説明

重合溶液から製造されるポリイミド膜

本発明はポリイミド膜と、該膜を製造するための転相法とに関する。このポリイミド膜は多様なガス混合物の分離に使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドが固体の形とくに乾燥された固体とりわけ乾燥された粉末として単離されて、次いで再溶解されるということなく、ポリイミド重合溶液から直接に製造されるポリイミド膜に関する。本発明に係わるポリイミド膜は平膜または中空繊維膜であってよい。これらのポリイミド膜は精密濾過膜、限外濾過膜またはナノ濾過膜の形の多孔質膜であっても、ガスを分離するための非孔質膜であってもよい。すべての膜は一体型非対称膜であり、転相法によって製造される。
【0002】
本発明の目的は、爾後の膜製造工程に支障をもたらすいかなる物質も使用されないポリイミド製造方法を見出すことである。さらに本発明は、本発明による方法によって十分な機械的特性を有する膜の製造を可能にすることである。
【0003】
明記されていないその他の目的は、以下の説明、実施例および請求項の全体的関連から判明する通りである。
【0004】
転相膜の製造には、一般に、水と混合可能な従来の溶媒に溶解するポリマーが必要とされる。この方法により、目下、何千トンものポリエーテルスルホン膜が製造されている。溶媒としてはとりわけ−ただし、それらに限定されるわけではないが−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンが考量される。膜の性質に影響を与えるために、多くの添加剤たとえば補助溶剤、非溶剤、多孔形成剤、親水化剤等が混入される。その際、通例、粒質材料が出発点とされ、流し込み溶液は溶媒および添加剤との混合によって製造される。この場合、使用されるポリマーのモル質量ならびに質量分布も膜製造の成功にとって決定的である。一般に、高いモル質量と狭い質量分布を有するポリマーが求められる。
【0005】
P84は文献中で一般に公知に属するポリマーであり、平膜および中空繊維膜の製造に使用される(米国特許第2006/0156920号明細書、国際公開第04050223号パンフレット、米国特許第7018445号明細書、米国特許第5635067号明細書、欧州公開第1457253号パンフレット、米国特許第7169885号明細書、米国特許第20040177753号明細書、米国特許第7025804号明細書)。P84は2つのタイプ(P84タイプ70およびP84 HT)にて、HP Polymer社、レンツィング/オーストリアにより、粉末の形で販売されている。ユーザはこの粉末を再び双極性非プロトン性溶媒に溶解して、添加剤と混合する。続いて、それから膜が製造される。ただし、これについては、さまざまなユーザ(たとえば、Air Liquide Medal、米国特許第2006/156920号明細書)が、それから製造されたシートおよび膜は非常に脆く、他のポリマーとのブレンドによってのみ安定したシートおよび中空繊維膜がもたらされる旨報じている。この粉末は、それが十分に高いモル質量を有するようにする特別な処理に付されなければならない。(Air Liquide 国際公開第2006/092677号パンフレット)。この場合、処理時間ならびに処理方法が非常に重要である。結果、性質のやや相違する粉末が得られるが、これらの粉末は粘度の相異する流し込み溶液を結果することとなり、それゆえ、均等なポリマー膜の製造を実現することはなかなか困難である。
【0006】
P84は他のポリマーともブレンド加工(米国特許第2006/156920号明細書)されるために、それから製造された膜は十分に高い安定性を有する。ただしこの場合、他のポリマーを混合することによって、非常に優れたガス分離性能、CO2に対する可塑化安定性ならびに多くの溶媒に対する化学安定性が部分的に損なわれもしくはまったく損なわれてしまうことさえあるとの点が短所である。
【0007】
モル質量が低い原因はP84粉末の製造工程にある。その際、ポリマーはモル質量を失う。重合直後のモル質量および粉末製造後のモル質量は第1表に示した通りである。
【0008】
第1表:重合後のモル質量およびP84タイプ70とP84 HATとの粉末製造後のモル質量
【表1】

【0009】
ポリマーは重合溶液から粉末への変換時に沈殿プロセスによってモル質量を失うことが明確に認められる。
【0010】
平膜の製造にもP84粉末が使用される(国際公開第2007/125367号パンフレット、国際公開第2000/06293号パンフレット)。この場合にも、中空繊維膜の製造時と同じ問題が当てはまる。
【0011】
計測法
粘度測定
動力学粘度ηはさまざまな回転数Ω(ないしせん断速度γ)の設定により、25℃の定温にて、円筒状ギャップ内でのポリマー溶液のせん断によって一回、続いて、さまざまなせん断応力τの設定によって求められる。
【0012】
測定器としてはHAAKE RS 600が、液体温度調節可能な計量カップ受けTEF/Z28、円筒状ロータZ25DIN53019/ISO3219およびアルミ使い捨て式計量カップZ25E/D=28mmと共に使用される。
【0013】
所定のせん断速度にてせん断応力τが測定される。動力学粘度ηは以下の式から計算され、せん断速度10s-1にて、Pa.sで表される。
【0014】

【0015】
モル質量測定
モル質量測定はゲル浸透クロマトグラフィーを用いて行われる。キャリブレーションはポリスチレン標準によって行われる。したがって、報告されたモル質量は相対モル質量として理解されなければならない。
【0016】
以下の成分ならびに設定が用いられた:
【表2】

【0017】
透過率
シートのガス透過率はBarrer(10-10cm3.cm-2.cm.s-1.cmHg-1)で表される。中空繊維または平膜のガス浸透度はGPU(ガス透過単位、10-6cm3.cm-2.s-1.cmHg-1)で表される。ナノ濾過膜および限外ろ過膜の流量は1.m-2.h-1.bar-1で表される。
【0018】
ガス透過率
ガス透過率の測定は圧力増加法によって行われる。この場合、10〜70μの厚さを有するフラットシートの片側にガスまたは混合ガスが当てられる。反対側つまり浸透側はテスト開始時に真空(約10-2mbar)が支配的である。浸透側の圧力増加が時間と相関させて記録される。
【0019】
ポリマーの透過率は以下の式によって計算することができる;

【0020】
中空繊維の透過率が測定される場合には、同じ圧力増加法が使用される。
【0021】
浸透度の計算は以下の式によって行われる:

【0022】
さまざまなガス対の選択性は純ガス選択性である。2つのガス間の選択性は透過率の割合から計算される:

【0023】
液体浸透度
平膜の浸透度の測定は、5〜6barの窒素が作用させられるミリポア攪拌セルで行われる。所定の圧力時の単位時間当たり浸透流量が測定される。浸透度は以下から得られる:

【0024】
捕集率Rは以下の式から得られる:

