説明

金属酸化物の炭素熱還元による金属および合金の生産方法

金属および合金を生産する方法であって、当該方法は、少なくとも1つの金属酸化物を含む原料、ならびに炭素系還元剤および硬化結合剤を含む集塊物を当該金属酸化物の当該金属への還元をもたらすために加熱する工程を含み、各集塊物は少なくとも1つの成形された開口チャネルを有し、かつ、見かけ上の密度が当該チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の99%を超えない方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照。本願は、米国特許仮出願第60/954328号(出願日2007年8月7日)の利益を主張するものである(米国特許法(35 U.S.C.)§119(e))。米国特許仮出願第60/954328号明細書は参照によって本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、金属酸化物の炭素熱還元によって金属および合金を生産する方法、特に、少なくとも1つの金属酸化物を含む原料、ならびに炭素系還元剤および硬化結合剤を含む集塊物を、当該金属酸化物の当該金属への還元をもたらすために加熱する工程を含む方法に関し、各集塊物は、少なくとも1つの成形された開口チャネルを有し、見かけ上の密度は、当該チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の99%を超えない。
【背景技術】
【0003】
金属酸化物の炭素熱還元による、様々な金属および合金の大量生産は、抽出冶金において、依然として重要な工程である。例えば、金属および合金(ケイ素、フェロシリコン、アルミニウム、鉄、鋼、およびタングステンなど)は、アーク電気炉において、炭素系還元剤によって、対応する金属酸化物の還元によって、広く生産されている。
【0004】
炭素熱還元では、当該炭素系還元剤は、典型的に、当該炉に、集塊物の形態(ペレット、塊、または豆炭など)で、導入される。さらに、低い見かけ上の密度および低い容積密度を有する集塊物は、当該炉の最適な操作および当該工程の制御において大変望ましい。低い見かけ上の密度および容積密度を有する集塊物を使用する利点としては、典型的に、相対的に高い収量、高い金属生成率、および低いエネルギー消費が挙げられる。さらに、集塊物は、粉砕されることなく、従来の取扱作業および冶金炉の過酷な環境に耐えるのに十分な強度を有するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属酸化物の炭素熱還元についての多数の工程が当該技術分野において報告されているが、適切な強度に対する要求に依然として適合しつつ、実質的により低い容積密度および見かけ上の密度を有する炭素系還元剤を利用する工程についてのニーズが根強く存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属を生産する方法に向けられ、当該方法は、少なくとも1つの金属酸化物を含む原料、ならびに炭素系還元剤および硬化結合剤を含む集塊物を、当該金属酸化物の当該金属への還元をもたらすために加熱する工程を含み、各集塊物は少なくとも1つの成形された開口チャネルを有し、かつ、見かけ上の密度は、当該チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の99%を超えない方法である。
【0007】
本発明の工程は、炭素系還元剤および硬化結合剤を含む集塊物を利用し、各集塊物は、少なくとも1つの成形された開口チャネルを有する。重要なことに、当該集塊物は、低い見かけ上の密度および低い容積密度を有する。特に、当該チャネルは、炉装入の空隙率を増加させ、従って、反応ガスの循環を増加させ、かつ、COガスの除去を促進する。結果として、当該工程は、相対的に高い収量、高い金属生成率、および低いエネルギー消費を示す。さらに、当該工程は、従来の設備および技法を使用して行われ得る。さらに、当該方法は、高い処理量の製造工程に拡張できる。
【0008】
本発明の方法は、対応する金属酸化物から、様々な金属および合金を生産するために使用され得る。特に、当該方法は、冶金グレードおよびソーラーグレードのケイ素を二酸化ケイ素から生産するために使用され得る。さらに、本発明の方法に従って生産された金属および合金は、化学的、電気的、機械的生産物および工程において広範な有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の方法の集塊物の第1の実施形態の斜視図を示す。
【図2】本発明の方法の集塊物の第2の実施形態の斜視図を示す。
【図3】本発明の方法の集塊物の第3の実施形態の断面図を示す。
