説明

金型装置

【課題】成形型2,3全体を均一に加熱することができる金型装置1を提供する。
【解決手段】1組の成形型2,3の前面側の合わせ面同士を合わせることにより形成される成形空間Sに発泡性合成樹脂を充填し、前記成形型2,3の背面側を囲う壁4,7によって区画される蒸気室6,9内に蒸気を供給することにより前記成形空間S内の発泡性合成樹脂を加熱成形して発泡成形体を得る金型装置であって、前記蒸気室S内に蒸気を供給するための蒸気供給手段は、少なくとも一方の蒸気室6に対するものが、前記壁の一方側4Aから蒸気室6の一方側に蒸気を供給すると共に、前記壁の他方側4Bから蒸気室6の他方側に蒸気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1組の成形型の前面(相手側の成形型との対向面)側の合わせ面同士を合わせることにより形成される成形空間に発泡性合成樹脂を充填し、成形型の背面側に形成される蒸気室内に蒸気を供給することにより成形空間内の発泡性合成樹脂を加熱成形して発泡成形体を得る金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡成形体を得る金型装置として、例えば実開昭60−62928号公報に示されるものが提案されている。この金型装置により発泡成形体を得るには、雌型の成形型と雄型の成形型とを横方向(水平方向)から合わせることにより両成形型の前面同士間に形成される成形空間に発泡性合成樹脂粒子を充填し、各成形型の背面側を覆うべく設けられた蒸気室に蒸気を供給することにより成形空間内の発泡性合成樹脂粒子を加熱成形し、その後、蒸気室内に冷却水を供給することにより金型を冷却してから、両成形型を開放することで発泡成形体を成形型の外部に取り出すことになる。
【0003】
前記蒸気室は、成形型の背面側に配置されるバックプレートと、このバックプレートの外周縁と成形型の外周縁との間を囲う矩形状のフレームとから形成され、フレームを構成する上端部に、蒸気を供給する供給管の先端を接続するための接続口が形成され、供給管からの蒸気を接続口を介して蒸気室に供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−62928号公報(第1図、第2図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1によれば、供給管の先端が接続口に接続されている状態では、供給管の先端が蒸気室内に突出する又は大きく突出することはない。この状態において供給管からの蒸気は、接続口近傍にある成形型の上部に直ちに供給されるものの、接続口から遠い位置にある成形型の下部に蒸気が供給されるまでに時間を要する。
【0006】
従って、成形型の上部に供給されて温度が下がった蒸気が成形型の下部に供給されるため、成形型の上部と下部とで加熱温度差が発生することになる。この蒸気による加熱終了時には、蒸気室全体が予め設定された圧力に調節されるが、加熱時間が短いため、加熱当初の成形型の上部と下部との温度差が解消されることが無く、この温度差が次の冷却工程や離型工程まで引きずられる。
【0007】
しかも、加熱終了後の冷却工程において、成形型の上部を冷やした冷却水までも成形型の下部に掛かってしまい、成形型の上部よりも低い温度の成形型の下部の温度が更に下がってしまう。このため、次サイクルの加熱蒸気が過度に必要となるといった悪循環を招いている。
【0008】
尚、成形型の下部の温度が必要以上に下がることがないように、蒸気室内の冷却配管を工夫しているが、成形型の下部の温度が必要以上に下がることを確実に回避することができていないのが現状である。また、蒸気室内に蒸気を分散させるためのジャマ板部品などを設置しているものもあるが、接続口から遠い位置にある成形型下部に蒸気が供給されるまでに時間を要してしまうことになるため、前述の不都合を解消することができない。
【0009】
