説明

金属塗装材及びその製造方法

【課題】撥水性が高く、熱交換機のフィン表面の凝縮水を排除することが可能なアルミニウム等の金属塗装材を提供することを目的とする。
【解決手段】アルミニウム等の金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)を含む有機樹脂からなる下地被膜とその上に撥水性を示す仕上げ被膜を形成した金属塗装材である。そして微粒子(A)の平均粒径は有機樹脂下地被膜の膜厚より1.5倍以上大きくする。
さらに微粒子(A)に加えて、微粒子(A)の平均粒径の1/4以下の平均粒径の微粒子(B)を用いる。また微粒子(A)を含む下地被膜の上に微粒子(B)を含む下地被膜を形成したものも含まれる。
下地被膜、仕上げ被膜は塗料を塗布し、乾燥等することにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、特にアルミニウム材又はアルミニウム合金材(以下単にアルミニウム材という)の表面に撥水性を発現させる被膜を形成させた金属塗装材である。
【背景技術】
【0002】
撥水性アルミニウム樹脂被覆板は様々な用途で提案されているが、本明細書においては空調機を例に挙げてその熱交換器のフィン材の場合について述べることとする。
最近の空調機用熱交換器は、軽量化のために、熱効率の向上とコンパクト化が要求され、フィン間隔をでき得る限り狭くする設計が取り入れられてきた。空調機用熱交換器は、冷房運転中に空気中の水分がアルミニウムフィンの表面に凝縮水となって付着する。金属材料の表面は、一般に親水性に乏しいため、この凝縮水はフィン表面に半円形もしくはフィン間にブリッジ状になって存在することになる。これはフィン間の空気の流れを妨げ、通風抵抗を増大させ、熱交換効率を著しく低下させる原因となっていた。熱交換器の熱効率を向上させるには、フィン表面の凝縮水を迅速に排除することが必要である。
この解決法として、(1)アルミニウム合金フィン表面に高親水性被膜を形成し、凝縮水を薄い水膜として流下せしめる、(2)アルミニウム合金フィン表面に撥水性被膜を形成し、凝縮水を表面に付着させないようにする、ことが考えられる。
【0003】
高親水性被膜を付与する方法としては、カルボキシメチルセルロースとポリエチレングリコールを含有する組成物を塗布し、親水性の被膜を形成させる方法(特許文献1参照)などが提案されている。
しかしながら、室内機では、親水性被膜にて満足することは出来たが、冬季の室外機では結霧水が氷結して霜となり、暖房性能を低下させるという問題点があったことから、撥水性被膜の提案があったが、まだ満足するものではなかった。
その他シリコーン系あるいはフッ素系撥水被膜に無機充填材を含有させたもの(特許文献2及び3参照)、電着塗料にシリカまたはチタニアを葡萄の房状にして含有させた撥水被膜があるが(特許文献4参照)、特許文献2及び3の技術では撥水被膜中の粒子が脱落しやすく、特許文献4の技術では十分な撥水性がなかったり、製法が複雑である問題がある。
【特許文献1】特開2000−028291号公報
【特許文献2】特開平3−244680号公報
【特許文献3】特開平5−222339号公報
【特許文献4】特開2003−238947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者らは、従来技術における問題点に鑑み、粒子の脱落を防止でき、比較的容易な方法で、撥水性が高く、特に微粒子の形状を特別なものにすることにより、超撥水性も可能であり、熱交換機のフィン表面の凝縮水を排除することが可能な金属塗装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の目的を達成するためになされたもので、以下の発明からなる。
(1)金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)を含む有機樹脂からなる下地被膜が形成され、該下地被膜の上に撥水性を示す仕上げ被膜が形成され、前記微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂下地被膜の膜厚より1.5倍以上大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材。
(2)金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)及び該微粒子(A)の1/4以下の平均粒径をもつ有機または無機の微粒子(B)を含む有機樹脂からなる下地被膜が形成され、微粒子(A)の表面には微粒子(B)の少なくとも一部が付着しており、下地被膜の上に撥水性を示す仕上げ被膜が形成され、微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂下地被膜の膜厚より1.5倍以上大きく、微粒子(B)の平均粒径は仕上げ被膜の厚さより大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材。
(3)金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)を含む有機樹脂からなる下地層が形成され、該下地層の上に前記微粒子(A)の1/4以下の平均粒径をもつ有機または無機の微粒子(B)を含む有機樹脂からなる下地被膜が形成され、微粒子(A)の表面には微粒子(B)の少なくとも一部が付着しており、前記下地被膜の上に撥水性を示す仕上げ被膜が形成され、微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂下地被膜の合計の膜厚より1.5倍以上大きく、微粒子(B)の平均粒径は仕上げ被膜の厚さより大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材。