【図4A】下記実施例の章に記載されたように調製された蜂巣状の豆炭の、斜視図を示す写真。
【図4B】下記実施例の章に記載されたように調製された蜂巣状の豆炭の、断面図を示す写真。
【図5】下記実施例の蜂巣状の豆炭を調製するために使用された多孔金型の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願明細書で使用される用語「金属」は、単一の金属または2以上の異なる金属を含む混合物(すなわち、合金)を意味する。さらに、用語「金属」は、半金属(メタロイド)(ケイ素およびホウ素など)を含む。本願明細書で使用される用語「中間の粒子サイズ」は、「質量中央径」とも知られ、粒子の50質量パーセントがより大きい直径を有し、かつ、粒子の50質量パーセントがより小さい直径を有する粒子直径として定義される。図表で、中間の粒子サイズは、累積算術曲線(重量パーセント対粒子直径のプロット)が50%ラインに交差する直径に対応する。
【0011】
本発明の金属の生産方法は、少なくとも1つの金属酸化物を含む原料、および炭素系還元剤および硬化結合剤を含む集塊物を、当該金属酸化物の当該金属への還元をもたらすために加熱する工程を含み、各集塊物は少なくとも1つの成形された開口チャネルを有し、見かけ上の密度は、当該チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の99%を超えない方法である。
【0012】
当該金属酸化物は、対応する金属を生産するために炭素熱還元を経ることができる金属酸化物のいずれでもあり得る。当該金属酸化物は、単離された(すなわち、実質的に純粋な)化合物または金属酸化物を含む鉱石であってもよい。当該金属酸化物は、様々な物理的形状(塊、顆粒、フレーク、粉末、砂、および砂利を含むが、これらに限定されない)を有することができる。さらに当該金属酸化物は、結合剤と配合された場合、集塊物の形態(豆炭およびペレットなど)を有してもよい。
【0013】
金属酸化物の例は、二酸化ケイ素、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化クロム、酸化ホウ素、酸化タングステン、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化カルシウム、酸化鉛、リン酸カルシウム、二酸化マンガン、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、および酸化バナジウム、ならびに上述の金属酸化物のいずれかを含む鉱石などの化合物を含むが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、当該金属酸化物はシリカ(すなわち、二酸化ケイ素)である。シリカの例は、結晶性シリカ(石英など)および非結晶性(非晶質の)シリカ(溶融石英、ヒュームドシリカ、シリカゲル、および沈降シリカなど)を含むが、これらに限定されない。
【0015】
当該金属酸化物は、単一の金属酸化物、または異なる金属もしくは異なる酸化状態の同一の金属の2以上の金属酸化物を含む混合物であり得る。金属酸化物の調製方法は、当該技術分野で周知である。多くの金属酸化物(金属酸化物を含む鉱石を含む)は、市販のものを利用できる。
【0016】
当該集塊物は、炭素系還元剤および硬化結合剤を含み、各集塊物は少なくとも1つの成形された開口チャネルを有し、かつ、見かけ上の密度が、当該チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の99%を超えない。
【0017】
本願明細書で使用される用語「成形された開口チャネル」は、設計によって当該集塊物に存在する肉眼で見える空洞を意味し、当該空洞は、当該集塊物の外面と連続している。当該チャネルは、一端で開口していてもよく(チャネルの終端)、または両端に開口していてもよい(チャネルを貫通)。当該チャネルは、いずれの規則的な、または不規則な幾何的形状(円柱状、細隙形、および円錐体を含む)であってもよい。
【0018】
当該チャネルの幅は、典型的に、少なくとも1mm、あるいは少なくとも3mmであり、当該幅は、当該チャネルの2つの対壁の間の最小距離として定義される。例えば、円柱状のチャネルの幅は当該円柱の直径であり、細隙形チャネルの幅は当該細隙の幅である。当該チャネルの幅は、典型的に、1〜50mm、あるいは1〜30mm、あるいは2〜20mmである。チャネルの長さは、典型的に、当該チャネルの幅の少なくとも2倍である。
【0019】
