説明

重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機の案内羽根装置

【課題】本発明は、排気駆動式過給機の排気ガス入口室の第1車室部(2)にそれぞれの回動軸線(A)を中心として回動可能に支持された複数の案内羽根(1)を備えている、排気駆動式過給機の特に軸流タービンの案内羽根装置に関し、これを、流路とその中に配置された案内羽根との間の隙間の高さが減少されるように形成する。
【解決手段】案内羽根装置が平衡リング(5)を有し、この平衡リング(5)が、案内羽根(1)と排気駆動式過給機の排気ガス入口室の第2車室部(6)との間に配置され、回動軸線(A)の方向において第1車室部(2)に向けてバイアスを与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前文に記載の、重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機のタービンの案内羽根装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気駆動式過給機のタービンは内燃機関の排気ガスで貫流される。その貫流排気ガスはタービンに連結された圧縮機インペラを駆動し、この圧縮機インペラは圧縮空気を内燃機関に供給し、そのようにして効率を高める。排気ガスは、その圧力エネルギをできるだけ最良に転換するために、案内羽根装置によってタービン翼に向けて方向転換される。或る運転点に対してしか最良に設計されていない固定案内羽根装置のほかに、特許文献1および特許文献2において、排気ガス流を制御するために案内羽根を調整することができる、ラジアルタービン用の案内羽根装置が知られている。ここで「制御」とは以下において同様に「調節」も含み、即ち、設定値と実際値とに関係する制御量の指令も含む。
【0003】
案内羽根は流路の中に配置され、排気ガス流を制御するために、第1車室部および第2車室部に対して回動できる。第1、第2の両車室部は回動軸線の方向において互いに対向して位置し、第1車室部に案内羽根が回動可能に支持されている。この場合、第1車室部と案内羽根との間および案内羽根と第2車室部との間における隙間を通って排気ガス流が案内羽根を迂回して流れる(漏れる)恐れがあり、これは、排気ガス流の方向転換を阻害し、従って排気駆動式過給機の効率を害する。その隙間は、個々の部品の異なった熱膨張のために、即ち、それらの部品の材料、寸法および運転温度に関係して発生ないし増大する。
【0004】
この恐れは、特に2サイクルディーゼルエンジンの場合に当てはまるように、排気駆動式過給機における圧力が高くなればなるほど増大する。その圧力が高い場合には、案内羽根が湾曲した円筒状面で回動する軸流タービン式の排気駆動式過給機が特に採用される。この複雑な幾何学形状は、案内羽根が2枚の平らな円板間で調整されるラジアルタービンに比べて、その隙間問題を一層高め、このために特に、2サイクルディーゼルエンジンに対する調整可能な案内羽根装置を備えた軸流タービン式の排気駆動式過給機の場合、流路を形成する車室部と案内羽根との間の隙間における漏れ流問題が生ずる。
【0005】
特許文献1は、ラジアルタービンにおいて、第1車室部に回動可能且つ軸方向移動可能に支持された案内羽根に皿ばね装置によって、その回転軸線の方向に第2車室部に向けてバイアスを与えることを提案している。この方式は、各案内羽根に付属された個々の皿ばね装置のために、高い製造組立費を必要とするだけでなく、個々のばね装置の公差のためにすべての案内羽根の一様なバイアスが保証されない。
【0006】
同様にラジアルタービンに関する特許文献2において、案内羽根が回動可能であるが軸方向に固定して支持された第1車室部が、全体として軸方向に移動可能に支持され、皿ばねによって第2車室部に向けてバイアスを与えられている。ここでは案内羽根より長いスペーサが同時に、案内羽根の第1車室部と第2車室部に密に接することを防止し、このために、案内羽根と第1車室部ないし第2車室部との間の隙間のシール(漏れ止め)を妨げる。さらに、皿ばねが複雑な第1車室部をそれに支持された案内羽根と共に動かさねばならないという欠点がある。これはばねを大きく負荷し、案内羽根を支持している第1車室部と皿ばねから成るばね・質量・系の望ましくない固有周波数を生じさせる。また、案内羽根を回動するための調整装置は、その結果生ずる第1車室部の軸方向運動を補償しなければならない。
