説明

金属超微粒子、同超微粒子を含む樹脂組成物またはその成型物、および同樹脂組成物またはその成型物の製造方法

【課題】 粒度分布が狭く分散安定性に優れた金属超微粒子を含む樹脂組成物およびその成型物を極めて簡便かつ汎用的な方法にて製造する方法を提供する。
【解決手段】 金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物を、該金属酸化物または金属有機化合物の熱分解開始温度以上かつ樹脂の劣化温度未満の温度で加熱成型して、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子を樹脂成型物中で生成させる。金属超微粒子の金属は、Cu、Ag、Au、In、Pd、Pt、Fe、Ni、Co、Nb、RuおよびRhからなる群より選択される少なくとも1種からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子、同超微粒子を含む樹脂組成物またはその成型物、および同樹脂組成物またはその成型物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径が100nm以下である超微粒子は、その特性を一般の粒子と大きく異にする。特に、貴金属や銅の超微粒子は、各コロイド特有の色を発色し、ガラス物質中において極めて安定であるため、ベネチアガラスやステンドグラス等の着色に利用されている。
【0003】
貴金属や銅超微粒子の発色は、自由電子が光電場による振動を受けて生じるプラズモン吸収に起因し、この原理による発色では、着色力、彩度や光透過性が高い。
【0004】
最近、塗料や樹脂組成物の着色に金属超微粒子を利用することが期待されている。ま
た、高彩度で高い光透過性のため、光学樹脂フィルターへの応用も期待されている。さらに、金、銀、銅、鉄、ニッケルやコバルトなどの金属超微粒子は優れた電気・磁気特性をもつため、これらの金属超微粒子が安定に分散された樹脂成型物は導電性材料、磁性材料や電磁波吸収材料などの幅広い使用用途が期待されている。
【0005】
金属超微粒子の製造方法として、金属塩、還元剤、高分子保護剤を用いて液相中から製造する方法が幾つか提案されている。しかし、これらの方法は、反応液体中での超微粒子濃度が低く、大量生産には適さない。
【0006】
金属超微粒子を大量に製造する方法としては、ガス中蒸発法(気相法)が知られている。しかし、この方法は、電子ビーム、プラズマ、レーザー、誘導加熱等の高コストの特殊設備が必要であるため、実用化には不利である。さらに、得られる金属超微粒子は凝集する欠点をもち、粒度分布も広い。
【0007】
特許文献1には、塗料や樹脂組成物着色用途のため、貴金属または銅の化合物を含む溶液に高分子量顔料分散剤を保護剤として加え、該化合物を液相還元法により貴金属または銅に還元する、金属超微粒子含有ペーストの製造方法が記載されている。この金属超微粒子含有ペーストは、粒度分布が狭く、分散安定性に優れた金属超微粒子を高濃度に含み、大量合成に適している。しかし、複雑な化学構造の分散剤および還元剤を使用する必要があり、得られた金属超微粒子ペーストを限外濾過などによって精製しなければならない。
【0008】
特許文献2には、有機金属化合物を不活性ガス雰囲気下で固相反応により熱分解することにより、金属超微粒子を大量製造する方法が記載されている。得られる金属超微粒子は粒度分布が狭く、各種有機溶剤に分散可能である。しかし、この方法では、精製工程に長時間を要し、分散安定性が優れているとはいえない。加えて、この方法によって合成される例えば銀超微粒子は微量でも周囲を黄色に汚染するなどの取り扱いの困難さがある。
【0009】
したがって、金属超微粒子を含む樹脂およびその成型物を製造するには、上述した従来の金属超微粒子の製造方法は、利便性や汎用性に欠けるものである。
【特許文献1】特開平11−80647号公報
【特許文献2】特開平10−183207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、粒度分布が狭く分散安定性に優れた金属超微粒子を含む樹脂組成物およびその成型物を極めて簡便かつ汎用的な方法にて製造する方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、予想外にも、金属酸化物または金属有機化合物が、樹脂の加熱成型加工過程において、自己還元または熱分解し、金属超微粒子となることを見出した。この現象に基づいて、本発明者らは、金属超微粒子が樹脂成型加工時に生成するため金属超微粒子の合成、精製と分散ならびに樹脂成型加工が同一工程で行われる、極めて簡便で汎用性に富んだ、金属超微粒子を含む樹脂組成物およびその成型物の製造方法を見出した。
【0012】
すなわち、請求項1に係る発明は、金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物の加熱により樹脂中で生成した平均粒径1〜100nmの金属超微粒子である。
【0013】
請求項2に係る発明は、金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物の加熱により得られ、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子と同超微粒子を含む樹脂とからなる金属超微粒子含有樹脂組成物である。
【0014】