上記のように成形型の上部が適正温度になるように加熱すると、成形型の下部が適正温度よりも低い温度になってしまう。その結果、冷却後の減圧冷却時において、特に成形型の下部の水分を十分に蒸発させることができず、発泡成形体の乾燥不良や加熱不良(発泡合成樹脂粒子が綺麗に伸びず外観不良)、過冷却(発泡成形体の一部が収縮すること)による原料(発泡合成樹脂粒子)の充填不良(成形型に水分が付着して充填時に発泡性合成樹脂粒子が流動不良を起こす)などの不都合を招くことがある。
【0010】
因みに、前記加熱不良が発生しないようにするために、成形型の下部の加熱温度が適正温度になるように蒸気温度を調整すると、成形型の上部の温度が高くなり過ぎてしまう。このため、過度に加熱された成形型の上部を確実に冷却するための冷却水の量を多くしなければならないという不都合が発生することになり、改善の余地があった。
【0011】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、成形型全体を均一に加熱することができる金型装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の金型装置は、前述の課題解決のために、1組の成形型の前面側の合わせ面同士を合わせることにより形成される成形空間に発泡性合成樹脂を充填し、前記成形型の背面側を囲う壁によって区画される蒸気室内に蒸気を供給することにより前記成形空間内の発泡性合成樹脂を加熱成形して発泡成形体を得る金型装置であって、前記蒸気室内に蒸気を供給するための蒸気供給手段は、少なくとも一方の蒸気室に対するものが、前記壁の一方側から蒸気室の一方側に蒸気を供給すると共に、前記壁の他方側から蒸気室の他方側に蒸気を供給するように構成されることを特徴としている。
【0013】
かかる構成によれば、壁の一方側から蒸気室の一方側に蒸気を直接供給できるだけでなく、壁の他方側から蒸気室の他方側に蒸気を直接供給する構成にすることによって、蒸気室の一方側に供給される蒸気の温度に対して蒸気室の他方側に供給される蒸気の温度が下がることはない。
【0014】
また、本発明の金型装置は、前記壁が、前記蒸気室の上端を覆う上側の壁部と下端を覆う下側の壁部とを備え、前記上側の壁部に前記蒸気供給手段からの蒸気を蒸気室へ供給するための複数の孔が備えられ、前記下側の壁部に前記蒸気供給手段からの蒸気を蒸気室へ供給するための孔が備えられていてもよい。
【0015】
上記構成にしておけば、上側の壁部に備えた複数の孔から蒸気室の上部に位置する成形型の上側部分に蒸気が供給され、下側の壁部に備えた孔から蒸気室の下部に位置する成形型の下側部分に蒸気が供給されて、金型全体を均一に加熱することができる。
【0016】
また、本発明の金型装置は、前記壁が、前記蒸気室の上端を覆う上側の壁部と下端を覆う下側の壁部と左右両端を覆う両横側の壁部とを備え、前記上側の壁部に前記蒸気供給手段からの蒸気を蒸気室へ供給するための複数の孔が備えられ、前記少なくとも一方の横側の壁部の前記下側の壁部寄りに前記蒸気供給手段からの蒸気を蒸気室へ供給するための孔が備えられていてもよい。
【0017】
上記構成にしておけば、上側の壁部に備えた複数の孔から蒸気室の上部に位置する成形型の上側部分に蒸気が供給され、少なくとも一方の横側の壁部の前記下側の壁部寄りに備えた孔から蒸気室の下部に位置する成形型の下側部分に蒸気が供給されて、金型全体を均一に加熱することができる。
【0018】
また、本発明の金型装置は、前記下側の壁部に備えた孔が排水用の孔であり、該孔にドレン配管が接続され、該ドレン配管の途中に該ドレン配管を通して蒸気室内に前記蒸気供給手段からの蒸気を供給するための蒸気供給配管を接続してもよい。
【0019】
上記構成にしておけば、下側の壁部に蒸気供給用の孔を特別に形成することが不要になるだけでなく、ドレン配管の途中に蒸気供給配管を接続するだけの簡単な改造で、金型全体を均一に加熱することができる。
【0020】
また、本発明の金型装置は、前記下側の壁部に備えた孔からの蒸気が、前記成形型の底面に向けて供給されてもよい。
【0021】