【0006】
(4)有機または無機の微粒子(A)及び(B)が、けい酸塩、金属酸化物、珪藻土、ガラス、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン系樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂の中から選ばれる1種以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
(5)有機樹脂下地被膜の膜厚が、0.5〜10μmである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
(6)微粒子(A)の平均粒径が、有機樹脂下地被膜の膜厚の1.5倍以上15μm以下である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
(7)前記下地被膜中において有機樹脂100質量部に対し、微粒子Aを3.5〜20質量部含有し、微粒子Bを0.4〜3.5質量部含有することを特徴とする上記(2)〜(6)のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
【0007】
(8)有機樹脂が、エポキシ系樹脂である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
(9)仕上げ被膜が、フッ素系、シリコーン系の中から選ばれる1種以上である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
(10)金属がアルミニウムまたはその合金である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
(11)金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)または微粒子(A)及び該微粒子(A)の1/4以下の平均粒径をもつ有機または無機の微粒子(B)を含む有機樹脂塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により下地被膜を形成し、該下地被膜上に撥水性塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により仕上げ被膜を形成する方法であって、微粒子(A)の平均粒径は有機樹脂の膜厚より1.5倍以上大きく、微粒子(B)の平均粒径は仕上げ被膜の厚さより大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材の製造方法。
(12)金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)を含む有機樹脂塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により第1の下地膜を形成し、該下地膜の上に前記微粒子(A)の1/4以下の平均粒径をもつ有機または無機の微粒子(B)を含む有機樹脂塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により第2の下地被膜を形成し、第2の下地被膜の上に撥水性塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により仕上げ被膜を形成する方法であって、微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂の合計の厚さより1.5倍以上大きく、微粒子(B)の平均粒径は仕上げ被膜の厚さより大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属塗装材は撥水性が高く、超撥水性も可能である。空調機用熱交換器は、冷房運転中に空気中の水分がアルミニウムフィンの表面に凝縮水となって付着するが、本発明の金属塗装材を用いると凝縮水を排除することができるので、熱交換率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を詳しく説明する。
本発明の金属塗装材は金属材の少なくとも一方の表面に特定の粒子を含む有機樹脂からなる下地被膜を形成し、その上に撥水性の仕上げ被膜を形成したものである。
金属材はアルミニウムやその他の金属に適用可能であるが、特にアルミニウム材が好ましい。
板材等の撥水性は、一般的に板材表面と相関があり、表面積が増加するに従い、撥水性も増加することが知られている。そこで、板表面の表面積を増加する方法としては、撥水性被膜そのものに凹凸を付け、表面積を増やす方法があるが、撥水性被膜に凹凸をつけることが困難である。よって、本発明では、微粒子によって微細な凹凸を下地被膜に形成し、その表面に撥水性である仕上げ被膜を形成することにより、撥水性を保持した被膜を形成することを可能としたものである。
【0010】
本発明における下地被膜の有機樹脂としては、一般的な塗料に使われる樹脂で構わなく、例えば、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。その中でも、エポキシ系樹脂は、可とう性、耐水性、耐食性、塗膜密着性をバランスよく取れるので、成形加工として用いる樹脂としては、最適である。エポキシ系樹脂としては、ビスフェノール型、ノボラック型、グリシジルエーエル型などの環状脂肪族型、非環状脂肪族型などあるが、特に限定されるものではない。エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、特に制限されるものではない。これらの中でも、工業的汎用性及び耐食性が良好である点から、特にビスフェノール類を反応させて得られるエポキシ樹脂が好ましい。前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられ、1種のみを単独で使用しても、2種以上の混合物として使用しても良い。この中でも、工業的汎用性から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
