相安定性がまだ十分とはいえなかった。
【特許文献1】特開2005−320317号公報
【特許文献2】特開2006−45195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、室温で十分安定したネマチック相を有し、かつ、均一なハイブリッド配向性を示す重合体を得ることを可能にする組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す重合性液晶組成物、該組成物を重合させることによって得られる重合体、およびこれらの用途を含む。
[1] 第1成分として下記式(1−1)および式(1−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物と、第2成分として下記式(2−1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物と、第3成分として下記式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物とを含有することを特徴とする重合性液晶組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
式(1−1)および式(1−2)において、Y1は独立に−O−または−O−CO−O
−であり;W1は独立に水素またはフッ素であり、W2は水素またはメチルであり;R1
よびR2は独立に水素またはメチルであり;P1、P2、P3およびP4は独立に下記式(A
1)〜(A8)のいずれかで表される重合性基であり;k1、k2、q1およびq2は独立に0〜1の整数であり;m1、m2、j1およびj2は独立に1〜10の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4は独立に水素または炭素数1〜10のアルキルであり;P5は下記式(A1)〜(A8)のいずれかで表される重合性基であり;q3は0〜1の整数であり;j3は1〜10の整数であり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1、X2およびX3は、そ
れぞれ独立に単結合、−(CH22−または−HC=CH−であり;W3、W4およびW5
は、それぞれ独立に水素またはフッ素であり;P6、P7、P8、P9、P10およびP11は独立に下記(A1)〜(A8)のいずれかで表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6は独立に0〜1の整数であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6は独立に1〜10の整数である。
【0010】
【化2】

