金属メッキ板のレーザー溶接方法
【課題】ブローホール等の溶融欠陥の形成の無い、良好な溶接を確実に実現することができるメッキ鋼板のレーザー溶接法を提供する。
【解決手段】下板11と上板12を重ね合わせる。第1のレーザービーム18aをその重ね合わせ部上の第1乃至第3の直線経路K1〜K3に沿って移動させ、第1のレーザービーム18aの広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛を蒸発、脱気する。その後、第1のレーザービーム18aよりもエネルギー密度が高く、狭い照射領域19bを有した第2のレーザービーム18bを第2の直線経路K2に沿って移動させながら照射し、狭い照射領域19bに対応する下板11と上板12の鋼板部分を溶融して溶接接合を形成する。
【解決手段】下板11と上板12を重ね合わせる。第1のレーザービーム18aをその重ね合わせ部上の第1乃至第3の直線経路K1〜K3に沿って移動させ、第1のレーザービーム18aの広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛を蒸発、脱気する。その後、第1のレーザービーム18aよりもエネルギー密度が高く、狭い照射領域19bを有した第2のレーザービーム18bを第2の直線経路K2に沿って移動させながら照射し、狭い照射領域19bに対応する下板11と上板12の鋼板部分を溶融して溶接接合を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の金属メッキ板の重ね合わせ部分をレーザー溶接する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛メッキ鋼板は母材金属板である鋼板の表面に防錆用の亜鉛メッキを施した鋼板材であり、自動車の車体の構造材等として多用されている。車体等を形成する場合に、2枚の亜鉛メッキ鋼板を重ね合わせて、その重ね合わせ部分にレーザービームを照射して、鋼板材を溶融、結合させるレーザー溶接法が知られている。(特許文献1−3を参照)
【0003】
上記レーザー溶接を行うと、亜鉛の沸点(約900℃)が鋼板(鉄)の融点(約1500℃)より低いことに起因して溶接欠陥が発生することが知られている。つまり、レーザービームを前記重ね合わせ部分に照射することにより、鋼板が溶融するが、この時、重ね面の亜鉛が蒸発する。そして、亜鉛蒸気は溶融した鋼板内を通って外に抜けようとする。その結果、溶融した鋼板の一部が吹き飛ばされたり、一部の亜鉛蒸気が鋼板内部に残り、ブローホールと呼ばれる気孔を形成して、溶接強度を劣化させたり、外観が悪くなる。
【0004】
このような観点から、亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接法においては様々な対策が提案されている。(特許文献1−3を参照)例えば、特許文献1においては、エネルギー密度が低いレーザービームで亜鉛を蒸発、離散させた後、エネルギー密度が高いレーザービームで溶接接合させる方法が記載されている。また、特許文献1の方法においては、1つのレーザービームを、ハーフミラーと反射鏡を用いて、エネルギー密度が低いレーザービームとエネルギー密度が高いレーザービームとに分割し、それらの2つのレーザービームを、照射領域をずらして同時に照射するというものである。(特許文献1の図8等を参照)
【特許文献1】特開平4−231190号公報
【特許文献2】特開平10−156566号公報
【特許文献3】特開2002−178178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の溶接方法では、エネルギー密度が低いレーザービームとエネルギー密度が高いレーザービームとを同時照射しているので、以下の問題があった。
【0006】
第1に、2つのレーザービームの移動速度が必然的に同一にならざるを得ず、このことが、亜鉛の蒸発と溶接接合という2つの過程を最適化する上で制約条件になるという問題がある。第2に、溶接しようとする経路が曲線の場合、2つの分割されたレーザービームの射出位置が異なることから、経路にずれを生じ易く、経路にずれが生じると溶接強度の劣化等の溶接欠陥を招くという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、母材金属板の表面に母材金属の融点よりも低い沸点を有した金属をメッキしてなる、複数枚の金属メッキ板を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザービームを照射して溶接を行う金属メッキ板のレーザー溶接方法において、前記重ね合わせ部上の互いに隣接した第1乃至第3の経路に沿って、エネルギー密度が低く、且つ広い照射領域を有した第1のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記広い照射領域の母材金属部分にメッキされた金属を蒸発、脱気させ、前記第1のレーザービームを前記第1乃至第3の経路に沿って照射した後に、前記第1及び第3の経路に挟まれた前記第2の経路に沿って前記第1のレーザービームよりもエネルギー密度が高く、且つ前記第1のレーザービームよりも狭い照射領域を有した第2のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記狭い照射領域の母材金属部分を溶融して、溶接接合させることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第1のレーザービームを照射した後に、第2のレーザービームを照射するので、第1及び第2のレーザービーム線の移動速度を独立に制御することができる。その結果溶接条件の最適化が容易になる。また、第1及び第2のレーザービームの移動する経路のずれを無くすことができる。
【0009】
また、第1のレーザービームを第1乃至第3の経路に沿って照射した後に、第2のレーザービームを第1及び第3の経路に挟まれた第2の経路に沿って照射しているので第2のレーザービームの照射時には、第2の経路の両側を含めた広い範囲でメッキされた金属は既に蒸発、脱気されていることになる。これにより、金属蒸気の影響を無くして更に良好な溶接を実現することができる。ここで、第1乃至第3の経路は、直線経路でも円周経路でも良い。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、母材金属板の表面に母材金属の融点よりも低い沸点を有した金属をメッキしてなる、複数枚の金属メッキ板を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザービームを照射して溶接を行う金属メッキ板のレーザー溶接方法において、前記重ね合わせ部上における螺旋経路に沿って、エネルギー密度が低く、且つ広い照射領域を有した第1のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記広い照射領域の母材金属部分にメッキされた金属を蒸発させ、前記第1のレーザービームを螺旋経路の全体に沿って照射した後に、前記螺旋経路の中でその両側の領域に前記第1のレーザービームの照射が行われた経路に沿って、前記第1のレーザービームよりもエネルギー密度が高く、且つ前記第1のレーザービームよりも狭い照射領域を有した第2のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記狭い照射領域の母材金属部分を溶融して、溶接接合させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、請求項1の発明と同様に、第1のレーザービームを照射した後に、第2のレーザービームを照射するので、第1及び第2のレーザービーム線の移動速度を独立に制御することができる、その結果溶接条件の最適化が容易になる。