上記構成にしておけば、下側の壁部に備えた孔から供給される蒸気が成形型の底面に確実に供給することができ、蒸気が掛かり難い成形型の底面を確実に加熱することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明の金型装置によれば、蒸気室内に壁の一方側から蒸気を供給するだけでなく、壁の他方側からも蒸気を供給するための蒸気供給手段を備えることによって、蒸気室の一方側に供給される蒸気の温度と他方側に供給される蒸気の温度との温度差を無くすことで、成形型全体を均一に加熱することができる金型装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第一実施形態に係る金型装置であって、(a)は、1組の成形型を合わせた状態の縦断側面図、(b)は、(a)で示した一方(雌型)の成形型の縦断正面図である。
【図2】第二実施形態に係る金型装置であって、(a)は、1組の成形型を合わせた状態の縦断側面図、(b)は、(a)で示した一方(雌型)の成形型の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る金型装置の一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
【0025】
<第一実施形態>
図1(a),(b)は、発泡成形体を成形するための金型装置1を示している。この金型装置1は、左右一対(1組)の金型1A,1Bからなり、左側の金型1Aを構成する雌型の成形型2と、右側の金型1Bを構成する雄型の成形型3とを前面側で合わせて発泡成形体を成形するように構成されている。図1(a),(b)に示す金型装置1は、1組の金型1A,1Bを左右方向(水平方向)に開閉させる横型の金型装置である。
【0026】
一方の金型1Aは、雌型の成形型2と、成形型2が取り付けられる第1フレーム4と、第1フレーム4の背面側の開口部4Kを閉じる第1バックプレート5とを備えている。また、他方の金型1Bは、雄型の成形型3と、成形型3が取り付けられる第2フレーム7と、第2フレーム7の背面側の開口部7Kを閉じる第2バックプレート8とを備えている。
【0027】
雌型の成形型2は、一端(図1(a)では右端)が開口された凹部を備えた本体部2Aと、この本体部2Aの開口端から外周方向に突出形成された環状の鍔部2Bとを備えている。また、雄型の成形型3は、雌型の成形型2の凹部内に入り込んで発泡性合成樹脂(発泡性合成樹脂粒子が好ましい)を充填するための成形空間Sを形成するための凸部を備えた本体部3Aと、この本体部3Aの突出側とは反対側端から外周方向に突出する環状の鍔部3Bとを備えている。
【0028】
第1フレーム4は、図1(a),(b)に示すように、正面視が矩形状の環状枠体に形成されるとともに、成形型2の背面側に配置され、成形型2の鍔部2Bの外周縁を支持している。第1バックプレート5は、矩形状の板状材からなり、第1フレーム4の背面側の開口部4Kを閉じるように第1フレーム4の背面に取り付けられている。このように第1フレーム4と第1バックプレート5により成形型2の背面を囲うことにより一方の成形型2の蒸気室6が形成されている。尚、第1フレーム4と第1バックプレート5の2つの部材から成形型2の背面側を囲う壁を構成しているが、1つの部材又は3つ以上の部材から成形型2の背面側を囲う壁を構成してもよい。
【0029】
また、第1フレーム4は、上下に配置された上側の壁部4A及び下側の壁部4Bと、これら上側の壁部4A及び下側の壁部4Bの同一端同士を連結するべく、左右横側に平行に配置された縦向きの左側の壁部4C及び右側の壁部4Dとを備えている。そして、上側の壁部4Aに、蒸気室6へ蒸気を供給するための複数(図では4個)の孔4a,4b,4c,4dが所定間隔(図では略同一間隔)を置いて形成され、それら孔4a,4b,4c,4dに蒸気発生装置(図示せず)からの蒸気を案内するための蒸気供給配管10,11,12,13が接続されている。
【0030】
