説明

金属表面処理用カルボキシレート含有ポリマー

本発明は、(メタ)アクリル酸又はその塩、カルボキシレート含有モノマー、及び/又はリン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩を含むモノマー、及び必要により他の成分より合成された共重合体(成分A)を含む表面処理用組成物、成分Aを含む金属表面上の不動態層、この不動態層の形成方法、そして本発明の組成物を金属表面の不動態化のために使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシレート含有ポリマーを含む表面処理用組成物、カルボキシレート含有ポリマーを含む金属表面上の不動態層、この不動態層の形成方法に関し、そして本発明の組成物を金属表面の不動態化のために使用する方法、不動態層及び塗布被覆膜を含む金属表面上の被覆構造体、及びこの被覆構造体を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料、特に鉄及びスチールは、環境の影響による腐食を防止するために、一般に、亜鉛メッキが施されている。亜鉛による腐食保護は、亜鉛が金属材料より卑であり、結果として、全ての内でそれ自体に専ら腐食攻撃を引きつける(即ち、それは犠牲層として機能する)との事実に基づいて行われる。金属材料それ自体は、それが亜鉛の連続相で覆われている限り、損なわれることはなく、その機械的機能性は亜鉛メッキされていない部分より長期間維持される。このような亜鉛層への腐食攻撃は、不動態層の施与により遅らせることができる。これは、電解亜鉛メッキされた部分の場合に、そしてその後被覆される部分と被覆無しで使用される部分の両方に対して、特に行われる。アルミニウム表面、特に後で被覆されるべきアルミニウム表面も、同様に不動態層が屡々設けられる。不動態層は、金属表面の腐食攻撃を遅らせ、同時に、施与(塗布)されるどのような被覆膜に対しても接着性を改善する機能を有する。用語「不動態層」は屡々、用語「転化被膜」と同義語として使用される。
【0003】
これまでは、亜鉛又はアルミニウム表面上の不動態層は、通常、保護されるべきワークピースをCrO3の酸水溶液に浸漬することにより得ている。浸漬及び乾燥の後、ワークピースは、腐食に対して保護されている。浸漬の際、保護されるべき金属の一部は、溶解し、その後即座に、金属表面に酸化膜を形成する。このため、この膜は、多くの金属表面で、通常存在する酸化膜と類似しているが、後者より凝集力があり、接着性も良好である。不動態化の観点から、このCr(VI)処理は、最適である。Cr(VI)処理は、未被覆の亜鉛メッキパネルに白錆を発生させるために要する時間を、1時間未満から100時間を超える範囲で延ばしている。
【0004】
極めて有毒で、発ガン性のあるCr(VI)化合物の使用を避けるために、特許文献1(EP−A0907762)は、Cr(III)塩の酸性水溶液による不動態化を提案している。300〜400μmの厚さのいわゆる「厚い層」として施され、これらの不動態層は顕著な腐食防止をもたらす。
【0005】
Cr(VI)及びCr(III)等の重金属の使用を避けるために、ポリマーの使用が、重要性を増している。
【0006】
特許文献2(DE−A19516765)には、酸性溶液で処理することにより亜鉛又はアルミニウムの表面に転化被膜を形成する方法で、その酸溶液として、有機膜形成剤、キレート形成性カルボン酸と水溶性錯体の形態にあるアルミニウムイオン及びリン酸を含むものを使用している。上記の有機膜形成剤としては、カルボキシル含有ポリマー、特にアクリル酸及び/又はメタクリル酸の単独重合体及び/又は共重合体を挙げることができる。しかしながら、特許文献2には、いかなるポリマーが使用可能かについて情報はない。実施例は、単独重合体の使用のみ記載している。これと対照的に、モノマー単位当たりにカルボキシレート官能基を付加的に導入した共重合体が記載されており(特にマレイン酸−アクリル酸共重合体を使用した場合)、これにより腐食性改善している。追加コモノマーとの組合せは、ポリマーの機械的性質及び接着性を制御するのに適している。
【0007】
特許文献3(DE−A19754108)には、亜鉛メッキのスチール及びアルミニウム(合金亜鉛メッキのスチール及びアルミニウムも含む)の表面処理のための腐食保護用水性組成物が記載されている。腐食保護用組成物は、チタン(VI)及び/又はジルコニウム(IV)のヘキサフルオロアニオン、バナジウムイオン、コバルトイオン、リン酸、及び好ましくは有機膜形成剤(特にポリアクリレートに基づくもの)を含んでいる。アクリル酸及び/又はメタクリル酸と(メタ)アクリル酸に基づかないモノマーとの共重合体の精密な組成物は、特許文献3には記載されていない。
【0008】
非特許文献1(Mueller et al., Corrosion Science 42, 577-584 (2000))は、亜鉛顔料用腐食防止剤としての両親媒性共重合体に関するものである。使用される共重合体は、スチレン−マレイン酸−アクリル酸エステル共重合体を包含する。金属表面上の不動態層及びその製法については開示されていない。
【0009】
【特許文献1】EP−A0907762
【特許文献2】DE−A19516765
【特許文献3】DE−A19754108
【非特許文献1】Mueller et al., Corrosion Science 42, 577-584 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、金属表面上に不動態層を形成するために適当な金属表面処理用組成物を提供することである。得られる不動態層は、続いて被覆されるワークピース及び被覆なしに使用されるワークピースの両方に好適であるべきである。不動態層を備えたワークピースをさらに被覆する場合、続く被覆膜との好適な接着性を確保することに注意を払わなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記目的が、下記の金属表面を処理するための組成物(金属表面処理用組成物)により達成されることを見いだした:
a)下記の成分Aa、Ab1、Ab2及びAcから合成された少なくとも1種の共重合体(成分A):
aa)50〜99.9質量%の(メタ)アクリル酸又はその塩(成分Aa)、
ab1)0.1〜50質量%の、下記の式I:
【0012】
【化1】

【0013】
[但し、nが0〜10、好ましくは0〜5,さらに好ましくは0〜3であり、
1、R2及びR3が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリール(以上のR1、R2及び/又はR3の基は、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い)、又はカルボキシル基を表し、
好ましくは、R1、R2及びR3が、水素、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い非分岐のC1〜C18アルキル、又はカルボキシル基を表し、
さらに好ましくは、R1又はR2又はR3の1個が、カルボキシル基を表し、他の2個の基が水素又はメチルを表し、或いはR1、R2及びR3が、水素又はメチルを表し;
4及びR5が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリールを表し、
好ましくは、R4及びR5が、水素、非分岐のC1〜C18アルキルを表し、
極めて好ましくは水素又はメチルを表す。]
で表されるカルボキシレート含有モノマー、式(I)の化合物の塩、無水物又はエステル(但し、(メタ)アクリル酸又はその塩を除く)、
極めて好ましくは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸又はこれらの塩、エステル、若しくは無水物(成分Ab1)、
及び/又は
ab2)0.1〜50質量%の、リン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩を含む基を有し、且つaa)及びac)で規定されたモノマー及び成分Ab1と重合可能であるモノマー(成分Ab2)、
ac)0〜30質量%の、aa)及びab)で規定されたモノマーと重合可能である別のコモノマー(成分Ac);
b)水、又はポリマー(成分A)を溶解、分散、懸濁又は乳化することが可能な他の溶剤(成分B);
c)適宜に、他の界面活性剤、分散剤、懸濁剤、及び/又は乳化剤(成分C)
を含む金属表面を処理するための組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の組成物で使用される共重合体は、完全に親水性共重合体である。本発明で使用される親水性共重合体を含む不動態層は、顕著に優れた腐食防止性を示し、且つ続く処理、例えば被覆操作に対しても特に極めて好適である。
【0015】
使用される金属表面は、一般に、どのような金属表面であっても良い。好ましい金属表面としては、アルミニウム又はアルミニウム合金、或いは亜鉛又は亜鉛合金の表面を挙げることができ、亜鉛又は亜鉛合金の表面は一般に鉄又はスチール等の金属表面を亜鉛メッキする操作により得られる。
【0016】
[成分A]
成分Aは、下記の成分Aa、Ab1、Ab2及びAcから合成された少なくとも1種の共重合体を含む:
aa)50〜99.9質量%、好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは50〜75質量%の(メタ)アクリル酸又はその塩(成分Aa)、
ab1)0.1〜50質量%、好ましくは2〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%の、下記の式I:
【0017】
【化2】

