説明

金属空気電池、燃料電池および超コンデンサー用の電極材料

本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料を含む第1層と、第1層上に配置されたメソ多孔性ナノ構造親水性材料を含む第2層とからなる電極に言及する。さらなる態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料とメソ多孔性ナノ構造親水性材料との混合物を含む単一層、または多孔性ナノ構造材料を含む単一層であって、多孔性ナノ構造材料の表面に結合される金属ナノ構造体を含有する単一層からなる電極に言及する。本発明は、これらの電極の製造、並びに金属空気電池、超コンデンサーおよび燃料電池におけるそれらの電極の使用にさらに言及する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年9月8日出願の米国仮出願第61/095,085号の優先権の便益を主張する。前記特許文献の内容は、すべての目的のために、参照により余すところなく本願に援用される。
【0002】
本発明は、電気化学の分野、とりわけ、金属空気電池、燃料電池および電気化学キャパシタの電気化学に言及する。
【背景技術】
【0003】
高いガソリン価格のこの時代において、太陽電池およびバッテリーのようなエネルギー利用および貯蔵装置の重要性は強調するまでもない。金属空気電池は金属アノード(従来の一次電池に使用されるそれに類似)と、燃料電池に使用されるそれに類似した空気ガス拡散電極(カソード)とを組み合わせている。動作中、金属アノードは、空気−ガス拡散電極(または空気電極(AE))上で還元される空気からの酸素を消費して、電気化学的に酸化される。AEは、一次電池において従来の金属酸化物カソードに対して2つの明瞭な長所、すなわち、容量とは無関係な無限の充電容量および低い重量を有する。金属空気電池のアンペア時容量は、空気電極ではなく活性金属アノードの量によって決定される。従って、金属空気電池の特定の特性(例えばAh/kgおよびAh/lなど)は、他の電気化学エネルギー貯蔵システムのそれよりも著しく高い。金属空気電池の中でも、亜鉛空気電池は、最も高い比エネルギー(Wh/kg)およびエネルギー密度(Wh/L)の安定した性能および低いコストを提供する。亜鉛空気電池は、非毒性材料を含有しており、ほとんどの再充電可能なリチウムイオン電池の2〜4時間と比較して、10〜14時間も動作することができ、かつそれらの電荷を失うことなく、長期間にわたって保管することができる。亜鉛空気電池の軽い重量は、良好な電力密度(重量または容積の単位あたりの力)をもたらし、これは携帯用途にとって非常に理想的である。
【0004】
亜鉛空気電池は、セル内の適当な水性電解質を介した反応性金属亜鉛アノードの空気カソードへの電気化学的結合(electrochemical coupling)によって電力を生成する。セル動作(放電)中、周囲空気から吸着された酸素はカソード(空気電極(AE)と称される)で酸素還元触媒(ORR)を用いて還元される(OH)とともに、亜鉛金属(アノード)が酸化されて(Zn2+)、アノードとカソードとの間に接続された外部回路を介して使用可能な電流を提供する。Znが水性電解質から電着されて、アノードを補充することができるので、亜鉛空気電池は、一次電池でもあり、二次電池でもあり得る。
アノードでは:2Zn+4OH→2ZnO+2HO+4e=−1.25Vカソードでは:O+2HO+4e→4OH=0.40V
全反応:2Zn+O→ZnO E(OCV)=1.65V
空気ガス拡散電極(AE)は、大気に露出した一方の表面と、電池の水性電解質に露出されもう一方の面とを有し、Zn空気電池セル性能における制約要素(limiting component)である。これはカソードにおける酸素還元が、電池放電における大部分の電圧低減に寄与する実質的な分極損失をもたらすためである。従って、簡便な電気化学速度論を有するAEの開発は特に重要である。AEの電気触媒性能に影響を与える多数の要因が確立されている、すなわち、(i)用いる炭素質材料は伝導性であり、大きな表面積を有し、かつ酸素還元反応(ORR)を増強するために十分なサイトを有していなければならず、(ii)選択された電極触媒(electrocatalyst)は、酸素結合の効率的な切断を必要とし、(
iii)AEの内部細孔構造は電解質およびガス状反応体の適当なチャネリングのために最適化されるべきであり、また(iv)AEの疎水性は電解質フラッディング(electroly
te flooding)を最小限にするように調整される。従って、AEの性能は、その構造、および用いられる炭素材料および電極触媒の種類に大きく依存することが分かる。
【0005】
上記の要因に起因して、一般に使用されるAEの構造はかなり複雑である(図1A)。一般に、AEは、空気に接する疎水性層3(炭素)と、電解質1に接する親水性層4(炭素)とから構成されている。疎水性層3は水性電解質に対して不透過性でなければならないが、空気に対しては透過性でなければならない。親水性層4は単一/複合酸素還元触媒から成る。前記層は双方とも、前記層を導電性金属スクリーン5(通常ニッケル製)上に結合する適当なポリマーバインダーを含む。親水性層4は、炭素と適当なORR触媒(貴金属(Pt、Ag)または酸化物(MnO、ペロブスカイト))との物理的混合物から成る。
【0006】
今日の亜鉛空気電池は、活性炭およびバインダーの濃いペーストを生成し、次に、それを支持体および集電体の双方として作用するニッケル金属スクリーンにプレスすることによって構成されるAEから成る。そのときニッケル金属スクリーンの一方の側面は疎水性層(活性炭+バインダー)から成り、他方の側面は親水性層(活性炭、バインダー、触媒)から成る。
【0007】
カーボンナノチューブ(CNT)は、それらの高い表面積、非常に優れた電気的、機械的、および熱的な特性のために、基礎研究および応用研究の双方において多くの注目を引いてきた。これらの特性により、CNTは、有望な見込みのある触媒担体、並びに金属空気電池および燃料電池における活性炭の代替品と見なされている。このために、触媒粒子(例えばAg−MnO、Pt、MnOなど)を有するか、または有さないカーボンナノチューブ上における電極触媒酸素還元についての研究が存在する。これらの研究では、担体としてCNTを用いることは、AEの導電率を改善しただけでなく、酸素の分子の還元過程のための活性三相界面面積を有意に増大したことが報告された。上記の研究では、AEは、CNTをバインダーおよび他の添加物と混合して、ニッケルメッシュスクリーン上に配置される従来の方法で製造された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記で言及した問題のうちの少なくとも一部を克服するガス拡散電極として用いられるのに適したさらなる材料を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料を含む第1層と、第1層上に配置されたメソ多孔性ナノ構造親水性材料を含む第2層とからなる電極に言及する。さらなる態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料とメソ多孔性ナノ構造親水性材料との混合物を含む単一層、または多孔性ナノ構造材料を含む単一層であって、前記多孔性ナノ構造材料がその多孔性ナノ構造材料の表面に結合される金属ナノ構造体を含む単一層からなる電極に言及する。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、本願に記載される電極を備えた金属空気電池、または燃料電池、または超コンデンサーに関する。
別の態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料を含む第1層を、メソ多孔性ナノ構造親水性材料を含む第2層上に配置または堆積することを含む電極を製造する方法に言及する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料とメソ多孔性ナノ構造親水性材料とを混合することと、単一電極層を形成することとを含む電極を製造する方
法に言及する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、多孔性ナノ構造材料の電極を製造する方法に言及し、前記多孔性ナノ構造材料は、その多孔性ナノ構造材料の表面に結合される金属ナノ構造体を含む。前記方法は、多孔性ナノ構造材料を、金属ナノ構造体前駆体を含有する溶液と混合して、ナノ構造材料の金属ナノ構造体前駆体を含有する溶液との懸濁液を得ることを含む。さらなる工程において、前記方法は金属ナノ構造体前駆体を化学的に還元して、80℃以下の温度で、前記ナノ構造材料の表面においてナノ構造体の析出を可能にすることを含む。
【0013】
さらなる態様において、本発明は本願に記載されるような電極、または金属空気電池もしくは燃料電池もしくは超コンデンサーの製造のための本願に記載の方法によって製造された電極の使用に関する。
【0014】
本発明は、詳細な説明に関して、非限定的な実施例および添付図面と共に検討されると、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】金属空気電池の様々な構成を示す図(一般に、亜鉛空気電池のような当業において既知の金属空気電池(図1A)は、空気に接する疎水性層(炭素)3と、電解質1に接する親水性層4(炭素)とから構成される。疎水性層3は水性電解質1に対して不透過性でなければならないが、空気に対しては透過性でなければならない。親水性層4は単一/複合酸素還元触媒から成る。前記3,4層は双方とも、導電性金属スクリーン5(通常ニッケル製)の上に前記層を結合する適当なポリマーバインダーを含む。親水性層3は、炭素と適当なORR触媒(貴金属(Pt、Ag)または酸化物(MnO、ペロブスカイト))との物理的混合物から成る。対向電極2は、亜鉛または酸化アルミニウムのような、金属空気電池に通常用いられる金属から製造され得る。図1Bは本願に記載するような電極3,4を用いた本願に記載の金属空気電池を示す。電極3,4において、疎水性層3および親水性層4は、いかなるバインダー材料も必要とすることなく、互いの上に積層されるか、または積み重ねられている。親水性層に含まれるナノ構造材料は触媒ナノ構造体と混合され得るか、または、前記ナノ構造材料はそのような触媒ナノ構造体に結合することができる(修飾ナノ構造材料)。本願で言及され図1Cに示されるさらなる実施形態において、親水性電極材料および疎水性電極材料は互いと混合されて、1つの単一層9を形成する。また図1Cに示された実施形態において、親水性層に含まれるナノ構造材料は触媒ナノ構造体と混合され得るか、または、前記触媒ナノ構造体は親水性ナノ構造材料に結合され得る(修飾ナノ構造材料)。本願で言及され図1Dに示される別の実施形態では、前記電極材料は、金属ナノ構造体で装飾されたナノ構造材料から形成され、単一層10を形成する。金属ナノ構造体で修飾されたナノ構造材料は、例えば、カーボンナノチューブのようなナノ構造材料を含み得る。このナノ構造材料の表面には、リンカーを介して、銀ナノ粒子、MnOナノフレーク、MnOナノフラワーまたはMnOナノワイヤーのような金属(金属性)ナノ構造が結合される)。
【図2】a)従来、b)AEタイプ1(図1B)(積層P−COOHバッキーペーパー)、およびc)AEタイプ2(図1C)(P−およびCOOH−CNT、50:50)の空気カソードおよび亜鉛箔アノードを用いた、Zn空気電池の定電流放電曲線。
【図3】a)カーボンブラック(従来)、b)100%P−CNT製のAEタイプ2電極、およびc)100%COOH−SWCNT製のAEタイプ2電極の空気カソードおよび亜鉛箔アノード使用したZn空気電池の定電流放電曲線。
【図4】可変量のCOOH−SWCNT(P3)およびP−SWCNT(P2)を有するAEタイプ2電極構成を有する亜鉛空気電池の定電流放電曲線。
【図5】亜鉛箔およびAEタイプ2構成の空気電極を用いて構成された亜鉛空気電池におけるCOOH−SWCNT(P3)の重量パーセントの変化に関するa)放電電圧およびb)放電時間の変化を示す図。
【図6】a)6〜8nm、b)3〜5nm、およびc)12〜15nmの異なる大きさの銀(Ag)で修飾された100%のCOOH−SWCNTの定電流放電曲線を示す図。亜鉛−空気電池はAEタイプ2電極構成を用いて構成された。
【図7】(a)12〜15nm、(b)6〜8nm、(c)3〜5nmの粒子サイズを有するAgナノ粒子修飾SWNTのTEM像、並びに試料cのX線回折。
【図8】厚さ、重量および導電率についてのSWCNTに基づいたガス拡散電極(GDE)の市販GDE(エレクトリック フューエル リミテッド(Electric Fuel limited)、イスラエル、製品ライン E4A;バスフ(BASF)、ドイツ、製品ライン ELAT)との比較を示す図。
【図9】未装飾SWCNT、市販のE4A空気電極、および異なる粒子サイズを有するAgナノ粒子修飾SWCNTの動電位分極を示す図。
【図10】6MのKOH溶液中、10ミリボルト/sのスキャンレートでの、異なる粒子サイズ(a〜d)を有するAg修飾SWCNTのサイクリックボルタモグラムの比較を示す図。
【図11】未装飾およびAg修飾SWCNTフィルムの酸素還元についての全電荷を示す図。
