説明

金型監視装置

【課題】動作異常が生じたときに当該射出成形機の運転を停止し、成形異常が生じたときに当該射出成形機の運転を続行することが可能な金型監視装置を提供する。
【解決手段】監視カメラと制御機構とを備え、制御機構に、型開動作完了後の成形エリア内に成形品が保持された状態の可動型の型面を撮像して得られた一次基準画像データ、および成形品突出動作完了後の成形エリアから成形品が離型された状態の可動型の型面を撮像して得られた二次基準画像データが予め記録され、制御機構において、射出成形機の自動運転中に、型開動作完了後の可動型の型面を撮像して一次監視画像データを取得し、一次監視画像データを一次基準画像データと比較し、一次監視画像データが一次基準画像データと一致するときに、射出成形機の運転を続行し、一次監視画像データが一次基準画像データと相違するときに、一次監視画像データを二次基準画像データと比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に取り付けられた金型における可動型の型面を監視して当該射出成形機の運転を制御する金型監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂製品を製造するための射出成形機においては、図7に示すように、互いに雌雄の関係にある固定型86および可動型87よりなる金型85が、固定型86が固定プラテン80に、可動型87が可動プラテン81にそれぞれ固定されることによって取り付けられる。
そして、可動プラテン81をタイバー83に沿って固定プラテン80に向かって前進させる型締動作を行うことによって、可動プラテン81に固定された可動型87の型面が、固定プラテン80に固定された固定型86の型面に圧接され、これにより、金型85内に成形空間が形成される。次いで、溶融された樹脂材料を金型85の成形空間内に射出する射出動作が行われ、この金型85内に充填された樹脂材料が当該金型85によって冷却されて固化されることにより、所要の形態の成形品が得られる。
その後、可動プラテン81をタイバー83に沿って後退させる型開動作を行うことによって、可動型87の型面が固定型86の型面から離間される。このとき、可動型87の型面における成形エリア(成形空間を形成するエリア)には、成形品が保持されている。そして、可動型87の型面における成形エリアに保持された成形品が、可動型87に設けられた突出しピン(図示省略)を当該可動型87の型面から突出させる成形品突出動作が行われることによって、当該可動型87の型面から離型され、離型された成形品が例えば成形品取出装置などによって射出成形機から取り出される。
そして、射出成形機の自動運転においては、上記の型締動作、射出動作、樹脂材料の冷却・固化、型開動作および成形品突出動作よりなる成形サイクルが繰り返して行われる。
【0003】
このような射出成形機の自動運転中においては、型開動作を行ったときに、成形品が可動型87の型面の成形エリアに保持されず、例えば固定型86に保持されたり、可動型87の型面の成形エリアから脱落して他のエリアに付着したりする動作異常が生じることがあり、また、成形品突出動作を行ったときに、成形品が可動型87の型面から離型せずに当該可動型87の型面に保持されたままとなる動作異常が生じることがある。
そして、このような動作異常が生じた状態、具体的には、固定型86または可動型87の型面に成形品が残留した状態で、射出成形機の型締動作を行うと、残留した成形品によって固定型86の型面または可動型87の型面が損傷するおそれがあり、このような事態が生ずると、製造ラインを長期間にわたって停止せざるを得なくなる。そのため、射出成形機の自動運転中に動作異常が生じたときには、当該射出成形機の運転を停止することが必要となる。
このような事情から、射出成形機によって樹脂製品を製造する工程においては、射出成形機に取り付けられた金型85における可動型87の型面を撮像する監視カメラ91と、この監視カメラ91からの画像によって得られるデータに基づいて射出成形機の運転を制御する制御機構92とを備えてなる金型監視装置90が用いられている。
【0004】
かかる金型監視装置90としては、成形エリア内に成形品が保持された状態の可動型87の型面を監視カメラ91によって撮像して得られた一次基準画像データ、および成形エリアから成形品が離型された状態の可動型87の型面を監視カメラ91によって撮像して得られた二次基準画像データが、制御機構92に予め記録され、射出成形機の自動運転中において、当該射出成形機の型開動作完了後における可動型87の型面を監視カメラ91によって撮像して得られる一次監視画像データを、一次基準画像データと比較する一次監視動作、および射出成形機の成形品突出動作完了後における可動型87の型面を監視カメラ91によって撮像して得られた二次監視画像データを、二次基準画像データと比較する二次監視動作を行うものが知られている(特許文献1参照。)。
【0005】
このような金型監視装置90において、一次基準画像データ、二次基準画像データ、一次監視画像データおよび二次監視画像データの各々には、監視カメラからの画像を構成する複数の画素の各々についての輝度データが含まれている。