【0011】
[2] 第1成分の含有割合が20〜40重量%の範囲であり、第2成分の含有割合が30〜50重量%の範囲であり、第3成分の含有割合が20〜40重量%の範囲であり(ただし、重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合。);
式(1−1)および式(1−2)において、Y1が独立に−O−または−O−CO−O
−であり;W1が独立に水素であり;W2が水素またはメチルであり;R1およびR2が独立に水素またはメチルであり;P1、P2、P3およびP4が式(A1)で表される重合性基であり;k1、k2、q1およびq2が1であり;m1、m2、j1およびj2が独立に2〜8の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4が独立に水素または炭素数1〜8のアルキルであり;P5が式(A1)で表される重合性基であり;q3が1であり;j3が2〜8の整数で
あり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1、X2およびX3が、そ
れぞれ独立に単結合、−(CH22−または−HC=CH−であり;W3、W4およびW5
が、それぞれ独立に水素またはフッ素であり;P6、P7、P8、P9、P10およびP11が式(A1)で表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6が1であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6が独立に2〜8の整数であること
を特徴とする項[1]に記載の重合性液晶組成物。
【0012】
[3] 第1成分が式(1−1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物であり;
第1成分の含有割合が25〜35重量%の範囲であり、第2成分の含有割合が35〜45重量%の範囲であり、第3成分の含有割合が25〜35重量%の範囲であり(ただし、重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合。);
式(1−1)において、W1が水素であり;R1およびR2が独立に水素またはメチルで
あり;P1およびP2が式(A1)で表される重合性基であり;k1およびq1が1であり;m1およびj1が独立に2〜6の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4が独立に水素または炭素数2〜6のアルキルであり;P5が式(A1)で表される重合性基であり;q3が1であり;j3が2〜6の整数で
あり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1が独立に単結合、−(
CH22−または−HC=CH−であり;X2およびX3が、それぞれ独立に単結合または−(CH22−であり;W3、W4およびW5が、それぞれ独立に水素であり;P6、P7
8、P9、P10およびP11が式(A1)で表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6が1であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6が独立に4〜6の整数であること
を特徴とする項[1]に記載の重合性液晶組成物。
【0013】
[4] 第1成分が式(1−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物であり;
第1成分の含有割合が20〜40重量%の範囲であり、第2成分の含有割合が30〜50重量%の範囲であり、第3成分の含有割合が20〜40重量%の範囲であり(ただし、重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合。);
式(1−2)において、Y1が独立に−O−または−O−CO−O−であり;W2が水素またはメチルであり;P3およびP4が式(A1)で表される重合性基であり;k2および
2が1であり;m2およびj2が独立に2〜8の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4が独立に水素または炭素数1〜8のアルキルであり;P5が式(A1)で表される重合性基であり;q3が1であり;j3が2〜8の整数で
あり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1が独立に単結合、−(
CH22−または−HC=CH−であり;X2およびX3が、それぞれ独立に単結合または−(CH22−であり;W3、W4およびW5が水素であり;P6、P7、P8、P9、P10
よびP11が式(A1)で表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6が1であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6が独立に2〜8の整数であること
を特徴とする項[1]に記載の重合性液晶組成物。
【0014】
[5] 第1成分が式(1−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物であり;
第1成分の含有割合が25〜35重量%の範囲であり、第2成分の含有割合が35〜45重量%の範囲であり、第3成分の含有割合が25〜35重量%の範囲であり(ただし、重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合。);
式(1−2)において、Y1が独立に−O−または−O−CO−O−であり;W2がメチルであり;P1、P2、P3およびP4が式(A1)で表される重合性基であり;k2および
2が1であり;m2およびj2が独立に2〜6の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4が独立に水素または炭素数2〜6のアルキルであり;P5が式(A1)で表される重合性の基であり;q3が1であり;j3が2〜6の整数
であり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1が独立に単結合、−(
CH22−または−HC=CH−であり;X2およびX3が、それぞれ独立に単結合または−(CH22−であり;W3、W4およびW5が水素であり;P6、P7、P8、P9、P10
よびP11が式(A1)で表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6が1であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6が独立に4〜6の整数であること
を特徴とする項[1]に記載の重合性液晶組成物。
【0015】
[6] さらに、重合開始剤を含有することを特徴とする項[1]〜[5]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[7] さらに、溶媒を含有することを特徴とする項[1]〜[6]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【0016】
[8] 項[1]〜[7]のいずれかに記載の重合性液晶組成物からなり、ハイブリッド配向していることを特徴とする重合性液晶層。
[9] 項[1]〜[7]のいずれかに記載の重合性液晶組成物を重合して得られ、かつ配向が固定化されていることを特徴とする重合体。
【0017】
[10] 項[8]に記載の重合性液晶層を構成する重合性液晶組成物を重合し、配向を固定化することによって得られることを特徴とする光学異方性フィルム。
[11] 基板上に、項[1]〜[7]のいずれかに記載の重合性液晶組成物を塗布し、ハイブリッド配向させて重合性液晶層を形成し、該液晶層を構成する重合性液晶組成物を重合して配向を固定化することを特徴とする光学異方性フィルムの製造方法。
【0018】
[12] 基板が、トリアセチルセルロースフィルムまたはノルボルネン系樹脂フィルムであることを特徴とする項[11]に記載の光学異方性フィルムの製造方法。
[13] 基板が、ラビング処理されたポリイミド配向膜を表面に有するガラス基板、鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルムまたは親水化処理したノルボルネン系樹脂フィルムであることを特徴とする項[11]に記載の光学異方性フィルムの製造方法。
【0019】
[14] ノルボルネン系樹脂フィルムの親水化処理が、プラズマ処理またはコロナ処理であることを特徴とする項[13]に記載の光学異方性フィルムの製造方法。
[15] 項[10]に記載の光学異方性フィルムを有することを特徴とする光学補償素子。
【0020】
[16] 項[10]に記載の光学異方性フィルムと偏光板とを有することを特徴とする光学素子。
[17] 項[15]に記載の光学補償素子を、液晶セルの内面または外面に有することを特徴とする液晶表示装置。
【0021】
[18] 項[16]に記載の光学素子を、液晶セルの内面または外面に有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の重合性液晶組成物を用いれば、室温で十分安定したネマチック相を有し、かつ、均一な配向性を示す、光学異方性を有する液晶相もしくは液晶薄膜を得ることが可能である。また、液晶骨格の配向状態がハイブリッド配向である光学異方性フィルムを得ることができる。さらに、本発明の光学異方性フィルムは、各種の光学素子に適用可能であり、さらに、この光学異方性フィルムを用いた光学素子は表示装置、特に液晶表示装置に適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る重合性液晶組成物、該組成物からなる重合体およびこれらの用途について、詳細に説明する。
[用語の説明]
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶相はネマチック相、スメクチック相、コレステリック相などであり、多くの場合ネマチック相を意味する。重合性は、光、熱、触媒などの手段により単量体が重合し、重合体を与える能力を意味する。「化合物(1−1)」は式(1−1)で表される化合物を意味し、他の式で表される化合物や基などについても同様に表記する。また、「化合物(1)」は、化合物(1−1)および化合物(1−2)の群から選択される少なくとも1つの化合物を意味し、化合物(2)および化合物(3)についても同様である。組成物の成分である化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)の割合(%)は、これら3種類の重合性化合物の全重量に基づいて算出した重量%(wt%)である。また、組成物における、その他の成分の添加量(%)は、化合物(1)、(2)および(3)の全重量に基づいた重量%である。
【0024】
液晶分子における配向は、チルト角の大きさなどに基づいて分類され、ハイブリッド、ツイスト(twisted;チルト角は、液晶分子の配向ベクトルおよび支持基板のあいだの角
度であるねじれ)などに分類される。ホモジニアス(homogenerous;平行)は、配向ベクトルが基板に平行で、かつ一方向に並んでいる状態をいう。ホモジニアス配向におけるチルト角の例は0度から5度である。ホメオトロピック(homeotropic;垂直)は、配向ベ
クトルが基板に垂直である状態をいう。ホメオトロピック配向におけるチルト角の例は、85度から90度である。ハイブリッド(hybrid)は、配向ベクトルが基板から離れるにしたがって、平行から垂直に立ちあがっている状態をいう。チルト配向におけるチルト角(傾き角)の例は5度から85度である。ツイストは、配向ベクトルが基板に平行ではあるが、らせん軸を中心に階段状にねじれている状態をいう。ツイスト配向におけるチルト角の例は0度から5度である。
【0025】
[重合性液晶組成物]
<主成分>
本発明の重合性液晶組成物は、第1成分、第2成分および第3成分を含有し、第1成分は上記式(1−1)および式(1−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物(1)であり、第2成分は上記式(2−1)で表される群から選択される少なくとも1つの化合物(2)であり、第3成分は上記式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物(3)である。
【0026】
上記式(1−1)および式(1−2)において、Y1は独立に−O−または−O−CO
−O−である。W1は独立に水素またはフッ素であり、好ましくは水素である。W2は水素またはメチルであり、好ましくはメチルである。R1およびR2は独立に水素またはメチルである。P1、P2、P3およびP4は、独立に上記式(A1)〜(A8)で表される重合性基のいずれかであり、好ましくは重合性基(A1)である。k1、k2、q1およびq2は独立に0〜1の整数であり、好ましくは1である。m1、m2、j1およびj2は独立に1〜10の整数であり、好ましくは2〜8の整数であり、さらに好ましくは2〜6の整数である。
【0027】
式(2−1)において、R3およびR4は独立に水素または炭素数1〜10のアルキルであり、好ましくは水素または炭素数1〜8のアルキルであり、さらに好ましくは水素または炭素数2〜6のアルキルである。P5は重合性基(A1)〜(A8)のいずれかであり
、好ましくは重合性基(A1)である。q3は0〜1の整数であり、好ましくは1である
。j3は1〜10の整数であり、好ましくは2〜8の整数であり、さらに好ましくは2〜
6の整数である。
【0028】
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1、X2およびX3は、そ
れぞれ独立に単結合、−(CH22−または−HC=CH−であり、X2およびX3は独立に単結合または−(CH22−であることが好ましい。W3、W4およびW5は、それぞれ
独立に水素またはフッ素であり、好ましくは水素である。P6、P7、P8、P9、P10およびP11は、重合性基(A1)〜(A8)のいずれかであり、好ましくは重合性基(A1)である。k3、k4、k5、q4、q5およびq6は、それぞれ独立に0〜1の整数であり、好ましくは1である。m3、m4、m5、j4、j5およびj6は、それぞれ独立に1〜10の整数であり、好ましくは2〜8の整数であり、さらに好ましくは4〜6の整数である。
【0029】
重合性液晶を構成する第1成分の化合物(1)は、液晶相の温度範囲が広いので、組成物の液晶温度範囲を調整する目的に使用する。また、化合物(1)は、他の重合性液晶との相溶性に優れているので、これを用いて好適に重合性液晶組成物を調製することができる。化合物(1)の好ましい例を以下に示す。
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
重合性液晶組成物を構成する第2成分の化合物(2)は、ハイブリッド配向性を発現させる目的で使用する。化合物(2)の好ましい例を以下に示す。
【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
【化16】