【0018】
[但し、nが0〜10、好ましくは0〜5,さらに好ましくは0〜3であり、
1、R2及びR3が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリール(以上のR1、R2及び/又はR3の基は、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い)、又はカルボキシル基を表し、
好ましくは、R1、R2及びR3の1個が、水素、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い非分岐のC1〜C18アルキル、又はカルボキシル基を表し、
さらに好ましくは、R1又はR2又はR3の1個が、カルボキシル基を表し、他の2個の基が水素又はメチルを表し、或いはR1、R2及びR3が、水素又はメチルを表し;
4及びR5が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリールを表し、
好ましくは、R4及びR5が、水素又は非分岐のC1〜C18アルキルを表し、極めて好ましくは水素又はメチルを表す。]
で表されるカルボキシレート含有モノマー、式(I)の化合物の塩、無水物又はエステル(但し、(メタ)アクリル酸又はその塩を除く)(成分Ab1)、
極めて好ましくは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸又はこれらの塩、エステル、若しくは無水物;
及び/又は
ab2)0.1〜50質量%、好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%の、リン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩を含む基を有し、且つaa)及びac)で規定されたモノマー及び成分Ab1と重合可能であるモノマー(成分Ab2);
ac)0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%の、aa)及びab)で規定されたモノマーと重合可能である別のコモノマー(成分Ac)。
【0019】
[成分Aa]
成分Aaは、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸の塩を含む。成分Aaとして、上記成分の混合物を使用することも可能である。
【0020】
(メタ)アクリル酸の好適な塩は、好ましくはアルカリ金属及びアルカリ土類金属、特にリチウム、ナトリウム又はカリウムの塩である。
【0021】
成分Aaとして、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の使用が好ましい。
【0022】
[成分Ab1]
成分Ab1としては、下記の式I:
【0023】
【化3】

【0024】
[但し、nが0〜10、好ましくは0〜5,さらに好ましくは0〜3であり、
1、R2及びR3が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリール(以上のR1、R2及び/又はR3の基は、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い)、又はカルボキシル基を表し、
好ましくは、R1、R2及びR3が、水素、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い非分岐のC1〜C18アルキル、又はカルボキシル基を表し、
さらに好ましくは、R1又はR2又はR3の1個が、カルボキシル基を表し、他の2個の基が水素又はメチルを表し、或いはR1、R2及びR3が、水素又はメチルを表し;
4及びR5が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリールを表し、
好ましくは、R4及びR5が、水素又は非分岐のC1〜C18アルキルを表し、極めて好ましくは水素又はメチルを表す。]
で表される少なくとも1種のカルボキシレート含有モノマー、
或いは式(I)の化合物の塩、無水物又はエステル(但し、(メタ)アクリル酸又はその塩を除く)、極めて好ましくは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸又はこれらの塩、エステル、若しくは無水物である。
【0025】
成分Ab1は、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの塩、エステル、無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物から選択されることが好ましい。
【0026】
上述の酸の好適な塩は、特にアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩である。適当なエステルは、上述の酸とC1〜C20アルコール、好ましくはC1〜C16アルコール、特に好ましくはC1〜C10アルコールとの反応生成物である。
【0027】
マレイン酸、マレイン酸の塩、マレイン酸のエステル、又は無水マレイン酸が好ましい。好ましく使用される塩及びエステルは前述の通りである。
【0028】
成分Ab1としては、無水マレイン酸を使用することが特に極めて好ましい。
【0029】
[成分Ab2]
成分Ab1に加えて、又は成分Ab1の代わりに、リン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩を含む基を有し、且つaa)及びac)で規定されたモノマー及び成分Ab1と重合可能であるモノマーから、共重合体(成分A)が合成される。
【0030】
好適なモノマーは、下記式:
【0031】
【化4】

で表されるものが好ましい。
【0032】
上式において、
Qが、単結合、
炭素原子数1〜6個の直鎖のアルキレン基を表し、このアルキレン基の1個以上、好ましくは1又は2個の炭素原子が、アルキル基(好ましくはメチル)、O含有基(好ましくは−OH)、リン酸基、及び/又は=Oで置換されていても良く、及び/又は1個以上、好ましくは1又は2個の非隣接炭素原子が−O−で置換されていても良い。
【0033】
リン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩をを含む基を有し、且つaa)及びac)で規定されたモノマー及び成分Ab1と重合可能である好適なモノマーは、下記の群から選択されることが特に好ましい:
【0034】
ビニルホスホン酸
【0035】
【化5】

【0036】
リン酸モノビニルエステル
【0037】
【化6】

【0038】
アリルホスホン酸
【0039】
【化7】

【0040】
リン酸モノアリルエステル
【0041】
【化8】

【0042】
3−ブテニルホスホン酸
【0043】
【化9】

【0044】
リン酸モノ−3−ブテニルエステル
【0045】
【化10】

【0046】
リン酸モノ−4−ビニルオキシブチルエステル
【0047】
【化11】

【0048】
アクリル酸ホスホノキシエチルエステル
【0049】
【化12】

【0050】
メタクリル酸ホスホノキシエチルエステル
【0051】
【化13】

【0052】
リン酸モノ−2−ヒドロキシ−3−ビニルオキシプロピルエステル
【0053】
【化14】

【0054】
リン酸モノ−1−ホスホノキシメチル−2−ビニルオキシエチルエステル
【0055】
【化15】

【0056】
リン酸モノ−3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルエステル
【0057】
【化16】

【0058】
リン酸モノ−2−アリルオキシ−1−ホスホノキシメチルエチルエステル
【0059】
【化17】

【0060】
2−ヒドロキシ−4−ビニルオキシメチル−1,3,2−ジオキサホスホール
【0061】
【化18】

【0062】
2−ヒドロキシ−4−アリルオキシメチル−1,3,2−ジオキサホスホール
【0063】
【化19】

及び
【0064】
【化20】

【0065】
さらに前述のモノマーの塩を使用することも可能である。好適な塩は、特にアルカリ金属及びアルカリ土類金属、好ましくはリチウム、ナトリウム又はカリウム塩である。
【0066】
ビニルホスホン酸及びメタクリル酸ホスホノキシエチルエステルが特に好ましい。
【0067】
疎水性基は、熟練技術者に公知の所望のどのような疎水性基も意味している。疎水性基は、アルキレン基−(CRabn−[但し、n=1〜10、そしてRa及びRbは、相互に独立して、水素、C1〜C6アルキル又はアリール(任意に置換されていても良い)、例えばフェニルを表す。]であることが好ましい。別の好ましい態様においては、疎水性基は、アルキレンオキシド単位から形成されており、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド単位が好ましく、さらにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド単位が好ましい。疎水性基は、3〜10個の前記アルキレンオキシド単位から構成されていることが好ましい。疎水性基は、さらにポリテトラヒドロフラン基であっても良い。同様に、疎水性基は、前述のもの(即ち、アルキレン基及び/又はアルキレンオキシド単位及び/又はポリテトラヒドロフラン基)から選択される2個以上の異なる基から構成されていても良い。疎水性基は、式−(CH2n−[n=1〜10]で表されるアルキレン単位、2〜10個のエチレンオキシド単位又は2〜10個のプロピレンオキシド単位から構成されることが特に好ましい。
【0068】
このため、成分Aaのモノマーに加えて、共重合体(成分A)は、成分Ab1のモノマー、及び成分Ab2のモノマーの両方から構成されても良い。同様に、共重合体(成分A)は、成分Aaのモノマーの他に、成分Ab1のモノマー、及び成分Ab2のモノマーのいずれかから構成されていても良い。各場合、共重合体(成分A)は、適宜、成分Acのモノマーを付加して合成されていても良い。
【0069】
[成分Ac]
成分Acとしては、aa)及びab)で規定されたモノマーと重合可能な全てのモノマーが好適である。このようなモノマーは、エチレン性不飽和モノマーが好ましい。
【0070】
少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含む好適なモノマーの例としては、下記のものを挙げることができる:オレフィン(例、エチレン又はプロピレン);芳香族ビニルモノマー(例、スチレン、ジビニルベンゼン、2−ビニルナフタレン及び9−ビニルアントラセン);置換芳香族ビニルモノマー(例、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−ビニルビフェニル及びビニルトルエン);ビニルアルコールと炭素原子数1〜18個のモノカルボン酸とのエステル(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、ラウリル酸ビニル及びステアリン酸ビニル);炭素原子数3〜6個のα,β−モノエチレン性不飽和モノ脂肪酸及びジカルボン酸(成分Abとして規定された化合物を除く;例、アクリル酸及びメタクリル酸)の無水物、炭素原子数3〜6個のα,β−モノエチレン性不飽和モノ脂肪酸及びジカルボン酸(成分Abとして規定された化合物を除く;例、アクリル酸及びメタクリル酸)と、一般に炭素原子数1〜12個、好ましくは1〜8個、さらに好ましくは1〜4個のアルカノールとのエステル(特に、アクリル酸及びメタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステル及び2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジメチル、又はマレイン酸n−ブチル);上述のカルボン酸とアルコキシ化合物(例、エチレンオキシド又はポリエチレンオキシド)とのエステル(例、アクリル酸エチレンオキシド又はメタクリル酸エチレンオキシド);上述のα,β−モノエチレン性不飽和脂肪酸のニトリル(例、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル);及びまたC4〜C8共役ジエン(例、1,3−ブタジエン及びイソプレン);及びN−ビニル化合物(例、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルホルムアミド);ビニルエーテル、H2C=CH−OR5[R5は分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル];そしてスルホン基又はスルファート基を含む好適なモノマー。
【0071】
好適なスチレン化合物としては、下記の一般式II:
【0072】
【化21】

