説明

金属ケイ酸塩ハロゲン化物燐光体及びそれを使用するLED照明デバイス

本発明は、酸化物コーティングを有する、金属ケイ酸ハロゲン化物(ハロシリケート)燐光体、その燐光体を形成する方法、及びその燐光体で変更される発光ダイオード(LED)に基づく照明デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燐光体が水によって引き起こされる劣化に耐えられるようにする酸化物コーティングを有する特定の金属ケイ酸塩ハロゲン化物(ハロシリケート)燐光体、その燐光体を形成する方法、及びその燐光体で変更される、発光ダイオード(LED)を基にする照明デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
照明の用途において、出力される光の波長を変更するために、燐光体を用いることができる。たとえば、発光ダイオード(LED)照明デバイスは典型的には、LEDチップ(「LED」)、及び燐光体又は燐光体の混合物から成る。チップは、高い光子エネルギーを有する一次光を放射し、一方、燐光体は、一次光の励起時に、低い光子エネルギーを有する光を放射する。燐光体を用いて、一次光の波長を変更することができる。たとえば、特定の燐光体によれば、放射経路に沿って燐光体を配置し、一次光を長い波長に変換することによって、紫外線(UV)又は青色LEDの放射を変更して、他の可視光を生成することができる。青色発光燐光体、緑色発光燐光体及び赤色発光燐光体の適切な混合物を用いて、UV LED放射を白色光(すなわち、白色色度の光)に変更することができる。緑色発光燐光体及び赤色発光燐光体の特定の組み合わせを用いて、LEDの青色出力を白色光に変更することができる。黄色発光燐光体を、青色LED又は青色発光燐光体からの光と混合して、白色色度の光を作り出すことができる。蛍光灯のような、他のUV又は青色発光デバイスからの光を、同じように燐光体によって変更することができる。本明細書において記述される燐光体は、適切な他の光源と組み合わせられるときに、そのような用途において用いることができる。
【0003】
2006年9月27日に出願された特許文献1には、主に緑色を発光するケイ酸塩ハロゲン化物燐光体が開示されている。本発明の燐光体は、母体結晶としての、ケイ酸塩ハロゲン化物とも呼ばれる、少なくとも1つのハロシリケート、並びに活性体としての特定の遷移金属イオン及び希土類金属イオンから構成される。ハロシリケートは、結晶構造を決定する際に、ケイ酸塩基及びハロゲン化物イオンの両方が、その構造を特徴付ける元素であるような結晶の一分類である。たとえば、結晶CaSiOCaCl(たとえば、非特許文献1を参照されたい)、CaSiOCl(たとえば、非特許文献2を参照されたい)及びSrLiSiOF(たとえば、非特許文献3を参照されたい)が典型的なハロシリケートである。それらの結晶では、ケイ酸塩基、たとえば、[Si6−及び[SiO4−、並びにハロゲン化物イオン、たとえば、Cl又はFが、厳密な化学量論において化合物を構成し、結晶構造を決定する。対照的に、ケイ酸塩及びハロゲン化物イオンから構成される燐光体があるが、それらのハロゲン化物イオンはドーパントとして存在し、結晶構造を決定するのではなく、わずかな変更を引き起こすことがあるだけであり、たとえば、格子の膨張又は収縮を引き起こすことがある。そのドーパントは、ハロシリケートの構造を主に特徴付けるイオンよりも少ない量において存在する。
【0004】
特定の金属ケイ酸塩ハロゲン化物燐光体が記述されているが、LEDにおいて使用するのに適していることを記述するものはない。たとえば、以下の表を参照されたい。
【0005】
【表1】

【0006】
これらの結晶材料は合成されており、それらの結晶構造がX線回折によって特定されている。特定の遷移金属イオン及び希土類金属イオンを発光活性体として、これらの結晶に添加することができる。
【0007】
特定の金属ケイ酸塩ハロゲン化物鉱物(非燐光体)が記述されている。たとえば、以下の表を参照されたい。
【0008】
【表2】

【0009】
これらの結晶を含む燐光体は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第11/527,835号
【特許文献2】米国特許出願第11/149,648号
【特許文献3】米国特許出公開願第2004/0145289号
【特許文献4】米国特許出公開願第2004/0145288号
【特許文献5】米国特許第6,982,523号
【特許文献6】米国特許第6,936,857号
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/00135504号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】V. R. Czaya及びG. Bissert著、Acta Cryst. B27, 747 (1971)
【非特許文献2】N. I. Golovastikov及びV. F. Kazak著、Sov. Phys Crystallogr., 22(5), 549(1977)
【非特許文献3】A. Akella及びD. Keszler著、Chem. Mater. 7, 1299, (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、新規のハロシリケート燐光体、及びLEDを含む発光デバイスを含む、発光デバイスでのその使用に向けられる。本発明の燐光体は、黄色から橙色全域において広帯域の発光を提供し、温白色照明デバイスを生成するのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、式:
(M1,M21−x(SiO:A
(式中、
M1及びM2は、それぞれ独立して、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+及びCd2+から成る群から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
xは約0.001〜約1の値であり、
Xはイオンの形をとる少なくとも1つのハロゲン化物イオンであり、
Aは、Eu2+、Yb2+、Mn2+、Bi3+、Pb2+、Ce3+、Nd3+、Pr3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+及びYb3+から成る群から選択される少なくとも1つの活性体イオンである)
を有する燐光体を提供する。
【0014】
本発明はさらに、先に説明されたような、本発明の燐光体と、燐光体上にある少なくとも1つのコーティング層とを含むコーティングされた燐光体を提供し、その層は少なくとも1つの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、本発明のコーティングされた燐光体は、少なくとも2つの酸化物層を含むコーティングを有する。
【0015】
本発明はさらに、本発明の燐光体を含む照明デバイスを提供する。いくつかの実施形態では、照明デバイスは、
a)少なくとも約300nmの波長において発光する光源と、
b)本発明による少なくとも1つの燐光体とを備え、
(1)燐光体は光源から放射される光の少なくとも一部を吸収することができ、
(2)燐光体は、光源から吸収される光の部分の色度を変更し、
(3)燐光体は、光源から吸収される光の波長よりも長い波長の光を放射する。
【0016】
本発明はさらに、照明デバイスであって、
a)少なくとも約300nmの波長において発光し、発光ダイオード(LED)である、光源と、
b)本発明の少なくとも1つの燐光体とを備え、
(1)燐光体は光源から放射される光の少なくとも一部を吸収することができ、
(2)燐光体は、光源から吸収される光の部分の色度を変更し、
(3)燐光体は、光源から吸収される光の波長よりも長い波長の光を放射し、
(4)選択的に、燐光体は、少なくとも1つの酸化物を含む少なくとも1つのコーティング層をさらに含み、
白色光を生成する、照明デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明において用いることができる発光デバイスを示す図である。
【図2】本発明において用いることができる発光デバイスを示す図である。
【図3】本発明において用いることができる発光デバイスを示す図である。
【図4】本発明において用いることができるLEDを示す図である。
【図5】本発明の実施例1の燐光体のための発光/励起スペクトルを示す図である。
【図6】本発明のLEDランプのための発光スペクトルを示す図である。
【図7】本発明のLEDランプのための発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において用いられるときに、「活性体」は、燐光体からの発光の波長を決定するイオンを指しており、活性体は燐光体の一部である。
【0019】
本明細書において用いられるときに、「コーティング」、「酸化物コーティング」又は「酸化物のコーティング」は、(a)少なくとも1つの酸化物(たとえば、非晶質又は結晶)を含み、(b)光学的に区別することができる埋込粒子を欠いており、(c)水に対して相対保護を与えるのに十分に完全である被覆層又は外層(複数可)を指しており、たとえば、約85℃及び約85%の相対湿度に約16時間〜約100時間だけ曝露された後に、燐光体の元の光学的な性能の約80%を保持するコーティングである。そのようなコーティングは、コーティング前駆体物質(すなわち、前駆物質又は前物質)又は燐光体粒子から生じるような、他の元素又は化合物を含むことができる。したがって、本明細書において用いられるときに、「酸化物」は、金属又は半導体陽イオンと、多くの場合にコーティングの主材料である酸素とを含むような材料を指している。