【0045】
【化17】

【0046】
【化18】

【0047】
【化19】

【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
【化22】

【0051】
【化23】

【0052】
重合性液晶組成物を構成する第3成分の化合物(3)は、重合性液晶組成物の配向を安定化させる目的で使用する。重合性液晶組成物が化合物(3)を含むことにより、配向欠陥を少なくすることができる。化合物(3)は液晶相を有する化合物でなくてもよい。化合物(3)の好ましい例を以下に示す。
【0053】
【化24】

【0054】
【化25】

【0055】
【化26】

【0056】
【化27】

【0057】
本発明の重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合、第1成分の割合は20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%であり、第2成分の割合は30〜50重量%、好ましくは35〜45重量%であり、第3成分の割合は20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%である。
【0058】
第1成分、第2成分および第3成分の含有割合が上記範囲内にあることにより、均一なハイブリッド配向を示すとともに、室温で十分安定したネマチック相を有する組成物を得ることができる。なお、第1成分、第2成分および第3成分のいずれも、1つの化合物を用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせてもよい。
【0059】
化合物(1)〜(3)は、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載された、有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより合成できる。
【0060】
化合物(1−1)は、特開2003−238491号公報、特開2006−307150号公報、特開2005−60373号公報に記載の方法に従って合成することができる。化合物(1−2)は、Macromol.Chem.,190,3201-3215(1998)、WO97/00600に記載の方法に従って合成することができる。化合物(2−1)は、WO00/59966、WO02/090447、特願2005−355180号、特願2005−355181号に記載の方法に従って合成することができる。化合物(3−1)は特開2004−231638号公報に記載の方法に従って合成することができる。化合物(3−2)および化合物(3−3)は、特願2005−169337号に記載の方法に従って合成することができる。
【0061】
<組成物の特性>
本発明の重合性液晶組成物を基板上で重合させて得られる光学異方性フィルムは、均一で良好なハイブリッド配向性を示し、フィルム表面にベタつきがない。また、重合前には室温で十分安定したネマチック相を有している。したがって、重合体の製造工程において、組成物を基板に塗布し、予備焼成した後に、紫外線照射によって重合体を得るまでの間、すぐに結晶が析出することはないことから、本発明の重合性液晶組成物は、室温で十分安定したネマチック相を有し、非常に取扱いが容易であるといえる。
【0062】
本発明の重合性液晶組成物は、配向処理した表面を有するガラス基板や、ラビングなどの配向処理がされた透明な高分子支持基板などの上で容易に配向する。得られる重合性液晶層は、配向の欠陥がないか、または少なく、塗工性に優れている。
【0063】
本発明の重合性液晶組成物は、室温で十分安定したネマチック相を有し、ラジカル重合触媒や光カチオン重合触媒の存在下、紫外線などの照射によって室温で重合する。支持基板上に得られた重合体である液晶フィルムは、光学異方性を有する液晶フィルムであり、配向ベクトルが基板から離れるにしたがって平行から垂直に立ちあがるハイブリッド配向を示す。
【0064】
<添加剤>
本発明の重合性液晶組成物は、必要に応じて、上記化合物(1)〜(3)以外の重合性化合物(以下「その他の重合性化合物」ともいう。)や添加物などをさらに含有してもよい。その他の重合性化合物は、組成物や重合体の特性をさらに調節するのに適している。添加剤としては、たとえば、シランカップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、微粒子、溶媒などが挙げられる。これらの添加物は、重合体の物性を調整するために用いたり、単量体を重合させるために用いることができる。組成物を希釈するためには有機溶媒が好ましい。これらの添加物の量は、その目的を達する程度の少ない量が好ましい。その他の重合性化合物および添加物の例を以下に示す。
【0065】
次の三例は、任意の成分として用いられる重合性の非液晶化合物である。
第一の例は、ラジカル重合に適した化合物である。このような化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸
ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、o−、m−またはp−クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンなどが挙げられる。これらの化合物は、組成物の粘度を調整するのに適している。これらの化合物は、−OCOCH=CH2を有する化合物を主成分とする組成物に添
加するのに適している。
【0066】
第二の例は、ラジカル重合に適した多官能アクリレートである。好ましい多官能アクリレートとしては、たとえば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、トリスアクリロキシエチルフォスフェート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(大阪有機化学株式会社製、商品名:ビスコート700)、ポリエチレングリコールジアクリレートでなどが挙げられる。これらの化合物は、重合体の被膜形成能をさらに高めるのに適している。
【0067】
第三の例は、カチオン重合に適した重合性化合物である。このような化合物としては、たとえば、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールメチルビニルエーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、ジ(3−エチル−オキセタ−3−イルメチル)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。これらの化合物は、組成物の粘度を調整するのに適している。また、オキセタン環またはオキシラン環を有する化合物を主成分とする組成物に添加するのに適している。
【0068】
シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロトリアルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。別の例としては、これらの化合物において、3つのアルコキシ基のうちの1つをメチルに置き換えたジアルコキシメチルシランなどが挙げられる。好ましいシランカップリング剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0069】
界面活性剤としては、たとえば、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。界面活性剤は、組成物を支持基板などに塗布するのを容易にするなどの効果を有する。界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類、組成物の組成比などにより異なるが、重合性化合物の全重量に基づいて、好ましくは100ppm〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%の範囲である。
【0070】
酸化防止剤としては、たとえば、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾ
ール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルフォスファイト、トリアルキルフォスファイトなどが挙げられる。好ましい市販品としては、チバ・スペシャリティーズ製の「イルガノックス245」、「イルガノックス1035」などが挙げられる。
【0071】
紫外線吸収剤としては、たとえば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製の「TINUVIN PS」、「TINUVIN 292」、「TINUVIN 109」、「TINUVIN 328」、「TINUVIN 384−2」、「TINUVIN 123」、「TINUVIN 400」、「TINUVIN 400L」などが挙げられる。
【0072】
微粒子の材質としては、たとえば、無機物、有機物、金属などが挙げられる。微粒子の粒径は、好ましくは0.001〜0.1μm、さらに好ましくは0.001〜0.05μmである。材質にもよるが、凝集現象を防止するために小さい粒径が好ましく、粒径の分布はシャープな方が好ましい。このような微粒子は、光学異方性の調整や重合体の強度向上などに有用である。微粒子の含有量は、重合性化合物の全重量に基づいて、好ましくは0.1〜30重量%である。添加の目的を達する限り、少ない割合が好ましい。
【0073】
微粒子の材質である無機物としては、たとえば、セラミックス、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライポンタイト、ZnO、TiO2、CeO2、Al23、Fe23、ZrO2、MgF2、SiO2、SrCO3、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Ga(OH)3、Al(OH)3、Mg(OH)2、Zr(OH)4などが挙げられる。炭酸カルシウムの針状結晶などの微粒子は光学異方性を有する。このような微粒子によって、重合体の光学異方性を調節できる。また、微粒子の材質である有機物としては、たとえば、カーボンナノチューブ、フラーレン、デンドリマー、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリイミドなどが挙げられる。
【0074】
光ラジカル重合開始剤は汎用品を用いることができる。たとえば、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製品の「DAROCUR1173」(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)、「IRGACURE184」(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、「IRGACURE651」(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、「IRGACURE500」、「IRGACURE2959」、「IRGACURE907」、「IRGACURE369」、「IRGACURE1300」、「IRGACURE819」、「IRGACURE1700」、「IRGACURE1800」、「IRGACURE1850」、「DAROCUR4265」、「IRGACURE784」などである。このような開始剤は、組成物の主成分に−OCOCH=CH2を有する化合物がある場合に適している。
【0075】
光ラジカル重合開始剤のその他の例としては、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物などが挙げられる。
【0076】