で表されるものを挙げることができる。
【0073】
上式において、R’及びR”は、相互に独立してH又はC1〜C8アルキルを表し、そしてnは0、1、2又は3を表す。
【0074】
本発明の方法において、モノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、及びビニルホルムアミド、C1〜C20アルキルアクリレート及びC1〜C20アルキルメタクリレート(特にn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又はメチルメタクリレート)及びブタジエン、及びさらにアクリロニトリル、アクリル酸及びメタクリル酸のグリシジルエステル及び(ポリ)アルコキシレート、そしてこれらのモノマーの1種又は混合物が少なくとも85質量%有するモノマー混合物又は上述のモノマーの混合物を挙げることができる。
【0075】
特に好ましい成分Aは、アクリル酸と無水マレイン酸から合成された共重合体である。この場合のアクリル酸の割合は、好ましくは50〜99質量%、さらに好ましくは50〜80質量%であり、無水マレイン酸の割合は、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%である。別の好ましい態様において、成分Aは、(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とビニルホスホン酸とから合成されたターポリマーである。このターポリマーは、20〜80質量%(メタ)アクリル酸と、10〜40質量%無水マレイン酸と、0.1〜30質量%(好ましくは0.1〜20質量%)のビニルホスホン酸とから合成されることが好ましい。
【0076】
成分Aとして使用されるポリマーは、当該熟練技術者に公知の手順で製造することができる。共重合体は、前述の成分Aa、Ab1及び/又はAb2及び適宜Acをフリーラジカル共重合することにより製造することが好ましい。使用される成分の割合は、前述の通りである。フリーラジカル共重合は、例えば、溶液、乳濁、分散、懸濁又は塊状の状態で行うことができる。
【0077】
成分Aとして使用されるポリマーを製造するための好適な重合方法は例えばDE−A19606394に記載されている。
【0078】
共重合体(A)は、溶液状態でのフリーラジカル共重合により製造することが特に好ましい。溶剤は、水、アルコール、エーテル、及びケトンから選択することが好ましい。水が好ましい。
【0079】
無水物共重合体を得る場合、無水物共重合体は、適当な量の脱塩水及び少なくとも1種の窒素塩基を加えることにより加水分解することが好ましい。好ましい窒素塩基としては、3級塩基性アミンであり、さらにヒドロキシルアミン(例、モノ−、ジ−及びトリ−エタノールアミン)、3−ジメチルアミノプロピルアミン及びイミダゾールが好ましい。
【0080】
重合条件は、当該熟練技術者には公知である。
【0081】
別の態様において、カルボキシレート含有共重合体(成分A)を、ポリマー類似反応により得ることができる。好適なポリマー類似反応は、当該熟練技術者には公知である。例えば、カルボキシレート含有共重合体は、共重合により製造された共重合体を対応する官能化を行うことにより;多価アルコールと多価カルボン酸及び/又はリン酸基含有化合物と反応させることにより得ることができる。
【0082】
用語「共重合体」は、一般に、少なくとも3個の繰り返し単位、好ましくは10個を超える繰り返し単位を含む化合物を意味すると理解される。本発明で使用される共重合体の重量平均分子量(Mw)は、一般に500〜5000000g/モル、好ましくは1000〜1500000g/モルである。ポリマーはまた、程度は小さいが部分架橋を含んでいる場合があり、その場合も、分子量は言えないが、ポリマーは、一般の工業溶剤で分散させ、乳化させ、又は懸濁させることができる。重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレンを用いてゲル透過クロマトグラフィにより測定された。
【0083】
成分Aとして使用される共重合体は疎水性共重合体である。親水性共重合体を含む不動態層は、次の被覆に極めて好適である。
【0084】
[成分B]
成分Bは、水、又は共重合体(成分A)を溶解、分散、懸濁又は乳化することが可能な他の溶剤である。本発明において、溶剤は、本発明の組成物の種々の成分が、極めて微細な形態で存在する液体マトリックスである。このような極めて微細な形態は、例えば、分子的分散分布に点で、実際の成分の溶剤溶液と言える。しかしながら、用語「溶剤」はもまた、成分が乳濁又は分散状態で分布している(即ち、分子的分散溶液を形成していない)液体マトリックスも包含している。
【0085】
好適な溶剤の例としては、水、及び水混和性溶剤及び水非混和性溶剤を挙げることができる。好適な水混和性溶剤としては、炭素原子数1〜6個の1級又は2級の1価又は多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール又はグリセロールを挙げることができる。水混和性溶剤として、同様に、低分子質量のケトン、例えばアセトン又はメチルエチルケトン、或いはエーテルアルコール、例えばジエチレングリコール又はトリエチルグリコールも好適である。本発明において、水と混和性が低いか混和性の無い溶剤も同様に好適である。これらの例としては、エーテル、例えばジエチルエーテル、ジオキサン又はテトラヒドロフラン、芳香族溶剤、例えばトルエン又はキシレン、ハロゲン化溶剤、例えばジクロロメタン、クロロホルム又はテトラクロロメタン、そして任意に置換脂肪族溶剤、例えば上述のアルコール及びケトンの高級類似物及びパラフィン系炭化水素、を挙げることができる。
【0086】
上述の溶剤は、個々に又は2種以上の溶剤として使用することができる。本発明の一好適態様において、使用される溶剤が、水単独、又は1種以上の上述の溶剤、好ましくは水溶性溶剤との混合物である。本発明において、水及び水非混和性溶剤を含む溶剤を使用しなければならない場合、溶剤は、実質的に安定なW/O又はO/W乳濁液とするために乳化剤を含み得る。
【0087】
本発明の組成が、水と他の水混和性溶剤を含む場合、このような混合物中の水の割合は、少なくとも30質量%以上、例えば少なくとも40質量%又は少なくとも50質量%が好ましい。本発明の特に好ましい態様において、水の割合は少なくとも75質量%である。水と水混和性溶剤の好適な組合せの例としては、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール又は水/イソプロパノールを挙げることができる。本発明では、水とエタノールの混合物が好ましく、水の割合は、約75質量%を超える量が好ましく、例えば約80質量%を超える量又は約85質量%を超える量である。
【0088】
本発明の一好適態様において、本発明の組成は、少なくとも50質量%の水含有量を有する少なくとも1種の溶剤を含んでいる。
【0089】
特に、溶剤として水のみ使用することが好ましい。
【0090】
本発明の水溶液として好ましく使用される組成物は、一般に1〜6のpHを有するが、基板及び処理(施与)方法及び基板金属の表面を本発明で使用される組成物に曝露する期間に依存する狭いpH範囲を選択することが可能である。例えば、光輝金属表面を処理するために、pHは2〜6の範囲が好ましく、アルミニウム表面を処理する場合は2〜4にすることが好ましく、スチール、亜鉛又は亜鉛メッキスチールを処理する場合は3〜4にすることが好ましい。既に前処理され、例えばリン酸塩層を有する基板金属を、pH3.5〜5の範囲において本発明で使用される組成物と接触させることが好ましい。
【0091】
水又は他の溶剤の量は、本発明の組成物が直ぐ使用可能な組成物であるか、濃縮物であるかに対して相関関係があり、個々の末端の用途にも相関関係がある。基本的には、その量は、直ぐ使用可能な組成物として規定された個々の組成物の濃度と相関関係にある。
【0092】
[成分C]
適宜に、本発明の組成物は、さらに界面活性化合物、懸濁剤、乳化剤及び/又は分散剤を含むことができる。好適な表面活性化合物は、界面活性剤であり、カチオン性、アニオン性、両性又は非イオン性でも良い。好適な界面活性剤の例としては、R−EOn/POm[但し、Rが、一般に、直鎖若しくは分岐のC6〜C30アルキル、好ましくはC8〜C20アルキルを表し、EOがエチレンオキシド単位を表し、そしてPOがプロピレンオキシド単位を表し、EO及びPOの逐次配列は任意であり、n及びmは、相互に独立して、1を超え100未満の値、好ましくは3を超え50未満の値である。]で表されるアルキル及びアルケニルアルコキシレートを挙げることができ、例えばBASF社製のEmulanR、LutensolR、LutensolR及びPlurafac R、アルキルフェノールエトキシレート、EO/POブロック共重合体(BASF社製のPluronicR)、アルキルエーテルスルファート、及びアルキルアンモニウム塩(クワッツ(quats)と呼ばれる)を挙げることができる。
【0093】
本発明の組成物におけるこれらの成分の量は、一般に0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜20g/Lである。
【0094】
本発明で使用される組成物は、成分A、B及び適宜Cに加えて、
d)少なくとも1種の窒素塩基(成分D)を含んでいる。
【0095】
窒素塩基としては、3級アルカリ性アミン、さらに好ましくはヒドロキシルアミン(例、モノ−、ジ−及びトリ−エタノールアミン)、3−ジメチルアミノプロピルアミン及び/又はイミダゾールを使用することが好ましい。
【0096】
塩基は、共重合体(成分A)を加水分解するために使用することができる。共重合体としては、特に(メタ)アクリル酸お酔い無水マレイン酸、及び適宜にビニルホスホン酸、或いは適宜にメタアクリル酸ホスホノキシエチルエステルに基づく共重合体が好ましい。しかしながら、共重合体の加水分解は水の添加により行うことが好ましい。同様に、共重合体の製造直後に、共重合体を適当量の水及び窒素塩基(成分D)を用いて加水分解することも可能である。このような場合、成分A、B及び適宜Cを含む本発明の組成物へのその後の窒素塩基の添加はもはや必要としない。
【0097】
一好適態様において、本発明の組成物は、金属表面を処理するために使用され、成分A、B、適宜C及び適宜Dに加えて、
e)遷移金属カチオン、遷移金属オキソアニオン、フルオロメタレート又はランタノイドを基礎とする少なくとも1種の塩、酸又は塩基(成分E);
及び/又は
f)リン酸、硫酸、スルホン酸、ギ酸、酢酸、硝酸、フッ化水素酸及び塩酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸、又はその酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩(成分F);
及び/又は
g)少なくとも1種のさらなる腐食防止剤(成分G);
及び/又は
h)Ce、Ni、Co、V、Fe、Zn、Zr、Ca、Mn、Mo、W、Cr及び/又はBiの化合物(成分H);
及び/又は
i)別の助剤及び添加剤(成分I);
及び/又は
j)少なくとも1種の錯化剤(成分J);
及び/又は
k)別の添加剤(成分K)
を含んでいる。
【0098】
これらの組成物は、不動態化、特に本発明の金属表面を不動態化するのに極めて好適である。
【0099】
[成分E]
好適な成分Eは、遷移金属カチオン、遷移金属オキソアニオン、フルオロメタレート又はランタノイドを基礎とする少なくとも1種の塩、酸又は塩基である。適当な遷移金属カチオンとしては、特に、Ti(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)及び/又はSi(IV)のフルオロメタレートであり、特に好適なランタノイドはCeである。タングステート及びモリブデートも好適である。成分Eを含む本発明の組成物は、特に、金属表面に腐食防止膜を被覆するか、金属表面に既に被覆された腐食防止膜の腐食防止機能を強化すために特に好適である。本発明の組成物において、本発明で使用されるポリマー(成分A)は、顕著な腐食防止効果を有する。しかしながら、成分Eの添加は、本発明の組成物が優れた腐食防止性を示すために必要ではない。このため、一態様において、成分Eの化合物が本発明の組成物に存在しない。
【0100】
本発明の組成物に存在する場合の、成分Eの量は0.02〜20g/Lが好ましい。
【0101】
[成分F]
成分Eに加えて、又は成分Eの代わりに、本発明の組成物は、さらにリン酸、硫酸、スルホン酸(例、メタンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、m−ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸及びこれらの誘導体)、ギ酸、酢酸、硝酸、フッ化水素酸及び塩酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸、又はこの酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を、含んでも良い。使用される酸の性質は、金属表面の処理のタイプに依存して異なる。従って、リン酸は、一般に、スチール表面をリン酸処理するためのリン酸処理浴で使用される。この場合、本発明の組成物は、リン酸処理溶液である。ここでは、「層形成しない」リン酸処理溶液、即ち2価金属を含まない溶液として公知のものの間で、区別はしない。これらの「層形成しない」リン酸処理溶液は、例えば、鉄リン酸処理溶液の形態にある。リン酸処理溶液が、2価金属(例、亜鉛及び/又はマンガン)を含む場合、リン酸処理溶液は「層形成」であると言われている。硝酸を含む本発明の組成物は、亜鉛及びその合金の表面処理に特に好適であり、一方塩酸を含む組成物はアルミニウム及びその合金の表面処理に特に好適である。
【0102】
使用される酸の量は、使用分野に依存して変化し得る。一般に、成分Fが本発明の組成物に存在する場合は、それは0.2〜700g/L、好ましくは0.2〜500g/L、さらに好ましくは0.2〜200g/L、特に好ましくは5〜150g/Lで使用される。
【0103】
E及び/又はFに加えて、又はこれらに代えて、本発明の組成物は、少なくとも1種の別の腐食防止剤を含んでいても良い。好適な腐食防止剤は、ブチンジオール、ベンゾトリアゾール、アルデヒド、アミンカルボキシレート、アミノフェノール及びニトロフェノール、アミノアルコール、アミノベンズイミダゾール、アミノイミダゾリン、アミノトリアゾール、ベンズイミダゾールアミン、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、ホウ酸ジエタノールアミンエステル等のホウ酸と種々のアルカノールアミンとのエステル、カルボン酸及びそのエステル、キノリン誘導体、ジベンジルスルホキシド、ジカルボン酸及びそのエステル、ジイソブテニルコハク酸、ジチオホスホン酸、脂肪アミン及び脂肪酸アミド、グアニジン誘導体、尿素及びその誘導体、ラウリルピリジニウムクロリド、マレインアミド、メルカプトベンズイミダゾール、N−2−エチルヘキシル−3−アミノスルホプロピオン酸、ホスホニウム塩、フタルアミド、アルキルアルコールのアミン−及びナトリウム−中和リン酸エステル、及びこれらのリン酸エステル自体、ポリアルコキシレート(特に、ポリエチレングリコール)のリン酸エステル、ポリエーテルアミン、スルホニウム塩、スルホン酸(例、メタンスルホン酸)、チオエーテル、チオ尿素、チウラミドスルフィド、桂皮酸及びその誘導体、リン酸亜鉛及びケイ酸亜鉛、リン酸ジルコニウム及びケイ酸ジルコニウム、及びアルキンジオールアルコキシレート(特にブチンジオールエトキシレート、ブチンジオールプロポキシレート、プロパルギルアルコールエトキシレート及びプロパルギルアルコールプロポキシレート)から選択することができる。別の腐食防止剤として、ブチンジオール及びベンゾトリアゾール及びアルキンジオールアルコキシレート(例、ブチンジオールエトキシレート、ブチンジオールプロポキシレート、プロパルギルアルコールエトキシレート及びプロパルギルアルコールプロポキシレート)を使用することが好ましい。