【0025】
捕集率が100%であれば、物質全体が膜によって捕集され、捕集率が0%であれば、膜は溶解した物質全体を透過させる。
【0026】
課題の解決
P84粉末製造時のモル質量低下の問題は、ポリマーが重合後に双極性非プロトン性溶媒中で固体の形とくに乾燥した固体とりわけ乾燥粉末として単離されるのではなく、重合体溶液が直接に膜の製造に使用されることによって回避される。
【0027】
膜製造プロセスは以下の部分ステップに従って行われる:
a) 重合
b) 流し込み溶液の製造
c) 膜製造
重合
ポリイミドの製造は、芳香族テトラカルボン酸無水物が二酸化炭素を遊離しつつ芳香族ジイソシアネートと重縮合することによって行われる。以下に、使用が好ましい物質ならびにそれらの組み合わせを挙げる:
二無水物
3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、スルホニルジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデンジフタル酸二無水物。
【0028】
ジイソシアネート
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,3,4,5−テトラメチル−1,4−フェニレンジイソシアネート。
【0029】
重合は双極性非プロトン性溶媒中で行われる。好ましくは−ただしそれらに限定されるわけではないが−ジチメルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンおよびスルホランが個々にまたは混合されて使用される。
【0030】
この場合、芳香族二無水物または芳香族二無水物の混合物が、10質量%〜40質量%、好ましくは18質量%〜32質量%、特に好ましくは22質量%〜28質量%の濃度にて、双極性非プロトン性溶媒中に溶解され、50℃〜150℃、好ましくは70℃〜120℃、特に好ましくは80℃〜100℃に加熱される。この溶液に、0.01質量%〜5質量%、好ましくは0.05質量%〜1質量%、特に好ましくは0.1質量%〜0.3質量%の塩基触媒が加えられる。触媒として考量されるのは以下の通りである:
・ アルカリ−およびアルカリ土類水酸化物、−メチレート、−エタノレート、−カーボネートおよび−ホスフェートたとえば、ただしそれらに限定されるわけではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチレート、カリウムメチレート、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム。
【0031】
・ 第三アミンたとえば−ただしそれらに限定されるわけではないが−トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジアザビシクロウンデカン、ジアザビシクロオクタン、ジメチルアミノピリジン。
【0032】
続いて、1〜25時間、好ましくは3〜15時間、特に好ましくは5〜10時間にわたってジイソシアネートが加えられる。
【0033】
特に好ましくは、以下のポリイミド
【化1】

[式中、
Rは以下
【化2】

からなる群から選択され、
x、yは、0<x<0.5、1>y>0.5のモル分率である]が製造される。
【0034】
粘度1〜300Pa.s、好ましくは20〜150Pa.s、特に好ましくは40〜90Pa.sを有する、明るい黄色から暗褐色までに及ぶ色調の、澄んだポリマー溶液が生ずる。モル質量Mpは100000g.mol-1を上回っており、したがって、ポリイミドポリマー粉末とくにP84ポリマー粉末とは顕著に相違している。
【0035】
本発明によるポリイミドポリマーは反応後に双極性非プロトン性溶媒中に溶解した形で得られる。ポリマー溶液中には、障害となるいかなる不純物も副産物も存在しない。粘度は非常に高く、膜の製造に適している。こうした理由から、ポリマーを沈殿させ、その後に再び同じ溶媒に溶解させるという方法を採らないことは経済的にも有利である。したがって、溶液は、ポリマーを単離させることなく、好ましくはさらにその他の処理もなしに、流し込み溶液の製造に直接使用される。
【0036】
流し込み溶液の製造
重縮合から得られるポリマー溶液は22質量%〜28質量%の固体含有量を有しており、その他の処理なしに、流し込み溶液の製造に使用することができる。
【0037】
本発明による流し込み溶液は以下の特性によって卓越している:
・ 平膜および中空繊維膜の製造にとって十分高い粘度を有する
・ 膜中の粗大な空隙(マクロボイド)の形成を防止する添加剤を含み得る
・ 所望のポアサイズを有する表面を製造するための揮発性溶媒を含み得る
流し込み溶液の粘度は、それが固体含有量と相関した粘度カーブのいわゆる「からみ合い」点に一致している場合に、理想的である。こうした点とは、粘度と固体含有量との相関性が線形タイプから指数関数タイプに変化する点のことである。この点はまた、モル質量にも非常に強く依存している。モル質量が高くなればなるほど、からみ合いが現れる固体含有量は低くなる。
【0038】
粘度、モル質量およびモル質量分布を考慮すると、本発明によって得られる流し込み溶液は従来の技術による流し込み溶液とは顕著に相違している。ポリイミドの高いモル質量ならびに狭いモル質量分布を有すると共に、高い粘度を有する流し込み溶液は本発明による方法によってのみ得ることができる。したがって、本発明による方法によって、優れた機械的特性を有する膜を製造することが可能である。
【0039】
従来の技術による方法、つまり、粉末状ポリイミドの溶解と、それに続く、モル質量を高めるための後処理とによっては、上記と同等な特性コンビネーションを具備した流し込み溶液が得られない。
【0040】
本発明による方法では、添加剤も加えることが可能である。さまざまな量の添加剤によって種々異なった固体含有量がもたらされ、これによってからみ合い点も変位させることができるであろう。この場合、重合中にモル質量を適合化することによって、このからみ合い点を再度、変位させることが可能である。
【0041】
流し込み溶液の組成が相分離の生ずる濃度から非常に離れている場合、膜製造時の溶媒と非溶媒との勾配は転相によって非常に大きくなり、膜中に大きな空隙が得られる。マクロボイドとも称されるこうした空隙は膜使用時の圧力安定性を低下させる原因となり、膜の使用たとえば天然ガス精製に際する使用を制限することになる。こうしたマクロボイドの形成は非溶媒の添加によって防止することが可能である。これには、以下に挙げた、水と混合可能な溶媒またはそれらの混合物が考量可能である。
【0042】
以下のリストは例示リストとしてのみ見なされなければならない。当業者にはなおその他の溶媒も公知である。
【0043】
・ アルコールたとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ブタンジオール、グリセリン
・ 水
・ ケトンたとえばアセトンまたはブタノン
膜の所定の表面の製造には、基本的に、複数の方法が利用可能である:遅延デミキシング法の他に、揮発性補助溶媒の蒸発も、ガス分離膜分野ならびにナノ濾過/限外ろ過膜分野において、非常に薄い選択層を結果する。蒸発程度と共にポアサイズは、揮発性溶媒の種類、その濃度、蒸発時間、流し込み溶液の温度、蒸発区間における周囲ガスの量および温度に影響される。
【0044】
揮発性溶媒としては以下の溶媒が考量される。これらの溶媒は水と混合可能でなければならず、たとえばアセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジオキサン、ジエチルエーテルである。
【0045】
流し込み溶液の製造は好ましくは、添加剤混合物の追加計量添加によってまたは添加剤を互いに別々に順次に追加計量添加することによって行われる。その際、添加剤は攪拌下でゆっくりと追加計量添加して混合される。追加計量添加は、好ましくは10分〜3時間、特に好ましくは30分〜2時間にわたって行われる。補助溶媒の添加によって滴下箇所周辺でポリイミドの部分的な沈殿が生ずるが、これらの固体は数分後には再び跡形もなく溶解する。透明な溶液は、続いてさらに、スチール製の15μ網目ふるいによって濾過され、膜表面に欠陥を招来するような障害となる不純物が除去される。
【0046】
濾過後、溶液は、密閉容器中に50℃にて2日間放置されて、気泡が除去され、こうして脱気される。
【0047】
中空繊維の製造
脱気され、濾過され、添加剤の加えられたポリイミドポリマー溶液は、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは30〜70℃に調温される。この溶液は歯車ポンプによって二流体ノズルの外側部分を通してポンピングされる。二流体ノズルの外径は600μm、内径は160μmであり、ポンプ性能は1.3〜13.5ml/min.である。二流体ノズルの内側部分では、水と双極性非プロトン性溶媒または複数の双極性非プロトン性溶媒混合物とからなる混合流体がポンピングされる。
【0048】
溶媒としてはとりわけ−ただしそれらに限定されるわけではないが−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、スルホランまたはジメチルスルホキシドが考量される。
【0049】
溶媒と水との組成比は、溶媒10質量%〜95質量%:水90質量%〜5質量%、好ましくは、溶媒30質量%〜90質量%:水70質量%〜10質量%、特に好ましくは溶媒50質量%〜80質量%:水50質量%〜20質量%である。ポンプ性能は0.2ml/min〜10ml/minである。
【0050】
こうして生ずる中空繊維は、次いで、調温された乾燥ガスで満たされたチューブ内に進入する。ガスとして考量されるのは、窒素、空気、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、メタンまたはその他の工業的不活性ガスである。ガスの温度は熱交換器を経て調整され、好ましくは20〜250℃、特に好ましくは30〜150℃、とりわけ特に好ましくは40〜120℃である。
【0051】
チューブ内のガス貫流速度は好ましくは0.1〜10m/min、特に好ましくは0.5〜5m/min、とりわけ特に好ましくは1〜3m/minである。チューブの距離、したがって長さは好ましくは5cm〜1m、特に好ましくは10cm〜50cmである。このようにしてコンディショニングされた糸は、続いて、高分子物質を凝固させ、こうして、膜を形成させる水浴中に浸漬される。水浴の温度は好ましくは1〜60℃、より好ましくは5〜30℃、特に好ましくは8〜16℃である。
【0052】
沈殿浴中の双極性非プロトン性溶媒およびその他の溶媒たとえば−ただしそれらに限定されるわけではないが−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、イソプロパノール、エタノールまたはグリセリンの濃度は0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%、特に好ましくは0.2質量%〜1質量%である。
【0053】
中空繊維の引抜き速度は2〜100m/min、好ましくは10〜50m/min、特に好ましくは20〜40m/minである。繊維はボビンに巻き付けられ、水中で、残留溶媒含有量が1%以下になるまで洗浄される。その後、エタノールおよびヘキサン中での処理が行われる。次いで、繊維は好ましくは室温〜150℃の温度にて、特に好ましくは50〜100℃の温度にて乾燥させられる。こうして、外径100〜1000μm、好ましくは200〜700μm、特に好ましくは250〜400μmの繊維が得られる。
【0054】
したがって、本発明による方法により、さまざまなガスの高度な分離性能を示すポリイミド製中空繊維膜が得られる。第2表にはさまざまなポリマーおよびガスが要約して示されている。
【0055】
第2表:個別ガス測定時の本発明によるさまざまなポリイミド中空繊維の浸透度
中空繊維のポリイミドポリマー
【表3】

