金属塩ナノ粒子、特にナノ粒子を有するカルシウムとホスフェートのフレーム合成
カチオン金属がI〜IV族の金属およびこれらの混合物から選択され、アニオン基がホスフェート、シリケート、スルフェート、カーボネート、ヒドロキシド、フッ化物およびこれらの混合物から選択される金属塩の製法において、該方法は1つのヒドロキシレート基当たり少なくとも3個の平均炭素数を有する金属カルボン酸塩である少なくとも1つの金属源と、少なくとも1つのアニオン源との混合物を形成して液体粒子にし、前記液体粒子を高温環境、有利にはフレーム中で酸化することを特徴とする、金属塩の製法に関する。この方法は、特にヒドロキシアパタイトやリン酸三カルシウムのような優れた生体親和性と骨伝導性を示すリン酸カルシウム生体材料の製造に適しているので、骨欠損症または歯周欠損症の修復、金属インプラントのコーティングならびに骨空隙部充填剤に広く使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、微細金属塩粒子ならびにフレーム溶射熱分解(flame spray pyrolysis)による前記金属塩の製法、特に粒子含有のカルシウムとホスフェートに関する。
【0002】
技術背景
フレーム溶射熱分解13は、ナノ粒子、とりわけ典型金属と遷移金属41を含有している酸化物の製造に適切な方法として最近確立された。これは、触媒製造用の酸化物ナノ粒子のスケーラブルなプロセスへと急速に発展し、かつ工業規模のフレームエアロゾル合成は今日ではメガトン量のカーボン、シリカおよびチタニアを製造するようになった。実験的に、フレーム溶射反応器は、調節可能な狭いオリフィスにより囲まれたキャピラリーから成っている(図1参照)。前駆体の液体は、先端で分散され、結果として明確に規定されたスプレーになる。周囲のメタン/酸素支持フレームは、スプレーを点火し、フレームは前駆体を相応の材料に変換する。
【0003】
多くの用途でナノ粒子材料が望まれている。このような材料は、リン酸三カルシウムのようなリン酸カルシウムから成るが、アパタイトからも成る。リン酸カルシウムのような生体材料は、臨床医学において強い関心を引きつけた。ヒドロキシアパタイト(HApまたはOHAp、Ca10(PO4)6(OH)2)もリン酸三カルシウム(TCP、Ca3(PO4)2)も、優れた生体適合性と骨伝導性1,2を示す。これらは骨欠損症または歯周欠損症、金属インプラントのコーティングならびに骨空隙部充填剤に広く使用されている。しかし、伝統的な方法(沈殿、ゾル−ゲル合成、熱水法または固相反応)1,3-5は、使用可能な材料と形態学の限界の範囲に悩まされている。湿式相の製造は、洗浄や乾燥といった一般に時間とコストのかかる後処理を必要とする。固相反応は、長い焼結が関わるので、低い比表面積の粉末を生じる。むしろ高密度材料は、微孔質の欠如を示し、体液への接触を減らしてしまいin vivoでの吸収を妨げる。
【0004】
近年報告された製造法は、プラズマ溶射6とパルスレーザー析出7,8から成る。これらは、インプラント表面において有利なコーティングを生じた。さらに、非晶質リン酸カルシウムは結果的に改善された吸収特性9-11を示し、自己硬化型セメント12用に見込みのある材料であり、これらを最も価値のあるターゲットにした。
【0005】
しかし、これら全ての方法は幾つかの欠点を有する。これらは、分離できないか、または相当な努力を尽くす場合にしか分離できない混合物を導き、かつ/または密度の高すぎる材料を導き、かつ/またはこれらの方法はバルク合成用に不適合であり、かつ/または大量生産には有効ではない。従って、純粋な材料を製造可能にする方法、有利には大量生産には、なお改善された製法が必要であり、このような方法により改善された材料が得られるようになる。
【0006】
本発明の開示
本発明の一般的な対象は、金属塩(ここで、アニオン基はホスフェート、ボレート、シリケート、スルフェート、カーボネート、ヒドロキシド、フッ化物およびこれらの混合物から選択される)、特にナノ粒子金属塩の製法、有利には金属が主にIIとIIIの酸化状態、場合によりIまたはIVの酸化状態を生じるI、II、III、IV族金属、第三遷移金属、ランタノイド(希土類金属)から選択される金属塩の製法ならびに上記金属の混合物の製法の提供である。上記の全ての金属は、通常I〜IVの酸化状態を有するので、これらは更に"I〜IV族の金属"という用語によってまとめて考えられる。その他の金属は、塩の種類と適用分野に応じて存在することができる。ある場合に、ドープ塩または種々の塩の混合物が有利である。
【0007】
本発明の他の対象は、ナノ粒子、場合により 浸透性金属塩を提供することであった。
【0008】
また本発明の他の対象は、このような金属塩の使用を提供することであった。
【0009】
前記および更なる本発明の対象は、以下の説明が進むにつれて容易に明らかになると思われるが、本発明の方法は、1つのカルボキシレート基あたり、少なくとも3個の平均炭素数(mean carbon value)を有する金属カルボン酸塩である少なくとも1つの金属源と、少なくとも1つのアニオン源との混合物を形成して液体粒子にし、前記液体粒子を高温環境で酸化することを特徴とする。
【0010】
有利な金属塩では、金属はカルシウムを有する。より有利には、少なくとも80原子%のカルシウム(全てのカチオンの合計は100原子%である)、有利には少なくとも90%、最も有利には少なくとも95%の高カルシウ含有量を有する金属塩である。
【0011】
カチオン金属の合計は、さらにI〜IV族の金属を有していてもよく、有利にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびバリウム、希土類金属、特にガドリニウムならびに前記金属の2種以上の混合物から成るグループから選択される金属を有する。
【0012】
アニオン基の合計は、有利にはホスフェート、スルフェート、ボレート、ヒドロキシド、カーボネート、フッ化物ならびにこれらの混合物から選択されるアニオン基を、理論的に計算した必要量のアニオンの少なくとも80mol%の量で有し、塩内の電子の中性を仮定するのであれば、有利には少なくとも90%、より有利には少なくとも95%有する。塩内の全ての負の電荷の98%以上、むしろ99%が上記のアニオンのうちの1つにより置換されている純粋な材料が最も有利である。より有利な化合物中では、アニオン基の少なくとも一部がホスフェートであり、これにより3:1(例えば、Na3PO4)から1:1(例えば、AlPO4、エナメル)の金属:ホスフェートのモル比を有する化合物が有利である。
【0013】
本発明の方法は、特に非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、アパタイトならびにこれらの混合物から成るグループから選択される金属塩を製造するために適切である。
【0014】
上記の方法により製造可能な有利な高純度のアパタイトは、次の式
Ca10(PO4)6(OH)2xF2y(CO3)z[式中、x、yおよびzは、それぞれ0〜1の範囲内であり、x+y+zの合計は1である]を有する。
【0015】
zは0〜1で変化可能であるが、用途に応じて特異的な範囲が有利である。例えば、医学的用途では、カーボネートが有利であることができる。アパタイト中のカーボネート含有量は、熱重量分析により測定して、例えば、3〜8質量%のカーボネートであることができる。CO2の検出は、質量分析計と組み合わせた示差走査熱量計により行うことができる。
【0016】
本発明の方法は、相の純粋な非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムまたはリン酸三カルシウム欠乏またはリン酸三カルシウム不含のアパタイトのような、極めて純粋な生成物の製造に適切であることが分かった。形成された化合物の純度は、少なくとも96質量%、有利には少なくとも98質量%、最も有利には少なくとも99質量%の範囲内で達成できる。高純度で得られる有利な生成物は、非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトまたはフルオロアパタイトまたはヒドロキシフルオロアパタイトを有する。
【0017】
上記のように、金属源は1つのカルボキシレート基あたり少なくとも3個、有利には少なくとも4個、より有利には少なくとも5個、最も有利には5〜8個の平均炭素数を有する金属カルボン酸塩である。有利には、金属カルボン酸塩は、C1〜C18−カルボキシレートならびにこれらの混合物、より有利にはC4〜C12−カルボキシレートならびにこれらの混合物、より有利にはC5〜C8−カルボキシレートならびにこれらの混合物から成るグループから、特に2−エチルヘキサン酸塩のようなオクトエートから選択される。
【0018】
金属カルボン酸塩と1つ以上のアニオン源、すなわちホスフェートおよび/または1つ以上の他のアニオンまたはアニオン前駆体を有する液体粒子は、フレーム中で酸化されるのが有利である。
【0019】
液体粒子に形成される前に金属カルボン酸塩は最大で100mPas、有利には最大で40mPas、より有利には最大で20mPasの粘度を有する。金属カルボン酸塩がこのような粘度を有さない場合には、加熱により、および/または少なくとも1つの金属カルボン酸塩と少なくとも1つの粘度降下溶剤の混合を施すことにより、このような粘度を得てもよい。
【0020】
適切な粘度降下溶剤は、1つ以上の酸を有していてもよい。粘度降下溶剤は1つ以上の酸から成り、大抵は全体の酸の50%w/w未満を使用することもできるが、場合によっては酸は必要でも望ましくもない。有利な酸はC1〜C10−カルボン酸である。
【0021】
溶剤は、少なくとも1つの低分子量および/または低粘度の非極性溶剤、特に芳香族または脂肪族、非置換、線状もしくは分枝状炭化水素を有してもよく、有利には溶剤はトルエン、キシレン、低級脂肪族炭化水素ならびにこれらの混合物から成るグループから選択される。
【0022】
アニオン源は、先に定義した溶剤中での十分な溶解度を考慮して選択される。適切なアニオン源は、次のものを有する:
− 少なくとも13kJ/g、有利には少なくとも22.5kJ/g、最も有利には少なくとも25.5kJ/gの燃焼エンタルピーを有する溶剤または溶剤混合物に可溶性の無機リン化合物および/または有機リン化合物から選択されるホスフェート源、特にリン酸および/またはリン酸の有機エステルおよび/またはホスフィン、特に溶剤を構成する、または上記の特性を有する溶剤混合物を導くリン化合物、および/または
− 有機化合物のフッ化物誘導体であるフッ化物源、前記フッ化物誘導体は先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にトリフルオロ酢酸に可溶性である、および/または
− 先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にテトラエチルシリケートに可溶性の有機シリケートおよび/または有機ケイ素混合物から選択されるシリケート源、および/または
− 有機硫黄含有化合物および/またはスルホン酸から選択されるスルフェート源、前記スルフェート源は先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶性である、
− 炭化水素、カルボン酸、アルコール、金属カルボン酸塩およびこれらの混合物のような有機炭素源から選択されるカーボネート源。
【0023】
金属炭酸塩を製造する場合には、金属源として使用される金属カルボン酸塩は同時にアニオン源としてはたらくことができ、これによりクールダウンプロセス(特異的温度で排ガスを含む粒子の滞留時間)が純度に関わってくる。
【0024】
フレーム酸化を行うための適切な装置は、スプレーバーナー42,43、または特にオイルバーナーである。
【0025】
酸化は少なくとも600℃、有利には少なくとも800℃、より有利には少なくとも1000℃、最も有利には1200〜2600℃の範囲内、特に約1600℃で行うのが有利である。
【0026】
金属カルボン酸塩を製造するための適切な方法は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物、例えば、塩化物または臭化物、または金属低級アルキルオキシド、特にC1〜C4−アルキルオキシドから出発する。良好な結果を出すために、金属カルボン酸塩または金属カルボン酸塩を有する溶液のエンタルピーは、少なくとも13kJ/g、有利には少なくとも18kJ/g、より有利には少なくとも22.5kJ/g、最も有利には少なくとも25.5kJ/gであるべきである。
【0027】
溶液が金属カルボン酸塩を1リットル当たり少なくとも0.15molの金属に相応する量で、かつアニオン源を1リットル当たり少なくとも0.05molのアニオン基に相応する量で含有する場合には、高い生産率を達成することができる。しかし、10倍以上まで濃縮された溶液を作ることもでき、これにより約0.8〜2molの金属濃度および相応する量のアニオン基/アニオン前駆体が有利である。金属源の金属塩への変換は殆ど損失がないので、出発材料の溶解度、溶射すべき溶液の粘度およびノズル/バーナーの容量にだけ依存して高生産率が得られる。3金属原子/イオンあたり少なくとも1つのアニオン基を添加することにより、金属酸化物ではなく、本発明の金属塩への変換が達成される。
【0028】
パイロット規模の製造から工業規模(kgからトンの量)の合成にナノ粒子の製造をもたらすために、幾つかの付加的な問題に直面することになる。最も顕著なものは、十分な高生産率を可能にする容易に使用可能な金属前駆体の選択である。本発明は、ナノ粒子の製造を生成物とアニオン源ならびに場合により特異的溶剤を含有する特殊金属に結びつける。出発材料の特異的選択の他に、生産率はバーナーによっても影響される。WO 02/061163に記載されているような多数の配列を使用することは、メンテナンス、ノズル目詰まり、スペース、再現性などの問題を必然的に伴う。従って、少ないバーナー、有利には一般のオイルバーナーを使用して同じ量の粉末を製造するのが有利である。100kgオイル/時を十分に上回るオイルバーナーが利用可能であり、ひいては高生産率に極めて適している。本発明の範囲内で明らかになるであろうが、このようなバーナーは1時間当たり8kgのCa3(PO4)2または9kgのヒドロキシアパタイト粒子の量を達成することができる(供給100kg/時の場合)。それぞれ約12または13kgのスケールアップ量が予測される。本発明に記載されている液体を相応の金属塩に変換するのに適している市販のオイルバーナーは、幾つかを挙げるにすぎないが、Vescal AG, Heizsysteme, Industries-trasse 461, CH-4703 KestenholzからOEN-151LEVまたはOEN-143LEVまたはOEN-331LZ〜OEN-334LZの名称で入手可能である。
【0029】
本発明の方法は、亜当量の金属塩の製造にも適用できる。このような製造では、フレームは完全燃焼または反応体の変換にとって不十分な酸素を有する。従って、亜当量とは例えば金属が様々な酸化状態で存在することを意味する。
【0030】
製造したままの金属塩は、幾つかのカーボネートを有していてもよい(製造したままとは、高温製造の直後の、特にバーナー/フレームの直後の生成物を示す)。殆どまたは全くカーボネートが必要ではない場合には、熱処理を場合により湿度の存在で行ってもよい。アパタイトの場合には、このような処理はCO2含有量をゼロに近づけることができる。好ましくは、このような処理は500℃〜900℃の温度で、かつ0.1〜100mbarの水分圧で行われる。