下地被膜中に含有される微粒子として、平均粒径が下地被膜の有機樹脂部分の膜厚より1.5倍以上大きい微粒子(A)を用いる。微粒子(A)の平均粒径が、有機樹脂部分の膜厚の1.5倍未満であると、表面形状における充分大きな効果が得られなく、充分な撥水性を付与することはできない。また微粒子(A)の平均粒径は、あまりに大きいと被膜が微粒子を保持できなくなるので、15μm以下が好ましい。平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計にて測定したものである。
また本発明では撥水効果を高めるために微粒子(A)に微粒子(B)を加えたものを用いる。微粒子(B)は平均粒径が微粒子(A)の平均粒径の1/4以下である。微粒子(B)はその少なくとも一部は微粒子(A)の表面に付着し、微粒子の表面積を高めることができる。微粒子(B)の平均粒径が微粒子Aの平均粒径の1/4より大きいと、微粒子Aの周囲に付着させた場合、脱落しやすくなり、微粒子Aの周りについても、表面効果を出さないので、撥水性の向上効果が下がる。微粒子(B)により小さな凹凸を形成することにより、着霜の起点となる凸部が多くなり、霜が充分に発達する前に取り除かれることになる。
【0012】
本発明において、微粒子(A)と微粒子(B)を含有させる場合、その効果をさらに高めるため、下地層を2層とする。即ち、第1下地膜として金属材の表面に微粒子(A)を含む有機樹脂下地膜が形成され、その上に微粒子(B)を含む第2の有機樹脂下地膜が形成されているものである。第1の下地膜の乾燥または焼き付けの後に第2の下地膜を形成することにより、効率的に樹脂膜の表面から出ている微粒子(A)の表面に微粒子(B)を付着させることができる。
微粒子(B)は仕上げ膜の表面より上に出ていることが、表面積を高める上で効果があり、したがって微粒子(B)は平均粒径は仕上げ膜の厚さより大きくする。
微粒子の種類としては、けい酸塩、金属酸化物、珪藻土、ガラス、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン系樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂の中から選ばれる1種以上から構成されていることが好ましい。その中でも、被膜への付着性、形状効果等の点から、無機系ではシリカ、アルミナ、有機系はアクリル系が好ましい。
【0013】
下地被膜中における微粒子Aの含有量は、微粒子(A)単独の場合、有機樹脂100質量部とすると、微粒子Aは、5〜30質量部とするのが好ましい。含有量が5質量部未満であると、表面形状の効果が少なく、撥水性の向上効果が低く、30質量部を超えると、樹脂における微粒子Aの量が多くなりすぎて、塗膜密着性を保つことが難しくなる。また、微粒子(A)と微粒子Bを併用する場合、それらの含有量としては、有機樹脂100質量部に対して、微粒子(A)は3.5〜20質量部、微粒子Bは0.4〜3.5質量部とするのが好ましい。微粒子(A)の数値限定理由は前記同様であり、微粒子Bの含有量が0.4質量部未満であると撥水性向上効果が下がり、3.5質量部より大きいと、微粒子(A)を埋め尽くしてしまい、反対に平滑になり、その向上効果が下がる。
下地被膜の有機樹脂部分の膜厚は、0.5〜10μmが好ましい。膜厚が0.5μm未満であると、微粒子(A)を保持が難しく、10μmより厚いと、効果が飽和し、不経済である。
仕上げ塗膜の種類としては、一般的な撥水性被膜を処理することで構わない。その中でも、撥水性処理としては、フッ素系、シリコーン系のものが、撥水性、密着性とも良好であるので、好ましい。
【0014】
また、下地樹脂組成物に顔料または染料を含有させることにより、意匠性を付与することができる。顔料または染料は、塗料分野で汎用に使用されているものであれば特に限定されない。顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾール系、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系等の有機顔料が挙げられる。また、染料としては直接染料や反応染料、酸性染料、カチオン染料、バット染料、媒染染料等が挙げられる。上記の顔料または染料は、単独もしくは2種類以上が含有されていても差し支えない。
【0015】
本発明における塗料として、水系、溶剤系とも、上記の被膜で形成されるものであれば、いずれでも構わない。
そして、本発明の親水性被覆用下地樹脂組成物を種々の硬質材料の表面に塗布する方法については、特に制限はない。
被膜を形成する塗布方法としては、例えば、ロールスクイズ法、ケミコーター法、ロールコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等があげられ、乾燥は一般的な加熱法、誘電加熱法などにより行うことができる。これらの方法のうち被膜の均一性、生産性からロールコーター法が好ましい。そして、ロールコーター法としては、塗布量管理に便利なグラビアロールを用いる方法や、厚塗りするのに便利なナチュラルコート方式や、塗布面を綺麗に仕上げるのに有利なリバースコート方式等を採用することができる。
【0016】
