説明

金属酸化物多孔質膜、及びそれを用いた表示素子

【課題】パターニング適性、基板との密着性、導電性に優れた金属酸化物多孔質膜を提供することであり、更にかかる金属酸化物多孔質膜を用いた駆動安定性に優れた表示素子を提供することである。
【解決手段】金属酸化物からなり、空隙率30%以上70%未満であり、且つ鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする金属酸化物多孔質膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物多孔質膜を関し、更にそれを用いた表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報をより簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
このような電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間に亘ってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩むといった欠点が生じることが知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、画像保持のために電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
即ち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は反射率が約40%と低く、白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属塩化合物やエレクトロクロミック材料を用いて、電気化学的な還元または酸化によって着色及び消色する方式が知られている。この方式は3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、コントラストに優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている。
【0007】
ところで、このような反射型ディスプレイの対向電極には、駆動安定性の観点から金属酸化物多孔質膜を用いる方式が知られている。関連する先行事例として密着性向上を目的として、様々な密着材を用いた金属酸化物膜の製造方法が開示されている。
【0008】
例えば、錫ドープ酸化インジウム粒子を含む金属酸化物膜を形成する方法として、被処理基板上に密着材としてシリケートマトリックスを用いた粒子分散液をスピンコート、印刷法などで塗布した後、加熱する方法が知られているが、シリケートマトリックスはエッチング阻害を起こし、パターン形成することが困難である(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
シリケートマトリックス以外の密着剤を用いて金属酸化物膜を形成する方法として、有機金属を結着材として作製された金属酸化物膜が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、有機金属を結着材として用いた金属酸化物膜は、結着材として機能している有機物が焼成時に分解するにあたり粒子同士の密着性が不十分になる懸念があり、多孔質膜とした場合の強度に関しても特に言及されていない。
【0010】
また、金属微粒子を結着材として用いた金属酸化物膜が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、焼成時に金属微粒子が融解して緻密な金属酸化物膜を形成するため、優れた密着性を有するものの、作製された金属酸化物膜は空隙率が低く、反射型ディスプレイの対向電極に用いた場合、充分な駆動安定性を得ることは困難であった。
【0011】
また、TFT上に金属酸化物多孔質膜を形成して対向電極とした表示素子を製造する場合において、TFT基板の耐熱温度の観点から、金属酸化物多孔質膜を250℃以下で形成する必要があるが、これら従来技術では低温焼成の際の課題などに特に言及はなく、パターニング適性、密着性などについては満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−42557号公報
【特許文献2】特開2004−22224号公報
【特許文献3】特開2005−243249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述したような従来の課題を解決するためのもので、その目的は、パターニング適性、基板との密着性、導電性に優れた金属酸化物多孔質膜を提供することであり、更にかかる金属酸化物多孔質膜を用いた駆動安定性に優れた表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記課題は、下記構成により達成される。
【0015】