【0056】
さらに、膜はCO2分圧が高い場合にもメタンの浸透度の高まりをほとんど示さずに、その選択性を保持し、したがって、ほとんど可塑化しないことに注目すべきである。こうした特性は、たとえば粗製天然ガスまたは粗製バイオガスの精製の場合がそうであるように、高いCO2含有量と高い圧力を有する酸性ガスの処理に不可欠である。
【0057】
中空繊維膜はアミンでも架橋可能である。中空繊維が架橋される場合、それは洗浄ステップに続いて行われる。そのため、中空繊維は1分子当たり少なくとも2個のアミノ基を有するアミンたとえばジアミン、トリアミン、テトラアミンまたはポリアミンを含んだ浴中を通過させられる。アミンは第一アミンまたは第二アミンであってよく、あるいは、1分子内において第一、第二および第三アミンの混合物からなっていてもよい。アミンとして考量されるのは脂肪族アミンおよび芳香族アミンおよびそれらの混合物である。シリコンベースのアミンも考量される。脂肪族ジアミンの例として考量されるのは、特に−ただしそれらに限定されるわけではないが−ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノデカンまたは枝分かれしたまたは環式脂肪族炭化水素のジアミン化合物(たとえば、シス−およびトランス−1,4−シクロヘキサン)およびさらに長鎖の化合物である。
【0058】
芳香族化合物として考量されるのは、特に、ただしそれらに限定されるわけではないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである。
【0059】
脂肪族と芳香族との混合アミンの例として考量されるのは、特に、ただしそれらに限定されるわけではないが、アミノアルキル置換された芳香族炭化水素たとえばp−ビス(アミノメチル)ベンゼンである。
【0060】
シリコンベースのアミンとして考量されるのは、特に、ただしそれらに限定されるわけではないが、さまざまな鎖長を有するビス(アミノアルキル)シロキサンである。
【0061】
多官能価アミンを代表するものとして考量されるのは、特に−ただしそれらに限定されるわけではないが−以下の化合物たとえば、さまざまなモル質量(400〜200000g/mol)を有するオリゴ−ないしポリエチレンイミン、N,N’,N’’−トリメチルビス−(ヘキサメチレン)−トリアミン、ビス−(6−アミノヘキシル)−アミンである。
【0062】
架橋は、それぞれのジアミンの水溶液中または、水ならびに水と混合可能な溶媒または膜構造に影響を与えず、それぞれのアミンを溶解するその他の溶媒からなる混合物へのそれぞれのジアミンの溶液中に中空繊維全体を浸漬するまたは該溶液中を連続的に通過させることによって行われる。そのために考量されるのは、たとえば−ただしそれらに限定されるわけではないが−以下の通りである:
・ アルコールたとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ブタンジオール、グリセリン
・ エーテルたとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールエーテル
・ 双極性非プロトン性溶媒たとえばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドまたはスルホラン
・ ケトンたとえばアセトンまたはメチルエチルケトン
・ その他たとえば酢酸エチルエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、キシレン、脂肪族炭化水素および環式脂肪族炭化水素たとえばヘキサン、ヘプタンまたはシクロヘキサン。
【0063】
ジアミンの濃度は0.01質量%〜10質量%、ただし好ましくは0.05質量%〜5質量%、特に好ましくは0.1質量%〜1質量%である。
【0064】
架橋溶液の温度は1〜100℃、好ましくは10〜70℃、特に好ましくは20〜50℃である。
【0065】
滞留時間は10秒〜10時間、好ましくは1分〜60分、特に好ましくは2〜10分である。
【0066】
残留アミンを除去するために、膜は水で洗浄される。水浴温度は10〜90℃、好ましくは20〜60℃である。水浴中の滞留時間は1〜200分、好ましくは2〜50分、特に好ましくは3〜10分である。
【0067】
もはや従来の有機溶媒たとえば−ただしそれらに限定されるわけではないが−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドまたはスルホラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチルエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンまたはシクロヘキサンに溶解することのない中空繊維が得られる。したがって、それらは有機溶剤中でのナノ濾過、限外濾過および精密濾過に使用することが可能である。
【0068】
平膜の製造
添加剤が混入され、脱気された溶液は、気泡なしで、平膜注入成形装置のスキージーに注入される。スキージーの幅は1.2mまでに達してよい。スキージーの下方を、プラスチック繊維好ましくは−ただしそれらに限定されるわけではないが−ポリイミド、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステルまたはポリフェニレンスルフィドからなる圧延された支持体不織布が0.1〜10m/min、好ましくは1〜5m/minの速度で通過する。不織布の厚さは30〜300μ、好ましくは100〜200μである。単位面積質量は20〜300g/m2、好ましくは50〜150g/m2である。スキージーと不織布との隙間幅は100〜800μ、好ましくは200〜400μである。コートされた不織布は、向流方式でガス流が流れる流路に進入する。ガスとして考量されるのは、特に−ただしそれらに限定されるわけではないが−乾燥空気、窒素、アルゴンまたはヘリウムである。コートされた不織布の周囲を流れるガスの速度はこの場合、100〜5.000m/h、好ましくは200〜1.000m/hであり、ガスの温度は10〜150℃、好ましくは15〜90℃であってよい。続いて、コートされた不織布は沈殿浴に進入し、同所でポリマーは凝固し、所望の膜が形成される。沈殿浴は水から、または、水と水に混合可能な1以上の溶媒との混合物からなる。
【0069】
そのために考量されるのは以下の通りである:
・ アルコールたとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ブタンジオール、グリセリン
・ エーテルたとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールエーテル
・ 双極性非プロトン性溶媒たとえばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドまたはスルホラン
・ ケトンたとえばアセトンまたはメチルエチルケトン。
【0070】
沈殿浴温度は1〜90℃、好ましくは10〜50℃である。10s〜10min、好ましくは1〜5minの短時間の滞留時間の経過後、膜は湿潤状態で巻き取られる。
【0071】
残留溶媒を除去するために、膜は水で洗浄される。水浴温度は10〜90℃、好ましくは20〜60℃である。水浴中の滞留時間は1〜200分、好ましくは2〜50分、特に好ましくは3〜10分である。
【0072】
膜が架橋される場合には、それは洗浄ステップに続いて行われる。そのため、膜は1分子当たり少なくとも2個のアミノ基を含むアミンたとえばジアミン、トリアミン、テトラアミンまたはポリアミンを含んだ浴中を通過させられる。アミンは第一アミンまたは第二アミンであってよく、あるいは、1分子内において第一、第二および第三アミンの混合物からなっていてもよい。アミンとして考量されるのは脂肪族アミンおよび芳香族アミンおよびそれらの混合物である。シリコンベースのアミンも考量される。
【0073】
