説明

金属板、特に亜鉛板を被覆する方法

【課題】金属特に亜鉛及びその合金を被覆する方法の提供。
【解決手段】本発明方法において、a)金属を1種以上の金属Mの単純塩又は錯塩を含む化成溶液に接触させて化成処理を施し、c)それを、c1)合計量5〜30重量%の1種又は複数種の脂肪族架橋硬化性ウレタン樹脂、c1)合計量10〜30重量%の1種又は複数種の成分c1用架橋剤、及びc3)4〜30重量%の1種又は複数種の耐食性顔料を含む被覆剤と接触させ、工程c)により得られた被膜を硬化させる。本発明方法は、好ましくは連続無リンス法で行われる。本発明は、さらに、本発明方法により得られた被膜を有する金属板、この金属板から作られた成形部品又は前記金属板又はそれから得られた形成部品を含む物品、並びに、前記金属板成形物品又は建築物外部用物品の使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムおよびその合金、亜鉛めっき鋼あるいは亜鉛合金めっき鋼、および特に亜鉛あるいは亜鉛合金から選ばれる金属に耐候性保護被膜を与えることができる方法に関る。塗料被膜とは対照的に、本発明は、金属基材の金属的外観ができるだけ保持されることを意図するものである。本発明方法は、上記の金属および金属合金に好適なものである。本発明の方法は特に、亜鉛あるいは亜鉛合金のシートあるいはこのようなシートからの成形部品を被覆することを意図するものである。したがって、本発明の目的の重要性、および本発明によるそれの解決手段およびこの解決手段の利点は、例として亜鉛および亜鉛合金を用いて説明される。
【背景技術】
【0002】
亜鉛あるいは亜鉛合金で作られた被覆部品は、日光や雨などの天候の影響に曝される用途に用いられるように特に意図されたものである。保護被膜の適用には、気候の影響による金属表面からの亜鉛の溶出を著しく減少することが意図されていて、従って、被覆されていない亜鉛と比較して、環境(水および/あるいは土壌)中への亜鉛の侵入を減少させることが意図されている。
【0003】
亜鉛(ここおよび以下では、“亜鉛”は、50重量%以上の亜鉛を含む亜鉛合金もまた含まれると理解される)の固体ストリップあるいは板は、例えば、圧延プロセス、あるいは連続鋳造プロセスと圧延プロセスとにより生産できる。前記亜鉛ストリップ及び板は、主として建築に使われ、建築ではその用途によって、異なる成型プロセスおよび接合プロセスが要求される。亜鉛部品に対する最も一般的な接合方法は蝋付けである。このようにして得られた亜鉛板および亜鉛部品は、例えば、屋根や出入口、あるいは雨樋および縦樋として建物の外面部を形成するために使われる。これらはまた、日光および雨に曝される場所に優先的に使用される。それゆえに、亜鉛が片面において腐食され、その結果亜鉛化合物が水や土壌中に入り込む。加えて、大気の腐食から、部分的に、しかし十分にではなく保護する難溶性亜鉛化合物からなる表面パティナ(さび)層が若干形成される。材料の厚さに依存して、天然のパティナ層の生長は数十年の寿命をもって継続する。とにかく、主として環境保護のために、亜鉛基質の溶出をさらに遅くし、かつ、それによって、亜鉛化合物の環境中への侵入を遅くするという問題が生じている。
【0004】
天然のパティナ層は、亜鉛基質の寿命を伸ばすだけでなく、望ましい視覚的美感をもたらすものでもあるので、天然のパティナ層の形成は大変に望ましいことである。一般の風化状態(気候)と亜鉛物品の風化の方向に依存して、天然のパティナ層の完全な生長は幾年かの経過後のみに完成する。斑点が付き一様でなく発達した被膜に見える中間的な状態があり得る。これは視覚的には不快なものと認識される。工場から直接の亜鉛のストリップ、板あるいは部品は、所望によりエッチングしてパティナ層状の被膜を形成させる。このプロセスはまた、“プリウエザリング(予備風化法)”としても知られている。この方法により、天然のエイジングによる均一な着色を得ることが期待されている。得られるプリウエザリング層は、本質的に硫酸亜鉛、炭酸亜鉛および酸化亜鉛からなるものである。
【0005】
この様なプリウエザリング工程は、ここに述べる本発明の被覆方法に先行することができる。したがって、本発明の方法は、生成した保護層がプリウエザリング層に接着し、かつできるだけこのプリウエザリング層の視覚的印象が遮断されないように設計されている。この様なプリウエザリングが施されても、或はなされてもなされなくても、本発明の方法により適用される保護層は、プレス加工や蝋付けなどの成型プロセスや接合プロセスを妨害してはならない。この保護層は、成型プロセスにおいて剥がれてはならない。
【0006】
実際、アクリレート基本の被覆は、一時的腐食防止法としてすでに亜鉛に適用されつつある。しかしながら、この被覆は、本発明の方法が意図しているような恒久的腐食防止の要件を満たすものではない。
【0007】
“化成処理”は、フィルムを形成する有機ポリマー(樹脂)に基く被覆の前に、金属表面を前処理するために広範に使われている。これらは、金属表面を‘化成処理溶液’と接触させる表面処理法と理解される。化成処理溶液は、処理される金属表面の金属原子と溶解困難な化合物を形成できる成分を含んでいる。クロメート処理は、その一例である。この方法において、金属表面をCr(III)化合物及び/又はCr(VI)化合物を含む酸性溶液と接触させる。この様なクロメート処理法は、労働保護および環境保護のために回避されつつある。これらはしばしば、金属表面を、元素B、Si、Ti、ZrあるいはHfの一つあるいは二つ以上の錯弗化物を含む酸処理溶液と接触させる処理プロセスにより置き換えられている。
【0008】
例えば、文献EP-B-700 452は、腐食防止のための第二の最後の化成処理の前に、アルミニウム表面を前処理するクロムフリープロセスを記載している。この場合、前記アルミニウム表面を元素B、Si、Ti、ZrあるいはHfの錯弗化物(単独であるいは互いに混合して)を含む酸性処理水溶液と接触させるが、この際の全弗化物陰イオン濃度は100ないし4,000 mg/literの範囲内にあり、そのpHは0.3ないし3.5の範囲内にある。この文献には、その序文に、クロムフリー化成処理溶液が記載されている一連の他の資料がすべて挙げられている。我々は、特にこの文献の3ページに注目している。そこに挙げられた資料によれば、化成処理溶液は、錯弗化物に加えてポリアクリル酸などのフィルム形成有機ポリマー、あるいはその塩あるいはエステルを含んでいてもよい。そこに挙げられている資料から、化成処理溶液はポリビニルフェノール化合物をフィルム形成ポリマーとして含むことができるようにも思われる。これらの化合物は、ポリ(ビニルフェノール)をアルデヒドおよび有機アミンと反応させることにより得られる。