1.金属酸化物からなり、空隙率30%以上70%未満であり、且つ鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする金属酸化物多孔質膜。
【0016】
2.前記金属酸化物が錫ドープ酸化インジウムであることを特徴とする前記1に記載の金属酸化物多孔質膜。
【0017】
3.前記金属酸化物が結晶性の高い金属酸化物Aと結晶性の低い金属酸化物Bの混合物であることを特徴とする前記1または2に記載の金属酸化物多孔質膜。
【0018】
4.前記結晶性の高い金属酸化物AのX線回折パターンのメインピーク半値幅をPa、結晶性の低い金属酸化物BのX線回折パターンのメインピーク半値幅をPbとしたとき、Pb/Paが1.5以上3.0未満であることを特徴とする前記3に記載の金属酸化物多孔質膜。
【0019】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載の金属酸化物多孔質膜を含む電極を有することを特徴とする表示素子。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、パターニング適性、基板との密着性、導電性に優れた金属酸化物多孔質膜、更にかかる金属酸化物多孔質膜を用いた駆動安定性に優れた表示素子を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】表示装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳述する。
【0023】
本発明は、反射型ディスプレイの対向電極を作製するにあたって、金属酸化物からなり、空隙率30%以上70%未満であり且つ鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする金属酸化物多孔質膜を対向電極とすることで前記課題の解決に至り、ここに技術開示するものである。
【0024】
以下、これらについて詳細に説明する。
【0025】
〔金属酸化物多孔質膜〕
(金属酸化物の種類)
本発明の金属酸化物多孔質膜で用いられる金属酸化物は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化ビスマスなどの金属酸化物が用いられ、透明性を有しない材料でも好ましく用いることができる。使用される金属酸化物の内、導電性の観点から錫ドープ酸化インジウム(ITO)が好ましく用いられる。
【0026】
また、これらの金属酸化物は2種以上を併用してもよいが、接触抵抗などの観点から、好ましくは同一の金属酸化物であるほうが好ましい。
【0027】
(金属酸化物多孔質膜の空隙率)
本発明の金属酸化物多孔質膜の空隙率は、基板に金属酸化物多孔質膜を固着する前後で質量を測り、その増分を金属酸化物多孔質膜の厚みより算出した体積で割り算出する。
【0028】
反射型ディスプレイの対向電極においては、金属酸化物多孔質膜の空隙率は30%以上70%未満である。空隙率が30%未満である場合、多孔質膜内での電解液のモビリティが制限され、駆動安定性が得られない懸念がある。また、空隙率が70%以上であると十分な膜強度が得られず、作製した金属酸化物多孔質膜のパターン形成ができない懸念がある。より好ましくは50%以上60%未満である。
【0029】
金属酸化物多孔質膜の空隙率は、1)BET法による比表面積から算出する方法、2)水銀圧入式ポロシメーターから算出する方法(ASTM D4404−84)、3)多孔質膜の密度と金属酸化物密度の比より算出する方法など、公知の方法で測定することができ、任意に選択できる。
【0030】
具体的には、BET比表面積測定装置としては日本ベル製BELSORP−mini、水銀圧入式ポロシメーターとしてはカルロエルバ製ポロシメーター2000を用い、公知の精密秤、膜厚測定機など公知の方法を用いて測定できる。
【0031】
例えば、基板ガラス及び基板ガラス上に作製した金属酸化物多孔質膜の質量を測定し、それぞれの差分を形成した金属酸化物多孔質膜の質量とした。金属酸化物多孔質膜の厚みから体積を算出し、金属酸化物多孔質膜の質量を体積で除し、密度を算出した。金属酸化物多孔質膜の密度を、金属酸化物の密度で除した値を金属酸化物多孔質膜の空隙率とすることができる。
【0032】
(金属酸化物多孔質膜の強度)
本発明の金属酸化物多孔質膜の強度として、一般的な鉛筆硬度として2H以上が必要である。
【0033】
これは金属酸化物多孔質膜を反射型ディスプレイの対向電極として用いる場合において、TFT上にパターン形成された金属酸化物多孔質膜を配置した電極を作製する方法が一般的ではあるが、前記強度が2H未満である場合、フォトリソグラフィ法などのパターン形成時において、エッチング、洗浄及び表示素子の駆動時に膜剥離が発生し所望の電極が得られない懸念がある。本発明において、膜強度に実質的な上限はなく、鉛筆硬度9Hでも特に問題なくパターン形成を行うことができる。具体的な膜強度は、例えば、市販の引っかき強度試験機など公知の方法を用いて求めることができる。
【0034】
なお、本発明における鉛筆硬度は、JIS K5600に従うものである。