【0104】
腐食防止剤を組成物で使用する場合、一般に0.01〜50g/L、好ましくは一般に0.1〜20g/L、特に好ましくは1〜10g/Lの量で使用される。
【0105】
[成分H]
上述の成分に加えて、或いは適宜その成分に代えて、Ce、Ni、Co、V、Fe、Zn、Zr、Ca、Mn、Mo、W、Cr及び/又はBiの化合物を使用することも好ましい。一般に、組成物における本発明の成分Aの使用は、上述の化合物の添加を必要としない、即ち本発明の一態様においては、組成物は成分Hの化合物を含まないで、良好な腐食防止性をもたらす。本発明の組成物はCr(IV)を含まないことが好ましい。にもかかわらず、上述の化合物(化合物H)を使用する場合、Fe、Zn、Zr及びCaから選択される化合物を使用することが好ましい。本発明の組成物におけるこれらの化合物の量は、これらが存在する場合、一般に0.01〜100g/L、好ましくは一般に0.1〜50g/L、特に好ましくは一般に1〜20g/Lである。
【0106】
[成分I]
1種以上の上述の成分E〜Hに加えて、本発明の組成物は、別の助剤及び添加剤を含むことができる。好適な助剤及び添加剤として、伝導度(導電率)顔料(conductivity pigment)又は伝導性(導電性)フィラー(conductive filler)、例えば鉄ホスフィド、炭化バナジウム、窒化チタン、カーボンブラック、グラファイト、モリブデンジスルフィド、又はスズ−又はアンチモン−ドープ硫酸バリウムを挙げることができ、鉄ホスフィドが好ましい。この種の伝導度(導電率)顔料又は伝導性(導電性)フィラーは、処理される金属表面の溶接性を改善するため、或いは続く電子被膜材料の被覆を改善するために、本発明の組成物に添加される。さらに、シリカ懸濁液を、特に組成物をアルミニウムを含む表面処理に使用する場合に、用いることができる。
【0107】
これらの助剤及び/又は添加剤は、一般に極微細な形態で存在している;換言すれば、これらの平均粒径は一般に0.005〜5μm、好ましくは0.05〜2.5μmである。助剤及び添加剤の量は、本発明の組成物の全量に対して、0.1〜50質量%、好ましくは2〜35質量%である。
【0108】
[成分J]
本発明の組成物は、適宜に、さらに、錯化剤を含むことができる。錯化剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレンジアミン(ED)、クエン酸、及びこれらの化合物の塩を挙げることができる。
【0109】
錯化剤として使用される化合物の量は、本発明の組成物の塩の量に依存して変わるが、例えば滴定等により、当該技術者により問題なく決定することができる。
【0110】
[成分K]
上述の化合物に加えて、本発明の組成物は、別の添加剤を含むことができる。適当な添加剤として、1−(2−ビニルピリジニウム)−2−エチルスルホベタイン、1,1−ジメチル−2−プロピニル−1−アミン、1−ピリジニウム−2−エチルスルホベタイン、1−ピリジニウム−2−ヒドロキシ−3−プロピルスルホベタイン、1−ピリジニウム−3−プロピルスルホベタイン、2,2´−ジクロロジエチルエーテル、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール エトキシレート、2−ブチン−1,4−ジオール プロポキシレート、ナトリウム 3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)−1−プロパンスルホネート、ナトリウム 3,3’−ジチオビス(1−プロパンスルホネート)、3−[(アミノイミノメチル)チオ]−1−プロパンスルホン酸、ナトリウム 3−[(ジメチルアミノ)チオキソメチル]チオ−1−プロパンスルホネート、カリウム 3−[エトキシチオキソメチル]チオ−1−プロパンスルホネート、ナトリウム 3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート、3−ヘキシン−2,5−ジオール、ナトリウム 3−メルカプト−1−プロパンスルホネート、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−メトキシベンズアルデヒド、アルデヒド、アルキルフェニルポリエチレンオキシドスルホプロピルエーテルカリウム塩、アルキルポリエチレンオキシドスルホプロピルエーテルカリウム塩(例、トリデシル/ペンタデシルポリエチレンオキシドスルホプロピルエーテルカリウム塩)、ナトリウムアリルスルホネート、アミドスルホン酸、アルキルアルコールのアミン−及びナトリウム−中和リン酸エステル、アミンカルボキシレート、アミノフェノール及びニトロフェノール、アミノアルコール、アミノベンズイミダゾール、アミノイミダゾリン、アミノトリアゾール、メチルベンジルアセトアセテート、ベンジルアセトン、ベンズイミダゾールアミン、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、ベンジルピリジン−3−カルボキシレート、ビスフェノールA、種々のアルカノールアミンとホウ酸のエステル(例、ホウ酸ジエタノールエステル)、カルボン酸及びそれらのエステル、カルボキシエチルイソチウロニウムベタイン、キノリン誘導体、エチレン及びアクリル酸の共重合体、イミダゾール及びエピクロルヒドリンの共重合体、イミダゾール及びモルホリン及びエピクロルヒドリンの共重合体、N,N’−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素及び1,1’−オキシビス[2−クロロエタン]の共重合体、n−ブチルアクリレート及びアクリル酸及びスチレンの共重合体、ジベンジル スルホキシド、ジカルボン酸及びそれらのエステル、ジエチレントリアミンペンタ酢酸及びそれから誘導される塩、ジイソブテニルコハク酸、ジナトリウムエチレンビスジチオカルバメート、ジチオホスホン酸、エチルアミドスルホン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸及びそれから誘導される塩、エチルグリシンジ酢酸及びそれから誘導される塩、エチルヘキサノールエトキシレート、脂肪アミン及び脂肪酸アミド、ホルムアルデヒド、グリセロールエトキシレート、グアニジン誘導体、尿素及びその誘導体、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸及びそれから誘導される塩、イミダゾール、イソプロピルアミドスルホン酸、イソプロピルアミドスルホニルクロリド、ラウリル/ミリスチルトリメチルアンモニウムメトスルフェート、ラウリルピリジニウムクロリド、マレインアミド、メルカプトベンズイミダゾール、メチルアミドスルホン酸、N,N,N’,N’−テトラキス(2ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン、N,N−ジエチル−2−プロピン−1−アミン、N,N−ジエチル−4−アミノ−2−ブチン−1−オル、N,N−ジメチル−2−プロピン−1−アミン、N−2−エチルヘキシル−3−アミノスルホプロピオン酸、N−アリルピリジニウムクロリド、硫酸化アルキルフェノールエトキシレートのナトリウム塩、ナトリウム2−エチルヘキシルスルフェート、ニコチン酸、ニトロトリ酢酸及びそれから誘導される塩、ナトリウムニトロベンゼンスルホネート、N−メタアリルピリジニウムクロリド、オルト−クロロベンズアルデヒド、ホスホニウム塩、フタルアミド、ピコリン酸、ポリエーテルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、プロパルギルアルコール、プロパルギルアルコールエトキシレート、プロパルギルアルコールプロポキシレート、ナトリウムプロピンスルホネート、プロピオン酸、プロピレンジアミンテトラ酢酸及びそれから誘導される塩、ピロール、4級化ポリビニルイミダゾール、2−ブチン−1,4−ジオールとエピクロロヒドリンとの反応生成物を挙げることができる。
【0111】
本発明の組成物は、さらに形成特性を改良するための添加剤、例えば、天然又は合成ワックスを基礎とするワックスを基礎とする誘導体、例えばアクリル酸を基礎とするワックス、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、又はワックス誘導体、又はパラフィン及びその酸化生成物を含んでも良い。
【0112】
その使用分野により異なるが、本発明で使用される組成物は、スチレン、4−ヒドロスチレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリレートエステル、アクリルアミド、アクリレート塩、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メタクリルアミド、メタクリレート塩、及びアクリルアミドの誘導体を含んでも良い。また、本発明の組成物は、ポリウレタン分散液及びポリエステルウレタン分散液又はポリ尿素分散液を含むこともできる。
【0113】
本発明の組成物中に存在しても良い化合物の別のグループとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドの相互の共重合体、及びエチレンオキシドと別のアルコキシレート(例、ブテンオキシド)との共重合体、プロピレンオキシドと別のアルコキシレート(例、ブテンオキシド)との共重合体、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドと別のアルコキシレート(例、ブテンオキシド)との共重合体を挙げることができる。
【0114】
成分Aを含む本発明の組成物は、金属表面の不動態化のためのどのような処理法(application)においても使用することができる。このような処理法としては、不動態層の形成(変換膜の形成)、特にリンス(すすぎ洗い)無しの変換膜の形成、即ち、亜鉛メッキされたスチール及びアルミニウムのリンス作業の回数が少ない方法を挙げることができる。処理法の種類は、工業的標準法に対応する。その処理法には、本発明の組成物は、対応する処理法のために工業的に標準の他の成分と共に使用されるとのさらなる特徴、或いは追加の処理工程(例、噴霧、ロール塗布、浸漬、被覆(例、電着、))で、例えば本発明の適当な組成物(例、溶液、乳濁液、分散液、懸濁液又はエアゾール)を用いて、本発明の組成物が金属と接触するとのさらなる特徴がある。
【0115】
本発明(明細書)は、金属表面を本発明の組成物で被覆することにより得られる、金属表面、好ましくはAl、Al合金、Zn、Zn合金の表面の不動態層をさらに提供する。本発明の組成物、及び組成物に存在する成分の好ましい態様、及び金属表面の好ましい態様は、既に前記で規定した。
【0116】
本発明の不動態層は、下記の要件を満たしている:
・その後の被覆が無くても多くの使用に対して腐食防止性である;
・被覆膜の接着性を改善する:即ち、疎水性では無い、それは本発明の組成物で成分Aとして使用される共重合体は完全に親水性であるとの事実のために達成される;
・薄膜である、これにより不動態化されたワークピースの寸法コンプライアンスを補償する;
・高温、例えば120℃であっても、本発明の不動態層は、腐食防止作用を保持している;
・基板金属(金属表面)と比べて色が中間色であるが、目視で検出可能で、このため容易に検出でき、不動態化部分を非不動態化部分と見分けることが簡単である;
・複雑な処理工程なしに得ることができる。
【0117】
特に、本発明の不動態層の特徴は、極めて薄い層の形態であっても、顕著な腐食防止効果を示すことである。
【0118】
金属表面に形成された本発明の不動態層の厚さは、3μm以下であることが好ましい。その厚さは、0.01〜3μmがさらに好ましく、0.1〜3μmが特に好ましい。その層の厚さは、本発明の組成物が金属表面で活性化する前及び後に、質量差測定により(層は1kg/Lの比重とする)決定される。下記に規定された層厚は、実際のその比重と関係なく、このように決定されたパラメータである。このような薄層で、顕著な腐食防止を達成するのに十分である。このような薄層は、不動態化されたワークピースの寸法コンプライアンスを保証する。
【0119】
特に好ましい一態様において、本発明の不動態層は、基本金属、特にアルミニウム及び亜鉛又はアルミニウムと亜鉛を含む合金、以外には他の金属を含んでいない;即ち、不動態層を作製するために使用される組成物は、いかなる金属又は金属化合物も含んでいない。他の金属又は金属化合物を含まなくても、成分Aの共重合体を含む本発明の組成物を用いた場合に得られる不動態層は、顕著に優れた腐食安定性を示す。
【0120】
さらに、本発明は、金属表面及び本発明の不動態層からなる表面も提供する。好適な金属表面、及び好ましく使用されるもの、そして不動態層については、既に前述した。
【0121】
本発明(明細書)は、さらに金属表面に本発明の不動態層を形成する方法も提供する。この方法は、金属表面を本発明の組成物で接触する工程を含むものである。好適な組成物及び好適な組成物の好ましい態様は、既に前述した。好適な金属表面及び金属表面の好ましい態様は、同様に既に前述した。
【0122】
本発明の方法で使用される組成物において、本発明で使用される共重合体は、溶液、乳濁、懸濁又はエアゾールの形態のものである。本発明の組成物では、共重合体(成分A)の共重合体は、水溶液の形態が好ましい。
【0123】
処理法は工業的標準法に相当している。金属表面は、組成物を金属表面に噴霧することにより、或いは金属表面を組成物に浸漬することにより、組成物に接触させることが好ましい。特に好ましく使用される処理は、取り扱われる部品の数、寸法、及び形状に依存して変わる。従って、接触は、噴霧、ロール塗布又は浸漬処理により行われることが好ましい。
【0124】
本発明の不動態層が、金属ストリップをリン酸処理により形成(施与)される場合、リン酸を成分Fとして含む本発明の組成物は、ロールオン法、又は乾燥場所(dry-place)法、又はすすぎ無し(no-rinse)法により施与(塗布)することができ、その場合、本発明で使用されるリン酸化組成物を金属ストリップに施し、リンスすることなく乾燥し、ポリマー膜を形成する。
【0125】
本発明(明細書)は、さらに下記の工程を含む方法を提供する:
a)適宜に、基板の金属表面を洗浄し、油、油脂、及び汚れを除去する工程、
b)適宜に、水洗する工程、
c)適宜に、酸洗い(pickling)し、錆又は他の酸化物を除去する工程、
d)適宜に、水洗する工程、
e)下記の成分(Aa、Ab1、Ab2、Ac)から合成される共重合体(成分A)を含む組成物を金属表面に接触させる工程:
ea)50〜99.9質量%の(メタ)アクリル酸又はその塩(成分Aa)、
eb)0.1〜50質量%の、下記の式I:
【0126】
【化22】