【0020】
本明細書において用いられるときに、「粒子」は燐光体の個々の結晶を指している。
【0021】
本明細書において用いられるときに、「グレイン」は、燐光体粒子の集塊、凝集、多結晶又は多形体を指しており、その中の粒子は、粉末の燐光体粒子に比べて分離するのが容易ではない。
【0022】
実質的な気相を伴う、種々のプロセスの場合に本明細書において記述される温度は、反応物そのものの温度ではなく、その時点で使用中のオーブン又は他の反応器の温度である。
【0023】
本明細書において用いられるときに、「白色光」は、国際照明委員会(CIE)1931色度図上の特定の色度座標の光を指しており、その色度図は当該技術分野においてよく知られている。
【0024】
本発明は、中でも、式:
(M1,M21−x(SiO:A
(式中、
M1及びM2は、それぞれ独立して、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+及びCd2+から成る群から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
xは約0.001〜約1の値であり、
Xはイオンの形をとる少なくとも1つのハロゲン化物イオンであり、
Aは、Eu2+、Yb2+、Mn2+、Bi3+、Pb2+、Ce3+、Nd3+、Pr3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+及びYb3+から成る群から選択される少なくとも1つの活性体イオンである)
を有する燐光体を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体は上述したような式を有し、
式中、
M1及びM2はそれぞれ独立して、Ca2+、Sr2+、Ba2+又はそれらの組み合わせであり、
Xは、フッ化物、塩化物、臭化物又はそれらの組み合わせであり、
Aは、Eu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体は上述したような式を有し、
式中、
M1はSr2+であり、
M2はCa2+、Ba2+又はそれらの組み合わせであり、
Xはフッ化物、塩化物又はそれらの組み合わせであり、
AはEu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体は式:
(Sr,Ca1−x(SiOCl:Eu2+
を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、活性体イオンは、母体結晶格子内の金属ストロンチウム、バリウム又はカルシウムの一部(たとえば、限定はしないが、約1%〜約10%)を置換することができる。いくつかの実施形態では、活性体イオンは、母体結晶格子内の金属ストロンチウム、バリウム又はカルシウムの約4%を置換することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、AをA’によって置き換えることができ、A’は、活性体がEu2+を含むときに、少なくとも1つの付加的な活性体イオンが燐光体の蛍光特性(たとえば、発光波長若しくは帯域幅、又はその両方)を変更するのに有効な量だけ存在することを除いて、Aと同じである。
【0030】
いくつかの実施形態では、AをA’’によって置き換えることができ、A’’は、活性体がEu2+、Mn2+又はそれらの組み合わせを含むときに、少なくとも1つの付加的な活性体イオンが燐光体の蛍光特性(たとえば、発光波長若しくは帯域幅、又はその両方)を変更するのに有効な量だけ存在することを除いて、Aと同じである。
【0031】
いくつかの実施形態では、AをAによって置き換えることができ、Aは、活性体がEu2+、Pb2+、Mn2+、Bi3+、Ce3+、Tb3+、Dy3+又はそれらの組み合わせを含むときに、少なくとも1つの付加的な活性体イオンが燐光体の蛍光特性(たとえば、発光波長若しくは帯域幅、又はその両方)を変更するのに有効な量だけ存在することを除いて、Aと同じである。
【0032】
本発明の燐光体のいくつかの実施形態では、Aは、約0.001モル%〜約10モル%を有する。いくつかの実施形態では、Aのモルパーセントの範囲は、以下の下端値(その値を含むか、又は除く):約0.0001モル%、約0.001モル%、約0.01モル%、約0.02モル%、約0.05モル%、約0.1モル%、約0.2モル%、約0.5モル%、約1モル%、約2モル%、約3モル%、約4モル%及び約5モル%のうちの1つから、以下の上端値(その値を含むか、又は除く):約0.01モル%、約0.02モル%、約0.05モル%、約0.1モル%、約0.2モル%、約0.5モル%、約1モル%、約2モル%、約3モル%、約4モル%、約5モル%及び約10モル%のうちの1つまでの範囲である。たとえば、その範囲は、約0.01モル%〜約5モル%にすることができる。Aは実際には燐光体の主要(すなわち、重要な又は主な)金属成分を置換することができることは理解されよう。それにもかかわらず、主要金属成分が相対的な量において列挙される場合には、化合した主要金属があたかも、Aが存在しないことに関連するような化学式量において存在しているかのように、正規化されて列挙される。いくつかの実施形態では、本発明の燐光体のAは、燐光体の約0.0001モル〜約0.1モルまでの量から成る。いくつかの実施形態では、本発明の燐光体のEu2+は、燐光体のうちの約0.0001モル〜約0.1モルまでの量から成る。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体の場合の発光ピークは、約440nm±100nm又は約400nm±100nmにおいて照明される発光源で測定される。いくつかの実施形態では、本発明の燐光体の場合の発光範囲は、たとえば、限定はしないが、以下の下端値(その値を含むか、又は除く):約300nm、約301nm、約302nm、約303nm、及び約799nmまで1nmずつ増やした値のうちの1つから、以下の上端値(その値を含むか、又は除く):約900nm、約899nm、約898nm、約897nm、及び約381nmまで1nmずつ減らした値のうちの1つまでの範囲である。いくつかの実施形態では、発光範囲の下限は、たとえば、限定はしないが、約400nm、約401nm、約402nm、及び約899nmまで1nmずつ増やした値である。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体の場合の励起ピーク範囲は、たとえば、限定はしないが、以下の下端値(その値を含むか、又は除く):約200nm、約201nm、約202nm、約203nm、及び約549nmまで1nmずつ増やした値のうちの1つから、以下の上端値(その値を含むか、又は除く):約550nm、約549nm、約548nm、約547nm、及び約201nmまで1nmずつ減らした値のうちの1つまでの範囲である。
【0035】
本発明はさらに、酸化物コーティングを有する本発明の燐光体を提供する。いくつかの実施形態では、コーティングされた燐光体は、(1)本発明の燐光体、及び(2)少なくとも1つの層を含むコーティングを備える。ただし、その層は少なくとも1つの酸化物を含む。コーティングの層(複数可)は、コーティングされない燐光体に比べて、その燐光体を水によって引き起こされる劣化に対して相対的に強くする。すなわち、コーティングの層(複数可)は、たとえば、限定はしないが、コーティングされた燐光体が約85℃及び約85%の相対湿度に約100時間だけ曝露された後にも、元の光学的な性能の約80%を保持するように、水(その全ての形において)によって引き起こされる劣化に対する燐光体の耐性を高める。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明のコーティングされた燐光体のコーティングの酸化物は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、ケイ酸アルミニウム、AlBSi19(OH)、BAl(SiO(OH)、ZnAl、AlSiO、Al(SiO、ZrSiO又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、酸化物は酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化シリコンである。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明の光ルミネッセンス燐光体のコーティングされた燐光体のコーティングは、少なくとも2つの層を有する。いくつかの実施形態では、各層は独立して、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化シリコン又はそれらの組み合わせから選択される酸化物を含む。いくつかの実施形態では、コーティングの1つの層は酸化チタンを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明の光ルミネッセンス燐光体のコーティングされた燐光体のコーティングは連続している。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明のコーティングの酸化物層は主に(たとえば、約60%以上)、1つのタイプの酸化物(金属又は半導体成分によって決定される)、たとえば、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化シリコンの層を含む。いくつかの実施形態では、本発明のコーティングは、主に1つのタイプの酸化物である2つ以上の層を含む。たとえば、それらの層は、2つ以上の酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化シリコンから別個に形成することができる。