当該チャネルの数、幅、および深さは、当該集塊物が、当該チャネル(単数または複数)のない同一の集塊物の見かけ上の密度が99%を超えない、あるいは80%を超えない、あるいは75%を超えない見かけ上の密度を有するようにする。例えば、当該集塊物は、典型的に、当該チャネル(単数または複数)のない同一の集塊物の見かけ上の密度の10〜99%、あるいは40〜90%、あるいは60〜80%の見かけ上の密度を有する。
【0020】
集塊物の「見かけ上の密度」は、当該集塊物の質量の、当該集塊物の総体積に対する割合(当該集塊物の総体積は、固形物質、細孔(単数または複数)、および成形された開口チャネル(単数または複数)の総量である)として定義される。また、用語「固形物質」は、炭素系還元剤、硬化結合剤、および、任意に、下記の他の成分を含む、集塊した混合物を意味する。さらに、用語「細孔」は、設計によらずに当該集塊物に存在する、いずれの空隙を意味し、当該空隙は、当該集塊物の外面と連続していてもよいし、していなくともよい。また、細孔は、典型的に、1μmを超えない幅を有し、当該幅は、当該細孔の2つの対壁の間の最小距離として定義される。
【0021】
集塊物の見かけ上の密度は、当該集塊物の質量および総体積を測定することによって算出され得る。集塊物の質量は、天秤を使用して測定され得る。単純な三次元の形状(例えば、球状および円柱状)を有する集塊物の総体積は、当該集塊物の外形寸法から算出され得る。複雑な形状を有する集塊物の総体積は、当該チャネル(単数または複数)を有さない同一の集塊物に置き換えて水銀の体積を測定することによって、算出され得る。後者の場合、当該チャネル(単数または複数)を有さない同一の集塊物は、室温(約23±2℃)で水銀に浸される。当該水銀の体積の変化は、少なくとも1つの成形された開口チャネルを有する対応する集塊物の総体積に等しい。当該チャネル(単数または複数)を有さない同一の集塊物は、当該チャネル(単数または複数)を有する対応する集塊物と、同一の外形および固形物の組成を有する。当該チャネル(単数または複数)を有さない集塊物は、下記の、チャネル(単数または複数)を有する対応する集塊物で使用したものと同一の物質および方法を使用して調製され得る(炭素系還元剤、硬化性結合剤、およびいずれの任意の成分の混合物が、同一の外形を有するが、当該チャネル(単数または複数)を有さない集塊物を形成するように圧縮されることを除く)。
【0022】
当該集塊物は、粉砕されることなく、取扱作業および冶金炉の過酷な環境に耐える十分な強度を有する。例えば、当該集塊物は、典型的に、5〜150lbf(約22〜667N)、あるいは5〜70lbf(約22〜311N)、あるいは10〜40lbf(約44〜177N)の圧縮強度を有する。
【0023】
当該集塊物は、様々な形状およびサイズを有し得る(下記の、これらを生産するために使用される方法に依存する)。例えば、当該集塊物は、豆炭またはペレットであり得る。さらに、当該集塊物は、様々な規則的な、または不規則な三次元の外形(円柱状、立方状、立方体、円錐体、八面体、球状、半球状、および錐体を含むが、これらに限定されない)を有し得る。1つの実施形態では、当該集塊物は、蜂巣状の様式に配置された両端で開口した、平行するチャネルを有する。
【0024】
本発明の方法に有用な集塊物の例は、円柱状の豆炭(図1)、立方状の豆炭(図2)、および星型の豆炭(図3)を含むが、これらに限定されない。
【0025】
当該集塊物は、同一のもの、または少なくとも1つの下記の特性が異なる2以上の集塊物を含む混合物であり得る:見かけ上の密度、形状、チャネルの数、チャネルの寸法、質量、炭素系還元剤および/または硬化結合剤の濃度、ならびに炭素系還元剤および/または硬化結合剤の組成。
【0026】
当該炭素系還元剤は、対応する金属および合金への金属酸化物または鉱石の炭素熱還元に有効な、主に元素炭素を含むいずれの固形の微粒子であり得る。当該炭素系還元剤は、典型的に、0.01〜3000μm、あるいは0.1〜1000μm、あるいは10〜500μmの、中間の粒子サイズを有する。
【0027】
炭素系還元剤の例は、カーボンブラック、活性炭、石炭、コークス、および木炭を含むが、これらに限定されない。さらに、当該炭素系還元剤は、単一の還元剤、または2以上の異なる薬剤(それぞれ上記に記載の通り)を含む混合物であり得る。
【0028】
各集塊物における当該炭素系還元剤の濃度は、典型的に60〜98重量部、あるいは70〜90重量部、あるいは75〜85重量部であり、当該炭素系還元剤および当該硬化結合剤の総量は100重量部である。
【0029】
当該硬化結合剤は、粉砕されることなく、取扱作業および冶金炉の過酷な環境に耐える十分な圧縮強度の集塊物を与える、いずれの硬化した固形の結合剤であり得る。本願明細書で使用される用語「硬化結合剤」は、当該集塊物にわたって連続する三次元のネットワーク構造を有する架橋した結合剤を意味する。当該硬化結合剤は、典型的に、熱硬化ポリマー、架橋熱可塑性ポリマー、または熱的に重合可能なモノマーの架橋した生成物である。