【特許文献1】独国特許出願公告第10311205号明細書
【特許文献2】米国特許第4804316号明細書
【特許文献3】独国特許出願第102006023661.6号
【特許文献4】独国特許出願公開第10013335号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機のタービンに対する案内羽根装置を、流路とその中に配置された案内羽根との間の隙間の高さが減少されるように形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の冒頭に述べた形式の案内羽根装置を、請求項1に記載の特徴によって改良することによって解決される。
【0009】
本発明に基づく案内羽根装置は、重油燃料の往復動内燃機関の排気ガス流をタービン翼に方向転換するために、複数の案内羽根を有している。これらの案内羽根は、流路の中において排気駆動式過給機の排気ガス入口室にそれぞれの回動軸線を中心として回動可能に支持され、流路内における流れ状態特にタービン翼の洗流を変更するために、調整装置によってそれらの回動軸線を中心として回動される。
【0010】
案内羽根は、排気駆動式過給機の排気ガス入口室の第1車室部に回動可能に支持されている。その支持部は転がり軸受および/又はジャーナル軸受を有する。好適には、第1車室部は排気ガス入口室の一体構成部品であるか、排気ガス入口室に軸方向固定および/又は回り止め固定結合されている。特に好適には、第1車室部にあるいはその中に調整装置が配置され、この調整装置は、例えばタービン軸線を中心として回転可能な調整リングを有し、この調整リングの第1車室部に対する相対回転は、調整レバーを介して個々の案内羽根のそれらの回動軸線を中心とした回動を生じさせる。この点に関して、特許文献3および特許文献4を参照されたい。従って、これらの特許文献における内容も本件出願に取り入れられる。
【0011】
本発明に基づいて、案内羽根装置は平衡リングを有し、この平衡リングは、案内羽根と排気駆動式過給機の排気ガス入口室の第2車室部との間に配置され、回動軸線の方向において第1車室部に向けてバイアスを与えられる。
【発明の効果】
【0012】
回動軸線の方向における第1車室部に向けてのバイアスによって、平衡リングが、およびこの平衡リングにより案内羽根が、第1車室部に押し付けられ、これにより、案内羽根とこの案内羽根が支持されている第1車室部との間の隙間が減少される。同時に、案内羽根と平衡リングとの間の隙間も減少され、これにより、流路の内外周側において、案内羽根の端面における漏れ流が減少あるいは阻止される。
【0013】
平衡リングによって、すべての案内羽根は実質的に同じバイアス力で付勢される。また、個々にバイアスが与えられる案内羽根に比べて、製造と組立費がかなり減少される。調整装置は第1固定車室部に、ないしその中に配置され、これにより、特にその自在連結および支持が容易となる。案内羽根が支持されている第1車室部の流路に対するシール(漏れ止め)は不要とされ、あるいは構造的に単純に形成できる。
【0014】
好適には、平衡リングは第2車室部に対してシールされている。この車室部および平衡リングは案内羽根に対する支持部を有する必要がないので、そのシールは構造的に単純に確実に形成される。
【0015】
案内羽根の支持部とは反対側における平衡リングによる力の付勢によって、支持部と協働する調整装置のセルフロックの危険も減少される。
【0016】
ラジアルタービンの場合、回動軸線がタービン軸線に対して平行に向けられ、これにより、案内羽根は2枚の平らな円板の間で回動される。軸流タービンの場合、案内羽根の回動軸線は実質的に半径方向に向けられ、タービン軸線と70°〜110°、特に80°〜100°の範囲の角度を成し、特に好適には本質的に90°の角度を成している。
【0017】
ラジアルタービンの場合には、平衡リングはタービン軸線の方向にバイアスを与えられる。このために、平衡リングは例えば排気ガス入口室の第2車室部においてタービン軸線の方向に移動可能に支持され、その第2車室に対して好適にはシールされている。同じようにして、平衡リングはこの方向に弾性変形可能に形成される。
【0018】
本発明に基づく案内羽根装置は、特に軸流タービンに採用されると有利である。このために、平衡リングは主に半径方向に変形可能にされ、このようにして、案内羽根と排気ガス入口室における第1車室部と第2車室部との異なった熱膨張のために生ずる流路と案内羽根間の半径方向広がり寸法の差が補償できる。