そして、一次監視動作においては、一次監視画像データのうち少なくとも可動型87の型面の成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々を、これらに対応する一次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々とを比較し、両者の差に基づいて正常状態であるか或いは異常状態であるかを判定し、正常状態であるときには、射出成形機の運転が続行されて成形品突出動作が行われ、異常状態であるときには、射出成形機の運転が停止される。
一方、二次監視動作においては、二次監視画像データのうち少なくとも可動型87の型面の成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々を、これらに対応する二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々とを比較し、両者の差に基づいて正常状態であるか或いは異常状態であるかを判定し、正常状態であるときには、射出成形機の運転が続行されて型締動作が行われ、異常状態であるときには、射出成形機の運転が停止される。
【0006】
而して、射出成形機の自動運転中においては、前述のような射出成形機の動作異常の他に、いわゆるショートモールドなどによる成形不良品が発生する成形異常が生じることがある。このような成形異常は、射出成形機の動作自体の異常ではないため、成形異常が生じたときには、製造効率の観点から、射出成形機の運転を続行することが望ましい。
しかしながら、上記の金型監視装置90においては、一次監視動作において、動作異常と成形異常とを識別することが困難であるため、動作異常が生じたときのみならず、成形異常が生じたときにも、射出成形機の運転を停止してしまうため、樹脂製品の製造効率が低下する、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−67115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、射出成形機の自動運転中に、動作異常が生じたときに当該射出成形機の運転を停止し、成形異常が生じたときに当該射出成形機の運転を続行することが可能な金型監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金型監視装置は、射出成形機に取り付けられた金型における可動型の型面を監視して当該射出成形機の運転を制御する金型監視装置であって、
前記可動型の型面を撮像する監視カメラと、この監視カメラからの画像によって得られるデータに基づいて前記射出成形機の運転を制御する制御機構とを備えてなり、
前記制御機構には、前記射出成形機の型開動作完了後における成形エリア内に成形品が保持された状態の前記可動型の型面を撮像することによって得られた一次基準画像データ、および前記射出成形機の成形品突出動作完了後における成形エリアから成形品が離型された状態の前記可動型の型面を撮像することによって得られた二次基準画像データが予め記録されており、
当該制御機構においては、前記射出成形機の自動運転中において、当該射出成形機の型開動作完了後における可動型の型面を監視する一次監視動作、および当該射出成形機の成形品突出動作完了後における前記可動型の型面を監視する二次監視動作を実行し、
前記一次監視動作において、前記射出成形機の型開動作完了後における前記可動型の型面を撮像することによって一次監視画像データを取得し、当該一次監視画像データを前記一次基準画像データと比較し、
当該一次監視画像データが当該一次基準画像データと一致すると判定されたときに、前記射出成形機の運転を続行し、
当該一次監視画像データが当該一次基準画像データと相違すると判定されたときに、当該一次監視画像データを前記二次基準画像データと比較することを特徴とする。
【0010】
本発明の金型監視装置においては、前記一次監視動作において、前記一次監視画像データが前記二次基準画像データと一致すると判定されたときに、前記射出成形機の運転を停止することが好ましい。
また、前記一次監視動作において、前記一次監視画像データが前記二次基準画像データと相違すると判定されたときに、成形異常であると判定すると共に前記射出成形機の運転を続行することが好ましい。
【0011】
また、本発明の金型監視装置においては、前記一次基準画像データ、前記二次基準画像データおよび前記一次監視画像データの各々は、前記可動型の型面の画像を構成する複数の画素の各々についての輝度データを含み、
前記一次監視動作において、前記一次監視画像データのうち少なくとも前記成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々とこれらに対応する前記二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との差の全てが予め設定された許容範囲内にあるときに、前記一次監視画像データが前記二次基準画像データと一致すると判定されることが好ましい。
【0012】
このような金型監視装置においては、前記一次監視動作において、前記一次監視画像データのうち少なくとも前記成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々とこれらに対応する前記二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときに、前記一次監視画像データが前記二次基準画像データと相違すると判定されることが好ましい。