【0009】
恒久的な防食有機塗膜を塗布する前に金属表面を前処理する化成処理溶液の他の例は、DE-A-199 23 084およびそこに挙げられている文献に見出される。それらの教示によると、クロムフリーの化成処理剤水溶液は、Ti、Siおよび/あるいはZnの六弗化物陰イオンだけでなく、下記の活性物質:すなわち燐酸、Co、Ni、V、Fe、Mn、MoあるいはWの一つあるいは二つ以上の化合物、水溶性あるいは水分散性フィルム形成性有機ポリマーあるいはコポリマーおよび錯化合物形成性を有する有機ホスホン酸を含むことができる。この文献の4ページ、17ないし39行には、上記化成処理溶液に含まれ得る有機フィルム形成性ポリマーの広範なリストがある。これと関連して、この文献は、化成処理溶液のさらなる可能性のある成分としての錯化合物形成性有機ホスホン酸の非常に広範なリストを開示している。
【0010】
化成処理の意味で、前処理された金属表面に、とりわけフィルム形成性成分としてのポリウレタン樹脂あるいはプレポリマーを含む有機被膜を塗布することもまた知られている。その例を下記に述べる。
【0011】
文献WO 01/23452は、a)少なくとも部分的にブロックされたイソシアネート基を有する一種以上の分散ポリウレタンプレポリマー、b)一種以上の他の架橋性ポリマー分散液あるいはポリマー溶液、およびc)必要ならば湿潤剤および分散剤および流動性改良剤を含むステンレス鋼被覆用の水溶性組成物を開示している。分散、ブロックされたポリウレタンプレポリマーは、低分子量ポリオールおよび脂肪族ジイソシアネートから調製することができる。イソシアネート基のブロック剤は、アルドキシム、ケトキシム、ラクタム、イミダゾール化合物、β-ジカルボニル化合物、アルコール、フェノール、チオアルコール、チオフェノール、第二アミン、アミド、イミドあるいはヒドロキサミン酸エステルから選ぶことができる。この文献にはまた、その請求項4にポリウレタンプレポリマーの成分としての脂肪族あるいは環状脂肪族ジイソシアネートの例のリストが含まれる。架橋性ポリマーb)は、例えば、反応性(メタ)アクリレートコポリマー、ポリエステルオールに基くポリウレタン分散液、ポリカーボネートあるいはポリエーテルから選ぶことができる。この作用剤には、特に汚れ防止被膜としてステンレス鋼表面に塗布することが意図されている。
【0012】
文献WO 03/035280は、表面被覆されたAl/Zn-鋼板およびそれに対応する表面被覆剤を開示している。この開示の核は、酸アミド化合物を含む樹脂を主たる成分として含む被膜がこの様な鋼板の表面上に形成される点にある。この樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂でよい。挙げられたこの被覆剤の他の任意の成分の例には、珪酸、珪酸塩、コロイド状二酸化珪素およびシランカプリング剤がある。
【0013】
鋼ストリップに対する防食被膜は、EP-A-1 479 736により知られている。
これらの塗膜は、キャリア物質と腐食を抑制する量のマトリックス(カチオン交換ができる)を含み、その結果カチオン交換できるこのマトリックスが、ヒドロキシルイオンと不溶性析出物を形成するカチオンとを含んでいる。このマトリックスは、例えば、天然あるいは合成の積層状の珪酸塩からなるものでよい。存在する交換可能なカチオンは、Ca、Ce、Sr、La、Y、AlあるいはMgであり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、亜鉛板あるいは固体亜鉛部品の表面に対し、上に規定した要件を満たす特別な被覆方法を提供しようとするものである。しかしながら、この被覆方法が、亜鉛以外の金属、例えばアルミニウムおよびその合金などの金属、および亜鉛めっき鋼あるいは合金亜鉛めっき鋼に用いられることも好ましい。特にこれらの材料もまた日光およびウエザリングの影響に曝される場合には、それは適切な場合である。従って、下記に述べる方法の亜鉛および亜鉛合金への応用は、本発明の好ましい実施例を代表するものである。
【0015】
上記課題の解決は、アルミニウムおよびその合金、亜鉛およびその合金、および亜鉛めっき鋼あるいは亜鉛合金めっき鋼から選ばれる金属(ここで金属は必要ならば洗浄される)を被覆する方法にあり、この方法は、
a) 前記金属を、少なくとも一つの金属Mの単純な塩あるいは錯塩を含む化成 処理溶液と接触させることにより化成処理(これ自身は技術の状態で公知 である)に供して、0.01ないし0.7 mmol/m2の金属Mを含む化成処理層を生 成させるようにし、
b) 必要ならば前記化成処理層を水で洗浄し、及び/又は乾燥し、
c) 前記化成処理層を塗膜剤と接触させ、
但し、前記塗膜剤は
c1) 総計5ないし30重量%の一種以上の脂肪族架橋性ウレタン焼付け樹脂と、
c2) 総計10ないし30重量%の、1種以上の、成分c1用架橋剤、および
c3) 4ないし30重量%の、一種以上の防食性顔料、
を含み、
残りは一種以上の有機溶媒及び/又は水、および必要ならば他の活性ある いは補助物質からなり、
さらに、
d) 前記工程c)において形成された被膜を100℃以上の基質温度に加熱して硬 化させる、
ことを含むことを特徴とするアルミニウムおよびその合金、亜鉛およびその合金、および亜鉛めっき鋼あるいは亜鉛合金めっき鋼から選ばれる金属を被覆する方法である。
【0016】
最初に述べた技術の状態から知られるように、クロム含有化成処理溶液あるいは、好ましくはクロムフリー化成処理溶液は、前記工程a)において使用することができる。化成処理温度、処理期間および接触時間などのプロセスパラメータの選択により、表面のm2当り0.01ないし0.7 mmoleの金属Mを含む化成処理層が確かに得られる。ここで金属Mとは化成処理溶液の必須の成分である。金属Mの例としては、Cr(III)、Cr(VI)、B、Si、Ti、ZrおよびHfが挙げられる。金属Mによる亜鉛表面の被覆(coverage)の密度は、例えば、蛍光X線法により測定することができる。
【0017】
前記工程a)には、意図的に添加したシランを含まない化成処理溶液を用いることが好ましい。少なくとも、シラン含量は、化成処理溶液に対して、10 ppmを越えてはならない。シラン含量がこれより高いと、次の工程c)で塗布した有機塗膜が剥離する危険がある。
【0018】