第2フレーム7は、第1フレーム4と同様に、正面視が矩形状の環状枠体に形成されるとともに、成形型3の背面側に配置され、成形型3の鍔部3Bの外周縁を支持している。また、第2バックプレート8は、第2フレーム7の背面側の開口部7Kを閉じるように第2フレーム7の背面に取り付けられている。このように第2フレーム7と第2バックプレート8とで成形型3の背面を囲うことにより他方の成形型3の蒸気室9が形成されている。尚、第2フレーム7と第2バックプレート8とから成形型3の背面側を囲う壁を構成しているが、1つの部材又は3つ以上の部材から成形型3の背面側を囲う壁を構成してもよい。
【0031】
また、第2フレーム7は、第1フレーム4と同様に、上下に配置された上側の壁部7A及び下側の壁部7Bと、これら上側の壁部7A及び下側の壁部7Bの同一端同士を連結するべく、左右に平行に配置された縦向きの左側の壁部(図示していない)及び右側の壁部(図示していない)とを備えている。そして、上側の壁部7Aに、第1フレーム4と同様に、蒸気室9へ蒸気を供給するための複数(図示していないが、図1(b)と同じく4個)の孔が形成されている。これら孔に、成形型3の蒸気室9へ蒸気を供給するべく、蒸気発生装置からの蒸気を案内するための蒸気供給管14…(孔と同数の4本)がそれぞれ接続されている。
【0032】
また、第1フレーム4の上側の壁部4A及び第2フレーム7の上側の壁部7Aには、蒸気室6,9に冷却水を供給することにより成形型2,3を冷却するための冷却水供給用の複数(図では2個)の孔(成形型3の孔は図示していないが、成形型2と同様になっている)4e,4fを備え、その孔4e,4fに冷却水を供給する冷却水供給管24,25が接続されている。そして、冷却水供給管24,25からの冷却水を成形型2,3に直接且つ均一に供給すべく、蒸気室6,9内には、図示していないが、冷却水供給用の複数の孔4e,4fから適宜に分岐する複数の蒸気室内冷却水供給管が配管されている。
【0033】
さらに、第1フレーム4の下側の壁部4B及び第2フレーム7の下側の壁部7Bには、複数(図では2個)の排水口4H,4Hを備え、これら排水口4H,4Hに、ドレン配管15,16がそれぞれ接続されている。尚、第2フレームの排水口及びドレン配管は省略し、ここでは、第1フレーム4のみについて説明する。排水口4H,4Hは、成形型2に接触して第1フレーム4の下端に移動した冷却水を排出するために設けられ、排水口4H,4Hから第1ドレン配管15,16を通して冷却水が外部に排出されるようになっている。そして、ドレン配管15,16の途中に、ドレン配管15,16を通して蒸気室6内に蒸気を供給するための蒸気供給配管22,23が接続されている。尚、第2フレーム7の下側の壁部7Bにも、第1フレーム4と同様に、ドレン配管に蒸気供給配管が接続されており、蒸気が供給されるようになっている。前記排水口4H,4Hの周囲には、排水口4H,4H側へ冷却水を案内するためのすり鉢状のテーパー面4T,4Tが形成されているが、水平面であってもよい。
【0034】
ドレン配管15,16は、排水口4H,4Hに接続される第1ドレン管15A,16Aと、この第1ドレン管15A,16Aの下端にドレン弁18,19を介して接続される直線状の第2ドレン管15B,16Bとを備えている。第1ドレン管15A,16Aは、排水口4H,4Hに接続されて下方に真っ直ぐ延びる縦管部15a,16aと、縦管部15a,16aの途中部分(図では縦管部15a,16aの下端寄り部分であるが、上下方向中央部でもよい)の外側面から横外側に向けて分岐する直線状の横管部15b,16bとを備え、この横管部15b,16bの遊端に蒸気弁20,21を介して前記蒸気供給配管22,23が接続されている。
【0035】