また、第1及び第2のレーザービームの移動する経路のずれを無くすことができる。更に、第1のレーザービームを螺旋経路に沿って照射しているので、レーザービームの連続照射が可能となり、生産性を向上させることができる。また、第2のレーザービームの照射の時には、照射する経路の両側を含めた広い範囲でメッキされた金属が既に蒸発、脱気されている。これにより、請求項1に係る発明と同様、金属蒸気の影響を無くして更に良好な溶接を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属メッキ板のレーザー溶接方法によれば、溶接条件の最適化が容易になり、しかも、溶接しようとする経路が曲線の場合であっても、ブローホール等の溶融欠陥の形成の無い、良好な溶接を確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。先ず、レーザー加工装置の構成を図1に基づいて説明する。図示のように、レーザー加工テーブル10上に、2枚の亜鉛メッキ鋼板を重ね合わせた状態で載置する。以下では、下側になった亜鉛メッキ鋼板を下板11と呼び、上側になった亜鉛メッキ鋼板を上板12と呼ぶことにする。下板11と上板12とを治具で押さえて、両板の重ね合わせ部をできるだけ密着させることが好ましい。
【0014】
下板11及び上板12が載置されたレーザー加工テーブル10の上方には、レーザー加工ヘッド13が配置され、このレーザー加工ヘッド13に光ファイバー14を介してファイバーレーザー発振器17によって発生されたレーザービームが出力されるようになっている。尚、ファイバーレーザー発振器17の代わりに、YAGレーザー発振器、CO2レーザー発振器等の他の種類のレーザー発振器を用いてもよい。
【0015】
レーザー加工ヘッド13には、コリメーションレンズ15と集光レンズ16が収納されている。ファイバーレーザー発振器17からのレーザービームは、先ず、コリメーションレンズ15によって一旦平行光線に変換され、その平行光線が集光レンズ16によって、所定の焦点距離の位置に集光される。また、レーザー加工ヘッド13は、例えば、レーザー加工ロボットのような移動手段によって、上板12の面内のX方向及びY方向、上板12の表面に垂直なZ方向に移動自在に構成されている。
【0016】
従って、レーザー加工ヘッド13をZ方向に移動させることにより、レーザー加工ヘッド13から出力されるレーザービーム18の照射領域19(上板12に垂直な方向からみて円形の領域になる)の広狭を変えることができる。レーザービーム18のエネルギー密度は照射領域19aの単位面積当たりのエネルギーであり、ファイバーレーザー発振器17の発振出力(電力)が一定であれば、レーザービーム18のエネルギー密度は照射領域19aの面積に反比例することになる。
【0017】
また、レーザー加工ヘッド13のコリメーションレンズ15又は集光レンズ16を交換することによっても照射領域19の広狭を変えることができる。また、レーザー加工ヘッド13をX方向に、又はY方向に、或いはX方向とY方向に同時に移動させることにより、レーザービーム18の照射領域19を前記重ね合わせ部上を任意の経路に沿って、所望の移動速度で移動させることができる。
【0018】
以下、上記レーザー加工装置を用いた亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接法について説明する。先ず、図2(a)の斜視図に示すように、下板11と上板12の重ね合わせ部上の起点P1から終点P2までの第1の直線経路K1に沿って、エネルギー密度が低く、広い照射領域19aを有した第1のレーザービーム18aを移動させながら照射する。
【0019】
これにより、図2(b)(図1(a)のA−A線断面図)に示すように、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。つまり、前記重ね面から発生した亜鉛蒸気は下板11と上板12の重ね合わせ部の隙間を通って外に抜ける。この時、第1のレーザービーム18aのエネルギー密度は低いので、鋼材は溶融せず、亜鉛だけが蒸発する。
【0020】
その後、図3に示すように、下板11と上板12の重ね合わせ部上であって、第1の直線経路K1に隣接すると共に、第1の直線経路K1に平行な第2の直線経路K2に沿って、エネルギー密度が低く、広い照射領域19aを有した第1のレーザービーム18aを移動させながら照射する。第2の直線経路K2は、起点P3から終点P4までの直線経路であり、その経路の長さは第1の直線経路K1の長さと略同じである。この時も同様に、第2の直線経路K2に沿った広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が、第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0021】
その後、図4に示すように、下板11と上板12の重ね合わせ部上であって、第2の直線経路K2に隣接すると共に、第2の直線経路K2に平行な第3の直線経路K3に沿って、エネルギー密度が低く、広い照射領域19aを有した第1のレーザービーム18aを移動させながら照射する。第3の直線経路K3は、起点P5から終点P6までの直線経路であり、その経路の長さは第1、第2の直線経路K1、K2の長さと略同じである。この時も同様に、第3の直線経路K3に沿った広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が、第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0022】
この場合、第1乃至第3の直線経路K1〜K3の起点P1,P3,P5は同一直線上にあり、起点P1,P3,P5も同一直線上にある。また、第1のレーザービーム18aの移動方向は左右方向のどちらでも良い。
【0023】
上述のようにして第1のレーザービーム18aを第1乃至第3の経路K1〜K3に沿って移動させた後に、図5(a)に示すように、第1のレーザービーム18aよりもエネルギー密度が高く、狭い照射領域19bを有した第2のレーザービーム18bを第1の直線経路K1、第3の直線経路K3に挟まれた第2の直線経路K2に沿って、好ましくは第2の直線経路K2の中心線に沿って移動させながら照射する。この時、第2のレーザービーム18bの移動方向はP3→P4、P4→P3のどちらでも良い。
【0024】
この場合、第2のレーザービーム18bの狭い照射領域19bの全部が広い照射領域19aの範囲に含まれている。広い照射領域19aと狭い照射領域19bを重ね合わせると、中心点Aを共有した同心円を形成することが好ましい。(図6を参照)このようにして、図5(b)(図5(a)のB−B線断面図)に示すように、第2の直線経路K2に沿って、狭い照射領域19bに対応する下板11と上板12の鋼板部分が溶融され、溶接接合が形成される。この時、第2の直線経路K2に対応したレーザー照射領域だけでなく、その両側の第1、第3の直線経路K1,K3に対応したレーザー照射領域も含めた広範囲においてメッキされた亜鉛が既に蒸発、脱気されているので、広範囲の亜鉛蒸気の影響を無くして良好な溶接接合を形成することができる。
【0025】
つまり、第1のレーザービーム18aを1つの直線経路に沿って照射し、第2のレーザービーム18bを同じ経路に沿って照射する場合と比べると、本実施形態においては、より広範囲においてメッキされた亜鉛を蒸発、脱気した後に、溶接を行うことができるのである。これに対して、第1、第3の直線経路K1,K3の照射を行わない場合には、亜鉛の蒸発、脱気が不十分であり、ブローホールを防ぎきれない。さらに広範囲の亜鉛を除去したい場合には、直線経路の本数をさらに増やしても良い。
【0026】