環境上の理由から、前記工程a)における化成処理液には、クロムが含まれないことが好ましい。金属Mを錯弗化物の形態で含みクロムを含まない水溶液が、この工程において使用されることが好ましい。前記金属MとしてはTi、Zrあるいはこれらの混合物が好ましい。しかしながら、化成処理溶液は、また、B、Si、及び/又は、Hfの錯弗化物を含むことができる。他の任意の成分には、上に挙げた文献DE-A-199 23 084に述べられている成分、すなわち、燐酸、Co、Ni、V、Fe、Mn、MoあるいはWの化合物、水溶性あるいは水分散性のフィルム形成性有機ポリマーあるいはコポリマー、例えば錯化合物を形成する有機ホスホン酸、が含まれる。これらの成分の具体的例は、上に挙げたDE-A-199 23 084に見出される。
【0019】
前記工程a)には、Tiおよび/あるいはZrの錯弗化物以外に、アミノ基を含むホモポリマー化合物あるいはコポリマー化合物から選ばれる有機ポリマーを含み、下記a)、b)、c)あるいはd)からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーを含む酸性化成処理水溶液を使用することが特に好ましい。
【0020】
前記ポリマーa)は、下記式の少なくとも一単位:
【化1】

を有するポリマー物質を含み、
但し、前記式中、R1ないしR3は各単位毎に、他から独立に、水素原子、1ないし5炭素原子を有するアルキル基、又は6ないし18炭素原子を有するアリール基からなる群から選ばれ、
Y1ないしY4は各単位毎に、他から独立に、水素原子、-CR11R5OR6基、-CH2Cl基あるいは1ないし18炭素原子を有するアルキル基、あるいはアリール基、あるいは下記式の基Zからなる群から選ばれ、
【化2】

を表し、但し、前記ホモポリマー又はコポリマー化合物のY1、Y2、Y3又はY4或はZ基の少なくとも一部分がR5〜R12でなければならず、R5〜R12は、それぞれ他から独立に各単位において、水素原子、アルキル、アリール、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、メルカプトアルキル及びホスホアルキル基からなる群から選ばれ、R12は、-0(-1)あるいは-OHであることができる。
前記式中のW1は、各単位において、他から独立に、水素原子、アシル基、アセチル基、ベンゾイル基、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロピル基、3-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシプロピル基、3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロピル基、3-アルキルオキシ-2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシオクチル基、2-ヒドロキシアルキル基、2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル基、2-ヒドロキシ-2-アルキルフェニルエチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、プロピル基、アルキル基、アリル基、アルキルベンジル基、ハロアルキル基、ハロアルケニル基、2-クロロプロペニル基、ナトリウム原子、カリウム原子、テトラアリールアンモニウム基、テトラアルキルホスホニウム基、テトラアリールホスホニウム基、及びエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びこれらの混合物の縮合生成物基、或はコポリマー基からなる群から選ばれる。
【0021】
前記ポリマーb)は、
下記式の少なくとも一単位を有するポリマー物質
【化3】

但し、上記式中、R1ないしR2は、各単位毎に、互に独立に、水素原子、1ないし5炭素原子を有するアルキル基、及び6ないし18炭素原子を有するアリール基からなる群から選ばれ、
Y1ないしY3は、各単位毎に互に独立に、水素原子、-CR4R5OR6基、-CH2Cl基、及び1ないし18炭素原子を有するアルキル基又はアリール基あるいは次式のZ基からなる群から選ばれ、
【化4】

しかし、Y1、Y2あるいはY3の少なくとも一部分は最終化合物Zでなければならず、R4ないしR12は、各単位毎に互に独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、メルカプトアルキル基及びホスホアルキル基からなる群から選ばれ、R12は、また-O(-1)であることもでき、
W2は、各単位毎に独立して、水素原子、並びにアシル、アセチル、ベンゾイル、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロピル、3-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシプロピル、3-アルキルベンジルオキシ-2-ヒドロキシプロピル、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、3-アルキルフェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロピル、3-アルキルオキシ2-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシオクチル、2-ヒドロキシアルキル、2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル、2-ヒドロキシ-2-アルキルフェニルエチル、ベンジル、メチル、エチル、プロピル、アルキル、アリル、アルキルベンジル、ハロアルキル、ハロアルケニル、2-クロロプロペニル基及びエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はこれらの混合物の縮合生成物基からなる群から選ばれる。
【0022】
前記ポリマーc)は、コポリマー物質を含み、このコポリマー物質の少なくとも一部は、下記の構造を有し、
【化5】