光カチオン重合開始剤としては、たとえば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。このような開始剤は、組成物の主成分にオキセタン環
またはオキシラン環を有する化合物がある場合に適している。
【0077】
光カチオン重合開始剤の市販品としては、たとえば、みどり化学(株)製のDTS−102、サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−100A、UCC社製のサイラキューアーUVI−6990、サイラキュアーUVI−6974、サイラキュアーUVI−6992」、旭電化(株)製のアデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172、ローディア社製のPHOTOINITIATOR2074、チバスペシャリティー社製のIRGACURE250、GEシリコンズ社製のUV−9380Cなどが挙げられる。
【0078】
溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどが挙げられる。溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒は、例えば、組成物を支持基板に塗布するときに用いられる。
【0079】
[重合体]
本発明の重合性液晶組成物を重合させることによって重合体が得られる。この重合体は、室温で十分安定したネマチック相を有し、さらに、重合前後で均一なハイブリッド配向性を示し、重合後には所望の配向形態を容易に達成し、薄膜の表面にベタつきがない。なお、重合体フィルムを調製するに際し、組成物の室温液晶安定性に優れるという特性が特に重要である。
【0080】
重合反応の種類は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、リビング重合などである。組成物中の重合性化合物が有する重合性基の種類によって、適当な反応を選択する。化合物(1)、(2)、(3)の重合性基によって例示すると、重合性基(A1)、(A2)、(A3)または(A4)の場合、好ましい反応はラジカル重合であり、重合性基(A5)、(A6)、(A7)または(A8)の場合、好ましい反応はカチオン重合である。優れた配向の重合体を得るときは、熱重合よりも光重合開始剤を用いた重合が好ましい。組成物が液晶である条件下で、重合を行なわせるのが容易だからである。
【0081】
光重合に用いられる光の種類は、通常、紫外線、可視光線、赤外線などであるが、電子線、X線などの電磁波を用いてもよい。これらの中では、紫外線および可視光線が好ましい。波長の範囲は、好ましくは150〜500nm、さらに好ましくは250〜450nm、特に好ましくは300〜400nmである。
【0082】
光源は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などである。好ましい光源は超高圧水銀ランプである。光源からの光はそのまま組成物に照射してもよい。フィルターによって選択した特定の波長(または特定の波長領域)を組成物に照射してもよい。
【0083】
照射エネルギー密度は、好ましくは2〜5000mJ/cm2、さらに好ましくは10
〜3000mJ/cm2、特に好ましくは100〜2000mJ/cm2である。照度は、好ましくは0.1〜5000mW/cm2、さらに好ましくは1〜2000mW/cm2である。組成物が液晶相を有するように、光を照射するときの温度を設定する。好ましい照射温度は100℃以下である。100℃以下の温度であれば熱による重合が起こりにくいので、良好な配向が得られる。
【0084】
重合体の形状は、フィルム、板、粒、粉末などである。重合体は成形されてもよい。フィルムの重合体を得るには、支持基板が一般的に用いられる。支持基板の上に組成物を塗布し、液晶相を有している塗膜(paint film)を重合させるとフィルムが得られる。好ましい重合体の厚さは、重合体の光学異方性の値および用途に依存する。したがって、その範囲を厳密に決定することはできないが、好ましい厚さは0.05〜50μm、さらに好ましくは0.1〜20μm、特に好ましくは0.5〜10μmの範囲である。これらの重合体のヘイズ値(haze value;曇り度)は、概して1.5%以下である。これらの重合体の透過率は、可視光領域において一般的に80%以上である。このような重合体は液晶表示素子に用いる光学異方性の薄膜として適している。
【0085】
支持基板としては、たとえば、ガラス基板や、トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略記することがある。)、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの樹脂フィルムが挙げられる。市販の樹脂フィルムとしては、たとえば、JSR(株)の「アートン」、日本ゼオン(株)の「ゼオネックス」および「ゼオノア」、三井化学(株)の「アペル」などが挙げられる。樹脂フィルムは、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどである。好ましい支持基板は、配向処理されたガラス基板、TACフィルムまたはノルボルネン樹脂フィルムであり、特に好ましい支持基板は、ラビング処理されたポリイミド配向膜を表面に有するガラス基板、ケン化処理したTACフィルムまたは親水化処理したノルボルネン樹脂フィルムである。なお、前記親水化処理とは、プラズマ処理またはコロナ処理である。
【0086】
支持基板上の塗膜は、組成物をそのまま塗布することによって調製される。塗膜は、組成物を適切な溶媒に溶解させて塗布した後、溶媒を除去することによっても調製される。塗布の方法は、スピンコート、ロールコート、カーテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、デップコート、スプレーコート、メニスカスコート、流延成膜法などである。
【0087】
組成物において、液晶分子の配向を決定する因子は、1)組成物に含有される化合物の種類、2)支持基板の種類、3)配向処理の方法などである。因子1)としては、化合物(1)〜(3)などの種類や組成比などが挙げられる。因子2)としては、支持基板を構成する重合体などの種類などが挙げられる。因子3)としては、レーヨン布などで一方向にこする(ラビング)方法、酸化ケイ素を斜方蒸着させる方法、スリット状にエッチング加工する方法などの配向処理方法が挙げられる。ラビング処理においては、支持基板を直接的にラビングしてもよく、あるいは、支持基板をポリイミドやポリビニルアルコールなどの薄膜でコーティングし、この薄膜をラビングしてもよい。
【0088】
本発明の重合体の用途は次のとおりである。本発明の重合体は、光学異方性を有する成形体として使用できる。この重合体の用途の例は、位相差板(1/2波長板、1/4波長板など)、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜などの光学フィルムである。ホモジニアス、ハイブリッド、ホメオトロピックなどの配向を有する重合体は、位相差板、偏光素子、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜などに利用できる。このような
重合体は、液晶表示素子の位相差板や視野角補償膜などに、光学補償を目的として用いられる。産業上の重要な用途の例は、VAモード、IPSモード、TNモード、MVAモードなどの液晶表示素子における視野角補償である。この重合体は、高熱伝導性エポキシ樹脂、接着剤、機械的異方性を持つ合成高分子、化粧品、装飾品、非線型光学材料、情報記憶材料などにも利用できる。
【0089】
重合体の用途の一例である位相差板は、偏光の状態を変換する機能を有する。たとえば、1/2波長機能板は、直線偏光の振動方向を90度回転させる機能を有する。この1/2波長機能板は、d=λ/2×Δnの式(dは組成物の厚さ、λは波長、Δnは光学異方性)を満たすように組成物を支持基板上に塗布して配向させた後、光重合させることによって得られる。一方、1/4波長機能板は、直線偏光を円偏光に、または円偏光を直線偏光に変換する機能を有する。この場合、d=λ/4×Δnの条件を満たすように組成物の塗膜を調製すればよい。
【0090】
重合体の厚さ(d)は次のように調整される。組成物を溶媒で希釈した後、支持基板上に塗布する方法では、組成物の濃度、塗布する方法、塗布する条件などを適切に選択することによって、目的とする厚さの塗膜を得ることができる。液晶セルを利用する方法も好ましい。液晶セルはポリイミドなどの配向膜を有しているので都合がよい。この液晶セルに組成物を注入する場合には、液晶セルの間隔によって塗膜の厚さを調整することができる。
【0091】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0092】
なお、以下の実施例等で用いた化合物は、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・
シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(
丸善)などに記載された、有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより合成できる。
【0093】
化合物(1−1−27)は特開2003−238491号公報、化合物(1−1−31)は特開2005−60373号公報に記載の方法に従って合成した。化合物(1−2−2)は、Macromol.Chem.,190,3201-3215(1998)、WO97/00600に記載の方法に従って合成した。化合物(2−1−11)および化合物(2−1−20)は、WO00/59966、WO02/090447、特願2005−355180号に記載の方法に従って合成した。化合物(2−1−37)は特願2005−355181号に記載の方法に従って合成した。化合物(3−1−7)および化合物(3−1−12)は特開2004−231638号公報に記載の方法に従って合成した。化合物(3−2−3)および化合物(3−3−3)は、特願2005−169337号に記載の方法に従って合成した。化合物(CP1)は、特開2005−320317号公報に記載の方法に従って合成した。
【0094】
また、フィルムの配向については、以下に示す目視による観察と、偏光解析装置を用いた測定とで判定した。
1)目視による観察
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に重合体フィルムを狭持して、フィルム面に垂直方向(傾斜角は0度)から光を照射した。照射の傾斜角を0度から例えば50度に増大させながら透過光の変化を観察した。照射を傾ける方向は、ラビングの方向(液晶の長
軸方向)に一致させた。垂直方向からの透過光が最大であり、垂直方向を中心にラビング方向の左右で透過光強度が対称であることが確認された場合には、ホモジニアス配向(図2参照)であると判断した。ホモジニアス配向では、液晶の配向ベクトルが支持基板(TACフィルム)と平行であるからである。一方、垂直方向を中心にラビング方向の左右で非対称の変化であることが確認された場合には、この液晶分子の配向ベクトルが支持基板(TACフィルム)に対して傾いていることを示すため、ハイブリッド配向(図1参照)であると判断した。
【0095】
2)偏光解析装置を用いた測定
シンテック(株)製偏光解析装置(商品名;OPTIPRO)を用いて、重合体フィルムに550nmの波長の光を照射し、この光の入射角度をフィルム面に対して垂直方向からラビング方向に傾斜させながらレタデーションを測定した。レタデーションはΔn×dで表される。Δnは光学異方性であり、dは重合体フィルムの厚さである。
【0096】
〔実施例1〕
<組成物(PLC−1)の調製>
以下に示す化合物(1−1−27)30重量%、化合物(2−1−11)40重量%および化合物(3−1−7)30重量%から成る組成物(MIX1)を調製した。
【0097】
【化28】