脂肪族ジアミンの例として考量されるのは、特に−ただしそれらに限定されるわけではないが−ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノデカンまたは枝分かれしたまたは環式脂肪族炭化水素のジアミン化合物(たとえば、シス−およびトランス−1,4−シクロヘキサン)およびさらに長鎖の化合物である。
【0074】
芳香族化合物として考量されるのは、特に、ただしそれらに限定されるわけではないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである。
【0075】
脂肪族と芳香族との混合アミンの例として考量されるのは、特に、ただしそれらに限定されるわけではないが、アミノアルキル置換された芳香族炭化水素たとえばp−ビス(アミノメチル)ベンゼンである。
【0076】
シリコンベースのアミンとして考量されるのは、特に、ただしそれらに限定されるわけではないが、さまざまな鎖長を有するビス(アミノアルキル)シロキサンである。多官能価アミンを代表するものとして考量されるのは、特に−ただしそれらに限定されるわけではないが−以下の化合物たとえば、さまざまなモル質量(400〜200000g/mol)を有するオリゴ−ないしポリエチレンイミン、N,N’,N’’−トリメチルビス−(ヘキサメチレン)−トリアミン、ビス−(6−アミノヘキシル)−アミンである。
【0077】
架橋は、それぞれのジアミンの水溶液中または、水ならびに水と混合可能な溶媒または膜構造に影響を与えず、それぞれのアミンを溶解するその他の溶媒からなる混合物へのそれぞれのジアミンの溶液中に膜全体を浸漬することによって行われる。
【0078】
そのために考量されるのは、たとえば−ただしそれらに限定されるわけではないが−以下の通りである:
・ アルコールたとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ブタンジオール、グリセリン
・ エーテルたとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールエーテル
・ 双極性非プロトン性溶媒たとえばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドまたはスルホラン
・ ケトンたとえばアセトンまたはメチルエチルケトン
・ その他たとえば酢酸エチルエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、キシレン、脂肪族炭化水素および環式脂肪族炭化水素たとえばヘキサン、ヘプタンまたはシクロヘキサン。
【0079】
ジアミンの濃度、架橋溶液の温度、滞留時間および洗浄ステップの実施は中空繊維の架橋について上述した値ないし手順と同じである。
【0080】
洗浄処理ないし架橋処理の終了後に、膜は、爾後の乾燥プロセスに際して多孔性が保持されるようにすべく、含浸させられる。これは、水ならびに水と混合可能な高沸点溶剤の混合物中に膜を浸漬することによって行われる。
【0081】
この場合に考量されるのは、たとえば−ただしそれらに限定されるわけではないが−グリセリン、さまざまな鎖長のポリエチレングリコールの混合物または単独体、さまざまな鎖長のポリエチレングリコールジアルキルエステルの混合物またはメチルエーテルまたはエチルエーテルとしての単独体、沸点200℃以上のモノオールまたはジオールたとえばデカノール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールである。
【0082】
水中における高沸点溶剤の濃度は5%〜95%、ただし好ましくは25質量%〜75質量%である。含浸溶液の温度は1〜100℃、好ましくは10〜70℃、特に好ましくは2〜50℃である。
【0083】
滞留時間は10秒〜10時間、好ましくは1分〜60分、特に好ましくは2〜10分である。
【0084】
含浸後、膜の乾燥が行われる。乾燥は周囲空気によって、または対流式乾燥器内で連続的に行われてよい。乾燥温度は20〜200℃、好ましくは50〜120℃である。乾燥時間は10秒〜10時間、好ましくは1分〜60分、特に好ましくは2〜10分である。乾燥後、完成した膜は巻き取られ、さらに、スパイラル型膜モジュールまたはポケット型膜モジュールに加工可能である。
【0085】
したがって、本発明による平膜および中空繊維膜は、Mp>100000g.mol-1、好ましくは110000〜200000g.mol-1、特に好ましくは120000〜170000g.mol-1を有すると共に、1.7〜2.3、好ましくは1.8〜2.1のPDIを有するポリイミドからなることを特徴としている。この場合、Mpは、ジメチルホルムアミド中臭化リチウム0.01mol/lでの対ポリスチレン標準キャリブレーション時のモル質量分布のピーク最大値に一致している。
【0086】
高いモル質量は膜の強度および靭性に関する機械的特性の改善をもたらす。これは特に高圧使用時に必要である。それゆえ、平膜は稼動中に少なくとも40barに耐えなければならず、天然ガス処理に使用される一定の中空繊維膜は100bar以上の高圧に耐えなければならない。
【0087】
高いモル質量は、固体含有量が低い場合にも十分に高い粘度を設定するのに有利である。流し込み溶液には、それが膜および中空繊維に安定して加工され、表面に密な選択層が製造されるようにすべく、一定の粘度が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、DMF中のP84タイプ70の濃度が溶液の粘度に及ぼす影響:P84重合溶液と、沈殿されて25℃にて再溶解されたポリマーから製造されたP84溶液との比較を示す。
【図2】図2は、マクロボイドのある(左図)およびマクロボイドのない(右図)中空繊維膜の断面を示す。
【図3】図3は、実施例20に示した膜の使用テストを示す。
【0089】
製造例
以下に述べる実施例は本発明をさらに詳細に説明し、理解を深化させようとするものであり、決して本発明を制限するものではない。
【0090】
ポリイミド溶液の製造
実施例1:ジメチルアセトアミド中でのポリイミド溶液P84タイプ70の製造
攪拌装置と還流冷却装置とを備えた3リットルのガラス反応器中に1622gの無水ジメチルアセトアミドが前以て与えられる。それに456.4gの3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が溶解されて、90℃に加熱される。この溶液に0.45gの水酸化ナトリウムが加えられる。窒素の作用下で、64%の2,4−トリレンジイソシアネートと、16%の2,6−トリレンジイソシアネートと、20%の4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンとからなる混合物266.8gが複数時間にわたって追加計量添加される。その際、副産物としてのCO2は逃散し、直接ポリイミドが液中に生ずる。
【0091】
固体含有量25%、粘度49Pa.s.を有する金色の高粘度の溶液が得られる。
【0092】
ゲル浸透クロマトグラフィーによるモル質量算定結果の値は以下の通りである:Mn=80600g.mol-1、Mp=139600g.mol-1、Mw=170000g.mol-1、PDI=2.11。
【0093】
実施例2:ジメチルホルムアミド中でのポリイミド溶液P84タイプ70の製造
攪拌装置と還流冷却装置とを備えた3リットルのガラス反応器中に1622gの無水ジメチルホルムアミドが前以て与えられる。それに456.4gの3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が溶解されて、90℃に加熱される。この溶液に0.45gの水酸化ナトリウムが加えられる。窒素の作用下で、64%の2,4−トリレンジイソシアネートと、16%の2,6−トリレンジイソシアネートと、20%の4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンとからなる混合物266.8gが複数時間にわたって追加計量添加される。その際、副産物としてのCO2は逃散し、直接ポリイミドが液中に生ずる。
【0094】
