説明

金属箔張積層板

【課題】 ポリイミドを主とした熱可塑性樹脂フィルムのスプリングバック性が高いという問題点を解消し、金属箔張積層板を成形した際に優れた耐折り曲げ性を有し、適度なスプリングバック性を発現する微細回路形成可能な金属箔張積層板を提供する。
【解決手段】 ポリイミドフィルムの少なくとも片面に前記ポリイミドフィルムよりも厚い接着層を有し、前記ポリイミドフィルムと前記接着層の総厚みtが100μm≦t≦400μmの範囲にあって、前記接着層のさらに外側に厚み40μm以下の金属層を有し、前記接着層の25℃における引っ張り弾性率が3.1GPa以下であることを特徴とする金属箔張積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属箔張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末電子機器の急速な普及に伴って、電子機器の小型化・薄型化が進んでいる。その中に搭載されるプリント配線板も高密度化・薄型化の要求が高まっている。
一方、電子部品の実装点数も急激に増加しており、プリント配線板の限られたスペースに多数の電子部品を実装するため、従来の剛直なプリント配線板のみならず自由に折り曲げ可能な柔らかい基板が必要となってきた。折り曲げ可能なプリント配線板材料としては、ポリイミドを中心とした熱可塑性樹脂フィルムが主に使用されている。
近年、プリプレグの高いTg(ガラス転移温度)の特性を維持しつつ、優れた柔軟性(可とう性)を有する金属箔張積層板及び印刷回路板、並びにこれらを得ることが可能なプリプレグが提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−281664号公報
【特許文献2】特開2005−272799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリイミドは他の材料を積層して多層化すると、その弾性率の高さのため折り曲げ性が低下し、曲げが困難となる。また、ポリイミドはその弾性率の高さのため、ハゼ折りしたときのスプリングバックが大きく、プリント配線板にしたときにそのプリント配線板をハゼ折りした状態で電子機器に組み込む際の作業性が悪いという課題がある。
本発明は、ポリイミドを主とした熱可塑性樹脂フィルムのスプリングバック性が高いという問題点を解消し、金属箔張積層板を成形した際に優れた耐折り曲げ性を有し、適度なスプリングバック性を発現する微細回路形成可能な金属箔張積層板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次のものに関する。
1、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に前記ポリイミドフィルムよりも厚い接着層を有し、前記ポリイミドフィルムと前記接着層の総厚みtが100μm≦t≦400μmの範囲にあって、前記接着層のさらに外側に厚み40μm以下の金属層を有し、前記接着層の25℃における引っ張り弾性率が3.1GPa以下であることを特徴とする金属箔張積層板。
2、折り曲げ後の戻り角度が60度以上110度以下であることを特徴とする前項1に記載の金属箔張積層板。
3、前記接着層がグリシジル基もしくはアミド基のいずれかを有する樹脂を含む前項1又は2に記載の金属箔張積層板。
4、前記接着層がアクリル樹脂を含む前項1乃至3の何れか一項に記載の金属箔張積層板。
5、前記接着層がシロキサン結合を含むポリアミドイミド樹脂を含む前項1乃至4の何れか一項に記載の金属箔張積層板。
6、前項1乃至5の何れか一項に記載の金属箔張積層板を含む多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0006】
本発明における金属箔張積層板は微細回路形成可能であるとともに折り曲げ可能な部分を有し、高弾性のポリイミドフィルムと低弾性の接着層を組み合わせて積層することで、曲げた際のスプリングバックを低減し、プリント配線板にしたときにそのプリント配線板をハゼ折りした状態で電子機器に組み込む際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明における折り曲げ試験及び折り曲げ後の戻り角度の測定を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳述する。
本発明で用いるポリイミドフィルムとしては、カプトン(登録商標)(東レ・デュポン株式会社製)、エスパネックス(登録商標)(新日鐵化学株式会社製)に用いられる低膨張ポリイミドフィルムなどが好適に用いられる。本発明における金属層は金属をめっきしたり、金属箔を積層することによって得られる。めっきは電気めっき、無電解めっき何れの方法でも形成することができる。金属箔としては金箔、銅箔など特に制限されないが、通常銅箔が用いられる。