第1乃至第3の直線経路K1〜K3の間隔はある程度自由に設定できるが、その間隔はできるだけ小さいことが好ましい。第1乃至第3の直線経路K1〜K3の間隔が大きすぎると、レーザー照射が行われない非照射領域が広くなり、亜鉛の除去効果が十分発揮されないからである。また、図3乃至5においては、第1乃至第3の直線経路K1〜K3の広い照射領域19aは離間している場合を図示したが、隣接した経路の広い照射領域19aの端部を互いにオーバーラップさせてもよい。これにより、第1乃至第3の直線経路K1〜K3の間に非照射領域が生じないようにすることができる。
【0027】
尚、本実施形態とは異なり、第1のレーザービーム18aの照射領域を広げることで、広範囲の亜鉛を蒸発、脱気させるという手法も考えられるが、照射領域を広げただけではレーザービームのエネルギー密度の低下を招き、これを補償するためにはレーザービームの移動速度を相当小さくせざるを得ない。そうすると、生産性の低下を招く。また、ファイバーレーザー発振器17の発振出力にも限界があり、エネルギー密度を維持しながら照射領域を広げることは困難なことが多い。
【0028】
また、前述のように、第1及び第2のレーザービーム18a,18bは同時移動すること無く、時間を前後して移動させているため、それらの移動速度は独立に制御することができる。これにより、溶接条件を最適化することができる。この時、第1のレーザービーム18aの移動速度は、第2のレーザービーム18bの移動速度より小さいことが好ましい。つまり、第1のレーザービーム18aの移動はゆっくり行うことにより、亜鉛の蒸発、除去を促進することができる。一方、第2のレーザービーム18bの移動はそれより速くても適度な溶接接合を形成することができ、レーザー加工時間の短縮にもつながる。
【0029】
これに対して、特許文献1の溶接方法にように、2つのレーザービームを同時移動させる場合には、亜鉛の除去を十分に行うためにレーザービームの移動をゆっくり行うと、鋼板部分の溶融が過剰に起こり、逆に、溶接接合の形成を最適化するためにレーザービームの移動を速く行うと、亜鉛の除去が不十分になるという欠点がある。つまり、2つのレーザービームの移動速度が同一であるために、溶接条件の最適化に制約がある。
【0030】
[第2の実施形態]
第1の実施形態において、第1のレーザービーム18a及び第2のレーザービーム18bの移動する経路は直線経路であるが、それに限らず、どのような経路でもよい。本実施形態では、直線経路以外に好ましい経路として、円周経路について説明する。
尚、本実施形態においても、前記レーザー加工装置を用いるものとし、その他の条件も第1の実施形態と同様である。
【0031】
先ず、図7に示すように、第1のレーザービーム18aを下板11と上板12の重ね合わせ部上の第1の円周経路K4に沿って、起点P7から出発して、再び同じ起点P7に戻るように移動させる。つまり、第1のレーザービーム18aの広い照射領域19aは第1の円周経路K4を一周することになる。これにより、第1の実施形態と同様に、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0032】
その後、図8に示すように、第1の円周経路K4の外側に隣接した第2の円周経路K5に沿って、第1のレーザービーム18aを起点P8から再び同じ起点P8に戻すように移動させる。つまり、第1のレーザービーム18aの照射領域19aは第2の円周経路K5を一周することになる。この時も、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0033】
その後、図9に示すように、第2の円周経路K5の外側に隣接した第3の円周経路K6に沿って、第1のレーザービーム18aを起点P9から再び同じ起点P9に戻すように移動させる。つまり、第1のレーザービーム18aの照射領域19aは第3の円周経路K6を一周することになる。この時も、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0034】
この場合、第1乃至第3の円周経路K4〜K6の中心は同じであること、つまり第1乃至第3の円周経路K4〜K6は同心円であることが好ましい。第1のレーザービーム18aを移動させる第1乃至第3の円周経路K4〜K6の順番は任意である。
【0035】
その後、図10に示すように、第1のレーザービーム18aよりもエネルギー密度が高く、狭い照射領域19bを有した第2のレーザービーム18bを第2の円周経路K5に沿って、好ましくは第2の円周経路K5の中心線に沿って移動させながら照射する。つまり、第2のレーザービーム18bは、第1、第3の円周経路K4、K6によって挟まれた第2の円周経路K5に沿って移動する。
【0036】
この場合、第2のレーザービーム18bは起点P8から出発して、再び起点P8に戻るように移動させる。つまり、第2のレーザービーム18bの照射領域19bは第2の円周経路K5を一周することになる。尚、この時の起点P8は、第1のレーザービーム18aの起点P8と一致している必要はなく、第2の円周経路K5上で任意に選ぶことができる。
【0037】
これにより、第2の円周経路K5に沿って、狭い照射領域19bに対応する下板11と上板12の鋼板部分が溶融され、溶接接合が形成される。この時、第2の円周経路K5に対応したレーザー照射領域だけでなく、その両側の第1、第3の円周経路K4,K6に対応したレーザー照射領域も含めた広範囲においてメッキされた亜鉛が既に蒸発、脱気されているので、亜鉛蒸気の影響を無くして良好な溶接接合を形成することができる。第1乃至第3の円周経路K4〜K6の直径はある程度自由に設定できるが、円周経路の間隔は上述した理由でできるだけ小さいことが好ましい。また、さらに広範囲の亜鉛を除去したい場合には、円周経路の本数をさらに増やしても良い
このように、本実施形態によれば、レーザービームの移動経路は円周経路であり、第1の実施形態による直線経路とは異なっているが、同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、第1のレーザービーム18a及び第2のレーザービーム18bを同時移動させること無く、時間を前後して移動させるので、移動経路が第1乃至第3の円周経路K4〜K6のように曲線経路の場合でも、第1のレーザービーム18a及び第2のレーザービームの移動する経路のずれを無くすことができる。これに対して、特許文献1の溶接方法にように、2つのレーザービームを同時移動させる場合には、2つの分割されたレーザービームの射出位置が異なることから、移動経路にずれを生じや易い。移動経路にずれが生じると、亜鉛が十分除去されていない鋼材部分を溶融して溶接することになるため、溶接強度の劣化等の溶接欠陥を招くという問題がある。
【0039】
[第3の実施形態]
本実施形態は、第1のレーザービーム18a及び第2のレーザービーム18bの移動する経路は螺旋経路である点で第1、第2の実施形態と異なっている。尚、本実施形態においても、前記レーザー加工装置を用いるものとし、その他の条件も第1の実施形態と同様である。
【0040】
先ず、図11に示すように、第1のレーザービーム18aを下板11と上板12の重ね合わせ部上の螺旋経路K7に沿って、起点P11から出発して、終点P12まで移動させる。つまり、第1のレーザービーム18aの広い照射領域19aは螺旋経路K7上を移動することになる。この時、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0041】
その後、図12に示すように、第2のレーザービーム18bを下板11と上板12の重ね合わせ部上の螺旋経路K7に沿って、起点P13から出発して、終点P14まで移動させる。つまり、第2のレーザービーム18bに狭い照射領域19bは、螺旋経路K7の中でその両側の領域に第1のレーザービーム18aの照射が既に行われた経路に沿って移動する。これにより、螺旋経路K7に沿って、起点P13から終点P14に至る経路で、狭い照射領域19bに対応する下板11と上板12の鋼板部分が溶融され、溶接接合が形成される。