また、前記一次監視動作において、前記一次監視画像データのうち前記成形エリア以外のエリアから予め選択された非成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々とこれらに対応する前記一次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときに、前記一次監視画像データが前記一次基準画像データと相違すると判定されると共に、前記射出成形機の運転を停止することが好ましい。
また、前記二次監視動作において、前記射出成形機の成形品突出動作完了後における前記可動型の型面を撮像することによって二次監視画像データを取得し、
前記二次監視画像データのうち前記成形エリア以外のエリアから予め選択された非成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々とこれらに対応する前記二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときに、前記二次監視画像データが前記二次基準画像データと相違すると判定されると共に、前記射出成形機の運転を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金型監視装置によれば、射出成形機の型開動作完了後において、一次監視画像データを一次基準画像データと比較して両者の一致・相違を判定することにより、動作異常および成形異常のいずれかの異常の有無を検知することができる。また、一次監視画像データが一次基準画像データと相違すると判定されたとき、すなわち、動作異常および成形異常のいずれかの異常が発生したときには、一次監視画像データを二次基準画像データと比較して両者の一致・相違を判定することにより、動作異常と成形異常とを識別することができる。従って、射出成形機の自動運転中に、動作異常が生じたときに当該射出成形機の運転を停止し、成形異常が生じたときに当該射出成形機の運転を続行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の金型監視装置の構成を射出成形機の構成と共に示す説明図である。
【図2】(イ)は、成形エリア内に成形品が保持された状態の可動型の型面を撮像することによって得られた画像の一例を示す説明図、(ロ)は、成形エリアから成形品が離型された状態の可動型の型面を撮像することによって得られた画像の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の金型監視装置の制御機構による信号の出入力を示す説明図である。
【図4】本発明の金型監視装置の動作を射出成形機の動作と共に示す動作フロー図である。
【図5】(イ)は、射出成形機の型開動作完了後における可動型の型面を撮像することによって得られた画像の一例を示す説明図、(ロ)は、射出成形機の成形品突出動作完了後における可動型の型面を撮像することによって得られた画像の一例を示す説明図である。
【図6】射出成形機の型開動作完了後における可動型の型面を撮像することによって得られた画像の他の例を示す説明図である。
【図7】従来の金型監視装置の構成の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の金型監視装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の金型監視装置の構成を射出成形機の構成と共に示す説明図である。
図1において、10は金型であって、互いに雌雄の関係にある固定型11および可動型12により構成されている。15は射出成形機であって、樹脂材料を溶融して射出する射出部20と、金型10の型開および型締を行う金型駆動部25と、射出部20および金型駆動部25の動作を制御する制御部30とにより構成されている。40は金型監視装置であって、金型10における可動型12の型面を撮像する監視カメラ41と、この監視カメラ41からの画像によって得られるデータに基づいて射出成形機15の運転を制御する制御機構42とにより構成されている。
【0016】
射出成形機15の射出部20においては、外周面にヒータ(図示省略)が設けられた円筒状のシリンダー21が設けられ、このシリンダー21の先端(図1において左端)にはノズル22が固定されて配置されている。シリンダー21の後端部分には、当該シリンダー21内に樹脂材料を供給する供給口(図示省略)が形成されており、シリンダー21の外周面における供給口が位置する箇所には、樹脂材料が投入されるホッパ23が配置されている。また、シリンダー21内には、樹脂材料を混練するスクリュー(図示省略)が当該シリンダー21の軸方向に沿って前進後退可能に配置されており、このスクリューの基端部はスクリュー駆動機構24に取り付けられている。
【0017】
この射出部20においては、シリンダー21内のスクリューが回転することにより、ホッパ23に投入された樹脂材料が、溶融されながらシリンダー21の後端から前端に向かって供給され、それに伴ってスクリュー21が後退することによって、溶融された樹脂材料がシリンダー21の前端部の内部に充填される。そして、スクリューが前進することにより、シリンダー21の前端部の内部に充填された溶融状態の樹脂材料が、ノズル22から射出される。
【0018】