請求項3に係る発明は、金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物の加熱成型により得られ、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子と同超微粒子を含む樹脂成型物とからなる金属超微粒子含有樹脂成型物である。
【0015】
請求項4に係る発明は、金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物を、該金属酸化物または金属有機化合物の熱分解開始温度以上かつ樹脂の劣化温度未満の温度で加熱して、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子を樹脂中で生成させる金属超微粒子含有樹脂組成物の製造方法である。
【0016】
請求項5に係る発明は、金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物を、該金属酸化物または金属有機化合物の熱分解開始温度以上かつ樹脂の劣化温度未満の温度で加熱成型して、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子を樹脂成型物中で生成させる金属超微粒子含有樹脂成型物の製造方法である。
【0017】
請求項6に係る発明は、金属超微粒子の金属が、Cu、Ag、Au、In、Pd、Pt、Fe、Ni、Co、Nb、RuおよびRhからなる群より選択される少なくとも1種からなる請求項1記載の金属超微粒子、請求項1記載の金属超微粒子、請求項2記載の金属超微粒子含有樹脂組成物、請求項3記載の金属超微粒子含有樹脂成型物、請求項4記載の金属超微粒子含有樹脂組成物の製造方法、または請求項5記載の金属超微粒子含有樹脂成型物の製造方法である。
【0018】
本発明による金属超微粒子は、金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物の加熱により樹脂中で生成される。また、本発明による金属超微粒子は、該混合物の加熱成型により樹脂成型物中で生成される。
【0019】
金属超微粒子の金属成分は、特に制限されないが、好ましくは、Cu、Ag、Au、In、Pd、Pt、Fe、Ni、Co、Nb、RuおよびRhの少なくとも一種である。金属超微粒子の金属成分は、これらの金属単独、これらの金属の混合物、これらの金属の合金等あらゆる形態をとってよい。
【0020】
金属超微粒子の平均粒径は1〜100nmであるが、最終製品の用途等により変更可能である。例えば、色材やカラーフィルター用に用いる場合は、好ましくは平均粒径は1〜50nm程度、より好ましくは1〜30nmである。
【0021】
金属酸化物または金属有機化合物は金属成分コアの前駆体として、および金属成分コアの回りを取り囲む成分として用いられる。
【0022】
金属酸化物は上記の例示金属の酸化物であれば特に制限されないが、酸化銅、酸化銀、酸化ニッケル、酸化コバルトが好ましい。金属酸化物は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0023】
金属有機化合物は、有機金属化合物のほか、カルボン酸金属塩、金属β―ジケトン錯塩、金属アルコキシド等も包含する。有機金属化合物は分子内に少なくとも1つの金属−炭素結合を有する化合物と定義され、中心金属とこれと結合した炭素原子を含む配位子とからなる。有機金属化合物の例としては、アルキル金属化合物、アリル金属化合物、フェニル金属化合物、メタロセン化合物およびこれらの公知の誘導体が挙げられる。カルボン酸金属塩としては、酢酸塩、安息香酸塩、ナフテン酸塩、ミリスチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、n−デカン酸塩、パラトルイル酸塩が例示される。金属β―ジケトン錯塩の代表例としては金属アセチルアセトネート等が挙げられる。金属アルコキシドとしてはイソプロポキシド、エトキシドが挙げられる。これらの中でも、特に酢酸塩、ミリスチン酸塩、オレイン酸塩、パラトルイル酸塩、ステアリン酸塩、n−デカン酸塩、金属エトキシド、金属アセチルアセトネート等が好ましい。金属有機化合物の金属も特に制限されず、最終製品用途に応じて適宜選択できる。金属有機化合物は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。カルボン酸塩、アルコキシドとしては、特に直鎖脂肪酸、直鎖アルコキシドが好ましく、その炭素数は通常1〜30程度、より好ましくは1〜18である。
【0024】
用いる樹脂は特に制限されないが、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプレピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリサルホン、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。樹脂は、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の熱硬化性樹脂であっても良い。
【0025】
金属超微粒子含有樹脂組成物中における金属超微粒子の割合は、最終製品の用途に応じて適宜設定できるが、通常は0.00001〜20重量%程度とすれば良い。例えば、最終製品を色材やカラーフィルター用に用いる場合は、この割合は0.001〜5重量%程度とするのが好ましい。
【0026】
本発明による金属超微粒子は後述する方法によって樹脂(樹脂成型物を含む)中で生成される。
【0027】