【0031】
CO2除去の状況に応じて、この工程は同時に焼き戻し/焼結手順としてはたらくか、または別々の焼き戻し/焼結手順が施されてもよい。このような温度処理により、結晶構造が影響され、かつ/または特殊な性質を有する浸透生成物が得られる。適切な焼結法は、以下に記載されている分析法をリン酸カルシウム(Ca/P)試料と関連させて適用することにより見いだすことができる。このような方法は、水銀ポロシメトリー、Rigbyら(2004)40に記載されているような、比表面積と孔径を測定するための窒素吸着(BET)および孔構造分析を含む。さらなる方法は、形態学的試験用の透過電子顕微鏡(TEM)と走査型電子顕微鏡(SEM)、生成物のキャラクタリゼーション用のフーリエ変換赤外分光(FTIR)とX線回折ならびに温度依存性変化をモニタリングするための示差熱分析(DTA)である。
【0032】
本発明の更なる点は、金属塩、特に上記の方法により得られる金属塩である。
【0033】
本発明の金属塩は次の特徴を有する:
5〜200nmの範囲内、有利には約20nmの製造したままのBET相当直径を有する。特殊な場合には、特に相応する塩の融点が1000℃を下回る場合には20nm以上の直径、例えば50nmまたは100nmが得られる。
【0034】
さらに、本発明の塩は1分間当たりに10℃の加熱率で900℃まで加熱する場合に水を7.5質量%以上放出しないことに特徴付けられる。有利には、これらの塩は5質量%未満の水を放出し、最も有利には4.5質量%未満の水を放出する。
【0035】
本発明の塩は、1分間当たりに10℃の加熱率で500℃まで加熱する場合、有利には400℃まで加熱する場合、最も有利には350℃まで加熱する場合に通常全ての水の90質量%以上を放出する。水の放出曲線(例えば図5参照)は、水が表面上に吸着されて存在しているだけであるという仮定を支持する。
【0036】
水放出の基準は、本発明の材料を湿式相材料から著しく区別する。このような材料は、数百℃の広い温度範囲でゆっくりと水を放出する。湿式相生成物の放出曲線は、水がより強く保持されるように結晶格子内に組み込まれているという仮定を支持する。
【0037】
最後の製造法により、種々の形態学と嵩密度(DIN ISO 697(1984-01)により測定)を有する焼結生成物が得られる。例えば、湿式相で製造された非晶質リン酸三カルシウムの嵩密度は、大抵は500kg/m3以上であるのに対して、本発明の方法により製造された生成物は、100〜300kg/m3の範囲内である。高温固相反応で従来技術により製造されたα−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムの嵩密度は、1000〜2000kg/m3の範囲内であるのに対して、本発明の方法により製造された各生成物は、β−リン酸三カルシウムでは800kg/m3未満の嵩密度を有し、α−リン酸三カルシウムでは500kg/m3未満の嵩密度を有する。
【0038】
従来技術のα−リン酸三カルシウムの比表面積(BET−法により−196℃で窒素吸着法により測定)は、2m2/g未満であるのに対して、本発明により製造されたα−リン酸三カルシウムは3m2/g以上、より有利には5m2/g以上、さらに有利には8m2/g以上である。従来技術のβ−リン酸三カルシウムの比表面積は、0.8m2/g未満であるのに対して、本発明のβ−リン酸三カルシウムは、1m2/g以上、大抵は1.5m2/g以上、さらに有利には2m2/g以上である。
【0039】
本発明の有利な金属塩は、生体材料である。
【0040】
このような金属塩は、医学的用途において、例えば、骨セメントおよび/またはインプラント用の溶解性材料として、練り歯磨きへの添加剤として、例えば、フッ化物源としておよび/または研磨補助剤として、食料、例えば、チューイングガム、お菓子、食卓塩中のフッ化物源として、触媒担体として、分子篩いとして、ポリマー用充填剤として、紫外線安定剤としておよび/または生分解性材料または生体溶解性材料中の分解活性化剤として使用することができる。
【0041】
図の簡単な説明
以下の詳細な説明に考察を提供することにより、本発明は更によく理解され、上記に挙げた以外の対象が明らかになるであろう。このような説明は添付した図に言及する:
図1Aは、2相ノズルバーナーのフレームを示し、ここで液体含有金属のスプレーが分散され、点火される。燃焼スプレーは、反応器それ自体である。粒子がこの熱ガスから形成され、バーナーの頂点で回収できる。
【0042】
図1Bは、材料流を示すフレームの図式的描写である。
【0043】
図2Aは、製造したまま(すなわち焼結前)のリン酸三カルシウムの写真である。
【0044】
図2Bは、図2Aに示されているような製造したままの材料を熱処理することによる比表面積の減少を示している。
【0045】
図3は、700℃で焼結した後(上の2個の写真)と900℃で焼結した後(下の2個の写真)のリン酸カルシウム(Ca/P=1.5)の透過電子顕微鏡写真(左の2個の写真)と走査型電子顕微鏡画像(右の2個の写真)を示している。
【0046】
図4は、室温から1320℃の温度範囲内および10℃/分の加熱率で、種々のPとCaの過剰を有するCa/P=1.5試料の示差熱分析(DTA)データ(左側)と、特異的な温度で熱処理した後の幾つかのCa/P試料のX線回折パターン(右側)を示している。
【0047】
図5は、Ca/P=1.67試料の熱重量分析(TG、上のグラフ)と、試料の結晶化を示す1本の発熱ピークを有する相応の示差走査熱分析の痕跡(DTA、上のグラフ)を示す。下のグラフは、TG/DTA分析と組み合わせた質量分析計により同時に測定した二酸化炭素(CO2)と水(H2O)の発生を示している。この装置は、結晶化、ガス放出および重量損失の同時検出を可能にする。
【0048】
図6は、製造したままと、700℃で処理した後の種々のCa/P比を有する試料のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示している。
【0049】
図7は、900℃で30分間か焼した後の種々のCa/P比を有する試料のFTIRスペクトルを示している。
【0050】
図8は、製造したままの幾つかのアパタイトを700℃で温度処理した後のものと比較したXRDパターンを示している。
【0051】
図9は、700℃でか焼した後のヒドロキシアパタイト、ヒドロキシフルオロアパタイトおよびフルオロアパタイトのFTIRスペクトルを比較している。
【0052】
図10は、700℃で30分間か焼した後のCa/P比に依存した種々のリン酸カルシウムの形成を示している。
【0053】
図11は、900℃で30分間か焼した後のCa/P比に依存した種々のリン酸カルシウムの形成を示している。
【0054】
図12は、カルシウムに対してMgを1原子%含有しているマグネシウムドープリン酸三カルシウム内では分離相が無いことが目視でき、かつXRDパターンはα−TCP(700℃でか焼後)またはβ−TCP(900℃でか焼後)に相応していることを示している。このことは、結晶格子内でのMgの良好な分散と組込みを確証している。
【0055】
図13は、カルシウムに対してMgを1原子%含有しているマグネシウムドープアパタイト内では分離相が無いことが目視でき、かつXRDパターンがヒドロキシルアパタイト(700℃でか焼後)に相応し、安定なままである(900℃でか焼後)ことを示している。このことは、結晶格子内でのMgの良好な分散と組込みを確証している。
【0056】
図14は、カルシウムに対してZnを1原子%含有している亜鉛ドープリン酸三カルシウム内では分離相が無いことが目視でき、かつXRDパターンは、α−TCP(700℃でか焼後)またはβ−TCP(900℃でか焼後)に相応していることを示している。このことは、結晶格子内でのZnの良好な分散と組込みを確証している。
【0057】
図15は、カルシウムに対してZnを1原子%含有している亜鉛ドープアパタイト内では分離相が無いことが目視でき、かつXRDパターンがヒドロキシルアパタイト(700℃でか焼後)に相応し、安定なままである(900℃でか焼後)ことを示している。このことは、結晶格子内でのZnの良好な分散と組込みを確証している。
【0058】
図16は、フレーム溶射合成により製造された炭酸カルシウムナノ粒子のXRDパターンが、酸化カルシウムの不純物を少し有する炭酸カルシウムに相応することを示している。本発明のこれらの粒子は、フレーム溶射バーナー中でオクタン酸カルシウムオクテンから1工程で作られる。
【0059】
図17は、オクタン酸カルシウムとジメチルスルホキシド(DMSO)をフレーム溶射バーナーに供給することにより得られる硬セッコウ(硫酸カルシウム)ナノ粒子のXRDを示している。少量の酸化カルシウムが存在する。
【0060】
本発明の実行様式
リン酸カルシウム、特に生体材料として適切であるリン酸カルシウムに関して本発明を更に説明する。
【0061】
本発明の範囲内において、結果として生じる形態学、高純度および得られる高結晶相含有量が生体材料として適用可能であるので、フレーム合成が材料にとって最も応用のきくツールを与えることが分かった。さらに、ダイレクトな気相プロセスはカチオンとアニオン両方の容易な置換を可能にする。
【0062】
リン酸三カルシウム(Ca/P=1.5)および異なるアパタイト(Ca/P=1.67)の再現性のある製造は、通常の方法に課題を与える。本発明の方法により、正確に定義づけられた1.425〜1.67のカルシウム:リンのモル比(Ca/P)を有する材料が得られる。このような材料は、場合によりマグネシウム、亜鉛、バリウム、ガドリニウム、シリケート、スルフェートまたはフッ化物のような他のアニオンまたはカチオンでドーピングすることができる。過剰のカルシウムまたはリンを有するリン酸三カルシウム試料は、化学量論的試料(化学量論的試料Ca/P=1.5)に関して付加的な原子フラクションとは区別される。過剰のカルシウムを有する(Ca/P>1.5)リン酸三カルシウムは、例えば、"+2.5at%Ca"と表記され、過剰のリンを有する(Ca/P<1.5)リン酸三カルシウムは、例えば、"+2.5at%P"と表記される。Ca/P比と各at%の比較は、表1に示されている。
【0063】
【表1】
【0064】
所望の組成物、すなわちフルオロアパタイト(FAp)、ヒドロキシフルオロアパタイト(OHFAp/HFAp)および/またはいずれかのドーピングは、それぞれのアニオンまたはカチオンを初期溶液に混合することにより得られる。例えば、オクタン酸マグネシウム、ナフテン酸亜鉛、トリフルオロ酢酸またはこれらの混合物をカルシウムおよびホスフェート前駆体溶液に混合することにより、マグネシウムおよび/または亜鉛ドープ材料および/またはフルオロアパタイト(Ca10(PO4)6F2)またはヒドロキシフルオロアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)F)を1工程で製造することができる。ドーピングしたトリン酸カルシウムの他に、同じ方法によってカルシウム以外の他の金属の純粋な金属塩も得られる。同様に、ホスフェート以外のアニオンとの金属塩を作ることもできる。他の材料の例は、炭酸カルシウム(石灰岩)ナノ粒子または硬セッコウナノ粒子(CaSO4)であり、これらは実験のセクションで記載されている。
【0065】
直径10〜30nmの球状高凝集粒子(図2A)は、合成後に回収することができる。熱安定性と種々の結晶相の発生は、窒素吸着(BET)とX線回折(XRD)によりモニターできる。一般的に試料は90m2g-1(BET相当直径20nm)で開始し、600℃周辺で比表面積の急激な減少を生じ、強力なか焼と結晶化の開始を示している。僅かに過剰なリン(+1at%P)は、リン酸三カルシウム(Ca/P=1.5)の熱安定性に著しい影響を与えないので、ヒドロキシアパタイト(Ca/P=1.67)は900℃では非常に安定で、かつ15m2g-1を上回って維持される。半分(Ca10(PO4)6(OH)F)および全部(Ca10(PO4)6F2)が置換されたフルオロアパタイトは、非置換のヒドロキシアパタイトよりも焼結に対して耐性があった。
【0066】
In vivoでの生体材料の組織学的挙動は、形態学的および相の組成により決定できる。マクロ孔(直径>100μm)は、骨細胞のコロニー形成16の足場を提供することが見いだされ、従って、興味のある骨内植である17,18。ミクロ孔(直径<10μm)の含有量は、製法と温度および焼結の継続時間により与えられる。連続した微孔質は、体液循環を保証し、むしろ特定のバイオセラミックスで観測される骨誘導特性に重要であると考えられている19-24。700℃でのか焼後に本発明の方法により製造されたCa/P=1.5の電子顕微鏡画像(図3、写真aとb)は、材料が一緒に融合して、はっきりと目視可能な焼結ネックを形成していることを明らかにした。この焼結生成物は、約100nmの一次粒度を有する高い多孔率を保持する。900℃での焼結(図3、写真cとd)は、直径約0.5μmの相当に大きな一次粒子を生じている。連続したミクロ孔を有する極めて規則的な構造は、焼結生成物に優れた吸収特性を提供し、かつ更にin vivoでの骨形成の誘発を提供する。このような構造は、浸透相とも呼ばれている。
【0067】
製造したままのリン酸カルシウムは、非晶質のナノ粒子から成り、フレーム中で形成した後に速く冷却しても材料を結晶化させなかったことを示している。本発明の範囲内では、このような非晶質リン酸カルシウムを種々の温度で熱処理して高い選択性/純度で、選択された結晶相内で結晶化できることも見いだされた。製造したままの生成物のガラス質構造の存在は、示差熱分析により確認された。組み合わせた質量分析(DTA−MS)装置は、水と二酸化炭素の脱着の同時検出を可能にした。DTAとXRDパターンの組合せ(図4)は、結晶化と相転移の立証を可能にする。600℃周辺の発熱ピークは、非晶質材料の結晶化と相間している。500℃では非晶質の試料+1%atCaは結晶化して(図4、ラベル1)、メタ−安定性のα−TCP25になり、大抵はα’−TCPと称される(図4、ラベル2)。915℃では、α’−TCPは熱力学的に好ましいβ−TCPに変換される(図4、ラベル3)。1190℃では、β−TCPは変換されて高温型多形体のα−TCPに戻る。Ca3(PO4)2に過剰のリンを添加することは、化学量論的(Ca/P=1.5)ピロリン酸塩(Ca2P2O7)の形成を引き起こす。α−ピロリン酸ニカルシウムの結晶化は、リン酸三カルシウムの結晶化を僅かに上回る690℃で2番目のピークを生じる(図4、ラベル4)。ピロリン酸塩:TCPの比は、化学量論に従う。ピロリン酸塩の微小量が化学量論的試料(Ca/P=1.5)中に存在するが、これらは僅かなカルシウム過剰(+1at%Ca)と共に完全に消える。高い表面積材料上の吸着水ゆえに、全ての試料に関して熱重量測定法(TG)により520℃未満で重量の変化が検出された。湿式相化学により製造されたリン酸カルシウムとは異なり、フレームで製造されたCa/Pセラミックスの重量損失は4%を越えなかった。Ca/P=1.67試料は600℃以上で結晶化して(図5、上)、ヒドロキシアパタイト(XRDパターン、図8)になる。更なる相の転移または分解は1250℃まで検出されなかった。2番目の重量損失(2%)は、500℃と950℃の間で生じた(図5、上)。この重量損失は、CO2の放出と関連し(図5、下)、アパタイト内のカーボネートの分解に既に起因していた26,27。カーボネートの存在は、フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトル28,29では1490cm-1〜1420cm-1の間と870cm-1周辺で吸収ピークとして現れる(図6)。製造したままのCa/P=1.5試料は、これらのカーボネート吸収を示さない。1060cm-1と580cm-1の周辺のホスフェートのまとまった広い吸収バンドは、製造後の材料の非晶質構造を立証するものである(図6)。明らかな吸収ピークは、結晶化の後に得られ、かつCa/P=1.67のヒドロキシアパタイト30と+1at%Caのα’−TCP31に相応する。弱い水吸収バンドは、様々な強さで3400cm-1と1660cm-1の周辺で見られる。残りのカーボネートにより、結晶化したヒドロキシアパタイトは、1550cm-1と1400cm-1の間でマイナーな吸収バンドを示す28,29。TG曲線からは、カーボネート含有量が計算でき、6.6質量%のCaCO3であることが分かり、これはヒトの骨のカーボネート含有量(3〜8質量%)に類似している32,33。カーボネートは、ヒドロキシアパタイトの溶解度を上げ、結果として生分解性を向上させる9,34,35。