【0127】
[但し、nが0〜10、好ましくは0〜5,さらに好ましくは0〜3であり、
1、R2及びR3が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリール(以上のR1、R2及び/又はR3の基は、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い)、又はカルボキシル基を表し、
好ましくは、R1、R2及びR3が、水素、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い非分岐のC1〜C18アルキル、又はカルボキシル基を表し、
さらに好ましくは、R1又はR2又はR3の1個が、カルボキシル基を表し、他の2個の基が水素又はメチルを表し、或いはR1、R2及びR3が、水素又はメチルを表し;
4及びR5が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリールを表し、
好ましくは、R4及びR5が、水素又は非分岐のC1〜C18アルキルを表し、極めて好ましくは水素又はメチルを表す。]
で表されるカルボキシレート含有モノマー、式(I)の化合物の塩、無水物又はエステル(但し、(メタ)アクリル酸又はその塩を除く)、
極めて好ましくは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸又はこれらの塩、エステル、若しくは無水物(成分Ab1);
及び/又は
0.1〜50質量%の、リン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩を含む基を有し、且つaa)及びac)で規定されたモノマー及び成分Ab1と重合可能であるモノマー(成分Ab2);
ec)0〜30質量%の、ea)及びab)で規定されたモノマーと重合可能である別のコモノマー(成分Ac)、
f)適宜に、水洗する工程、
g)適宜に、後処理する工程。
【0128】
金属表面に共重合体(成分A)を接触させる工程は、不動態化工程、特にリン酸処理工程であり、当該技術者に公知の工程である。本発明の不動態層は金属上に形成される。リン酸処理を工程e)で行う場合、g)で金属表面を不動態化添加剤で後処理することも可能である。本発明の組成物の接触は、工程e)で行うことが好ましい。好ましく使用される共重合体(成分A)及び組成物は、既に前に定義した。
【0129】
前工程での溶液成分が、次の工程に必要な溶液を汚染することを防止するために、各工程間において水洗が行われる。しかしながら、本発明の方法を、リンス無し法として、即ち工程b)、d)及びf)を行わずに実施することも可能である。
【0130】
「リンス無し(no-rinse)」法として知られる方法では、本発明で使用される組成物を、一般に、基板金属表面に噴霧するか、或いは使用する塩によって表面に移す。これは、一般に2〜20秒の範囲の曝露時間実施し、その後中間のリンスなしに、本発明で使用される組成物を乾燥することにより行われる。乾燥は、例えば加熱されたオーブンで行うことができる。
【0131】
洗浄工程(工程a)及び本発明で使用される共重合体(成分A)及び/又は本発明の組成物の存在下に金属表面を接触する工程も、一工程で行っても良く、即ち、慣用の成分のみならず、本発明で使用される共重合体も含む配合を用いて行っても良い。
【0132】
本発明の方法は、5〜100℃、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは15〜45℃の温度で一般に行われる。
【0133】
本発明は、さらに下記の成分A〜Cを含む組成物を金属表面を不動態化するために使用する方法についても提供する:
a)下記の成分(Aa、Ab1、Ab2、Ac)から合成される少なくとも1種のポリマー(成分A)
aa)50〜99.9質量%の(メタ)アクリル酸又はその塩(成分Aa)、
ab1)0.1〜30質量%の、下記の式I:
【0134】
【化23】