金属超微粒子は、金属酸化物または金属有機化合物に由来する金属成分から実質上なるコアと、その回りを取り囲む金属酸化物または金属有機化合物とから実質上構成されている。金属酸化物または金属有機化合物とそれに由来する金属成分とは、その一部または全部が化学的に結合した状態で一体化して存在している(特許文献2参照)。金属酸化物または金属有機化合物に由来する金属成分から実質上なるコアは、金属酸化物または金属有機化合物、それに由来する有機質成分等を含んでいてもよく、このようなものも本発明に包含される。金属超微粒子中の金属成分コアの重量割合は、最終製品の用途等に応じて適宜設定できるが、好ましくは50〜90重量%程度である。また、金属コアの回りを取り囲む成分は実質的に金属酸化物または金属有機化合物から構成されているが、その他にも金属酸化物または金属有機化合物に由来する金属成分、有機質成分等を含んでいてもよい。
【0028】
つぎに、金属超微粒子含有樹脂組成物の製造方法、および金属超微粒子含有樹脂成型物の製造方法について、説明をする。
【0029】
本発明方法によれば、金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物を所定温度で加熱(加熱成型を含む)して、金属超微粒子を樹脂中で生成させる。
【0030】
金属酸化物または金属有機化合物と樹脂との混合物中の金属酸化物または金属有機化合物の割合は、好ましくは0.00001〜90重量%、より好ましくは0.001〜20重量%である。この割合は最終製品の用途に応じて適宜決定される。
【0031】
金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物を加熱する手段は、特に限定されない。該混合物を二本ロール法、射出、押出、プレス成型などの加熱成型法により、超微粒子含有樹脂成型物を得ることができる。
【0032】
樹脂が熱可塑性樹脂である場合、加熱温度(成型温度を含む)は、金属酸化物または金属有機化合物の熱分解温度以上、かつ、熱可塑性樹脂の劣化温度未満の温度範囲内である。熱可塑性樹脂中に金属超微粒子を生成させるためには、金属酸化物または金属有機化合物の熱分解開始温度が、熱可塑性樹脂の溶融温度より高くなければならない。例えば、金属有機化合物の分解開始温度が140℃で、樹脂の溶融温度が120℃、劣化温度が250℃の場合、140〜250℃の温度範囲内で成型加工温度を設定すればよい。加熱(成型)時間は、通常数秒〜数分で、金属超微粒子の生成が遅い場合は、樹脂が劣化しない範囲内で時間を長くすることができる。
【0033】
樹脂が熱可塑性樹脂である場合、例えば、金属酸化物や金属有機化合物を熱可塑性樹脂組成物と混合し、この混合物を二本ロール法、射出、押出、プレス成型に供給し、最終製品の用途に応じた形状に加熱成型することにより、金属超微粒子含有樹脂成型物が得られる。金属超微粒子含有樹脂成型物の成型形態は特に制限されず、粒状、ペレット、フィルム、シート、プレート、容器などであってよい。
【0034】
本発明方法により得られた金属超微粒子含有樹脂組成物またはその成型物は、金属超微粒子を高い含有量(好ましくは0.01〜90重量%、より好ましくは0.1〜50重量%)で分散状に含むマスターバッチ、カラーコンパウンドであっても良い。
【0035】
樹脂が熱硬化性樹脂である場合、例えば、金属酸化物または金属有機化合物を熱硬化性樹脂中に分散させた後、同樹脂を熱硬化することによって、樹脂中に金属超微粒子を生成させることができる。また、同樹脂を型中に流し込み、熱硬化すれば、金属超微粒子を含む熱硬化性樹脂成型体を得ることが出来る。樹脂硬化温度は、金属有機化合物の熱分解温度以上、かつ、熱硬化性樹脂の劣化温度未満の温度範囲内である。また、常温硬化においても、発生する重合熱が上記温度範囲内にあれば、金属超微粒子を生成させることができる。加熱(成型)時間は、通常数分から数時間で、金属超微粒子の生成が遅い場合は、樹脂が劣化しない範囲内で時間を長くすることができる。
【0036】
本発明による製造方法において、金属超微粒子の生成を促進するために、原料に添加剤を加えることができる。添加剤としては、上記効果が得られる限り特に制限されないが、各種カルボン酸類、各種アルコール類や各種アミン類が好ましい。カルボン酸類の例としては、酢酸、クエン酸、安息香酸、ナフテン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、n−デカン酸、パラトルイル酸などが挙げられる。アルコール類としては、グリセリン、エチレングリコール、プロパンジオール、オレイルアルコールなどが例示される。アミン類の例としてはピリジン、トリエタノールアミン、ヒドラジンなど挙げられる。添加剤の添加量は、金属酸化物や金属有機化合物に対して好ましくは5〜300重量%、より好ましくは10〜200重量%である。
【0037】
本発明による金属超微粒子含有樹脂成型物は、美粧性に優れた着色体、光学材料、電子材料、磁性材料等の用途に幅広く使用することができる。例えば、本発明による金属超微粒子含有樹脂成型物(フィルム、プレート等)は充分に着色されており、熱や光に対して極めて安定で変色しないことから、高性能カラーフィルターとして使用できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明による金属超微粒子含有樹脂成型物は、従来の方法で製造された金属超微粒子含有樹脂成型物より優れた特性を有する。例えば、本発明による銀超微粒子含有黄色着色樹脂は、上記特許文献2記載の方法に従って不活性ガス雰囲気で合成された銀超微粒子含有黄色着色樹脂よりも優れた色調および透明性を持つ。これは、本発明方法により樹脂中で生成された金属超微粒子は狭い粒度分布で凝集することなく安定分散していることに因る。以上から、本発明の金属超微粒子含有樹脂組成物またはその成型物の製造方法によれば、従来技術では必要であった、金属超微粒子を生成させるための合成工程、金属超微粒子の精製および超微粒子分散のための処理が不要であるうえに、得られる樹脂成型物の性能がより高いという利点がある。