【0035】
(金属酸化物多孔質膜の作製手段)
本発明の金属酸化物多孔質膜を作製する手段として、主に多孔質膜の表面積と導電性を担う金属酸化物Aと、製膜時に結着材として作用する結晶性の低い金属酸化物Bとの混合物を基板に塗布後、乾燥、焼成することで作製する方法も当該膜を作製するのに当たって有効な手段の一つである。この場合、金属酸化物A及び金属酸化物B以外の金属酸化物が含まれても構わない。
【0036】
ここで言う結晶性が低いとは、金属酸化物Aのメインピーク半値幅Paに対して、金属酸化物Bの同一ピークの半値幅をPbとした場合に、Pb>Paであることを言う。ここで言う半値幅とは、公知のX線散乱測定装置を用いて測定されたX線パターンにおいて、金属酸化物の回折パターンのうち最も強度(count)が大きい面指数を算出してメインピークとし、その半値全幅を半値幅とする。Pb/Paが1.5以上3.0未満であることが望ましい。
【0037】
Pb/Paが1.5未満である場合には、金属酸化物Aの結晶性が低く電極として充分な導電性を得られない懸念があるか、または金属酸化物Bの結晶性が高く膜形成時の粒界成長が不十分で所望の膜強度が得られない恐れがある。Pb/Paが3.0以上である場合には、金属酸化物Bの結晶性が低くすぎて焼成時に粒界成長が促進して所望の空隙率が得られない懸念があり、また金属酸化物A及び金属酸化物Bの結晶性の違いから、フォトリソグラフィ法を用いて所望のパターン形成が困難な可能性がある。Pb/Paの値はより好ましくはPb/Paが1.7以上2.5未満である。
【0038】
この金属酸化物Bは特に350℃以下の焼成プロセスにおいて、優れた膜強度を持つ金属酸化物多孔質膜を作製するのに有効である。金属酸化物Aと金属酸化物Bは実質的に同一組成であることが望ましい。ここで言う実質的に同一組成とは、金属酸化物組成中の構成金属元素と結着性金属酸化物の構成金属が同一であることを言う。
【0039】
一実施形態として、金属酸化物Aと金属酸化物Bとの混合物から作製した金属酸化物多孔質膜は、それぞれの半値幅が算出できない恐れがある。そのため、その場合にはそれぞれ単独でガラス基板上に、指定の条件で乾燥/焼成を行った場合のメインピークの半値幅を、本発明における金属酸化物Aまたは金属酸化物Bの半値幅と言う。
【0040】
結晶性がこの範囲にある同一の金属酸化物を用いることで、優れた強度及び空隙率を有する金属酸化物多孔質膜を形成することができる。
【0041】
金属酸化物多孔質膜中の金属酸化物Aの比率は、好ましくは60質量%以上95質量%未満であり、より好ましくは80質量%以上90質量%未満である。60質量%未満である場合、空隙がほとんどなく、期待される駆動安定性を得ることができない恐れがある。95質量%を超えると、膜強度及び導電性が低く充分な密着性を得られない恐れがあり、またパターン形成時のプロセスによって剥離の懸念がある。
【0042】
(金属酸化物の粒子径)
本発明に係る金属酸化物の粒子径について得に制限はないが、金属酸化物の平均一次粒子径は0.01μmから0.1μmが好ましく、0.02μmから0.05μmがより好ましい。
【0043】
平均一次粒子径が0.01μm未満である場合、電解液のモビリティが制限され、充分なコントラストが得られない恐れがある。平均一次粒子径が0.1μm以上である場合、金属酸化物多孔質膜の表面積が少なく、期待される駆動安定性が得られない恐れがある。結着材として実質的に同一の金属酸化物を用いる場合の平均一次粒子径については特に指定はないが、金属酸化物多孔質膜中の主体となる金属酸化物の平均一次粒子径や求められる空隙率によって適宜調整される。
【0044】
金属酸化物の平均一次粒子径は、TEM観察より直接観察する方法、BET法により得られた表面積から換算する方法など公知の方法で求めることができる。
【0045】
(金属酸化物多孔質膜の形成方法)
本発明における金属酸化物多孔質膜の形成方法として、多孔質膜を構成する金属酸化物微粒子を分散媒中に分散した金属酸化物分散液を作製し、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法、スプレーコート法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法などがある。金属酸化物の分散液を作製する場合に用いられる分散媒として、水、各種溶媒及びその混合物があるが、特に制限はない。
【0046】
(金属酸化物多孔質膜の焼成温度)
本発明の金属酸化物多孔質膜の焼成温度としては、250℃以下が好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。焼成温度が250℃を超えると、後述の電極として使用した場合に用いられている有機絶縁膜などが分解することにより、所望の機能が得られない恐れがある。また、200℃以下であればアクリル板やプラスチックフィルムを基材として用いて金属酸化物多孔質膜を形成することができるため好ましい。また、焼成雰囲気についても制限はなく、必要に応じて還元雰囲気下や真空下で焼成を行ってもよい。