固体含有量27%、粘度48Pa.s.を有する金色の高粘度の溶液が得られる。ゲル浸透クロマトグラフィーによるモル質量算定結果の値は以下の通りである:Mn=76600g.mol-1、Mp=130500g.mol-1、Mw=146200g.mol-1、PDI=1.91。
【0095】
実施例3:N−メチルピロリドン中でのポリイミド溶液P84タイプ70の製造
攪拌装置と還流冷却装置とを備えた3リットルのガラス反応器中に1800gの無水N−メチルピロリドンが前以て与えられる。それに456.4gの3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が溶解されて、90℃に加熱される。この溶液に0.45gの水酸化ナトリウムが加えられる。窒素の作用下で、64%の2,4−トリレンジイソシアネートと、16%の2,6−トリレンジイソシアネートと、20%の4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンとからなる混合物266.8gが複数時間にわたって追加計量添加される。その際、副産物としてのCO2は逃散し、直接ポリイミドが液中に生ずる。
【0096】
固体含有量25%、粘度45Pa.s.を有する金色の高粘度の溶液が得られる。ゲル浸透クロマトグラフィーによるモル質量算定結果の値は以下の通りである:Mn=65700g.mol-1、Mp=107200g.mol-1、Mw=147000g.mol-1、PDI=2.24。
【0097】
実施例4:N−エチルピロリドン中でのポリイミド溶液P84タイプ70の製造
攪拌装置と還流冷却装置とを備えた3リットルのガラス反応器中に1622gの無水N−エチルピロリドンが前以て与えられる。それに456.4gの3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が溶解されて、90℃に加熱される。この溶液に0.45gの水酸化ナトリウムが加えられる。窒素の作用下で、64%の2,4−トリレンジイソシアネートと、16%の2,6−トリレンジイソシアネートと、20%の4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンとからなる混合物266.8gが複数時間にわたって追加計量添加される。その際、副産物としてのCO2は逃散し、直接ポリイミドが液中に生ずる。
【0098】
固体含有量27%、粘度87Pa.s.を有する金色の高粘度の溶液が得られる。ゲル浸透クロマトグラフィーによるモル質量算定結果の値は以下の通りである:Mn=64600g.mol-1、Mp=105200g.mol-1、Mw=144700g.mol-1、PDI=2.24。
【0099】
実施例5:ジメチルホルムアミド中でのポリイミド溶液P84 T100の製造
攪拌装置と還流冷却装置とを備えた3リットルのガラス反応器中に1800gの無水ジメチルホルムアミドが前以て与えられる。それに473.6gの3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が溶解されて、90℃に加熱される。この溶液に1.8gのジアザビシクロオクタンが加えられる。窒素の作用下で、254.4gの2,4−トリレンジイソシアネートが複数時間にわたって追加計量添加される。その際、副産物としてのCO2は逃散し、直接ポリイミドが液中に生ずる。
【0100】
固体含有量25%、粘度59Pa.s.を有する金色の高粘度の溶液が得られる。ゲル浸透クロマトグラフィーによるモル質量算定結果の値は以下の通りである:Mn=82100g.mol-1、Mp=151500g.mol-1、Mw=181900g.mol-1、PDI=2.21。
【0101】
実施例6:ジメチルホルムアミド中でのポリイミド溶液P84 T80の製造
攪拌装置と還流冷却装置とを備えた3リットルのガラス反応器中に1622gの無水ジメチルホルムアミドが前以て与えられる。それに473.6gの3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が溶解されて、90℃に加熱される。この溶液に1.8gのジアザビシクロオクタンが加えられる。窒素の作用下で、80%の2,4−トリレンジイソシアネートと、20%の2,6−トリレンジイソシアネートとからなる混合物254.4gが複数時間にわたって追加計量添加される。その際、副産物としてのCO2は逃散し、直接ポリイミドが液中に生ずる。
【0102】
固体含有量27%、粘度108Pa.s.を有する金色の高粘度の溶液が得られる。ゲル浸透クロマトグラフィーによるモル質量算定結果の値は以下の通りである:Mn=83800g.mol-1、Mp=152300g.mol-1、Mw=173800g.mol-1、PDI=2.07。
【0103】
実施例7:ジメチルホルムアミド中でのポリイミド溶液P84 HTの製造
攪拌装置と還流冷却装置とを備えた3リットルのガラス反応器中に1800gの無水ジメチルホルムアミドが前以て与えられる。それに316.4gの3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と142.8gのピロメリット酸二無水物とが溶解されて、90℃に加熱される。この溶液に1.8gのジアザビシクロオクタンが加えられる。窒素の作用下で、80%の2,4−トリレンジイソシアネートと、20%の2,6−トリレンジイソシアネートとからなる混合物283.4gが複数時間にわたって追加計量添加される。その際、副産物としてのCO2は逃散し、直接ポリイミドが液中に生ずる。
【0104】
固体含有量27%、粘度70Pa.s.を有する金色の高粘度の溶液が得られる。ゲル浸透クロマトグラフィーによるモル質量算定結果の値は以下の通りである:Mn=75500g.mol-1、Mp=122200g.mol-1、Mw=150900g.mol-1、PDI=2.00。
【0105】
実施例8:ジメチルホルムアミド中でのポリイミド溶液P84 MDIの製造
攪拌装置と還流冷却装置とを備えた3リットルのガラス反応器中に1500gの無水ジメチルホルムアミドが前以て与えられる。それに369.2gの3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が溶解されて、90℃に加熱される。この溶液に1.5gのジアザビシクロオクタンが加えられる。窒素の作用下で、222.3gの2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアネートが複数時間にわたって追加計量添加される。その際、副産物としてのCOは逃散し、直接ポリイミドが液中に生ずる。
【0106】
固体含有量25%かつ粘度5Pa.s.を有する淡黄色の粘性溶液が得られる。ゲル浸透クロマトグラフィーによるモル質量算定結果の値は以下の通りである:Mn=55200g.mol-1、Mp=95000g.mol-1、Mw=112000g.mol-1、PDI=2.03。
【0107】
シート製造と固有のガス透過率
重合溶液は無稀釈で金属製の15μ網目ふるいによって濾過される。シートの製造にはElcomer社のスキージー付き装置(Elcometer 4340)が使用される。ガラス板にスキージーを用い、隙間寸法250μにて、ポリマー溶液がコートされる。溶媒は続いて、空気循環乾燥炉中で70℃(0.5h)、150℃(2h)および250℃(12h)にて蒸発させられる。こうして、シートは溶媒が実質的に除去されて(含有量<0.1%)、ガラス板から引き剥がされる。厚さ約30〜40μmのシートが得られる。脆性を示すシートはいっさいなく、すべてのシートが優れた機械的特性を示した。続いて、これらのシートから顕微鏡を用いて欠陥のない箇所が探し求められ、直径46mmの円形試料が切り取られる。これらの試料は、続いて、自家製のガス透過率測定装置に装入されて、さまざまなガスの透過率が真空法で測定される。
【0108】
この場合、シートには個々のガス(たとえば、窒素、酸素、メタンまたは二酸化炭素)がさまざまな圧力で当てられ、浸透側の圧力増加が記録される。これから、透過率Barrer(10-6cm3.cm-2.s-1.cmHg-1)が計算される。以下に若干の例を挙げることとする。
【0109】
実施例9:上記実施例に示したさまざまなポリマーのガス透過率
【表4】