いくつかの実施形態では、本発明のコーティングの1つの層は酸化シリコンから成り、別の層は酸化チタン又は酸化アルミニウムから成る。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体のコーティングは、1つのタイプの酸化物、たとえば酸化チタンの単層にすることができるか、又は多層にする、すなわち2つ以上の層若しくは少なくとも2つの層を含むことができ、それらの層は、互いに別々に異なるタイプの酸化物又は酸化物の組み合わせを含み、たとえば、1つの層は酸化アルミニウムを含むことができ、1つの層は酸化シリコンを含むことができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体のコーティングは、概ね透明にすることができ(有用な蛍光が保持されるように)、典型的には約0.1ミクロン〜約3.0ミクロン厚、又は約0.05ミクロン〜約0.50ミクロン厚である。コーティングがあまりにも薄すぎると(たとえば、少なくとも約0.005ミクロン(5nm)厚未満)、水分に対する不浸透性が不十分になる傾向がある場合があり、すなわち、そのコーティングは水分から燐光体を保護できなくなり、それにより燐光体が劣化し、その光ルミネッセンスを失う。コーティングが厚すぎると(たとえば、約3.0ミクロン厚よりも厚い)、透明性が失われていき、結果として、コーティングされた燐光体の輝度が低下する傾向がある場合がある。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体のコーティングによって与えられる保護の量は、約85℃及び約85%湿度において、或る時間にわたって保持される元の発光強度の量によって測定することができる。幾つかの実施形態では、コーティングされた燐光体は、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、又は少なくとも約2時間、これらの条件に置いた場合、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、又は少なくとも約80%の光ルミネッセンスを保持する。幾つかの実施形態では、コーティングされた燐光体は、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、又は少なくとも約96時間、これらの条件に置いた場合、元の発光強度の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、又は少なくとも約80%を保持する。
【0043】
本発明によってさらに提供されるのは、本発明の燐光体を酸化物コーティングでコーティングする方法であり、その方法は、(a)本発明の燐光体を設けること、並びに(b)燐光体を酸化物前駆体及び水に曝露して、コーティングされないときよりも、その燐光体を水によって引き起こされる劣化に対して相対的に強くする少なくとも1つのコーティング層を生成することを含む。そのコーティング方法は、燐光体の粒子及びグレインをコーティングする。
【0044】
いくつかの実施形態では、燐光体粒子(及び/又はグレイン)は、コーティング作業の時間中、全ての面が、特定のコーティング蒸気又は液に概ね等しく曝露される(すなわち燐光体粒子の表面の大部分、たとえば、約50%以上が曝露される)ようにそれらを攪拌又は懸濁することによってコーティングされる。たとえば、限定はしないが、それらの粒子は流動床内に懸濁されるか、又は液体内で攪拌されるか若しくは掻き混ぜられることができる。粒子を流動化するために用いられる気体は、粒子をコーティングするために用いられる蒸気を含むことができる。たとえば、限定はしないが、その気体は、不活性ガスキャリア(すなわち、普通の状況では反応しない気体)及びコーティング蒸気を含むことができる。キャリアは、主に(すなわち、約60%以上のように、主として、ほとんど、又は概ね)液体又は固体の前駆体を含む容器(複数可)の中に通されて、コーティングにおいて用いるための蒸気を運び去ることができる。その容器(複数可)及び連結経路を、必要に応じて加熱して、十分な蒸気圧を保持することができる。
【0045】
同じコーティング層を形成する際に、2つ以上の酸化物前駆体が用いられる場合、キャリアガスは、別個の前駆体の容器の中に別個に通されて、反応容器のコーティング反応チャンバの前に、又はその中で混合することができる。別個の容器の中の相対的なキャリアガス流量を調整して、蒸気圧又は実験によるコーティング結果を考慮して、所望量の前駆体を搬送することができる。水蒸気も、同じように適度な量で反応容器まで同じようにして適宜搬送される。液体媒介のコーティング方法では、任意の数のディスペンシング方法を用いて、液体の中に多数の前駆体を取り込むことができる。
【0046】
表面酸化物を形成するために、加水分解を通じてコーティングを達成することができ、その加水分解は蒸気相及び/又は液相において生じる。蒸気相の一例は化学気相成長(CVD)であり、一方、液相の一例はゾルゲル工程である。
【0047】
蒸気相成膜反応(すなわち、加水分解成膜反応)では、コーティングされていない燐光体粒子を反応チャンバ内のキャリアガスによって浮遊させて、それらの粒子を概ね単一の粒子として分散させることができる(たとえば、95パーセントを超える(>95%)それらの粒子の間に会合、凝集又は凝結が一切ない)。チャンバは、反応物を与えられると、適切な温度まで加熱することができる(たとえば、或る実施態様では、約200℃)。その後、蒸気相のコーティング前駆体材料がチャンバに導入される。その温度条件下で、前駆体の少なくとも一部(たとえば、約20%)が加水分解によって分解され、燐光体粒子の表面上に酸化物層が形成され、それにより、それらの粒子がマイクロカプセル化される。本発明において用いることができる典型的な加水分解は以下の通りである。
TiCl+2HO → TiO+4HCl
【0048】
液相成膜(すなわち、加水分解成膜反応)では、コーティングされていない燐光体粉末(燐光体粒子及び/又はグレインを含む)を、コーティング前駆体を含む不活性流動媒体(すなわち、化学的に反応する能力が限られている媒体)に懸濁することができる。その粉末を掻き混ぜて、それにより、懸濁液を形成するほど十分に粒子を分散させて、凝集物を形成する可能性がほとんどないようにする。本明細書において用いられるときに、「懸濁液」は、1つの物質(すなわち、分散される媒体)が別の物質(すなわち、分散媒)内に細かく分散したコロイド混合物を指している。その後、懸濁液に少量の水を加えて、加水分解を開始することができる。必要に応じて、高温、たとえば約70℃によって、反応を加速させる。加水分解の結果として、燐光体粒子の表面上に酸化物コーティングが形成される。たとえば、SCS粒子上にSiOをコーティングするために、以下の反応を用いることができる。
Si(OC+2HO → SiO+4COH
【0049】
いくつかの実施形態では、燐光体をコーティングする方法は、加水分解成膜反応を含み、加水分解成膜反応は、有用な蛍光(たとえば、コーティングされていない燐光体の約80%以上の光学的な性能を有する)を保持するために、(所与の燐光体を考慮して)選択される温度において行なわれる。蒸気相成膜の温度はたとえば、約25℃〜約400℃であり得る。この温度はたとえば、少なくとも約25℃、少なくとも約50℃、少なくとも約75℃、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、又は少なくとも約200℃であり得る。この温度はたとえば、多くとも約400℃、多くとも約300℃、多くとも約275℃、多くとも約250℃、多くとも約225℃、又は多くとも約200℃であり得る。液相成膜の温度はたとえば、反応物質、溶媒及び温度に対する燐光体の安定性に応じて、約25℃〜約90℃であり得る。この温度はたとえば、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃、又は少なくとも約70℃であり得る。この温度はたとえば、多くとも約90℃、多くとも約85℃、多くとも約80℃、多くとも約75℃、多くとも約70℃、多くとも約65℃、多くとも約60℃、多くとも約55℃、又は多くとも約50℃であり得る。当然ながらこの温度は、作動圧での溶媒の沸点よりも低い。
【0050】
本発明のコーティングされた燐光体のコーティングにおいて有用な酸化物は、たとえば、限定はしないが、酸化チタン(たとえば、TiO)、酸化アルミニウム(たとえば、Al)、酸化ジルコニウム(たとえば、ZrO)、酸化スズ(たとえば、SnO)、酸化ホウ素(たとえば、B)、酸化シリコン(たとえば、SiO)、酸化亜鉛(たとえば、ZnO)、酸化ゲルマニウム(たとえば、GeO)、酸化タンタル(たとえば、Ta)、酸化ニオブ(たとえば、Nb)、酸化ハフニウム(たとえば、HfO)、酸化ガリウム(たとえば、Ga)等である。本発明のコーティングされた燐光体のコーティングにおいて有用なさらなる酸化物は、2つ以上のタイプの陽イオンで形成される酸化物を含み、たとえば、ケイ酸アルミニウム[3Al・2SiO又はムライトの形をとる酸化物等]、AlBSi19(OH)[デュノルチエライト(dunortierite)の形をとる酸化物等]、BAl(SiO(OH)[ユークレースの形をとる酸化物等]、ZnAl[亜鉛スピネルの形をとる酸化物等]、AlSiO[ケイセン石の形をとる酸化物等]、ZrSiO[ジルコンの形をとる酸化物等]等を含む。いくつかの実施形態では、本発明の燐光体をコーティングする方法において用いるために、加水分解によって酸化物を生成する揮発性又は適切に可溶性の前駆体が用いられる。そのような前駆体は当該技術分野において知られている。
【0051】