【図12】異なる大きさのAgナノ粒子で修飾されたSWCNTに基づいたGDEを用いたZn空気電池の定抵抗による放電を示す図。異なる量のZnが用いられて、異なった装置の動作時間をもたらしていることに留意されたい。
【図13】本願に記載された方法得られた、ナノ構造材料の表面上に結合されたMnOナノフレークのTEM像を示す図。スケールバーは100nm。
【図14】本願に記載する方法によって得られたMnOナノフラワー(左画像)、MnOナノワイヤー(中央画像)、およびMnO粉末(右画像)のSEM像を示す図(すべての画像におけるスケールバーは1μm)。
【図15】本願に記載する方法によって得られ、かつ本願に記載するように金属ナノ粒子による装飾に用いられるTiOナノチューブのTEM像を示す図。スケールバーは100nm。
【図16】(a)SWCNTのカルボキシル基における銀ナノ結晶の堆積、および(b)高pHにおけるSWCNT表面からの水酸化銀の分解に対する提案された反応機構を示す図。
【図17】(a)約13nm、(b)約4nm、および(c)3nmのAgナノ粒子サイズを有するAg−CNT(銀修飾カーボンナノチューブ)のTEM像を示す図。
【図18】ナノ構造材料の銀装飾に対する様々な金属前駆体濃度(この場合AgNO)の効果を示す図であって、(a)0.15Mにおける大きなコロイド銀クラスター形成(Ag−CNT6)、および(b)0.05Mにおける平均サイズ1nm(AgCNT2)。
【図19】AgCNT6の金属銀の反射を示すXRDプロット。
【図20】多孔性ナノ構造材料を製造する方法の一般的原理を開示する図であって、前記多孔性ナノ構造材料は、その表面に結合された触媒ナノ構造体を含む。図20に示すように、その表面上に結合されるリンカーを含むナノ構造材料(灰色の縦棒)は、ナノ構造前駆体を含有する溶液と混合される。<80℃の温度で前駆体材料を化学的に還元する工程において、前記ナノ構造体は、リンカーに結合することによって、前記ナノ構造材料の表面上に形成および析出する。
【図21】20mVs−1で0〜1Vまで測定した、プリスティンCNT、並びにCNTと6、10、30、50および70重量%のMnO(図21a)ナノフラワーおよび(図21b)ナノワイヤーとの混合物に対するサイクリックボルタモグラムを示す図。図21c:比静電容量対CNTと混合されたMnOナノフラワーおよびナノチューブの重量%であって、6重量%のMnOを有する電極が最も高い比静電容量を得たことを示している。
【図22】20mV/sで0〜1Vまで測定した、プリスティンCNT、およびCNTと6重量%のナノフラワー、ナノワイヤーおよびミクロンサイズ粉末のようなMnOナノ構造体との混合物に対するサイクリックボルタモグラムを示す図であって、(b)約1A/gで測定した(a)に示されたのと同一の装置に対する定電流電荷放電曲線。
【図23】表面に結合されたMnOナノ構造を有する単層カーボンナノチューブのTEM像を示す図。ナノ構造の平均サイズは約1〜10nmである。(左右の画像は同一の構造を示しているが、倍率が異なる。左画像のスケールバーは100nm、右画像スケールバーは20nm)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料を含む第1層と、第1層上に配置されたメソ多孔性ナノ構造親水性材料を含む第2層とからなる電極に言及する。さらなる態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料とメソ多孔性ナノ構造親水性材料との混合物を含む単一層、または多孔性ナノ構造材料を含む単一層であって、前記多孔性ナノ構造材料がその表面に結合された金属ナノ構造体を含む単一層からなる電極に言及する。
【0017】
電極が、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料を含むか、または同材料から成る第1層と、第1層上に配置されたメソ多孔性ナノ構造親水性材料を含むか、または同材料から成る第2層とからなる第1実施形態において、前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料は触媒ナノ構造体をさらに含むことができる。前記触媒ナノ構造体は、前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料と物理的に混合されているか、または前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料の表面に結合されているかのいずれかである。
【0018】
電極が、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料とメソ多孔性ナノ構造親水性材料との混合物を含むか、または同混合物から成る単一層からなる第2実施形態において、前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料は触媒ナノ構造体をさらに含むことができる。前記触媒ナノ構造体は、前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料と物理的に混合されているか、またはメソ多孔性ナノ構造親水性材料の表面に結合されているかのいずれかである。
【0019】
第3実施形態において、電極は、多孔性ナノ構造材料を含むかまたは同材料から成る単一層を含むかまたは同単一層から成る。前記多孔性ナノ構造材料は、その表面に結合された金属ナノ構造体を含み、言い換えれば、前記多孔性ナノ構造材料はまた、本願では、修飾ナノ構造材料または多孔性修飾ナノ構造材料とも呼ばれる。
【0020】
ナノ構造材料は、簡単なろ過、噴霧析出、またはスピンコーティングプロセスによって、安定した膜の形で容易に製造することができる。従って、それらの材料が当業においてそのような電極材料用に用いられる際には、図1Aに示したもののように、付加的なバインダー(PVDFのような)の必要性はない。
【0021】
例えば、金属空気電池において、上記の電極組成物を用いると、電池性能は著しく改善される(〜2.5x)。上記の電極組成物は、金属空気電池、燃料電池または超コンデンサーのような将来の装置の大きさおよび重量を実質的に低減する。これは携帯機器用途には非常に魅力的である。例えば、電池の重量は、これらの電極組成物に切り替えることにより、少なくとも50%以上低減することができ、従って、実際の装置の大きさがより小さくなり、より良好な携帯性を有するであろう。これらの電極組成物は、今日の柔軟でない金属空気電池を、プリント電源用途(printed power applications)に深い影響を及ぼすであろう柔軟な金属空気電池にすることもできる。
【0022】
一般に、本願で述べる実施形態に用いられるナノ構造材料は、本願で述べる用途において用いることができるあらゆる材料から製造することができる。例えば、ナノ構造材料は、2〜3例だけ挙げると、炭素材料、セラミック、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アクリルガラス、雲母(モスクワガラス)のようなガラス、アルミニウム酸窒化物、チタンのような金属、金属酸化物、ポリピロール、または前述の材料の異なるものから製造されたナノ構造材料の混合物から製造され得る。一実施形態において、前記ナノ構造材料は炭素材料から製造されている。炭素材料の例としては、活性炭、カーボンブラックおよびグラフェンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一例では、ナノ構造材料はTiOナノチューブのようなTiOから製造されるが、別の例では、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のようなカーボンナノチューブが用いられる。
【0023】
本発明に用いられるナノ構造材料およびナノ構造体は多孔質である。ナノ構造材料の細孔はマクロ細孔またはメソ細孔のいずれかである。IUPACの定義によれば、マクロ細孔は約>50nm〜約5μmの大きさを有する細孔と考えられ、一方、メソ細孔は約2nm〜約50nmの大きさを有する。多孔質構造により、ナノ構造材料およびナノ構造体は高い表面積を有する。ナノ構造材料およびナノ構造体は、少なくとも約50m/gであり得る大きな表面積によって特徴付けることができる。一実施形態において、ナノ構造材料の表面積は約100または200または300m/gである。
【0024】
ナノ構造材料およびナノ構造体とは、ナノメートル領域の寸法を備えた材料を指す。一実施形態において、ナノ構造材料およびナノ構造体の少なくとも1つの寸法は100nm未満である。別の実施形態において、ナノ構造材料およびナノ構造体は、典型的には1〜100nmに及ぶ寸法を有する(ここで、10オングストローム=1nm=1/1000マイクロメーター)。ナノ構造材料およびナノ構造体は以下の次元の種類、すなわち、
ゼロ次元(0D):ナノスフェア粒子(ナノ粒子とも称される、
1次元(1D):ナノロッド、ナノワイヤー(ナノ繊維とも称される)およびナノチューブ、および
2次元(2D):ナノフレーク、ナノフラワー、ナノディスクおよびナノフィルム、に分類することができる。ナノ構造材料およびナノ構造体のナノ構造としては、ナノチューブ、ナノフラワー、ナノワイヤー(ナノ繊維とも称される)、ナノフレーク、ナノ粒子、ナノディスク、ナノフィルムおよび前述のナノ構造の組み合わせ(例えばナノチューブおよびナノワイヤーの混合物)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
ナノチューブは、単層(SWNT)または二層(DWNT)または多層ナノチューブ(MWNT)であり得る。単層ナノチューブは、約0.7〜約10または20nmの径、または<20nmまたは<2nmの径を有する円筒シートによって画定され得る。前記ナノチューブは数マイクロメーターの長さ、すなわち、少なくとも1μmまたは少なくとも2μm、または約1μm〜5μmの長さを有する。二層または多層ナノチューブは別のものに緊密に付着した多数の円筒から成る。
【0026】
一実施形態において、ナノチューブは炭素からつくられており、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)または多層カーボンナノチューブ(MWCNT)として用いることができる。単層カーボンナノチューブは、構造が軸対称な一次元であり、一般に、キラリティーと呼ばれるらせん状の立体構造を示すように中空の円筒形に巻かれたグラファイト面(いわゆるグラフェン)シートと言える。
【0027】
一部の実施形態において本願に記載するように、メソ多孔性ナノ構造親水性材料およびメソ多孔性ナノ構造疎水性材料が用いられる。
「疎水性」という用語は、一般に、水のような極性溶剤に親和性をほとんど有さない化合物または構造を指す、つまり、それは非湿潤性である。そのような疎水性構造または化
合物は、外部の極性環境、つまり水のような極性溶媒に露出される極性基を含まないことにより特徴付けられる。他方で、「親水性」という用語は、一般に、極性溶媒と、とりわけ水と、または他の極性基と、相互作用する化合物または構造を指す。そのような親水性構造または化合物は、外部環境、つまり極性溶媒に露出される極性基を含むことによって特徴付けられる。
【0028】
したがって、メソ多孔性ナノ構造材料が親水性であるか疎水性であるかは、メソ多孔性ナノ構造材料の外部環境に露出された基の極性に依存する。または、換言すると、極性は、メソ多孔性ナノ構造材料が現わす表面分子に依存する。
【0029】
メソ多孔性ナノ構造材料は、該材料が、その表面において、いかなる極性基も含まないか、または少なくともほとんど極性基を含まない場合、疎水性である。
疎水性ナノ構造材料は、該材料が酸化処理を受けていない、すなわち、該材料が未酸化である場合、疎水性であると特徴付けることができる。「未酸化の」ナノ構造材料の使用は、ナノ構造材料が酸化処理を受けておらず、よってその表面にいかなる極性基も含まないか、または実質的に極性基を含まないことを意味する。そのような酸化処理は当業において知られており、そのような酸化処理としては、2〜3例だけ挙げるとHSO/HNOまたはKMnOまたはHSO中における還流のような強酸または酸化剤(oxidant)による還流処理(refluxing treatment)、またはナノ構造材料を電気化学処理に供すること、またはナノ構造材料を不飽和カルボン酸(例えばアクリル酸)またはビニルピロリドンのような二重結合含有分子と反応させることが挙げられ得るが、これらに限定されるものではない。
【0030】
一例において、「未酸化〜」という用語は、酸化処理を受けていない、かつ/または官能化されていないナノ構造材料を指す。「官能化」とは、ナノ構造材料がナノ構造材料の表面に官能基を導入するように処理されることを意味する。例えば、酸による酸化はナノ構造材料の表面に−COOH基を導入する。シリル化による官能化はナノ構造材料の表面にシラン基を導入するであろう。シリル化に用いられる化合物としては、例えばアミノシラン、グリシドキシシランおよびメルカプトシランが挙げられる。
【0031】
炭素からつくられるナノチューブまたはナノワイヤーのような市販のナノ構造材料は、通常は酸化または官能化されておらず、よって疎水性である。未処理の、すなわち、酸化または官能化されていない、ナノ構造材料は、多くの場合、プリスティン(pristine(「
元の状態の」の意)ナノ構造材料と呼ばれる。