【0068】
生体材料中のピロリン酸カルシウムのエビデンスは慣例の方法によりFTIR分光分析により行われる。DTA/XRD測定値からのCa2P2O7の存在を示す900℃でか焼した試料のスペクトル(図7)は、材料の高い結晶度を強調する極めて鋭いピークを表している。1215cm-1〜1140cm-1の範囲内のピークグループと727cm-1と496cm-1での2個の明らかなピークは、試料+2.5at%Pで最もよく見られ、β−ピロリン酸カルシウム(β−Ca2P2O7)の吸収バンドに相応しており、文献36-38と一致している。これらのバンドに関する連続的な吸収の減少は、リン含有量の減少により見てとれる。DTA測定値と一致して、試料中に存在するピロリン酸塩は前駆体中の過剰のリンによって測定できる。その結果として、ピロリン酸カルシウムの形成の抑制または促進は、前駆体中のCa/P比を変化させることにより達成できる。DTAとFTIRにより、+1at%Ca試料中にリン酸カルシウムは検出されなかったのに対して、赤外線スペクトルはβ−TCPのうちの1つと良く適合した31,39。
【0069】
特殊な生成物の形成は、Ca/P比ならびにか焼温度に依存する(図10と11参照)。殆ど純粋なα−リン酸カルシウムは1.5を僅かに上回るが1.55未満のCa/P比で、および700℃での30分間のか焼で得られる(図10)。殆ど純粋なヒドロキシアパタイトは、約1.67のCa/P比で、および700℃での30分間のか焼で得られる(図10)。殆ど純粋なβ−リン酸三カルシウムの製造に関しては、α−リン酸三カルシウムの製造の場合と同じCa/P比が選択できるが、か焼温度は900℃まで向上させる必要がある(図11)。
【0070】
【表2】
【0071】
市販品の参照例は、例えば:
− CalciResorb(Ceraver Osteal製)、FTIRとXRDにより特徴付けられる:TCP含有量>96質量%、4質量%未満のヒドロキシアパタイト。
組成:1.48<Ca/P<1.51。
− Biosorb(SBM S.A.)、TCP95質量%以上、
組成:1.49<Ca/P<1.51。
− Bioresorb(Oraltronics)、純粋な相(>95質量%TCP)。
【0072】
リン酸カルシウムの生体材料の用途は、ヒドロキシアパタイトとリン酸三カルシウムに限定されるわけではない。代替用リン酸三カルシウム材料についての近年の研究は、フッ化物置換ヒドロキシアパタイトに注目してきた。上記のように、フッ化物置換アパタイトは、本発明の方法により簡単に得られる。フルオロアパタイトとヒドロキシフルオロアパタイトをヒドロキシアパタイトから識別することは、FTIR分光分析により行える。700℃でか焼した後の3つのアパタイトのスペクトルは図9に示されている。フッ化物含有アパタイトは、動物の体内のカルシウム含有量に関して中立であるので、フルオロアパタイト用の代用として使用できるだけではなく、非毒性のフッ化物源として使用できる。
【0073】
オクタン酸マグネシウムのようなマグネシウム源を所望の量で(例えば、1at%)、リン酸三カルシウムを製造するための前駆体混合物に添加することにより、MgOリッチ相の分離のような相分離なしに相応にドーピングされたリン酸カルシウム多形相を製造することができる。従って、本発明の方法によりマグネシウムがドーピングされた純粋な相の金属塩、例えば非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウムまたはアパタイトを製造できる(図12と図13参照)。ナフタエン酸亜鉛またはオクタン酸亜鉛のような亜鉛源を使用しても似た結果が得られる(図14と図15参照)。
【0074】
カルシウムおよびホスフェートを有する塩に関して記載したように、他の金属塩も得ることができる。オクタン酸カルシウムのようなカルシウム源ならびに炭化水素のようなカーボネート源またはオクタン酸カルシウム自体を使用することにより、炭酸カルシウムが得られ(図16参照)、かつ上記のようなカルシウム源をスルフェート源、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)と一緒に使用することにより、硫酸カルシウムが得られる(図17参照)。
【0075】
実施例 粉末の製造
2−エチルヘキサン酸(purum., ≧98%、Fluka)中に溶解した酸化カルシウム(99.9%、Aldrich)と、リン酸トリブチル(puriss.,≧99%、Fluka)を前駆体として使用してリン酸カルシウム生体材料をフレーム溶射熱分解により製造した。Ca前駆体のカルシウム含有量をエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水塩(ref.)(≧99%、Fluka)と錯体形成することにより測定し、0.768molkg-1にした。1.5のカルシウム対リンのモル比(Ca/P)を有する親溶液(1試行あたり38ml)から出発して、相応量のカルシウム2−エチルヘキサノエートまたはリン酸トリブチルを添加することにより1.425≦Ca/P≦1.667の範囲内の種々の混合物が得られた。フッ素で半分(Ca10(PO4)6OHF)または完全に(Ca10(PO4)6F2)置換されたヒドロキシアパタイト、トリフルオロ酢酸(>99%、Riedel deHaen)をCa/P=1.67のモル比を有する前駆体と混合した。全部の実験を通して、キシレン(96%、Riedel deHaen)を添加することにより前駆体溶液の濃度を一定(0.667mol /L)に保持した。キャピラリー(直径0.4mm)を通して、液体混合物をメタン/酸素フレームに5ml/分の速度で供給した。酸素(5L/分、99.8%、Pan Gas)を使用してキャピラリーを出る液体を分散させた。キャピラリーの先端(1.5バール)での圧力降下をノズルのオリフィス間隙の範囲を調節することにより一定に保持した。同心状のシンター金属リング(図1A、1B参照)を通してシースガス(酸素、230L /h、99.8%、Pan Gas)を加えることにより安定した燃焼が達成された。校正したマスフローコントローラー(Bronkhorst)を使用して、全てのガス流をモニターした。形成されたままの粒子を、真空ポンプ(Vaccubrand)を用いて、フレームの上にマウントされたシリンダー上に設置されたガラス繊維フィルター(Whatmann GF/A, 直径15cm)上で回収した。予熱した実験室用加熱炉(Thermolyne Type 48000)中で熱処理(規定温度で30分間)を行い、続いて周囲条件にて空気中でクエンチングした。
【0076】
粉末のキャラクタリゼーション
ブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer-Emmett-Teller:BET)法を使用して77Kで窒素吸着によりTrister(Micromeritics Instruments)上で粉末の比表面積を分析した。全ての試料を150℃で1時間脱気した。X線回折分光法(XRD)データを20゜〜40゜で、0.12゜のステップサイズ、かつ2.4゜/分のスキャンスピードで周囲条件にてBurker D 8 Advance 回折計で収集した。フーリエ変換赤外分光(FTIR)分析のために、200mg KBr(≧99.5%、Fluka)のペレットと0.5〜0.7mg試料を製造し、かつ4cm-1解像度でパーキンエルマー社製Spectrum BX(4スキャン)にて実験(400cm-1<λ<4000 cm-1)する前に、乾燥炉(VT 6025, Gerber Instruments)中、80℃/<10mbarで少なくとも8時間脱水した。レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)により元素分析を行った。試料をプレートに圧入し、エキシマレーザー(Lambda Phisyk Compex 110 I; ArF, 193nm、パルスエネルギー150mJ、周波数10Hz )で照射した。気化した材料をヘリウム流によりICP質量分析計(Perkin Elmer Elan 6100)中に運び、カルシウムとリンについて分析した。内部標準として、フルオロアパタイト(Durago)を使用した。透過電子顕微鏡(TEM)写真をCM30ST(Philips, LaB6 cathode, 300 kVで操作、ポイント解像度〜2Å)で記録した。粒子を銅グリッド上に担持したカーボンホイル上で析出した。Leo 1530 Gemini(Zeiss)を用いて走査型電子顕微鏡(SEM)調査を行った。
【0077】
詳細な製造例
還流下に140℃まで加熱しながら、酸化カルシウム(Aldrich, >99%)111gを2−エチルヘキサン酸(Fluka, 99%)1980gと無水酢酸(Fluka, >99%)20ml中に溶解した。冷却後、透明な溶液を別の容器に移すことにより残った酢酸カルシウムを除去した。トルエンを加えた後、エチレンジアミンテトラアセテート二ナトリウム塩(Fluka, 99%)と指示薬としてのエリオクロムブラックT(Fluka, >95%)を用いる滴定により測定して0.768M溶液が得られた。
【0078】
上記の溶液0.685kg(室温で少なくとも3ヶ月は安定)を室温(298K)でリン酸トリブチル(Fluka, puriss, 99%)93.44gと混合し、トルエンを加えて全部で1リットルの体積にした。1回の試行では、この溶液38mlをトルエン2mlと混合しフレーム溶射した。このような前駆体溶液の燃焼エンタルピーは、25kJ/g以上であり、粘度は10mPas未満であった。
【0079】
5リットル/分の分散ガス(酸素、Pan Gas, >99.8%)流を用いて、本明細書で記載された全ての材料を5ml/分の液体流量で製造した。
【0080】
本発明の方法により得られる全ての製品に多くの用途(例えば、触媒担体として、分子篩いとして、ポリマー用充填剤として、および/または紫外線安定剤として)がある一方で、ヒトおよびヒト以外の動物、特にホ乳類で天然に存在するため、上記のようなリン酸三カルシウムは例えば以下のような用途に相当に有利である:
− 歯科および医学的用途において、単独で、または有利には生体高分子のような他の物質と一緒に用いる。このような用途は、骨セメントおよび/またはインプラント用の溶解性材料として、インプラントコーティングとして、骨欠損または歯周欠損症の修復において、骨空隙部充填剤などとしての用途を含む。
− 練り歯磨きへの添加剤として、例えば、フッ化物源としておよび/または研磨補助剤として、
− 食料、例えば、チューイングガム、お菓子、食卓塩中のフッ化物源として、
− 生分解性材料または生体溶解性材料中の分解活性化剤として。
【0081】
インプラントと骨セメントのような医学的用途では、本発明により製造される製品は好ましい。それというのも、これが高純度で容易に得られるからであり、更に出発材料として使用されるエーロゲルが極めて軽く、かつオープンな構造であるため、焼結して所望の浸透相(連続孔)を有する製品に形成できるからである。少量の水と組合わさって、僅かな焼結と減少した体積損失は、通常製造される粉末と比べて、最大の連続多孔度の程度を確実にする。本発明の方法により製造される材料の他の利点は、例えば、バリウムおよび/またはガドリニウムでドーピングして溶解性材料の分解をX線画像または核磁気共鳴画像のような非侵襲的方法によりコントロールできる点である。
【0082】
練り歯磨きへの成分として、特にフルオロアパタイトが有利である。練り歯磨き中で従来使用されていたフッ化物源をフルオロアパタイトと交換できるほど、アパタイト中でのヒドロキシドとフッ化物の交換は極めて速いことが知られている。しかし、フルオロアパタイトが"カルシウムに中立"であるので、すなわち、身体のカルシウム含有量、特に歯と骨に影響を与えないので、他のフッ化物源よりもずっと高い量で加えてもその量は危険ではなく、同時に例えばプラーク除去を改善する研磨助剤としてはたらく。
【0083】
フルオロアパタイトの上記の利点は、食料に関しても当てはまる。従来利用可能なフッ化物源では、食卓塩や水のようなヒトが摂取できる最大量が推定できる程度の極めて特異的な食料だけがフッ化物リッチであり得た。大量でさえも非毒性である事と、体内アパタイトのフッ化物欠損症を専ら補償するそのフッ化物放出特性を考慮して、フルオロアパタイトを使用することにより、例えば、チューインガム、キャンディー、お菓子だけではなく、既に従来のフッ化物リッチの食卓塩および飲料水のような多くの食料を補足できる。日中の歯磨きの際に殆どが消費されてしまうチューインガム、キャンディー、お菓子(スナック、ケーキ、チョコレートなどを含める)および塩味スナック、ヨーグルトならびにその他のような食料の補足はおそらく不可能であるかもしれないが、歯科衛生を考慮すると望ましい。
【0084】
生分解、例えば生分解性ポリマー材料に必要な微生物は、カルシウムおよびホスフェートのような特異的イオンを大量に必要とする。本発明の製法により、大量のナノ粒子のカルシウムとホスフェートを有する化合物が得られるだけではなく、溶解度に関して適合できるドープ材料(例えば、アパタイト中のCO2により)、更にカルシウム以外の所望の金属の内容物も得られる。
【0085】
本発明の製品は、一般に分離せず、かつ流動性/注型適性を改善する。従って、これらはDegussaの製品AEROSIL(R)と類似した用途分野を有する。
【0086】
本発明の製品は、例えば食卓塩の注型適性を改善するために使用でき、また練り歯磨きまたは製造工程において固形成分の流動性を改善するために使用することもできる。例えば、ポリマー製造における添加剤またはスナック製造などにおけるスパイス混合物として使用できる。他の用途としては、生分解性プラスチック中だけではなく、一般のプラスチック中でのレオロジーまたはチキソトロピー改善剤、機械的安定性として、紫外線抵抗性として、または他の機能改善添加剤、混合剤または充填剤が挙げられる。
【0087】
適切にドーピングされている場合には(例えば、銀イオンを材料に添加することにより)、本発明の製品は、抗菌特性を提供することもでき、抗菌性を備えたポリマーまたはポリマーを有する製品、例えば、コーティング、塗料、接着剤などに適切なものになる。