揮発性前駆体としてはたとえば、これらに限定されないが、ハロゲン化金属(たとえば四塩化チタン(TiCl)及び四塩化ケイ素(SiCl))、アルキル化金属(たとえば、トリメチルアルミニウム(Al(CH)、トリメチルホウ素(B(CH)、テトラメチルゲルマニウム(Ge(CH)及びテトラエチルジルコニウム(Zr(C))、混合ハロゲン(即ち、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物又はアスタチンを含む)及び金属のアルキル誘導体(たとえば、塩化ジメチルアルミニウム、ジエチルジクロロシラン)、金属又は半導体アルコキシド(たとえば、チタン(IV)メトキシド及びテトラエチルオルトシリケート(TEOS))が挙げられる。水蒸気によって、これらの化合物を加水分解し、これらの各酸化物を得ることができる。本明細書中で使用されるように、「ハロゲン化金属」は、イオン結合又は共有(valently)結合する化学元素の周期表の第VII族の元素の金属陽イオン及び金属陰イオンを指している。本明細書中で使用されるように、「アルキル化金属」は、C〜C16の直鎖部分又は分枝部分(メチル、ジエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル及びデシル等)の少なくとも1つを含む金属陽イオン及び金属陰イオンを指している。本明細書中で使用されるように、「アルキル」は、非分枝(即ち直鎖)又は分枝(即ち非直鎖)の飽和炭化水素基を指している。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(たとえばn−プロピル及びイソプロピル)、ブチル(たとえば、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル)、及びペンチル(たとえば、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)等が挙げられる。本発明の幾つかの実施形態では、アルキル基は、約1個〜約10個、約2個〜約8個、約3個〜約6個、約1個〜約8個、約1個〜約6個、約1個〜約4個、約1個〜約3個の炭素原子、又は約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子を含有することができる。本明細書中で使用されるように、「アルコキシド」は、アルキル−O−部分(アルキルはこれまでに規定されたようなものである)を指している。
【0052】
可溶性前駆体としてはたとえば、金属又は半導体アルコキシド(たとえば、チタン(IV)メトキシド及びジルコニウム(IV)ブトキシド)が挙げられる。このような化合物は、加水分解によって酸化物を生成することができる。
【0053】
本発明はさらに、本発明の少なくとも1つの燐光体を含む照明デバイスを提供する。いくつかの実施形態において、本発明の照明デバイスの少なくとも1つの燐光体は、(M1,M21−x(SiO:Aの式を有し、
式中、
M1及びM2は、それぞれ独立して、Ca2+、Sr2+、Ba2+又はそれらの組み合わせであり、
Xは、フッ化物、塩化物、臭化物又はそれらの組み合わせであり、
Aは、Eu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスの少なくとも1つの燐光体は、(M1,M21−x(SiO:Aの式を有し、
式中、
M1はSr2+であり、
M2はCa2+、Ba2+又はそれらの組み合わせであり、
Xはフッ化物、塩化物又はそれらの組み合わせであり、
AはEu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスの少なくとも1つの燐光体は、式:
(Sr,Ca1−x(SiOCl:Eu
を有する。式中、
xは約0.01〜約1の値を有し、
Xはフッ化物、塩化物、臭化物又はそれらの組み合わせであり、
AはEu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスの燐光体はさらにコーティングを含む。いくつかのそのような実施形態では、そのコーティングは少なくとも1つの酸化物を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、その照明デバイスは光源をさらに備える。本明細書において用いられるときに、「光源」は、III−V族半導体量子井戸型発光ダイオード又は本発明の燐光体以外の燐光体を指している。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスの光源は発光ダイオード(LED)である。いくつかのそのような実施形態では、そのLEDは、p型クラッド層とn型クラッド層との間に狭持される発光層を有する量子井戸構造を含む。
【0059】
本発明の照明デバイスのいくつかの実施形態では、p型クラッド層はAlGa1−qN(ただし、0<q<1)から形成され、n型クラッド層はAlGa1−rN(ただし、0≦r<1)から形成され、選択的に、p型クラッド層は、n型クラッド層のバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスのLEDは、インジウムを含む発光層と、少なくとも1つの量子井戸構造とを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスはさらに、選択的に、InGaNの少なくとも1つの井戸層とGaNの少なくとも1つの障壁層とを含む少なくとも1つの量子井戸構造と、選択的に、InGaNの少なくとも1つの井戸層とAlGaNの少なくとも1つの障壁層とを含む少なくとも1つの量子井戸構造と、選択的に、AlInGaNの少なくとも1つの井戸層とAlInGaNの少なくとも1つの障壁層とを含む少なくとも1つの量子井戸構造とを備える。ただし、少なくとも1つの障壁層は、少なくとも1つの井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有し、選択的に、井戸層の厚みは、厚くても約100オングストロームである。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは白色光を生成する。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは白色LEDランプである。いくつかのそのような実施形態では、白色LEDランプは、1つのLEDと、2つ以上の燐光体とを含み、青色光又は近UV光でポンピングされる。「近UV光」は、本明細書において用いられるときに、約350nm〜約420nmの波長範囲を有する光を指している。いくつかのそのような実施形態では、白色LEDランプは、少なくとも約84の高いCRI、少なくとも約90%の高い効率、及び少なくとも約100,000時間の長い寿命を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは、少なくとも250nmの波長を有する光を放射する少なくとも1つのLEDと、上記のような式を有する、本発明の少なくとも1つの燐光体とを備え、その燐光体(複数可)は、LEDと、デバイスのための光出力との間に配置される。
【0065】
いくつかのそのような実施形態では、その照明デバイスは、少なくとも1つの付加的な燐光体をさらに備えることができる。付加的な燐光体(複数可)は、所望の色度を達成するのを助けることができる。付加的な燐光体は、特許文献2に記述されるような式を有することができ、すなわち、以下の式(I)を有する。
[(BvSiO(MvSiO(Tv(SiO(SiO:Rε,X (I)
式中、x、y及びzはそれぞれ、x+y+z=1であるような任意の値であり、Bvは少なくとも1つの二価アルカリ土類金属イオンであり、Mvは少なくとも1つの一価アルカリ金属イオンであり、Tvは少なくとも1つの三価金属イオンであり、RεはEu2+イオン及びMn2+イオンから選択される少なくとも1つの活性体であり、Xは、イオン又は原子の形をとる少なくとも1つのハロゲン化物イオンであり、mは1又は0であり、mが1であり、効率的なルミネッセンスを対応するのに有効な量のシリカを与える場合には、nは3よりも大きく、m=0である場合には、nは1である。「効率的なルミネッセンス」は、本明細書において用いられるときに、約40%よりも高い量子効率で発光する不可視光(約400nm〜約750nmの範囲の波長)を指している。
【0066】
本発明の燐光体に使用することができるさらなる他の燐光体としてはたとえば、YAl12:Ce3+(YAG)、LuGa(AlO:Ce3+、LaIn(AlO:Ce3+、CaGa12:Ce3+、SrAl12:Tb3+、BaYSiAlO12:Ce3+、CaGa:Eu2+、SrCaSiO:Eu2+、ZnS:Cu、CaSiN:Eu2+、SrSiN:Eu2+、SrSiAl:Eu2+、BaMgSi:Eu2+、BaSiO:Eu2+、La・11Al:Mn2+、CaMg(SiOCl:Eu2+,Mn2+、(CaM)(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+,Tb3+,Yb3+、YBO:Ce3+,Tb3+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga):Eu2+、BaCaSi10:Eu2+、(SrBa)MgSi:Eu2+、(SrBa):Eu2+、(SrBa)Al1425:Eu2+、LaSi:Ce3+、(BaSr)MgAl1017:Eu2+、及びCaMgSi:Eu2+が挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは、式(I)を有する少なくとも1つの付加的な燐光体をさらに含み、
CaSiO・(SiO:Rε,Y (I)
式中、
Rεは、Eu2+及びMn2+から成る群から選択される少なくとも1つの活性体イオンであり、