従って、蒸気発生手段からの蒸気が、2本の蒸気供給配管11,12を通して内側に位置する孔4b,4cから成形型2の本体部2Aの上端面2aに向けて蒸気が供給され、残りの2本の蒸気供給配管10,13を通して外側に位置する孔4a,4dから成形型2の本体部2Aの左横側部2Lの外面及び右横側部2Rの外面に向けて蒸気が供給される。また、蒸気発生手段からの蒸気が、蒸気供給配管22,23から蒸気弁20,21、第1ドレン管15A,16Aを通して成形型2の底面2bに向けて蒸気が供給される。このように、4つの孔4a,4b,4c,4d(壁の一方側)からの蒸気が壁の一方側と同一側となる蒸気室6の上側部分(一方側)に供給され、排水口4H,4H(壁の他方側)からの蒸気が壁の他方側と同一側となる蒸気室6の下側部分(他方側)に供給されることによって、蒸気室6内の成形型2を均一に加熱することができる。残る成形型3も同様に、第2フレーム7の上側の壁部7Aに備えた4つの孔からの蒸気が壁の一方側と同一側となる蒸気室9の上側部分(一方側)に供給され、排水口(壁の他方側)からの蒸気が壁の他方側と同一側となる蒸気室6の下側部分(他方側)に供給されることによって、蒸気室9内の成形型3を均一に加熱することができる。尚、蒸気発生手段と、蒸気供給配管10,11,12,13,22,23と、孔4a,4b.4c,4dと、蒸気弁20,21と、第1ドレン管15A,16Aと、排水口4H,4Hとから、蒸気供給手段が構成されている。
【0036】
次に、前記のように構成された金型装置を用いて発泡成形体を成形する過程を説明する。
【0037】
まず、成形型2,3の前面側の合わせ面同士を合わせて両成形型2,3を閉じる。このとき、成形型2,3のうちの一方のみを移動させて閉じてもよいし、両方の成形型2,3を移動させて閉じてもよい。閉じることにより形成された成形空間Sに発泡性合成樹脂(発泡性合成樹脂粒子が好ましい)を図示しない充填装置により充填する。次に、図示していない蒸気弁を開放状態にすることにより、蒸気を蒸気室6,9に上側の孔4a,4b,4c,4dから蒸気室6,9の上側半分に供給すると同時に、蒸気弁20,21を開放状態にすることにより、蒸気を下側の排水口4H,4Hから蒸気室6,9の下側半分に供給して、成形型2,3を加熱する。加熱が終了すると、開放している蒸気弁20,21を閉じてから、図示していない冷却水供給バルブを開放状態にして蒸気室6,9に冷却水を供給し、成形型2,3を冷却する。続いて、減圧冷却工程に移り、蒸気室6,9内を減圧することにより蒸気室内の残存水分や成形された発泡成形体に付着もしくは内部に含有されている水分を蒸発させるとともに蒸発潜熱を利用して冷却を促進させて、減圧冷却工程を終了する。こののち、成形型2,3を開いて発泡成形体を成形型2,3から取り出して作業が完了する。前述のように蒸気を上側(一方側)と下側(他方側)の両方から蒸気室6,9内に供給することによって、成形型2,3を均一に加熱することができ、発泡成形体の乾燥不良や加熱不良などの不都合を招くことを有効に回避することができる。
【0038】
<第二実施形態>
図2(a),(b)は、図1(a),(b)とは別の形態の金型装置1を示している。この金型装置1は、左右一対(1組)の金型26,27からなり、左側の金型26を構成する雌型の成形型2と、右側の金型27を構成する雄型の成形型3とを前面側で合わせて発泡成形体を成形するように構成されている。尚、金型26,27は、成形型2,3に下側から供給する蒸気の供給口の位置及び蒸気の供給方向が異なる以外は、図1(a),(b)と同様であるため、同一符号を付している。
【0039】
金型26,27は、前記と同様に、成形型2,3と、フレーム4,7と、バックプレート5,8とを備えている。前記一方のフレーム4は、上下に平行に配置された横向きの上側の壁部4A及び下側の壁部4Bと、これら上側の壁部4A及び下側の壁部4Bの同一端同士を連結するべく、左右横側に平行に配置された縦向きの左側の壁部4C及び右側の壁部4Dとを備えている。
【0040】