かつ前記特定部分の少なくとも一部は、1種以上のモノマーと重合しており、このモノマーは、各単位毎に独立に、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ビニルメチルケトン、イソプロペニルメチルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸n-アミル、スチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、ピリジン、ジアリルジメチルアンモニウム塩、1,3-ブタジエン、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチルアミノエチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、n-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、m-クロロスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、メタクリル酸n-デシル、N,N-ジアリルメラミン、N,N-ジ-n-ブチルアクリルアミド、イタコン酸ジ-n-ブチル、マレイン酸ジ-n-ブチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジエチル、燐酸ジエチルビニル、ビニルホスホン酸、マレイン酸ジイソブチル、イタコン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジイソプロピル、フマール酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、フマール酸ジ-n-ノニル、マレイン酸ジ-n-ノニル、フマル酸ジオクチル、イタコン酸ジ-n-オクチル、イタコン酸ジ-n-プロピル、n-ドセシルビニルエーテル、酸性フマル酸エチル、酸性マレイン酸エチル、アクリル酸エチル、桂皮酸エチル、N-エチルメタクリルアミド、アクリル酸エチルメチル、エチルビニルエーテル、5-エチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン-1-オキサイド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸イソブチル、イソブチルビニルエーテル、イソプレン、メタクリル酸イソプロピル、イソプロピルビニルエーテル、イタコン酸、メタクリル酸ラウリル、メタクリルアミド、メタクリル酸、メタクリロニトリル、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルメタクリルアミド、N-アルコキシメチルアクリルアミド、N-アルコキシメチルメタクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、アクリル酸メチル、N-メチルメタクリルアミド、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2-メチル-5-ビニルピリジン、メタクリル酸n-プロピル、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸ステアリル、スチレン、p-スチレンスルホン酸、p-スチレンスルホンアミド、臭化ビニル、9-ビニルカルバゾール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジンN-オキサイド、4-ビニルピリミジンおよびN-ビニルピロリドンからなる群から選ばれる。また、W1、Y1-Y4およびR1-R3はa)前記a)項に記載されているとおりである。
【0023】
前記ポリマーd)は、前記ポリマー性物質a)、b)あるいはc)からの縮合ポリマーを含み、ここで縮合可能な状態にある前記a)、b)又はc)、あるいはこれらの混合物が、フェノール類、タンニン類、ノボラック樹脂類、リグニン化合物類から選ばれる第二の化合物と、アルデヒド、ケトンあるいはこれらの混合物と一緒に縮合されて縮合樹脂生成物を生じ、これにより、縮合樹脂生成物がさらに反応し、その少なくとも1部に“Z”を付加することにより、1)アルデヒドあるいはケトンと、2)第二アミンとの反応を介して、酸と反応することのできる最終付加生成物を形成する。
【0024】
この様なポリマーを生産する方法は、特許EP-B-319 016およびEP-B-319 017に記載されている。このタイプのポリマーは、Parcolene 95C、Deoxylyte 90A、95A、95AT、100NCおよびTD-1355-CWの商品名で、Henkel Corporation USAから入手できる。
【0025】
特に好ましいポリマーは、有機ポリマーのZ基の少なくとも一部分が、アンモニアあるいはアミンと、3ないし8炭素原子を有するケトースあるいはアルドースとの縮合から得られるポリヒドロキシルアルキルアミン官能性を有するポリマーである。この縮合生成物は、必要ならばアミンに還元できる。
【0026】
この様なポリマーの他の例は、ポリ(ビニルフェノール)と、フォルムアルデヒドあるいはパラフォルムアルデヒドと、および第二有機アミンとの縮合生成物である。好ましくは、約1,000ないし10,000の範囲の分子量を有するポリ(ビニルフェノール)類が使われる。第二有機アミンがメチルエタノールアミンおよびN-メチルグルカミンから選ばれた縮合生成物が特に好ましい。
【0027】
例えば、Granodine 1456 の商標で、デュッセルドルフの Henkel KgaA より市販されている製品は、前記工程a)における化成処理に適している。この製品は、チタンおよびジルコニウムのヘキサフロロ酸、燐酸、マンガンイオン、有機ホスホン酸(1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸)および上記特許、EP-B-319 016およびEP-B-319 017による有機ポリマーを含む。N-メチルグルカミン基を含むポリマーを選ぶことが特に好ましい。
【0028】
前記工程a)における化成処理溶液は、10ないし50℃、特に15ないし35℃の温度を有することが好ましい。化成処理溶液と金属表面の接触時間(接触の初めから水洗の始めまでの時間、あるいは接触の始めから乾燥の始めまでの時間と定義される)は、1秒ないし2分の範囲でよい。全工程は、好ましくは連続的に移動する金属ストリップについて施されるので、前記接触時間は、ストリップの各処理について、共通であることが好ましい。これらの接触時間は2〜20秒の範囲内である。
【0029】
接触時間の終了後、ストリップを水で洗い、乾燥することができる。本発明の処理方法が予備成形された部品に対して行われる場合、水洗は特にすすめられる。この場合、化成処理溶液との接触は、好ましくは溶液中への浸漬あるいは溶液の噴霧によって行われる。しかしながら、本発明方法による一連の処理を移動している金属ストリップについて施す(これは好ましい)場合には、前記工程a)で化成処理溶液をローラーを適用して塗布し、その後洗わずに直接に乾燥(ノーリンスプロセス)させることが好ましい。乾燥は、好ましくは大気中60ないし90℃の基質温度(ピーク金属温度、PMT)で行われる。
【0030】