【0030】
硬化結合剤の例は、硬化シリコーン樹脂、硬化ポリブタジエン、硬化ポリエステル、炭水化物およびジカルボン酸もしくは無水物の硬化した生成物、硬化エポキシ樹脂、硬化ポリビニルアルコール、硬化アミノ樹脂、硬化ポリウレタン、硬化ポリイミド、硬化フェノール樹脂、硬化シアネートエステル樹脂、硬化フラン樹脂、硬化ビスマレイミド樹脂、ならびに硬化アクリル樹脂を含むが、これらに限定されない。当該集塊物の1つの実施形態では、当該硬化結合剤は、ショ糖(砂糖)およびアジピン酸の硬化した生成物である。
【0031】
当該硬化結合剤は、単一の硬化結合剤、または2以上の異なる硬化結合剤(それぞれ上記に記載の通り)を含む混合物であり得る。さらに、当該硬化結合剤の濃度は、典型的に、2〜40重量部、あるいは10〜30重量部、あるいは15〜25重量部であり、当該炭素系還元剤および当該硬化結合剤の総量は100重量部である。
【0032】
下記のように、当該成分が金属酸化物の対応する金属への還元を阻害しない場合、当該炭素系還元剤および当該硬化結合剤に加え、当該集塊物は、少なくとも1つの添加成分をさらに含むことができる。添加成分の例は、繊維(ポリエチレン繊維および紙繊維など)、および金属酸化物を含むが、これら限定されない。特に、当該集塊物は、上記金属酸化物の少なくとも一部(すなわち、一部または全て)を、原料に含むことができる。当該集塊物に存在している場合、当該金属酸化物は、典型的に、0.01〜3000μm、あるいは0.1〜1000μm、あるいは10〜500μmの中間の粒子サイズを有する粒子の形態を有する。
【0033】
本発明の集塊物は、(i)炭素系還元剤および硬化性結合剤を含む混合物を、少なくとも1つの成形された開口チャネルを有する未集塊物に成形し、かつ(ii)当該未集塊物の硬化性結合剤を、当該チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の99%を超えない見かけ上の密度を有する集塊物を生産するために硬化することによって調製され得る。
【0034】
集塊物を調製する方法の工程(i)では、炭素系還元剤および硬化性結合剤を含む混合物は、少なくとも1つの成形された開口チャネルを有する未集塊物に成形される。
【0035】
当該炭素系還元剤は、本発明の集塊物について上記で記載され、例証された通りである。当該混合物における炭素系還元剤の濃度は、典型的に、60〜98重量部、あるいは70〜90重量部、あるいは75〜85重量部であり、当該炭素系還元剤および当該硬化性結合剤の総量は100重量部である。
【0036】
当該硬化性結合剤は、加熱した場合に硬化(すなわち、架橋)され得るいずれの結合剤でもあり得る。当該硬化性結合剤は、典型的に、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマーおよび架橋剤の混合物、または熱的に重合可能なモノマーの混合物である。当該硬化性結合剤が、常温および外気圧で固形物である場合、当該硬化性結合剤は、典型的に、0.01〜3000μm、あるいは0.1〜1000μm、あるいは10〜500μmの中間の粒子サイズを有する粒子の形態を有する。
【0037】
硬化性結合剤の例は、硬化性シリコーン樹脂、ポリブタジエン、不飽和ポリエステル、炭水化物およびジカルボン酸もしくは無水物の混合物、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ならびにアクリル樹脂を含むが、これらに限定されない。当該集塊物の1つの実施形態では、当該硬化性結合剤は、ショ糖およびアジピン酸の混合物である。ショ糖に対するアジピン酸のモル比は、典型的に、0.2〜1.2、あるいは0.4〜1.0、あるいは0.5〜0.7である。
【0038】
硬化性結合剤は、単一の硬化性結合剤、または2以上の異なる硬化性結合剤(それぞれ上記の通り)を含む混合物であり得る。さらに、硬化性結合剤を調製する方法は当該技術分野で周知である。多くの硬化性結合剤組成物は市販されている。
【0039】
当該混合物中の当該硬化性結合剤の濃度は、典型的に、2〜40重量部、あるいは10〜30重量部、あるいは15〜25重量部であり、当該炭素系還元剤および当該硬化性結合剤の総量は、100重量部である。
【0040】
当該成分が、本発明の工程において、当該混合物が、少なくとも1つの成形された開口チャネルを有する未集塊物を形成するのを妨害せず、当該結合剤の硬化を阻害せず、または、対応する金属への当該金属酸化物の還元を阻害しない場合、当該炭素系還元剤および硬化性結合剤を含む混合物は、添加成分をさらに含むことができる。添加成分の例は、繊維(ポリエチレン繊維および紙繊維など)、金属酸化物、および溶剤を含むが、これらに限定されない。特に、当該混合物は、上記の金属酸化物の少なくとも一部(すなわち、一部または全て)を、原料にさらに含むことができる。
