説明

重量検出方法

【課題】低コスト化を実現しつつ、荷役対象物の重量を検出することが可能な重量検出方法を提供する。
【解決手段】CPUは、最初に、記憶装置に記憶されている制御プログラムに基づいて、ステアリングモータを駆動制御する。次に、CPUは、後輪の操舵指示角と、ステアリングポテンショメータから与えられる後輪の現在の操舵角との差を算出する。続いて、CPUは、算出した上記差と、記憶装置に記憶されている重量マップとから、フォークリフトが搬送する荷役対象物の重量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両により搬送される荷役対象物の重量検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷役対象物を搬送するために荷役車両(例えば、フォークリフト)が用いられている。このようなフォークリフトは、荷役対象物を例えばトラック等に積載する場合に多く用いられている。
【0003】
荷役対象物の重量を測定するために、フォークリフトの所定の位置にロードセルを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平09−110396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォークリフトの低コスト化を図るために、ロードセルを省くことが考えられる。そのためには、荷役対象物の重量を測定する他の方法が必要不可欠である。
【0005】
上記の課題に鑑みて、本発明の目的は、既成の構造を変えないことで低コスト化を実現しつつ、荷役対象物の重量を検出することが可能な重量検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る重量検出方法の要旨とするところは、無人の荷役車両により搬送される荷役対象物の重量を検出する重量検出方法であって、検出手段により検出される操舵輪の操舵角を取得する工程と、予め設定される操舵指示角と前記取得された操舵角との差を算出する工程と、算出された前記差と、予め設定され、前記差および前記荷役対象物の重量の関係を示す重量マップとに基づいて、前記荷役対象物の重量を検出する工程とを備えた重量検出方法であることにある。
【0007】
第1の発明に係る重量検出方法の要旨とするところは、有人の荷役車両により搬送される荷役対象物の重量を検出する重量検出方法であって、検出手段により検出される操舵輪の操舵角を取得する工程と、運転者のハンドルの切角度を検出して得られる操舵指示角と前記取得された操舵角との差を算出する工程と、算出された前記差と、予め設定され、前記差および前記荷役対象物の重量の関係を示す重量マップとに基づいて、前記荷役対象物の重量を検出する工程とを備えた重量検出方法であることにある。
【0008】
前記重量検出方法は、検出した前記重量を出力する工程をさらに備え得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操舵輪の操舵指示角と現在の操舵角との差を算出し、算出した差と重量マップから荷役対象物の重量を検出することが可能となる。これにより、荷役対象物の重量を測定するロードセルを設ける必要がない。したがって、荷役車両の低コスト化を実現しつつ、荷役対象物の重量を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る重量検出方法の詳細について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、上記重量検出方法を用いる荷役車両の一例として、荷役対象物を搬送するフォークリフトを挙げる。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る重量検出方法を用いるフォークリフト100の構成を示す模式的側面図である。なお、フォークリフト100の走行方向の前方および後方を、それぞれ図中に矢印Fおよび矢印Rにより示す。また、車台(後述)の前部とは矢印Fの方向を向く車台の部分であり、車台の後部とは矢印Rの方向を向く車台の部分である。また、図1のフォークリフト100では運転者が描かれているが、本フォークリフト100は無人用及び有人用の双方の機能を備えたフォークリフト100であって、本実施例では運転者が乗車して運転しない無人のフォークリフト100として説明し、次の実施例で運転者が乗車してハンドル操作をしながら運転する有人のフォークリフト100として説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態に係るフォークリフト100は、本体部である車台1を有する。この車台1の前部には、当該車台1の上側に延出するマスト2が設けられている。