【0047】
(金属酸化物多孔質膜の膜厚)
本発明の金属酸化物多孔質膜の膜厚は0.1〜10μmであり、より好ましくは0.3〜2.0μmとなる、膜厚が10μm以上になると焼成時の熱収縮などにより金属酸化物多孔質膜の剥離などが発生する懸念がある、また、膜厚が0.1μm以下である場合には、期待される駆動安定性が得られない恐れがある。
【0048】
具体的な膜厚の測定方法として、金属酸化物多孔質膜の厚みは断面を切り出し、TEM写真撮影を行い、100μmの範囲で等間隔に10点、厚みを計量し、その平均値を対向電極多孔質構造体の厚みとする方法や、AFMや触針式膜厚計 ビーコ製 DIKTAK 6mなどによる公知の方法でも算出できる。
【0049】
〔金属酸化物多孔質膜を用いた電極〕
本発明の金属酸化物多孔質を用いた電極は、後述するTFT上に形成された金属酸化物多孔質膜よりなっており、クロストークを防止するために所定の画素単位でパターニングされている。
【0050】
パターニング方法として、例えば、基板上に金属酸化物微粒子を塗布焼成した後、フォトリソグラフィ法によってパターン形成する方法や、インクジェット法または印刷法によって直接パターン形成する方法などがあるが、生産性を考慮すると、フォトリソグラフィ法によってパターン形成する方法が好ましく用いられる。この場合、使用される金属酸化物微粒子の種類によって大きくエッチングレートが異なるので、金属酸化物多孔質膜は実質的に同一な金属酸化物粒子で構成されていることが好ましい。
【0051】
(パターニングされた金属酸化物多孔質膜を含む電極作製プロセス)
フォトリソグラフィ法を例に挙げて説明する。
【0052】
TFTを含む任意の導電性基板上に、前述の方法を用いて金属酸化物多孔質層を形成した後、レジスト材を塗布する。その後、任意のパターンに露光現像して、レジスト材を硬化させた後、エッチング液で金属酸化物多孔質膜を除去し、レジスト剥離液を用いてレジスト材を除去することで、所望のパターンを形成された電極を作製することができる。
【0053】
(洗浄液の種類)
本発明に使用される使用される洗浄液は公知であれば特に制限はなく、例えば、横浜油脂工業製、無機アルカリ性洗浄剤L.G.Lなどが挙げられる。
【0054】
(レジスト材の種類)
本発明に使用される使用されるレジスト材は公知であれば特に制限はなく、例えば、東京応化工業製OFPR−800LB(ノボラック系樹脂)などが挙げられる。
【0055】
(エッチング液の種類)
本発明に使用されるエッチング液は公知であれば特に制限はなく、用いられる金属酸化物により適宜選択される。
【0056】
金属酸化物を錫ドープ酸化インジウムとした例を挙げると、塩化鉄水溶液、ヨウ素酸水溶液、リン酸水溶液、塩酸/硝酸混合液、蓚酸水溶液などが用いられる。この内、塩化鉄水溶液はエッチング速度が速く安定しており、一般的によく用いられている。また、蓚酸水溶液はエッチング特性も安定しており、エッチング液の経時安定性も発生しにくい、アルミニウムなどの配線に使用される合金をエッチングすることがないため、TFT上に金属酸化物多孔質膜を形成した場合には好ましく用いられる。
【0057】
ノニオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を用いてエッチング時の発泡を抑制し、残渣を抑制することも可能である。具体的には、ナフタレンスルホン酸ホルミアミド化合物、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド、フェニルフェノールスルホン酸ホルムアミド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド、パーフルオロアルケニルエチレンオキシドなどが挙げられる。具体的には、伸陽化学工業製ITOエッチャント(塩酸17.4%、塩化鉄15.2%)が挙げられる。
【0058】
(現像液の種類)
本発明に使用される使用される現像液は公知であれば特に制限はなく、例えば、トクヤマ製SD−1(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、2.38%)などが挙げられる。
【0059】
(剥離液の種類)
本発明に使用される使用される現像液は公知であれば特に制限はなく、2質量%NaOH水溶液などが用いられる。
【0060】
(露光/現像)
本発明に使用される露光現像装置としては、公知の製造技術を適宜選択して用いることができ、例えば、フォトリソグラフィ技術ハンドブック(発行:リアライズ理工センター/リアライズAT)に記載の装置などが挙げられる。
【0061】
〔TFT〕
TFTは、液晶ディスプレイ等で用いられている公知の半導体製造技術で使用されている材料を適宜選択して用いることができ、更に特開平10−125924号、同10−135481号、同10−190001号、特開2000−307172号の各公報等に記載されている有機化合物からなる有機TFTを用いてもよい。