【0041】
当該混合物は、少なくとも1つの溶剤をさらに含むことができる。当該溶剤は、当該混合物中の当該成分(すなわち、炭素系還元剤、硬化性結合剤、など)の分散を補助するため、当該未集塊物の形成の前に当該混合物の粘稠度を調整するため、または、当該混合物から形成された当該未集塊物における当該成分の凝集を改善するために使用してもよい。当該溶剤は、当該集塊物を調製する方法の工程(i)または工程(ii)において混合物中の、炭素系還元剤、硬化性結合剤、または他の成分と反応しない、非極性溶剤または極性(プロトン性、非プロトン性、または双極非プロトン性)溶剤のいずれでもあり得る。当該溶剤は、典型的に、当該硬化性結合剤の硬化温度を下回る、通常の沸点を有する。当該溶剤は、当該硬化性結合剤と、混和性または非混和性であってもよい。例えば、当該溶剤は、当該硬化性結合剤と、懸濁液または乳剤を形成してもよい。
【0042】
溶剤の例は、飽和脂肪族炭化水素(n−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンおよびドデカンなど)、脂環式炭化水素(シクロペンタンおよびシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレンなど)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなど)、ケトン(メチルイソブチルケトン(MIBK)など)、ハロゲン化アルカン(トリクロロエタンなど)、ハロゲン化芳香族炭化水素(ブロモベンゼンおよびクロロベンゼンなど)、アルコール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1,1−ジメチル−1−エタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、およびオクタノールなど)、ならびに水を含むが、これらに限定されない。さらに、当該溶剤は、単一の溶剤、または2以上の異なる溶剤(それぞれ、上記に記載され、例証された通りである)を含む混合物であり得る。
【0043】
溶剤の濃度は、典型的に、当該混合物の総重量に基づき、0〜70%(w/w)、あるいは20〜60%(w/w)、あるいは40〜50%(w/w)である。
【0044】
当該混合物は、炭素系還元剤、硬化性結合剤、およびいずれの任意の成分を合わせ(いずれの順序でもよい)、当該成分を完全に混合することによって調製され得る。混合は、当該技術分野で公知の技法(製粉、混合、および撹拌など)を使用し、バッチ工程または連続工程のいずれによっても達成され得る。混合は、典型的に、当該混合物中において成分が均一に分布するまで続けられる。当該混合物はまた、当該成分をスクリューフィーダ中で合わせることによっても調製され得、これは、生じた物質の圧縮(precompacting)および脱気の利点をもたらす。スクリューフィーダはまた、送り込んだ(infeed)粒子を粉砕することもでき、より好ましい大きさの粘度を、押出または成形のために達成する。いくつかの場合では、当該スクリューフィーダの工程によって発生する熱は、例えば、集塊の前に、当該結合剤を軟化することによって、有益であるかも知れない。さらに、二軸押出機は、連続的に当該成分を混合し、当該混合物を所望の形状の未集塊物に押出すのに使用され得る。
【0045】
当該混合物は、従来の方法(圧縮成形、射出成形、および押出など)を使用して、少なくとも1つの成形された開口チャネルを有する未集塊物に成形され得る。本願明細書で使用される用語「未集塊物」は、硬化することができるが、硬化していない結合剤を含む集塊物を意味する。例えば、当該混合物は、当該混合物を、得られた未集塊物の成形された開口チャネルに対応する開口部を含む金型を通して押出すことによって、所望の形状の未集塊物に成形され得る。
【0046】
本発明の集塊物を調製する方法の工程(ii)では、当該未集塊物の硬化性結合剤は、硬化される。当該硬化性結合剤は、当該未集塊物を、当該結合剤を硬化するのに十分な温度および時間加熱することによって、硬化され得る。当該未集塊物は、典型的に、当該硬化性結合剤、およびそれから生産される当該硬化結合剤の両方の分解温度を下回る温度で加熱される。特定の硬化性結合剤についての硬化条件は、当該技術分野で公知である。空気中での当該硬化性結合剤の安定性に依存して、当該未集塊物は、空気または不活性雰囲気(例えば、窒素またはアルゴン)中で加熱されてもよい。
【0047】