【0110】
重合溶液への添加剤添加
実施例10:ポリイミド中空繊維を製造するためのP84タイプ70の流し込み溶液の製造
強力な攪拌装置を備えた3リットルのガラス製攪拌タンク内で、室温にて、実施例2に示したジメチルホルムアドに溶解したP84タイプ70の溶液1168gが滴下されて、94.1gのテトラヒドロフランと40.3gのイソプロパノールとからなる混合物と混合される。その際、ポリマーは滴下箇所周辺で短時間沈殿するが、直ちに再び溶解する。均質な溶液が生ずるまで攪拌が行われる。この溶液は、続いて、メッシュサイズ15μのふるいで濾過されて、2日間攪拌なしで放置される。固体含有量23.5%、ジメチルホルムアド含有量66.5%、テトラヒドロフラン含有量7%およびイソプロパノール含有量3%の流し込み溶液が得られる。
【0111】
実施例11:ポリイミド中空繊維を製造するためのP84タイプ70の流し込み溶液の製造
強力な攪拌装置を備えた3リットルのガラス製攪拌タンク内で、室温にて、実施例2に示したジメチルホルムアドに溶解したP84タイプ70の溶液1034gが滴下されて、58.6gのテトラヒドロフランと46.9gのイソプロパノールとからなる混合物と混合される。その際、ポリマーは滴下箇所周辺で短時間沈殿するが、直ちに再溶解する。均質な溶液が生ずるまで攪拌が行われる。この溶液は、続いて、メッシュサイズ15μのふるいで濾過されて、2日間攪拌なしで放置される。固体含有量23.8%、ジメチルホルムアド含有量67.2%、テトラヒドロフラン含有量5%およびイソプロパノール含有量4%の流し込み溶液が得られる。
【0112】
実施例12:ポリイミド中空繊維を製造するためのP84 HTの流し込み溶液の製造
強力な攪拌装置を備えた3リットルのガラス製攪拌タンク内で、室温にて、実施例7に示したジメチルホルムアドに溶解したP84 HTの溶液1034gが滴下されて、47gのテトラヒドロフランと65gのイソプロパノールとからなる混合物と混合される。その際、ポリマーは滴下箇所周辺で短時間沈殿するが、直ちに再溶解する。均質な溶液が生ずるまで攪拌が行われる。この溶液は、続いて、メッシュサイズ15μのふるいで濾過されて、2日間攪拌なしで放置される。固体含有量23.6%、ジメチルホルムアド含有量66.9%、テトラヒドロフラン含有量4%およびイソプロパノール含有量5.5%の流し込み溶液が得られる。
【0113】
実施例13:ポリイミド中空繊維を製造するためのP84 T100の流し込み溶液の製造
強力な攪拌装置を備えた3リットルのガラス製攪拌タンク内で、室温にて、実施例5に示したジメチルホルムアドに溶解したP84 T100の溶液1034gが滴下され、46.8gのテトラヒドロフランと58.5gのイソプロパノールとからなる混合物と混合される。その際、ポリマーは滴下箇所周辺で短時間沈殿するが、直ちに再溶解する。均質な溶液が生ずるまで攪拌が行われる。この溶液は、続いて、メッシュサイズ15μのふるいで濾過されて、2日間攪拌なしで放置される。固体含有量22.1%、ジメチルホルムアド含有量68.9%、テトラヒドロフラン含有量5%およびイソプロパノール含有量4%の流し込み溶液が得られる。
【0114】
実施例14:親有機性ナノ濾過用平膜を製造するためのP84タイプ70の流し込み溶液の製造
強力な攪拌装置を備えた3リットルのガラス製攪拌タンク内で、室温にて、実施例2に示したジメチルホルムアドに溶解したP84 タイプ70の溶液1034gが滴下され、258.5gのテトラヒドロフランと混合される。均質な溶液が生ずるまで攪拌が行われる。この溶液は、続いて、メッシュサイズ15μのふるいで濾過されて、2日間攪拌なしで放置される。固体含有量21.6%、ジメチルホルムアド含有量58.4%、テトラヒドロフラン含有量20%の流し込み溶液が得られる。
【0115】
中空繊維製造
実施例15:実施例10に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84タイプ70の流し込み溶液からの中空繊維製造
脱気され、濾過され、添加剤の加えられた、実施例10に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84タイプ70の溶液が50℃に調温され、歯車ポンプによって二流体ノズルを通して送出される。流量は162g/hである。二流体ノズルの外側領域でポリマー溶液が送出され、内側領域では、中空繊維に孔をつくり出すために、70%のジメチルホルムアミドと30%の水との混合物が送出される。流量は58ml/hである。40cmの距離を経過した後、中空繊維は10℃の冷水中に進入する。その際、中空繊維はチューブで被覆される。このチューブ内には2l/minの流量で窒素流が貫流しており、チューブ内温度は41℃である。繊維は続いて水洗浄浴中を通過させられ、最後に15m/minの速度で巻き取られる。複数時間にわたって水で抽出された後、中空繊維は先ずエタノール中、続いて、ヘプタン中に浸漬され、最後に、空気中で乾燥させられる。外径412μ、孔径250μ、肉厚81μの中空繊維が得られる。
【0116】
膜透過圧力5bar時の個別ガス測定による中空繊維の浸透度は以下の通りである:
酸素:1.450GPU
窒素:0.165GPU
二酸化炭素:6.03GPU
メタン:0.084GPU
したがって、酸素と窒素の間の個別ガス選択性は8.8であり、二酸化炭素とメタンの間のそれは71.9である。
【0117】
膜透過圧力40bar時の個別ガス測定による中空繊維の浸透度は以下の通りである:
二酸化炭素:8.99GPU
メタン:0.101GPU
二酸化炭素とメタンの間の個別ガス選択性は88.5である。
【0118】
実施例16:実施例11に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84タイプ70の流し込み溶液からの中空繊維製造
脱気され、濾過され、添加剤の加えられた、実施例11に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84タイプ70の溶液が50℃に調温され、歯車ポンプによって二流体ノズルを通して送出される。流量は162g/hである。二流体ノズルの外側領域でポリマー溶液が送出され、内側領域では、中空繊維に孔をつくり出すために、70%のジメチルホルムアミドと30%の水との混合物が送出される。流量は58ml/hである。42cmの距離を経過した後、中空繊維は10℃の冷水中に進入する。その際、中空繊維はチューブで被覆される。このチューブ内には2l/minの流量で窒素流が貫流しており、チューブ内温度は46℃である。繊維は続いて水洗浄浴中を通過させられ、最後に24m/minの速度で巻き取られる。複数時間にわたって水で抽出された後、中空繊維は先ずエタノール中、続いて、ヘプタン中に浸漬され、最後に、空気中で乾燥させられる。外径310μ、孔径188μ、肉厚61μの中空繊維が得られる。
【0119】
膜透過圧力9bar時の個別ガス測定による中空繊維の浸透度は以下の通りである:
酸素:1.463GPU
窒素:0.164GPU
したがって、酸素と窒素の間の個別ガス選択性は8.9である。
【0120】
実施例17:実施例13に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84 T100の流し込み溶液からの中空繊維製造
脱気され、濾過され、添加剤の加えられた、実施例13に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84 T100の溶液が50℃に調温され、歯車ポンプによって二流体ノズルを通して送出される。流量は162g/hである。二流体ノズルの外側領域でポリマー溶液が送出され、内側領域では、中空繊維に孔をつくり出すために、70%のジメチルホルムアミドと30%の水との混合物が送出される。流量は58ml/hである。42cmの距離を経過した後、中空繊維は10℃の冷水中に進入する。その際、中空繊維はチューブで被覆される。このチューブ内には2l/minの流量で窒素流が貫流しており、チューブ内温度は46℃である。繊維は続いて水洗浄浴中を通過させられ、最後に20m/minの速度で巻き取られる。複数時間にわたって水で抽出された後、中空繊維は先ずエタノール中、続いて、ヘプタン中に浸漬され、最後に、空気中で乾燥させられる。外径339μ、孔径189μ、肉厚75μの中空繊維が得られる。
【0121】
膜透過圧力9bar時の個別ガス測定による中空繊維の浸透度は以下の通りである:
酸素:0.564GPU
窒素:0.072GPU
二酸化炭素:1.679GPU
メタン:0.023GPU
したがって、酸素と窒素の間の個別ガス選択性は7.8であり、二酸化炭素とメタンとの間のそれは71.6である。
【0122】
実施例18:に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84 HTの流し込み溶液からの中空繊維製造
脱気され、濾過され、添加剤の加えられた、実施例12に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84 HTの溶液が50℃に調温され、歯車ポンプによって二流体ノズルを通して送出される。流量は162g/hである。二流体ノズルの外側領域でポリマー溶液が送出され、内側領域では、中空繊維に孔をつくり出すために、70%のジメチルホルムアミドと30%の水との混合物が送出される。流量は58ml/hである。15cmの距離を経過した後、中空繊維は10℃の冷水中に進入する。その際、中空繊維はチューブで被覆される。このチューブ内には1l/minの流量で窒素流が貫流しており、チューブ内温度は40℃である。繊維は続いて水洗浄浴中を通過させられ、最後に24m/minの速度で巻き取られる。複数時間にわたって水で抽出された後、中空繊維は先ずエタノール中、続いて、ヘプタン中に浸漬され、続いて、空気中で乾燥させられる。外径306μ、孔径180μ、肉厚63μの中空繊維が得られる。
【0123】
膜透過圧力10bar時の個別ガス測定による中空繊維の浸透度は以下の通りである:
二酸化炭素:6.0GPU
メタン:0.2GPU
したがって、二酸化炭素とメタンの間の個別ガス選択性は30である。
【0124】
実施例19:実施例7に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84 HTの重合溶液からの中空繊維製造
脱気され、濾過された、実施例7に示したジメチルホルムアミドに溶解したP84 HTの溶液が50℃に調温され、歯車ポンプによって二流体ノズルを通して送出される。流量は162g/hである。二流体ノズルの外側領域でポリマー溶液が送出され、内側領域では、中空繊維に孔をつくり出すために、70%のジメチルホルムアミドと30%の水との混合物が送出される。流量は58ml/hである。15cmの距離を経過した後、中空繊維は10℃の冷水中に進入する。その際、中空繊維はチューブで被覆される。このチューブ内には1l/minの流量で窒素流が貫流しており、チューブ内温度は70℃である。繊維は続いて水洗浄浴中を通過させられ、最後に24m/minの速度で巻き取られる。複数時間にわたって水で抽出された後、中空繊維は先ずエタノール中、続いて、ヘプタン中に浸漬され、続いて、空気中で乾燥させられる。外径307μ、孔径189μ、肉厚59μの中空繊維が得られる。
【0125】
膜透過圧力10bar時の個別ガス測定による中空繊維の浸透度は以下の通りである:
二酸化炭素:3.37GPU
メタン:0.051GPU
したがって、二酸化炭素とメタンの間の個別ガス選択性は66である。
【0126】
繊維はさらに、可塑化挙動と圧力安定性を測定するために、より高い圧力にて測定が行われた。
【0127】
【表5】