射出成形機15の金型駆動部25においては、金型10における固定型11が固定される固定プラテン26と、金型10における可動型12が固定される可動プラテン27とが水平方向に互いに対向するよう配置され、固定プラテン26と可動プラテン27との間には、当該可動プラテン27を水平方向にガイドする複数のタイバー28が設けられている。また、可動プラテン27は、型締め機構29に接続されている。
【0019】
この金型駆動部25においては、型締め機構29によって、可動型12が固定された可動プラテン27がタイバー28に沿って固定プラテン26に向かって前進させることにより、型締動作が行われ、型締め機構29によって、可動型12が固定された可動プラテン27がタイバー28に沿って後退させることにより、型開動作が行われる。
【0020】
射出成形機15の制御部30は、自動運転、半自動運転および手動運転の各運転モードを切り替えるための運転モード切替スイッチ、手動運転モードにおいて射出部20および金型駆動部25を作動させるための各作動スイッチなどが配置された操作パネル31を有し、この操作パネル31は、射出部20および金型駆動部25の動作を制御するコントローラ32に接続されている。
【0021】
金型監視装置40の制御機構42においては、監視カメラ41からの画像信号が入力される画像信号入力部43が設けられ、この画像信号入力部43は、画像信号入力部43からの画像データを処理する画像データ処理部44に接続され、この画像データ処理部44は、バス45によって中央制御部50に接続されている。この中央制御部50における入出力ポート55には、当該中央制御部50から出力される信号を射出成形機15のコントローラ32に入力すると共に、当該コントローラ32から出力される信号を中央制御部50に入力する信号入出力器60を介して、射出成形機15のコントローラ32に接続され、入力ポート56には、当該金型監視装置40を操作するための操作部51が接続されている。また、画像データ処理部44には、監視カメラ41が撮影した画像を表示する画像表示部46、および画像データ処理部44によって処理された画像データを記録する画像データ記録部47が接続されている。また、画像データ処理部44および中央制御部50には、バス45を介して当該中央制御部50の動作に必要な情報が一次的に記録されるRAM48および当該中央制御部50を作動するためのプログラムが記録されたROM49に接続されている。
【0022】
制御機構42の画像データ記録部47には、一次基準画像データおよび二次基準画像データが予め記録されている。
一次基準画像データは、射出成形機15の型開動作完了後における正常な状態の可動型12の型面、具体的には、成形エリア内に成形品が保持された状態の可動型12の型面を撮像することによって得られたデータである。この一次基準画像データには、図2(イ)に示すように、監視カメラ41からの画像P1、具体的には可動型12の型面の画像を構成する複数の画素(例えば640ピクセル×480ピクセル)p1(1,1)〜p1(x,y)の各々についての位置データ、および複数の画素p1(1,1)〜p1(x,y)の各々についての輝度データが含まれている。この輝度データは、例えば型面の画像における画素p1(1,1)〜p1(x,y)の各々について、それらの輝度を最小を0とし最大を255とする0〜255の整数による相対値で示したものである。
【0023】
二次基準画像データは、射出成形機15の成形品突出動作完了後における正常な状態の可動型12の型面、具体的には、成形品が離型された状態の可動型12の型面を撮像することによって得られたデータである。この二次基準画像データには、図2(ロ)に示すように、監視カメラからの画像P2、具体的には可動型12の型面の画像を構成する複数の画素p2(1,1)〜p2(x,y)の各々についての位置データ、および複数の画素p2(1,1)〜p2(x,y)の各々についての輝度データが含まれている。この輝度データは、型面の画像における画素p2(1,1)〜p2(x,y)の各々について、それらの輝度を、最小を0とし最大を255とする0〜255の整数による相対値で示したものである。
【0024】
上記の制御機構42においては、図3に示すように、射出成形機15の制御部30から型開動作が完了したことを示す型開限信号が入力されると、射出成形機15の制御部30に型締動作を禁止する型締禁止指令を出力すると共に、制御機構42に内蔵されたタイマーが作動し、当該タイマーに設定された待機時間が経過した後に後述する一次監視動作を実行する。ここで、タイマーに設定される待機時間は例えば0.1〜0.4secである。
次いで、この一次監視動作において正常であると認められたときには、射出成形機15の制御部30に成形品突出動作を許可する成形品突出許可指令を出力し、射出成形機15の制御部30から成形品突出動作が完了したことを示す成形品突出完了信号が入力されると、制御機構42に内蔵されたタイマーが作動し、当該タイマーに設定された待機時間が経過した後に後述する二次監視動作を実行する。ここで、タイマーに設定される待機時間は例えば0.1〜0.4secである。
この二次監視動作において正常であると認められたときには、射出成形機15の制御部30に型締動作を許可する型締許可指令を出力する。
【0025】