【0019】
平衡リングの変形は、その弾性変形的あるいは塑性変形的な伸びないし収縮だけで実現される。しかも好適には、平衡リングは、これが半径方向に膨張したときに円周方向に増大する通しスリットを有している(平衡リングが割りリングとなっている)。平衡リングの特にスリットに隣接する部位において変形を生じさせるために、平衡リングは通しスリットにおいて円周方向に互いに重なり合う縁部を有する。これらの縁部は平衡リングの膨張時に相互にすべり、そのようにして、スリットに隣接する部位をすべり軸受の様式で案内する。
【0020】
特に平衡リングが第2車室部に対してシールされているとき、互いに重なり合う縁部がシール舌片として形成されていることが有利である。これにより、流路から平衡リングと第2車室部との間の隙間を通して、あるいは平衡リングのスリットを通して全くあるいはほんの僅かしか排気ガスは流出できず、ほとんど全部がタービンに導入される。逆に、平衡リングは、この平衡リングと第2車室部との間における加圧された流体によって、この流体が流路に流出することなしに、液圧式あるいは空気圧式にバイアスを与えられる。
【0021】
平衡リングの液圧式あるいは空気圧式バイアスは、さらに、平衡リングをその円周にわたって一様に付勢するという利点を有する。また、そのために用いる流体例えば空気や圧油などの熱膨張によって、平衡リングのバイアス特性が調整される。例えば加熱時に周囲の部品特に平衡リングおよび第2車室部より大きく膨張する大きな熱膨張係数の流体が選択されたとき、運転温度の上昇と共にバイアスが増大する。これにより、排気ガスタービンの負荷が増大したときも、従って、排気ガスの圧力および温度が増大したときも、案内羽根における漏れ流が確実に防止される。平衡リングの空気圧式および特に液圧式のバイアスの他の利点は、そのために利用された流体の減衰特性にあり、その流体は、第2車室部に対する平衡リングの振動を減衰し、これにより、例えば案内羽根により誘起された振動励起に対抗する。更なる利点は、バイアスが流体の所定圧力の調整によって容易に所定値に設定されることにある。
【0022】
この理由から、液圧式あるいは空気圧式バイアスは、ラジアルタービンでも軸流タービンでも同じように有利である。これを実現するために、平衡リングと第2車室部との間に圧力室が形成され、この圧力室において、加圧された流体が平衡リングを第2車室部から離して第1車室部に向けてバイアスを与える。
【0023】
それに加えてあるいはその代わりに、平衡リングは例えば皿ばねなどにより機械式にも、回動軸線の方向に第1車室部に向けてバイアスを与えられる。かかる機械式バイアスは、相対的にフェールセーフであり特に平衡リングと第2車室部との間の漏れによる影響を受けにくいという利点を有する。
【0024】
好適には、平衡リングのバイアスは、平衡リングが運転中に生ずる全温度範囲において案内羽根を第1車室部に押し付けるように選定されている。個々の部品の異なった熱膨張係数および異なった加熱によって、案内羽根と流路との間に理論上生ずる隙間が変化する。即ち、運転開始時、大きな面に排気ガスが直接吹き付けられる小さな体積の案内羽根は、第1車室部と第2車室部と平衡リングよりも、強く加熱される。運転経過中に温度は平衡し、他方では、負荷遮断時に排気ガス入口室は、急速に冷える案内羽根よりも熱を長く蓄える。流路と案内羽根との間の熱的に生ずる最大公差の場合にも、平衡リングを案内羽根に押し付けるように、そのバイアスが選定されているとき、案内羽根と流路との間の隙間を通る漏れ流が防止される。逆に、平衡リングにバイアスを与えるばね定数は、流路と案内羽根との間の熱的に生ずる最大公差においても、案内羽根の支障ない動きを可能のままにするように選定されているのが有利である。このために特に有利に、液圧式あるいは空気圧式バイアスの場合、バイアスおよびばね定数が流体および流体量の選択によって設定される。
【0025】
案内羽根および第1車室部の異なった熱膨張を補償するために、案内羽根が第1車室部において回動軸線の方向に軸方向に移動可能に支持され、これにより、この方向において第1車室部から離されることが有利である。バイアスが与えられた平衡リングは、支持部とは反対側で案内羽根に押し付けられ、そこで漏れ流を防止する。この反対側における平衡リングによる付勢によって、案内羽根は第1車室部に向けて十分にバイアスを与えられ、そのようにして、案内羽根のこの側においても漏れ流が防止される。案内羽根を第1車室部に回動可能および軸方向移動可能に支持する案内羽根の軸部がシールされることが有利である。