【0042】
この時、起点P13から終点P14に至る螺旋経路に対応したレーザー照射領域だけでなく、その両側の螺旋経路に対応したレーザー照射領域も含めた広範囲においてメッキされた亜鉛が既に蒸発、脱気されているので、亜鉛蒸気の影響を無くして良好な溶接接合を形成することができる。このように、本実施形態によれば、レーザービームの移動経路は螺旋経路であり、第1の実施形態による直線経路とは異なっているが、同様の効果を得ることができる。さらに広範囲の亜鉛を除去したい場合には、螺旋経路の巻き数をさらに増やしても良い。
【0043】
また、本実施形態によれば、第1のレーザービーム18aの移動経路が螺旋状になっているので、レーザービーム照射を途中で停止させることなく、連続照射が可能になる。これにより、生産性が向上するという特有の効果も有している。
【0044】
尚、上記第1乃至第3の実施形態においては、2枚の亜鉛メッキ鋼板を重ね合わせた状態でレーザー溶接を行っているが、本発明は、3枚以上の亜鉛メッキ鋼板を重ね合わせた状態でレーザー溶接を行う場合にも適用することができる。また、本発明のレーザー溶接の対象となる金属メッキ板は、亜鉛メッキ鋼板に限らず、鋼板の表面に、鋼板の融点よりも低い沸点を有した金属、例えば、アルミニウム、或いは錫をメッキしてなる金属メッキ板であってもよい。また、母材金属板の材料も鉄に限定されることはなく、例えば、鉄と他の元素との合金でもよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。2枚の亜鉛メッキ鋼板(規格:GAC270 t1.2)を準備した。この亜鉛メッキ鋼板は、厚さが1.2mmであり、表面及び裏面に40g/m2の亜鉛メッキが施されたものである。そして、2枚の亜鉛メッキ鋼板の重ね合わせ部に、第1のレーザービーム18aを第1乃至第3の円周経路K4〜K6に沿って照射した。この時のファイバーレーザー発振器17の発振出力は4KWであり、第1のレーザービーム18aの広い照射領域19aは円形であり、その直径は1.0mmであった。また、第1のレーザービーム18aの移動速度は1m/分であった。(図7〜図9参照)
【0046】
第1のレーザービーム18aの照射後、第2のレーザービーム18bを第2の円周経路K5に沿って照射した。この時の、ファイバーレーザー発振器17の発振出力は4KWであり、第2のレーザービーム18bの狭い照射領域19bは円形であり、その直径は0.8mmであった。また、第2のレーザービーム18bの移動速度は、第1のレーザービーム18aの移動速度より速く、3.5m/分であった。(図10参照)
【0047】
ファイバーレーザー発振器17の発振出力は4KWで一定しているので、レーザービームのエネルギー密度は照射領域の面積に反比例する。第1のレーザービーム18aのエネルギー密度は、第2のレーザービーム18bのエネルギー密度の64%になる。上記の第1及び第2のレーザービーム18a,18bの照射により、2枚の亜鉛メッキ鋼板は第2の円周経路K5に沿って溶接され、その溶接強度は高く、外観も良いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態におけるレーザー加工装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図及び断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図及び断面図である。
【図6】レーザービームによる照射領域を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する平面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10・・・レーザー加工テーブル 11・・・下板
12・・・上板 13・・・レーザー加工ヘッド
14・・・光ファイバー 15・・・コリメーションレンズ
16・・・集光レンズ 17・・・ファイバーレーザー発振器
18・・・レーザービーム 18a・・・第1のレーザービーム
18b・・・第2のレーザービーム 19a・・・広い照射領域
19b・・・狭い照射領域
K1・・・第1の直線経路 K2・・・第2の直線経路
K3・・・第3の直線経路 K4・・・第1の円周経路
K5・・・第2の円周経路 K6・・・第3の円周経路
K7・・・螺旋経路
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の金属メッキ板の重ね合わせ部分をレーザー溶接する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛メッキ鋼板は母材金属板である鋼板の表面に防錆用の亜鉛メッキを施した鋼板材であり、自動車の車体の構造材等として多用されている。車体等を形成する場合に、2枚の亜鉛メッキ鋼板を重ね合わせて、その重ね合わせ部分にレーザービームを照射して、鋼板材を溶融、結合させるレーザー溶接法が知られている。(特許文献1−3を参照)
【0003】
上記レーザー溶接を行うと、亜鉛の沸点(約900℃)が鋼板(鉄)の融点(約1500℃)より低いことに起因して溶接欠陥が発生することが知られている。つまり、レーザービームを前記重ね合わせ部分に照射することにより、鋼板が溶融するが、この時、重ね面の亜鉛が蒸発する。そして、亜鉛蒸気は溶融した鋼板内を通って外に抜けようとする。その結果、溶融した鋼板の一部が吹き飛ばされたり、一部の亜鉛蒸気が鋼板内部に残り、ブローホールと呼ばれる気孔を形成して、溶接強度を劣化させたり、外観が悪くなる。
【0004】
このような観点から、亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接法においては様々な対策が提案されている。(特許文献1−3を参照)例えば、特許文献1においては、エネルギー密度が低いレーザービームで亜鉛を蒸発、離散させた後、エネルギー密度が高いレーザービームで溶接接合させる方法が記載されている。また、特許文献1の方法においては、1つのレーザービームを、ハーフミラーと反射鏡を用いて、エネルギー密度が低いレーザービームとエネルギー密度が高いレーザービームとに分割し、それらの2つのレーザービームを、照射領域をずらして同時に照射するというものである。(特許文献1の図8等を参照)
【特許文献1】特開平4−231190号公報
【特許文献2】特開平10−156566号公報
【特許文献3】特開2002−178178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の溶接方法では、エネルギー密度が低いレーザービームとエネルギー密度が高いレーザービームとを同時照射しているので、以下の問題があった。
【0006】