前記工程c)においては、硬化工程d)の後で層の厚さが3ないし35 μmの範囲、好ましくは6ないし20 μmの範囲になるような量の被覆剤を塗布することが好ましい。被膜厚さは、被覆剤の適用の仕方とその粘度によって制御できる。粘度は、基本的には被覆剤の固形分含量の関数であり、これにより調節できる。予備成形した部品については、前記工程d) における被膜は、被覆剤中に浸漬するか被覆剤を噴霧することにより行うことができる。本発明の方法が移動している金属ストリップについて施される(これが好ましい)場合、ローラー塗布プロセスが特に好ましい。しかしながら、塗布はまたストリップに被覆剤を噴霧するか、ストリップを被覆剤を含む浴中を通過させ、ついでドクターロールで絞ることによっても達成できる。接触時間(前記工程a)について上記に記載のとおり)は、好ましくは2ないし20秒である。
【0031】
前記工程d)において、前記工程c)において得られた被膜を100℃以上の基質温度(PMT)に加熱して硬化させる。基質温度(PMT)は、好ましくは210℃以下である。
【0032】
所要の基質温度(PMT)への加熱は、例えば、赤外輻射により、又は、好ましくは循環空気乾燥オブン中で実施できる。PMTに達する時間は、硬化のために十分な時間である。
【0033】
架橋性ウレタン焼付け樹脂c1)は、好ましくは、ブロックされたイソシアネート基を有するプレポリマーの懸濁液あるいは溶液として用いられる。太陽輻射に対する望ましい抵抗を得るために、ウレタン樹脂は、少なくとも長い脂肪族炭化水素鎖を有していなければならない。芳香族基および/あるいは不飽和基はできる限り避けるべきである。この意味において、炭素原子の5%以下、好ましくは1%以下が芳香族基、及び/又は、不飽和基中に存在する場合、このウレタン樹脂は、脂肪族ウレタン樹脂と呼ばれる。
【0034】
前記成分c1)は、好ましくは、本質的に遊離イソシアネート基を含まないポリウレタンプレポリマーの製剤(preparation)である。このポリウレタンプレポリマーは、ヒドロキシル官能性ポリエステルあるいはヒドロキシ官能性アクリレートと、および脂肪族ポリイソシアネートあるいは環状脂肪族ポリイソシアネートアとから、既知の方法で製造される。この目的に使用される脂肪族ポリイソシアネート類あるいは環状脂肪族ポリイソシアネート類は、好ましくは、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1-イソシアナートメチル-3-イソシアナート-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加されたキシレンジイソシアネート(H6XDI)、1-メチル-2,4-ジイソシアナートシクロヘキサン、メタ-あるいはパラ-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI、p-TMXDI)、二量体脂肪酸ジイソシアネート、テトラメトキシブタン-1,4-ジイイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート(HDI、成分c1)用として特に好まれる)、1,6-ジイソシアナート-2,3,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナート-2,2,4-トリメチルヘキサンおよび1,2-ドデカンジイソシアネート(C12DI)からなる群から選ばれる。必要であれば、ビウレット化あるいはイソシアヌレート化から得られる対応する三量体生成物もまた、先に挙げたジイソシアネート類として使用することができる。
【0035】
400ないし10,000、好ましくは400ないし5,000の分子量を有するポリエステルは、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、スベリン酸、3,3-ジメチルグルタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸あるいはトリカルボン酸あるいは二量体脂肪酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、二量体脂肪族アルコール、グリセリン又はトリメチロールプロパンなどの低分子量ジオール、或はトリオールとの縮合により調製できるものであって、前記ウレタン樹脂に好適な、ポリオールである。ε-カプロラクタムは“ポリカプロラクトン”としても知られるものであって、これに基くポリエステルは、本発明によって使用できる別の群のポリオールである。ヒドロキシ官能性ポリカーボネートもまた、ポリウレタン調製用に本発明に従って使用されるポリオール成分として使用できる。
【0036】
しかしながら、油性化学物質起源(oleochemical origin)のポリエステルポリオールもまた使用できる。このようなポリエステルポリオールは、例えば、少なくとも部分的にオレフィン性不飽和の脂肪酸を含む脂質混合物と、1ないし12炭素原子を有する一つあるいは二つ以上のアルコールとのエポキシ化トリグリセライドを、完全に開環し、ついで前記トリグリセライド誘導体の部分的エステル交換することにより、アルキル基中に1ないし12炭素原子を有するアルキルエステルポリオールを生成させることによって製造できる。他の適当なポリオールとしては、ポリカーボネートポリオールおよび二量体ジオール(Henkel)ならびにヒマシ油とその誘導体などがある。例えば、テトラヒドロフランの酸性重合により生じるポリテトラメチレングリコールもまたポリオールとして、少なくとも他と一緒に使用できる。ポリテトラメチレングリコールの分子量範囲は、200ないし6,000であり、好ましくは400ないし4,000である。
【0037】
ヒドロキシ官能性アクリレートあるいはメタアクリレートはこれら自身既知であるが、ポリオールとしても使用できる。これらの分子量範囲は、約400ないし10,000である。
【0038】
上記出発物質の分子量は、一般に製造者によって測定法に言及することなしに述べられている。これらの出発物質については、これに対して製造者が対応する分子量あるいは分子量範囲を報告することが適切であり好ましいことである。
【0039】
もしポリウレタン樹脂製剤(preparations)が水溶液システムであり、あるいはこの様なシステムに組入れられるべきものである場合、前記ポリウレタンプレポリマーは、原則として、遊離イソシアネート基を有しないものである。むしろ、これらのポリウレタンプレポリマーは、ブロッキング剤を使って、少なくとも広範囲にブロックされているものである。これらのブロッキング剤は、アルドキシム、ケトキシム、ラクタム、イミダゾール化合物、ジアルキルマロン酸エステルあるいはアセト酢酸エステルなどのβ-ジカルボニル化合物から選ぶことができる。他のブロッキング剤は、これら自身は既知であるが、アルコール、フェノール、特にアルキルフェノール、チオアルコール、チオフェノール、第二アミン、アミド、イミドあるいはヒドロキサミン酸エステルであってもよい。これらのブロッキング基は、必要ならば触媒を伴うバインダー系の硬化あるいは架橋の際に、遊離され、前記イソシアネート基は、遊離し、次いで他のバインダー成分からの他の反応性基、例えば、ヒドロキシル基あるいはアミノ基などと反応でき、それによって分子量の生長、あるいはバインダー系の架橋に寄与する。