【0135】
[但し、nが0〜10、好ましくは0〜5,さらに好ましくは0〜3であり、
1、R2及びR3が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリール(以上のR1、R2及び/又はR3の基は、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い)、又はカルボキシル基を表し、
好ましくは、R1、R2及びR3が、水素、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い非分岐のC1〜C18アルキル、又はカルボキシル基を表し、
さらに好ましくは、R1又はR2又はR3の1個が、カルボキシル基を表し、他の2個の基が水素又はメチルを表し、或いはR1、R2及びR3が、水素又はメチルを表し;
4及びR5が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリールを表し、
好ましくは、R4及びR5が、水素又は非分岐のC1〜C18アルキルを表し、極めて好ましくは水素又はメチルを表す。]
で表されるカルボキシレート含有モノマー、式(I)の化合物の塩、無水物又はエステル(但し、(メタ)アクリル酸又はその塩を除く)、
極めて好ましくは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸又はこれらの塩、エステル、若しくは無水物(成分Ab);
及び/又は
ab2)0.1〜50質量%の、リン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩を含む基を有し、且つaa)及びac)で規定されたモノマー及び成分Ab1と重合可能であるモノマー(成分Ab2);
ac)0〜30質量%の、aa)及びab)で規定されたモノマーと重合可能である別のコモノマー(成分Ac)、
b)水、又はポリマー(成分A)を溶解、分散、懸濁又は乳化することが可能な他の溶剤(成分B);
c)適宜に、他の界面活性剤、分散剤、懸濁剤、及び/又は乳化剤(成分C)。
【0136】
好ましく使用される組成物、及び組成物に好ましく使用される共重合体(成分A)は、既に前述した。好ましく使用される金属表面、及び好ましく実施される金属表面を不動態化する方法も、同様に前述した。
【0137】
本発明の一好適態様において、金属表面に不動態層を形成する工程の後、本発明の不動態層を備えた金属表面に、工程a)〜g)の後で、被覆材料を設けることができる。被覆は、当該技術者に公知の方法で行われる。使用される被覆材料としては、例えば、粉末被覆材料、又は電解メッキ可能な、特にカソードメッキ可能な、メッキ被覆材料を挙げることができる。
【0138】
従って、本発明(明細書)は、少なくとも1層の本発明の不動態層X、及び膜Yとして少なくとも1層の被覆膜(好ましくは2層以上の被覆膜)を含む、金属表面上の被覆構造体を、さらに提供する。
【0139】
不動態層及びそれの好ましい態様は、既に前述した。好適な被覆膜は、当該技術者に公知である。
【0140】
本発明の被覆構造体は、付加層を有する多数被膜塗料構造体(2個以上の被覆膜)であり得る。例えば、多数被膜塗料構造体は、少なくとも1層の下記の層から構成されてもよく、典型的には以下のように配列し得る:
・顔料混入(着色)され、及び/又は効果のある物質を備えた層W、
・プライマー、ベースコート、下塗り、顔料混入膜(着色膜)又は効果のある物質を備えた膜からなる群より選択される層Z。
【0141】
層Z及び/又はWにおける着色及び/又は効果のある被覆材料として、好適な膜材料としてこれらの目的に通常用いられ、当該技術者に公知のもの全てを一般に挙げることができる。これらの材料は、物理的、熱的、化学線(放射線)照射、又は熱的及び化学線(放射線)照射(2重硬化)で硬化し得るものでも良い。これらの材料としては、通常のベースコート材料、水溶性ベースコート材料、実質的に溶剤及び水を含まない液体のベースコート材料(100%組成物)、実質的に溶剤及び水を含まない固体のベースコート材料(着色(顔料混入)粉体塗料材料)、又は実質的に溶剤を含まない着色(顔料混入)粉体被覆分散体(粉末スラリーのベースコート材料)を挙げることができる。これらは熱硬化性、又は2重硬化性でも良く、内部又は外部で架橋し得る。
【0142】
1種以上、好ましくは1〜3種、さらに好ましくは1又は2種の、極めて好ましくは1種の着色材料及び/又は効果のある被覆材料を層に使用することが可能である。
【0143】
「実質的に溶剤を含まない」とは、問題の被覆材料が、2.0質量%未満、好ましくは1.5質量%未満、さらに好ましくは1.0質量%未満の残留揮発溶剤含有量を有することを意味する。残留含有量がガスクロマトグラフィによる検出限界未満であれば、特に有利である。
【0144】
多数被膜塗料構造体では、水溶性ベースコート材料を使用することが好ましい。水溶性ベースコート材料の例としては、EP0089497A1、EP0256540A1、EP0260447A1、EP0297576A1、WO96/12747、EP0523610A1、EP0228003A1、EP0397806A1、EP0574417A1、EP0531510A1、EP0581211A1、EP0708788A1、EP0593454A1、DE−A−4328092A1、EP0299148A1、EP0394737A1、EP0590484A1、EP0234362A1、EP0234361A1、EP0543817A1、WO95/14721、EP0521928A1、EP0522420A1、EP0522419A1、EP0649865A1、EP0536712A1、EP0596460A1、EP0596461A1、EP0584818A1、EP0669356A1、EP0634431A1、EP0678536A1、EP0354261A1、EP0424705A1、WO97/49745、WO97/49747、EP0401565A1又はEP0817684に記載のものを挙げることができる。
【0145】
前述の着色材料又は効果のある被覆材料は、着色ベースコート及び/又は効果のあるベースコートのみならず、着色−及び/又は効果をもたらす組合せの効果のある被膜を作製するように機能することができる。これらは、多数被膜の着色及び/又は効果のある塗料構造体において少なくとも2種の機能を満たす被覆を意味する。このような機能としては、例えば、腐食に対する保護機能、接着促進機能、機械エネルギーの吸収機能、及び着色及び/又は効果の付与機能を挙げることができる。特に、組合せの効果のある被膜は、機械エネルギーを吸収するように働き、同時に着色及び/又は効果を付与するように働く;従って、それは、表面被膜、又はアンチストーンチップ(antistonechip)プライマー被膜の機能、及びベースコートの機能を満足する。さらに好ましくは、組合せの効果のある被膜はまた、腐食保護効果及び/又は接着促進効果を有する。
【0146】
層(W)及び/又は(Z)の典型的な厚さは、一般に0.1〜2000μm、好ましくは0.5〜1000μm、さらに好ましくは1〜500μm、極めて好ましくは1〜250μm、特に好ましくは10〜100μmである。
【0147】
多数被膜塗料構造体に使用することができる被覆材料は、着色及び/又は効果のある顔料であっても良い。好適な着色顔料としては、被覆材料として慣用される有機又は無機の顔料を挙げることができる。有機又は無機の顔料の例としては、二酸化チタン、微粒子の二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、及びピローロピロール顔料を挙げることができる。
【0148】
効果のある顔料は、特に板状構造に注目されている。効果のある顔料の例としては、金属顔料(例、アルミニウム、銅又は他の金属の顔料);干渉顔料(例、金属酸化物被覆金属顔料、例えば二酸化チタン被覆又は混合酸化物被覆アルミニウム)、被覆マイカ(例、二酸化チタン被覆マイカ)、及びグラファイト効果のある顔料を挙げることができる。例えば、硬度を改善するために、UV−硬化性顔料、及び適宜フィラーを使用することが有利であり得る。これらは、放射線硬化性化合物、例えばアクリロイル−官能化シラン、被覆顔料/フィラーであり、このため放射線硬化操作に包含され得る。
【0149】
本発明の被覆構造体(system)は、下記の工程を含む方法により一般に製造される:
a)不動態層を形成するための前述の方法に従い、不動態層Xを形成する工程;
b)その不動態層を被覆する工程。
【0150】
不動態層を形成する方法は、その方法の好ましい態様に沿って、既に前述した。工程b)に好適な被覆方法は当該技術者に公知である。