以上において、二次監視動作は、当該二次監視動作において異常であると認められたときに繰り返し行ってもよい。具体的には、二次監視動作において異常であると認められたときに、制御機構42から射出成形機15の制御部30に成形品突出動作を要求する成形品突出要求指令を出力すると共に、制御機構42に内蔵されたタイマーが作動し、当該タイマーに設定された待機時間が経過した後に二次監視動作を実行する。この二次監視動作は、当該二次監視動作において正常であると認められるか、若しくは最初の成形品突出動作を行ってから予め設定された時間例えば0.5〜1secが経過するまで繰り返して実行される。
【0026】
本発明の金型監視装置40においては、例えば以下のようにして金型10の可動型12の型面が監視されて射出成形機15の動作が制御される。
射出成形機15の自動運転中においては、図4に示すように、金型監視装置40の制御機構42から型締許可指令および成形品突出禁止指令が出力されて射出成形機15の制御部30に入力されると、当該射出成形機15の成形サイクルが開始される(step1)。
具体的に説明すると、射出成形機15の金型駆動部25において、可動プラテン27をタイバー28に沿って固定プラテン26に向かって前進させる型締動作が行われ、これにより、可動プラテン27に固定された可動型12の型面が、固定プラテン26に固定された固定型11の型面に圧接され、その結果、金型10内に成形空間が形成される。
【0027】
その後、射出成形機15の射出部20において、シリンダー21内における溶融された樹脂材料をノズルから金型10の成形空間内に射出する射出動作が行われることによって、当該金型10の成形空間内に溶融した樹脂材料が充填され、当該金型10内において樹脂材料が冷却されて固化されることにより、成形品が得られる。この樹脂材料の冷却中には、射出成形機15の射出部20において、シリンダー21内のスクリューが回転することにより、ホッパ23に投入された樹脂材料が、溶融されながらシリンダー21の後端から前端に向かって供給され、それに伴ってスクリュー21が後退することによって、後続の射出動作に供される、溶融された樹脂材料がシリンダー21の前端部の内部に充填される。
次いで、射出成形機15の金型駆動部25において、可動プラテン27をタイバー28に沿って後退させる型開動作が行われることによって、可動型12の型面が固定型11の型面から離間される。
【0028】
そして、射出成形機15の型開動作が完了すると、当該射出成形機15の制御部30から型開限信号が出力されて金型監視装置40の制御機構42に入力され、これにより、金型監視装置40の制御機構42から型締禁止指令が出力されて射出成形機15に入力されることによって、射出成形機15の型開状態が維持されると共に、当該制御機構42内においてタイマーが作動し(step2)、当該金型監視装置40において、型開限信号が入力されてからタイマーに設定された待機時間が経過した後に、一次監視動作が実行される(step3〜step6)。
【0029】
この一次監視動作においては、先ず、監視カメラ41によって撮像された可動型12の型面の画像から一次監視画像データが取得される(step3)。
この一次基準画像データには、図5(イ)に示すように、監視カメラ41からの画像P3、具体的には可動型12の型面の画像を構成する複数の画素p3(1,1)〜p3(x,y)の各々についての位置データ、および複数の画素p3(1,1)〜p3(x,y)の各々についての輝度データが含まれている。
【0030】
次いで、この一次監視画像データが一次基準画像データと比較される(step4)。 具体的には、一次監視画像データのうち可動型12の型面の成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々と、これらに対応する一次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々とが比較される。
そして、一次監視画像データにおける輝度データの各々と一次基準画像データにおける輝度データの各々との差の全てが予め設定された許容範囲内にあるときには、一次監視画像データが一次基準画像データと一致すると判定され、一次監視画像データにおける輝度データの各々と一次基準画像データにおける輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときには、一次監視画像データが一次基準画像データと相違すると判定される。
【0031】
而して、一次監視動作において、一次監視画像データが一次基準画像データと一致すると判定されたときには、可動型12の型面における成形エリアに成形品が保持された状態にあるため、射出成形機15の動作が正常であると見做され、当該射出成形機15の運転が続行される。
【0032】
一方、一次監視画像データが一次基準画像データと相違すると判定されたときには、動作異常および成形異常のいずれかの異常が生じたと見做され、当該一次監視画像データが前記二次基準画像データと比較される(step5)。
具体的には、一次監視画像データのうち可動型12の型面の成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々と、これらに対応する二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々とが比較される。