第1に、2つのレーザービームの移動速度が必然的に同一にならざるを得ず、このことが、亜鉛の蒸発と溶接接合という2つの過程を最適化する上で制約条件になるという問題がある。第2に、溶接しようとする経路が曲線の場合、2つの分割されたレーザービームの射出位置が異なることから、経路にずれを生じ易く、経路にずれが生じると溶接強度の劣化等の溶接欠陥を招くという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、母材金属板の表面に母材金属の融点よりも低い沸点を有した金属をメッキしてなる、複数枚の金属メッキ板を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザービームを照射して溶接を行う金属メッキ板のレーザー溶接方法において、前記重ね合わせ部上の互いに隣接した第1乃至第3の経路に沿って、エネルギー密度が低く、且つ広い照射領域を有した第1のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記広い照射領域の母材金属部分にメッキされた金属を蒸発、脱気させ、前記第1のレーザービームを前記第1乃至第3の経路に沿って照射した後に、前記第1及び第3の経路に挟まれた前記第2の経路に沿って前記第1のレーザービームよりもエネルギー密度が高く、且つ前記第1のレーザービームよりも狭い照射領域を有した第2のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記狭い照射領域の母材金属部分を溶融して、溶接接合させることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第1のレーザービームを照射した後に、第2のレーザービームを照射するので、第1及び第2のレーザービーム線の移動速度を独立に制御することができる。その結果溶接条件の最適化が容易になる。また、第1及び第2のレーザービームの移動する経路のずれを無くすことができる。
【0009】
また、第1のレーザービームを第1乃至第3の経路に沿って照射した後に、第2のレーザービームを第1及び第3の経路に挟まれた第2の経路に沿って照射しているので第2のレーザービームの照射時には、第2の経路の両側を含めた広い範囲でメッキされた金属は既に蒸発、脱気されていることになる。これにより、金属蒸気の影響を無くして更に良好な溶接を実現することができる。ここで、第1乃至第3の経路は、直線経路でも円周経路でも良い。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、母材金属板の表面に母材金属の融点よりも低い沸点を有した金属をメッキしてなる、複数枚の金属メッキ板を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザービームを照射して溶接を行う金属メッキ板のレーザー溶接方法において、前記重ね合わせ部上における螺旋経路に沿って、エネルギー密度が低く、且つ広い照射領域を有した第1のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記広い照射領域の母材金属部分にメッキされた金属を蒸発させ、前記第1のレーザービームを螺旋経路の全体に沿って照射した後に、前記螺旋経路の中でその両側の領域に前記第1のレーザービームの照射が行われた経路に沿って、前記第1のレーザービームよりもエネルギー密度が高く、且つ前記第1のレーザービームよりも狭い照射領域を有した第2のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記狭い照射領域の母材金属部分を溶融して、溶接接合させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、請求項1の発明と同様に、第1のレーザービームを照射した後に、第2のレーザービームを照射するので、第1及び第2のレーザービーム線の移動速度を独立に制御することができる、その結果溶接条件の最適化が容易になる。また、第1及び第2のレーザービームの移動する経路のずれを無くすことができる。更に、第1のレーザービームを螺旋経路に沿って照射しているので、レーザービームの連続照射が可能となり、生産性を向上させることができる。また、第2のレーザービームの照射の時には、照射する経路の両側を含めた広い範囲でメッキされた金属が既に蒸発、脱気されている。これにより、請求項1に係る発明と同様、金属蒸気の影響を無くして更に良好な溶接を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属メッキ板のレーザー溶接方法によれば、溶接条件の最適化が容易になり、しかも、溶接しようとする経路が曲線の場合であっても、ブローホール等の溶融欠陥の形成の無い、良好な溶接を確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。先ず、レーザー加工装置の構成を図1に基づいて説明する。図示のように、レーザー加工テーブル10上に、2枚の亜鉛メッキ鋼板を重ね合わせた状態で載置する。以下では、下側になった亜鉛メッキ鋼板を下板11と呼び、上側になった亜鉛メッキ鋼板を上板12と呼ぶことにする。下板11と上板12とを治具で押さえて、両板の重ね合わせ部をできるだけ密着させることが好ましい。
【0014】
下板11及び上板12が載置されたレーザー加工テーブル10の上方には、レーザー加工ヘッド13が配置され、このレーザー加工ヘッド13に光ファイバー14を介してファイバーレーザー発振器17によって発生されたレーザービームが出力されるようになっている。尚、ファイバーレーザー発振器17の代わりに、YAGレーザー発振器、CO2レーザー発振器等の他の種類のレーザー発振器を用いてもよい。
【0015】
レーザー加工ヘッド13には、コリメーションレンズ15と集光レンズ16が収納されている。ファイバーレーザー発振器17からのレーザービームは、先ず、コリメーションレンズ15によって一旦平行光線に変換され、その平行光線が集光レンズ16によって、所定の焦点距離の位置に集光される。また、レーザー加工ヘッド13は、例えば、レーザー加工ロボットのような移動手段によって、上板12の面内のX方向及びY方向、上板12の表面に垂直なZ方向に移動自在に構成されている。
【0016】
従って、レーザー加工ヘッド13をZ方向に移動させることにより、レーザー加工ヘッド13から出力されるレーザービーム18の照射領域19(上板12に垂直な方向からみて円形の領域になる)の広狭を変えることができる。レーザービーム18のエネルギー密度は照射領域19aの単位面積当たりのエネルギーであり、ファイバーレーザー発振器17の発振出力(電力)が一定であれば、レーザービーム18のエネルギー密度は照射領域19aの面積に反比例することになる。
【0017】
また、レーザー加工ヘッド13のコリメーションレンズ15又は集光レンズ16を交換することによっても照射領域19の広狭を変えることができる。また、レーザー加工ヘッド13をX方向に、又はY方向に、或いはX方向とY方向に同時に移動させることにより、レーザービーム18の照射領域19を前記重ね合わせ部上を任意の経路に沿って、所望の移動速度で移動させることができる。
【0018】
以下、上記レーザー加工装置を用いた亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接法について説明する。先ず、図2(a)の斜視図に示すように、下板11と上板12の重ね合わせ部上の起点P1から終点P2までの第1の直線経路K1に沿って、エネルギー密度が低く、広い照射領域19aを有した第1のレーザービーム18aを移動させながら照射する。
【0019】
これにより、図2(b)(図1(a)のA−A線断面図)に示すように、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。つまり、前記重ね面から発生した亜鉛蒸気は下板11と上板12の重ね合わせ部の隙間を通って外に抜ける。この時、第1のレーザービーム18aのエネルギー密度は低いので、鋼材は溶融せず、亜鉛だけが蒸発する。
【0020】
その後、図3に示すように、下板11と上板12の重ね合わせ部上であって、第1の直線経路K1に隣接すると共に、第1の直線経路K1に平行な第2の直線経路K2に沿って、エネルギー密度が低く、広い照射領域19aを有した第1のレーザービーム18aを移動させながら照射する。第2の直線経路K2は、起点P3から終点P4までの直線経路であり、その経路の長さは第1の直線経路K1の長さと略同じである。この時も同様に、第2の直線経路K2に沿った広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が、第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0021】