【0098】
次に、得られた組成物(MIX1)に重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:IRGACURE 907)を3重量%加えた後、混合溶媒(重量比;トルエン/シクロペンタノン=2:1)を加えて20重量%の溶液を調製して組成物(PLC−1)を得た。
【0099】
<組成物(PLC−1)の安定性評価>
支持基板として、ケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−1)を、バーコーターを用いてTACフィルムに塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去した。生成した塗膜を室温で静置し、表面から結晶の析出が発生するか否かについて観察し、組成物の安定性を評価した。その結果、3日経過しても結晶の析出も無く、組成物(PLC−1)は十分に安定な組成物であることを確認した。
【0100】
<重合体フィルム(F1)の評価>
組成物(PLC−1)の安定性評価と同様に、支持基板としてケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−1)を、バーコーターを用いてTACフィルム上に塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。生成した塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いて紫外線(30mW/cm2;365nm)
を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射した。これにより重合体フィルム(F1)が得られた。目視による観察では、重合体フィルム(F1)の配向はハイブリッド配向であった。また、偏光解析装置による測定結果(図1に示す)によってもハイブリッド配向であることを確認した。
【0101】
〔実施例2〕
<組成物(PLC−2)の調製>
以下に示す化合物(1−2−2)30重量%、化合物(2−1−20)45重量%および化合物(3−2−3)25重量%から成る組成物(MIX2)を調製した。
【0102】
【化29】