【0026】
本発明の他の課題、利点および特徴は、従属請求項および以下に述べる実施例から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、2サイクルディーゼルエンジンの形態をした重油燃料の往復動内燃機関(図示せず)の排気駆動式過給機(図示せず)の軸流タービンにおける本発明の第1実施態様に応じた案内羽根装置を正面図で示している。この案内羽根装置は複数の案内羽根1を有し、これらの案内羽根1は、外側案内リング2の形をした第1車室部にそれぞれの回動軸線Aを中心として回動可能に支持されている。
【0028】
外側案内リング2は、詳述していない様式で、ターボチャージャ(排気駆動過給機)の排気ガス入口室に例えばねじによって固く結合され、部分的に排気駆動式過給機に対する流路を境界づけ、その流路の中に案内羽根1が回動可能に配置されている。
【0029】
案内羽根1の回動軸線Aを中心とした回動によって、ディーゼルエンジンの排気ガスによる排気駆動式過給機のタービンの洗流が調整され、特に、タービンを付勢する排気ガス流の量と方向が変更される。
【0030】
そのために、各案内羽根1はそれぞれ調整レバー3.1を介して調整リング3.2に結合されており、この調整リング3.2のタービン軸線Bを中心とした回転が個々の案内羽根1のそれぞれの回動軸線Aを中心とした回動を生じさせるようになっている。調整レバー3.1と調整リング3.2は調整装置3を形成している。
【0031】
外側案内リング2における案内羽根1の支持部を通しての流路からの排気ガスの流出ないしディフューザハウジングから流路への排気ガスの逆流を防止するために、下流側において外側案内リング2にシール蓋4が固くねじ結合され、排気ガス入口室とそこに結合されたディフューザハウジングとの間に締付け固定されている。この結果、ほぼ排気ガス全部が案内羽根1を通って制御されてタービンに供給されるようになり、これにより、排気ガスのエネルギの大部分が排気駆動式過給機の圧縮作業に転換される。特にシール蓋4が、構造的に単純な様式で、案内羽根装置周囲における案内羽根の支持部を通してのバイパス流を阻止する。
【0032】
案内羽根1は外側案内リング2に半径方向にも移動可能に支持されている。そのために、案内羽根1の軸に回り止め固定および軸方向固定結合された調整レバー3.1は孔を有し、調整リング3.2に回り止め固定および軸方向固定結合されたピン3.3が、案内羽根1がその回動軸線Aを中心として回動された際に調整レバー3.1がピン3.3上を半径方向にすべるようにその孔を貫通している。特に図2と図3から理解できるように、案内羽根1の回動軸線A並びにピン3.3の長手軸線は、タービン軸線Bと正確には直交しておらず、タービン軸線Bに対して僅かに傾斜されている。
【0033】
案内羽根装置は内側案内リング5の形をした平衡リングを有し、この平衡リング5は、案内羽根1と保持リング6の形をした排気ガス入口室の第2車室部との間に配置されている。また保持リングは排気駆動式過給機の排気ガス入口室に固くねじ結合されている。
【0034】
内側案内リング5は半径方向において外側案内リング2に向けてバイアスを与えられる。このために、保持リング6とそれに半径方向に移動可能に支持された内側案内リング5との間において、その内側案内リング5と保持リング6で境界づけられた圧力室7の中に、流体例えば空気あるいは圧油が封入されている。図示された実施例では、圧力室7が主に周囲特に流路に対して密閉されているが、異なった実施例において、その流体は圧力室に終始補給され、そこから流路に流出させることもできる。そのために、圧力室は例えば排気駆動式過給機で圧縮された新鮮空気が供給される。
【0035】
内側案内リング5は半径方向に移動できる。そのため、この内側案内リング5は弾性変形でき、通しスリット8(図4参照)を有し(即ち、内側案内リング5は割りリングとなっている)、そのスリット8の両側対向縁が円周方向にアンダーカット9を有している(図6参照)。
【0036】
この両側対向縁は、組み立てられてない無変形状態において、半径方向隙間によって間隔を隔てられている(図6参照)。組立の際、内側案内リング5は弾性的に半径方向に圧縮され、これにより、両側対向縁は円周方向に互いに重なり合う(図4参照)。その両アンダーカット9は互いに背面が引っ掛かり合う。
【0037】