【0032】
対照的に、親水性ナノ構造材料はそれらの表面に極性基を含む。そのような極性基は、ナノ構造材料の表面上に結合され、よって前記材料を親水性にするリンカーであり得る。リンカーは、ヒドロキシル基、ピレン、エステル、チオール、アミン、またはカルボキシル基のような官能基を含む。また、前述の群のうちの異なるリンカーの混合物を用いることも可能である。適当なリンカーの例としては、ポルフィリン(アミン基を含む)またはポリエチレングリコール(PEG;ポリ(エチレンオキシド)としても知られている)(−OH基を含有)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
一実施形態において、カルボキシル基は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、シクロアルカンカルボン酸または安息香酸を含むが、これらに限定されるものではないリンカー中に含まれ得る。一例として、4−アミノ安息香酸が挙げられる。更に、ヒドロキシル基は、リン酸またはスルホン酸を含むが、これらに限定されるものではないリンカーに含まれ得る。
【0034】
例えば、一実施形態において、親水性ナノ構造材料は、その表面にカルボキシル基を有
するカーボンナノチューブのような炭素質材料から製造されている。疎水性ナノ構造材料および親水性ナノ構造材料に用いられる基礎材料は同一であってもよいし、または異なっていてもよい。例えば、一実施形態において、疎水性ナノ構造材料に用いられる材料はプリスティンカーボンナノチューブであり、一方、親水性ナノ構造材料に用いられる材料は、酸化されており、よってその表面にカルボキシル基−COOHを含むリンカーを有するカーボンナノチューブである。別の実施形態において、疎水性ナノ構造材料は疎水性TiOナノチューブであり得、一方、親水性ナノ構造材料は、酸化されており、よってその表面にカルボキシル基−COOHを含むリンカーを有するカーボンナノチューブである。
【0035】
例えば、図1Bおよび図1Cに示すような金属空気電池用の電極材料としては、貴金属触媒のような任意の触媒材料を添加することなく、疎水性および親水性のナノ構造材料を単体で使用することが適当であることが示された。
【0036】
さらなる実施形態において、メソ多孔性親水性ナノ構造材料には触媒材料が添加される。前記触媒材料は、単にメソ多孔性親水性ナノ構造材料と混合されて物理的混合物を形成することができるか、または前記触媒材料はメソ多孔性親水性ナノ構造材料に結合され得る。前記触媒材料は、ナノ粒子、ナノフラワー、ナノワイヤーまたはナノフレークのようなナノ構造体の形で、メソ多孔性親水性ナノ構造材料と混合され得るか、または、ナノ粒子、ナノフラワー、ナノワイヤーまたはナノフレークのようなナノ構造体の形で、メソ多孔性親水性ナノ構造材料に結合され得る。例えば、触媒ナノ構造体とナノ構造材料との物理的混合物は、ナノ構造材料の全重量に基づいて、約0.5重量%〜約10重量%、または約0.5重量%〜約4重量%の触媒ナノ構造体を含有することができる。
【0037】
さらなる実施形態において、触媒材料はまた、多孔性ナノ構造材料の一部を形成し、その実施形態の前記触媒材料は金属ナノ構造体の形態にある。前記金属ナノ構造体は前記多孔性ナノ構造材料に結合されて、例えば、図1Dに示されるように、単一電極材料層を形成する。図1Dでは、単一電極層10が金属空気電池の一部を形成している。そのような金属ナノ構造体の例としては、銀ナノ粒子のような貴金属ナノ粒子、またはMnOナノワイヤー、MnOナノフレーク、もしくはMnOナノフラワーのようなMnOナノ構造体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記触媒材料は金属触媒材料であり得る。前記触媒材料として電極に用いることができる任意の金属もまた本願に用いることができる。一実施形態において、前記金属としては、貴金属、金属酸化物、金属合金、金属間化合物(intermetallic)、または前述の金属の
混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
貴金属としては、銀、パラジウム、金、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウムおよびルテニウムが挙げられる。一実施形態では、銀、パラジウム、金、白金、およびそれらの混合物またはそれらの合金を用いることができる。貴金属合金の例としては、2〜3例だけ挙げると、白金およびイリジウムの合金、Pd−Pt、Pd−Rh、Pd−PtーRh、カルシウムと合わせた銀または金が挙げられる。貴金属の合金は、例えば耐腐食性の電極材料を得るために用いられる。
【0040】
別の実施形態では、金属酸化物を用いることができる。金属酸化物としては、PtO、V、V、Nb、NiO・xHO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiMoO、LiTiO、MnO、Ag−MnO、Al、MoO、TiO、SiO、ZnO、SnO、Fe、NiO、Co、CoO、Nb、W、並びにそれらの混合物および合金が挙げられるが、それらに限定されるものではない。前記金属酸化物は、化学量論的または非化学量論的のいずれであってもよい(例えば、Men−xm−y、0<x<1;0<y<1;
≦n≦3;1≦m≦5)。
【0041】
触媒合金としては、周期律表(フルック(Fluck)および ホイマン(Heumann)、periodic system 2007 Wiley-VCH GmbH & Co. KGaA、ワインハイム(Weinheim)、第4版に従った2
006年のIUPAC命名法推薦)の第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第16族の元素の群から選択される元素からつくられた合金を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。第10族はニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)を含み、第11族は銅(Cu)、銀(Ag)および金(Au)を含み、第12族は亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)および水銀(Hg)を含み、第13族はホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)およびタリウム(Tl)を含み、第14族は炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)および鉛(Pb)を含み、第16族は酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)およびポロニウム(Po)を含む。一実施形態において、前記合金は、リチウム/アルミニウム、Au、Pt、Pd、Cu、In、InSe、CuSeおよびSnSを含むが、これらに限定されるものではない要素からつくられている。
【0042】
別の実施形態において、触媒材料として電極に用いられる金属は金属間化合物である。金属間化合物は、非化学量論比で金属結合によって互いに結合される金属原子のみから成る組成物である。そのような金属間化合物の例としてはAg−NiまたはAg−Auが挙げられる。
【0043】
ナノ構造体の大きさは、本願に記載する方法によって容易に制御することができ、ナノメートル領域にある。ナノ粒子のようなナノ構造体がメソ多孔性ナノ構造親水性材料と混合される実施形態では、前記ナノ構造体の大きさは、40nm以下であるか、または約0.5nm〜約40nm、または約2nm〜約40nmである。
【0044】
その表面に結合された金属ナノ構造体を含むメソ多孔性ナノ構造親水性材料または多孔性ナノ構造材料(つまり修飾ナノ構造材料)は、そのナノ構造の最大サイズが約0.5〜約20nmである場合、より高効率の電極材料または電極材料の一部を形成する。
【0045】
ナノ粒子の寸法が常に規則的、すなわち、完全に球形だとは限らないので、上記の大きさは、ナノ粒子について、任意の方向におけるナノ粒子の最大寸法を指す。他の実施形態において、ナノ粒子、ナノフレークまたはナノフラワーの大きさは(それらがナノ構造材料に結合されているか、または前記材料と混合されているかに関係なく)、約0.5〜20nm、または約0.5〜15nm、または約0.5〜12、または約0.5〜5nm、または約5nm〜約12nmまたは約5〜約15nmである。ナノワイヤーまたは他の長尺状ナノ構造体を用いる場合には、任意の方向における最大寸法はまた、約0.5〜20nm、または約0.5〜15nm、または約0.5〜12、または約0.5〜5nm、または約5nm〜約12nmまたは約5〜約15nmである。
【0046】
更に、本願に記載する方法はまた、非常に狭いサイズ分布を有するナノ構造体を製造することを可能にする。よって、一実施形態において、約≧12〜約20nmの大きさを有するナノ粒子のようなナノ構造体のナノ構造体サイズ分布は、約±5nmである。約≧5nm〜<12nmの大きさを有するナノ構造体のナノ構造体サイズ分布は約±3nmである。約2nm〜<5nmの大きさを有するナノ構造体のナノ構造体サイズ分布は約±1nmである。例えば、1nmの大きさを有する銀ナノ粒子は約31個の銀原子から成ると推測される。ナノ粒子のようなより小さなナノ構造体は、ナノ構造材料の細孔を閉鎖せず、よってナノ構造材料の表面積を低減しないという利点を有する。高い表面積は、修飾ナノ構造材料の導電率を増大させることができる。
【0047】
ナノ構造体をメソ多孔性ナノ構造親水性材料と単に混合する代わりに、図1Dに示すような単一電極層に用いられる多孔性ナノ構造材料(修飾ナノ構造材料)のためのように、ナノ構造体をメソ多孔性ナノ構造親水性材料の表面に結合させることも可能である。
【0048】
ナノ構造材料の表面に結合されたナノ構造体は、リンカーを介して、ナノ構造材料に化学的に結合または固定される。リンカーは、ナノ構造材料の表面をナノ構造体と接続する分子である。リンカーは、ヒドロキシル基、ピレン、エステル、チオール、アミン、またはカルボキシル基のような官能基を含む。また、ナノ構造体をナノ構造材料の表面に結合するために、前述の群うちの異なるリンカーの混合物が用いられることも可能である。適当なリンカーの例としては、ポルフィリン(アミン基を含む)またはポリエチレングリコール(PEG;ポリ(エチレンオキシド)としても知られている)(−OH基を含む)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
一実施形態において、カルボキシル基は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、シクロアルカンカルボン酸または安息香酸を含むが、これらに限定されるものではないリンカー中に含まれ得る。一例としては、4−アミノ安息香酸が挙げられる。更に、ヒドロキシル基は、リン酸またはスルホン酸を含むが、これらに限定されるものではないリンカー中に含まれ得る。ナノ構造体をナノ構造材料の表面に接続するためにそのようなリンカーを用いることは、内部抵抗を低減すると同時に、装置エネルギー密度を高めることができる。例えば、金属空気電池における触媒の偏析/凝集を回避することにより、酸素還元反応を促進して装置性能を改善することができる。
【0050】
例えば図17に示されているように(図17はナノ構造体の例としてナノ粒子を示している)、ナノ構造体がナノ構造材料の表面において均一に分散されている場合、さらなる改善を得ることができる。均一に分散されていることはまた、ナノ構造体が図18(a)に示されるような独立したクラスターを形成しないことを意味する。従って、一実施形態において、ナノ構造体は、ナノ構造材料の表面において均一に分散される。一実施形態では、ナノ構造材料の表面の約5%〜約80%がナノ構造体で覆われている。別の実施形態では、少なくとも30%、または40%、または50%、または60%がナノ構造体で覆われている。
【0051】
一実施形態において、(疎水性の)プリスティンCNTの層上に配置される層を形成する(親水性の)銀修飾カーボンナノチューブ(つまり、その表面にAg粒子を結合したCNT)が、金属空気電池用の空気電極材料として用いられる。CNTの疎水性および親水性に起因して、高表面積のプリスティンCNT(疎水性)が空気から酸素を吸収し、この細孔は電解質によって濡らされないであろう。他方では、水性電解質は、酸素還元反応を増進する触媒としてAgナノ粒子が分散されている親水性CNT(高表面)を優先的に濡らすであろう。
【0052】
一実施形態において、銀修飾単層カーボンナノチューブが用いられる。他の実施形態では、MnO修飾カーボンナノチューブが用いられ、前記MnOナノ構造体はMnOナノフレーク、MnOナノフラワーまたはMnOナノワイヤーであり得る。
【0053】
上述したナノ構造材料は、該材料をろ過膜上でろ過することにより、膜に形成することができ、剥がされて、電極材料を形成するか、または電極材料の一部を形成することができる薄いシートまたは膜を生じる。
【0054】
メソ多孔性ナノ構造親水性材料の層上に配置されたメソ多孔性ナノ構造疎水性材料、またはメソ多孔性ナノ構造疎水性材料およびメソ多孔性ナノ構造親水性材料の混合物から製造された単一層、またはその表面に結合された金属ナノ構造体を含む多孔性ナノ構造材料