【0088】
本発明の有利な実施態様を表し、記載したが、本発明はこれに限定されることなく、以下の請求項の範囲内で様々に盛り込まれ、かつ施行されることは明確に理解されるようになる。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1A】図1Aは、2相ノズルバーナーのフレームを表す図である。
【図1B】図1Bは、フレームの図式的描写を表す図である。
【図2A】図2Aは、製造したまま(すなわち焼結前)のリン酸三カルシウムの写真を表す図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示されているような製造したままの材料を熱処理することによる比表面積の減少を示す図である。
【図3】図3は、700℃で焼結した後(上の2個の写真)と900℃で焼結した後(下の2個の写真)のリン酸カルシウム(Ca/P=1.5)の透過電子顕微鏡写真(左の2個の写真)と走査型電子顕微鏡画像(右の2個の写真)を表す図である。
【図4】図4は、室温から1320℃の温度範囲内および10℃/分の加熱率で、種々のPとCaの過剰を有するCa/P=1.5試料の示差熱分析(DTA)データ(左側)と、特異的な温度で熱処理した後の幾つかのCa/P試料のX線回折パターン(右側)を示す図である。
【図5】図5は、Ca/P=1.67試料の熱重量分析(TG、上のグラフ)と、試料の結晶化を示す1本の発熱ピークを有する相応の示差走査熱分析の痕跡(DTA、上のグラフ)を示す図である。
【図6】図6は、製造したままと、700℃で処理した後の種々のCa/P比を有する試料のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示す図である。
【図7】図7は、900℃で30分間か焼した後の種々のCa/P比を有する試料のFTIRスペクトルを示す図である。
【図8】図8は、製造したままの幾つかのアパタイトを700℃で温度処理した後のものと比較したXRDパターンを示す図である。
【図9】図9は、700℃でか焼した後のヒドロキシアパタイト、ヒドロキシフルオロアパタイト、フルオロアパタイトのFTIRスペクトルを比較したものを表す図である。
【図10】図10は、700℃で30分間か焼した後のCa/P比に依存した種々のリン酸カルシウムの形成を示す図である。
【図11】図11は、900℃で30分間か焼した後のCa/P比に依存した種々のリン酸カルシウムの形成を示す図である。
【図12】図12は、カルシウムに対してMgを1原子%含有しているマグネシウムドープリン酸三カルシウムのXRDパターンを表す図である。
【図13】図13は、カルシウムに対してMgを1原子%含有しているマグネシウムドープアパタイトのXRDパターンを表す図である。
【図14】図14は、カルシウムに対してZnを1原子%含有している亜鉛ドープリン酸三カルシウムのXRDパターンを表す図である。
【図15】図15は、カルシウムに対してZnを1原子%含有している亜鉛ドープアパタイトのXRDパターンを表す図である。
【図16】図16は、フレーム溶射合成により製造された炭酸カルシウムナノ粒子が、酸化カルシウムの不純物を少し有する炭酸カルシウムに相応することを示す図である。
【図17】図17は、オクタン酸カルシウムとジメチルスルホキシド(DMSO)をフレーム溶射バーナーに供給することにより得られる硬セッコウ(硫酸カルシウム)ナノ粒子のXRDを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本明細書は、微細金属塩粒子ならびにフレーム溶射熱分解(flame spray pyrolysis)による前記金属塩の製法、特に粒子含有のカルシウムとホスフェートに関する。
【0002】
技術背景
フレーム溶射熱分解13は、ナノ粒子、とりわけ典型金属と遷移金属41を含有している酸化物の製造に適切な方法として最近確立された。これは、触媒製造用の酸化物ナノ粒子のスケーラブルなプロセスへと急速に発展し、かつ工業規模のフレームエアロゾル合成は今日ではメガトン量のカーボン、シリカおよびチタニアを製造するようになった。実験的に、フレーム溶射反応器は、調節可能な狭いオリフィスにより囲まれたキャピラリーから成っている(図1参照)。前駆体の液体は、先端で分散され、結果として明確に規定されたスプレーになる。周囲のメタン/酸素支持フレームは、スプレーを点火し、フレームは前駆体を相応の材料に変換する。
【0003】
多くの用途でナノ粒子材料が望まれている。このような材料は、リン酸三カルシウムのようなリン酸カルシウムから成るが、アパタイトからも成る。リン酸カルシウムのような生体材料は、臨床医学において強い関心を引きつけた。ヒドロキシアパタイト(HApまたはOHAp、Ca10(PO4)6(OH)2)もリン酸三カルシウム(TCP、Ca3(PO4)2)も、優れた生体適合性と骨伝導性1,2を示す。これらは骨欠損症または歯周欠損症、金属インプラントのコーティングならびに骨空隙部充填剤に広く使用されている。しかし、伝統的な方法(沈殿、ゾル−ゲル合成、熱水法または固相反応)1,3-5は、使用可能な材料と形態学の限界の範囲に悩まされている。湿式相の製造は、洗浄や乾燥といった一般に時間とコストのかかる後処理を必要とする。固相反応は、長い焼結が関わるので、低い比表面積の粉末を生じる。むしろ高密度材料は、微孔質の欠如を示し、体液への接触を減らしてしまいin vivoでの吸収を妨げる。
【0004】
近年報告された製造法は、プラズマ溶射6とパルスレーザー析出7,8から成る。これらは、インプラント表面において有利なコーティングを生じた。さらに、非晶質リン酸カルシウムは結果的に改善された吸収特性9-11を示し、自己硬化型セメント12用に見込みのある材料であり、これらを最も価値のあるターゲットにした。
【0005】
しかし、これら全ての方法は幾つかの欠点を有する。これらは、分離できないか、または相当な努力を尽くす場合にしか分離できない混合物を導き、かつ/または密度の高すぎる材料を導き、かつ/またはこれらの方法はバルク合成用に不適合であり、かつ/または大量生産には有効ではない。従って、純粋な材料を製造可能にする方法、有利には大量生産には、なお改善された製法が必要であり、このような方法により改善された材料が得られるようになる。
【0006】
本発明の開示
本発明の一般的な対象は、金属塩(ここで、アニオン基はホスフェート、ボレート、シリケート、スルフェート、カーボネート、ヒドロキシド、フッ化物およびこれらの混合物から選択される)、特にナノ粒子金属塩の製法、有利には金属が主にIIとIIIの酸化状態、場合によりIまたはIVの酸化状態を生じるI、II、III、IV族金属、第三遷移金属、ランタノイド(希土類金属)から選択される金属塩の製法ならびに上記金属の混合物の製法の提供である。上記の全ての金属は、通常I〜IVの酸化状態を有するので、これらは更に"I〜IV族の金属"という用語によってまとめて考えられる。その他の金属は、塩の種類と適用分野に応じて存在することができる。ある場合に、ドープ塩または種々の塩の混合物が有利である。
【0007】
本発明の他の対象は、ナノ粒子、場合により 浸透性金属塩を提供することであった。
【0008】
また本発明の他の対象は、このような金属塩の使用を提供することであった。
【0009】
前記および更なる本発明の対象は、以下の説明が進むにつれて容易に明らかになると思われるが、本発明の方法は、1つのカルボキシレート基あたり、少なくとも3個の平均炭素数(mean carbon value)を有する金属カルボン酸塩である少なくとも1つの金属源と、少なくとも1つのアニオン源との混合物を形成して液体粒子にし、前記液体粒子を高温環境で酸化することを特徴とする。
【0010】
有利な金属塩では、金属はカルシウムを有する。より有利には、少なくとも80原子%のカルシウム(全てのカチオンの合計は100原子%である)、有利には少なくとも90%、最も有利には少なくとも95%の高カルシウ含有量を有する金属塩である。
【0011】
カチオン金属の合計は、さらにI〜IV族の金属を有していてもよく、有利にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびバリウム、希土類金属、特にガドリニウムならびに前記金属の2種以上の混合物から成るグループから選択される金属を有する。
【0012】
アニオン基の合計は、有利にはホスフェート、スルフェート、ボレート、ヒドロキシド、カーボネート、フッ化物ならびにこれらの混合物から選択されるアニオン基を、理論的に計算した必要量のアニオンの少なくとも80mol%の量で有し、塩内の電子の中性を仮定するのであれば、有利には少なくとも90%、より有利には少なくとも95%有する。塩内の全ての負の電荷の98%以上、むしろ99%が上記のアニオンのうちの1つにより置換されている純粋な材料が最も有利である。より有利な化合物中では、アニオン基の少なくとも一部がホスフェートであり、これにより3:1(例えば、Na3PO4)から1:1(例えば、AlPO4、エナメル)の金属:ホスフェートのモル比を有する化合物が有利である。
【0013】
本発明の方法は、特に非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、アパタイトならびにこれらの混合物から成るグループから選択される金属塩を製造するために適切である。
【0014】
上記の方法により製造可能な有利な高純度のアパタイトは、次の式
Ca10(PO4)6(OH)2xF2y(CO3)z[式中、x、yおよびzは、それぞれ0〜1の範囲内であり、x+y+zの合計は1である]を有する。
【0015】
zは0〜1で変化可能であるが、用途に応じて特異的な範囲が有利である。例えば、医学的用途では、カーボネートが有利であることができる。アパタイト中のカーボネート含有量は、熱重量分析により測定して、例えば、3〜8質量%のカーボネートであることができる。CO2の検出は、質量分析計と組み合わせた示差走査熱量計により行うことができる。
【0016】
本発明の方法は、相の純粋な非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムまたはリン酸三カルシウム欠乏またはリン酸三カルシウム不含のアパタイトのような、極めて純粋な生成物の製造に適切であることが分かった。形成された化合物の純度は、少なくとも96質量%、有利には少なくとも98質量%、最も有利には少なくとも99質量%の範囲内で達成できる。高純度で得られる有利な生成物は、非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトまたはフルオロアパタイトまたはヒドロキシフルオロアパタイトを有する。
【0017】
上記のように、金属源は1つのカルボキシレート基あたり少なくとも3個、有利には少なくとも4個、より有利には少なくとも5個、最も有利には5〜8個の平均炭素数を有する金属カルボン酸塩である。有利には、金属カルボン酸塩は、C1〜C18−カルボキシレートならびにこれらの混合物、より有利にはC4〜C12−カルボキシレートならびにこれらの混合物、より有利にはC5〜C8−カルボキシレートならびにこれらの混合物から成るグループから、特に2−エチルヘキサン酸塩のようなオクトエートから選択される。
【0018】
金属カルボン酸塩と1つ以上のアニオン源、すなわちホスフェートおよび/または1つ以上の他のアニオンまたはアニオン前駆体を有する液体粒子は、フレーム中で酸化されるのが有利である。
【0019】
液体粒子に形成される前に金属カルボン酸塩は最大で100mPas、有利には最大で40mPas、より有利には最大で20mPasの粘度を有する。金属カルボン酸塩がこのような粘度を有さない場合には、加熱により、および/または少なくとも1つの金属カルボン酸塩と少なくとも1つの粘度降下溶剤の混合を施すことにより、このような粘度を得てもよい。
【0020】
適切な粘度降下溶剤は、1つ以上の酸を有していてもよい。粘度降下溶剤は1つ以上の酸から成り、大抵は全体の酸の50%w/w未満を使用することもできるが、場合によっては酸は必要でも望ましくもない。有利な酸はC1〜C10−カルボン酸である。
【0021】
溶剤は、少なくとも1つの低分子量および/または低粘度の非極性溶剤、特に芳香族または脂肪族、非置換、線状もしくは分枝状炭化水素を有してもよく、有利には溶剤はトルエン、キシレン、低級脂肪族炭化水素ならびにこれらの混合物から成るグループから選択される。
【0022】
アニオン源は、先に定義した溶剤中での十分な溶解度を考慮して選択される。適切なアニオン源は、次のものを有する:
− 少なくとも13kJ/g、有利には少なくとも22.5kJ/g、最も有利には少なくとも25.5kJ/gの燃焼エンタルピーを有する溶剤または溶剤混合物に可溶性の無機リン化合物および/または有機リン化合物から選択されるホスフェート源、特にリン酸および/またはリン酸の有機エステルおよび/またはホスフィン、特に溶剤を構成する、または上記の特性を有する溶剤混合物を導くリン化合物、および/または
− 有機化合物のフッ化物誘導体であるフッ化物源、前記フッ化物誘導体は先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にトリフルオロ酢酸に可溶性である、および/または
− 先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にテトラエチルシリケートに可溶性の有機シリケートおよび/または有機ケイ素混合物から選択されるシリケート源、および/または
− 有機硫黄含有化合物および/またはスルホン酸から選択されるスルフェート源、前記スルフェート源は先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶性である、
− 炭化水素、カルボン酸、アルコール、金属カルボン酸塩およびこれらの混合物のような有機炭素源から選択されるカーボネート源。
【0023】
金属炭酸塩を製造する場合には、金属源として使用される金属カルボン酸塩は同時にアニオン源としてはたらくことができ、これによりクールダウンプロセス(特異的温度で排ガスを含む粒子の滞留時間)が純度に関わってくる。
【0024】
フレーム酸化を行うための適切な装置は、スプレーバーナー42,43、または特にオイルバーナーである。
【0025】
酸化は少なくとも600℃、有利には少なくとも800℃、より有利には少なくとも1000℃、最も有利には1200〜2600℃の範囲内、特に約1600℃で行うのが有利である。
【0026】
金属カルボン酸塩を製造するための適切な方法は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物、例えば、塩化物または臭化物、または金属低級アルキルオキシド、特にC1〜C4−アルキルオキシドから出発する。良好な結果を出すために、金属カルボン酸塩または金属カルボン酸塩を有する溶液のエンタルピーは、少なくとも13kJ/g、有利には少なくとも18kJ/g、より有利には少なくとも22.5kJ/g、最も有利には少なくとも25.5kJ/gであるべきである。
【0027】