【0103】
次に、得られた組成物(MIX2)に重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:IRGACURE 651)を3重量%加えた後、混合溶媒(重量比;トルエン/シクロペンタノン=2:1)を加えて20重量%の溶液を調製して組成物(PLC−2)を得た。
【0104】
<組成物(PLC−2)の安定性評価>
支持基板として、ケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−2)を、バーコーターを用いてTACフィルムに塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去した。生成した塗膜を室温で静置し、表面から結晶の析出が発生するか否かについて観察し、組成物の安定性を評価した。その結果、3日経過しても結晶の析出も無く、組成物(PLC−2)は十分に安定な組成物であることを確認した。
【0105】
<重合体フィルム(F2)の評価>
組成物(PLC−2)の安定性評価と同様に、支持基板としてケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−2)を、バーコーターを用いてTACフィルム上に塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。生成し
た塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いての紫外線(30mW/cm2;365nm
)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射した。これにより重合体フィルム(F2)が得られた。目視による観察では、重合体フィルム(F2)の配向はハイブリッド配向であった。また、偏光解析装置による測定結果からもハイブリッド配向であることを確認した。
【0106】
〔実施例3〕
<組成物(PLC−3)の調製>
以下に示す化合物(1−1−27)30重量%、化合物(2−1−11)40重量%および化合物(3−3−3)30重量%から成る組成物(MIX3)を調製した。
【0107】
【化30】

【0108】
次に、得られた組成物(MIX3)に重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:IRGACURE 907)を3重量%加えた後、混合溶媒(重量比;トルエン/シクロペンタノン=2:1)を加えて20重量%の溶液を調製して組成物(PLC−3)を得た。
【0109】
<組成物(PLC−3)の安定性評価>
支持基板として、ケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−3)を、バーコーターを用いてTACフィルムに塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去した。生成した塗膜を室温で静置し、表面から結晶の析出が発生するか否かについて観察し、組成物の安定性を評価した。その結果、3日経過しても結晶の析出も無く、組成物(PLC−3)は十分に安定な組成物であることを確認した。
【0110】
<重合体フィルム(F3)の評価>
組成物(PLC−3)の安定性評価と同様に、支持基板としてケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−3)を、バーコーターを用いてTACフィルム上に塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。生成した塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いての紫外線(30mW/cm2;365nm
)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射した。これにより重合体フィルム(F3)が得られた。目視による観察では、重合体フィルム(F3)の配向はハイブリッド配向であった。また、偏光解析装置による測定結果からもハイブリッド配向であることを確認した。
【0111】
〔実施例4〕
<組成物(PLC−4)の調製>
以下に示す化合物(1−1−31)35重量%、化合物(2−1−37)40重量%および化合物(3−1−12)25重量%から成る組成物(MIX4)を調製した。
【0112】
【化31】

【0113】
次に、得られた組成物(MIX4)に重合開始剤(サンアプロ製、商品名:CPI−100P)を3重量%加えた後、混合溶媒(重量比;トルエン/シクロペンタノン=2:1)を加えて20重量%の溶液を調製して組成物(PLC−4)を得た。
【0114】
<組成物(PLC−4)の安定性評価>
支持基板として、ケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−4)を、バーコーターを用いてTACフィルムに塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去した。生成した塗膜を室温で静置し、表面から結晶の析出が発生するか否かについて観察し、組成物の安定性を評価した。その結果、3日経過しても結晶の析出も無く、組成物(PLC−4)は十分に安定な組成物であることを確認した。
【0115】
<重合体フィルム(F4)の評価>
組成物(PLC−4)の安定性評価と同様に、支持基板としてケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−4)を、バーコーターを用いてTACフィルム上に塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。生成した塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いての紫外線(30mW/cm2;365nm
)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射した。これにより重合体フィルム(F4)が得られた。目視による観察では、重合体フィルム(F4)の配向はハイブリッド配向であった。また、偏光解析装置による測定結果からもハイブリッド配向であることを確認した。
【0116】
〔比較例1〕
<組成物(PLC−5)の調製>
以下に示す化合物(CP1)35重量%および化合物(1−1−31)65重量%から成る組成物(MIX5)を調製した。
【0117】
【化32】