その後、図4に示すように、下板11と上板12の重ね合わせ部上であって、第2の直線経路K2に隣接すると共に、第2の直線経路K2に平行な第3の直線経路K3に沿って、エネルギー密度が低く、広い照射領域19aを有した第1のレーザービーム18aを移動させながら照射する。第3の直線経路K3は、起点P5から終点P6までの直線経路であり、その経路の長さは第1、第2の直線経路K1、K2の長さと略同じである。この時も同様に、第3の直線経路K3に沿った広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が、第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0022】
この場合、第1乃至第3の直線経路K1〜K3の起点P1,P3,P5は同一直線上にあり、起点P1,P3,P5も同一直線上にある。また、第1のレーザービーム18aの移動方向は左右方向のどちらでも良い。
【0023】
上述のようにして第1のレーザービーム18aを第1乃至第3の経路K1〜K3に沿って移動させた後に、図5(a)に示すように、第1のレーザービーム18aよりもエネルギー密度が高く、狭い照射領域19bを有した第2のレーザービーム18bを第1の直線経路K1、第3の直線経路K3に挟まれた第2の直線経路K2に沿って、好ましくは第2の直線経路K2の中心線に沿って移動させながら照射する。この時、第2のレーザービーム18bの移動方向はP3→P4、P4→P3のどちらでも良い。
【0024】
この場合、第2のレーザービーム18bの狭い照射領域19bの全部が広い照射領域19aの範囲に含まれている。広い照射領域19aと狭い照射領域19bを重ね合わせると、中心点Aを共有した同心円を形成することが好ましい。(図6を参照)このようにして、図5(b)(図5(a)のB−B線断面図)に示すように、第2の直線経路K2に沿って、狭い照射領域19bに対応する下板11と上板12の鋼板部分が溶融され、溶接接合が形成される。この時、第2の直線経路K2に対応したレーザー照射領域だけでなく、その両側の第1、第3の直線経路K1,K3に対応したレーザー照射領域も含めた広範囲においてメッキされた亜鉛が既に蒸発、脱気されているので、広範囲の亜鉛蒸気の影響を無くして良好な溶接接合を形成することができる。
【0025】
つまり、第1のレーザービーム18aを1つの直線経路に沿って照射し、第2のレーザービーム18bを同じ経路に沿って照射する場合と比べると、本実施形態においては、より広範囲においてメッキされた亜鉛を蒸発、脱気した後に、溶接を行うことができるのである。これに対して、第1、第3の直線経路K1,K3の照射を行わない場合には、亜鉛の蒸発、脱気が不十分であり、ブローホールを防ぎきれない。さらに広範囲の亜鉛を除去したい場合には、直線経路の本数をさらに増やしても良い。
【0026】
第1乃至第3の直線経路K1〜K3の間隔はある程度自由に設定できるが、その間隔はできるだけ小さいことが好ましい。第1乃至第3の直線経路K1〜K3の間隔が大きすぎると、レーザー照射が行われない非照射領域が広くなり、亜鉛の除去効果が十分発揮されないからである。また、図3乃至5においては、第1乃至第3の直線経路K1〜K3の広い照射領域19aは離間している場合を図示したが、隣接した経路の広い照射領域19aの端部を互いにオーバーラップさせてもよい。これにより、第1乃至第3の直線経路K1〜K3の間に非照射領域が生じないようにすることができる。
【0027】
尚、本実施形態とは異なり、第1のレーザービーム18aの照射領域を広げることで、広範囲の亜鉛を蒸発、脱気させるという手法も考えられるが、照射領域を広げただけではレーザービームのエネルギー密度の低下を招き、これを補償するためにはレーザービームの移動速度を相当小さくせざるを得ない。そうすると、生産性の低下を招く。また、ファイバーレーザー発振器17の発振出力にも限界があり、エネルギー密度を維持しながら照射領域を広げることは困難なことが多い。
【0028】
また、前述のように、第1及び第2のレーザービーム18a,18bは同時移動すること無く、時間を前後して移動させているため、それらの移動速度は独立に制御することができる。これにより、溶接条件を最適化することができる。この時、第1のレーザービーム18aの移動速度は、第2のレーザービーム18bの移動速度より小さいことが好ましい。つまり、第1のレーザービーム18aの移動はゆっくり行うことにより、亜鉛の蒸発、除去を促進することができる。一方、第2のレーザービーム18bの移動はそれより速くても適度な溶接接合を形成することができ、レーザー加工時間の短縮にもつながる。
【0029】
これに対して、特許文献1の溶接方法にように、2つのレーザービームを同時移動させる場合には、亜鉛の除去を十分に行うためにレーザービームの移動をゆっくり行うと、鋼板部分の溶融が過剰に起こり、逆に、溶接接合の形成を最適化するためにレーザービームの移動を速く行うと、亜鉛の除去が不十分になるという欠点がある。つまり、2つのレーザービームの移動速度が同一であるために、溶接条件の最適化に制約がある。
【0030】
[第2の実施形態]
第1の実施形態において、第1のレーザービーム18a及び第2のレーザービーム18bの移動する経路は直線経路であるが、それに限らず、どのような経路でもよい。本実施形態では、直線経路以外に好ましい経路として、円周経路について説明する。
尚、本実施形態においても、前記レーザー加工装置を用いるものとし、その他の条件も第1の実施形態と同様である。
【0031】
先ず、図7に示すように、第1のレーザービーム18aを下板11と上板12の重ね合わせ部上の第1の円周経路K4に沿って、起点P7から出発して、再び同じ起点P7に戻るように移動させる。つまり、第1のレーザービーム18aの広い照射領域19aは第1の円周経路K4を一周することになる。これにより、第1の実施形態と同様に、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0032】
その後、図8に示すように、第1の円周経路K4の外側に隣接した第2の円周経路K5に沿って、第1のレーザービーム18aを起点P8から再び同じ起点P8に戻すように移動させる。つまり、第1のレーザービーム18aの照射領域19aは第2の円周経路K5を一周することになる。この時も、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0033】
その後、図9に示すように、第2の円周経路K5の外側に隣接した第3の円周経路K6に沿って、第1のレーザービーム18aを起点P9から再び同じ起点P9に戻すように移動させる。つまり、第1のレーザービーム18aの照射領域19aは第3の円周経路K6を一周することになる。この時も、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0034】
この場合、第1乃至第3の円周経路K4〜K6の中心は同じであること、つまり第1乃至第3の円周経路K4〜K6は同心円であることが好ましい。第1のレーザービーム18aを移動させる第1乃至第3の円周経路K4〜K6の順番は任意である。
【0035】
その後、図10に示すように、第1のレーザービーム18aよりもエネルギー密度が高く、狭い照射領域19bを有した第2のレーザービーム18bを第2の円周経路K5に沿って、好ましくは第2の円周経路K5の中心線に沿って移動させながら照射する。つまり、第2のレーザービーム18bは、第1、第3の円周経路K4、K6によって挟まれた第2の円周経路K5に沿って移動する。