溶液が金属カルボン酸塩を1リットル当たり少なくとも0.15molの金属に相応する量で、かつアニオン源を1リットル当たり少なくとも0.05molのアニオン基に相応する量で含有する場合には、高い生産率を達成することができる。しかし、10倍以上まで濃縮された溶液を作ることもでき、これにより約0.8〜2molの金属濃度および相応する量のアニオン基/アニオン前駆体が有利である。金属源の金属塩への変換は殆ど損失がないので、出発材料の溶解度、溶射すべき溶液の粘度およびノズル/バーナーの容量にだけ依存して高生産率が得られる。3金属原子/イオンあたり少なくとも1つのアニオン基を添加することにより、金属酸化物ではなく、本発明の金属塩への変換が達成される。
【0028】
パイロット規模の製造から工業規模(kgからトンの量)の合成にナノ粒子の製造をもたらすために、幾つかの付加的な問題に直面することになる。最も顕著なものは、十分な高生産率を可能にする容易に使用可能な金属前駆体の選択である。本発明は、ナノ粒子の製造を生成物とアニオン源ならびに場合により特異的溶剤を含有する特殊金属に結びつける。出発材料の特異的選択の他に、生産率はバーナーによっても影響される。WO 02/061163に記載されているような多数の配列を使用することは、メンテナンス、ノズル目詰まり、スペース、再現性などの問題を必然的に伴う。従って、少ないバーナー、有利には一般のオイルバーナーを使用して同じ量の粉末を製造するのが有利である。100kgオイル/時を十分に上回るオイルバーナーが利用可能であり、ひいては高生産率に極めて適している。本発明の範囲内で明らかになるであろうが、このようなバーナーは1時間当たり8kgのCa3(PO4)2または9kgのヒドロキシアパタイト粒子の量を達成することができる(供給100kg/時の場合)。それぞれ約12または13kgのスケールアップ量が予測される。本発明に記載されている液体を相応の金属塩に変換するのに適している市販のオイルバーナーは、幾つかを挙げるにすぎないが、Vescal AG, Heizsysteme, Industries-trasse 461, CH-4703 KestenholzからOEN-151LEVまたはOEN-143LEVまたはOEN-331LZ〜OEN-334LZの名称で入手可能である。
【0029】
本発明の方法は、亜当量の金属塩の製造にも適用できる。このような製造では、フレームは完全燃焼または反応体の変換にとって不十分な酸素を有する。従って、亜当量とは例えば金属が様々な酸化状態で存在することを意味する。
【0030】
製造したままの金属塩は、幾つかのカーボネートを有していてもよい(製造したままとは、高温製造の直後の、特にバーナー/フレームの直後の生成物を示す)。殆どまたは全くカーボネートが必要ではない場合には、熱処理を場合により湿度の存在で行ってもよい。アパタイトの場合には、このような処理はCO2含有量をゼロに近づけることができる。好ましくは、このような処理は500℃〜900℃の温度で、かつ0.1〜100mbarの水分圧で行われる。
【0031】
CO2除去の状況に応じて、この工程は同時に焼き戻し/焼結手順としてはたらくか、または別々の焼き戻し/焼結手順が施されてもよい。このような温度処理により、結晶構造が影響され、かつ/または特殊な性質を有する浸透生成物が得られる。適切な焼結法は、以下に記載されている分析法をリン酸カルシウム(Ca/P)試料と関連させて適用することにより見いだすことができる。このような方法は、水銀ポロシメトリー、Rigbyら(2004)40に記載されているような、比表面積と孔径を測定するための窒素吸着(BET)および孔構造分析を含む。さらなる方法は、形態学的試験用の透過電子顕微鏡(TEM)と走査型電子顕微鏡(SEM)、生成物のキャラクタリゼーション用のフーリエ変換赤外分光(FTIR)とX線回折ならびに温度依存性変化をモニタリングするための示差熱分析(DTA)である。
【0032】
本発明の更なる点は、金属塩、特に上記の方法により得られる金属塩である。
【0033】
本発明の金属塩は次の特徴を有する:
5〜200nmの範囲内、有利には約20nmの製造したままのBET相当直径を有する。特殊な場合には、特に相応する塩の融点が1000℃を下回る場合には20nm以上の直径、例えば50nmまたは100nmが得られる。
【0034】
さらに、本発明の塩は1分間当たりに10℃の加熱率で900℃まで加熱する場合に水を7.5質量%以上放出しないことに特徴付けられる。有利には、これらの塩は5質量%未満の水を放出し、最も有利には4.5質量%未満の水を放出する。
【0035】
本発明の塩は、1分間当たりに10℃の加熱率で500℃まで加熱する場合、有利には400℃まで加熱する場合、最も有利には350℃まで加熱する場合に通常全ての水の90質量%以上を放出する。水の放出曲線(例えば図5参照)は、水が表面上に吸着されて存在しているだけであるという仮定を支持する。
【0036】
水放出の基準は、本発明の材料を湿式相材料から著しく区別する。このような材料は、数百℃の広い温度範囲でゆっくりと水を放出する。湿式相生成物の放出曲線は、水がより強く保持されるように結晶格子内に組み込まれているという仮定を支持する。
【0037】
最後の製造法により、種々の形態学と嵩密度(DIN ISO 697(1984-01)により測定)を有する焼結生成物が得られる。例えば、湿式相で製造された非晶質リン酸三カルシウムの嵩密度は、大抵は500kg/m3以上であるのに対して、本発明の方法により製造された生成物は、100〜300kg/m3の範囲内である。高温固相反応で従来技術により製造されたα−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムの嵩密度は、1000〜2000kg/m3の範囲内であるのに対して、本発明の方法により製造された各生成物は、β−リン酸三カルシウムでは800kg/m3未満の嵩密度を有し、α−リン酸三カルシウムでは500kg/m3未満の嵩密度を有する。
【0038】
従来技術のα−リン酸三カルシウムの比表面積(BET−法により−196℃で窒素吸着法により測定)は、2m2/g未満であるのに対して、本発明により製造されたα−リン酸三カルシウムは3m2/g以上、より有利には5m2/g以上、さらに有利には8m2/g以上である。従来技術のβ−リン酸三カルシウムの比表面積は、0.8m2/g未満であるのに対して、本発明のβ−リン酸三カルシウムは、1m2/g以上、大抵は1.5m2/g以上、さらに有利には2m2/g以上である。
【0039】
本発明の有利な金属塩は、生体材料である。
【0040】
このような金属塩は、医学的用途において、例えば、骨セメントおよび/またはインプラント用の溶解性材料として、練り歯磨きへの添加剤として、例えば、フッ化物源としておよび/または研磨補助剤として、食料、例えば、チューイングガム、お菓子、食卓塩中のフッ化物源として、触媒担体として、分子篩いとして、ポリマー用充填剤として、紫外線安定剤としておよび/または生分解性材料または生体溶解性材料中の分解活性化剤として使用することができる。
【0041】
図の簡単な説明
以下の詳細な説明に考察を提供することにより、本発明は更によく理解され、上記に挙げた以外の対象が明らかになるであろう。このような説明は添付した図に言及する:
図1Aは、2相ノズルバーナーのフレームを示し、ここで液体含有金属のスプレーが分散され、点火される。燃焼スプレーは、反応器それ自体である。粒子がこの熱ガスから形成され、バーナーの頂点で回収できる。
【0042】
図1Bは、材料流を示すフレームの図式的描写である。
【0043】
図2Aは、製造したまま(すなわち焼結前)のリン酸三カルシウムの写真である。
【0044】
図2Bは、図2Aに示されているような製造したままの材料を熱処理することによる比表面積の減少を示している。
【0045】
図3は、700℃で焼結した後(上の2個の写真)と900℃で焼結した後(下の2個の写真)のリン酸カルシウム(Ca/P=1.5)の透過電子顕微鏡写真(左の2個の写真)と走査型電子顕微鏡画像(右の2個の写真)を示している。
【0046】
図4は、室温から1320℃の温度範囲内および10℃/分の加熱率で、種々のPとCaの過剰を有するCa/P=1.5試料の示差熱分析(DTA)データ(左側)と、特異的な温度で熱処理した後の幾つかのCa/P試料のX線回折パターン(右側)を示している。
【0047】
図5は、Ca/P=1.67試料の熱重量分析(TG、上のグラフ)と、試料の結晶化を示す1本の発熱ピークを有する相応の示差走査熱分析の痕跡(DTA、上のグラフ)を示す。下のグラフは、TG/DTA分析と組み合わせた質量分析計により同時に測定した二酸化炭素(CO2)と水(H2O)の発生を示している。この装置は、結晶化、ガス放出および重量損失の同時検出を可能にする。
【0048】
図6は、製造したままと、700℃で処理した後の種々のCa/P比を有する試料のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示している。
【0049】
図7は、900℃で30分間か焼した後の種々のCa/P比を有する試料のFTIRスペクトルを示している。
【0050】
図8は、製造したままの幾つかのアパタイトを700℃で温度処理した後のものと比較したXRDパターンを示している。
【0051】
図9は、700℃でか焼した後のヒドロキシアパタイト、ヒドロキシフルオロアパタイトおよびフルオロアパタイトのFTIRスペクトルを比較している。
【0052】
図10は、700℃で30分間か焼した後のCa/P比に依存した種々のリン酸カルシウムの形成を示している。
【0053】
図11は、900℃で30分間か焼した後のCa/P比に依存した種々のリン酸カルシウムの形成を示している。
【0054】
図12は、カルシウムに対してMgを1原子%含有しているマグネシウムドープリン酸三カルシウム内では分離相が無いことが目視でき、かつXRDパターンはα−TCP(700℃でか焼後)またはβ−TCP(900℃でか焼後)に相応していることを示している。このことは、結晶格子内でのMgの良好な分散と組込みを確証している。
【0055】
図13は、カルシウムに対してMgを1原子%含有しているマグネシウムドープアパタイト内では分離相が無いことが目視でき、かつXRDパターンがヒドロキシルアパタイト(700℃でか焼後)に相応し、安定なままである(900℃でか焼後)ことを示している。このことは、結晶格子内でのMgの良好な分散と組込みを確証している。
【0056】
図14は、カルシウムに対してZnを1原子%含有している亜鉛ドープリン酸三カルシウム内では分離相が無いことが目視でき、かつXRDパターンは、α−TCP(700℃でか焼後)またはβ−TCP(900℃でか焼後)に相応していることを示している。このことは、結晶格子内でのZnの良好な分散と組込みを確証している。
【0057】
図15は、カルシウムに対してZnを1原子%含有している亜鉛ドープアパタイト内では分離相が無いことが目視でき、かつXRDパターンがヒドロキシルアパタイト(700℃でか焼後)に相応し、安定なままである(900℃でか焼後)ことを示している。このことは、結晶格子内でのZnの良好な分散と組込みを確証している。
【0058】
図16は、フレーム溶射合成により製造された炭酸カルシウムナノ粒子のXRDパターンが、酸化カルシウムの不純物を少し有する炭酸カルシウムに相応することを示している。本発明のこれらの粒子は、フレーム溶射バーナー中でオクタン酸カルシウムオクテンから1工程で作られる。
【0059】
図17は、オクタン酸カルシウムとジメチルスルホキシド(DMSO)をフレーム溶射バーナーに供給することにより得られる硬セッコウ(硫酸カルシウム)ナノ粒子のXRDを示している。少量の酸化カルシウムが存在する。
【0060】
本発明の実行様式
リン酸カルシウム、特に生体材料として適切であるリン酸カルシウムに関して本発明を更に説明する。
【0061】
本発明の範囲内において、結果として生じる形態学、高純度および得られる高結晶相含有量が生体材料として適用可能であるので、フレーム合成が材料にとって最も応用のきくツールを与えることが分かった。さらに、ダイレクトな気相プロセスはカチオンとアニオン両方の容易な置換を可能にする。
【0062】
リン酸三カルシウム(Ca/P=1.5)および異なるアパタイト(Ca/P=1.67)の再現性のある製造は、通常の方法に課題を与える。本発明の方法により、正確に定義づけられた1.425〜1.67のカルシウム:リンのモル比(Ca/P)を有する材料が得られる。このような材料は、場合によりマグネシウム、亜鉛、バリウム、ガドリニウム、シリケート、スルフェートまたはフッ化物のような他のアニオンまたはカチオンでドーピングすることができる。過剰のカルシウムまたはリンを有するリン酸三カルシウム試料は、化学量論的試料(化学量論的試料Ca/P=1.5)に関して付加的な原子フラクションとは区別される。過剰のカルシウムを有する(Ca/P>1.5)リン酸三カルシウムは、例えば、"+2.5at%Ca"と表記され、過剰のリンを有する(Ca/P<1.5)リン酸三カルシウムは、例えば、"+2.5at%P"と表記される。Ca/P比と各at%の比較は、表1に示されている。
【0063】
【表1】
【0064】
所望の組成物、すなわちフルオロアパタイト(FAp)、ヒドロキシフルオロアパタイト(OHFAp/HFAp)および/またはいずれかのドーピングは、それぞれのアニオンまたはカチオンを初期溶液に混合することにより得られる。例えば、オクタン酸マグネシウム、ナフテン酸亜鉛、トリフルオロ酢酸またはこれらの混合物をカルシウムおよびホスフェート前駆体溶液に混合することにより、マグネシウムおよび/または亜鉛ドープ材料および/またはフルオロアパタイト(Ca10(PO4)6F2)またはヒドロキシフルオロアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)F)を1工程で製造することができる。ドーピングしたトリン酸カルシウムの他に、同じ方法によってカルシウム以外の他の金属の純粋な金属塩も得られる。同様に、ホスフェート以外のアニオンとの金属塩を作ることもできる。他の材料の例は、炭酸カルシウム(石灰岩)ナノ粒子または硬セッコウナノ粒子(CaSO4)であり、これらは実験のセクションで記載されている。
【0065】
直径10〜30nmの球状高凝集粒子(図2A)は、合成後に回収することができる。熱安定性と種々の結晶相の発生は、窒素吸着(BET)とX線回折(XRD)によりモニターできる。一般的に試料は90m2g-1(BET相当直径20nm)で開始し、600℃周辺で比表面積の急激な減少を生じ、強力なか焼と結晶化の開始を示している。僅かに過剰なリン(+1at%P)は、リン酸三カルシウム(Ca/P=1.5)の熱安定性に著しい影響を与えないので、ヒドロキシアパタイト(Ca/P=1.67)は900℃では非常に安定で、かつ15m2g-1を上回って維持される。半分(Ca10(PO4)6(OH)F)および全部(Ca10(PO4)6F2)が置換されたフルオロアパタイトは、非置換のヒドロキシアパタイトよりも焼結に対して耐性があった。
【0066】
In vivoでの生体材料の組織学的挙動は、形態学的および相の組成により決定できる。マクロ孔(直径>100μm)は、骨細胞のコロニー形成16の足場を提供することが見いだされ、従って、興味のある骨内植である17,18。ミクロ孔(直径<10μm)の含有量は、製法と温度および焼結の継続時間により与えられる。連続した微孔質は、体液循環を保証し、むしろ特定のバイオセラミックスで観測される骨誘導特性に重要であると考えられている19-24。700℃でのか焼後に本発明の方法により製造されたCa/P=1.5の電子顕微鏡画像(図3、写真aとb)は、材料が一緒に融合して、はっきりと目視可能な焼結ネックを形成していることを明らかにした。この焼結生成物は、約100nmの一次粒度を有する高い多孔率を保持する。900℃での焼結(図3、写真cとd)は、直径約0.5μmの相当に大きな一次粒子を生じている。連続したミクロ孔を有する極めて規則的な構造は、焼結生成物に優れた吸収特性を提供し、かつ更にin vivoでの骨形成の誘発を提供する。このような構造は、浸透相とも呼ばれている。