【0062】
各画素ごとに形成されたTFTは、図示しない配線によって選択され、対応する透明画素電極を制御する。TFTは画素間のクロストークを防止するのに極めて有効である。TFTは、例えば、透明画素電極の一角を占めるように形成されるが、透明画素電極がTFTと積層方向で重なる構造であってもよい。
【0063】
TFTには、具体的にはゲート線とデータ線が接続され、各ゲート線に各TFTのゲート電極が接続され、データ線には各TFTのソース・ドレインの一方が接続され、そのソース・ドレインの他方は透明画素電極に電気的に接続される。なお、TFT以外の駆動素子は液晶ディスプレイ等の平面型表示素子に用いられているマトリックス駆動回路で、透明基板上に形成できるものであれば他の材料でもよい。
【0064】
図1は表示装置のブロック図である。各画素に対応する透明画素電極12とこれに対応するTFT13とがマトリックス状に配されており、容量の対向電極側が共通電極となる。TFT13のゲート電極にはゲート線(走査線配線)140が接続され、TFT13のソース、ドレインの他方はデータ線(信号線配線)150に接続されている。TFT13のソース、ドレインの他方は透明画素電極12に接続される。ゲート線140はゲート線駆動回路120に接続され、データ線150はデータ線駆動回路100、110に接続されている。ゲート線駆動回路120とデータ線駆動回路110、110とは、信号制御部130に接続されている。
【0065】
〔アプリケーション〕
本発明の金属酸化物多孔質膜はタッチパネルや電磁波シールドなどに好適に使用でき、金属酸化物多孔質膜を用いた電極は、還元または酸化によって着色または消色する材料を含む電解質組成物を含む表示素子(所謂電子ペーパー)、液晶表示素子、有機EL、無機ELプラズマディスプレイの電極などに好適に使用される。特に電子ペーパーの電極として用いた場合に、優れた駆動安定性を得ることができる。
【0066】
以下、本発明の金属酸化物多孔質膜を含む例として、還元または酸化によって着色または消色する材料を含む電解質組成物を含む表示素子(電子ペーパー)について詳細に述べる。
【0067】
〔表示素子の基本構成〕
表示素子においては、表示部には1つの対向する電極が設けられている。表示部に近い対向電極の1つである電極を透明電極、他方を対向電極とする。透明電極はITO電極等であり、対向電極は本発明の金属酸化物多孔質膜を含む金属酸化物多孔質電極である。透明電極と対向電極間には白色散乱粒子で形成された散乱層と、還元または酸化によって着色または消色する材料を含む電解質組成物が封止されている。
【0068】
(基板)
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。
【0069】
また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912号、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。
【0070】
更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体並びに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号公報(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。
【0071】
これらの支持体には、米国特許第4,141,735号明細書のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行ってもよい。
【0072】
本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板やガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0073】
(透明電極)
本発明の表示素子における透明電極について説明する。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0074】
電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては10Ω/□以下が好ましく、1Ω/□以下がより好ましい。
【0075】
透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。上記抵抗値を達成するために、低抵抗な金属部材からなるバスバーや集電グリッドなどを透明導電性基板上に形成させ、透明導電膜の抵抗を補う構成も好適に使用できる。集電グリッドの形成法としては、例えば、銀粒子ペーストをスクリーン印刷で基板上に塗布し焼成して集電グリッドとする方法が最も一般的ではあるが、もう少し精巧なグリッドを形成させる技術として、銅箔をエッチングして集電グリッドとする技術なども本発明に適用できる。
【0076】