そして、一次監視画像データにおける輝度データの各々と二次基準画像データにおける輝度データの各々との差の全てが予め設定された許容範囲内にあるときには、一次監視画像データが二次基準画像データと一致すると判定され、一次監視画像データにおける輝度データの各々と二次基準画像データにおける輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときには、一次監視画像データが二次基準画像データと相違すると判定される。
【0033】
そして、一次監視画像データが二次基準画像データと一致すると判定されたときには、可動型12の型面における成形エリアから成形品が離型された状態にあるため、射出成形機15の動作異常が生じたと見做され、射出成形機15の運転が停止される(step6)。
一方、一次監視画像データが二次基準画像データと相違すると判定されたときには、可動型12の型面における成形エリアの一部に成形品が保持された状態にあるため、成形異常が生じたと見做され、成形品不良信号を発する(step6)と共に、射出成形機15の運転が続行される。
【0034】
このような一次監視動作によって、射出成形機15の動作が正常であると見做されて当該射出成形機15の運転が続行されるときには、金型監視装置40の制御機構42から成形品突出許可指令が出力されて当該射出成形機15の制御部32に入力され(step7)、これにより、射出成形機15において、突出しピンを可動型12の型面から突出させる成形品突出動作が行われる。
【0035】
そして、射出成形機15の成形品突出動作が完了すると、当該射出成形機15の制御部30から成形品突出完了信号が出力されて金型監視装置40の制御機構42に入力されると共に、当該制御機構42内においてタイマーが作動し(step8)、当該金型監視装置40において、成形品突出完了信号が入力されてからタイマーに設定された待機時間が経過した後に、当該金型監視装置40において、二次監視動作が実行される(step9〜step11)。
【0036】
この二次監視動作においては、先ず、監視カメラ41によって撮像された可動型12の型面の画像から二次監視画像データが取得される(step9)。
この二次監視画像データには、図5(ロ)に示すように、監視カメラ41からの画像P4、具体的には可動型12の型面の画像を構成する複数の画素p4(1,1)〜p4(x,y)の各々についての位置データ、および複数の画素p4(1,1)〜p4(x,y)の各々についての輝度データが含まれている。
【0037】
次いで、この二次監視画像データが二次基準画像データと比較される(step10)。
具体的には、二次監視画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々と、これらに対応する二次準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々とが比較される。そして、二次監視画像データにおける輝度データの各々と二次基準画像データにおける輝度データの各々との差の全てが予め設定された許容範囲内にあるときには、二次監視画像データが二次基準画像データと一致すると判定され、二次監視画像データにおける輝度データの各々と二次基準画像データにおける輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときには、二次監視画像データが二次基準画像データと相違すると判定される。
【0038】
而して、二次監視画像データが二次基準画像データと一致すると判定されたときには、可動型12の型面における成形エリアから成形品が離型された状態にあるため、射出成形機15の動作が正常であると見做され、当該射出成形機15の運転が続行される。なお、可動型12の型面から成形品が離型されたときには、離型された成形品は例えば成形品取出装置などによって射出成形機15から取り出される。
そして、射出成形機15の動作が正常であると見做されて当該射出成形機15の運転が続行されるときには、金型監視装置40の制御機構42から型締許可指令および成形品突出禁止指令が当該射出成形機15の制御部32に入力され、これにより、射出成形機15において後続の成形サイクルが開始される(step1)。
【0039】
一方、二次監視画像データが二次基準画像データと相違すると判定されたときには、射出成形機15の動作異常が生じたと見做され、金型監視装置40の制御機構42から成形品突出要求指令が出力されて射出成形機15の制御部30に入力され、これにより、射出成形機15の金型駆動部25において成形品突出動作が再実行され(step7)、射出成形機15の成形品突出動作が完了すると、当該射出成形機15の制御部30から成形品突出完了信号が出力されて金型監視装置40の制御機構42に入力されると共に、当該制御機構42内においてタイマーが作動し(step8)、当該金型監視装置40において、成形品突出完了信号が入力されてからタイマーに設定された待機時間が経過した後に、当該金型監視装置40において、二次監視動作が再実行される(step8〜step10)。
【0040】
このような射出成形機15の成形品突出動作および金型監視装置40の二次監視動作の再実行は、当該二次監視動作によって二次監視画像データが二次基準画像データと一致すると判定されるか、最初の成形品突出動作から予め設定された時間が経過するまで行われる。
【0041】