【0151】
下記の実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0152】
[比較例]
金属テストパネル(亜鉛メッキスチール、20μmの亜鉛)を、表1に規定された不動態化法により不動態化した。安定時間は塩噴霧試験で決定した。
(塩噴霧試験)
腐食防止効果に使用される基準は、DIN50021に従う塩噴霧試験の結果である。腐食試験の安定時間は、観察される腐食損傷の種類に従い異なって定義される。
【0153】
−白色斑点が、一般に1mmを超える直径で形成された場合(Zn酸化物又はAl酸化物、白錆として知られている)、報告される安定時間は、観察される損傷がDIN EN ISO 10289(2001年4月、アネックスB、19頁)における評価段階8になるまでの時間である。
【0154】
−白錆斑点が形成される前に、黒色斑点が一般に1mm未満の直径で形成された場合(特に、不動態層を備えた亜鉛の上で)、報告される安定時間は、観察される損傷がDIN EN ISO 10289(2001年4月、アネックスA、9頁)における評価段階8になるまでの時間である。
【0155】
【表1】

【0156】
表2に規定された試薬は、HNO30.1%溶液中に濃度Cで溶解させる。金属テストパネル(亜鉛メッキスチール、20μmの亜鉛)を、溶液に1分間浸漬し、一晩吊り下げて乾燥する。質量差により決定された層厚は、1μmと3μmとの間にある。安定時間塩噴霧試験で測定した。
(質量差)
層の厚さは、層の比重が1kg/Lであるとの仮定のもとに、本発明で使用される組成物が金属表面に作用する前及び後の質量差により決定される。層の実際の比重に関係なく、以下の本文の層厚に関しては、このように決定されたパラメータである。
【0157】
【表2】

【0158】
*上記K値は、平均分子量を特性化するためのFikentscher定数である;H.-G. Elias, Makromolekuele 第1巻, 第5版, Huethig & Verlag, Basel 1990, 99頁参照。
【0159】
(本発明で使用される共重合体の製造指示)
[実施例1]
アンカースターラ、温度制御器、窒素導入口及び2個の供給ポートを備えた6Lの圧力反応器に、486gの無水マレイン酸(4.96モル)、22.5mgの硫酸鉄及び1000gの脱塩水を充填する。
【0160】
この最初の充填物を、窒素雰囲気下で115〜120℃に加熱する。この温度に到達した時、1665gのアクリル酸(23.1モル)及び1190gの脱塩水からなる供給1を、4時間に亘って均一速度で計量導入し、そして115.0gの過酸化水素(30%)及び258gの脱塩水からなる供給2を5時間に亘って均一速度で計量導入する。供給1の終了後、さらに190gの脱塩水を添加する。反応混合物120℃でさらに2時間撹拌する。重合の間、圧力を、過剰の圧力を注意深く逃がしながら3〜4バールに維持する。
【0161】
冷却により、黄色がかった透明のポリマー溶液が得られる。
【0162】
無水物基を加水分解するために、672gのトリエタノールアミン(マレイン酸及びアクリル酸に対して30質量%に相当)を、ポリマー溶液に、反応器の内部温度が40℃を超えないような速度で添加する。
これにより、固体含有量53%の黄色がかった透明のポリマー溶液を得る。
【0163】
[実施例2]
スターラ、内部温度計、還流凝縮器及び窒素導入口を備えた多数口のフラスコに、73gの無水マレイン酸(0.73モル)、3.375mgの硫酸鉄及び150gの脱塩水を充填する。反応器を、撹拌しながら窒素で不活性にする。混合物を撹拌しながら100℃に加熱する。その後、同時に、259のアクリル酸(3.6モル)、10gのビニルホスホン酸(マレイン酸及びアクリル酸に対して3質量%に該当)の混合物を5時間に亘って均一速度で計量導入し、そして277gの過酸化水素水溶液(30%)を6時間に亘って均一速度で計量導入する。
【0164】
反応混合物は100℃でさらに2時間保持される。
【0165】
冷却により、固体含有量45.3%の黄色がかった透明のポリマー溶液を得る。ポリマー溶液(1%脱塩水溶液)のK値は14である。
【0166】
[実施例3]
アンカースターラ、温度制御器、窒素導入口及び2個の供給ポートを備えた6Lの圧力反応器に、486gの無水マレイン酸(4.96モル)、22.5mgの硫酸鉄及び1000gの脱塩水を充填する。
【0167】
この最初の充填物を、窒素雰囲気下で115〜120℃に加熱した。この温度に到達した時、1665gのアクリル酸(23.1モル)、66gのビニルホスホン酸(マレイン酸及びアクリル酸に対して3質量%)及び1190gの脱塩水からなる供給1を、4時間に亘って均一速度で計量導入し、そして115gの過酸化水素(30%)及び258gの脱塩水からなる供給2を5時間に亘って均一速度で計量導入する。供給1の終了後、さらに190gの脱塩水を添加する。反応混合物120℃でさらに2時間撹拌する。重合の間、圧力を、過剰の圧力を注意深く逃がしながら3〜4バールに維持する。
【0168】
冷却により、固体含有量45.6%の黄色がかった透明のポリマー溶液を得る。
【0169】
ポリマー溶液(1%脱塩水溶液)のK値は31である。
【0170】
未処理の金属パネルを、処理をしたもう一方(即ち、本発明の不動態層を備えたもの)と比較した場合、腐食試験における安定時間が3倍であることにより、腐食防止効果の信頼ある表示が示されたと理解される。腐食試験の安定時間は、構造体を高温(例、60℃)で浸漬することにより、或いはさらに高い濃度の溶液(前記規定された実施例から変化した濃度の硝酸を含んでいる)に浸漬することにより、さらに改良することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記の成分Aa、Ab1、Ab2及びAcから合成された少なくとも1種の共重合体(成分A):
aa)50〜99.9質量%の(メタ)アクリル酸又はその塩(成分Aa)、
ab1)0.1〜50質量%の、下記の式I:
【化1】