【0013】
上記のマスト2は、昇降キャリッジ3を昇降可能に保持する。それにより、昇降キャリッジ3は、マスト2の長さ方向に沿って昇降される。また、昇降キャリッジ3にはフォーク4が取り付けられている。このフォーク4上に荷役対象物Wが載置される。このような構成により、荷役対象物Wはフォーク4上に載置されつつ昇降キャリッジ3により昇降される。
【0014】
車台1上の前部には、後で詳述する電磁クラッチ5を収納するクラッチボックス6が設けられている。また、クラッチボックス6上には、コントロールユニット7および作業者が操作するステアリングハンドル8が設けられている。クラッチボックス6内には、ハンドルポテンショメータ8aが設けられている。なお、上記のコントロールユニット7の構成部の詳細については後述する。
【0015】
ハンドルポテンショメータ8aは、作業者によりステアリングハンドル8が操作された場合における当該ステアリングハンドル8の切角度を検出する。
【0016】
車台1の前部および後部には、それぞれ一対の前輪9および一対の後輪10が設けられている。本実施の形態において、一対の前輪9は駆動輪であり、図示しない車軸を介して車台1に取り付けられている。また、一対の後輪10は操舵を担う操舵輪である。
【0017】
前輪9の各々には、エンコーダ9aが取り付けられている。エンコーダ9aは前輪9の回転数を検出する。これにより、フォークリフト100の走行距離が得られる。
【0018】
後輪10の近傍の車台1には、ステアリングポテンショメータ(検出手段)11が設けられている。このステアリングポテンショメータ11は、後輪10の操舵角(切角度)を検出する。そして、ステアリングポテンショメータ11は検出した後輪10の操舵角を、コントロールユニット7内の後述するCPU(中央演算処理装置)に与える。
【0019】
車台1の内部にはステアリングモータ12が設けられている。このステアリングモータ12にはステアリング機構13が接続されている。ステアリング機構13は一対の後輪10を旋回(操舵)させる動作を行う。
【0020】
車台1の前部の下方にはガイドセンサ14が取り付けられており、当該車台1の後部の下方にはガイドセンサ15が取り付けられている。これらのガイドセンサ14,15は、フォークリフト100の自動制御時(無人搬送時)に、所定の走行ガイドからの走行ズレを検出する。なお、上記走行ガイドは例えば磁石から構成され、ガイドセンサ14,15は当該磁石の磁力を検出する。
【0021】
ここで、上記の電磁クラッチ5は、フォークリフト100の自動制御時に、ステアリングハンドル8とステアリングモータ12との接続を切り離す。これにより、フォークリフト100の自動制御および手動制御が切り替えられる。
【0022】
フォークリフト100の自動制御時においては、後述のCPUが制御プログラムに基づいて、ステアリングモータ12の回転動作を制御することによって、後輪10の旋回動作が制御される。
【0023】
これに対して、フォークリフト100の手動制御時、すなわち、作業者がフォークリフト100を操作する場合には、ハンドルポテンショメータ8aにより検出されたステアリングハンドル8の切角度が、後述のCPUに与えられる。そして、CPUは、与えられた上記切角度に基づいてステアリングモータ12の回転動作を制御する。これにより、自動制御時と同様に、後輪10の旋回動作が制御される。
【0024】
続いて、上述のコントロールユニット7の構成について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図2は、図1のコントロールユニット7の構成部を示すブロック図である。図2に示すように、コントロールユニット7は、CPU70、記憶装置71、RAM(ランダムアクセスメモリ)72、およびROM(リードオンリメモリ)73を含む。
【0026】
記憶装置71は、ハードディスク装置等から構成され、自動制御時における後輪10の旋回動作を制御する制御プログラム、すなわちステアリングモータ12の回転動作を制御する制御プログラムおよび各種データ等を記憶する。
【0027】
また、記憶装置71は、重量マップおよび予め設定される操舵指示角を記憶する。ここで、重量マップとは、予め設定される後輪10の操舵指示角とステアリングポテンショメータ11から与えられる後輪10の現在(リアルタイム)の操舵角との差xと、荷役対象物Wの重量との関係を示すデータである。具体的には、当該データは、差x1に対応する重量p1、差x2に対応する重量p2、および差x3に対応する重量p3のような差xと荷役対象物Wの重量との1対1の関係から構成されるものである。