Yはイオン若しくは原子の形をとる少なくとも1つのハロゲン化物であるか、又は存在しない。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは、式(II)を有する少なくとも1つの付加的な燐光体をさらに含み、
CaSiO(SiO:Eu2+,I (II)
付加的な燐光体は青色光を放射する。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは、式(III)を有する少なくとも1つの付加的な燐光体をさらに含み、
CaSiO(SiO:Eu2+,Mn2+,I (III)
付加的な燐光体は赤色光を放射する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは、少なくとも2つの付加的な燐光体をさらに含み、
1つの燐光体は式(II)を有し、
CaSiO(SiO:Eu2+,I (II)
第2の燐光体は式(III)を有する。
CaSiO(SiO:Eu2+,Mn2+,I (III)
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは、
(a)(M1M21−xLiSiOX:A、
(b)(M1M21−xSiO:A、
(c)(M1M21−xSiO:A、
(d)(M1M21−x(SiO:A、
(e)(M1M21−xSi:A、
(f)(M1M21−x10(Si:A、
(g)(M1M21−xSi:A、
(h)M1M2(Si:A、
(i)(M1M21−xSi:A、
(j)(M1M21−xSi:A、
(k)(M1M21−xSi:A、
(l)(M1M21−xSi12:A、
(m)(M1M21−xSi:A、
(n)(M1M21−x15Si18:A、
(o)(M1M21−xSi10:A、
(p)(M1M21−x10(SiO(SO:A、
(q)(M1M21−x(SiO)(SO)X:A、及び
(r)(M1M21−xMg(SiO:A
(式中、
M1及びM2はそれぞれ独立して、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+及びCd2+から成る群から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
xは、約0.001〜約1の値であり、
Xは、イオン形態の少なくとも1つのハロゲン化物イオンであり、
Aは、Eu2+、Yb2+、Mn2+、Bi3+、Pb2+、Ce3+、Nd3+、Pr3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+及びYb3+から成る群から選択される少なくとも1つの活性体イオンである)から選択される式を有する少なくとも1つの燐光体をさらに含み、
燐光体が、式(M1M21−xLiSiOX:Aを有し、且つM1がSr2+である場合、xは1であり、Xはフッ化物であり、又はM2がSr2+である場合、xは0であり、Xはフッ化物であり、このときAはEu2+ではない、
また燐光体が、式(M1M21−xSiO:Aを有し、且つM1がCa2+である場合、xは1であり、Xは塩化物であり、又はM2がCa2+である場合、xは0であり、Xは塩化物であり、このときAはEu2+ではない、
また燐光体が、式(M1M21−xMg(SiO:Aを有し、且つM1がCa2+である場合、xは1であり、Xは塩化物であり、又はM2がCa2+である場合、xは0であり、Xは塩化物であり、このときAはEu2+ではない。
【0072】
本発明の照明デバイスのいくつかの実施形態では、燐光体(複数可)が、光源と、デバイス用の光出力との間に配置される。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスの光源は、たとえば、量子井戸構造を含む発光層を有する窒化ガリウム系LEDを含むことができる。いくつかの実施形態では、光源は、LED又は燐光体からの光を誘導するように配置される反射体を含むことができる。いくつかの実施形態では、燐光体は、LEDの表面上に配置されるか、又はそこから離れて配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、光源は、燐光体と、選択的に、光出力が現れるLEDの放射光の一部(たとえば、限定はしないが、約30%)とを封入する半透明材料をさらに含むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは、式(Sr,Ca1−x(SiOCl:Eu2+を有する本発明の燐光体と、GaN系LEDとを備える。
【0075】
本発明の燐光体は、照明デバイスにおいて用いられるとき、約250nm〜約500nmの波長範囲又は約300nm〜約420nmの波長範囲において発光する半導体光源(たとえば、LED)のような一次光源からの光によって、あるいは約250nm〜約500nmの波長範囲又は約300nm〜約420nmの波長範囲において発光する付加的な燐光体(複数可)からの放射のような二次光源からの光によって励起できることが理解されよう。励起光が二次である場合、本発明の燐光体に関連して、励起によって引き起こされる光は適切な光源光である。本発明の燐光体を用いるデバイスは、たとえば、限定はしないが、本発明の燐光体によって生成される光をデバイスの内部に誘導するのではなく(たとえば、一次光源)、そのような光を光出力に誘導する、誘電体ミラーのようなミラーを含むことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスの半導体光源(たとえば、LEDチップ)は、少なくとも約250nm、少なくとも約255nm、少なくとも約260nm、そして少なくとも約500nmまで約1nmずつ増やした値の光を放射する。いくつかの実施形態では、半導体光源は、多くとも約500nm、多くとも約495nm、多くとも約490nm、且つ多くとも約300nmまで約1nmずつ減らした値の光を放射する。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明の燐光体は、結合剤、凝固剤、分散剤(すなわち、光散乱材料)、充填剤等と共に、本発明の照明デバイス内に分散させることができる。結合剤として、たとえば、限定はしないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ガラス、石英等の光硬化可能ポリマーを用いることができる。本発明の燐光体は、当該技術分野において知られている方法によって結合剤内に分散させることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、燐光体は溶媒内に懸濁させることができ、その溶媒内にはポリマーが懸濁しているか、溶解しているか、又は部分的に溶解しており、それによりスラリーが形成され、それを照明デバイス上に分散させることができ、そこから溶媒は蒸発する。いくつかの実施形態では、燐光体を、樹脂への予備硬化した前駆体のような液体に懸濁させて、スラリーを形成することができ、その後、スラリーを照明デバイス上に分散させることができ、ポリマー(樹脂)をその上で硬化させることができる。硬化は、たとえば、加熱、UV、又は前駆体と混合される硬化剤(遊離基開始剤等)によって行なうことができる。「硬化させる(cure)」又は「硬化する(curing)」は、本明細書において用いられるときに、多くの場合に物質又はその混合物の安定性又は使用性を向上させるために、物質又はその混合物を重合するか若しくは固化するためのプロセスを指しているか、又はそのプロセスに関連するか、又はそのプロセスそのものである。
【0078】
いくつかの実施形態では、照明デバイス内に燐光体(複数可)を分散させるために用いられる結合剤を熱によって液化することができ、それによりスラリーが形成され、その後、そのスラリーを照明デバイス上に分散させて、その場で固化できるようにする。分散剤は、たとえば、限定はしないが、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化シリコン等を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスは、励起エネルギーを生成するために、又は別のシステムを励起し、それにより本発明の燐光体のための励起エネルギーを与えるために、LEDのような半導体光源を備える。本発明を用いるデバイスは、たとえば、限定はしないが、白色光生成照明デバイス、藍色光生成照明デバイス、青色光生成照明デバイス、緑色光生成照明デバイス、黄色光生成照明デバイス、橙色光生成照明デバイス、桃色光生成照明デバイス、赤色光生成照明デバイス、又は本発明の光ルミネッセンス燐光体の色度と、少なくとも1つの二次光源の色度との間の線によって定義される出力色度を有する照明デバイスを含むことができる。本発明の照明デバイスで、乗り物のためのヘッドライト又は他の航行灯を形成することができる。その照明デバイスは、携帯電話及び携帯情報端末(PDA)のような、小型の電子デバイス用の出力インジケータとして用いることができる。また、本発明の照明デバイスは、携帯電話、PDA及びラップトップコンピュータ用の液晶ディスプレイのバックライトとして用いることもできる。適切な電源を与えるとき、室内照明は本発明のデバイスに基づくことができる。本発明の燐光体からの光と、二次光源(本発明の第2の光ルミネッセンス燐光体を含む)からの光との比を選択することによって、本発明の照明デバイスの暖かい感じ(すなわち、黄色/赤色色度の量)を調整することができる。
【0080】