そして、一方のフレーム4の上側の壁部4Aに、蒸気室6へ蒸気を供給するための複数(図では4個)の孔4a,4b,4c,4dが所定間隔(図では略同一間隔)を置いて形成され、それら孔4a,4b,4c,4dに図示していない蒸気発生装置からの蒸気を案内するための上側の壁部4A用の蒸気供給配管10,11,12,13が接続されている。尚、他方のフレーム7も、図1(a),(b)に示す構成と同じである。さらに、左右の壁部4C,4Dの前記成形型2,3の下側の壁部4B,7B寄りに、前記蒸気発生装置からの蒸気を蒸気室6,9へ供給するための孔28,29(成形型3は図2(a)において一方の孔28のみ図示している)が備えられ、孔28,29に蒸気供給管34,35(成形型3は図示していない)が接続されている。前記孔28,29は、成形型2,3の底面2b,3bよりも少し下側の位置(成形型2,3の底面2b,3bと同じ高さ位置でもよい)に形成されていて、成形型2の底面及び成形型3の下側部分に蒸気を確実に供給できるようにしている。尚、孔28,29の位置は、上下方向中央部よりも下側であれば、どの位置であってもよい。
【0041】
従って、孔4a,4b,4c,4dから壁の一方側と同一側となる蒸気室6又は9内の一方側(上部側)に蒸気を供給し、孔28,29から壁の他方側と同一側となる蒸気室6又は9内の他方側(下部側)にも蒸気を供給することで、成形型2,3を均一に加熱することができるようにしている。孔28,29からの蒸気の方向は、左右方向中央部側に向かう水平方向に設定しているが、上向き又は下向きであってもよい。また、左右の両側に孔28,29を備えさせたが、一方側のみ備えさせてもよいし、左右の両側の孔28,29から蒸気を供給するだけでなく、図1(b)で示した排水口4H,4Hからも蒸気を供給する構成を加えた構成であってもよい。
【0042】
第1フレーム4の上側の壁部4A及び第2フレーム7の上側の壁部7Aに、蒸気室6,9に冷却水を供給することによって、成形型2,3を冷却するための冷却水供給用の複数(図では2個)の孔(成形型3の孔は図示していないが、成形型2と同様になっている)4e,4fを備え、その孔4e,4fに冷却水を供給する冷却水供給管24,25が接続されている。そして、冷却水供給管24,25からの冷却水を成形型2,3に直接且つ均一に供給すべく、蒸気室6,9内には、図示していないが、冷却水供給用の複数の孔4e,4fから適宜に分岐する複数の蒸気室内冷却水供給管が配管されている。尚、成形型2,3に接触して第1フレーム4及び第2フレーム7の下端に移動した冷却水は、図2(b)に示すように、第1フレーム4及び第2フレーム7の底部に備えた排水口4H,4H(第1フレーム4側のみ図示しているが、第2フレーム7も同様に備えている)を通して外部に排出される。前記排水口4H,4Hには、ドレン配管30,31がそれぞれ接続されている。ドレン配管30,31は、排水口4H,4Hに一端(上端)が接続される第1ドレン管30A,31Aと、この第1ドレン管30A,31Aの他端(下端)にドレン弁32,33を介して接続される第2ドレン管30B,31Bとを備えている。尚、前記排水口4H,4Hの周囲には、排水口4H,4H側へ冷却水を案内するためのすり鉢状のテーパー面4T,4Tが形成されているが、水平面であってもよい。
【0043】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
前記実施形態では、2つの排水口4H,4Hを設けた場合を説明したが、1つ又は3つ以上設けて実施することもできる。排水口を複数設ける場合には、蒸気室内に蒸気を供給するための蒸気供給配管を全ての排水口に接続してもよいし、任意の排水口にのみ蒸気供給配管を接続してもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、四角形で箱型の発泡成形体を形成できる金型を示したが、円形又は楕円形あるいは多角形など、各種形状の発泡成形体を形成できる金型であってもよい。また、金型としては、1個の発泡成形体を成形できる金型の他、複数の発泡成形体を成形できる金型であってもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、上側の壁部4Aに備えた孔4a,4b,4c,4d(壁の一方側)からの蒸気が蒸気室6の上側部分に供給され、排水口4H,4H(壁の他方側)からの蒸気が蒸気室6の下側部分(他方側)に供給されるように構成したが、左側の壁部4C及び右側の壁部4Dに孔をそれぞれ形成し、左側の壁部4Cの孔から蒸気を蒸気室6の左側部分に供給し、右側の壁部4Dの孔から蒸気を蒸気室6の右側部分に供給するように構成してもよい。