銅箔を用いる場合、その種類は圧延銅箔、電解銅箔等特に制限されない。金属層の厚みは0.01μm〜40μmが好ましい。0.01μm未満であると、金属層の厚みを均一に形成することが困難になる。40μmを超えると、ハゼ折りが困難になる。20μm以下の銅箔を用いることで折り曲げ性が向上する。 本発明の金属箔張積層板は、ポリイミドフィルムと金属層の間に前記ポリイミドフィルムよりも厚い接着層を有する。
本発明の接着層に用いられる樹脂として可とう性や耐熱性の向上を目的に高分子量の樹脂成分を含んでいる。このような樹脂として、例えばエポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂及びこれら樹脂の変性系等が用いられる。とりわけグリシジル基またはアミド基を有する樹脂あるいはアクリル樹脂が好ましい。特に、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂やアクリル樹脂が好ましい。また、接着層がポリアミドイミド樹脂を含む場合、シロキサン結合を含むポリアミドイミド樹脂を含むと折り曲げ性の観点からより好ましい。
また、これらの樹脂は2種類以上を併用してもよく、必要に応じて各種溶剤溶液としてもかまわない。溶剤としては、アルコール系、エーテル系、ケトン系、アミド系、芳香族炭化水素系、エステル系、及びニトリル系等どのようなものでもよく、数種類を併用した混合溶剤を用いることもできる。
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂等の多価フェノール又は1,4−ブタンジオール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、アミン、アミド又は複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジル誘導体、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
より具体的には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂等、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アミノトリアジンノボラックエポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル型エポキシ樹脂などがある。
硬化剤としては、従来公知の種々のものを使用することができ、例えば樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、フェノールノボラックやクレゾールノボラック等の多官能性フェノールなどをあげることができる。しばしば、樹脂と硬化剤との反応を促進させる目的で硬化促進剤が用いられる。硬化促進剤の種類や配合量は特に限定するものではなく、例えばイミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が用いられ、これらの2種類以上を併用してもよい。
これらの樹脂は難燃剤、流動調整剤、カップリング剤などを含んでいてもかまわない。
【0009】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物とイソフタル酸ジヒドラジドを必須成分として含有する芳香族ジアミン化合物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族ジアミン化合物としては前記のものが用いられる。
イソフタル酸ジヒドラジドの芳香族ジアミン化合物中のモル比は1〜100モル%とすることが好ましい。
1モル%未満では変性ポリアミドイミド樹脂に対する耐溶解性が低下する傾向にあり、イソフタル酸ジヒドラジドの含有量が多いと本発明のペーストによって形成される層の耐湿性が低下する傾向にあるので10〜80モル%がより好ましく、20〜70モル%が特に好ましく用いられる。
本発明で用いられるトリアジン樹脂としては、三菱ガス化学株式会社製のBT2060、日産化学株式会社製のTEPIC−G、TEPIC−P、TEPIC−L、TEPIC−S、TEPIC−H等がある。