【0067】
製造したままのリン酸カルシウムは、非晶質のナノ粒子から成り、フレーム中で形成した後に速く冷却しても材料を結晶化させなかったことを示している。本発明の範囲内では、このような非晶質リン酸カルシウムを種々の温度で熱処理して高い選択性/純度で、選択された結晶相内で結晶化できることも見いだされた。製造したままの生成物のガラス質構造の存在は、示差熱分析により確認された。組み合わせた質量分析(DTA−MS)装置は、水と二酸化炭素の脱着の同時検出を可能にした。DTAとXRDパターンの組合せ(図4)は、結晶化と相転移の立証を可能にする。600℃周辺の発熱ピークは、非晶質材料の結晶化と相間している。500℃では非晶質の試料+1%atCaは結晶化して(図4、ラベル1)、メタ−安定性のα−TCP25になり、大抵はα’−TCPと称される(図4、ラベル2)。915℃では、α’−TCPは熱力学的に好ましいβ−TCPに変換される(図4、ラベル3)。1190℃では、β−TCPは変換されて高温型多形体のα−TCPに戻る。Ca3(PO4)2に過剰のリンを添加することは、化学量論的(Ca/P=1.5)ピロリン酸塩(Ca2P2O7)の形成を引き起こす。α−ピロリン酸ニカルシウムの結晶化は、リン酸三カルシウムの結晶化を僅かに上回る690℃で2番目のピークを生じる(図4、ラベル4)。ピロリン酸塩:TCPの比は、化学量論に従う。ピロリン酸塩の微小量が化学量論的試料(Ca/P=1.5)中に存在するが、これらは僅かなカルシウム過剰(+1at%Ca)と共に完全に消える。高い表面積材料上の吸着水ゆえに、全ての試料に関して熱重量測定法(TG)により520℃未満で重量の変化が検出された。湿式相化学により製造されたリン酸カルシウムとは異なり、フレームで製造されたCa/Pセラミックスの重量損失は4%を越えなかった。Ca/P=1.67試料は600℃以上で結晶化して(図5、上)、ヒドロキシアパタイト(XRDパターン、図8)になる。更なる相の転移または分解は1250℃まで検出されなかった。2番目の重量損失(2%)は、500℃と950℃の間で生じた(図5、上)。この重量損失は、CO2の放出と関連し(図5、下)、アパタイト内のカーボネートの分解に既に起因していた26,27。カーボネートの存在は、フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトル28,29では1490cm-1〜1420cm-1の間と870cm-1周辺で吸収ピークとして現れる(図6)。製造したままのCa/P=1.5試料は、これらのカーボネート吸収を示さない。1060cm-1と580cm-1の周辺のホスフェートのまとまった広い吸収バンドは、製造後の材料の非晶質構造を立証するものである(図6)。明らかな吸収ピークは、結晶化の後に得られ、かつCa/P=1.67のヒドロキシアパタイト30と+1at%Caのα’−TCP31に相応する。弱い水吸収バンドは、様々な強さで3400cm-1と1660cm-1の周辺で見られる。残りのカーボネートにより、結晶化したヒドロキシアパタイトは、1550cm-1と1400cm-1の間でマイナーな吸収バンドを示す28,29。TG曲線からは、カーボネート含有量が計算でき、6.6質量%のCaCO3であることが分かり、これはヒトの骨のカーボネート含有量(3〜8質量%)に類似している32,33。カーボネートは、ヒドロキシアパタイトの溶解度を上げ、結果として生分解性を向上させる9,34,35。
【0068】
生体材料中のピロリン酸カルシウムのエビデンスは慣例の方法によりFTIR分光分析により行われる。DTA/XRD測定値からのCa2P2O7の存在を示す900℃でか焼した試料のスペクトル(図7)は、材料の高い結晶度を強調する極めて鋭いピークを表している。1215cm-1〜1140cm-1の範囲内のピークグループと727cm-1と496cm-1での2個の明らかなピークは、試料+2.5at%Pで最もよく見られ、β−ピロリン酸カルシウム(β−Ca2P2O7)の吸収バンドに相応しており、文献36-38と一致している。これらのバンドに関する連続的な吸収の減少は、リン含有量の減少により見てとれる。DTA測定値と一致して、試料中に存在するピロリン酸塩は前駆体中の過剰のリンによって測定できる。その結果として、ピロリン酸カルシウムの形成の抑制または促進は、前駆体中のCa/P比を変化させることにより達成できる。DTAとFTIRにより、+1at%Ca試料中にリン酸カルシウムは検出されなかったのに対して、赤外線スペクトルはβ−TCPのうちの1つと良く適合した31,39。
【0069】
特殊な生成物の形成は、Ca/P比ならびにか焼温度に依存する(図10と11参照)。殆ど純粋なα−リン酸カルシウムは1.5を僅かに上回るが1.55未満のCa/P比で、および700℃での30分間のか焼で得られる(図10)。殆ど純粋なヒドロキシアパタイトは、約1.67のCa/P比で、および700℃での30分間のか焼で得られる(図10)。殆ど純粋なβ−リン酸三カルシウムの製造に関しては、α−リン酸三カルシウムの製造の場合と同じCa/P比が選択できるが、か焼温度は900℃まで向上させる必要がある(図11)。
【0070】
【表2】
【0071】
市販品の参照例は、例えば:
− CalciResorb(Ceraver Osteal製)、FTIRとXRDにより特徴付けられる:TCP含有量>96質量%、4質量%未満のヒドロキシアパタイト。
組成:1.48<Ca/P<1.51。
− Biosorb(SBM S.A.)、TCP95質量%以上、
組成:1.49<Ca/P<1.51。
− Bioresorb(Oraltronics)、純粋な相(>95質量%TCP)。
【0072】
リン酸カルシウムの生体材料の用途は、ヒドロキシアパタイトとリン酸三カルシウムに限定されるわけではない。代替用リン酸三カルシウム材料についての近年の研究は、フッ化物置換ヒドロキシアパタイトに注目してきた。上記のように、フッ化物置換アパタイトは、本発明の方法により簡単に得られる。フルオロアパタイトとヒドロキシフルオロアパタイトをヒドロキシアパタイトから識別することは、FTIR分光分析により行える。700℃でか焼した後の3つのアパタイトのスペクトルは図9に示されている。フッ化物含有アパタイトは、動物の体内のカルシウム含有量に関して中立であるので、フルオロアパタイト用の代用として使用できるだけではなく、非毒性のフッ化物源として使用できる。
【0073】
オクタン酸マグネシウムのようなマグネシウム源を所望の量で(例えば、1at%)、リン酸三カルシウムを製造するための前駆体混合物に添加することにより、MgOリッチ相の分離のような相分離なしに相応にドーピングされたリン酸カルシウム多形相を製造することができる。従って、本発明の方法によりマグネシウムがドーピングされた純粋な相の金属塩、例えば非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウムまたはアパタイトを製造できる(図12と図13参照)。ナフタエン酸亜鉛またはオクタン酸亜鉛のような亜鉛源を使用しても似た結果が得られる(図14と図15参照)。
【0074】
カルシウムおよびホスフェートを有する塩に関して記載したように、他の金属塩も得ることができる。オクタン酸カルシウムのようなカルシウム源ならびに炭化水素のようなカーボネート源またはオクタン酸カルシウム自体を使用することにより、炭酸カルシウムが得られ(図16参照)、かつ上記のようなカルシウム源をスルフェート源、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)と一緒に使用することにより、硫酸カルシウムが得られる(図17参照)。
【0075】
実施例 粉末の製造
2−エチルヘキサン酸(purum., ≧98%、Fluka)中に溶解した酸化カルシウム(99.9%、Aldrich)と、リン酸トリブチル(puriss.,≧99%、Fluka)を前駆体として使用してリン酸カルシウム生体材料をフレーム溶射熱分解により製造した。Ca前駆体のカルシウム含有量をエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水塩(ref.)(≧99%、Fluka)と錯体形成することにより測定し、0.768molkg-1にした。1.5のカルシウム対リンのモル比(Ca/P)を有する親溶液(1試行あたり38ml)から出発して、相応量のカルシウム2−エチルヘキサノエートまたはリン酸トリブチルを添加することにより1.425≦Ca/P≦1.667の範囲内の種々の混合物が得られた。フッ素で半分(Ca10(PO4)6OHF)または完全に(Ca10(PO4)6F2)置換されたヒドロキシアパタイト、トリフルオロ酢酸(>99%、Riedel deHaen)をCa/P=1.67のモル比を有する前駆体と混合した。全部の実験を通して、キシレン(96%、Riedel deHaen)を添加することにより前駆体溶液の濃度を一定(0.667mol /L)に保持した。キャピラリー(直径0.4mm)を通して、液体混合物をメタン/酸素フレームに5ml/分の速度で供給した。酸素(5L/分、99.8%、Pan Gas)を使用してキャピラリーを出る液体を分散させた。キャピラリーの先端(1.5バール)での圧力降下をノズルのオリフィス間隙の範囲を調節することにより一定に保持した。同心状のシンター金属リング(図1A、1B参照)を通してシースガス(酸素、230L /h、99.8%、Pan Gas)を加えることにより安定した燃焼が達成された。校正したマスフローコントローラー(Bronkhorst)を使用して、全てのガス流をモニターした。形成されたままの粒子を、真空ポンプ(Vaccubrand)を用いて、フレームの上にマウントされたシリンダー上に設置されたガラス繊維フィルター(Whatmann GF/A, 直径15cm)上で回収した。予熱した実験室用加熱炉(Thermolyne Type 48000)中で熱処理(規定温度で30分間)を行い、続いて周囲条件にて空気中でクエンチングした。
【0076】
粉末のキャラクタリゼーション
ブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer-Emmett-Teller:BET)法を使用して77Kで窒素吸着によりTrister(Micromeritics Instruments)上で粉末の比表面積を分析した。全ての試料を150℃で1時間脱気した。X線回折分光法(XRD)データを20゜〜40゜で、0.12゜のステップサイズ、かつ2.4゜/分のスキャンスピードで周囲条件にてBurker D 8 Advance 回折計で収集した。フーリエ変換赤外分光(FTIR)分析のために、200mg KBr(≧99.5%、Fluka)のペレットと0.5〜0.7mg試料を製造し、かつ4cm-1解像度でパーキンエルマー社製Spectrum BX(4スキャン)にて実験(400cm-1<λ<4000 cm-1)する前に、乾燥炉(VT 6025, Gerber Instruments)中、80℃/<10mbarで少なくとも8時間脱水した。レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)により元素分析を行った。試料をプレートに圧入し、エキシマレーザー(Lambda Phisyk Compex 110 I; ArF, 193nm、パルスエネルギー150mJ、周波数10Hz )で照射した。気化した材料をヘリウム流によりICP質量分析計(Perkin Elmer Elan 6100)中に運び、カルシウムとリンについて分析した。内部標準として、フルオロアパタイト(Durago)を使用した。透過電子顕微鏡(TEM)写真をCM30ST(Philips, LaB6 cathode, 300 kVで操作、ポイント解像度〜2Å)で記録した。粒子を銅グリッド上に担持したカーボンホイル上で析出した。Leo 1530 Gemini(Zeiss)を用いて走査型電子顕微鏡(SEM)調査を行った。
【0077】
詳細な製造例
還流下に140℃まで加熱しながら、酸化カルシウム(Aldrich, >99%)111gを2−エチルヘキサン酸(Fluka, 99%)1980gと無水酢酸(Fluka, >99%)20ml中に溶解した。冷却後、透明な溶液を別の容器に移すことにより残った酢酸カルシウムを除去した。トルエンを加えた後、エチレンジアミンテトラアセテート二ナトリウム塩(Fluka, 99%)と指示薬としてのエリオクロムブラックT(Fluka, >95%)を用いる滴定により測定して0.768M溶液が得られた。
【0078】
上記の溶液0.685kg(室温で少なくとも3ヶ月は安定)を室温(298K)でリン酸トリブチル(Fluka, puriss, 99%)93.44gと混合し、トルエンを加えて全部で1リットルの体積にした。1回の試行では、この溶液38mlをトルエン2mlと混合しフレーム溶射した。このような前駆体溶液の燃焼エンタルピーは、25kJ/g以上であり、粘度は10mPas未満であった。
【0079】
5リットル/分の分散ガス(酸素、Pan Gas, >99.8%)流を用いて、本明細書で記載された全ての材料を5ml/分の液体流量で製造した。
【0080】
本発明の方法により得られる全ての製品に多くの用途(例えば、触媒担体として、分子篩いとして、ポリマー用充填剤として、および/または紫外線安定剤として)がある一方で、ヒトおよびヒト以外の動物、特にホ乳類で天然に存在するため、上記のようなリン酸三カルシウムは例えば以下のような用途に相当に有利である:
− 歯科および医学的用途において、単独で、または有利には生体高分子のような他の物質と一緒に用いる。このような用途は、骨セメントおよび/またはインプラント用の溶解性材料として、インプラントコーティングとして、骨欠損または歯周欠損症の修復において、骨空隙部充填剤などとしての用途を含む。
− 練り歯磨きへの添加剤として、例えば、フッ化物源としておよび/または研磨補助剤として、
− 食料、例えば、チューイングガム、お菓子、食卓塩中のフッ化物源として、
− 生分解性材料または生体溶解性材料中の分解活性化剤として。
【0081】
インプラントと骨セメントのような医学的用途では、本発明により製造される製品は好ましい。それというのも、これが高純度で容易に得られるからであり、更に出発材料として使用されるエーロゲルが極めて軽く、かつオープンな構造であるため、焼結して所望の浸透相(連続孔)を有する製品に形成できるからである。少量の水と組合わさって、僅かな焼結と減少した体積損失は、通常製造される粉末と比べて、最大の連続多孔度の程度を確実にする。本発明の方法により製造される材料の他の利点は、例えば、バリウムおよび/またはガドリニウムでドーピングして溶解性材料の分解をX線画像または核磁気共鳴画像のような非侵襲的方法によりコントロールできる点である。
【0082】
練り歯磨きへの成分として、特にフルオロアパタイトが有利である。練り歯磨き中で従来使用されていたフッ化物源をフルオロアパタイトと交換できるほど、アパタイト中でのヒドロキシドとフッ化物の交換は極めて速いことが知られている。しかし、フルオロアパタイトが"カルシウムに中立"であるので、すなわち、身体のカルシウム含有量、特に歯と骨に影響を与えないので、他のフッ化物源よりもずっと高い量で加えてもその量は危険ではなく、同時に例えばプラーク除去を改善する研磨助剤としてはたらく。