【0036】
この場合、第2のレーザービーム18bは起点P8から出発して、再び起点P8に戻るように移動させる。つまり、第2のレーザービーム18bの照射領域19bは第2の円周経路K5を一周することになる。尚、この時の起点P8は、第1のレーザービーム18aの起点P8と一致している必要はなく、第2の円周経路K5上で任意に選ぶことができる。
【0037】
これにより、第2の円周経路K5に沿って、狭い照射領域19bに対応する下板11と上板12の鋼板部分が溶融され、溶接接合が形成される。この時、第2の円周経路K5に対応したレーザー照射領域だけでなく、その両側の第1、第3の円周経路K4,K6に対応したレーザー照射領域も含めた広範囲においてメッキされた亜鉛が既に蒸発、脱気されているので、亜鉛蒸気の影響を無くして良好な溶接接合を形成することができる。第1乃至第3の円周経路K4〜K6の直径はある程度自由に設定できるが、円周経路の間隔は上述した理由でできるだけ小さいことが好ましい。また、さらに広範囲の亜鉛を除去したい場合には、円周経路の本数をさらに増やしても良い
このように、本実施形態によれば、レーザービームの移動経路は円周経路であり、第1の実施形態による直線経路とは異なっているが、同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、第1のレーザービーム18a及び第2のレーザービーム18bを同時移動させること無く、時間を前後して移動させるので、移動経路が第1乃至第3の円周経路K4〜K6のように曲線経路の場合でも、第1のレーザービーム18a及び第2のレーザービームの移動する経路のずれを無くすことができる。これに対して、特許文献1の溶接方法にように、2つのレーザービームを同時移動させる場合には、2つの分割されたレーザービームの射出位置が異なることから、移動経路にずれを生じや易い。移動経路にずれが生じると、亜鉛が十分除去されていない鋼材部分を溶融して溶接することになるため、溶接強度の劣化等の溶接欠陥を招くという問題がある。
【0039】
[第3の実施形態]
本実施形態は、第1のレーザービーム18a及び第2のレーザービーム18bの移動する経路は螺旋経路である点で第1、第2の実施形態と異なっている。尚、本実施形態においても、前記レーザー加工装置を用いるものとし、その他の条件も第1の実施形態と同様である。
【0040】
先ず、図11に示すように、第1のレーザービーム18aを下板11と上板12の重ね合わせ部上の螺旋経路K7に沿って、起点P11から出発して、終点P12まで移動させる。つまり、第1のレーザービーム18aの広い照射領域19aは螺旋経路K7上を移動することになる。この時、広い照射領域19aに対応する下板11と上板12の重ね面に存在する亜鉛が第1のレーザービーム18aにより加熱されて、蒸発、脱気する。
【0041】
その後、図12に示すように、第2のレーザービーム18bを下板11と上板12の重ね合わせ部上の螺旋経路K7に沿って、起点P13から出発して、終点P14まで移動させる。つまり、第2のレーザービーム18bに狭い照射領域19bは、螺旋経路K7の中でその両側の領域に第1のレーザービーム18aの照射が既に行われた経路に沿って移動する。これにより、螺旋経路K7に沿って、起点P13から終点P14に至る経路で、狭い照射領域19bに対応する下板11と上板12の鋼板部分が溶融され、溶接接合が形成される。
【0042】
この時、起点P13から終点P14に至る螺旋経路に対応したレーザー照射領域だけでなく、その両側の螺旋経路に対応したレーザー照射領域も含めた広範囲においてメッキされた亜鉛が既に蒸発、脱気されているので、亜鉛蒸気の影響を無くして良好な溶接接合を形成することができる。このように、本実施形態によれば、レーザービームの移動経路は螺旋経路であり、第1の実施形態による直線経路とは異なっているが、同様の効果を得ることができる。さらに広範囲の亜鉛を除去したい場合には、螺旋経路の巻き数をさらに増やしても良い。
【0043】
また、本実施形態によれば、第1のレーザービーム18aの移動経路が螺旋状になっているので、レーザービーム照射を途中で停止させることなく、連続照射が可能になる。これにより、生産性が向上するという特有の効果も有している。
【0044】
尚、上記第1乃至第3の実施形態においては、2枚の亜鉛メッキ鋼板を重ね合わせた状態でレーザー溶接を行っているが、本発明は、3枚以上の亜鉛メッキ鋼板を重ね合わせた状態でレーザー溶接を行う場合にも適用することができる。また、本発明のレーザー溶接の対象となる金属メッキ板は、亜鉛メッキ鋼板に限らず、鋼板の表面に、鋼板の融点よりも低い沸点を有した金属、例えば、アルミニウム、或いは錫をメッキしてなる金属メッキ板であってもよい。また、母材金属板の材料も鉄に限定されることはなく、例えば、鉄と他の元素との合金でもよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。2枚の亜鉛メッキ鋼板(規格:GAC270 t1.2)を準備した。この亜鉛メッキ鋼板は、厚さが1.2mmであり、表面及び裏面に40g/m2の亜鉛メッキが施されたものである。そして、2枚の亜鉛メッキ鋼板の重ね合わせ部に、第1のレーザービーム18aを第1乃至第3の円周経路K4〜K6に沿って照射した。この時のファイバーレーザー発振器17の発振出力は4KWであり、第1のレーザービーム18aの広い照射領域19aは円形であり、その直径は1.0mmであった。また、第1のレーザービーム18aの移動速度は1m/分であった。(図7〜図9参照)
【0046】
第1のレーザービーム18aの照射後、第2のレーザービーム18bを第2の円周経路K5に沿って照射した。この時の、ファイバーレーザー発振器17の発振出力は4KWであり、第2のレーザービーム18bの狭い照射領域19bは円形であり、その直径は0.8mmであった。また、第2のレーザービーム18bの移動速度は、第1のレーザービーム18aの移動速度より速く、3.5m/分であった。(図10参照)
【0047】
ファイバーレーザー発振器17の発振出力は4KWで一定しているので、レーザービームのエネルギー密度は照射領域の面積に反比例する。第1のレーザービーム18aのエネルギー密度は、第2のレーザービーム18bのエネルギー密度の64%になる。上記の第1及び第2のレーザービーム18a,18bの照射により、2枚の亜鉛メッキ鋼板は第2の円周経路K5に沿って溶接され、その溶接強度は高く、外観も良いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態におけるレーザー加工装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図及び断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図及び断面図である。
【図6】レーザービームによる照射領域を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する平面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態による亜鉛メッキ鋼板のレーザー溶接方法を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10・・・レーザー加工テーブル 11・・・下板
12・・・上板 13・・・レーザー加工ヘッド
14・・・光ファイバー 15・・・コリメーションレンズ
16・・・集光レンズ 17・・・ファイバーレーザー発振器
18・・・レーザービーム 18a・・・第1のレーザービーム
18b・・・第2のレーザービーム 19a・・・広い照射領域
19b・・・狭い照射領域
K1・・・第1の直線経路 K2・・・第2の直線経路