の単一層のいずれかから製造された本願で言及する電極材料は、金属空気電池の空気電極用電極材料として、または燃料電池における電極として、または超コンデンサーにおける電極として用いることができる。
【0055】
金属空気電池は、高いエネルギー密度、平坦な放電電圧、および長い貯蔵寿命によって特徴付けられる。金属空気電池において、反応性アノードおよび空気電極は無尽蔵のカソード反応物を生じる。アノードにおけるアンペア時容量、並びに反応生成物の取扱いおよび蓄積は、容量制限を決定する。一次金属空気電池、保存金属空気電池、並びに電気的に再充電可能な金属空気電池および機械的に再充電可能な金属空気電池の双方が存在する。機械的に再充電可能な電池は一次電池に非常に似ているが、電気的に再充電可能なタイプは、酸素発生のための第3の電極または二機能性電極(bifunctional electrode)を必要とする。金属空気電池の例としては、亜鉛空気電池、リチウム空気電池およびアルミニウム空気電池が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
リチウムイオン電池のように、金属空気電池はまた、通常、炭素質材料からつくられた電極を用いる。この炭素電極は本願に記載した電極材料によって置き換えることができる。本願で言及した電極材料のうちの1つを用いた金属空気電池の例証となる例を図1B、図1Cおよび図1Dに示す。
【0057】
図1Bでは、カソードは、メソ多孔性ナノ構造親水性材料の層4の上に配置されたメソ多孔性ナノ構造疎水性材料3からなる。図1Cでは、カソードは、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料およびメソ多孔性ナノ構造親水性材料の混合物9からなる。図1Cでは、カソードは、その表面に結合された金属ナノ構造体を含む多孔性ナノ構造材料を含む。
【0058】
本願で言及した電極材料はまた、燃料電池における電極材料として用いることもできる。燃料電池は、燃料(水素、天然ガス、メタノール、ガソリン、など)および酸化剤(空気または酸素)の化学エネルギーを電力に変換する電気化学装置である。燃料電池は、正に帯電したアノードと、負に帯電したカソードとを備える。燃料電池はまたイオン伝導性材料を含む。換言すると、燃料電池構造は、一般に、イオン伝導性膜(例えばNafion(登録商標)膜)のようなイオン伝導性材料によって分離された燃料極(アノード)と酸化剤電極(カソード)とから成る。一方の電極上には酸素が通過し、他方の電極上には水素が通過して、電力、水および熱を生成する。
【0059】
より詳細には、燃料電池において、一般に、プロトン伝導性固体膜(PEM)は拡散層および反応層の2つの層に包囲されている。水素および酸素の一定の供給下において、水素は、アノードおよび拡散層を通って、触媒(通常は貴金属触媒)、反応層まで拡散する。拡散電流の原因は水素酸素反応の傾向である。燃料電池では2つの主な電気化学反応が起こる。一方の反応はアノード(陽極反応)で起こり、他方の反応はカソードで起こる。アノードにおいて、前記反応は、その輸送がエネルギー生成に不可欠である水素イオンおよび電子を放出する。カソードへ行く途中の水素イオンはPEMを通過し、一方、電子のための唯一の可能な道は外側回路を介するものである。水素イオンおよび外側電気回路の電子と、多孔性カソードを介して拡散した酸素とが水へと反応する。この反応から生じる水は、過剰空気流によってシステムから抜き出すことができる。このプロセスは、ポリマー交換膜燃料電池(PEMFC)、固体酸化物燃料電池(SOFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)または直接メタノール燃料電池(DMFC)のようなすべてのタイプの燃料電池において生じる。
【0060】
例えば、一実施形態において、燃料電池のアノードは、メソ多孔性ナノ構造親水性材料の層の上に配置されたメソ多孔性ナノ構造疎水性材料の層から形成され得る。前記メソ多
孔性ナノ構造親水性材料は、メソ多孔性ナノ構造親水性材料と混合されているか、またはメソ多孔性ナノ構造親水性材料の表面に結合されている貴金属ナノ構造体のような金属触媒を含む。別の実施形態において、燃料電池のアノードは、メソ多孔性ナノ構造親水性材料と混合されたメソ多孔性ナノ構造疎水性材料の単一層からなる。前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料は、メソ多孔性ナノ構造親水性材料と混合されているか、またはメソ多孔性ナノ構造親水性材料の表面に結合されている貴金属ナノ構造体のような金属触媒を含む。さらなる実施形態において、燃料電池は、多孔性ナノ構造材料の表面に結合された貴金属ナノ粒子のような金属ナノ構造体を含む多孔性ナノ構造材料の単一層を含む。すべての事例において、燃料電池のカソードは、メソ多孔性ナノ構造親水性材料の層の上に配置されたメソ多孔性ナノ構造疎水性材料の層、またはメソ多孔性ナノ構造親水性材料と混合されたメソ多孔性ナノ構造疎水性材料の単一層からなり得る。燃料電池のカソードは、この場合、触媒ナノ構造体のような触媒材料を含まないであろう。
【0061】
しばしば「超コンデンサー」と呼ばれる電気化学キャパシタ(EC)は、高度に可逆的な電荷蓄積および送出能力を有する電気装置である。通常のコンデンサーは導体箔とドライセパレーターとから成るが、超コンデンサーは、特別な電極および電解質を用いることにより、バッテリー技術に入る。電気化学キャパシタは、それらが電極構造内で起こる酸化還元反応においてエネルギーを蓄積しない点で電池と異なる。電気化学キャパシタは、二重層としても知られている電極および電解質の界面領域に生じる静電相互作用によってエネルギーを蓄積する。ECは二次電池に相補的な特性を有する。そのようなECは、本願で述べる電極材料に基づく電極と、電解質とから構成され得る。ECは、液体または固体状態のいずれかにある水性電解質および非水性電解質の双方とも使用することができる。
【0062】
本願に記載する一実施形態は、本願に記載したような電極材料を含む超コンデンサーに言及する。前記電極材料は、超コンデンサーの一方の電極または双方の電極に用いることができる。一実施形態では、電極材料として銀修飾カーボンナノチューブが用いられ、別の実施形態では、MnO修飾カーボンナノチューブが用いられる。前記MnOナノ構造体は、MnOナノフレーク、MnOナノフラワーまたはMnOナノワイヤーからつくることができる。
【0063】
電極を形成する独立した層は、金属空気電池または燃料電池において電極材料として用いられる前に、紙状の自立フィルムのような支持材(換言すると、基材)上に配置または被覆され得る。前記紙状の自立フィルムは、バッキーペーパー、またはAl被覆PETのような可撓性の伝導性基材上に噴霧または印刷された活性物質、またはナノ構造材料の自立フィルムであり得る。
【0064】
一実施形態において、それらの構造により、前記電極膜は、ポリマーバインダーを含まないか、またはポリ(1,1−ジフルオロ−1,2−エタンジイル(PVDF)を含まない。
【0065】
新規の電極材料は、少なくとも10μmの各層の厚さ、または約10μm〜約30μmの厚さを有する電極を形成することができる。一実施形態において、電極の層の厚さは約20μmである。それは、図1Bに示したもののような二層構造は、約20μm〜約60μmの厚さを有し得ることを意味する。
【0066】
別の態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料を含む第1層を、メソ多孔性ナノ構造親水性材料を含む第2層上に配置または堆積することを含む電極を製造する方法に言及する。さらなる態様において、本発明は、メソ多孔性ナノ構造疎水性材料とメソ多孔性ナノ構造親水性材料とを混合することと、続いて単一電極層を形成することとを
含む電極を製造する方法に言及する。さらなる態様において、本発明は、その表面に結合された金属ナノ構造体を含む多孔性ナノ構造材料を製造する方法に言及する。この方法は、多孔性ナノ構造材料を、金属ナノ構造体前駆体を含有する溶液と混合して、ナノ構造材料の金属ナノ構造体前駆体を含有する溶液との懸濁液を得ることと、前記金属ナノ構造体前駆体を化学的に還元して、80℃以下の温度で、ナノ構造材料の表面におけるナノ構造体の析出を可能にすることとを含む。
【0067】
一般に、任意の形態にあるナノ構造材料は、ろ過、キャスティング、スピンコーティング、ロールキャスティング、噴霧およびインクジェット印刷を含むが、これらに限定されない当業において既知の方法によって、層状構造に形成され得る。一実施形態において、異なる層は、フィルター膜を介してナノ構造材料をろ過することにより形成される。一実施形態において、前記層は、別々に形成され、それらの層の製造後に、互いの上に配置されるか、または互いの上に積層されてもよいし、あるいは、前記層は、噴霧もしくはろ過により、またはプラズマ法の使用により、連続的な方法で互いの上に配置される。例えば、プラズマ法を用いると、第1層は支持材上に堆積され、その後、第1層上に直接次の層がプラズマ堆積される。例えば、第1層は疎水性層または親水性層のいずれかであり得る。
【0068】
炭素質ナノ構造材料(例えばカーボンナノチューブ)のようなナノ構造材料もまた、電気アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相堆積法、または水熱合成を含むが、これらに限定されない当業において既知の方法によって形成され得る。
【0069】
ナノ構造材料の表面において、極性基、つまりリンカーを導入することによってナノ構造親水性材料を得るために、プリスティンな、従って疎水性のナノ構造材料は、酸化処理、<500℃の温度での焼結、または無機極性溶剤中での還流、またはNまたはHまたはOプラズマ処理のようなプラズマ処理を受ける。別の実施形態において、ナノ構造材料は、γ線による照射を用いた処理を受け、続いて、そのガンマ照射されたナノ構造材料を不飽和カルボン酸と接触させる。γ線はナノ構造材料の表面においてフリーラジカルを形成することができ、前記フリーラジカルは不飽和カルボン酸と容易に反応して、前記ナノ構造材料の表面上に固定または結合されたリンカー分子を形成する。
【0070】
前記不飽和カルボン酸は、不飽和カルボン酸またはその誘導体であり得る。前記ナノ粒子とナノ構造材料との間の距離が大きくなり過ぎるのを避けるために、リンカー分子を形成する不飽和カルボン酸は、12個以下のC原子を含む。
【0071】
一実施形態において、不飽和カルボン酸はアクリル酸またはその誘導体である。使用され得るアクリル酸またはその誘導体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリル酸、エタクリル酸、アルファ−クロロアクリル酸、アルファ−シアノアクリル酸、ベータメチルアクリル酸(クロトン酸)、アルファ−フェニルアクリル酸、ソルビン酸、アルファ−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸、p−クロロ桂皮酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、またはトリカルボキシエチレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
メソ多孔性ナノ構造疎水性材料およびメソ多孔性ナノ構造親水性材料が共に混合される実施形態において、その混合の比率は、双方の材料を合わせた総重量に基づいて、約10重量%(メソ多孔性ナノ構造疎水性材料):90重量%(メソ多孔性ナノ構造親水性材料)〜約90:10重量%である。さらなる実施形態において、前記混合比は、双方の材料を合わせた全重量に基づいて、約30:70重量%、または70:30重量%、または50:50重量%である。
【0073】
電極を形成する方法は、本願で言及した層または単一層を支持材上に配置することをさらに含み得る。本願で言及した電極材料が金属空気電池の一部を形成する場合、カソードは、本願で言及した電極材料から形成されて、金属空気電池の電解質層上に配置される。前記電解質層は、既にアノード層と接しているか、または該電解質層がカソード層と組み合わされた後にアノード層上に配置される。
【0074】
下記において、その表面に結合された金属ナノ構造体を含む多孔性ナノ構造材料を製造する方法に言及する。この方法は、多孔性ナノ構造材料を、金属ナノ構造体前駆体を含有する溶液と混合して、ナノ構造材料の金属ナノ構造体前駆体を含有する溶液との懸濁液を得ることと、前記金属ナノ構造体前駆体を化学的に還元して、80℃以下の温度で、前記ナノ構造材料の表面におけるナノ構造体の析出を可能にすることとを含む。
【0075】
貴金属ナノ構造体前駆体が用いられる一実施形態において、前記化学的環元工程の温度は60℃未満、または50℃未満である。別の実施形態において、前記温度は、約15℃〜約30℃、または約15℃〜25℃、または約0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃であるか、または60℃未満であり得る。上記の方法のための反応条件は、約40nmまたは20nmの最大寸法またはサイズ、または約0.5nm〜約20nmのサイズ、または本願で言及した任意の他のサイズを有するナノ構造体を形成するためなどに適合され得る。
【0076】