【0047】
また、前記実施形態で示した壁を構成するフレームとバックプレートを、金型装置側の部材に連結し、成形型を、フレームとバックプレートとは別の部材に連結する構成であってもよいし、フレームとバックプレートと成形型とが一体化された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…金型装置、1A,1B…金型、2,3…成形型、2A,3A…本体部、2B,3B…鍔部、2L…左横側部、2R…右横側部、2a…上端面、2b…底面、4,7…フレーム、4A〜4D,7A,7B…壁部、4H…排水口、4K…開口部、4T…テーパー面、4a,4b,4c,4d,4e,4f…孔、5,8…バックプレート、6,9…蒸気室、10,11,12,13,14…蒸気供給配管、15,16…ドレン配管、15A,16A…第1ドレン管、15B,16B…第2ドレン管、15a,16a…縦管部、15b,16b…横管部、18,19…ドレン弁、20,21…蒸気弁、22,23…蒸気供給配管、24,25…冷却水供給管、26,27…金型、28,29…孔、30,31…ドレン配管、30A,31A…第1ドレン管、30B,31B…第2ドレン管、32,33…ドレン弁、34,35…蒸気供給管、S…成形空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の成形型の前面側の合わせ面同士を合わせることにより形成される成形空間に発泡性合成樹脂を充填し、前記成形型の背面側を囲う壁によって区画される蒸気室内に蒸気を供給することにより前記成形空間内の発泡性合成樹脂を加熱成形して発泡成形体を得る金型装置であって、
前記蒸気室内に蒸気を供給するための蒸気供給手段は、少なくとも一方の蒸気室に対するものが、前記壁の一方側から蒸気室の一方側に蒸気を供給すると共に、前記壁の他方側から蒸気室の他方側に蒸気を供給するように構成されることを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記壁は、前記蒸気室の上端を覆う上側の壁部と下端を覆う下側の壁部とを備え、前記上側の壁部に前記蒸気供給手段からの蒸気を蒸気室へ供給するための複数の孔が備えられ、前記下側の壁部に前記蒸気供給手段からの蒸気を蒸気室へ供給するための孔が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記壁は、前記蒸気室の上端を覆う上側の壁部と下端を覆う下側の壁部と左右両端を覆う両横側の壁部とを備え、前記上側の壁部に前記蒸気供給手段からの蒸気を蒸気室へ供給するための複数の孔が備えられ、前記少なくとも一方の横側の壁部の前記下側の壁部寄りに前記蒸気供給手段からの蒸気を蒸気室へ供給するための孔が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
【請求項4】
前記下側の壁部に備えた孔が排水用の孔であり、該孔にドレン配管が接続され、該ドレン配管の途中に該ドレン配管を通して蒸気室内に前記蒸気供給手段からの蒸気を供給するための蒸気供給配管を接続したことを特徴とする請求項2に記載の金型装置。
【請求項5】
前記下側の壁部に備えた孔からの蒸気が、前記成形型の底面に向けて供給されることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の金型装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−245685(P2011−245685A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119452(P2010−119452)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】