本発明で用いられるフェノール樹脂としては、レゾール樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、フェノール変性ポリブタジエン等が挙げられる。例えば、トリアジン化合物で変性してなるフェノール樹脂硬化剤であり、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどのトリアジン化合物で、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾール骨格含有フェノール樹脂、クレゾール骨格含有フェノールノボラック樹脂などのフェノール樹脂硬化剤を変性してなるものである。
例えば、メラミン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノールノボラック樹脂、ベンゾグアナミン変性フェノールノボラック樹脂、アセトグアナミン変性フェノールノボラック樹脂、メラミン変性クレゾール骨格含有フェノール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
市販品では、DIC株式会社製LA−7054(水酸基当量125、窒素含有率12%)、JER株式会社製YLH828(水酸基当量148、窒素含有率20%)などが挙げられる。
本発明で用いられるメラミン樹脂としては、特に限定するものではないが、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、混合エーテル化メラミン樹脂等を挙げることができ、具体的には、NS−11、MS−001、MW−30、MX−705(株式会社三和ケミカル製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂)、メラン220、メラン245、メラン280(日立化成工業株式会社製、商品名、ブチルエーテル化メラミン樹脂)、MX−408(株式会社三和ケミカル製、商品名、混合エーテル化メラミン樹脂)等が挙げられる。
これらのメラミン樹脂は単独または2種以上混合したものが用いられる。
本発明で用いられるポリエステル樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等のジカルボン酸、これらのジクロライド、酸無水物等の誘導体と、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールF、ビスフェノールA、4,4′−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール化合物を反応させて得られるものがある。ポリセット8001、ポリセット15、ポリセット1714B、ポリセット1800(日立化成工業株式会社製、商品名)などが例として挙げられる。
本発明で用いられるシアネートエステル樹脂としては、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化物等が挙げられ、そのプレポリマーなどが単独若しくは混合して用いられる。
その中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン及び2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)等が硬化物の誘電特性が特に良好であるため好ましい。
シアネートエステル樹脂の硬化剤として金属系反応触媒類が用いられ、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属触媒類が用いられ、具体的には、2−エチルヘキサン酸塩やナフテン酸塩等の有機金属塩化合物及びアセチルアセトン錯体など有機金属錯体が用いられる。金属系反応触媒の配合量は、シアネートエステル類化合物に対して1〜3000ppmとすることが好ましく、1〜1000ppmとすることがより好ましく、2〜300ppmとすることがさらに好ましい。
金属系反応触媒の配合量が1ppm未満では反応性及び硬化性が不十分となる傾向があり、3000ppmを超えると反応の制御が難しくなったり、硬化が速くなりすぎる傾向があるが制限するものではない。
【0010】
本発明で用いるアクリル樹脂としては、アクリル酸モノマ、メタクリル酸モノマ、アクリロニトリル、グリシジル基を有するアクリルモノマなどの単独もしくはこれらを複数共重合した共重合物を使用することが可能である。分子量は特に規定されるものではないが、GPCによる分子量測定において、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で30万〜100万、好ましくは40万〜80万のものが用いられる。前記アクリル樹脂にエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤を適宜加えて使用することが好ましい。