【0040】
100ないし180℃の温度範囲で分離する保護基でブロックされているイソシアネート基を有するポリウレタンプリポリマーを用いることが好ましい。このようなポリウレタンプレポリマーが、前記工程d)においてPMTを加熱している間に、保護基が分離するのを確実にし、ポリウレタン樹脂と架橋剤c2)との反応により、被膜が硬化することができる。フェノール、カプロラクタム、特別なアミンおよびオキシムがこの性質を有する好ましいブロッキング剤である。硬化の際のPMTは、保護基に適合していて、保護基がPMTより低い温度で分離しなければならない。
【0041】
前記工程d)において、硬化の間に、架橋剤c2)は、ウレタン焼付け樹脂の、末端がブロックされているイソシアネート基と反応し、全有機バインダーシステムが硬化するようにする。架橋剤は、したがって、末端がブロックされたイソシアネート基と反応性のある基を有していなければならない。このような基は、具体的に云えばヒドロキシル基である。ここで、架橋剤それ自身がプレポリマーであることが好ましい。例えば、これを、ヒドロキシル基を含むポリマー類、ポリアクリレート類、ポリエーテル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリカーボネート-ポリエスエステル類およびこれらの混合物から選ぶことができる。
【0042】
腐食を防止する顔料c3)は、好ましくは、アルカリ金属イオンとイオン交換できる二価あるいは多価金属のカチオンを含む無機顔料から選ばれる。特に、前記二価あるいは多価金属のイオン交換可能なカチオンは、金属表面の腐食の際に発生し得るヒドロキシルイオンにより、水に溶解しにくい化合物を形成するものであることが好ましい。室温(20℃)の水中において、10-32より低い溶解度定数を有する化合物が“溶解しにくい”と考えられる。従って、前に文献EP-A-1 49 736において“カチオン交換マトリックス”という一般的な名称の下に挙げられている防食性顔料が好適なものである。
【0043】
特に好ましい防食性顔料は、積層状あるいは空間網状組織構造を有する珪酸塩を基本にするものであり、これらは、二価金属あるいは多価金属のイオン交換可能なカチオンを含む顔料である。ここで好ましいカチオンは、Ca、Ce、Zn、Sr、La、Y、AlおよびMgのカチオンである。例えば、防食性顔料は、少なくとも部分的にイオン交換可能なカルシウムイオンを有する塩の形態で生成する合成非晶質珪酸であってもよい。
【0044】
前記有機被覆剤の望ましい被膜厚さに対応するために、防食性顔料の平均粒度(D50値、例えば、光分散法により測定できる)は、0.5ないし10 μmの範囲にある。前記平均粒度は2〜4μmであることが好ましい。
【0045】
前記被覆剤c)は、上記固体成分c1)、c2)およびc3)の外に、一種以上の有機溶媒及び/又は水を含み、また塗料に通常用いられる他の活性物質あるいは補助物質を含むこともできる。もし有機溶媒が存在するならば、この有機溶媒は、21℃を越える引火点を有することが好ましい。被覆剤中の溶媒の存在は、少なくとも部分的なものである。なんとなれば成分c1)および/あるいはc2)は、有機溶媒中の溶液あるいは懸濁液として供給されるからである。
【0046】
溶媒の例としては、1-メトキシプロピルアセテート-2、必要により二塩基性エステルと混合された溶媒ナフサ、酢酸ブチルジグリコール、およびメトキシイソプロパノールがある。しかしながら、他の有機溶媒もまた、前記硬化工程d)で蒸気化できる限り使用可能である。実用例の表には、上記以外の有機溶媒の例も含まれている。
【0047】
前記被覆剤は、さらなる補助剤として硬化防止剤を含むことが好ましい。この目的には、熱分解法(pyrogenic)珪酸が特に適している。
【0048】
前記被覆剤は、塗被温度において被覆方法に適した粘度を示すべきである。前記被覆剤の粘度は、固体対溶媒の重量比に特に影響される。前記工程c)における被覆剤の固形分含量は、いずれの場合も、使用される被覆剤に対して、好ましくは30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることが特に好ましく、しかし80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることが特に好ましい。ここに、“固形分含量”は、所望のPMTにおいて残留する溶媒の一部分を含むものと理解される。固形分含量の測定において、ウレタン焼付け樹脂の保護基は、分離されている可能性がある。しかし保護基は全被覆剤の非常に小さな部分のみを占めるものであり、溶媒を蒸発させることによる固形分含量の測定において到達する精度は一般に1%以下なので、これは実際の測定において重要なものではない。これは実際の目的に、全く十分なものである。
【0049】
前記工程c)において被覆される被膜の防食作用は、有機バインダー(すなわち、成分c1)およびc2)の和)に対する防食性顔料c3)の重量比に依存する。もしこの比が、0.1以上、好ましくは0.2以上であり、かつ0.75以下、好ましくは0.6以下であるならば、良好な防食効果が得られる。これよりも低い重量比では、防食作用が次第に減少する。重量比がより高くなると、有機被膜の基質への接着に及ぼす悪影響が増大する。
【0050】
本発明の方法により被覆される金属板、好ましくは亜鉛板(50重量%を越える亜鉛を含む亜鉛合金の板を包含する)は、個々の板、連続したストリップ、あるいは成形された部品にすでに変形された板、および必要により接合された板である。個々の板および成形部品は、前記工程a)およびc)のための化成処理剤のそれぞれの中に浸漬することにより、あるいはこれらに前記化成処理剤をそれぞれ噴霧することにより被覆される。しかしながら、本発明の方法は、連続金属ストリップに対するいわゆるノーリンスプロセスに用いるのに殊に適している。ついで、前記工程a)およびc)は、これらの工程および硬化工程d)の間で、水洗浄なしで、ローラー塗被法により施される。汚染された洗浄水を用いることが無いので、この様な方法は殊に環境的に優しいものである。化成処理液が、金属表面と接触後に、処理浴中にあるいは供給タンク中に戻ることがないということは、さらなる利点である。これにより化成処理液の汚染が防がれる。