下地被膜を形成する方法は、微粒子Aまたは微粒子(A)と微粒子(B)を含有する例えばエポキシ系樹脂を主成分する塗料を塗布した後、乾燥又は焼付けを行う。下地被膜が2層の場合は先ず微粒子(A)を含有する塗料を塗布した後、乾燥または焼き付けを行い、次いで微粒子Bを含有する塗料を塗布した後、乾燥又は焼付けを行う(2コート2ベークの工程)。下地被膜が2層の場合、続けて塗料を塗布し、一度に乾燥または焼き付けを行う(2コート1ベーク)ことも可能だが、微粒子(A)の周りに微粒子(B)を付着しやすくするためには2コート2ベークによる下地被膜形成方法がより効果的である。
【0017】
下地被膜を形成する際に行う焼付け加熱条件は、焼付け温度(到達表面温度)は150℃以上が好ましく、更に好ましくは、170〜300℃であり、焼付時間は1〜60秒で行うことが好ましい。
塗装における焼付け温度が150℃未満や焼付け時間が1秒未満であると、被膜が十分に形成されず、塗膜密着性や耐食性の低下が顕著になる。反対に焼付け温度が300℃を超えたり、焼付け時間が60秒を超えたりすると、変色や塗膜密着性の低下などを生じて、製品上問題となる。
仕上げ被膜の形成方法は、上記の方法にて形成した下地被膜アルミニウム塗装材に撥水性組成物を塗布し、乾燥又は焼付けを行い、その表面に撥水性被膜を形成することにより得られる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
〔実施例〕
実施例及び比較例の製造方法は以下のようにした。
各実施例及び比較例の樹脂について、アルミニウム合金板(1100−H24材、0.100mm厚さ)を弱アルカリ脱脂、水洗、乾燥後、有機樹脂塗料をロールコーターにて塗布し、所定の到達板表面温度(PMT)、時間で焼付けし、所定の被膜量の下地被覆アルミニウム合金板を得た。得られた下地被覆アルミニウム合金板に各撥水性処理剤をロールコーターにて塗布・焼付けし、撥水性被覆アルミニウム合金板を得た。下地被膜の焼き付け条件は240℃、20秒で、撥水性被膜の焼き付け条件は80℃、60秒である。得られた撥水性被覆アルミニウム合金板について、撥水性、塗膜密着性、除霜性を以下の方法で測定した。
表1に示す塗料のエポキシ系樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂にアクリル樹脂を付与させたエステル型エポキシ樹脂であり、重量平均分子量は、約3,800である。
フッ素系樹脂は、フルロテクノロジ社製フロロサーフFS−3030TH−2.0である。
【0019】
実施例1は、微粒子Aを含有した塗料を塗布・焼付けし、その後、撥水性処理剤(仕上げ塗料)を塗布・焼付けした。
実施例2は、微粒子A及びBを含有した塗料を塗布・焼付けし、その後、撥水性処理剤をロールコーターにて塗布・焼付けした。
実施例3〜15は、微粒子Aを含有した塗料を塗布・焼付けした後、微粒子Bを含有した塗料を塗布・焼付けし、その下地被覆アルミニウム合金板に撥水性処理剤を塗布・焼付けした。
比較例1は、下地処理を行っていないアルミニウム合金板に撥水性処理剤を塗布・焼付けした。
比較例2は、微粒子を含んでいない塗料を塗布・焼付けした後、撥水性処理剤を塗布・焼付けした。
比較例3は、粒径が小さい微粒子Aを含む塗料を塗布・焼付けした後、撥水性処理剤を塗布・焼付けした。
比較例4は、微粒子Aを含有した塗料を塗布・焼付けした後、微粒子Bを含有した塗料を塗布・焼付けした下地被覆アルミニウム合金板を用いた。
【0020】
〔撥水性〕
ゴニオメーターで純水の接触角を測定した。
◎ :接触角が130°以上
○ :接触角が100°以上、130未満
△ :接触角が80゜以上、100゜未満
× :接触角が80°未満
〔塗膜密着性〕
JIS H4001における付着性試験を用い、碁盤目におけるテープ剥離後の残存個数を測定した。
〔除霜性〕
雰囲気を10℃×RH60%の恒温槽中に、-10℃に冷やしたサンプルを設置し、表面の着霜状況を目視にて観察した。
● :着霜 無し
△ :一部着霜 有り
× :着霜 有り
【0021】
表1に示すように実施例は、いずれも撥水性、塗膜密着性、着霜に不具合は見られず、十分あるいはある程度満足している。なお、表2は表1の組成の根拠を示すデータである。
実施例1は、微粒子Bを含まない、微粒子Aのみの下地被膜、本実施例2は、微粒子A、微粒子Bを混在した1層の被膜によって形成された下地被膜、実施例7は、微粒子Aの添加量が少なく、実施例9は、微粒子Bの添加量が少なかったため、微細な凸部が形成できず、一部に霜を発生させたが、ほぼ性能を満足することができた。その中でも、実施例3〜6、8、10〜15は、いずれの性能を充分満足した。
しかしながら、比較例1は撥水性被膜だけの材料、比較例2は微粒子を含まない下地被膜に仕上げ皮膜を形成した材料、比較例3は粒径が小さすぎた微粒子を含有した下地被膜に仕上被膜を形成した材料、比較例4は、微粒子A、Bを含んだ下地被膜を形成した材料であったが、仕上被膜を形成しなかったため、充分な凹凸を形成できず、撥水性、除霜性とも満足することができなかった。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の金属塗装材は撥水性が高く、空調機用熱交換器におけるアルミニウムフィンの表面の凝縮水を排除することができ、熱交換率を向上させることができる。
最近の空調機用熱交換器である軽量化、熱効率の向上のためコンパクトで、フィン間隔をでき得る限り狭く設計された熱交換器にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)を含む有機樹脂からなる下地被膜が形成され、該下地被膜の上に撥水性を示す仕上げ被膜が形成され、前記微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂下地被膜の膜厚より1.5倍以上大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材。