【0118】
次に、組成物(MIX5)に重合開始剤(みどり化学(株)製、商品名:DTS−102)を3重量%加えた後、混合溶媒(重量比;トルエン/シクロペンタノン=2:1)を加えて20重量%の溶液を調製して組成物(PLC−5)を得た。
【0119】
<組成物(PLC−5)の安定性評価>
支持基板としてケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−5)を、バーコーターを用いてTACフィルムに塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去した。生成した塗膜を室温で静置し、表面から結晶の析出が発生するか否かについて観察し、組成物の安定性を評価した。その結果、組成物(PLC−5)はわずか8分で結晶が析出し始め、液晶相が十分に安定な組成物ではないことを確認した。
【0120】
<重合体フィルム(F5)の評価>
組成物(PLC−5)の安定性評価と同様に、支持基板としてケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−5)を、バーコーターを用いてTACフィルムに塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。生成した塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いての紫外線(30mW/cm2;365nm)
を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射した。これにより重合体フィルム(F5)が得られた。目視による観察では、重合体フィルム(F5)の配向はハイブリッド配向であった。また、偏光解析装置による測定結果からもハイブリッド配向であることを確認した。
【0121】
〔比較例2〕
<組成物(PLC−6)の調製>
以下に示す化合物(1−1−27)60重量%および化合物(3−1−7)40重量%から成る組成物(MIX6)を調製した。
【0122】
【化33】

【0123】
次に、得られた組成物(MIX6)に重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:IRGACURE 907)を3重量%加えた後、混合溶媒(重量比;トルエン/シクロペンタノン=2:1)を加えて20重量%の溶液を調製して組成物(PLC−6)を得た。
【0124】
<組成物(PLC−6)の安定性評価>
支持基板として、ケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−6)を、バーコーターを用いてTACフィルムに塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去した。生成した塗膜を室温で静置し、表面から結晶の析出が発生するか否かについて観察し、組成物の安定性を評価した。その結果、組成物(PLC−6)はわずか7分で結晶が析出し始め、液晶相が十分に安定な組成物ではないことを確認した。
【0125】
<重合体フィルム(F6)の評価>
組成物(PLC−6)の安定性評価と同様に、支持基板としてケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−6)を、バーコーターを用いてTACフィルム上に塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。生成した塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いての紫外線(30mW/cm2;365nm
)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射した。これにより重合体フィルム(F6)が得られた。目視による観察では、重合体フィルム(F6)の配向はホモジニアス配向であった。また、偏光解析装置による測定結果(図2に示す)によってもホモジニアス配向であることを確認した。
【0126】
〔比較例3〕
<組成物(PLC−7)の調製>
以下に示す化合物(1−1−27)70重量%および化合物(2−1−11)30重量%から成る組成物(MIX7)を調製した。
【0127】
【化34】

【0128】
次に、得られた組成物(MIX7)に重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:IRGACURE 907)を3重量%加えた後、混合溶媒(重量比;トルエン/シクロペンタノン=2:1)を加えて20重量%の溶液を調製して組成物(PLC−7)を得た。
【0129】
<組成物(PLC−7)の安定性評価>
支持基板として、ケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−7)を、バーコーターを用いてTAC
フィルムに塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去した。生成した塗膜を室温で静置し、表面から結晶の析出が発生するか否かについて観察し、組成物の安定性を評価した。その結果、組成物(PLC−7)はわずか5分で結晶が析出し始め、液晶相が十分に安定な組成物ではないことを確認した。
【0130】
<重合体フィルム(F7)の評価>
組成物(PLC−7)の安定性評価と同様に、支持基板としてケン化処理したTACフィルムを、予めフィルムの表面をレーヨン布によりラビング処理して用いた。組成物(PLC−7)を、バーコーターを用いてTACフィルム上に塗布した後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。生成した塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いての紫外線(30mW/cm2;365nm
)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射した。これにより重合体フィルム(F7)が得られた。目視による観察では、重合体フィルム(F7)の配向はハイブリッド配向であった。また、偏光解析装置による測定結果からもハイブリッド配向であることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】実施例1で得られた重合体フィルム(F1)のレタデーションを測定した結果を示すグラフである。
【図2】比較例2で得られた重合体フィルム(F6)のレタデーションを測定した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分として下記式(1−1)および式(1−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物と、第2成分として下記式(2−1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物と、第3成分として下記式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物とを含有することを特徴とする重合性液晶組成物。
【化1】

[式(1−1)および式(1−2)において、
1は独立に−O−または−O−CO−O−であり;
1は独立に水素またはフッ素であり、W2は水素またはメチルであり;
1およびR2は独立に水素またはメチルであり;
1、P2、P3およびP4は独立に下記式(A1)〜(A8)のいずれかで表される重合性基であり;
1、k2、q1およびq2は独立に0〜1の整数であり;
1、m2、j1およびj2は独立に1〜10の整数であり;
式(2−1)において、
3およびR4は独立に水素または炭素数1〜10のアルキルであり;
5は下記式(A1)〜(A8)のいずれかで表される重合性基であり;
3は0〜1の整数であり;j3は1〜10の整数であり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、
1、X2およびX3は、それぞれ独立に単結合、−(CH22−または−HC=CH−で
あり;
3、W4およびW5は、それぞれ独立に水素またはフッ素であり;
6、P7、P8、P9、P10およびP11は独立に下記(A1)〜(A8)のいずれかで表される重合性基であり;
3、k4、k5、q4、q5およびq6は独立に0〜1の整数であり;
3、m4、m5、j4、j5およびj6は独立に1〜10の整数である。]
【化2】