【0028】
上記現在の操舵角は、例えば0.5秒のサンプリング時間で検出される。すなわち、CPU70がステアリングモータ12に駆動指示を与え、当該ステアリングモータ12が駆動することにより後輪10が旋回を始めてから0.5秒後における操舵角が、上記現在の操舵角として用いられる。なお、上記サンプリング時間は任意に設定することができる。また本例では、フォークリフト100の最初の旋回のときの上記0.5秒後における操舵角を上記現在の操舵角とするものである。即ち、フォークリフト100は走行の途中で幾つかの場所で旋回を繰り返しながら進んでいくが、本例では、最初の旋回のときに、旋回を始めてから0.5秒後のときの1回だけ重量の測定を行うものである。なお、より重量を正確に求めるために、複数箇所の旋回場所において、それぞれ旋回を始めてから0.5秒後における操舵角を上記現在の操舵角とし、複数の旋回場所で重量を測定しても良い。
【0029】
上記の制御プログラムは、CD(コンパクトディスク)ドライブ、DVD(デジタルバーサタイルディスク)ドライブ、またはFD(フレキシブルディスク)ドライブ等からなる記録媒体駆動装置を介して読み込まれ、記憶装置71に記憶される。上記制御プログラムを通信回線等の通信媒体を介して記憶装置71にダウンロードしてもよい。
【0030】
CPU70は、記憶装置71に記憶された上記制御プログラムをRAM72上で実行する。ROM73は半導体メモリ等から構成され、フォークリフト100のシステムプログラムを記憶する。
【0031】
上述したように、ハンドルポテンショメータ8aは、ステアリングハンドル8の切角度をCPU70に与え、ステアリングポテンショメータ11は、後輪10の操舵角を検出し当該CPU70に与える。
【0032】
次いで、フォークリフト100の自動制御時および手動制御時におけるCPU70の制御処理について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図3は、フォークリート100の自動制御時におけるCPU70の制御処理を示すフローチャートである。
【0034】
図3に示すように、CPU70は、最初に、記憶装置71に記憶されている制御プログラムに基づいて、ステアリングモータ12を駆動制御する(ステップS1)。
【0035】
次に、CPU70は、予め設定され記憶装置71に記憶されている後輪10の操舵指示角と、ステアリングポテンショメータ11から与えられる後輪10の現在の操舵角との差xを算出する(ステップS2)。
【0036】
続いて、CPU70は、算出した上記差xと、記憶装置71に記憶されている上述の重量マップとから、フォークリフト100が搬送する荷役対象物Wの重量を検出する(ステップS3)。このように、CPU70により荷役対象物Wの重量が検出される。なお、重量マップの代わりに、所定の演算式に基づいて荷役対象物Wの重量を算出してもよい。
【0037】
なお、検出された荷役対象物Wの重量は、フォークリフト100に設けられた図示しない表示装置に出力される。作業者は、当該表示装置を視認することにより、荷役対象物Wの重量を把握することができる。また、検出された荷役対象物Wの重量に基づいて警報を出力してもよい。
【0038】
図4は、フォークリフト100の手動制御時におけるCPU70の制御処理を示すフローチャートである。
【0039】
図4に示すように、CPU70は、最初に、ハンドルポテンショメータ8aから与えられるステアリングハンドル8の切角度に基づいて、ステアリングモータ12を駆動制御する(ステップS11)。
【0040】
次に、CPU70は、後輪10の操舵指示角と、ステアリングポテンショメータ11から与えられる後輪10の現在の操舵角との差xを算出する(ステップS12)。ここで、手動制御の場合、自動制御の場合のように予め設定された操舵指示角がない。このため、手動制御の場合は正確性は欠けるものの、例えば90度曲がるために運転者が回したハンドルからハンドルポテンショメータ8aによりハンドルの切角度を得ることにより、後輪10(操舵輪)のおよその操舵指示角を決定し、この操舵指示角と、ステアリングポテンショメータ11から与えられる後輪10の現在の操舵角との差xを算出するものである。
【0041】