そして、成形品突出動作および二次監視動作の再実行が、最初の成形品突出動作から予め設定された時間が経過するまで繰り返されても、二次監視動作において二次監視画像データが二次基準画像データと相違すると判定されたときには、可動型12の型面における成形エリアの少なくとも一部に成形品が保持された状態にあるため、射出成形機15の動作異常が生じたと見做され、当該射出成形機15の運転が停止される(step11)。
【0042】
このような金型監視装置40によれば、射出成形機15の型開動作完了後において、一次監視画像データを一次基準画像データと比較して両者の一致・相違を判定することにより、動作異常および成形異常のいずれかの異常の有無を検知することができる。また、一次監視画像データが一次基準画像データと相違すると判定されたとき、すなわち、動作異常および成形異常のいずれかの異常が発生したときには、一次監視画像データを二次基準画像データと比較し、両者が一致すると判定されるときには動作異常が生じたと見做すことができ、両者が相違するときには、成形異常が生じたと見做すことができるので、動作異常と成形異常とを識別することができる。従って、射出成形機15の自動運転中に、動作異常が生じたときに当該射出成形機15の運転を停止し、成形異常が生じたときに当該射出成形機15の運転を続行することができる。
【0043】
本発明の金型監視装置40においては、可動型12の型面における成形エリア以外のエリアから非成形エリアを予め選択し、一次監視動作における一次監視画像データを一次基準画像データと比較する過程で、図6に示すように、一次監視画像データのうち可動型12の型面における非成形エリアに係る複数の画素(図6において太線で囲まれた画素)についての輝度データの各々と、これらに対応する一次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々とを比較し、一次監視画像データにおける輝度データの各々と一次基準画像データにおける輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときには、可動型12の型面の成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々と、これらに対応する一次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との比較の結果に関わらず、一次監視画像データが一次基準画像データと相違すると判定し、射出成形機15の運転を停止することが好ましい。
【0044】
このような金型監視装置40によれば、射出成形機15の型開動作完了後に成形品が可動型12の成形エリアから脱落して非成形エリアに付着したとき、あるいは可動型12の成形エリアから位置ずれして成形エリアおよび非成形エリアに跨がって付着したときに、射出成形機15の運転を確実に停止することができる。
【0045】
また、本発明の金型監視装置40においては、可動型12の型面における成形エリア以外のエリアから非成形エリアを予め選択し、二次監視動作における二次監視画像データを二次基準画像データと比較する過程で、二次監視画像データのうち可動型12の型面における非成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々と、これらに対応する二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々とを比較し、二次監視画像データにおける輝度データの各々と二次基準画像データにおける輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときには、可動型12の型面の成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々と、これらに対応する二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との比較の結果に関わらず、二次監視画像データが二次基準画像データと相違すると判定し、射出成形機15の運転を停止することが好ましい。
【0046】
このような金型監視装置40によれば、射出成形機15の成形品突出動作完了後に成形品が可動型12の非成形エリアに付着したとき、あるいは可動型12の成形エリアおよび非成形エリアに跨がって付着したときに、射出成形機15の運転を確実に停止することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 金型
11 固定型
12 可動型
15 射出成形機
20 射出部
21 シリンダー
22 ノズル
23 ホッパ
24 スクリュー駆動機構
25 金型駆動部
26 固定プラテン
27 可動プラテン
28 タイバー
29 型締め機構
30 制御部
31 操作パネル
32 コントローラ
40 金型監視装置
41 監視カメラ
42 制御機構
43 画像信号入力部
44 画像データ処理部
45 バス
46 画像表示部
47 画像データ記録部
48 RAM
49 ROM
50 中央制御部
51 操作部
55 入出力ポート
56 入力ポート
60 信号入出力器
80 固定プラテン
81 可動プラテン
83 タイバー
85 金型
86 固定型
87 可動型
90 金型監視装置
91 監視カメラ
92 制御機構
P1〜P4 画像
p1(1,1)〜p1(x,y) 画素
p2(1,1)〜p2(x,y) 画素
p3(1,1)〜p3(x,y) 画素