なお、前記接着層中に、無機繊維の織布を含んでいると接着層の寸法安定性が得られるので、好ましい。無機繊維の織布の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、40μm以下であると折り曲げ性は向上するので、より好ましい。無機繊維の織布は、ガラス布であることが好ましい。
本発明の金属箔張積層板はポリイミドフィルムと接着層の総厚みtが100μm≦t≦400μmの範囲にある。100μm未満では、金属箔張積層板を折り曲げた際に十分なスプリングバック性が得られない。400μmを超えると、金属箔張積層板を折り曲げた際に過剰なスプリングバック性が得られてしまう。より好ましくは、200μm≦t≦350μmである。
本発明の金属箔張積層板の接着層は、樹脂組成物を支持フィルム上に塗工して得られる接着フィルムであってもよいし、無機繊維の織布を樹脂に含浸し、乾燥して得られるプリプレグであってもよい。また、本発明の金属箔張積層板の接着層と金属層に、金属層となる金属箔に接着層となる樹脂を塗布して得られる樹脂付き金属箔を用いてもよい。
即ち、本発明の金属箔張り積層板は熱硬化性樹脂組成物を塗布した樹脂付き金属箔や樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物繊維基材に含浸したプリプレグとポリイミドフィルム、及び金属箔を積層して作製する。樹脂付き金属箔/ポリイミドフィルムや金属箔/樹脂フィルム/ポリイミドフィルム及び金属箔/プリプレグ/ポリイミドフィルムの片面金属箔張り積層板や、樹脂付き金属箔/ポリイミドフィルム/樹脂付き金属箔、金属箔/樹脂フィルム/ポリイミドフィルム/樹脂フィルム/金属箔、金属箔/プリプレグ/ポリイミドフィルム/プリプレグ/金属箔の両面金属箔張り積層板、金属箔/樹脂フィルム/ポリイミドフィルム/プリプレグ/金属箔、樹脂付き金属箔/ポリイミドフィルム/プリプレグ/金属箔の両面金属箔張り積層板など様々な構成が可能であり、プリプレグと金属箔、もしくはプリプレグとポリイミドフィルムの間に熱硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムを介することも可能である。
本発明の金属箔張積層板において、ポリイミドフィルムと金属層の間に内層回路の層があってもよい。
【0011】
本発明の金属箔張積層板において、接着層は25℃における引っ張り弾性率が3.1GPa以下であることが適切なスプリングバックを発揮するうえで好ましい。接着層の引っ張り弾性率は、金属箔張積層板のポリイミドフィルムをエッチング又は物理的に研磨して除去し、金属箔をエッチングによって除去することによって、接着層を樹脂フィルムの状態で取り出すことができ、前記樹脂フィルムの硬化体試料の応力−歪曲線をオートグラフによって測定して求めることができる。
本発明で使用する接着フィルム、樹脂付き金属箔、プリプレグの塗工条件は特に制約はないが、溶剤溶液を用いる場合には、溶剤が揮発可能な温度以上で乾燥し、ワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発していることが好ましい。このため、乾燥時の温度は80℃〜180℃、ワニスの含浸量は、ワニス固形分と無機繊維の織布の総量に対して、ワニス固形分が30〜80質量%になるようにされることが好ましい。
プレスの加熱・加圧条件は特に制約はないが、通常、成形温度は80℃〜250℃、成形圧力は0.5MPa〜8.0MPaであり、好ましくは成形温度が130℃〜230℃、成形圧力が1.5MPa〜5.0MPaである。
本発明において折り曲げ後の戻り角度とは、基板を所定の太さの円柱棒に沿って180°方向に折り曲げたのち、放置して10s経過後の基板間に円柱棒を挟む角の補角を戻り角度と称している。
本発明の金属箔張積層板は、折り曲げ後の戻り角度が60度以上110度以下であることが好ましい。この範囲内であれば、前記金属箔張積層板の金属箔を回路加工してプリント配線板とした後に、ハゼ折りした状態で電子機器に作業性を損ねることなく組み込むことができる。90度以上110度以下であれば、より好ましい。本発明の金属箔張積層板を回路加工することによりプリント配線板とすることができる。
金属箔張積層板の回路加工は通常のフォトリソによる方法が適用でき、得られたプリント配線板は任意に折り曲げることが可能であり、40μm以下の金属層でも低スプリングバック性が得られる。
【実施例】
【0012】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(配合例1)
以下に示す樹脂組成物をメチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンに溶解し樹脂固形分30質量%に調製して熱硬化性樹脂ワニスを作製した。

ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000H:日本化薬株式会社)
33質量部
アミノトリアジンノボラックエポキシ樹脂(LA−3018:DIC株式会社)
8質量部
2−フェニルイミダゾール(G−8009L:JSR株式会社)
0.2質量部
アクリルゴム(HTR860−P3:ナガセケムテックス株式会社)
45質量部

(配合例2)
以下に示す樹脂組成物をメチルエチルケトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し樹脂固形分70質量%の熱硬化性樹脂ワニスを作製した。
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:530)
100質量部
ジシアンジアミド
4質量部
イミダゾール(2E4MZ(四国化成工業(株))
0.5質量部

(ポリイミドフィルム)
ポリイミドフィルムとしてエスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEG(ポリイミド厚み25μm)の銅箔をエッチングして除去したものを使用した。

(樹脂付き銅箔の作製)
厚みが12μmの銅箔(古河サーキットフォイル株式会社、F3WS−12)の上にワニス配合例1、2で作製したワニスを乾燥後の樹脂の厚みが15μm、50μmになるように塗工機で塗布し、100〜140℃の乾燥炉を滞留時間5分で加熱、乾燥して樹脂付き銅箔を得た。

(樹脂フィルムの作製)
作製した樹脂組成物ワニスをPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、A31−75)の上に、樹脂層厚み厚さ30μm、50μmになるように塗布し、120℃、20分間加熱、乾燥して樹脂フィルムを作製した。

(プリプレグの作製)
プリプレグはガラスクロスWEX−1027(旭化成イーマテリアルズ株式会社製、厚み19μm)に配合例で作製したワニスを乾燥後のプリプレグの厚みが50μm、60μmになるように塗工機で塗布し、120〜150℃、20分加熱乾燥したものとした。

(曲げ評価基板の作製)
コア基板の片側に、ライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製し、反対面は全面をエッチングした。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。

(実施例1)
配合例1で作製したワニスを用いて樹脂厚み60μmの樹脂付き銅箔を作製した。
エスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEGを全面エッチングし、両側に樹脂付き銅箔の樹脂側を張り合わせて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅箔張り積層板(コア基板)を作製した。この両面銅箔張り積層板の片側にライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製し、反対面は全面をエッチングした。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。
(実施例2)
配合例1で作製したワニスを用いて樹脂厚み60μmの樹脂付き銅箔を作製した。
エスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEGを全面エッチングし、両側に配合例1で作製した樹脂厚み30μmの樹脂フィルムを張り合わせ、更にその両側に配合例1で作製した樹脂厚み60μmの樹脂付き銅箔の樹脂側を張り合わせて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅箔張り積層板(コア基板)を作製した。この両面銅箔張り積層板の片側にライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製し、反対面は全面をエッチングした。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。
(実施例3)
配合例1で作製したワニスを用いて樹脂厚み60μmの樹脂付き銅箔を作製した。
エスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEGの樹脂側に配合例1で作製した樹脂厚み50μmの樹脂フィルムを張り合わせ、更にその樹脂側に配合例1で作製した樹脂厚み60μmの樹脂付き銅箔の樹脂側を張り合わせて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅箔張り積層板(コア基板)を作製した。この両面銅箔張り積層板の片側にライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製し、反対面は全面をエッチングした。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。
(実施例4)
配合例1で作製したワニスを用いて樹脂厚み60μmのプリプレグを作製した。
エスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEGを全面エッチングし、両側にプリプレグを張り合わせて、更にその外側に銅箔F3WS−12(古河サーキットフォイル株式会社製)の粗化面を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅箔張り積層板(コア基板)を作製した。この両面銅箔張り積層板の片側にライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製し、反対面は全面をエッチングした。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。
(実施例5)
配合例1で作製したワニスを用いて厚み60μmのプリプレグを作製した。
エスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEGの樹脂側に配合例1で作製した厚み50μmのプリプレグを張り合わせ、更にその樹脂側に配合例1で作製した樹脂厚み60μmの樹脂付き銅箔の樹脂側を張り合わせて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅箔張り積層板(コア基板)を作製した。この両面銅箔張り積層板の片側にライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製し、反対面は全面をエッチングした。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。