【0039】
このように、本発明によれば、粒度分布が狭く分散安定性に優れた金属超微粒子を含む樹脂組成物およびその成型物を極めて簡便かつ汎用的な方法にて製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に本発明の実施例を示し、本発明の特徴とするところをより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、本発明の優位性を明確なのものするため、比較例を挙げる。
【0041】
実施例1
市販の酢酸銀0.02gとポリスチレン樹脂ペレット400gを混合した。この混合物を、射出シリンダ部の温度を210℃、成型金型部の温度を60℃に設定した射出成型機に供給し、90×60×3mmの銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂プレートを作製した。
【0042】
この樹脂プレートの分光透過率曲線を図1に示す。同曲線から、この樹脂プレートは透明性が非常に高く、非常に鮮明な黄色に着色していることが分かる。また、同曲線から、粒径は5 nm程度と推測される。
【0043】
実施例2
まず、公知の方法に従って、ステアリン酸銀を調製した。すなわち、市販のステアリン酸を、水酸化ナトリウムを含む水溶液に80℃で加熱溶解した。ここに硝酸銀を加え、析出したステアリン酸銀を遠心分離にて取得し、これを乾燥した。
【0044】
このように調製したステアリン酸銀20gとポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット20kgを混合した。この混合物を、280℃に温度設定した二軸押出機にて押出成型し、銀超微粒子を含む黄色に着色したポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを作成した。
【0045】
この黄色の銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを用い、Tダイフィルム成型機(東芝機械社製)にて、厚さ0.1mmのフィルムを作成した。この樹脂フィルムの分光透過率曲線を図2に示す。同曲線から、この樹脂フィルムは透明性が非常に高く、非常に鮮明な黄色に着色していることが分かる。また、同曲線から、粒径は5 nm程度と推測される。
【0046】
実施例3
市販のオレイン酸銅0.2gとポリカーボネート樹脂ペレット400gを混合した。この混合物を、射出シリンダ部の温度を280℃、成型金型部の温度を120℃と設定した射出成型機に供給し、90×60×3mmの銅超微粒子含有ポリカーボネート樹脂プレートを作製した。
【0047】
この樹脂プレートの分光透過率曲線を図3に示す。この樹脂プレートは透明性が非常に高く、非常に鮮明な赤色に着色していた。また、同曲線から、粒径は15 nm程度と推測される。
【0048】
実施例4
まず、公知の方法に従って、ミリスチン酸銀を調製した。すなわち、市販のミリスチン酸を水酸化ナトリウム含有水溶液に80℃で加熱溶解した。ここに硝酸銀を加え、析出したミリスチン酸銀を遠心分離にて分離したあと乾燥した。
【0049】
このように調製したミリスチン酸銀0.02gとポリスチレン樹脂ペレット400gを混合した。この混合物を、射出シリンダ部の温度を210℃、成型金型部を60℃に設定した射出成型機に供給し、90×60×3mmの銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂プレート(本発明品A)を作製した。
【0050】
比較として、上記特許文献2記載の方法に従って、実施例4と同様の操作で調製したミリスチン酸銀を窒素雰囲気下にて250℃で加熱し、平均粒径5nmの銀超微粒子を作製した。この銀超微粒子をポリスチレン樹脂に添加し、分散させた。この銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂を実施例4と同様の操作で射出成型し、銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂プレート(従来品A)を作製した。銀含有量は実施例4と等しくした。
【0051】
本実施例で作製した銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂プレート(本発明品A)と、比較のために作製した銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂プレート(従来品A)との分光透過率曲線を図4に示す。
【0052】
同曲線から、本発明方法に従って作製した実施例4の銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂プレート(本発明品A)は420nm付近の透過率が低く、それ以外の波長領域において透過率がより高く、すなわち黄味が強く透明性が高いことが分かる。これは、本発明方法によって樹脂中において製造された、狭い粒度分布をもった銀超微粒子が凝集することなく安定分散していることを示すものである。