【請求項2】
第1成分の含有割合が20〜40重量%の範囲であり、第2成分の含有割合が30〜50重量%の範囲であり、第3成分の含有割合が20〜40重量%の範囲であり(ただし、重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合。);
式(1−1)および式(1−2)において、Y1が独立に−O−または−O−CO−O
−であり;W1が独立に水素であり;W2が水素またはメチルであり;R1およびR2が独立に水素またはメチルであり;P1、P2、P3およびP4が式(A1)で表される重合性基であり;k1、k2、q1およびq2が1であり;m1、m2、j1およびj2が独立に2〜8の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4が独立に水素または炭素数1〜8のアルキルであり;P5が式(A1)で表される重合性基であり;q3が1であり;j3が2〜8の整数で
あり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1、X2およびX3が、そ
れぞれ独立に単結合、−(CH22−または−HC=CH−であり;W3、W4およびW5
が、それぞれ独立に水素またはフッ素であり;P6、P7、P8、P9、P10およびP11が式(A1)で表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6が1であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6が独立に2〜8の整数であること
を特徴とする請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
第1成分が式(1−1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物であり;
第1成分の含有割合が25〜35重量%の範囲であり、第2成分の含有割合が35〜45重量%の範囲であり、第3成分の含有割合が25〜35重量%の範囲であり(ただし、重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合。);
式(1−1)において、W1が水素であり;R1およびR2が独立に水素またはメチルで
あり;P1およびP2が式(A1)で表される重合性基であり;k1およびq1が1であり;m1およびj1が独立に2〜6の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4が独立に水素または炭素数2〜6のアルキルであり;P5が式(A1)で表される重合性基であり;q3が1であり;j3が2〜6の整数で
あり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1が独立に単結合、−(
CH22−または−HC=CH−であり;X2およびX3が、それぞれ独立に単結合または
−(CH22−であり;W3、W4およびW5が、それぞれ独立に水素であり;P6、P7
8、P9、P10およびP11が式(A1)で表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6が1であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6が独立に4〜6の整数であること
を特徴とする請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
第1成分が式(1−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物であり;
第1成分の含有割合が20〜40重量%の範囲であり、第2成分の含有割合が30〜50重量%の範囲であり、第3成分の含有割合が20〜40重量%の範囲であり(ただし、重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合。);
式(1−2)において、Y1が独立に−O−または−O−CO−O−であり;W2が水素またはメチルであり;P3およびP4が式(A1)で表される重合性基であり;k2および
2が1であり;m2およびj2が独立に2〜8の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4が独立に水素または炭素数1〜8のアルキルであり;P5が式(A1)で表される重合性基であり;q3が1であり;j3が2〜8の整数で
あり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1が独立に単結合、−(
CH22−または−HC=CH−であり;X2およびX3が、それぞれ独立に単結合または−(CH22−であり;W3、W4およびW5が水素であり;P6、P7、P8、P9、P10
よびP11が式(A1)で表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6が1であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6が独立に2〜8の整数であること
を特徴とする請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
第1成分が式(1−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物であり;
第1成分の含有割合が25〜35重量%の範囲であり、第2成分の含有割合が35〜45重量%の範囲であり、第3成分の含有割合が25〜35重量%の範囲であり(ただし、重合性液晶組成物において、第1成分、第2成分および第3成分の合計量を100重量%とした場合。);
式(1−2)において、Y1が独立に−O−または−O−CO−O−であり;W2がメチルであり;P1、P2、P3およびP4が式(A1)で表される重合性基であり;k2および
2が1であり;m2およびj2が独立に2〜6の整数であり;
式(2−1)において、R3およびR4が独立に水素または炭素数2〜6のアルキルであり;P5が式(A1)で表される重合性の基であり;q3が1であり;j3が2〜6の整数
であり;
式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)において、X1が独立に単結合、−(
CH22−または−HC=CH−であり;X2およびX3が、それぞれ独立に単結合または−(CH22−であり;W3、W4およびW5が水素であり;P6、P7、P8、P9、P10
よびP11が式(A1)で表される重合性基であり;k3、k4、k5、q4、q5およびq6が1であり;m3、m4、m5、j4、j5およびj6が独立に4〜6の整数であること
を特徴とする請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
さらに、重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
さらに、溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の重合性液晶組成物からなり、ハイブリッド配向していることを特徴とする重合性液晶層。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の重合性液晶組成物を重合して得られ、かつ配向が固定化されていることを特徴とする重合体。
【請求項10】
請求項8に記載の重合性液晶層を構成する重合性液晶組成物を重合し、配向を固定化することによって得られることを特徴とする光学異方性フィルム。
【請求項11】
基板上に、請求項1〜7のいずれかに記載の重合性液晶組成物を塗布し、ハイブリッド配向させて重合性液晶層を形成し、該液晶層を構成する重合性液晶組成物を重合して配向を固定化することを特徴とする光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項12】
基板が、トリアセチルセルロースフィルムまたはノルボルネン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項11に記載の光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項13】
基板が、ラビング処理されたポリイミド配向膜を表面に有するガラス基板、鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルムまたは親水化処理したノルボルネン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項11に記載の光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項14】
ノルボルネン系樹脂フィルムの親水化処理が、プラズマ処理またはコロナ処理であることを特徴とする請求項13に記載の光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の光学異方性フィルムを有することを特徴とする光学補償素子。
【請求項16】
請求項10に記載の光学異方性フィルムと偏光板とを有することを特徴とする光学素子。
【請求項17】
請求項15に記載の光学補償素子を、液晶セルの内面または外面に有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項18】
請求項16に記載の光学素子を、液晶セルの内面または外面に有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−138142(P2008−138142A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328530(P2006−328530)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】