反応条件を表示された大きさを有するナノ構造体を形成するためなどに適合させる1つの選択肢は、懸濁液中、すなわち、ナノ構造材料と金属ナノ構造体前駆体との混合物中における、金属ナノ構造体前駆体の濃度を適合させることである。一般に、前駆体材料の濃度は、約0.001M〜約1Mの範囲にあり得る。一実施形態において、貴金属前駆体材料の濃度範囲は約0.01M〜約1Mの範囲にあり、別の実施形態では、金属酸化物前駆体材料の濃度範囲は、約0.001M〜約0.1Mの範囲にあり得る。
【0077】
前記化学的環元は、下記方法のうちの任意の1つによって行うことができる。化学的環元は、例えば、ナノ構造材料および金属ナノ構造体前駆体を含む懸濁液中のpHを調節することによって行うことができる。化学的環元の別の方法は、5%のH/Nまたは5%のH/Ar雰囲気中、<500℃の温度で4〜8時間にわたる加熱のような、還元雰囲気中において懸濁液を加熱することによるか、または水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、またはCaHもしくはMgHのような他の金属水素化物のような化学的還元剤を用いることによるものである。
【0078】
一実施形態においてナノ構造材料と、貴金属ナノ構造体前駆体(例えば貴金属ナノ粒子前駆体)または金属酸化物ナノ構造体前駆体とを含有する懸濁液のpHは、前記pHを約1〜10、または3〜10、または4〜10の範囲に適合させることにより、貴金属ナノ構造体前駆体のような金属ナノ構造体前駆体の化学的環元を可能にするように適合される。別の実施形態において、前記pHは約1〜7.5および1〜10の範囲にあり得る。例えば、銀ナノ構造体前駆体材料を用いる場合には、前記pHは、約4〜8、または約4.3〜<7.3の範囲となるように調節または適合される。金ナノ構造体前駆体が用いられる別の例においては、前記pHは、約3〜10、または3.5〜10、または4〜10の範囲となるように調節される。白金ナノ構造体前駆体材料を用いる場合には、前記pHは、約4〜10、または約4〜9の範囲となるように調節される。マンガンナノ構造体前駆体のような金属酸化物ナノ構造体前駆体を用いる場合には、pHは、約1〜7の範囲になるように調節される。したがって、pHを調節する場合には、化学的環元は、酸または塩基のような還元剤を用いることにより行われる。例としては、2〜3例だけを挙げると、NaOH、NH、HCl、HClO、HSOが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に、懸濁液のpHを調節するためには、任意の既知の酸または塩基
を用いることができる。
【0079】
ナノ構造体材料のナノ構造体前駆体との反応時間またはインキュベーション時間はまた、形成されるナノ構造体の大きさに影響を及ぼす。一般に、前記反応時間は、約5分または10分または15分〜約120分である。別の実施形態において、前記反応時間は、約15分〜約60分である。
【0080】
形成されるナノ構造体の大きさに影響を及ぼし得るさらなる要因は、ナノ構造材料と混合する前の出発溶液中におけるナノ構造体前駆体の濃度である。一実施形態において、前記ナノ構造体前駆体の濃度は、約3mM〜約150mM、または少なくとも3mM、または約3mM〜約6.5もしくは6.3mM、または約3mM〜約100mM、または150mM未満である。本願に記載する方法は、ナノ構造材料の表面に結合されたナノ構造体が既に上記でさらに概説したような狭いサイズ範囲を有する、修飾ナノ構造材料を製造することを可能にする。
【0081】
上記材料用のナノ構造前駆体材料は当業において知られている。前駆体材料の様々な例としては、2〜3例だけ挙げると、貴金属塩化物のような金属塩化物、貴金属硝酸塩のような金属硝酸塩、金属アルコキシド、有機金属前駆体または金属酢酸塩が挙げられる。貴金属ナノ構造体前駆体および金属酸化物ナノ構造体前駆体の例としては、AgNO、[Ag(NH(aq)、AuCl、HAuCl・3HO、HPtCl・6HO、HPdCl・6HO、Mn(NO、またはKMnOが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、TiOナノ構造体のための前駆体は金属アルコキシドまたは有機金属前駆体であり得る。チタンアルコキシドの例としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンプロポキシドおよびチタンブトキシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
一般に、ナノ構造材料に対する金属ナノ構造体前駆体の分子比は約0.05〜約0.6、または約0.1〜約0.55の範囲にあり得る。一実施形態において、ナノ構造材料に対する銀ナノ構造体前駆体のような貴金属ナノ構造体前駆体の分子比は、0.18〜約0.54である。別の実施形態において、ナノ構造材料に対する金属酸化物ナノ構造体前駆体の分子比は、約0.1〜約0.5である。
【0083】
ナノ構造体前駆体と混合される前に、ナノ構造材料は、各ナノ構造材料に適当な溶媒中に、約0.1〜約1mg/mLの濃度で分散される。そのような溶媒は当業において知られている。例えば、炭素ナノ構造材料またはMnOナノ構造材料は、水溶液、例えば水、に容易に溶解され得る。本願に用いることができる他の適当な溶媒としては、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール、エチレングリコール、およびアセトンが挙げられる。
【0084】
化学的環元の間に形成するナノ構造体は、例えば図16に示すように、析出の間にリンカーに結合する。図16に示した実施形態では、貴金属ナノ粒子前駆体としてAgNOが用いられている。前記前駆体は、HNOを用いて化学的に還元されることによってAgを形成し、そのAgはリンカーのカルボキシル基によってナノ構造材料に結合する。別の実施形態において、金属酸化物ナノ構造体前駆体としてKMnOが用いられ、KMnOはMnOナノ構造体に還元され、MnOナノ構造体はまたカルボン酸基を含むリンカーを介してナノ構造材料に結合する。
【0085】
先に述べたように、本願で言及する修飾ナノ構造材料からつくられた膜を製造するために、修飾ナノ構造材料は洗浄され、その後、ろ過膜を介して篩過され得る。その後、修飾ナノ構造材料から形成された膜は、自立膜としてフィルター膜から剥がすことができ、電
極材料として直接用いられ得る。また、ろ過膜を介して修飾ナノ構造材料を篩過する前に、修飾ナノ構造材料を電極材料に用いられるべき他の成分と混合して、電極材料を得ることも可能である。例えば、修飾ナノ構造材料は未処理かつ/または未酸化のナノ構造材料と混合され得る。
【0086】
さらなる態様において、本発明は本願に記載されるような電極、または金属空気電池もしくは燃料電池もしくは超コンデンサーの電極を製造するために本願に記載した方法によって製造された電極の使用に言及する。
【0087】
本願に例示的に記載された本発明は、本願に具体的に開示されていない任意の1つ以上の要素または1つ以上の制限を欠く状態で適切に実施されてもよい。したがって、例えば、「備える・含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」な
どの用語は、拡張的に、限定することなく、解釈されるものとする。加えて、本願に用いられる用語および表現は、説明の用語として用いられているものであり、限定の用語ではなく、そのような用語および表現の使用において、図示および記載された特徴またはそれらの一部分のいかなる均等物も排除する意図はなく、しかしながら、権利請求される本発明の範囲内において様々な変更が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態および任意選択機能によって具体的に開示されてきたが、本願に開示され、そこで具体化された本発明の変更および変形が当業者によって用いられてもよく、そのような変更および変形は本発明の範囲内であると考えられることが理解されるはずである。
【0088】
本発明について、本願において広く包括的に説明してきた。一般的な開示内にあるより狭い種および亜属群の各々もまた本発明の一部を形成する。これは、削除されたものが具体的に本願に列挙されているかいないかにかかわらず、その属からなんらかの主題を排除する条件または否定的な限定を有する本発明の一般的記述を含む。
【0089】
他の実施形態は以下の特許請求の範囲および非限定的な実施例内にある。さらに本発明の特徴または態様がマーカッシュ・グループを単位として記述される場合、当業者は、それにより本発明はまたマーカッシュ・グループの個々の構成要素または構成要素のサブグループに関して記述されることを認識するであろう。
【0090】
実験項:
1.金属空気電池のための空気電極(AE)の製作
ニッケルメッシュスクリーンの両側に、活性炭とポリビニルエデンジフルオリド(polyvinyledene difluoride)(PVDF)バインダーとの混合物を付着させることにより、従
来のAE(図1A)を調製した。炭素に加えて、疎水性層として作用するように、テフロン(登録商標)片を前記AE上に配置した。AEタイプ1(図1B)およびタイプ2(図1C)電極の層を、金属空気電池のカソードのアセンブリのために調製した。異なる種類の電極(AEタイプ1およびAEタイプ2)のアセンブリのための層を下記によって調製した。COOH−SWCNT(カーボン ソリューション インコーポレイテッド(Carbon Solution Inc.)、またはAg装飾SWCNT懸濁液(脱イオン水中0.2mg/mL
)、またはP(プリスティン)SWCNTとCOOH−SWCNTとの混合物(P/COOH−SWCNT)を、フィルター膜(ワットマン(Whatman)、ポアサイズ20nm、径
47mm)を介してろ過した。SWCNTは細孔を通り抜け、フィルターの表面上に捕捉されて、相互接続した網状組織を形成した。乾燥後、SWCNT網状組織は、約20μmの厚さの自立薄膜としてフィルターから剥がすことができ、材料として電極に直接用いられた。これらの空気カソードの円形片を、ダイセット(16mm)を用いて打ち抜いた。2.亜鉛−空気電池アセンブリ
アノードは亜鉛の供給源に相当し、PVDFバインダーと混合された金属亜鉛または亜
鉛粉末のいずれかを用いた。前記アノードを円形片(13mm)に切断し、電解質および空気電極(AE)としてKOHが含浸されたPVAと積層した。AEタイプ1(図1B)電極は、COOH−SWCNTバッキーペーパーを電解質と接触させて配置し、その上にP−CNTバッキーペーパーを配置することにより構成した。AEタイプ2(図1C)電極は、COOH−SWCNTとP−SWCNTとの均一混合物から成る単一バッキーペーパーを含んだ。
【0091】
3.電気化学試験
組み立てられた亜鉛空気電池の定電流放電曲線を1mAの定電流で、コンピューター制御のMacpileバイオロジックBiologic、フランスおよびEG&G、米国、モデル263Aを用いて収集した。従来の炭素電極の場合には、AEへの電気接点はNi金属スクリーンに形成された。一方、AEタイプ1(図1B)およびタイプ2(図1C)における電気接点は、バッキーペーパーおよび亜鉛アノードに形成された。この研究では、CNTは活性電極材料および集電体の双方として用いられたことに言及すべきである。新たに組み立てられたセルの開路電圧(OCV)は1.4〜1.5Vの範囲にあった。
【0092】
4.AE構造の効果
異なるAE構造のCNTの有効性は、NiメッシュAE上においてポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダーと混合された活性化カーボンブラックのベースライン性能と比較した。空気電極構成のAEタイプ1(図1B)およびAEタイプ2(図1C)を用いて、P−SWCNT、COOH−SWCNTで構成されたAEによって構築されたZn空気電池の放電プロファイルを図2に示す。炭素と比較すると、AEタイプ1(図1B)およびタイプ2(図1C)構造によって製造されたSWCNTから成る亜鉛空気電池は、より良好な電池性能(電池電圧および放電時間の点において)を示したことが理解される。観察された改善は従来のカーボンブラックに基づいた電極の性能の2.5倍2.5×)であった。SWCNTから製造された空気電極の中でも、プリスティンSWCNT(P−SWCNT)およびCOOH−SWCNTから成る単一のバッキーペーパーから構成されたAEタイプ2(図1C)電極は、炭素(0.5V、8時間)と比較して、0.8Vの放電電圧および20.5時間の電池寿命を有する最良の電池性能を示した。COOH−SWCNT(親水性)から製造されたAEタイプ2(図1C)電極は、P−CNT(0.6V)から製造した電極と比較して、より高い放電電圧(約0.75V)を示した。これは、これらのSWCNTの様々な疎水性/親水性特性による、これらの2つのSWCNT電極の電解質による異なる濡れ性に起因し得る。P−SWCNTおよびCOOH−SWCNTからつくられた2つのバッキーペーパーを有するAEタイプ1(図1B)構造電極は、安定した電圧(0.7V)および19時間の放電時間を示した。SWCNTに基づいたAEの優れた性能は、酸素吸着および還元反応が起こるための増大したプラットフォームを提供するSWCNTのより大きな有効表面積に起因し得る。空気電極のこの構造(AEタイプ1およびタイプ2)によって、Zn空気電池の電池性能の増強が得られることがはっきりと見られる。