当該未集塊物は、従来の乾燥器、コンベヤー乾燥器、または炉で加熱され得る。当該未集塊物はまた、本発明の炭素熱還元工程において、炉の中で金属酸化物と加熱されることもでき、当該硬化性結合剤の硬化を、金属の生産前にもたらす。
【0048】
当該集塊物を調製する方法は、当該未集塊物の結合剤の硬化の前に、少なくとも部分的に溶剤を除去し、かつ/または部分的に硬化性樹脂を硬化するのに十分な温度および時間で、当該未集塊物を加熱する工程をさらに含み得る。当該得られた未集塊物は、柔らかいままであるが、加熱処理前の未集塊物よりも、粘着性が低く、より耐久性があるという利点を有する。
【0049】
金属を生産する本発明の方法によれば、原料中の金属酸化物のモル数に対する全炭素のモル数の比は、典型的に、化学量論量±20%(特定の金属酸化物の炭素熱還元についての平衡化学方程式に基づく)である。本願明細書で使用される「全炭素のモル」は、原料中の炭素系還元剤、結合剤、および、いずれの任意の炭素含有成分(例えば、木片)の炭素のモル数の合計を意味する。例えば、二酸化ケイ素の炭素熱還元において使用された全炭素の二酸化ケイ素に対するモル比は、典型的に、2±0.4(次の化学方程式に基づく:SiO+2C→Si+2CO)である。
【0050】
当該成分が、当該金属酸化物の対応する金属への還元を阻害しない場合、下記の記載のように、当該原料は、少なくとも1つの添加成分を含んでいてもよい。添加成分の例は、木片および石灰石を含むが、これらに限定されない。
【0051】
当該原料は、溶錬操作(特に、金属酸化物または金属酸化物を含む鉱石の炭素熱還元)で通常使用されるいずれの炉で加熱され得る。適した炉は、典型的に、当該工程の間、規則的な間隔で、融解状態にある金属を回収するための出銑を備えている。炉の例は、ブラスト炉およびアーク電気炉(プラズマアーク炉、DC−アーク炉、サブマージドアーク炉、および耐アーク性炉など)を含むが、これらに限定されない。それらの対応する酸化物からの様々な金属の炭素熱発生に適した炉の設計は、当該技術分野で周知である。例えば、サブマージドアーク炉は、典型的に、ケイ素およびフェロシリコンの生成に使用される。
【0052】
当該原料は、当該金属酸化物の当該金属への還元をもたらすために十分な温度かつ十分な時間で加熱される。加熱の温度および時間は、特定の金属酸化物、炉の設計、および原料の量に依存するだろう。ある金属酸化物は、金属融解に必要とされる温度よりも低い温度で還元され得るが、典型的に、当該原料は、得られた金属を融解するのに十分なほどに高い温度で加熱され、そのため、当該金属は、当該炉から迅速に除去され得る。特定の金属酸化物の炭素熱還元を実行する条件は、当該技術分野で公知である。
【0053】
本発明の方法は、当該炉から当該金属を回収する工程をさらに含むことができる。例えば、当該金属は、融解された金属を、生成サイクルの間規則的な間隔で出銑することで、当該炉から回収され得る。さらに、当該方法は、当該金属生成物を精製(すなわち、純化(purifying))する工程をさらに含むことができる。金属を精製する方法は、当該技術分野で周知であり、物理的方法(溶離、帯域融解、蒸留、脱気、真空融解、および濾過など)、および化学的方法(酸化、脱酸、金属間化合物の沈殿、およびエレクトロスラグ精製など)によって例証される。
【0054】
本発明の方法によって生産される金属の例は、ケイ素、鉄、アルミニウム、モリブデン、クロム、ホウ素、タングステン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、銅、カルシウム、鉛、リン、マンガン、ベリリウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、チタン、およびバナジウムを含むが、これらに限定されない。合金の例は、非鉄合金(銅−ベリリウム合金、ニッケル−ベリリウム合金、アルミニウム−ベリリウム合金など)、およびフェロ合金(フェロシリコン、フェロモリブデン、フェロマンガン、フェロクロム、フェロリン、フェロチタン、フェロボロン、フェロタングステン、およびフェロバナジウムなど)を含むが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の工程は、炭素系還元剤および結合剤を含む集塊物を利用し、各集塊物は、少なくとも1つの成形された開口チャネルを有する。重要なことに、当該集塊物は、低い見かけ上の密度および低い容積密度を有する。特に、当該チャネルは、炉装入の空隙率を増加させ、従って、反応ガスの循環を増加させ、かつ、COガスの除去を促進する。結果として、当該工程は、相対的に高い収量、高い金属生成率、および低いエネルギー消費を示す。また、当該集塊物は、粉砕されることなく、取扱作業および冶金炉の過酷な環境に耐えるのに十分な強度を有する。さらに、当該工程は、従来の設備および技法を使用して行われ得る。さらにまた、当該方法は、高い処理量製造工程に拡張できる。