次いで、CPU70は、算出した上記差xと、記憶装置71に記憶されている上述の重量マップとから、フォークリフト100が搬送する荷役対象物Wの重量を検出する(ステップS13)。このように、手動制御時においてもCPU70により荷役対象物Wの重量が検出される。なお、上記重量マップは、自動制御(無人制御)の場合と手動制御(有人制御)の場合とで同じ重量マップを使用しても良いし、異なる重量マップを使用しても良い。
【0042】
(本実施の形態における効果)
【0043】
このように、本実施の形態においては、後輪10の操舵指示角と現在の操舵角との差xを算出し、算出した差xと重量マップから荷役対象物Wの重量を検出することが可能となる。すなわち、ステアリング抵抗によって荷役対象物Wの重量が判る。これにより、荷役対象物Wの重量を測定するロードセルを設ける必要がない。したがって、フォークリフト100の低コスト化を実現しつつ、荷役対象物Wの重量を取得することができる。
【0044】
ここで、上記実施の形態においては、ステアリングポテンショメータ11により後輪10の操舵角を直接的に検出することとしたが、これに限定されるものではなく、ステアリングハンドル8の切り速度(操作速度)に基づいて後輪10の操舵角を間接的に検出してもよい。
【0045】
また、上記実施の形態においては、重量検出方法を、荷役車両の一例としてフォークリフト100に用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トラック等の貨物自動車にも同様に用いることができる。
【0046】
以上、本発明に係る重量検出方法およびこれを用いた荷役車両の態様を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正又は変形を加えた態様で実施し得るものであり、これらの態様はいずれも本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る荷役対象物の重量検出方法は、フォークリフトを一例とする各種荷役車両に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施の形態に係る重量検出方法を用いるフォークリフトの構成を示す模式的側面図である。
【図2】図1のコントロールユニットの構成部を示すブロック図である。
【図3】フォークリートの自動制御時におけるCPUの制御処理を示すフローチャートである。
【図4】フォークリフトの手動制御時におけるCPUの制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 車台
2 マスト
3 昇降キャリッジ
4 フォーク
5 電磁クラッチ
6 クラッチボックス
7 コントロールユニット
8 ステアリングハンドル
8a ハンドルポテンショメータ
9,9b 前輪
9a エンコーダ
10,10a 後輪
11 ステアリングポテンショメータ
12 ステアリングモータ
13 ステアリング機構
70 CPU
71 記憶装置
100 フォークリフト
W 荷役対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人の荷役車両により搬送される荷役対象物の重量を検出する重量検出方法であって、
検出手段により検出される操舵輪の操舵角を取得する工程と、
予め設定される操舵指示角と前記取得された操舵角との差を算出する工程と、
算出された前記差と、予め設定され、前記差および前記荷役対象物の重量の関係を示す重量マップとに基づいて、前記荷役対象物の重量を検出する工程とを備えたことを特徴とする重量検出方法。
【請求項2】
有人の荷役車両により搬送される荷役対象物の重量を検出する重量検出方法であって、
検出手段により検出される操舵輪の操舵角を取得する工程と、
運転者によるハンドルの切角度を検出して得られる操舵指示角と前記取得された操舵角との差を算出する工程と、
算出された前記差と、予め設定され、前記差および前記荷役対象物の重量の関係を示す重量マップとに基づいて、前記荷役対象物の重量を検出する工程とを備えたことを特徴とする重量検出方法。
【請求項3】
検出した前記重量を出力する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の重量検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−298431(P2008−298431A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141303(P2007−141303)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】