【0093】
5.AEとしてSWCNTを用いる効果
炭素のみに基づいた従来のAE、およびCOOH−CNTまたはP−CNTの単一のバッキーペーパーのみを用いることによるAEの放電プロファイルを図3に示す。SWCNTで構成されたAEは、従来の炭素と比較して、AEタイプ2(図1C)電極が電流ドレインを維持することができることを示す、より良好な放電プラトーを示した。100%COOH−CNT(0.76V)から製造されたAEタイプ2(図1C)電極の放電電圧は、100%P−CNTより高かった。これは、100%COOH−CNTは、末端−COOH基を有する親水性CNTから構成されており、前記末端−COOH基は電解質によって濡らされることによって、ORRが起こりイオン移動が生じることを可能にするためである。しかしながら、100%P−CNTは、それに付着するいかなる親水性(COOH
)基も有さず、100%COOH−CNTよりも表面を疎水性にしている。従って、放電曲線中に見られる酸素還元触媒(ORR)が起こるために、電極の有効な濡れが生じることができない。ORRの間には2つの同時プロセスが起こり、AEの最適な性能のためには釣り合いを保たれる必要がある、すなわち(i)酸素拡散が炭素ナノ構造体内で起こり、(ii)酸素還元が炭素上で(触媒を有して/触媒なしで)起こり、溶液中でイオン移動が生じて、当量の電子が外部回路を通って電流として流れる。100%P−CNTのような比較的疎水性の表面が提供される場合、そのときに電極表面上への大気からの酸素拡散を妨げるものがなくても、限られた濡れ性のために、ORRは効率よく起こらない。これは放電電圧において明らかであろう。親水性表面(100%COOH−CNT)が提供される場合、そのときに酸素拡散に対するアクセスが限られるとしても、電極の濡れ性のために、ORRは前者より非常に効率よく起こる。本発明者の結果から、AEの放電時間を制御する要因の1つは、電極内における酸素の流れまたは酸素の拡散であると思われることが分かる。酸素流が妨げられないことにより、装置の寿命は延長される(しかしはるかに低い放電電圧で)が、電極表面上への電解質のフラッディングは、COOH−CNT電極上において酸素拡散サイトが得られないために、電圧を増大するが、放電時間を減少させる。
【0094】
純粋なSWNTに関する結果は、文献の結果によく匹敵するが、放電電圧は、(金属)ORR触媒の不在のために、本発明者らの研究においてわずかに低いことに言及する必要がある。また、本発明者らの装置に用いられる他の集電体は存在しなかった。装置性能についてAE構造およびCNT官能性の効果のみについてもっぱら評価するために、電極触媒は避けた。
【0095】
6.AEタイプ2(図1C)電極構造においてCOOH−CNTとP−CNTとの比率を変更する効果
AEタイプ2電極構成において、COOH−SWCNTおよびP−SWCNTの量を変更して、装置性能に対するその効果を評価した。図4は、AEタイプ2の電極構成においてCOOH−SWCNT(P3として標識)およびP−SWCNT(P2として標識)の量を変更した定電流放電曲線を示す。50:50%のCOOH−SWCNTおよびP−SWCNTの混合物が、他の組成物と比較して、高い電圧プラトーを示したことが分かる。この曲線からの放電電圧および放電時間を図5に抜き出してプロットする。
【0096】
50重量%のCOOH−SWCNT(図5a)について放電電圧にわずかな増大があり、その後、混合物中のCOOH−SWCNTの量の増大は、おそらく、空気電極への電解質のフラッディングにより、酸素の拡散を低減し、そのことが酸素還元反応に悪影響を与えるために、放電電圧を低下させる。放電時間は、70重量%COOH−SWCNTの17時間から50重量%COOH−SWCNTの21時間に増大する。放電時間はこの組成物の後に水平になり、COOH−SWCNTの濃度をさらに低下させることにより放電時間は影響されない。装置のこの寿命は、酸素拡散を促進し、装置寿命を延長する、疎水性P−SWCNTの添加に関連する。この検討より、放電電圧および時間の双方の点において、COOH−SWCNT(P3)およびP−SWCNT(P2)の50:50重量%混合物がAEタイプ2電極において良好な組成物であると結論付けることができる。
【0097】
7.COOH−SWCNT(AEタイプ2電極)に対するAgナノ粒子装飾の効果
先の節において検討した上記の結果から、簡素な一体化AEタイプ2電極構造が最高性能を示したことが示された。さらなる工程において、COOH−SWCNT(100%)を銀ナノ粒子のような金属粒子で装飾することにより、SWCNTに触媒を加えた(様々な大きさ(3〜15nm)のAg−CNT)。図6は、AEタイプ2電極構成において様々な大きさのAg−SWCNTを用いて製造されたZn空気電池の定電流放電曲線を示している。Ag−SWCNTの放電電圧は、純粋なCOOH−SWCNT(0.75〜0.
8V)よりはるかに高い(約1.0〜1.1V)ことが分かる。
【0098】
これは銀による酸素還元過程(ORR)の触媒増進(catalytic enhancement)に起因す
る。AEで生じる酸素還元過程は複雑であり、反応速度論および電池性能に影響を与えるヒドロペルオキシドイオン(HO)形成の律速段階を伴う。次いで、中間体HOは、触媒的不均化によってOおよびOHへと反応する。CNTおよび活性炭のような炭素質材料は酸素をヒドロペルオキシドイオンに還元することが知られている。ヒドロペルオキシドイオンをOHラジカルに完全に還元するためには、付加的な触媒(Pt、Agまたは酸化物)が必要とされる。
【0099】
+HO+2e→HO+OH
HO→1/2O+OH
酸素のヒドロキシラジカルへの完全な還元は、放電電圧の増大をもたらし、助触媒として銀を用いて(Ag−CNT)行われた。6〜8nmの銀粒子サイズが、他の大きさと比較して、わずかに高い放電電圧を与えるように見える。銀粒子の電極触媒活性は、炭素触媒上における銀の物理的分散について、その大きさに決定的に依存する。Ag粒子上で起こる酸素還元反応(ORR)は、構造に敏感な反応(structure sensitive reaction)であり、銀上の結晶面および活性サイトに左右された。
【0100】
8.電極材料としての修飾ナノ構造体材料の単一層の使用(図1D)。
カルボン酸基で官能化された単層CNT(P3−SWCNT、カーボン ソリューション インコーポレイテッド)を、超音波処理(120kW)の支援によって、脱イオン水(0.5mg/mL)中に分散させた。SWCNT懸濁液を、AgNO(99.99%、オールドリッチ(Aldrich))溶液(0.05〜0.15M、100mL)(CNTに対
する銀ナノ粒子前駆体AgNOの分子比は0.18〜0.54の範囲にあるべきである)と混合した。その後、pH調整(4.3<pH<7.3)のために0.1MのNaOH(99%、メルク(Merk))の添加を行い、その懸濁液を15〜120分間にわたって激しく撹拌した。Ag装飾SWCNTを遠心分離(15,000rpm、10分)によって分離し、脱イオン水による複数回の洗浄によって過剰な硝酸ナトリウムを除去した。脱イオン水(20mL)中への再分散によって最終生成物のストック懸濁液(stock suspension)を調製した。電極の調製のために、前記混合物を、簡素なろ過フラスコ用いて穏やかに減圧しながら、フィルター膜(ワットマン、アノディスク(Anodisc)アルミナフィルター膜
、ポアサイズ20nm)を介してろ過した。こうして、Ag装飾SWCNTは、フィルター上に絡み合った網状組織を形成する。脱イオン水ですすぎ、空気中で乾燥させた後、前記フィルターからSWNT網状組織フィルムを剥がすことができ、該フィルムは、さらなる処理を行うことなく、GDEとして使用した。Ag粒子の重量パーセントは、装飾前後の重量の増加によると、約2重量%である。Agナノ粒子修飾SWNTは、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL 2100F)、X線回折(XRD、4kWで動作する島津製作所回折計、CuKα放射を使用)、および4プローブ比抵抗測定によって特徴付けられた。装置試験については、Zn粉末をポリフッ化ビニリデンバインダー(PVDF、80:20)と混合し、85℃で4時間にわたって加熱し、最終的に約35μmの厚さを有するフィルムにプレスした。ZnアノードとSWNT空気電極とは、6MのKOHで完全に濡らされたポリプロピレン(PP、セルガード(Celgard)2400、米国)フィルムによ
って分離した。放電は1kΩの定抵抗を用いて測定した。
【0101】
結果
SWCNT上における金属ナノ結晶の分散および大きさを制御するための重要なパラメーターは、pH、すなわちヒドロキシルイオン(OH)の量である。0.15MのAgNO溶液にSWCNTを導入した後、ナノチューブの外側上のカルボキシル基(−COOH)の存在により、pHは5.6から3.4に酸性化する。前記カルボキシル基は続い
てAgNOと相互作用して、−COOAg基を形成する。ヒドロキシルイオンの、低いが還元(pH〜4)のためには十分である濃度については、カルボキシル基における高い核生成および大きな銀結晶の急成長が、提案された反応に従って観察され得る。
【0102】
C−COOAg+OH+Na+C−COOH+Ag+1/2NaO(aq)+1/4O
より高い濃度(pH約6)については、AgOHの形成を助け、核形成銀金属(nucleated silver metals)の成長を妨げる懸濁液中における過剰ヒドロキシルイオンと銀イオン
との間の反応により、銀の結晶は大きさが高度にかつ劇的に減少する。
【0103】
Ag++NO+Na+OH→AgOH+NaNO
より高いpH(pH7.3)では、AgOHの同時放出を促進する、過剰ヒドロキシルイオンと懸濁液中の銀イオンおよび−COO−Agの双方との間における反応により、より大きく、かつ低分散性の結晶(10nm)が現れる。
【0104】
C−COOAg+OH+Na→C−COONa+AgOH
従って、より少数の核生成サイトが利用可能となり、銀ナノ結晶の成長は低下する。反応性の表面カルボキシル基の重要な役割は、pH6.3における銀による非−カルボキシル−SWCNTの装飾の失敗および大きなコロイド状金属クラスターの形成によって実証された。
【0105】
図7は、12〜15nm、6〜8nmおよび3〜5nmの3つの粒子サイズを有するAgナノ粒子修飾SWCNTのTEM像を示している。すべての試料において、Ag粒子はSWCNTを一様に装飾する。調査した材料中ではAg粒子の凝集も未被覆部分も観察されなかった。また、かなり狭いサイズ分布によって確認されるように、Agナノ粒子の大きさは合成中のpH調整および反応時間によって成功裡に制御された(再び表1を参照)。すべての試料について同一量のSWCNTと同一濃度のAg前駆体とを用いたので、SWCNT上には同一量のAgが装飾されたと仮定することは適当である。従って、粒子サイズが小さいほど、より多くの個別粒子をもたらす(図7aおよび図7bを比較)。
【0106】
【表1】

未被覆(bare)SWCNT網状組織およびAgナノ粒子修飾SWCNT網状組織の重量、厚さおよび導電率は、ニッケルメッシュ上にプレスされた炭素に基づく市販のガス拡散電極(GDE)(エレクトリック フューエル リミテッド(Electric Fuel limited)、イ
スラエル、製品ライン E4A; バスフ(BASF)、ドイツ、製品ライン ELAT)と比
較した。SWCNT試料の導電率は4点プローブ構成で測定され、一方、市販の試料の値は製造仕様書から得られる。結果を図8において比較する。市販のGDEに対するSWCNT網状組織に基づいたGDEの優位性は明白である。重量および厚さは1桁以上低減さ
れており、これは重量およびスペースが重大な要因である携帯機器にとって特に興味深い。他方では、導電率は約3桁増大している。SWCNTフィルムの中では、導電率は、Ag修飾材料に対して、著しく高い(未被覆SWCNTフィルム:約1000S/cm、修飾SWCNTフィルム:2000〜3000S/cm)。最も高い導電率(約3000S/cm)は、最小のAg粒子サイズ(3〜5nm)に対して見られた。これはSWCNT網状組織内における付加的な電流経路の数が最も多いことによって説明することができる。
【0107】
Agナノ粒子で修飾されたSWCNTフィルムの電気化学的挙動は動電位分極を用いて調査した。すべてのフィルムがGDE構成で測定されるように、SWCNTフィルムの一面は大気に露出させた。比較のために、未修飾SWCNTフィルムおよび市販の空気電極(E4A)も試験した。その結果を図9に示す。すべてのGDEの面積を一定(約1cm)に保つ一方で、試料間のばらつきを考慮するために、電流は重量で標準化した(mA/mg)。一般に、電流密度は、未修飾のSWCNT電極および市販のE4A空気電極と比べて、Agナノ粒子装飾により著しく増大した。Agナノ粒子の大きさを考慮すると、電流密度は、より小さなAgナノ粒子ほど増大する。これはより高い表面積によって説明することができる。未修飾のSWCNT電極と比較して、最も小さなAgナノ粒子(3〜5nm)を含有するGDEの電流密度は5倍に増大した。
【0108】
