説明

金属線材のスケール除去方法と装置

【課題】簡単な方法及び装置で、確実に延伸された金属線材の表面の酸化皮膜等を除去することができる金属線材のスケール除去方法と装置を提供。
【解決手段】水等の液体中にあらかじめ研掃剤を入れておき、その液体中に鋼線7等の金属線材を通過させるとともに、高圧の液体を液体中で鋼線7の表面に向けて噴射する。研掃剤は、粒径約10μm〜約800μmのジルコン等の球状ジルコニアビーズである。研掃剤が分散した液体中を鋼線7が通過し、高圧の液体が鋼線7の表面に噴射されて、研掃剤により鋼線7表面のスケールが除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼線の伸線工程で発生したスケールに対してあらかじめ研掃剤を入れた水中で高圧処理水をワークに向け噴射することにより、短時間で確実にスケールを除去するための金属線材のスケール除去方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鋼線の熱間伸線工程では高温に加熱するため、表面にミルスケール(黒皮)やこれを含むスケール(酸化皮膜)が生じる。現在、このスケールを除去する方法として、伸線ダイスに入る前にリング状のピーリング刃で削ぎ落とすという方法がある。
【0003】
また、現在スケール除去は、酸のプールに金属線材を漬け込んで、スケールを溶かして除去する、酸洗処理がも多くなっている。
【特許文献1】特開2001−32042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のメカニカルピーリングでは、一定時間でピーリング刃が磨耗し交換が必要となる。この時、刃の形状がリング状であるがゆえに、いったん線材を切断し刃を交換した後、線材を溶着するという手順を取らざるを得ない。この時、この溶着部の電気抵抗が変化するなど、線材が品質的に不安定なものとなる。そして何よりも大変工数がかかるため、タイムロスも大きくコスト高となる。またスケールが剥離しきれず残ってしまう場合もあり、これが伸線ダイスの焼付けの原因ともなっている。また、従来の酸洗処理では、使用後の酸の処理が面倒であり、コストがかかるとともに、環境にも好ましくないものである。
【0005】
この発明は上記従来の技術の問題点に鑑みて成されたもので、簡単な方法及び装置で、確実に延伸された金属線材の表面の酸化皮膜等を除去することができる金属線材のスケール除去方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属線材の伸線工程中に生じたスケールの除去方法であって、液体中にあらかじめ研掃剤を入れておき、その液体中に前記金属線材を通過させるとともに、高圧の液体を前記液体中で前記金属線材表面に向けて噴射することにより、この高圧の液体が前記液体中の研掃剤をまきこみ、前記研掃剤が高速で前記金属線材表面のスケールに衝突することによって前記スケールを除去する金属線材のスケール除去方法である。
【0007】
前記研掃剤として粒径約10μm〜約800μmの球状微粒子を使用する。特に、前記研掃剤の球状粒子は、球状ジルコニアビーズを使用する。さらに、前記研掃剤は、ジルコンを用いるものである。または、前記研掃剤は、イットリア安定化ジルコニアを用いても良い。
【0008】
前記研掃剤が入れられた液体は水であり、この水中で高圧水を前記金属線材表面に向けて噴射するものである。
【0009】
またこの発明は、金属線材の伸線工程中に載置され、前記金属線表面に生じたスケールを除去する金属線材のスケール除去装置であって、前記金属線が内部を通過する液体収容槽を設け、この液体収容槽中の液体にあらかじめ研掃剤が入れられ、その液体中に前記金属線材が通過可能に設けられ、前記液体中の前記金属線に向けて高圧の液体を前記液体中で噴射するノズルと、このノズルに高圧の液体を供給するポンプを備え、前記金属線材表面に前記液体とともに前記研掃剤を衝突させる金属線材のスケール除去装置である。
【0010】
さらに、前記研掃剤が入れられた液体を、前記液体収容槽で循環させ攪拌する、ポンプと循環用パイプ等の攪拌装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属線材のスケール除去方法と装置により、これまで一定時間ごとに行わざるを得なかった刃の交換作業という大変手数のかかる工程がなくなり飛躍的に製造効率がよくなる。また線材を切断する必要がなくなるため、品質的にも向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図1、図2を基にして説明する。図示するとおりこの実施の形態の金属線材のスケール除去装置は、高圧ポンプ1、ジェットノズル2、循環用ダイヤフラムポンプ3、中仕切5、水槽6等で構成されている。水槽6には、水が満たされ、一対の中仕切5の間に4本のジェットノズル2が、金属線材である鋼線7を囲むよう配置されている。
【0013】
延伸されたワークである鋼線7は、水槽6の入り口側のガイドローラ4aにより水槽6中へ向きが変えられ、水槽6内へ向かう。そして、水槽内の一対のガイドローラ4b間で水平になり、水中を通過して、さらに水槽6の出口側のガイドローラ4cに向かって延び、ガイドローラ4cで水槽6の外へ引き出される。
【0014】