本発明において用いるのに適している半導体光源は、本発明の燐光体を励起する光、又は本発明の燐光体を交替で励起する異なる燐光体を励起する光を生成する光源も含む。そのような半導体光源として、たとえば、限定はしないが、GaN(窒化ガリウム)タイプ半導体光源、In−Al−Ga−Nタイプ半導体光源(InAlGaN、ここで、i+j+k=約1であり、i、j及びkのうちの2つ以上は0をとることができる)、BN、SiC、ZnSe、BAlGaN、及びBinAlGaN光源等を用いることができる。半導体光源(たとえば、半導体チップ)は、たとえば、III−V又はII−VI族量子井戸構造(III族からの元素とV族からの元素、又はII族からの元素とVI族からの元素等の、化学元素の周期表の中の元素を化合する化合物を含む構造を意味する)に基づくことができる。いくつかの実施形態では、青色光又は近UV光を放射する半導体光源が用いられる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明の照明デバイスの半導体光源は、少なくとも2つの異なる燐光体を有し、個別に燐光体を分散させ、1つの基材内で燐光体を一緒に分散させるのではなく、燐光体を層として重ね合わせる。そのような層構造を用いて、複数の色変換プロセスによって、最終的な発光色を得ることができる。たとえば、その発光プロセスは、本発明の第1の燐光体による半導体光源の発光の吸収、第1の燐光体による発光、第2の燐光体による第1の燐光体の発光の吸収、及び第2の燐光体による発光である。いくつかの実施形態では、第2の燐光体は本発明の燐光体である。いくつかの実施形態では、第2の燐光体は、本発明の燐光体ではない。
【0082】
図4は、半導体光源の例示的な層構造を示す。その半導体光源は、たとえば、サファイア基板のような基板Sbを含む。たとえば、バッファ層B、n型コンタクト層NCt、n型クラッディング層NCd、多量子井戸活性層MQW、p型クラッディング層PCd及びp型コンタクト層PCtが、窒化物半導体層として、その順序で形成される。それらの層は、基板Sb上に、たとえば、有機金属化学気相成長(MOCVD)によって形成することができる。その後、光透過性電極LtEが、p型コンタクト層PCtの表面全体の上に形成され、p電極PElが光透過電極LtEの一部の上に形成され、n電極NElがn型コンタクト層NCtの一部の上に形成される。これらの層は、たとえば、スパッタリング又は真空蒸着によって形成することができる。
【0083】
バッファ層Bは、たとえば、AlNから形成することができ、n型コンタクト層NCtは、たとえば、GaNから形成することができる。
【0084】
n型クラッディング層NCdは、たとえば、AlGa1−rN(ただし、0≦r<1)から形成することができ、p型クラッディング層PCdは、たとえば、AlGa1−qN(ただし、0<q<1)から形成することができ、p型コンタクト層PCtは、たとえば、AlGa1−sN(ただし、0≦s<1、かつs<q)から形成することができる。p型クラッディング層PCdのバンドギャップは、n型クラッディング層NCdのバンドギャップよりも大きくされる。n型クラッディング層NCd及びp型クラッディング層PCdはそれぞれ、単一組成の構成を有することができるか、又は約100オングストローム以下の厚みを有し、互いに組成が異なる上記の窒化物半導体層を互いの上に積重して、超格子構造を設けるような構成を有することができる。層厚が約100オングストローム以下であるとき、層内のクラック又は結晶欠陥の発生を防ぐことができる。
【0085】
多量子井戸活性層MQWは、複数(少なくとも2つ)のInGaN井戸層、及び複数のGaN障壁層から構成することができる。超格子構造を構成するために、井戸層及び障壁層は、たとえば、約60オングストローム〜約70オングストロームのような、約100オングストローム以下の厚みを有することができる。InGaNの結晶は、AlGaNのような他のアルミニウム含有窒化物半導体よりも軟質であるので、活性層MQWを構成する層内にInGaNを使用することは、全ての積重された窒化物半導体層が割れる可能性が低いという利点を提供することができる。多量子井戸活性層MQWは、複数のInGaN井戸層、及び複数のAlGaN障壁層から構成することもできる。又は、多量子井戸活性層MQWは、複数のAlInGaN井戸層及び複数のAlInGaN障壁層から構成することができる。この場合には、障壁層のバンドギャップエネルギーは、井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きくすることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明の光源は、多量子井戸活性層MQWからの基板Sb側に、たとえば、n型コンタクト層NCtのバッファ層B側に、反射層を備える。反射層は、基板Sb上に積重される多量子井戸活性層MQWから離れて(すなわち、距離をおいて)、基板Sbの表面上に設けることもできる。反射層は、活性層MQWから放射される光に対して最大反射率を有することができ、たとえば、アルミニウムから形成することができるか、又は薄いGaN層から成る多層構造を有することができる。反射層を設けることによって、活性層MQWから放射される光を、反射層から反射できるようになり、活性層MQWから放射される光の内部吸収を低減することができ、上方に向かって出力される(すなわち、デバイスから出て行く、すなわち外側世界に向かい、基板から離れる方向の)光の量を増やすことができ、光源のための取付台の上に光が入射するのを減らし、劣化を防ぐことができる。
【0087】
図1〜図3に示されるのは、LED及び燐光体から構成される本発明の照明デバイスのいくつかの例示的な構造である。図1は発光デバイス10を示しており、LEDチップ1(すなわち、一次光源)がリード2によって電源を供給され、燐光体含有材料4が、LEDチップと最終的な光出力6との間に固定されている。反射体3が、光出力を集光するための役割を果たすことができる。透明外被5が、LEDチップ及び燐光体を環境から分離することができ、及び/又はレンズを提供することができる。図2は発光デバイス10’を示しており、LEDチップ1’がリード2’によって電源を供給され、燐光体含有材料4’が、LEDチップと最終的な光出力6’との間に固定されており、この場合には上記の反射体3’を有する。反射体、及びLEDチップから離れた燐光体含有材料の位置が、最終的な光出力を集光するための役割を果たすことができる。透明外被5’が、LEDチップ及び燐光体を環境から分離することができ、及び/又はレンズを提供することができる。図3の照明デバイス20は、多数のLEDチップ11、リード12、燐光体含有材料14、及び透明外被15を有する。
【0088】
リード2、2’、12は、太いリードフレームによって支持される細いワイヤを含むことができ、又は、それらのリードは自立型電極を含むことができ、リードフレームを省くことができる。リードはLEDチップに電流を供給し、それにより、LEDチップが発光する。
【0089】
半導体光源からの光が燐光体との相互作用によって巧みに利用されるように、燐光体と半導体光源(たとえば、LED光源)とを関連付けるための任意の数の方法が存在することは、当業者には理解されよう。特許文献3及び特許文献4は、燐光体が、半導体光源の光出力から離れて配置される照明デバイスを例示する。特許文献5、特許文献6及び特許文献7は、限定はしないが、本発明において用いることができる照明デバイスをさらに例示する。
【0090】
半導体光源を基にする白色光デバイスは、たとえば、オーディオシステム、家庭用電化製品、測定機器、医療機器等のディスプレイ部分に所定のパターン又はグラフィックデザインを表示するための自己発光タイプのディスプレイにおいて用いることができる。そのような半導体光源を基にする白色光デバイスは、たとえば、限定はしないが、液晶ディスプレイ(LCD)のためのバックライト、プリンタヘッド、ファクシミリ、複写機等の光源として用いることもできる。
【0091】
本発明はまた、式:
(M1,M21−x(SiO:A(M1×M21−x
(式中、
M1及びM2は、それぞれ独立して、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+及びCd2+から成る群から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
xは約0.001〜約1の値であり、
Xはイオンの形をとる少なくとも1つのハロゲン化物イオンであり、
Aは、Eu2+、Yb2+、Mn2+、Bi3+、Pb2+、Ce3+、Nd3+、Pr3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+及びYb3+から成る群から選択される少なくとも1つの活性体イオンである)
を有する燐光体を製造する方法を提供する。
その方法は、
1)上記の式を有する燐光体への前駆体である金属ケイ酸塩を与える工程と、
2)上記の活性体イオンからの少なくとも1つの活性体イオンを与える工程と、
3)選択的に、イオン又は原子の形をとる少なくとも1つのハロゲン化物を供給する工程と、
4)金属ケイ酸塩及び活性体イオンを、イオン又は原子の形をとる金属ハロゲン化物イオンと混合して、混合物を形成し、その混合物を加熱して、燐光体を生成する工程とを含む。
【0092】
燐光体を製造するための方法は、たとえば、目標とする燐光体の構成成分、及び/又は加熱中にそのような構成成分を産出するために反応する化合物(前駆体)から成る混合物を加熱することを含む。その混合物は、選択的に、最終的な生成物に取り込まれることが必要とされる量よりも多くの割合の金属ハロゲン化物(イオン又は原子の形をとる)を含む。混合すること及び粉砕することを組み合わせて、よく混ざった混合物を確保することができる。加熱は、約800℃、約900℃又は約1000℃のような、約600℃以上の温度において、約1時間以上の時間にわたって続けることができる。加熱は、活性体含有金属ケイ酸塩ハロゲン化物を生成するための混合物の反応を達成する。加熱工程の一部を、不活性又は還元雰囲気において実行して、活性体が最終的な生成物の中に目標とする酸化状態において確実に存在するようにすることができる。用語「還元」は、本明細書において用いられるときに、原子又はイオンに電子が付加される(酸素を除去するか、又は水素を加えることによる)プロセスを指している。本発明の燐光体を形成する方法の加熱工程の生成物は、存在する場合、余分な金属ハロゲン化物(イオン又は原子の形をとる)を除去するために洗浄される。