【0083】
フルオロアパタイトの上記の利点は、食料に関しても当てはまる。従来利用可能なフッ化物源では、食卓塩や水のようなヒトが摂取できる最大量が推定できる程度の極めて特異的な食料だけがフッ化物リッチであり得た。大量でさえも非毒性である事と、体内アパタイトのフッ化物欠損症を専ら補償するそのフッ化物放出特性を考慮して、フルオロアパタイトを使用することにより、例えば、チューインガム、キャンディー、お菓子だけではなく、既に従来のフッ化物リッチの食卓塩および飲料水のような多くの食料を補足できる。日中の歯磨きの際に殆どが消費されてしまうチューインガム、キャンディー、お菓子(スナック、ケーキ、チョコレートなどを含める)および塩味スナック、ヨーグルトならびにその他のような食料の補足はおそらく不可能であるかもしれないが、歯科衛生を考慮すると望ましい。
【0084】
生分解、例えば生分解性ポリマー材料に必要な微生物は、カルシウムおよびホスフェートのような特異的イオンを大量に必要とする。本発明の製法により、大量のナノ粒子のカルシウムとホスフェートを有する化合物が得られるだけではなく、溶解度に関して適合できるドープ材料(例えば、アパタイト中のCO2により)、更にカルシウム以外の所望の金属の内容物も得られる。
【0085】
本発明の製品は、一般に分離せず、かつ流動性/注型適性を改善する。従って、これらはDegussaの製品AEROSIL(R)と類似した用途分野を有する。
【0086】
本発明の製品は、例えば食卓塩の注型適性を改善するために使用でき、また練り歯磨きまたは製造工程において固形成分の流動性を改善するために使用することもできる。例えば、ポリマー製造における添加剤またはスナック製造などにおけるスパイス混合物として使用できる。他の用途としては、生分解性プラスチック中だけではなく、一般のプラスチック中でのレオロジーまたはチキソトロピー改善剤、機械的安定性として、紫外線抵抗性として、または他の機能改善添加剤、混合剤または充填剤が挙げられる。
【0087】
適切にドーピングされている場合には(例えば、銀イオンを材料に添加することにより)、本発明の製品は、抗菌特性を提供することもでき、抗菌性を備えたポリマーまたはポリマーを有する製品、例えば、コーティング、塗料、接着剤などに適切なものになる。
【0088】
本発明の有利な実施態様を表し、記載したが、本発明はこれに限定されることなく、以下の請求項の範囲内で様々に盛り込まれ、かつ施行されることは明確に理解されるようになる。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1A】図1Aは、2相ノズルバーナーのフレームを表す図である。
【図1B】図1Bは、フレームの図式的描写を表す図である。
【図2A】図2Aは、製造したまま(すなわち焼結前)のリン酸三カルシウムの写真を表す図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示されているような製造したままの材料を熱処理することによる比表面積の減少を示す図である。
【図3】図3は、700℃で焼結した後(上の2個の写真)と900℃で焼結した後(下の2個の写真)のリン酸カルシウム(Ca/P=1.5)の透過電子顕微鏡写真(左の2個の写真)と走査型電子顕微鏡画像(右の2個の写真)を表す図である。
【図4】図4は、室温から1320℃の温度範囲内および10℃/分の加熱率で、種々のPとCaの過剰を有するCa/P=1.5試料の示差熱分析(DTA)データ(左側)と、特異的な温度で熱処理した後の幾つかのCa/P試料のX線回折パターン(右側)を示す図である。
【図5】図5は、Ca/P=1.67試料の熱重量分析(TG、上のグラフ)と、試料の結晶化を示す1本の発熱ピークを有する相応の示差走査熱分析の痕跡(DTA、上のグラフ)を示す図である。
【図6】図6は、製造したままと、700℃で処理した後の種々のCa/P比を有する試料のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示す図である。
【図7】図7は、900℃で30分間か焼した後の種々のCa/P比を有する試料のFTIRスペクトルを示す図である。
【図8】図8は、製造したままの幾つかのアパタイトを700℃で温度処理した後のものと比較したXRDパターンを示す図である。
【図9】図9は、700℃でか焼した後のヒドロキシアパタイト、ヒドロキシフルオロアパタイト、フルオロアパタイトのFTIRスペクトルを比較したものを表す図である。
【図10】図10は、700℃で30分間か焼した後のCa/P比に依存した種々のリン酸カルシウムの形成を示す図である。
【図11】図11は、900℃で30分間か焼した後のCa/P比に依存した種々のリン酸カルシウムの形成を示す図である。
【図12】図12は、カルシウムに対してMgを1原子%含有しているマグネシウムドープリン酸三カルシウムのXRDパターンを表す図である。
【図13】図13は、カルシウムに対してMgを1原子%含有しているマグネシウムドープアパタイトのXRDパターンを表す図である。
【図14】図14は、カルシウムに対してZnを1原子%含有している亜鉛ドープリン酸三カルシウムのXRDパターンを表す図である。
【図15】図15は、カルシウムに対してZnを1原子%含有している亜鉛ドープアパタイトのXRDパターンを表す図である。
【図16】図16は、フレーム溶射合成により製造された炭酸カルシウムナノ粒子が、酸化カルシウムの不純物を少し有する炭酸カルシウムに相応することを示す図である。
【図17】図17は、オクタン酸カルシウムとジメチルスルホキシド(DMSO)をフレーム溶射バーナーに供給することにより得られる硬セッコウ(硫酸カルシウム)ナノ粒子のXRDを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン金属が任意の金属カチオン、有利には第三遷移金属とランタノイド(希土類金属)を含むI〜IV族の金属およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属であり、かつアニオン基がホスフェート、ボレート、シリケート、スルフェート、カーボネート、ヒドロキシド、フッ化物およびこれらの混合物から選択される金属塩の製法において、該方法は1つのカルボキシレート基あたり、少なくとも3個の平均炭素数を有する金属カルボン酸塩である少なくとも1つの金属源と、少なくとも1つのアニオン源との混合物を形成して液体粒子にし、前記液体粒子を高温環境で酸化することを特徴とする、金属塩の製法。
【請求項2】
1つのカルボキシレート基あたりの平均炭素数は、少なくとも4個、有利には少なくとも5個、最も有利には5〜8個である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属カルボン酸塩とアニオン源、特にホスフェートまたはホスフェート前駆体を有する液体粒子は、フレーム中で酸化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
液体粒子に形成する前の金属カルボン酸塩は、最大で100mPas、有利には最大で40mPas、より有利には最大で20mPasの粘度を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
粘度は、少なくとも1つの金属カルボン酸塩、少なくとも1つのアニオン源および少なくとも1つの粘度降下溶剤を加熱することにより、および/または混合を設けることにより得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
粘度降下溶剤は、酸、有利にはC1〜C10カルボン酸を100%まで、より有利には50%未満の量で有する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
溶剤は酸を含まない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶剤は、少なくとも1つの低分子量および/または低粘度無極性溶剤、特に芳香族または脂肪族、非置換、線状または分枝炭化水素、有利には、トルエン、キシレン、低級脂肪族炭化水素およびこれらの混合物から成るグループから選択される溶剤を有する、請求項5から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
金属カルボン酸塩は、C1〜C18カルボキシレートおよびこれらの混合物、有利にはC4〜C12カルボキシレートおよびこれらの混合物、より有利にはC5〜C8カルボキシレートおよびこれらの混合物、特に2−エチルヘキサン酸塩のようなオクトエートから成るグループから選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
カチオン金属の合計は、第三遷移金属とランタノイドを含むI〜IV族の金属から選択され、かつ全金属の少なくとも80原子%はカルシウムであり、有利には全カチオンの少なくとも90原子%、より有利には少なくとも96原子%はカルシウムである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
カチオン金属の合計は、カルシウムと、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウム、バリウム、希土類金属、特にガドリニウムならびに前記金属の2種以上の混合物から選択される少なくとももう1つの金属を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アニオン基の合計は、ホスフェート、ヒドロキシド、カーボネート、フッ化物ならびにこれらの混合物から選択されるアニオン基を、理論的に計算した必要量のアニオンの少なくとも90mol%の量で有し、塩内の電子の中性を仮定するのであれば、有利には少なくとも95%、より有利には少なくとも98%有し、それにより、有利なホスフェートが存在し、より有利には3:1〜1:1の金属:ホスフェートのモル比を有する化合物を生じる量で存在する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アニオン基の合計は、シリケート、スルフェートおよびこれらの混合物から選択されるアニオン基を更に有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アニオン源は、次のもの:
− 少なくとも13kJ/g、有利には少なくとも22.5kJ/g、最も有利には少なくとも25.5kJ/gのエンタルピーを有する溶剤または溶剤混合物に可溶性の無機リン化合物および/または有機リン化合物から選択されるホスフェート源、特にリン酸および/またはリン酸の有機エステルおよび/またはホスフィン、特に溶剤を構成する、または上記の特性を有する溶剤混合物を導くリン化合物、および/または
− 有機化合物のフッ化物誘導体であるフッ化物源、前記フッ化物誘導体は先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にトリフルオロ酢酸に可溶性である、および/または
− 先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にテトラエチルシリケートに可溶性の有機シリケートおよび/または有機ケイ素化合物から選択されるシリケート源、
− 有機硫黄含有化合物および/またはスルホン酸から選択されるスルフェート源、前記スルフェート源は先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶性である、および/または
− 炭化水素、カルボン酸、アルコール、金属カルボン酸塩およびこれらの混合物のような有機炭素源から選択されるカーボネート源
を有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
金属塩は、非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、アパタイトならびにこれらの混合物から成るグループから選択される、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アパタイトは、Ca10(PO4)6(OH)2xF2y(CO3)z[式中、x、yおよびzは、それぞれ0〜1の範囲内であり、x+y+zの合計は1である]から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
形成される化合物は、非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトまたはフルオロアパタイトまたはヒドロキシフルオロアパタイトから選択される少なくとも96%、有利には少なくとも98%、より有利には少なくとも99%純粋な生成物である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
フレーム酸化はスプレーバーナー、または特にオイルバーナー中で行われる、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
酸化は、少なくとも600℃、有利には少なくとも800℃、より有利には少なくとも1000℃、最も有利には1200〜2600℃の範囲内、特に約1600℃の温度で行われる、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
金属カルボン酸塩は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、塩化物または臭化物のような金属ハロゲン化物、または金属低級アルキルオキシド、特にC1〜C4−アルキルオキシドから出発して製造される、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
金属カルボン酸塩または金属カルボン酸塩を有する溶液のエンタルピーは、少なくとも13kJ/g、有利には少なくとも18kJ/g、より有利には少なくとも22.5kJ/g、最も有利には少なくとも25.5kJ/gである、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
溶液は、少なくとも1つの金属源を1リットル当たり少なくとも0.15モルの金属に相応する量で、かつ少なくとも1つのアニオン源を1リットル当たり少なくとも0.05モルのアニオン基に相応する量で有する、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
製造したままの金属塩は、場合により湿度の存在での熱処理により、および/または焼き戻し/焼結手順を課すことによりカーボネート含有量を減少させる、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
金属塩は、完全燃焼または反応体の変換に不十分な酸素を有するフレーム中で製造され亜当量の塩の形成を生じる、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法により得られる金属塩。
【請求項26】