【0051】
作りたてのストリップがそうであるように、本発明の被覆方法を適用する前に、ロールから引き出されたとき、亜鉛板の表面は輝いている。しかしながら、腐食防止の一時的手段として、金属板に表面処理を施したものであってもよい。本発明の方法はまた、化学的にエージングあるいは“プリウエザリング”され得る板に好適である。導入部において述べたように、この様な処理は、天然のパティナ層の視覚効果を再現する。硫酸および/あるいは硝酸などの強酸の希釈溶液を、前記プリウエザリング用に、使用することが好ましい。パティナ状の層も生じさせる化学エージングのために、炭酸アルカリ溶液もまた使用できる。この場合、水酸化亜鉛および/あるいは炭酸亜鉛が金属板の表面に析出する。他方、酸性プリウエザリングで生成するものは主として酸化亜鉛である。
【0052】
本発明の被覆方法の前に、亜鉛板を通常の洗浄あるいは活性化に供することができる。これは、化学的(アルカリあるいは酸洗浄、あるいは酸洗い)、あるいは機械的に(ブラシによるなど)実施することができる。
【0053】
本発明の方法の結果、表面被覆された金属板、好ましくは亜鉛板(必要により成形された部品の形状にある)が得られ、その表面には、理想的には、金属あるいは前処理された金属の輝く表面がなおすけて認められる。したがって、前記金属板はその金属的あるいはパティナ層様の外観を保持する。このことは、美的理由から特に望ましい。したがって、本発明の方法により生じた被膜上に塗料を塗布することは、通常行われない。しかしながら、このことは、前記工程c)で塗布された有機被膜上の塗料層が、前処理されていない金属板上の塗料層よりも著しく良く接着するという可能性を排除するものではない。また、望むならば染料あるいは着色顔料を前記工程c)の被覆剤に添加することにより、さらに表面に塗料を塗ることなしに塗料が塗られた金属表面の印象を生じさせることができる。
【0054】
前述に示した目的は、本発明の被覆方法により達成される。亜鉛板の白錆形成に対する抵抗(例えば、DIN 50017 KWによるウエザリング試験により測定可能)が向上する。屋外曝露耐候試験の初期において、例えば、亜鉛表面上の予備形成された腐食生成物の剥離による亜鉛イオンの溶出はない。長期試験における亜鉛イオンの溶出は、未処理の亜鉛表面と比較すると明らかに減少する。被覆された被膜は極めて高い耐光性を有し、その結果紫外線試験において、粉末化(chalking)、褪色あるいは割れを生ずることがない。この向上した長期防食性は、また特に流れる雨水中、及び/又は、土壌中への亜鉛の侵入を減らすという目的を達成するものである。
【0055】
さらに、本発明の方法により形成された被膜は、被膜部品の成形の際に、被膜が密着しているという要件を満たす。本発明により被覆された被膜は、特に蝋付けなどの接合方法を妨げるものではない。この被膜は十分に薄く、除去できるものであり(酸性あるいはアルカリ性)蝋付けフラックスを塗布することにより蝋付け個所を設けたとき、蝋付けフラックスが被膜を透過し得るものであり、亜鉛表面がエッチングされたとき、蝋付けフラックスにより除去されるものである。したがって、本発明により被覆された金属板は、蝋付けの準備のための特別な手段を必要とすることなしに、通常どおりに蝋付けできるものである。
【0056】
本発明のさらなる目的は、本発明において記載されている方法により得られる被膜を担持する金属板、特に亜鉛板、この様な金属板から成形された部品、あるいはこの様な金属板あるいはこの金属板から成形された部品を含む物品の提供である。
【0057】
本発明は、さらに前記の様な金属板、成形部品あるいは建築物の外域中の物品の使用に関するものである。外屋根、建物の正面、及び突き出し屋根窓用の部品、および他の建築物部品は、本発明により被覆された亜鉛板および亜鉛板の成形部品の例及び、それらの使用の例である。成形部品は、例えば、雨樋および縦樋などの屋根排水系に使用できる。これらは、ソーラーシステムの部品としても使用できる。他の代表的な応用例は、窓敷居やドアなどのカバーである。
【0058】
すべてのこれらの異なる用途では、共通して、本発明により被覆された亜鉛表面がウエザリングと日光の影響に曝される。本発明の被覆方法の適用により、これらの影響に対する亜鉛表面の抵抗は、未処理亜鉛板あるいは通常処理の亜鉛板と較べて、明らかに向上している。亜鉛侵入の減少という環境保護の目的は達成される。
【実施例】
【0059】
市販のノーリンス化成処理溶液(商標:Granodine 1456、Henkel KgaA製、デュッセルドルフ)を実験室用コーター(すなわち、ローラー法)により、プリウエザリング処理された亜鉛板(Rheinzink、TACスレートグレー、0.7 mm厚)に塗布した。この酸性化成処理水溶液は、クロムおよびシランを含まず、チタンおよびジルコニウムの錯弗化物、燐酸、マンガンイオン、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスフォン酸、および本明細書に記載された特許EP-B-319 016およびEP-B-319 017によるN-メチルグルカミンで置換されたポリビニルフェノールを含むものであった。水でリンスすることなしに、この化成処理溶液を、循環エアオーブン中、180℃のオーブン温度で、乾燥した。塗布とオーブンへの移動の間の時間は約10秒であった。前記金属板をオーブン中に約10秒残置し、基質温度が 80℃ に到達するようにした。層被覆量は10 mg Ti/m2であった。
【0060】
ついで、下記表に記載の被覆剤を、螺旋ドクターブレードで塗布した。硬化後の被覆層の厚さは約8 μmであった。塗膜された前記金属板は、水の洗い流しなしに、循環エアオーブン中で、280℃のオーブン温度で、硬化された。オーブン中の滞留時間を約38秒に設定して、180℃のPMTに到達するようにした。硬化後の被膜の厚さは約8 μmであった。
【0061】
被覆された金属板について、防食性、被膜密着性および耐光性の標準試験を行った。
【0062】
ドイツ標準規格DIN 50017 KFW(alternating climate(天候の交互変化))による凝縮水試験。本試験は、金属板を、加熱できる水タンクを有する試験チャンバー中に、加湿雰囲気中において貯蔵し、前記金属板上に水が凝縮するようにした。8時間後、試験チャンバーを開放、あるいは換気した。試験チャンバーを16時間この状態にしておいた。次に、試験チャンバーを閉じ、再び前記テストサイクルを開始した。白錆が現れるまでのサイクル数を表中に示す。サイクル数が大きければ、防食性が高い。最大で25サイクルで試験を終わらせた。