【0093】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、生成される混合物は、少なくとも1つの活性体酸化物及びイオン又は原子の形をとる少なくとも1つの金属ハロゲン化物と共に、少なくとも1つの金属ケイ酸塩を形成するために加熱中に互いに反応する化合物から成っていてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、選択的に、第1の加熱よりも高い温度における第2の加熱をさらに含む。いくつかのそのような実施形態では、その方法は、第1の加熱工程と第2の加熱工程との間に粉砕工程をさらに含む。いくつかのそのような実施形態では、加熱温度の範囲は、たとえば、約800℃、約801℃、約802℃、約803℃及び約1199℃まで1℃ずつ増やした温度の下端値(その値を含むか、又は除く)と、約1200℃、約1199℃、約1198℃、約1197℃、及び約801℃まで1℃ずつ減らした温度の上端値(その値を含むか、又は除く)とを有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、固体溶媒を用いる。いくつかのそのような実施形態では、ハロゲン化物(イオン又は原子)を除く、そして選択的に、活性体を除く構成成分又は前駆体を加熱して、ハロゲン化物成分を欠いており、選択的に、活性体成分を欠いている、鉱物金属ケイ酸塩を含む前駆体を形成する。金属ケイ酸塩が、目標温度において液体を形成するように選択される金属ハロゲン化物(イオン又は原子)と混合される(たとえば、粉砕による)。その混合物は、燐光体を得るために、目標温度において加熱される(その温度は、ある範囲、すなわち、目標温度範囲にすることができる)。金属ハロゲン化物(イオン又は原子)は、溶媒としての役割を果たし、ハロゲン化物供給源を提供する。いくつかのそのような実施形態では、第1の加熱工程における加熱温度の範囲は、たとえば、約900℃、約901℃、約902℃、約903℃、及び約1299℃まで1℃ずつ増やした温度の下端値(その値を含むか、又は除く)と、約1300℃、約1299℃、約1298℃、約1297℃、及び約901℃まで1℃ずつ減らした温度の上端値(その値を含むか、又は除く)とを有する。いくつかのそのような実施形態では、目標温度の範囲は、たとえば、約800℃、約801℃、約802℃、約803℃、及び約1199℃まで1℃ずつ増やした温度の下端値(その値を含むか、又は除く)と、約1200℃、約1199℃、約1198℃、約1197℃、及び約801℃まで1℃ずつ減らした温度の上端値(その値を含むか、又は除く)とを有する。結果として生成される金属ケイ酸塩ハロゲン化物は、金属ハロゲン化物(イオン又は原子)が存在する中であっても、多くの場合に、粉末x線回折によって特定することができる。有用な金属ハロゲン化物(イオン及び原子)は、たとえば、CaCl、SrCl、BaCl、CaBr、SrBr、BaBr、CaF、SrF、BaF、MgCl、MgBr、MgF又はそれらの混合物等を含む。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は、本発明を形成し、使用する方法の完全な開示及び記述を当業者に提供するために提示されるものであって、本発明人が発明と見なすものの範囲を制限することを意図するものではなく、又は以下の実験が実行された全て、又は唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用される数字(たとえば、量、温度等)に関して精度を確保するための努力がなされてきたが、いくつかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は℃単位である。
【0097】
[実施例1]
[Ca5.72Sr0.28(SiOCl:Eu2+の調製]
EU(0.66g)、SiO(15.02g)、CaCO(45.0g)及びSrCO(7.38g)の成分粉末を、ミリングジャーにおいて混合し、粉砕した。その後、混合された粉末を、空気中で、約5時間、約1000℃において燃やした。燃やされた粉末を冷却し、粉砕した。その後、CaCl(約20g)を、燃やされた粉末に追加し、乳鉢及び乳棒を用いて混合した。その後、結果として生成された粉末を、約3時間、フォーミングガス(5%H/N)内で、約1000℃で燃やした。その後、第2の燃やされた粉末をCaCl(約10g)と混合し、約3時間、フォーミングガス(5%H/N)内で、約1000℃で燃やした。その蛍光励起及び発光スペクトルを図5に示す。そのサンプルの式は、単結晶X線回折(SMART APEX II, Bruker AXS, Inc., Madison, WI)によって、Ca5.72Sr0.28(SiOClであると特定された。その化合物は、a=10.959オングストローム、b=10.1920オングストローム、c=11.8305オングストローム、β=90.263°、α=γ=90.00°を有するP2/nの単斜晶系格子で結晶化される。単位セル体積=1321.41(オングストローム)である。X線粉末回折パターンを図6に示す。
【0098】
[実施例2]
[Ca5.72Sr0.28ClSi:Eu2+を有するLEDランプの調製]
白色LEDを形成するために、約0.1gのCaSiO・(SiO:Eu2+,I(青色発光)と約0.9gのCa5.72Sr0.28ClSi:Eu2+(実施例1において形成された、黄色発光)とを混合することによって、燐光体混合物を形成した。混合した後に、約0.08gの燐光体混合物を、約0.2gのシリコーン樹脂及び約40wt%の燐光体混合物を含むスラリーにした。反射体内に取り付けられた410nm発光LEDチップを、シリコーン樹脂及び約40wt%の燐光体混合物を含むスラリーでコーティングし、その後、約150℃において、約9時間かけて硬化し、燐光体スラリーの層を有し、図1に示されるようなランプ構造を有するLEDランプを得た。そのLEDランプは、色度座標x=0.3835、y=0.3074、CCT=3192K及びRa=74.12によって特徴付けられる。そのランプの発光スペクトルを、図7において下側に位置するスペクトル線として示す。
【0099】
[実施例3]
[Ca5.72Sr0.28ClSi:Eu2+を有するLEDランプの調製]
白色LEDを形成するために、約0.1gのCaSiO・(SiO:Eu2+,I(青色発光)と約0.9gのCa5.72Sr0.28ClSi:Eu2+(黄色発光)とを混合することによって、燐光体混合物を形成した。ブレンドした後に、約0.08gの燐光体混合物を、約0.2gのシリコーン樹脂及び約40wt%の燐光体混合物を含むスラリーにした。反射体内に取り付けられた410nm発光LEDチップを、透明なシリコーン樹脂でコーティングした。シリコーン層が硬化した後、シリコーン樹脂及び約40wt%の燐光体混合物を含むスラリーを、LED上の硬化したシリコーンの層上に塗布し、その後、約150℃において、約9時間かけて硬化し、燐光体スラリーの層を有し、図2に示されるLEDチップとは別個のLEDランプを得た。そのLEDランプは、色度座標x=0.3419、y=0.2678、CCT=4647K及びRa=67.72によって特徴付けられる。そのランプの発光スペクトルを、図7において上側に位置するスペクトル線として示す。
【0100】
本明細書において引用される特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない刊行物及び参考文献は、あたかも個々の刊行物又は参考文献が、完全に記載されるように本明細書において参照により援用されることを具体的かつ個別に示されたかのように、引用される部分全体において参照によりそのまま援用される。本出願が優先権を主張する任意の特許出願も、刊行物及び参考文献に関して上述したように、参照により本明細書に援用される。
【0101】
本発明を、いくつかの実施形態に重点を置いて説明してきたが、それらの実施形態において種々の変形を用いることができること、及び本発明が本明細書において具体的に説明される以外の方法で実施できることが意図されていることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲によって定められるような本発明の精神及び範囲内に含まれる全ての変更を含む。
【0102】
本出願は、参照によりそのまま援用される、2006年10月3日に出願の米国仮特許出願第60/827,986号の利益を主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
(M1,M21−x(SiO:A
(式中、
M2は、それぞれ独立して、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+及びCd2+から成る群から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
xは約0.001〜約1の値であり、
Xはイオンの形をとる少なくとも1つのハロゲン化物イオンであり、
Aは、Eu2+、Yb2+、Mn2+、Bi3+、Pb2+、Ce3+、Nd3+、Pr3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+及びYb3+から成る群から選択される少なくとも1つの活性体イオンである)