K3・・・第3の直線経路 K4・・・第1の円周経路
K5・・・第2の円周経路 K6・・・第3の円周経路
K7・・・螺旋経路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材金属板の表面に母材金属の融点よりも低い沸点を有した金属をメッキしてなる、複数枚の金属メッキ板を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザービームを照射して溶接を行う金属メッキ板のレーザー溶接方法において、
前記重ね合わせ部上の互いに隣接した第1乃至第3の経路に沿って、エネルギー密度が低く、且つ広い照射領域を有した第1のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記広い照射領域の母材金属部分にメッキされた金属を蒸発、脱気させ、
前記第1のレーザービームを前記第1乃至第3の経路に沿って照射した後に、前記第1及び第3の経路に挟まれた前記第2の経路に沿って前記第1のレーザービームよりもエネルギー密度が高く、且つ前記第1のレーザービームよりも狭い照射領域を有した第2のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記狭い照射領域の母材金属部分を溶融して、溶接接合させることを特徴とする金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項2】
前記第1乃至第3の経路は、互いに平行な直線経路であることを特徴とする請求項1に記載の金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項3】
前記第1乃至第3の経路は、直径が異なる3つの同心円のそれぞれの円周に沿った経路であることを特徴とする請求項1に記載の金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項4】
母材金属板の表面に母材金属の融点よりも低い沸点を有した金属をメッキしてなる、複数枚の金属メッキ板を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザービームを照射して溶接を行う金属メッキ板のレーザー溶接方法において、
前記重ね合わせ部上における螺旋経路に沿って、エネルギー密度が低く、且つ広い照射領域を有した第1のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記広い照射領域の母材金属部分にメッキされた金属を蒸発させ、
前記第1のレーザービームを螺旋経路の全体に沿って照射した後に、前記螺旋経路の中でその両側の領域に前記第1のレーザービームの照射が行われた経路に沿って、前記第1のレーザービームよりもエネルギー密度が高く、且つ前記第1のレーザービームよりも狭い照射領域を有した第2のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記狭い照射領域の母材金属部分を溶融して、溶接接合させることを特徴とする金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項5】
前記第1のレーザービームの移動速度は、前記第2のレーザービームの移動速度より小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項6】
前記母材金属は鉄鋼であり、前記母材金属板の表面にメッキされた金属は亜鉛又はアルミニウムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項1】
母材金属板の表面に母材金属の融点よりも低い沸点を有した金属をメッキしてなる、複数枚の金属メッキ板を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザービームを照射して溶接を行う金属メッキ板のレーザー溶接方法において、
前記重ね合わせ部上の互いに隣接した第1乃至第3の経路に沿って、エネルギー密度が低く、且つ広い照射領域を有した第1のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記広い照射領域の母材金属部分にメッキされた金属を蒸発、脱気させ、
前記第1のレーザービームを前記第1乃至第3の経路に沿って照射した後に、前記第1及び第3の経路に挟まれた前記第2の経路に沿って前記第1のレーザービームよりもエネルギー密度が高く、且つ前記第1のレーザービームよりも狭い照射領域を有した第2のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記狭い照射領域の母材金属部分を溶融して、溶接接合させることを特徴とする金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項2】
前記第1乃至第3の経路は、互いに平行な直線経路であることを特徴とする請求項1に記載の金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項3】
前記第1乃至第3の経路は、直径が異なる3つの同心円のそれぞれの円周に沿った経路であることを特徴とする請求項1に記載の金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項4】
母材金属板の表面に母材金属の融点よりも低い沸点を有した金属をメッキしてなる、複数枚の金属メッキ板を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザービームを照射して溶接を行う金属メッキ板のレーザー溶接方法において、
前記重ね合わせ部上における螺旋経路に沿って、エネルギー密度が低く、且つ広い照射領域を有した第1のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記広い照射領域の母材金属部分にメッキされた金属を蒸発させ、
前記第1のレーザービームを螺旋経路の全体に沿って照射した後に、前記螺旋経路の中でその両側の領域に前記第1のレーザービームの照射が行われた経路に沿って、前記第1のレーザービームよりもエネルギー密度が高く、且つ前記第1のレーザービームよりも狭い照射領域を有した第2のレーザービームを移動させながら照射することにより、前記狭い照射領域の母材金属部分を溶融して、溶接接合させることを特徴とする金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項5】
前記第1のレーザービームの移動速度は、前記第2のレーザービームの移動速度より小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【請求項6】
前記母材金属は鉄鋼であり、前記母材金属板の表面にメッキされた金属は亜鉛又はアルミニウムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の金属メッキ板のレーザー溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−94701(P2010−94701A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266687(P2008−266687)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(591077704)東亜工業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(591077704)東亜工業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]