ジェットノズル2は、鋼線7の中心軸回りに互いに90°間隔で配置されている。さらに、水槽6を横切る鋼線7の周囲すべてをカバーできるよう、鋼線7の径によりジェットノズル2の形状や数量は適宜変え得る。また、ジェットノズル2の向きは、相対して水勢が相殺しないように、鋼線7の進行方向にジェットノズル2の先端の位置がずれている。また、ジェットノズル2の向きは、鋼線7の進行方向と逆方向に向くようにして、且つ鋼線7に対して斜めに配置されている。
【0015】
鋼線7からジェットノズル2までの距離は、ジェットノズル2ノズル径をφDとした場合、20D〜200Dが最も効果的である。また、鋼線7の進行方向に対して逆行するように角度をつけて噴射すると、当接面積が増え相対速度が上がり効率が良くなるので、線材の引き速度により適宜ノズル角度を調整する。
【0016】
水槽6の水中に混ぜられた研掃剤は、粒径約10μm〜約800μmで、ほぼ真球の球状粒子の球状ジルコン(ZrSiO)である。使用する球状ジルコンビーズは、比重が3.8、モース硬度が7程度である。球状ジルコンビーズは、比重が重く、すぐに沈降してしまうので、球状ジルコンビーズの研掃剤を水中に均等に分散させるため、この研掃剤を入れた水を、攪拌装置であるダイヤフラムポンプ3と循環用パイプ8等を介して、水槽6の下部から水槽6の上部へ送り、水槽6内の水を循環させ攪拌する。攪拌装置は、ポンプ以外に水槽6内にファンを設けて、水槽6内の水を直接攪拌して、研掃剤を分散させてもよい。
【0017】
なお、研掃剤としては、球状ジルコンのジルコンビーズの外に、高強度で靱性の高い他のジルコニア(酸化ジルコニウム:ZrO)ビーズを用いることもできる。例えば、イットリア安定化ジルコニア(ZrO)でも良い。このイットリア安定化ジルコニアは、耐久性が高く形状も安定している。
【0018】
この実施形態の金属線材のスケール除去装置は、高圧ポンプ1から出た高圧処理水がジェットノズル2から噴射され、水槽6中の球状研掃剤である球状ジルコンビーズを巻き込みながら高速で鋼線7の表面のスケールに衝突し、瞬時にこれを取り去る。しかも、研掃剤は球形であるため、ワークである鋼線7を傷つけず、きれいな表面に仕上げる。特に、球状ジルコンビーズの研掃剤は、非金属であるので、金属材料の鋼線7に異種金属が付着することがなく、ワークである鋼線7の腐食の可能性も低い。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の金属線材のスケール除去方法と装置によれば、線材を切断することなく作業を継続でき、飛躍的に作業効率が上がるものである。また、装置自体非常に簡易なものであり対費用効果も高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の金属線材のスケール除去装置の全体構成を示す略図である。
【図2】この実施の形態の金属線材のスケール除去装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 高圧ポンプ
2 ジェットノズル
3 循環用ダイヤフラムポンプ
4a,4b,4c ガイドローラ
5 中仕切り
6 水槽
7 鋼線
8 循環用パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材の伸線工程中に生じたスケールの除去方法において、
液体中にあらかじめ研掃剤を入れておき、その液体中に前記金属線材を通過させるとともに、高圧の液体を前記液体中で前記金属線材表面に向けて噴射することにより、この高圧の液体が前記液体中の研掃剤をまきこみ、前記研掃剤が高速で前記金属線材表面のスケールに衝突することによって前記スケールを除去することを特徴とする金属線材のスケール除去方法。
【請求項2】
前記研掃剤として粒径約10μm〜約800μmの球状微粒子を使用することを特徴とする請求項1の金属線材のスケール除去方法。
【請求項3】
前記研掃剤の球状粒子は、球状ジルコニアビーズを使用することを特徴とする請求項2の金属線材のスケール除去方法。
【請求項4】
前記研掃剤は、ジルコンを用いることを特徴とする請求項3の金属線材のスケール除去方法。
【請求項5】
前記研掃剤は、イットリア安定化ジルコニアを用いることを特徴とする請求項3の金属線材のスケール除去方法。
【請求項6】
前記研掃剤が入れられた液体は水であり、この水中で高圧水を前記金属線材表面に向けて噴射することを特徴とする請求項1の金属線材のスケール除去方法。
【請求項7】
金属線材の伸線工程中に載置され、前記金属線表面に生じたスケールを除去する金属線材のスケール除去装置において、
前記金属線が内部を通過する液体収容槽を設け、この液体収容槽中の液体にあらかじめ研掃剤が入れられ、その液体中に前記金属線材が通過可能に設けられ、前記液体中の前記金属線に向けて高圧の液体を前記液体中で噴射するノズルと、このノズルに高圧の液体を供給するポンプを備え、前記金属線材表面に前記液体とともに前記研掃剤を衝突させることを特徴とする金属線材のスケール除去装置。
【請求項8】
前記研掃剤が入れられた液体を、前記液体収容槽で循環させ攪拌する攪拌装置を備えた請求項7の金属線材のスケール除去装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−125617(P2007−125617A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274888(P2006−274888)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(302048072)千田建設株式会社 (5)
【Fターム(参考)】