異なる大きさのAgナノ粒子で修飾されたSWCNT GDEの電気化学的挙動を調査するためにサイクリックボルタンメトリー(CV)を用いた。比較のために、図10aに示しように、未装飾のSWCNT GDEを同様に試験した。すべての試料について、酸素還元(O+2HO+4e→4OH)を示す約−0.3V(「R02」で標識)の還元ピークが観察された。すべてのAg修飾SWCNTフィルムについて、1つの酸化ピークと2つの還元ピークとをさらに観察することができる。約0.25Vに現れた酸化ピーク(「OAg」で標識)は、AgのAgOへの酸化(2Ag+2OH→AgO+HO+2e)に起因し得る。約0.28Vの第1還元ピーク(「RAg」で標識)は、AgOのAgへの還元を示しており、一方、第2のピークは前述の酸素還元に対応する。未被覆のSWNT試料のさらなるピークは、約−0.1V(「C」で標識)で観察することができ、これは官能基を含有する酸素によるものである。
【0109】
一般に、Ag粒子が小さいほど表面積が高くなるため、Ag粒子サイズが減少すると、すべての還元過程に対する総電流密度は増大する。すべてのAg修飾SWNTフィルムについて、表面官能基による反応を観察することができず、これは、Ag酸化/還元および酸素還元がAg装飾により主要な特徴になることを示す。より詳細な分析のために、酸素還元の全電荷を、図11に示すように、CVの対応するピークを積分することにより分析した。酸素還元の電荷はAg装飾により著しく増大し、さらにAg粒子サイズの減少につれて増大したことは明白である。従って、Agは、適用された実験条件下において、酸素還元反応を促進する。
【0110】
装置試験のために、Agナノ粒子で修飾されたSWCNT網状組織を自作(home build)Zn空気電池構成において空気電極として用いた。バインダーもPTFEのような撥水剤も添加されていないことに留意されたい。試験したすべての装置について、Zn含有アノードは同一の方法で調製された。従って、性能の変化はすべてSWCNTに基づいたGDEの間の差異によるものである。放電特性を図12に示す。
【0111】
開路電圧は市販の装置の値に十分に一致している約1.2Vであり、SWNTもAg粒子も異なる電池の化学的性質(battery chemistry)をもたらさないことを裏付けた。1k
Ωの負荷に接続した後に、電圧は表2に列記された導電率に従って降下した。異なる動作時間は用いたZn材料の異なる量によるものであった。
【0112】
Ag装飾SWNT GDEの中では、調査した他の粒子サイズに対して、最小の粒子サイズが好ましいものと思われる。すべての試料中で最も高い導電率によって電圧降下が最小限にされるだけでなく、放電曲線も、他の試料と比べて最も平坦なものの一つである。よりよい比較のために、すべての装置の性能をSWNTフィルムの導電率、C=I*t/mおよびE=I・V・t/mをそれぞれ用いた比容量Cおよび比エネルギーEの点から表2に要約した。前記式中、Iは放電電流、tは放電時間、Vは動作電圧、mはSW
NTに基づいたGDEの質量であり、mは電極、セパレータおよび電解質を含む装置の重量である。未被覆のSWNTに基づいたGDEと比較して、比容量および比エネルギーの双方が8nm未満の径を有するAgナノ粒子による装飾によって向上していることは明白である。最高の性能は、調査した最小のAgナノ粒子によって修飾されたSWNTに基づくGDEに対して達成された。比容量およびエネルギー密度の双方は2倍になった。より小さなAg粒子サイズによる性能の改善は、より多くの触媒活性サイト、それに続いてより高い電流密度をもたらす、より多数のAg粒子によって説明することができる。他方では、大きさが12〜15nmのAgナノ粒子による装飾は、場合により、より低い電流密度をもたらす、他のすべての試料に比べて低い全体的な表面積により、装置性能を低下させる。
【0113】
【表2】

SWCNT網状組織に基づいたガス拡散電極(GDE)は、通常のGDEと比較すると、有意な重量の低減をもたらす。さらに、Agナノ粒子によって修飾されたSWCNTを用いることは、Zn空気電池において、容量およびエネルギー密度の点から有意な改善をもたらす。最適のAg触媒粒子サイズは調査した試料の中では最も小さく(4nm)、未被覆のSWNTに基づいたGDEと比べて、容量およびエネルギー密度を倍増することが分かった。従って、Agナノ粒子によって修飾されたSWCNTは、より高い性能要求を有する軽量用途におけるGDEに対して有望な材料である。
【0114】
9.1 金修飾単層カーボンナノチューブ
0.1MのNaOH(シグマ−オールドリッチ(Sigme-Aldrich))を、20mLの3.
0〜6.3mMのHAuCl(HAuCl・3HO、アルファ エイサー(Alfer Aesar))(この実施例では4.5mM)に、pHが4〜10の範囲の所定値で安定するま
で、滴下して加えることにより、金ストック溶液を調製した。SWCNT懸濁液(15mLの脱イオン水中に0.08g)を、金前駆体を含有する溶液中に分散させた(SWCNTに対する金の前駆体の分子比は0.1〜0.55でなければならない)。SWCNTを
金前駆体と混合した後の溶液のpHは、約3.5である。結果として生じた混合物を、75℃で30分間にわたって激しく攪拌しながらエージングした。その後、金充填触媒をろ過によって収集し、塩化物を除去するために脱イオン水で繰り返し洗浄した。
【0115】
9.2 白金修飾単層カーボンナノチューブ
PtCl・6HO(3.0〜6.3mM、オールドリッチ、この実施例では5mM)の脱イオン水溶液を、望ましいpH(4〜9)に調節した。SWCNT懸濁液(15mLの脱イオン水中に0.08g)を、Pt前駆体溶液中に分散させ(SWCNTに対するPt前駆体の分子比は0.1〜0.55でなければならない)、その後、還元剤としてメタノール(メルク)を添加した。その懸濁液を75℃で40分間エージングして、脱イオン水で数回洗浄した。
【0116】
9.3 MnOナノフレークの合成
10mLの蒸留水中に溶解された0.2gの硝酸マンガンMn(NOを含有する溶液Aを、10mLの蒸留水中に0.5gのKMnOを含有する溶液Bに、激しく攪拌しながら添加した。結果として生じた溶液を2時間にわたって撹拌し、次いで、テフロン(登録商標)に内側を覆われたステンレス鋼オートクレーブに移して、温度140〜170℃の炉内に1〜24時間にわたって配置して生成物を得た。前記生成物を、溶液のpHが7になるまで、蒸留水で数回洗浄した。これを100℃の炉内で24時間にわたって風乾した。この方法によって得たナノフレークを図14のTEM像に示す。
【0117】
9.4 MnOナノフラワーおよびナノワイヤーの合成
MnSO(8mg/mL)およびKMnO(20mg/mL)の水溶液を混合して、テフロン(登録商標)に内側を覆われたステンレス鋼オートクレーブに移した。次いで、前記オートクレーブを140℃に予熱した炉に装填した。材料を電気化学用途に対して最適化するために、反応の持続時間(dwell time)を1〜18時間まで変化させた。MnSOとMnSOとをよく混合した溶液を1時間にわたって加熱することにより、図14(左画像)に示すように、MnOナノフラワーが形成される。水熱反応時間をさらに18時間に増大すると、図14(中央の画像)に示すように、大量の個別ナノワイヤーが形成される。MnOナノワイヤーの径は約80〜約150nmであり、長さは1マイクロメーターを超える。140℃での持続時間の後、オートクレーブを室温まで自然に冷却した。形成された褐色を帯びた黒色沈澱物をろ過し、任意の未反応の出発材料、および反応の間に生成された可溶性副産物を除去するために、脱イオン水(DI)で洗浄した。その沈澱物を空気中において100℃で乾燥させ、1時間後にMnOナノフラワー/ナノロッドが収集できる状態になった。図14(右画像)は、2〜3.5μmの粒子サイズを有する市販のMnO粉末のSEM像を示す。
【0118】
MnOナノフラワー、MnOナノワイヤーおよびMnO粉末のBET表面測定を以下の表3に要約する。以下の表3は、これらの測定から得られた結果を要約する。
【0119】
【表3】

9.5 MnO修飾単層ナノチューブ(SWCNT)
10mL〜20mLの蒸留水に溶解した0.2g〜0.5gの硝酸マンガンMn(NO
または酢酸マンガンを含有する溶液Aを、10mL〜20mLの蒸留水に0.5g
〜0.9gのKMnOを含有する溶液Bに、激しく撹拌しながら添加した。前記溶液中に0.05〜0.2gのSWCNTを攪拌しながら分散させて、50〜80℃で加熱した。0.01MのHClまたは0.01〜0.05MのHNOを用いて、pHを1〜7に制御した(pHに応じてMnO粒子サイズ/分散度が変化する)。1〜2時間にわたって撹拌した後に結果として生じた懸濁液を遠心分離し、蒸留水で洗浄して、100℃の炉内で24時間にわたって乾燥させた。
【0120】
MnO修飾ナノ構造体の製造のための代替アプローチにおいて、10mgの単層カーボンナノチューブを100mLの蒸留水中に溶解させ、溶液の音波処理を用いて、約30分間にわたって混合した。その後、次に、その溶液の試料をKMnOの溶液(200mLのHO中に40mgのKMnO)に加えた。結果として生じた混合物を、pH8.5において約70℃の温度で3日間撹拌した。反応の間、酸化が起こるにつれて、KMnO溶液の紫色が消失した。3日間のインキュベーションの終了時に、前記溶液をろ過し、洗浄してMnO修飾SWCNTを得た。図23は、MnO修飾SWCNTのTEM像を示す。該TEM像において、SWCNTの表面に結合されたMnOナノ粒子は、約1〜10nmの平均サイズを有する。図23に提供した画像は同一の構造を示しているが、倍率が異なる。
【0121】
9.6 TiOナノチューブの合成
0.5〜1.0gのチタニア(TiO)粉末を15Mの水酸化ナトリウム溶液に添加して2時間にわたって激しく撹拌した。次いで、内容物をテフロン(登録商標)に内側を覆われたステンレス鋼オートクレーブに移し、そのオートクレーブを170℃で4〜5日間にわたって炉内に配置した。結果として生じた分散物を、pHが7になるまで、0.1mol/LのHNOで数回洗浄し、次いで80℃の炉内で24時間にわたって乾燥させた。この方法によって得たナノチューブを図15のTEM像に示す。上記の方法を用いると、TiOナノチューブは金属ナノ粒子によって修飾することができる。
【0122】
10 ナノ構造材料の装飾のための合成条件の最適化
研究結果は、pH、反応時間およびAgNO濃度が、SWCNT上におけるAgNPの分散およびサイズを制御する主なパラメーターであることを示した。0.15MのAgNO溶液にSWCNTを導入した後、ナノチューブ上の酸性カルボキシル基の存在により、pHは表4に示されるように5.6から3.4に低下する。
【0123】
【表4】

続いて、CNT上におけるこれらの基によるAgNOの吸着はCOO−Ag基を形成する(図16)。NaOH溶液の添加は、ヒドロキシルイオンの量がAgのAgへの漸進的な還元のために十分であることを保証するようにpHを制御することにおいて重大な工程である。表4は、pHおよび反応時間の関数として3つの異なる試料の銀ナノ粒子サイズを示す。pH4.3(NaOH添加後)において、SWCNT上に修飾されたAgナノ粒子サイズは、約15nmの径を有して最大であった(図17a)。pHが6.3に増大すると、Agナノ粒子のサイズは、同一の反応時間で、6nm(図17b)まで劇的に減少する。この現象は、より高いpHでの過剰なヒドロキシルイオンとCOO−Ag基との間の反応によるかもしれない。該反応は、SWCNT上におけるカルボキシル基の再形成を促進するとともに、AgOHの放出を伴う。従って、利用可能な核生成サイトの数およびAgナノ粒子の成長は低下する。エージング時間を(同一のpH条件で)120分から15分に短縮することによって、Agナノ粒子のサイズは、6nmから3nm(図17bおよび図17c)に減少した。これは、より長い反応時間が、核生成後の結晶成長および凝集を通じて、実際により大きなAgナノ粒子を生じたことを示す。コロイド状Agクラスター形成を防止することができる条件を最適化するために、AgNO濃度の変化(0.05〜0.15M、pH6、エージング時間15分)について検討した。核生成および成長に必要とされるよりも過剰なAg前駆体(0.15M)では、大きなコロイド状Agクラスター(20〜100nm、図18a)とSWCNT(3nm)上に修飾されたAgとの混合物が形成された。AgNO濃度を0.10Mに低減すると、0.15Mの条件のようにSWCNT上に一定サイズのAgを有して、Agクラスターを有さない状態が得られた。0.05MのAgNO溶液では、WCNT表面上におけるより低い分散および1nmのより小さな銀結晶サイズ(図18b)が達成された。XRDパターン(図19)は、2Θ=38、45、64、78および82において立方晶Agの形成を裏付ける。
【0124】
11 超コンデンサー用の電極
図21は、下記の電極材料、すなわちCNT電極を備えた対照装置(図21の示されたCNT)、並びに6、10、30、50および70の5つの異なる重量パーセント(重量
%)範囲におけるMnOのCNTとのナノ構造体の混合物を有する6つの超コンデンサー装置に対するサイクリックボルタモグラムを示す。前記MnOのCNTとのナノ構造体の混合物は、MnOナノフラワーについては図21(a)に示され、MnOナノワイヤーについては図21(b)に示されている。MnOは触媒材料として作用する。6重量%のMnOナノフラワーおよびナノワイヤーの双方は、〜198−209F/gの最高静電容量に達した。図21(c)は、比静電容量対CNTと混合されたMnOナノフラワーおよびナノチューブの重量%を示しており、6w%が、最も高い比静電容量を得るために最適化されたCNT電極におけるMnOの質量比である。