(比較例1)
エスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEGの片側にライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製した。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。
(比較例2)
(樹脂付き銅箔の作製)
厚みが50μmの銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製、GTS−MP−50)の上にワニス配合例1で作製したワニスを乾燥後の樹脂の厚みが60μmになるように横型塗工機で塗布し、100〜140℃の乾燥炉を滞留時間5分で加熱、乾燥して樹脂付き銅箔を得た。
エスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEGを全面エッチングし、両側に樹脂付き銅箔の樹脂側を張り合わせて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅箔張り積層板(コア基板)を作製した。この両面銅箔張り積層板の片側にライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製し、反対面は全面をエッチングした。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。
(比較例3)
配合例2で作製したワニスを用いて樹脂厚み60μmの樹脂付き銅箔を作製した。
エスパネックス(登録商標)MB12−25−12CEGを全面エッチングし、両側に樹脂付き銅箔の樹脂側を張り合わせて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅箔張り積層板(コア基板)を作製した。この両面銅箔張り積層板の片側にライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製し、反対面は全面をエッチングした。コア基板の両側に配合例1の樹脂付き銅箔(樹脂厚み50μm)の樹脂側を張り合わせ、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で積層板を作製した。
(伸び特性測定サンプルの作製)
厚みが12μm(古河サーキットフォイル株式会社製、F3WS−12)の銅箔の上にワニス配合例1、2で作製したワニスを乾燥後の樹脂の厚みが60μmになるように塗工機で塗布し、100〜140℃の乾燥炉を滞留時間5分で加熱、乾燥して樹脂付き銅箔を得た。その後樹脂付き銅箔の樹脂面に厚みが12μmの銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製、F3WS−12)の粗化面を重ね、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅箔張り積層板を作製した。両面銅箔張り積層板の外側の銅箔は両面エッチングした。
(引っ張り弾性率の測定)
接着層の樹脂の硬化体試料(80mm×10mm)を作製し、オートグラフ(島津製作所製、型番:AG−100C)を用いて引っ張り速度5mm/分、室温25℃の条件で応力−歪曲線を求め、その傾きから求めた。
(伸び特性の測定)
弾性率はオートグラフ(島津製作所製、型番:AG−100C)を用いて測定した。両面銅箔張り積層板の銅箔を両面エッチングした樹脂板を80mm×10mmに切断し、試験片とした。測定条件は、25℃で測定長さ60mm、引張り速度5mm/分とした。
(スプリングバック性の評価)
実施例および比較例の折り曲げ性評価基板のスプリングバック性を評価した。直径0.5mmの円柱棒に沿って折り曲げ性評価基板を折り曲げ角度180°で曲げ後(図1(a))、放置して10s後の折り曲げ性評価基板間に円柱棒を挟む角の補角を測定してスプリングバック性を評価した(図1(b))。補角が小さいほど低スプリングバック性である。
評価結果を表1に示す。表1より、ポリイミドフィルム単独よりも本発明のコア基板を用いたサンプルの方が低スプリングバック性を有することが分かった。比較例2より、銅箔が厚ければ、低スプリングバック性は得られるものの、L(ライン)/S(スペース)=75μm/75μmの微細な回路を形成できないことが分かった。本発明は銅箔厚み12μmのコア基板でも低スプリングバック性を有することが分かった。
【0013】
【表1】

【符号の説明】
【0014】
1 折り曲げ性評価基板
2 円柱棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムの少なくとも片面に前記ポリイミドフィルムよりも厚い接着層を有し、前記ポリイミドフィルムと前記接着層の総厚みtが100μm≦t≦400μmの範囲にあって、前記接着層のさらに外側に厚み40μm以下の金属層を有し、前記接着層の25℃における引っ張り弾性率が3.1GPa以下であることを特徴とする金属箔張積層板。
【請求項2】
折り曲げ後の戻り角度が60度以上110度以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属箔張積層板。
【請求項3】
前記接着層がグリシジル基もしくはアミド基のいずれかを有する樹脂を含む請求項1又は2に記載の金属箔張積層板。
【請求項4】
前記接着層がアクリル樹脂を含む請求項1乃至3の何れか一項に記載の金属箔張積層板。
【請求項5】
前記接着層がシロキサン結合を含むポリアミドイミド樹脂を含む前記請求項1乃至4の何れか一項に記載の金属箔張積層板。
【請求項6】
前記請求項1乃至5の何れか一項に記載の金属箔張積層板を含む多層プリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−135880(P2012−135880A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287705(P2010−287705)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】