【0128】
平膜の製造
実施例20:P84タイプ70からの平膜の製造
平膜製造装置にて、実施例14に述べた流し込み溶液から幅35cmの膜が製造される。この場合、流し込み溶液はスキージーを用い、流し込み隙間200μにて、圧延されたポリエステル不織布上に単位面積質量100g/m2、速度5m/minにてコートされる。コートされたポリエステル不織布は、続いて、窒素が貫流するシャフト内を通過させられる。貫流速度は339m/hである。こうして達成される滞留時間は3sである。続いて、コートされた不織布は10℃の冷水に浸漬される。粗製膜は次いで湿潤状態で巻き取られる。
【0129】
続いて、膜は水中で70℃にて抽出され、調整剤(25%ポリエチレングリコールジメチルエーテル(PGDME 250、Clariant社)水溶液)が含浸させられる。乾燥は、温度60℃にて、浮上乾燥器によって行われる。
【0130】
膜はミリポア攪拌セルにより圧力5barにて特性決定される。溶媒としては、ヘキサフェニルベンゼンが12mg/lの濃度で溶解されたヘプタンが使用される。測定結果は、捕集率94%にて、流量1.7l.m-2.h-1.bar-1であった。
【0131】
膜は、続いてさらに、圧力30bar、30℃にて、トルエンでもテストされる。テスト分子としてはオリゴスチレンが使用される。このテスト時のトルエンの流量は90l.m-2.h-1である。膜は全モル質量域にわたって非常に高い捕集率と、200〜300Daltonの領域で鋭いカットオフとを示す(図3、参照)。
【0132】
ジアミンによる膜の架橋
実施例21:アミンによる平膜の架橋
実施例20に示した平膜は、16hにわたって、オリゴエチレンイミド((#468533、Aldrich)代表的な分子量423、5〜20%のテトラエチレンペンタアミンを含有)の0.1%エタノール溶液中に浸漬された。膜は架橋されて、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、アセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドおよび酢酸エチルに対してなんらの可溶性も示さない。
【0133】
膜はミリポア攪拌セルにより圧力5barにて特徴付けられる。溶媒としては、ヘキサフェニルベンゼンが2.2mg/lの濃度で溶解されたヘプタンが使用される。測定結果は、捕集率89%にて、流量1.3l.m-2.h-1.bar-1であった。
【0134】
実施例22:アミンによる中空繊維膜の架橋
実施例19に示した中空繊維膜は、16hにわたって、ヘキサメチレンジアミンの0.1%エタノール溶液中に浸漬される。膜は架橋されて、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、アセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドおよび酢酸エチルに対してなんらの可溶性も示さない。
【0135】
図面の簡単な説明
図1:DMF中のP84タイプ70の濃度が溶液の粘度に及ぼす影響:P84重合溶液と、沈殿されて25℃にて再溶解されたポリマーから製造されたP84溶液との比較
図2:マクロボイドのある(左図)およびマクロボイドのない(右図)中空繊維膜の断面
図3:実施例20に示した膜の使用テスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド膜を製造するための方法であって、
以下のステップ
a) ポリイミドを製造するステップと、
b) ポリイミドを含んだ流し込み溶液を製造するステップと、
c) 前記流し込み溶液からポリイミド膜を製造するステップと
を含み、前記ポリイミドは前記ステップa)とb)との間で、固体の形として単離されて再び溶解されるということなく、とくに乾燥された固体として単離されて再び溶解されるということなく、とりわけ乾燥された粉末として単離されて再び溶解されるということなく、かつ膜の製造は転相法によって行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
ポリイミドを製造するために、ステップa)において
芳香族二無水物またはそれらの混合物、好ましくは、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
および/または
芳香族ジイソシアネートまたはそれらの混合物、好ましくは、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジイソシアネート
および/または
双極性非プロトン性溶媒またはそれらの混合物、好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、スルホラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン
が使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリイミドは以下の構造
【化1】