を有する燐光体。
【請求項2】
M1及びM2は、それぞれ独立して、Ca2+、Sr2+、Ba2+又はそれらの組み合わせであり、
Xは、フッ化物、塩化物、臭化物又はそれらの組み合わせであり、
Aは、Eu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の燐光体。
【請求項3】
M1はSr2+であり、
M2はCa2+、Ba2+又はそれらの組み合わせであり、
Xはフッ化物、塩化物又はそれらの組み合わせであり、
AはEu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の燐光体。
【請求項4】
前記燐光体が式:
(Sr,Ca1−x(SiOCl:Eu2+
を有する、請求項1に記載の燐光体。
【請求項5】
xは、約0.01〜約1の値であり、
Eu2+は、前記燐光体の約0.0001モル〜約0.1モルの量から成る、請求項4に記載の燐光体。
【請求項6】
a)請求項1に記載の燐光体と、
b)少なくとも1つの酸化物を含む、前記燐光体上の少なくとも1つのコーティング層とを備える、コーティングされた燐光体。
【請求項7】
前記コーティングは少なくとも2つの層を含む、請求項6に記載のコーティングされた燐光体。
【請求項8】
照明デバイスであって、
a)少なくとも約300nmの波長において発光する光源と、
b)請求項1に記載の少なくとも1つの燐光体とを備え、
(1)前記燐光体は前記光源から放射される光の少なくとも一部を吸収することができ、
(2)前記燐光体は、前記光源から吸収される前記光の部分の色度を変更し、
(3)前記燐光体は、前記光源から吸収される前記光の波長よりも長い波長の光を放射し、
(4)選択的に、前記燐光体はさらに、少なくとも1つの酸化物を含む少なくとも1つのコーティング層
を含む照明デバイス。
【請求項9】
前記照明デバイスは白色光を生成する、請求項8に記載の照明デバイス。
【請求項10】
前記光源は発光ダイオード(LED)である、請求項8に記載の照明デバイス。
【請求項11】
前記LEDは、p型クラッド層とn型クラッド層との間に狭持される発光層を有する量子井戸構造を備える、請求項10に記載の照明デバイス。
【請求項12】
前記p型クラッド層はAlGa1−qNから形成され、ただし、0<q<1であり、
前記n型クラッド層はAlGa1−rNから形成され、ただし、0≦r<1であり、
選択的に、前記p型クラッド層は、前記n型クラッド層のバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する、請求項11に記載の照明デバイス。
【請求項13】
前記LEDは、インジウムを含む発光層と、少なくとも1つの量子井戸構造とを備える、請求項12に記載の照明デバイス。
【請求項14】
選択的に、前記少なくとも1つの量子井戸構造は、InGaNの少なくとも1つの井戸層と、GaNの少なくとも1つの障壁層とを含み、
選択的に、前記少なくとも1つの量子井戸構造は、InGaNの少なくとも1つの井戸層と、AlGaNの少なくとも1つの障壁層とを含み、
選択的に、前記少なくとも1つの量子井戸構造は、AlInGaNの少なくとも1つの井戸層と、AlInGaNの少なくとも1つの障壁層とを含み、
前記少なくとも1つの障壁層は、前記少なくとも1つの井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有し、
選択的に、前記井戸層の厚みは、厚くても約100オングストロームである、請求項13に記載の照明デバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの燐光体において、
M1及びM2は、それぞれ独立して、Ca2+、Sr2+、Ba2+又はそれらの組み合わせであり、
Xは、フッ化物、塩化物、臭化物又はそれらの組み合わせであり、
Aは、Eu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである、請求項8に記載の燐光体。
【請求項16】
前記少なくとも1つの燐光体において、
M1はSr2+であり、
M2はCa2+、Ba2+又はそれらの組み合わせであり、
Xはフッ化物、塩化物又はそれらの組み合わせであり、
AはEu2+、Mn2+、Ce3+又はそれらの組み合わせである、請求項8に記載の燐光体。
【請求項17】
前記少なくとも1つの燐光体は式:
(Sr,Ca1−x(SiOCl:Eu2+
を有する、請求項8に記載の燐光体。
【請求項18】
xは、約0.01〜約1の値であり、
Eu2+は、前記燐光体の約0.0001モル〜約0.1モルの量から成る、請求項17に記載の燐光体。
【請求項19】
式(I):
CaSiO・(SiO:Rε,Y (I)
(式中、
Rεは、Eu2+及びMn2+から成る群から選択される少なくとも1つの活性体イオンであり、
Yはイオン若しくは原子の形をとる少なくとも1つのハロゲン化物であるか、又は存在しない)
を有する少なくとも1つの付加的な燐光体をさらに含む、請求項8に記載の照明デバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つの付加的な燐光体は式(II)を有し、
CaSiO・(SiO:Eu2+,I (II)
前記付加的な燐光体は青色光を放射する、請求項19に記載の照明デバイス。
【請求項21】
前記少なくとも1つの付加的な燐光体は式(III)を有し、
CaSiO・(SiO:Eu2+,Mn2+,I (III)
前記付加的な燐光体は赤色光を放射する、請求項20に記載の照明デバイス。
【請求項22】
少なくとも2つの付加的な燐光体をさらに含み、
1つの燐光体は式(II)を有し、
CaSiO・(SiO:Eu2+,I (II)
第2の燐光体は式(III):
CaSiO・(SiO:Eu2+,Mn2+,I (III)
を有する、請求項21に記載の照明デバイス。
【請求項23】
(a)(M1M21−xLiSiOX:A、
(b)(M1M21−xSiO:A、
(c)(M1M21−xSiO:A、
(d)(M1M21−x(SiO:A、
(e)(M1M21−xSi:A、
(f)(M1M21−x10(Si:A、
(g)(M1M21−xSi:A、
(h)M1M2(Si:A、
(i)(M1M21−xSi:A、
(j)(M1M21−xSi:A、
(k)(M1M21−xSi:A、
(l)(M1M21−xSi12:A、
(m)(M1M21−xSi:A、
(n)(M1M21−x15Si18:A、
(o)(M1M21−xSi10:A、
(p)(M1M21−x10(SiO(SO:A、
(q)(M1M21−x(SiO)(SO)X:A、及び
(r)(M1M21−xMg(SiO:A
(式中、
M1及びM2はそれぞれ独立して、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+及びCd2+から成る群から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
xは、約0.001〜約1の値であり、
Xは、イオン形態の少なくとも1つのハロゲン化物イオンであり、
Aは、Eu2+、Yb2+、Mn2+、Bi3+、Pb2+、Ce3+、Nd3+、Pr3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+及びYb3+から成る群から選択される少なくとも1つの活性体イオンである)
から選択される式を有する少なくとも1つの燐光体をさらに含み、
前記燐光体が、式(M1M21−xLiSiOX:Aを有し、且つM1がSr2+である場合、xは1であり、Xはフッ化物であり、又はM2がSr2+である場合、xは0であり、Xはフッ化物であり、このときAはEu2+ではない、
また前記燐光体が、式(M1M21−xSiO:Aを有し、且つM1がCa2+である場合、xは1であり、Xは塩化物であり、又はM2がCa2+である場合、xは0であり、Xは塩化物であり、このときAはEu2+ではない、
また前記燐光体が、式(M1M21−xMg(SiO:Aを有し、且つM1がCa2+である場合、xは1であり、Xは塩化物であり、又はM2がCa2+である場合、xは0であり、Xは塩化物であり、このときAはEu2+ではない、請求項8に記載の照明デバイス。
【請求項24】
白色光を放射する、請求項8に記載の照明デバイス。
【請求項25】
照明デバイスであって、
a)少なくとも約300nmの波長において発光し、発光ダイオード(LED)である光源と、
b)請求項1に記載の少なくとも1つの燐光体とを備え、
(1)前記燐光体は前記光源から放射される光の少なくとも一部を吸収することができ、
(2)前記燐光体は、前記光源から吸収される前記光の部分の色度を変更し、
(3)前記燐光体は、前記光源から吸収される前記光の波長よりも長い波長の光を放射し、
(4)選択的に、前記燐光体は、少なくとも1つの酸化物を含む少なくとも1つのコーティング層をさらに含み、
白色光を生成する、照明デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−506006(P2010−506006A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531538(P2009−531538)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/079822
【国際公開番号】WO2008/042740
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509287382)ライトスケイプ マテリアルズ,インク. (1)
【Fターム(参考)】