[但し、nが0〜10であり、
1、R2及びR3が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリール(以上のR1、R2及び/又はR3の基は、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い)、又はカルボキシル基を表し、
4及びR5が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリールを表す。]
で表されるカルボキシレート含有モノマー;或いは式(I)の化合物の塩、無水物又はエステル(但し、(メタ)アクリル酸又はその塩を除く)(成分Ab1)、
及び/又は
ab2)0.1〜50質量%の、リン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩を含む基を有し、且つaa)及びac)で規定されたモノマー及び成分Ab1と重合可能であるモノマー(成分Ab2)、
ac)0〜30質量%の、aa)及びab)で規定されたモノマーと重合可能である別のコモノマー(成分Ac);
b)水、又はポリマー(成分A)を溶解、分散、懸濁又は乳化することが可能な他の溶剤(成分B);
c)適宜に、他の界面活性剤、分散剤、懸濁剤、及び/又は乳化剤(成分C)
を含む金属表面を処理するための組成物。
【請求項2】
成分Aaがアクリル酸又はアクリル酸の塩であり、成分Ab1が無水マレイン酸、及び成分Ab2がビニルホスホン酸又はメタクリル酸のホスホノオキシエチルエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分Aとして、アクリル酸及び無水マレイン酸から合成された共重合体、又は(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びビニルホスホン酸から合成されたターポリマーを使用する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分A、B及び適宜Cに加えて、
d)少なくとも1種の窒素塩基、好ましくは少なくとも1種の3級アルカリ性アミン、さらに好ましくは少なくとも1種のヒドロキシルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン及び/又はイミダゾール(成分D)
を含む請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
成分A、B、及び適宜C、及び適宜Dに加えて、
e)遷移金属カチオン、遷移金属オキソアニオン、フルオロメタレート又はランタノイドに基づく少なくとも1種の塩、酸又は塩基(成分E);
及び/又は
f)リン酸、硫酸、スルホン酸、ギ酸、酢酸、硝酸、フッ化水素酸及び塩酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸、又はその酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩(成分F);
及び/又は
g)少なくとも1種の別の腐食防止剤(成分G);
及び/又は
h)Ce、Ni、Co、V、Fe、Zn、Zr、Ca、Mn、Mo、W、Cr及び/又はBiの化合物(成分H);
及び/又は
i)別の助剤及び添加剤(成分I);
及び/又は
j)少なくとも1種の錯化剤(成分J);
及び/又は
k)別の添加剤(成分K)
を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
金属表面に請求項1〜3のいずれかに1項に記載のポリマー(成分A)を含む組成物を接触させることにより得られる金属表面上の不動態層。
【請求項7】
厚さが3μm以下である請求項6に記載の不動態層。
【請求項8】
金属表面及び請求項6又は7に記載の不動態層からなる表面。
【請求項9】
金属表面に請求項1〜5のいずれか1項の組成物を接触させることを特徴とする金属表面に不動態層を形成する方法。
【請求項10】
上記接触を、噴霧、ロール塗布又は浸漬により行う請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項の組成物を、金属表面の不動態化のために使用する方法。
【請求項12】
請求項6又は7に記載の不動態層X及び別の被覆膜Yを含む金属表面上の構造体。
【請求項13】
下記の工程:
請求項9又は10に記載の方法により不動態層Xを形成する工程、及び
その不動態層を被覆する工程
を含む請求項12に記載の被覆構造体を形成する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記の成分Aa、Ab1、Ab2及びAcから合成された少なくとも1種の共重合体(成分A):
aa)50〜99.9質量%の(メタ)アクリル酸又はその塩(成分Aa)、
ab1)0.1〜50質量%の、下記の式I:
【化1】

[但し、nが0〜10であり、
1、R2及びR3が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリール(以上のR1、R2及び/又はR3の基は、任意に少なくとも1個のカルボキシル基で置換されていても良い)、又はカルボキシル基を表し、
4及びR5が、相互に独立して、水素、分岐又は非分岐のC1〜C18アルキル、C3〜C6シクロアルキル、分岐又は非分岐のC2〜C18アルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、アルキル置換基若しくは他のアリール置換基により置換されていても良いC6〜C12アリールを表す。]
で表されるカルボキシレート含有モノマー;或いは式(I)の化合物の塩、無水物又はエステル(但し、(メタ)アクリル酸又はその塩を除く)(成分Ab1)、
及び/又は
ab2)0.1〜50質量%の、リン酸及び/又はホスホン酸又はこれらの塩を含む基を有し、且つaa)及びac)で規定されたモノマー及び成分Ab1と重合可能であるモノマー(成分Ab2)、
ac)0〜30質量%の、aa)及びab)で規定されたモノマーと重合可能である別のコモノマー(成分Ac);
b)水、又はポリマー(成分A)を溶解、分散、懸濁又は乳化することが可能な他の溶剤(成分B);
c)適宜に、他の界面活性剤、分散剤、懸濁剤、及び/又は乳化剤(成分C)
を含む金属表面を処理するための組成物。
【請求項2】
成分Aaがアクリル酸又はアクリル酸の塩であり、成分Ab1が無水マレイン酸、及び成分Ab2がビニルホスホン酸又はメタクリル酸のホスホノオキシエチルエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分Aとして、アクリル酸及び無水マレイン酸から合成された共重合体、又は(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びビニルホスホン酸から合成されたターポリマーを使用する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分A、B及び適宜Cに加えて、
d)少なくとも1種の窒素塩基、好ましくは少なくとも1種の3級アルカリ性アミン、さらに好ましくは少なくとも1種のヒドロキシルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン及び/又はイミダゾール(成分D)
を含む請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
成分A、B、及び適宜C、及び適宜Dに加えて、
e)遷移金属カチオン、遷移金属オキソアニオン、フルオロメタレート又はランタノイドに基づく少なくとも1種の塩、酸又は塩基(成分E);
及び/又は
f)リン酸、硫酸、スルホン酸、ギ酸、酢酸、硝酸、フッ化水素酸及び塩酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸、又はその酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩(成分F);
及び/又は
g)少なくとも1種の別の腐食防止剤(成分G);
及び/又は
h)Ce、Ni、Co、V、Fe、Zn、Zr、Ca、Mn、Mo、W、Cr及び/又はBiの化合物(成分H);
及び/又は
i)別の助剤及び添加剤(成分I);
及び/又は
j)少なくとも1種の錯化剤(成分J);
及び/又は
k)別の添加剤(成分K)
を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
金属表面に請求項1〜3のいずれかに1項に記載のポリマー(成分A)を含む金属表面上の不動態層。
【請求項7】
厚さが3μm以下である請求項6に記載の不動態層。
【請求項8】
金属表面及び請求項6又は7に記載の不動態層からなる表面。
【請求項9】
金属表面に請求項1〜5のいずれか1項の組成物を接触させることを特徴とする金属表面に不動態層を形成する方法。
【請求項10】
上記接触を、噴霧、ロール塗布又は浸漬により行う請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項6又は7に記載の不動態層X及び別の被覆膜Yを含む金属表面上の構造体。
【請求項12】
下記の工程:
請求項9又は10に記載の方法により不動態層Xを形成する工程、及び
その不動態層を被覆する工程
を含む請求項11に記載の被覆構造体を形成する方法。

【公表番号】特表2006−520402(P2006−520402A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500037(P2006−500037)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001590
【国際公開番号】WO2004/074372
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】