【0053】
実施例5
実施例4と同様にして調製したミリスチン酸銀0.02gとポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット400gを混合した。この混合物を、射出シリンダ部の温度を280℃、成型金型部を40℃と設定した射出成型機に供給し、90×60×3mmの銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂プレート(本発明品B)を作製した。
【0054】
比較のために、上記従来品Aの作製に用いたのと同じ銀超微粒子を、ポリエチレンテレフタレート樹脂に添加し、分散させた。この銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂を実施例5と同様の操作で射出成型し、銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂プレート(従来品B)を作製した。銀含有量は実施例5と等しくした。
【0055】
本実施例で作製した銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂プレート(本発明品B)と、比較のために作製した銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂プレート(従来品B)との分光透過率曲線を図5に示す。
【0056】
同曲線から、本発明方法によって作製した実施例5の銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂プレート(本発明品B)は420nm付近の透過率が低く、それ以外の波長領域において透過率がより高く、すなわち黄味が強く透明性が高いことが分かる。これは、本発明によって樹脂中において製造された、狭い粒度分布をもった銀超微粒子が凝集することなく安定分散していることを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂プレートの分光透過率曲線を示すグラフである。
【図2】銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの分光透過率曲線を示すグラフである。
【図3】銅超微粒子含有ポリカーボネート樹脂プレートの分光透過率曲線を示すグラフである。
【図4】銀超微粒子含有ポリスチレン樹脂プレートの分光透過率曲線を示すグラフである。
【図5】銀超微粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂プレートの分光透過率曲線を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物の加熱により樹脂中で生成した平均粒径1〜100nmの金属超微粒子。
【請求項2】
金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物の加熱により得られ、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子と同超微粒子を含む樹脂とからなる金属超微粒子含有樹脂組成物。
【請求項3】
金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物の加熱成型により得られ、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子と同超微粒子を含む樹脂成型物とからなる金属超微粒子含有樹脂成型物。
【請求項4】
金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物を、該金属酸化物または金属有機化合物の熱分解開始温度以上かつ樹脂の劣化温度未満で加熱して、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子を樹脂中で生成させる金属超微粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物を、該金属酸化物または金属有機化合物の熱分解開始温度以上かつ樹脂の劣化温度未満の範囲内にある樹脂の成型温度で加熱成型して、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子を樹脂成型物中で生成させる金属超微粒子含有樹脂成型物の製造方法。
【請求項6】
金属超微粒子の金属が、Cu、Ag、Au、In、Pd、Pt、Fe、Ni、Co、Nb、RuおよびRhからなる群より選択される少なくとも1種からなる請求項1記載の金属超微粒子、請求項2記載の金属超微粒子含有樹脂組成物、請求項3記載の金属超微粒子含有樹脂成型物、請求項4記載の金属超微粒子含有樹脂組成物の製造方法、または請求項5記載の金属超微粒子含有樹脂成型物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−348213(P2006−348213A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177668(P2005−177668)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000229874)東罐マテリアル・テクノロジー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】