【0056】
本発明の方法は、対応する金属酸化物から、様々な金属および合金を生産するのに使用され得る。特に、当該方法は、冶金グレードおよびソーラーグレードのケイ素を、二酸化ケイ素から生産するために使用され得る。さらに、本発明の方法によって生産された金属および合金は、化学的、電気的、および機械的生産物および工程において広範な有用性を有する。
【実施例】
【0057】
下記の実施例は、本発明の方法をよりよく例証するために示されたものであるが、本発明(これは請求項に描写されている)を制限することを意図したものではない。特に断りのない限り、当該実施例で報告された全ての部および割合は、重量による。下記の方法および物質は、当該実施例で使用した。
【0058】
金属ケイ素の収率は、以下の式を使用して算出した。
【数1】

ケイ素の理論収量は、下記の化学方程式を使用して、原料における二酸化ケイ素の総重量から算出した。
SiO+2C→Si+2CO
【0059】
木片:米マツの木片を、ウェアーハウザー(Weyerhaeuser)(オレゴン州、アルバニー)から入手し、0.5インチ(約1.27センチ)超のメッシュサイズを得るためにふるいにかけた。
【0060】
石英:99.2%のシリカ含有量、および0.5インチ〜2.5インチ(約1.27センチ〜約6.35センチ)のメッシュサイズを有する石英の塊。
【0061】
カーボンブラック:ふるい残分(325メッシュ)が最大300ppm、CTAB表面積が38m/g、DBP(フタル酸ジブチル)吸収が90mL/l00g、灰分含量が最大0.5%、および個々のペレット硬度(1.4〜1.7mm)が30gである、カーボンブラックのペレット(登録商標 Corax N 660(デグサ(Degussa)社)の下で販売されている)。
【0062】
糖:グラニュー糖(登録商標 Great Value(ウォルマート(Walmart)社)の下で販売されている)。
【0063】
アジピン酸(99%)は、アルファ エイサー(Alfa Aesar)(マサチューセッツ州、ワードヒル)から入手した。
【0064】
(実施例1)
この実施例は、カーボンブラックの蜂巣状の豆炭の調製を示す。カーボンブラック(45.4kg)、13.0kgの精製した糖、および6.5kgのアジピン酸を、55ガロン(約0.2立方メートル)の樹脂ライニング(plastic−lined)した鋼ドラム缶中で混合した。当該ドラム缶の内容物を、7時間、ドラム缶ローラーを使用して混合した。脱イオン水(47kg)を、当該混合物に加え、混合をさらに15時間続け、粘稠性のペーストを得た。
【0065】
次いで、当該混合物を、円柱状の未焼の蜂巣状の豆炭に、24kg/時間の速度で、ボンノー(Bonnot)3インチ(約7.6センチ)ツインパッカー(Twin−Packer)押出し機(480V、7hp)(多孔金型を備えている(図5参照))を使用して、押出した。当該豆炭を、コンベヤーのベルト(スチールメッシュ)上に、単層で置き、1.1m/分の速度で、熱風乾燥器に、260℃で、滞留時間4分で通した。当該乾燥器から出た時点での当該豆炭の温度は、一般的に、80℃を超えない。部分的に乾燥させた豆炭を、当該乾燥器の出口の近くに配置したファンの補助とともに、室温まで冷却した。
【0066】
当該豆炭を、乾燥器(ブルー(Blue)M、120V、30A)中、アルミニウムトレー上に置き、170℃まで、2℃/分の速度で、窒素雰囲気下で加熱した。5時間(170℃)後、当該乾燥器を切り、当該豆炭を室温まで冷却した。代表的な豆炭は、図4Aおよび図4Bに示した。
【0067】
(実施例2)
A120−KVA アーク電気炉(直径24インチ(約61センチ)のグラファイト炉、および直径6インチ(約15センチ)のグラファイト電極を備えている)に、石英塊(6.00kg)、2.78kgの木片、および2.48kgの実施例1の蜂巣状の豆炭を入れた。アークを打った約8時間後、当該炉の出銑穴を開け、ケイ素を取り出した。その後、約2時間おきに、全期間(60時間)の間、当該炉は出銑された。各出銑の後、当該炉を手作業でかき立て、原料、すなわち、豆炭、石英、および木片を、最初の充填の重量比で入れて、一定の充填深さを維持した。60時間の稼動の間、468kgの石英、171.1kgの蜂巣状の豆炭、および130.3kgの木片を当該炉に供給し、計124kgのケイ素(エネルギー消費は4249kwh)を生産した。稼動の最後の24時間の間、192kgの石英、77.4kgの蜂巣状の豆炭、および101.8kgの木片を当該炉に供給し、72.2kg(80.5%)のケイ素(固有のエネルギー消費は26.6kwh/kg Si)を生産した。当該ケイ素は、それぞれ平均4.2ppmwおよび47.9ppmw(グロー放電質量分析によって測定)のホウ素量およびリン量を有していた。