【請求項2】
金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)及び該微粒子(A)の1/4以下の平均粒径をもつ有機または無機の微粒子(B)を含む有機樹脂からなる下地被膜が形成され、微粒子(A)の表面には微粒子(B)の少なくとも一部が付着しており、下地被膜の上に撥水性を示す仕上げ被膜が形成され、微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂下地被膜の膜厚より1.5倍以上大きく、微粒子(B)の平均粒径は仕上げ被膜の厚さより大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材。
【請求項3】
金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)を含む有機樹脂からなる下地層が形成され、該下地層の上に前記微粒子(A)の1/4以下の平均粒径をもつ有機または無機の微粒子(B)を含む有機樹脂からなる下地被膜が形成され、微粒子(A)の表面には微粒子(B)の少なくとも一部が付着しており、前記下地被膜の上に撥水性を示す仕上げ被膜が形成され、微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂下地被膜の合計の膜厚より1.5倍以上大きく、微粒子(B)の平均粒径は仕上げ被膜の厚さより大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材。
【請求項4】
有機または無機の微粒子(A)及び(B)が、けい酸塩、金属酸化物、珪藻土、ガラス、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン系樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂の中から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
【請求項5】
有機樹脂下地被膜の膜厚が、0.5〜10μmである請求項1〜4のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
【請求項6】
微粒子(A)の平均粒径が、有機樹脂下地被膜の膜厚の1.5倍以上15μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
【請求項7】
前記下地被膜中において有機樹脂100質量部に対し、微粒子Aを3.5〜20質量部含有し、微粒子Bを0.4〜3.5質量部含有することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
【請求項8】
有機樹脂が、エポキシ系樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
【請求項9】
仕上げ被膜が、フッ素系、シリコーン系の中から選ばれる1種以上である請求項1〜8のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
【請求項10】
金属がアルミニウムまたはその合金である請求項1〜9のいずれかに記載の撥水性金属塗装材。
【請求項11】
金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)または微粒子(A)及び該微粒子(A)の1/4以下の平均粒径をもつ有機または無機の微粒子(B)を含む有機樹脂塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により下地被膜を形成し、該下地被膜上に撥水性塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により仕上げ被膜を形成する方法であって、微粒子(A)の平均粒径は有機樹脂の膜厚より1.5倍以上大きく、微粒子(B)の平均粒径は仕上げ被膜の厚さより大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材の製造方法。
【請求項12】
金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)を含む有機樹脂塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により第1の下地膜を形成し、該下地膜の上に前記微粒子(A)の1/4以下の平均粒径をもつ有機または無機の微粒子(B)を含む有機樹脂塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により第2の下地被膜を形成し、第2の下地被膜の上に撥水性塗料を塗布し、乾燥または焼き付け工程により仕上げ被膜を形成する方法であって、微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂の合計の厚さより1.5倍以上大きく、微粒子(B)の平均粒径は仕上げ被膜の厚さより大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材の製造方法。

【公開番号】特開2009−12238(P2009−12238A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174741(P2007−174741)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】