集電グリッドは、細線からなるパターン上に、電解メッキまたは無電解メッキによって導電性金属をメッキした構成で作製することでパターンが形成することもできる。導電性の高い金属でメッキ被覆することで、集電グリッドの低抵抗化と高開口率を両立することができる。パターンを形成する方法としては特に限定されず、例えば、印刷法、エッチング法などを挙げることができる。
【0077】
銀細線を印刷方式で形成する場合には、印刷用インクに含まれる金属成分の種類、量、サイズ、形状などを調整することにより、細線部の形状や導電性を調整することが可能となる。細線を印刷で行う場合、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷方式を用いることができる。中でも、グラビア印刷及びインクジェット印刷は、細かいパターンを連続的に形成しやすいという観点で特に好ましく用いることができる。
【0078】
集電グリッドは、種々の金属や金属酸化物等からなる無機系導電性材料、ポリマー系導電性材料、無機有機複合型の導電性材料、カーボン系材料、またはこれらを任意に混合した導電性材料などで被覆されていてもよい。被覆層を形成することで電解質組成物からの腐食を抑制できる。
【0079】
(白色散乱粒子)
本発明で適用可能な白色散乱粒子としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0080】
これらの白色散乱粒子の内、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。用いる白色散乱粒子は、安定性の観点より無機及び/または有機物による表面処理を行ってもよい。
【0081】
〈白色散乱粒子の粒子径分布〉
白色散乱粒子においては、遮蔽性から粒子径分布が0.1μm以上、1.5μm未満の範囲に極大値を有することが好ましい。
【0082】
具体的な測定方法として、測定対象の白色散乱粒子を不溶性の溶媒中に分散させた後、例えば、レーザー散乱式粒径分布測定器(例えば、SALD2200(島津製作所製)やマルバーン製ゼータサイザー1000)等を用いて測定してもよいし、あるいは白色散乱粒子を直接、透過型電子顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡で観察し、得られた粒子画像から粒径を求める方法等を用いることができる。この時、球換算の体積粒子径をその白色散乱粒子の直径と定義する。
【0083】
(脱気工程)
本発明において電解質組成物を脱気することで酸素を除去し、不活性ガスに置換することで安定性の向上を図ることも可能である。具体的な脱気操作として、減圧法、凍結脱気法、膜脱気法などが挙げられ、電解質組成物の物性によって適宜選択できる。
【0084】
電解質組成物は白色散乱粒子や増粘剤を含み高粘度となりやすく、また水分の混入が望ましくないなどの理由から減圧法が好ましく用いられる。具体的には、例えば、市販の真空乳化機で分散/脱気操作を行い、白色散乱粒子表面及び凝集体内部の脱気が行われた後、電解質組成物中に不活性ガスを溶解させることで、表示素子への影響がある空気及び酸素の再溶解を抑制することができる。使用される不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスなどが好適に用いられる。
【0085】
電解質組成物中の溶存酸素濃度は、市販のDO計などを用いることにより測定ができ、好ましくは溶存酸素濃度が1.0ml/l以下、より好ましくは0.5ml/L以下にすることで、安定性に優れた電解質組成物を得ることができる。
【0086】
〔着色または消色を繰り返す材料〕
(金属塩化合物)
本発明に係る電気化学的な還元または酸化によって発色または消色する発色材料とは、酸化還元に伴い溶解、析出を行うことで発色、消色を行う金属塩化合物を含む。ここで言う金属塩化合物とは、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、好ましいのは銀、ビスマスである。銀塩化合物が特に好ましい。
【0087】
本発明に係る銀塩化合物とは、銀、または銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は特に問わない。
【0088】
本発明に係る電解質組成物に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質組成物の安定性が向上する。
【0089】
(エレクトロクロミック化合物)
本発明における発色材料とは、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により発色または消色する作用をもつエレクトロクミック材料を含む。
【0090】
本発明に係る「電気化学的な還元または酸化によって着色と消色をする材料」とは、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により発色または消色する機能(作用)をもつエレクトロクミック(以下において、適宜「EC」と略す。)化合物乃至それを含む材料を言う。