[式中、
Rは以下
【化2】

からなる群から選択され、
x、yは、0<x<0.5、1>y>0.5のモル分率である]を有するポリイミドであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
流し込み溶液を製造するために、ステップb)において、水溶性添加剤が添加され、その際、添加剤として、好ましくは、
水と混合可能な揮発性溶媒、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンもしくはアセトンまたはそれらの混合物
および/または
非溶媒、たとえば水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン、γ−ブチロラクトンまたはそれらの混合物
および/または
多孔形成剤、好ましくは、ポリビニルピロリジノン
および/または
水と混合可能な溶媒、たとえばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドまたはそれらの混合物
が使用されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステップc)において、支持体不織布はポリイミド流し込み溶液でコートされ、その際、好ましくは、前記支持体不織布にポリマー流し込み溶液がコートされた後に、前記溶媒の一部は調温された乾燥窒素流または空気流によって蒸発されて、膜の分離限度が調整されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポリイミド膜は脂肪族ジアミンまたはポリエチレンイミンで架橋され、その際、好ましくは、
脂肪族ジアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ビス−4,4’−(アミノメチル)ベンゼン、オリゴエチレンイミン、ポリエチレンイミンまたはそれらの混合物が使用され、
および/または
架橋はジアミンの水溶液中またはアルコール、たとえばメタノールもしくはエタノールもしくはイソプロパノールもしくはそれらの混合物中のジアミンの溶液中に浸漬することによって実施され、
および/または
架橋は0〜90℃、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは15〜30℃の温度にて行われ、
および/または
架橋時間は10秒〜16時間、好ましくは30秒〜30分、特に好ましくは1〜5分であり、
および/または
ジアミンの濃度は0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%、特に好ましくは0.2質量%〜1質量%であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ステップc)において、一体型非対称中空繊維膜が製造され、その際、好ましくは、中空繊維は二流体ノズルによって請求項4記載のポリイミド流し込み溶液と、孔をつくり出すための溶液とから連続法で紡糸されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
孔をつくり出すための溶液として、水またはアルコールとジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドまたはそれらの組み合わせとの混合物が使用され、
および/または
紡糸ノズルは、中空繊維が紡糸されて、ポリマーの沈殿によって一体型非対称中空繊維膜が形成される水からなる紡糸浴から1〜60cmの距離を有し、
および/または
紡糸プロセスに際し、中空繊維は、紡糸浴に進入する前に、調温された乾燥窒素流または空気流に曝露されて、膜の分離性能が調整され、
および/または
ポリイミドポリマーは脂肪族ジアミンまたはポリエチレンイミンで架橋され、その際、特に好ましくは、
脂肪族ジアミンとして、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ビス−4,4’−(アミノメチル)ベンゼン、オリゴエチレンイミンもしくはポリエチレンイミンまたはそれらの混合物が使用され、
および/または
架橋はジアミンの水溶液中またはアルコール、たとえばメタノールもしくはエタノールもしくはイソプロパノールもしくはそれらの混合物中のジアミンの溶液中に浸漬することによって実施され、
および/または
架橋は0〜90℃、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは15〜30℃の温度にて行われ、
および/または
架橋時間は10秒〜16時間、好ましくは30秒〜30分、特に好ましくは1〜5分であり、
および/または
ジアミンの濃度は0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%、特に好ましくは0.2質量%〜1質量%であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
Mp>100000g.mol-1(Mp=モル質量分布のピーク最大値、ジメチルホルムアミド中臭化リチウム0.01mol/lでの対ポリスチレン標準キャリブレーション)と、1.7〜2.3、好ましくは1.8〜2.1の範囲のPDIとを有するポリイミドを含んでなることを特徴とするポリイミド膜。
【請求項10】
ポリイミドは以下の構造
【化3】

[式中、
Rは以下
【化4】

からなる群から選択され、
x、yは、0<x<0.5、1>y>0.5のモル分率である]を有するポリイミドであることを特徴とする請求項9記載のポリイミド膜。
【請求項11】
均一に溶解したまたは微粒子状の物質を有機溶媒または水から分離するために使用可能な精密濾過膜、限外濾過膜またはナノ濾過膜、またはガスの分離に使用可能な非孔質膜であることを特徴とする請求項9または10記載のポリイミド膜。
【請求項12】
支持体不織布上、好ましくは、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンからなる支持体不織布上に配設された一体型非対称平膜、または一体型非対称中空繊維膜であることを特徴とする請求項9から11までのいずれか1項記載のポリイミド膜。
【請求項13】
きわめて多様な気体混合物の分離、好ましくは、
メタンと二酸化炭素との分離
および/または
酸素と窒素との分離
および/または
プロセスガスからの水素の分離
および/または
きわめて多様な種類のガスまたはガス混合物からの水蒸気の分離
に使用可能であることを特徴とする請求項12記載のポリイミド中空繊維膜。
【請求項14】
請求項9から13までのいずれか1項記載のポリイミド膜および請求項1から8までのいずれか1項記載の方法によって得られるポリイミド膜。
【請求項15】
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法によって得られる流し込み溶液。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−533671(P2012−533671A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521042(P2012−521042)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060648
【国際公開番号】WO2011/009919
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(509316589)エボニック ファイバース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Fibres GmbH
【住所又は居所原語表記】Werkstrasse 3, A−4860 Lenzing, Austria
【Fターム(参考)】