【0063】
ドイツ標準規格DIN EN ISO 13523-6(cupping test(カップテスト))による押込み加工後の接着試験。本試験においては、切削工具により被膜試験板に碁盤目(1 mm離れた少なくとも6本の平行切込み、これと直角な6本以上の付加的な類似の切込みを有する)を形成した。各切込みは金属基質に頂達していなければならない。深絞り装置により、後ろ側からラムをプレスすることにより、試験板は、碁盤目切り込みの箇所で張出す。圧痕の深さは金属基質が裂けた場所における深さの約80%である。接着状態を評価するために、碁盤目状切り込み箇所における被膜に粘着テープを一様に接着させ、引き剥す。被膜の密着は、碁盤目により形成された正方形の引き剥がされた数により評価される。碁盤目試験についての標準規格(DIN EN ISO 2409)により、評価がおこなわれる。視覚評価による標準規格における数字から、G0ないしG5の碁盤目特性度が定められる。G0では、切込み端は完全に滑らかで、碁盤目中の正方形は全く除かれていない。G1では、碁盤目ラインの交点で被膜の小さなかけらが剥離する。剥離する面積は、碁盤目面積の5%より著しく大きくはない。被膜の剥離が大きくなる程碁盤目試験特性が高くなる。
【0064】
DIN EN ISO 2409による碁盤目試験。この試験は、上述の密着性試験の代りに、押込み加工後に、但し押込み加工による金属板の変形なしで、行われる。
【0065】
ECCA試験法 T10による耐光性。金属板を試験チャンバー中で周期的に光、水、高温および湿った雰囲気に曝す。前記金属板に、UV-Bランプで総計500時間照射する。ドイツ標準規格DIN 53230、標準規格中の表2に従い、相対評価スケール0 ないし5 で下記の評価がなされる。特性数字0:変化なし、特性数字1:かすかに変化あり、特性数字2:僅かな変化あり、特性数字3:穏やかな変化あり、特性数字4:過酷な変化あり、特性数字5:非常に過酷な変化あり。
【0066】
下記の表は、試験結果を含む。実施例No. 2、19および20は本発明の例ではない(脂肪族ウレタン焼付け樹脂が無いか、あるいは不十分な場合)。他の実施例No. は、本発明に従って行われたものである。濃度は重量%である。
表中、被膜被覆量は、10mgTi/m2であった。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムおよびその合金、亜鉛およびその合金、および亜鉛めっき鋼あるいは亜鉛合金めっき鋼から選ばれる金属(ここで前記金属は必要ならば洗浄される)を被覆するために、
a) 前記金属を、少なくとも一つの金属Mの単純な塩あるいは錯塩を含む化成 処理溶液と接触させることにより化成処理(これ自身は現技術状態におい て公知である)に供して、0.01ないし0.7 mmol/m2の金属Mを含む化成処理 層が形成されるようにし、
b) 必要ならば前記化成処理層を水で洗浄し及び/又は乾燥し、
c) 前記化成処理層を被覆剤と接触させ、
但し前記被覆剤は、
c1) 総計5ないし30重量%の一種以上の脂肪族架橋性ウレタン焼付け樹脂と、
c2) 総計10ないし30重量%の、1種以上の前記成分c1用架橋剤、および
c3) 4ないし30重量%の、一種以上の防食性顔料、を含み、
残りは、一種以上の有機溶媒及び/又は水、および必要ならば他の活性あ るいは補助物質からなり、さらに、
d) 前記工程c)において形成された被膜を100℃以上の基質温度に加熱して硬 化させる、
ことを含むことを特徴とする、アルミニウムおよびその合金、亜鉛およびその合金、および亜鉛めっき鋼あるいは亜鉛合金めっき鋼から選ばれる金属を被覆する方法。
【請求項2】
前記金属Mが錯弗化物の形態で含まれ、クロムが含まれていない酸性水溶液を、前記化成処理a)に用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程c)で塗布される前記被覆剤の量が、前記硬化工程d)後において、得られる被膜の厚さが、3ないし35 μm、好ましくは6ないし20 μmになるような量である、請求項1および2の一項あるいは両項に記載の方法。
【請求項4】
前記ウレタン焼付け樹脂c1は、100ないし180℃の範囲内の温度において分離する保護基でブロックされている、請求項1ないし3の一項以上に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋剤c2が、ポリアクリレート類、ポリエーテル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類およびヒドロキシル基を含むポリカーボネート−ポリエステル類、あるいはこれらの混合物から選ばれる、請求項1ないし4の一項以上に記載の方法。
【請求項6】
前記防食性顔料c3)が、アルカリ金属イオンとイオン交換可能な二価金属あるいは多価金属のカチオンを含む無機固体物質から選ばれる、請求項1ないし5の一項以上に記載の方法。
【請求項7】
前記工程c)における被覆剤の固形分含有量が30重量%以上、好ましくは40重量%以上であり、しかし80重量%以下、好ましくは70重量%以下である、請求項1ないし6の一項以上に記載の方法。
【請求項8】
前記防食性顔料c3の、前記結合剤c1 + c2に対する重量比が、0.1以上、好ましくは0.2以上であり、かつ0.75以下、好ましくは0.6以下である、請求項1ないし7の一項以上に記載の方法。
【請求項9】
前記金属が連続したストリップの形態において被覆され、前記工程a)およびc)が、ローラー塗布プロセスにより実施され、これらの分工程および硬化工程d)の間で、水によるすすぎ洗いが施されることがない、請求項1ないし8の一項以上に記載の方法。
【請求項10】
請求項1ないし9の一つ以上を用いた方法により得られる被膜を担持している金属板、前記金属板から成形される部品、あるいは前記金属板又はそれから成形された部品を含む部品。
【請求項11】
請求項10に記載の金属板、成形部品あるいは物品の、建築物の外部領域における使用。

【公表番号】特表2008−529759(P2008−529759A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553472(P2007−553472)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012012
【国際公開番号】WO2006/084491
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】