これは一方では、組立時に弾性的にバイアスを与えられた内側案内リング5の意図しない跳ね戻りを防止し、そのようにして、組立を容易にする。他方では、内側案内リング5がそのようにして機械的にも、つまりその弾性変形によって、半径方向にバイアスを与えられる。内側案内リング5が半径方向外側に膨張することを可能にするその弾性的バイアスは、圧力室7内における加圧された流体と協働し、これにより、内側案内リング5は機械式並びに液圧式ないし空気圧式に半径方向外側向きにバイアスを与えられる。また両アンダーカットは、圧力室7からの流体の流出ないし圧力室7への排気ガスの流入を減少あるいは阻止するシール舌片を形成している。
【0038】
組立時における怪我の危険を減少するために、アンダーカット9の反対側面において各縁部がバリ取りされているが、それでも角が尖って形成されている。これは、シール舌片のシール(漏れ止め)作用を高めるだけでなく、排気ガス流内の異物粒子によりスリット8内において生ずる内側案内リング5の付着物を擦り取るためにも使われる。
【0039】
内側案内リング5は、特に図5で理解できるように、少なくとも一箇所で保持リング6に回り止め固定および軸方向固定結合されている。そのために、保持リング6にねじ込まれたRBねじ10の軸部が、内側案内リング5における孔を半径方向に貫通している。これは組立を容易にする。ねじ軸部と孔との相応したはめあいによって、圧力室7からの流体の漏れが減少ないし阻止される。内側案内リングは、相応した様式で、その端面側(図5における左右)でも保持リング6ないし排気ガス入口室(図示せず)に対してシールされている。
【0040】
圧力室を充填するために、RBねじが、その軸部が内側案内リング5における孔を自由にするまでねじ外される。その孔を通して流体が所望の圧力で圧力室に封入され、続いて、RBねじのねじ込みによってその孔が再び閉じられる。
【0041】
案内羽根装置の各種部品は異なった熱膨張特性を有している。従って、排気駆動式過給機の運転開始時、まず薄くて小さな体積の案内羽根1が大きな面で高温燃焼ガスを受け、このために急速に加熱される。その際、案内羽根は半径方向にも比較的大きく膨張する。案内羽根1が支持されている大きな体積の外側案内リング2は、小さな表面部分しか排気ガスを受けず、それに応じて、半径方向において大きく膨張せず、同じことは、保持リング6に対しても当てはまる。運転中においてそれらの部品間で温度平衡が生ずる。大きな体積の外側案内リング2と保持リング6は、運転終了後、熱を長時間蓄え、それに応じて、大きな面で熱を放出する案内羽根1よりゆっくり収縮する。これにより、各種部品は熱のために半径方向に異なった大きさで膨張する。また、各種部品が異なった熱膨張係数をした種々の材料で製造されているとき、半径方向熱膨張の差は大きくなる。
【0042】
この実施例において、案内羽根1が外側案内リング2における支持部においてその回動軸線Aに沿って移動することによって、案内羽根1はその差を補償する。
【0043】
案内羽根1は、外側案内リング2とは反対側において、内側案内リング5によって半径方向に外側案内リング2に向けて、即ち、半径方向外側にバイアスを与えられている。このバイアスは、一方では、内側案内リング5が組立時にその非変形状態(図6参照)から半径方向に圧縮され、それに応じて半径方向に戻ろうとすることから機械的に生ずる。他方では、このバイアスは、圧力室7における圧油ないし圧縮空気から液圧的ないし空気圧的に生ずる。
【0044】
平衡リングのバイアスは、運転中に生ずる全温度範囲において平衡リングが案内羽根1を外側案内リング2に押し付けるように選定されている。これによって、一方では、案内羽根1と内側案内リング5との間の隙間が最小にされる。その反対側において、案内羽根1が外側案内リング2に押し付けられ、これにより、そこでも案内羽根と案内リングとの間の隙間が最小にされる。これは、案内羽根1の半径方向内側端面ないし半径方向外側端面における排気ガス流の漏れ流を減少ないし阻止する。
【0045】
従って、案内羽根1、外側案内リング2、内側案内リング5並びに保持リング6が運転中において異なった大きさで熱膨張すると、案内羽根1はその支持部においてその長手軸線Aに沿って半径方向に移動し、その差を補償する。常にバイアスが与えられた内側案内リング5によって付勢することによって、外側案内リング2と案内羽根1との間の隙間および案内羽根1と内側案内リング5との間の隙間は最小にされる。
【0046】