1分間当たりに10℃の加熱率で900℃まで加熱する場合に水7.5質量%以上を放出しない、有利には5質量%未満、最も有利には4.5質量%未満の水を放出する金属塩、特に請求項25に記載の金属塩。
【請求項27】
1分間当たりに10℃の加熱率で500℃まで加熱する場合、有利には400℃まで加熱する場合、最も有利には350℃まで加熱する場合に全ての水の90質量%以上が放出される金属塩、特に請求項25または26に記載の金属塩。
【請求項28】
浸透相を有する金属塩、特に請求項25から27までのいずれか1項に記載の金属塩。
【請求項29】
生体材料である、請求項25から28までのいずれか1項に記載の金属塩。
【請求項30】
リン酸三カルシウム、特に100〜300kg/m3の範囲内の嵩密度を有する非晶質リン酸三カルシウム、または800kg/m3未満の嵩密度を有するβ−リン酸三カルシウムまたは500kg/m3未満の嵩密度を有するα−リン酸三カルシウムである金属塩、特に請求項25から29までのいずれか1項に記載の金属塩。
【請求項31】
リン酸三カルシウム、特に3m2/g以上、より有利には5m2/g以上、さらに有利には8m2/g以上の比表面積(BET−法により−196℃で窒素吸着法により測定)を有するα−リン酸三カルシウム、または1m2/g以上、有利には1.5m2/g以上、さらに有利には2m2/g以上の比表面積(BET−法により−196℃で窒素吸着法により測定)を有するβ−リン酸三カルシウムである金属塩、特に請求項25から30までのいずれか1項に記載の金属塩。
【請求項32】
医学的用途、例えば、骨セメントおよび/またはインプラント用の溶解性材料として、練り歯磨きへの添加剤として、例えば、フッ化物源としておよび/または研磨補助剤として、食料、例えば、チューイングガム、お菓子、食卓塩中のフッ化物源として、触媒担体として、分子篩いとして、ポリマー用充填剤として、紫外線安定剤としておよび/または生分解性材料または生体溶解性材料中の分解活性化剤としての、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法により得られる金属塩、または請求項25から31までのいずれか1項に記載の金属塩の使用。
【請求項1】
カチオン金属が任意の金属カチオン、有利には第三遷移金属とランタノイド(希土類金属)を含むI〜IV族の金属およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属であり、かつアニオン基がホスフェート、ボレート、シリケート、スルフェート、カーボネート、ヒドロキシド、フッ化物およびこれらの混合物から選択される金属塩の製法において、該方法は1つのカルボキシレート基あたり、少なくとも3個の平均炭素数を有する金属カルボン酸塩である少なくとも1つの金属源と、少なくとも1つのアニオン源との混合物を形成して液体粒子にし、前記液体粒子を高温環境で酸化することを特徴とする、金属塩の製法。
【請求項2】
1つのカルボキシレート基あたりの平均炭素数は、少なくとも4個、有利には少なくとも5個、最も有利には5〜8個である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属カルボン酸塩とアニオン源、特にホスフェートまたはホスフェート前駆体を有する液体粒子は、フレーム中で酸化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
液体粒子に形成する前の金属カルボン酸塩は、最大で100mPas、有利には最大で40mPas、より有利には最大で20mPasの粘度を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
粘度は、少なくとも1つの金属カルボン酸塩、少なくとも1つのアニオン源および少なくとも1つの粘度降下溶剤を加熱することにより、および/または混合を設けることにより得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
粘度降下溶剤は、酸、有利にはC1〜C10カルボン酸を100%まで、より有利には50%未満の量で有する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
溶剤は酸を含まない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶剤は、少なくとも1つの低分子量および/または低粘度無極性溶剤、特に芳香族または脂肪族、非置換、線状または分枝炭化水素、有利には、トルエン、キシレン、低級脂肪族炭化水素およびこれらの混合物から成るグループから選択される溶剤を有する、請求項5から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
金属カルボン酸塩は、C1〜C18カルボキシレートおよびこれらの混合物、有利にはC4〜C12カルボキシレートおよびこれらの混合物、より有利にはC5〜C8カルボキシレートおよびこれらの混合物、特に2−エチルヘキサン酸塩のようなオクトエートから成るグループから選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
カチオン金属の合計は、第三遷移金属とランタノイドを含むI〜IV族の金属から選択され、かつ全金属の少なくとも80原子%はカルシウムであり、有利には全カチオンの少なくとも90原子%、より有利には少なくとも96原子%はカルシウムである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
カチオン金属の合計は、カルシウムと、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウム、バリウム、希土類金属、特にガドリニウムならびに前記金属の2種以上の混合物から選択される少なくとももう1つの金属を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アニオン基の合計は、ホスフェート、ヒドロキシド、カーボネート、フッ化物ならびにこれらの混合物から選択されるアニオン基を、理論的に計算した必要量のアニオンの少なくとも90mol%の量で有し、塩内の電子の中性を仮定するのであれば、有利には少なくとも95%、より有利には少なくとも98%有し、それにより、有利なホスフェートが存在し、より有利には3:1〜1:1の金属:ホスフェートのモル比を有する化合物を生じる量で存在する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アニオン基の合計は、シリケート、スルフェートおよびこれらの混合物から選択されるアニオン基を更に有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アニオン源は、次のもの:
− 少なくとも13kJ/g、有利には少なくとも22.5kJ/g、最も有利には少なくとも25.5kJ/gのエンタルピーを有する溶剤または溶剤混合物に可溶性の無機リン化合物および/または有機リン化合物から選択されるホスフェート源、特にリン酸および/またはリン酸の有機エステルおよび/またはホスフィン、特に溶剤を構成する、または上記の特性を有する溶剤混合物を導くリン化合物、および/または
− 有機化合物のフッ化物誘導体であるフッ化物源、前記フッ化物誘導体は先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にトリフルオロ酢酸に可溶性である、および/または
− 先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にテトラエチルシリケートに可溶性の有機シリケートおよび/または有機ケイ素化合物から選択されるシリケート源、
− 有機硫黄含有化合物および/またはスルホン酸から選択されるスルフェート源、前記スルフェート源は先に定義した溶剤または溶剤混合物、特にジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶性である、および/または
− 炭化水素、カルボン酸、アルコール、金属カルボン酸塩およびこれらの混合物のような有機炭素源から選択されるカーボネート源
を有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
金属塩は、非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、アパタイトならびにこれらの混合物から成るグループから選択される、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アパタイトは、Ca10(PO4)6(OH)2xF2y(CO3)z[式中、x、yおよびzは、それぞれ0〜1の範囲内であり、x+y+zの合計は1である]から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
形成される化合物は、非晶質リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトまたはフルオロアパタイトまたはヒドロキシフルオロアパタイトから選択される少なくとも96%、有利には少なくとも98%、より有利には少なくとも99%純粋な生成物である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
フレーム酸化はスプレーバーナー、または特にオイルバーナー中で行われる、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
酸化は、少なくとも600℃、有利には少なくとも800℃、より有利には少なくとも1000℃、最も有利には1200〜2600℃の範囲内、特に約1600℃の温度で行われる、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
金属カルボン酸塩は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、塩化物または臭化物のような金属ハロゲン化物、または金属低級アルキルオキシド、特にC1〜C4−アルキルオキシドから出発して製造される、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
金属カルボン酸塩または金属カルボン酸塩を有する溶液のエンタルピーは、少なくとも13kJ/g、有利には少なくとも18kJ/g、より有利には少なくとも22.5kJ/g、最も有利には少なくとも25.5kJ/gである、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
溶液は、少なくとも1つの金属源を1リットル当たり少なくとも0.15モルの金属に相応する量で、かつ少なくとも1つのアニオン源を1リットル当たり少なくとも0.05モルのアニオン基に相応する量で有する、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
製造したままの金属塩は、場合により湿度の存在での熱処理により、および/または焼き戻し/焼結手順を課すことによりカーボネート含有量を減少させる、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
金属塩は、完全燃焼または反応体の変換に不十分な酸素を有するフレーム中で製造され亜当量の塩の形成を生じる、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法により得られる金属塩。
【請求項26】
1分間当たりに10℃の加熱率で900℃まで加熱する場合に水7.5質量%以上を放出しない、有利には5質量%未満、最も有利には4.5質量%未満の水を放出する金属塩、特に請求項25に記載の金属塩。
【請求項27】
1分間当たりに10℃の加熱率で500℃まで加熱する場合、有利には400℃まで加熱する場合、最も有利には350℃まで加熱する場合に全ての水の90質量%以上が放出される金属塩、特に請求項25または26に記載の金属塩。
【請求項28】
浸透相を有する金属塩、特に請求項25から27までのいずれか1項に記載の金属塩。
【請求項29】
生体材料である、請求項25から28までのいずれか1項に記載の金属塩。
【請求項30】
リン酸三カルシウム、特に100〜300kg/m3の範囲内の嵩密度を有する非晶質リン酸三カルシウム、または800kg/m3未満の嵩密度を有するβ−リン酸三カルシウムまたは500kg/m3未満の嵩密度を有するα−リン酸三カルシウムである金属塩、特に請求項25から29までのいずれか1項に記載の金属塩。
【請求項31】
リン酸三カルシウム、特に3m2/g以上、より有利には5m2/g以上、さらに有利には8m2/g以上の比表面積(BET−法により−196℃で窒素吸着法により測定)を有するα−リン酸三カルシウム、または1m2/g以上、有利には1.5m2/g以上、さらに有利には2m2/g以上の比表面積(BET−法により−196℃で窒素吸着法により測定)を有するβ−リン酸三カルシウムである金属塩、特に請求項25から30までのいずれか1項に記載の金属塩。
【請求項32】
医学的用途、例えば、骨セメントおよび/またはインプラント用の溶解性材料として、練り歯磨きへの添加剤として、例えば、フッ化物源としておよび/または研磨補助剤として、食料、例えば、チューイングガム、お菓子、食卓塩中のフッ化物源として、触媒担体として、分子篩いとして、ポリマー用充填剤として、紫外線安定剤としておよび/または生分解性材料または生体溶解性材料中の分解活性化剤としての、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法により得られる金属塩、または請求項25から31までのいずれか1項に記載の金属塩の使用。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−529399(P2007−529399A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503170(P2007−503170)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000151
【国際公開番号】WO2005/087660
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(500466913)
【氏名又は名称原語表記】Eidgenoessische Technische Hochschule Zuerich
【住所又は居所原語表記】Raemistrasse 101, CH−8092 Zuerich, Switzerland
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000151
【国際公開番号】WO2005/087660
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(500466913)
【氏名又は名称原語表記】Eidgenoessische Technische Hochschule Zuerich
【住所又は居所原語表記】Raemistrasse 101, CH−8092 Zuerich, Switzerland
【Fターム(参考)】
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