p4(1,1)〜p4(x,y) 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機に取り付けられた金型における可動型の型面を監視して当該射出成形機の運転を制御する金型監視装置であって、
前記可動型の型面を撮像する監視カメラと、この監視カメラからの画像によって得られるデータに基づいて前記射出成形機の運転を制御する制御機構とを備えてなり、
前記制御機構には、前記射出成形機の型開動作完了後における成形エリア内に成形品が保持された状態の前記可動型の型面を撮像することによって得られた一次基準画像データ、および前記射出成形機の成形品突出動作完了後における成形エリアから成形品が離型された状態の前記可動型の型面を撮像することによって得られた二次基準画像データが予め記録されており、
当該制御機構においては、前記射出成形機の自動運転中において、当該射出成形機の型開動作完了後における可動型の型面を監視する一次監視動作、および当該射出成形機の成形品突出動作完了後における前記可動型の型面を監視する二次監視動作を実行し、
前記一次監視動作において、前記射出成形機の型開動作完了後における前記可動型の型面を撮像することによって一次監視画像データを取得し、当該一次監視画像データを前記一次基準画像データと比較し、
当該一次監視画像データが当該一次基準画像データと一致すると判定されたときに、前記射出成形機の運転を続行し、
当該一次監視画像データが当該一次基準画像データと相違すると判定されたときに、当該一次監視画像データを前記二次基準画像データと比較することを特徴とする金型監視装置。
【請求項2】
前記一次監視動作において、前記一次監視画像データが前記二次基準画像データと一致すると判定されたときに、前記射出成形機の運転を停止することを特徴とする請求項1に記載の金型監視装置。
【請求項3】
前記一次監視動作において、前記一次監視画像データが前記二次基準画像データと相違すると判定されたときに、成形異常であると判定すると共に前記射出成形機の運転を続行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金型監視装置。
【請求項4】
前記一次基準画像データ、前記二次基準画像データおよび前記一次監視画像データの各々は、前記可動型の型面の画像を構成する複数の画素の各々についての輝度データを含み、
前記一次監視動作において、前記一次監視画像データのうち少なくとも前記成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々とこれらに対応する前記二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との差の全てが予め設定された許容範囲内にあるときに、前記一次監視画像データが前記二次基準画像データと一致すると判定されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の金型監視装置。
【請求項5】
前記一次監視動作において、前記一次監視画像データのうち少なくとも前記成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々とこれらに対応する前記二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときに、前記一次監視画像データが前記二次基準画像データと相違すると判定されることを特徴とする請求項4に記載の金型監視装置。
【請求項6】
前記一次監視動作において、前記一次監視画像データのうち前記成形エリア以外のエリアから予め選択された非成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々とこれらに対応する前記一次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときに、前記一次監視画像データが前記一次基準画像データと相違すると判定されると共に、前記射出成形機の運転を停止することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の金型監視装置。
【請求項7】
前記二次監視動作において、前記射出成形機の成形品突出動作完了後における前記可動型の型面を撮像することによって二次監視画像データを取得し、
前記二次監視画像データのうち前記成形エリア以外のエリアから予め選択された非成形エリアに係る複数の画素についての輝度データの各々とこれらに対応する前記二次基準画像データにおける複数の画素についての輝度データの各々との差の一つ以上が予め設定された許容範囲外にあるときに、前記二次監視画像データが前記二次基準画像データと相違すると判定されると共に、前記射出成形機の運転を停止することを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の金型監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−135950(P2012−135950A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289869(P2010−289869)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【出願人】(592065069)江藤電気株式会社 (10)
【Fターム(参考)】