その場合、調整装置3を外側案内リング2に対して相対運動させる必要はなく、これは調整装置の支持および案内羽根1の支持部のシールをかなり容易にする。また、案内羽根1の支持部におけるセルフロック的固着ないしその支持部とは反対側における内側案内リング5による付勢に基づくピン3.3上における調整レバー3.1のセルフロック的固着の恐れが減少する。
【0047】
運転中において、案内羽根装置の各種部品の異なった熱膨張を補償するために、内側案内リング5はその半径、従ってその円周が変化する。この場合、スリット8における互いに重なり合う縁部が円周方向に相対移動する(図4参照)。その際、特にスリット8に付着する排気ガス流内における異物粒子から成る付着物が擦り取られ、排気ガス流によって運ばれる。これにより、内側案内リング5の半径方向における運動を阻害するかかる付着物の堆積および特にその硬化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例の案内羽根装置の正面図。
【図2】図1のII−II線に沿った案内羽根装置の部分断面図。
【図3】図2の上部の拡大図。
【図4】図2のIV−IV線に沿った案内羽根装置の部分断面図。
【図5】図1のV−V線に沿った案内羽根装置の部分断面図。
【図6】図4に示された平衡リングの部分拡大図。
【符号の説明】
【0049】
1 案内羽根
2 外側案内リング(第1車室部)
3 調整装置
・ 調整レバー
・ 調整リング
・ ピン
4 シール蓋
5 内側案内リング(平衡リング)
6 保持リング(第2車室部)
7 圧力室
8 スリット
9 アンダーカット
10 RBねじ
A 回動軸線
B タービン軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気駆動式過給機の排気ガス入口室の第1車室部(2)に回動軸線(A)を中心として回動可能に支持された複数の案内羽根(1)を備えている、排気駆動式過給機の特に軸流タービンの案内羽根装置において、
案内羽根装置が平衡リング(5)を有し、該平衡リング(5)が、案内羽根(1)と排気駆動式過給機の排気ガス入口室の第2車室部(6)との間に配置され、回動軸線(A)の方向において第1車室部(2)に向けてバイアス(予圧)を与えられることを特徴とする排気駆動式過給機の特に軸流タービンの案内羽根装置。
【請求項2】
平衡リングが回動軸線(A)の方向に変形可能であることを特徴とする請求項1に記載の案内羽根装置。
【請求項3】
平衡リングが通しスリット(8)を有していることを特徴とする請求項2に記載の案内羽根装置。
【請求項4】
平衡リングが、通しスリット(8)において円周方向に互いに重なり合う縁部を有していることを特徴とする請求項3に記載の案内羽根装置。
【請求項5】
互いに重なり合う縁部がシール舌片として形成されていることを特徴とする請求項4に記載の案内羽根装置。
【請求項6】
互いに重なり合う縁部が、互いに背面で引っ掛かり合うアンダーカット(9)を有していることを特徴とする請求項4又は5に記載の案内羽根装置。
【請求項7】
平衡リングが、回動軸線の方向に第1車室部に向けて液圧式、空気圧式および/又は機械式にバイアスを与えられることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の案内羽根装置。
【請求項8】
平衡リングのバイアスが、運転中に生ずる全温度範囲において平衡リングが案内羽根を第1車室部に押し付けるように選定されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の案内羽根装置。
【請求項9】
案内羽根が第1車室部において回動軸線の方向に軸方向に移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の案内羽根装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の案内羽根装置を備えていることを特徴とする重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−309325(P2007−309325A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132039(P2007−132039)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】