【0068】
(実施例3)
120−KVA アーク電気炉(直径24インチ(約61センチ)のグラファイト炉および直径6インチ(約15センチ)のグラファイト電極を備えている)に、6.00kgの石英塊および3.02kgの実施例1の蜂巣状の豆炭を入れた。アークを打った約9時間後、当該炉の出銑穴を開け、ケイ素を取り出した。その後、約2時間おきに、全期間(55時間)の間、当該炉は出銑された。各出銑の後、当該炉を手作業でかき立て、原料、すなわち、豆炭および石英を最初の充填の重量比で入れて、一定の充填深さを維持した。55時間の稼動の間、474kgの石英および232.2kgの蜂巣状の豆炭を当該炉の供給し、計131kgのケイ素(エネルギー消費は4073.1kwh)を生産した。稼動の最後の24時間の間、282kgの石英および142kgの蜂巣状の豆炭を当該炉に供給し、102.1kg(77.6%)のケイ素(固有のエネルギー消費は25.3kwh/kg Si)を生産した。当該ケイ素は、それぞれ平均2.8ppmwおよび16.7ppmw(グロー放電質量分析によって測定)のホウ素量およびリン量を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を生産する方法であって、前記方法は、少なくとも1つの金属酸化物を含む原料、ならびに炭素系還元剤および硬化結合剤を含む集塊物を、前記金属酸化物の前記金属への還元をもたらすために加熱する工程を含み、各集塊物は少なくとも1つの成形された開口チャネルを有し、かつ、見かけ上の密度が前記チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の99%を超えない方法。
【請求項2】
各集塊物は、前記チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の80%を超えない見かけ上の密度を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
各集塊物は、前記チャネルのない同一の集塊物の見かけ上の密度の75%を超えない見かけ上の密度を有する請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記集塊物は、豆炭またはペレットである請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記豆炭は、蜂巣状の豆炭である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記集塊物は、円柱状の形状を有する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記炭素系還元剤は、カーボンブラックおよび活性炭から選択される請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記硬化結合剤は、ショ糖およびアジピン酸の硬化した生成物である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記集塊物は、前記原料中の少なくとも一部の前記金属酸化物を含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記原料は、さらに木片を含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記原料は、アーク電気炉で加熱される請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記炉から前記金属を回収する工程をさらに含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記金属酸化物は、二酸化ケイ素である請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−535697(P2010−535697A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520235(P2010−520235)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/072050
【国際公開番号】WO2009/020890
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(506143975)ダウ コーニング コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】