【0125】
以下の電極材料、すなわち、CNT電極を有する対照装置と、ナノフラワー、ナノワイヤー、および粉末(ミクロンサイズ粒子の形態にある粉末)の3つの異なるモルフォロジにおいてCNTと混合された6重量%のMnOナノ構造体(MnO−CNT)とを有する4つの超コンデンサー装置に対するサイクリックボルタモグラムを図22(a)に示す。サイクリックボルタンメトリー(CV;図22(a))および定電流充放電(GCD;図22(b))法の双方を用いて決定されたすべての装置の比静電容量は、表5に示すように58〜209F/gに及んだ。
【0126】
【表5】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ多孔性ナノ構造疎水性材料を含む第1層と、
第1層上に配置されたメソ多孔性ナノ構造親水性材料を含む第2層と
からなる電極。
【請求項2】
メソ多孔性ナノ構造疎水性材料とメソ多孔性ナノ構造親水性材料との混合物を含む単一層、または
多孔性ナノ構造材料を含む単一層であって、前記多孔性ナノ構造材料が前記多孔性ナノ構造材料の表面に結合された金属ナノ構造体を含む、単一層
からなる電極。
【請求項3】
前記メソ細孔は約2〜50nmの最大寸法を有する、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
前記ナノ構造材料は、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノフレーク、ナノ粒子、ナノフラワー、ナノディスク、ナノフィルム、および前述のナノ構造材料の混合物での組み合わせのうちから選択される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電極。
【請求項5】
前記ナノチューブは、単層ナノチューブ、または二層ナノチューブ、または多層ナノチューブである、請求項4に記載の電極。
【請求項6】
前記ナノ構造材料の少なくとも1つの寸法は100nm未満である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電極。
【請求項7】
前記ナノ構造材料は、炭素材料、セラミック、ガラス、金属、金属酸化物、ポリピロール、および前述の材料の異なるものから製造されたナノ構造材料の混合物のうちから選択される材料から製造される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電極。
【請求項8】
前記炭素材料は、活性炭、カーボンブラックおよびグラフェンのうちから選択される、請求項7に記載の電極。
【請求項9】
前記ナノ構造親水性材料および多孔性ナノ構造材料は、その表面上に結合されたリンカーを含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電極。
【請求項10】
前記リンカーは、ヒドロキシル基、ピレン、エステル、チオール、アミン、カルボキシル基およびそれらの混合物を含む分子のうちから選択される、請求項9に記載の電極。
【請求項11】
前記カルボキシル基は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、シクロアルカンカルボン酸および安息香酸のうちから選択される分子に含まれる、請求項10に記載の電極。
【請求項12】
前記リンカーはリン酸またはスルホン酸を含む分子である、請求項9に記載の電極。
【請求項13】
前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料およびメソ多孔性ナノ構造疎水性材料は、同一の物質または異なる物質から製造されており、前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料は、請求項9乃至12のいずれか1項に記載のように、その表面上にリンカーをさらに含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電極。
【請求項14】
前記層は支持材上に配置される、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電極。
【請求項15】
前記支持材は紙状の自立フィルムである、請求項14に記載の電極。
【請求項16】
前記紙状の自立フィルムは、バッキーペーパー、または可撓性の伝導性基材上に噴霧もしくは印刷された活性物質の薄膜、またはナノ構造材料の自立フィルムである、請求項15に記載の電極。
【請求項17】
前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料はナノ構造体と混合される、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の電極。
【請求項18】
前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料のナノ粒子および前記多孔性ナノ構造材料の金属ナノ構造体は、触媒ナノ構造体である、請求項2または17に記載の電極。
【請求項19】
前記ナノ構造体は、貴金属、合金、金属間化合物、金属酸化物または遷移金属酸化物、およびそれらの混合物のうちから選択される物質から製造される、請求項18に記載の電極。
【請求項20】
前記ナノ構造体は、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノフレーク、ナノ粒子、ナノフラワー、ナノディスク、ナノフィルムおよび前述のナノ構造材料の混合物での組み合わせのうちから選択される、請求項18乃至19のいずれか1項に記載の電極。
【請求項21】
前記ナノ粒子は約0.5〜約40nmのサイズを有する、請求項20に記載の電極。
【請求項22】
前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料のナノ構造体はリンカーを介してメソ多孔性ナノ構造親水性材料に結合されており、前記リンカーは、請求項9乃至12のいずれか1項に記載のリンカーである、請求項17乃至21のいずれか1項に記載の電極。
【請求項23】
前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料または多孔性ナノ構造材料の表面の約5〜約80%が前記ナノ構造体で覆われている、請求項17乃至22のいずれか1項に記載の電極。
【請求項24】
前記ナノ構造体は、前記メソ多孔性ナノ構造親水性材料または多孔性ナノ構造材料の表面において均一に分散されている、請求項23に記載の電極。
【請求項25】
前記合金は第10族、第11族、第12族、第13族、第14族、第16族の元素またはそれらの混合物(IUPAC命名法)の合金である、請求項19に記載の電極。
【請求項26】
前記合金は、Au、またはPt、またはPd、またはCu、またはIn、またはInSe、またはCuSe、またはSnS、またはそれらの混合物、またはAgNiの合金である、請求項19に記載の電極。
【請求項27】
前記金属酸化物は、Ag−MnO、Al、MoO、MnO、V、TiO、SiO、ZnO、SnO、Fe、NiO、Co、CoO、Nb、W、およびそれらの混合物のうちから選択される、請求項19に記載の電極。
【請求項28】
前記貴金属は、銀、パラジウム、金、白金およびそれらの混合物のうちから選択される、請求項19に記載の電極。
【請求項29】
前記ナノ構造体はナノ粒子であり、前記ナノ粒子の最大寸法は約1〜20nmである、請求項17乃至28のいずれか1項に記載の電極。
【請求項30】
約≧12nm〜20nmの大きさを有するナノ粒子のナノ粒子サイズ分布は約±5nm
であり、約≧5nm〜<12nmの大きさを有するナノ粒子の粒子サイズ分布は約±3nmであり、約2nm〜<5nmの大きさを有するナノ粒子のナノ粒子サイズ分布は約±1nmである、請求項29に記載の電極。
【請求項31】
各層は約10μm〜約30μmの厚さである、請求項1乃至30のいずれか1項に記載の電極。
【請求項32】
前記層は、ポリマーバインダーを含まないか、またはポリ(1,1−ジフルオロ−1,2−エタンジイル(PVDF)を含まない、請求項1乃至31のいずれか1項に記載の電極。
【請求項33】
請求項1乃至32のいずれか1項に記載の電極を備える金属空気電池。
【請求項34】
前記金属空気電池は、亜鉛空気電池、またはリチウム空気電池、またはアルミニウム空気電池である、請求項33に記載の金属空気電池。
【請求項35】
前記電極は前記金属空気電池のカソードである、請求項34または35に記載の金属空気電池。
【請求項36】
請求項1乃至32のいずれか1項に記載の電極を備える燃料電池。
【請求項37】
前記燃料電池は、ポリマー交換膜燃料電池(PEMFC)、または固体酸化物燃料電池(SOFC)、またはアルカリ型燃料電池(AFC)、または溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、またはリン酸型燃料電池(PAFC)、または直接メタノール燃料電池(DMFC)である、請求項36に記載の燃料電池。
【請求項38】
前記電極は燃料電池のアノードである、請求項36または37に記載の燃料電池。
【請求項39】
請求項1乃至32のいずれか1項に記載の電極を備える超コンデンサー。
【請求項40】
メソ多孔性ナノ構造疎水性材料を含む第1層を、メソ多孔性ナノ構造親水性材料を含む第2層の上に配置することを含む、電極を製造する方法。
【請求項41】
メソ多孔性ナノ構造疎水性材料とメソ多孔性ナノ構造親水性材料とを混合することと、
単一電極層を形成することとを含む、電極を製造する方法。
【請求項42】
多孔性ナノ構造材料の電極を製造する方法であって、前記多孔性ナノ構造材料はその表面に結合した金属ナノ構造体を含み、該方法は、
多孔性ナノ構造材料を、金属ナノ構造体前駆体を含有する溶液と混合して、前記ナノ構造材料の前記金属ナノ構造体前駆体を含有する溶液との懸濁液を得ることと、
前記金属ナノ構造体前駆体を化学的に還元して、80℃以下の温度で、前記ナノ構造体材料の表面における前記ナノ構造体の析出を可能にすることとを含む、方法。
【請求項43】
前記ナノ構造疎水性材料およびナノ構造親水性材料は、約10(ナノ構造疎水性材料):90(ナノ構造親水性材料)重量%〜約90:10重量%の比率で混合される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記混合比は約30:70重量%である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記層は、前記ナノ構造材料を、フィルター膜を介してろ過することにより形成される、請求項40乃至42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
請求項40に記載の疎水性層および/または親水性層と、請求項41または42に記載の単一層とを支持材上に配置することをさらに含む、請求項40乃至42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ナノ構造親水性材料は、請求項40乃至42のいずれか1項に記載の方法において用いられる前に処理を受け、前記処理は、酸化処理、または<500℃の温度での焼結、またはHNOのような無機極性溶剤中での24時間にわたる還流、またはNもしくはHもしくはOプラズマ処理のようなプラズマ処理である、請求項40乃至46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記層は、噴霧もしくはろ過により、またはプラズマ法の使用により、互いの上に配置される、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
請求項1乃至33のいずれか1項に記載の電極、または請求項40乃至48のいずれか1項に記載の方法に従って製造された電極の、金属空気電池または燃料電池を製造するための使用。

【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a)】
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【図16b)】
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【図17】
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【図23】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2012−502427(P2012−502427A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526016(P2011−526016)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000319
【国際公開番号】WO2010/027337
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(506076891)ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー (14)
【Fターム(参考)】