【0091】
本発明に係るエレクトロクロミック化合物(EC化合物)としては、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により発色または消色する機能(作用)を示す限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0092】
例えば、EC化合物として、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化クロム、酸化マンガン、プルシアンブルー、窒化インジウム、窒化錫、窒化塩化ジルコニウム等の無機化合物に加え、有機金属錯体、導電性高分子化合物及び有機色素が従来知られている。
【0093】
エレクトロクロミック(EC)特性を示す有機金属錯体としては、例えば、金属−ビピリジル錯体、金属フェナントロリン錯体、金属−フタロシアニン錯体、希土類ジフタロシアニン錯体、フェロセン系色素などが挙げられる。
【0094】
EC特性を示す導電性高分子化合物としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリフェニレンジアミン、ポリベンジジン、ポリアミノフェノール、ポリビニルカルバゾール、ポリカルバゾール及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0095】
また、例えば、特開2007−112957号公報に記載されているような、ビスターピリジン誘導体と金属イオンからなる高分子材料もEC特性を示す。
【0096】
EC特性を示す有機色素としては、ビオロゲン等ピリジニウム系化合物、フェノチアジン等アジン系色素、スチリル系色素、アントラキノン系色素、ピラゾリン系色素、フルオラン系色素、ドナー/アクセプター型化合物類(例えば、テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン)等が挙げられる。その他、酸化還元指示薬、pH指示薬として知られている化合物を用いることもできる。
【0097】
〈色調によるEC化合物の分類〉
本発明に係るエレクトロクロミック(EC)化合物を、色調変化の点で分類すると、下記3つのクラスに分けられる。
【0098】
クラス1:酸化還元によりある特定の色から別の色に変化するEC化合物
クラス2:酸化状態で実質無色であり、還元状態である特定の着色状態を示すEC化合物
クラス3:還元状態で実質無色であり、酸化状態である特定の着色状態を示すEC化合物。
【0099】
本発明の表示素子においては、目的、用途により上記クラス1からクラス3のEC化合物を適宜選択することができる。
【0100】
[クラス1のEC化合物]
クラス1のEC化合物は、酸化還元によりある特定の色から別の色に変化するEC化合物であり、その取り得る酸化状態において、二色以上の表示が可能な化合物である。
【0101】
クラス1に分類される化合物としては、例えば、Vは酸化状態から還元状態へ変化することで橙色から緑色に変化し、同様にRhは黄色から暗緑色に変化する。
【0102】
有機金属錯体の多くはクラス1に分類され、ルテニウム(II)ビピリジン錯体、例えば、トリス(5,5′−ジカルボキシルエチル−2,2′−ビピリジン)ルテニウム錯体は+2〜−4価の間で、順にオレンジ色から紫、青、緑青色、褐色、赤錆色、赤へと変化する。希土類ジフタロシアニン類の多くも、このようなマルチカラー特性を示す。例えば、ルテチウムジフタロシアニンの場合、酸化に従い順次、紫色から青、緑、赤橙色へと変化する。
【0103】
また、導電性ポリマーもその多くはクラス1に分類される。例えば、ポリチオフェンは酸化状態から還元状態へ変化することで青から赤へと変化し、ポリピロールは褐色から黄色へと変化する。また、ポリアニリン等では、マルチカラー特性を示し酸化状態の紺色から順に青色、緑色、淡黄色へと変化する。
【0104】
クラス1に分類されるEC化合物は、単一の化合物で多色表示が可能であると言うメリットを有するが、反面実質無色と言える状態を作れないと言う欠点を有する。
【0105】
[クラス2のEC化合物]
クラス2のEC化合物は、酸化状態で無色乃至は極淡色であり、還元状態である特定の着色状態を示す化合物である。
【0106】
クラス2に分類される無機化合物としては下記化合物が挙げられ、各々還元状態でカッコ内に示した色を示す。WO(青)、MnO(青)、Nb(青)、TiO(青)等。
【0107】
クラス2に分類される有機金属錯体としては、例えば、トリス(バソフェナントロリン)鉄(II)錯体が挙げられ、還元状態で赤色を示す。
【0108】
クラス2に分類される有機色素としては、特開昭62−71934号、特開2006−71765号の各公報に記載されている化合物、例えば、テレフタル酸ジメチル(赤)、4,4′−ビフェニルカルボン酸ジエチル(黄色)、1,4−ジアセチルベンゼン(シアン)、あるいは特開平1−230026号、特表2000−504764号の各公報に記載されているテトラゾリウム塩化合物等が挙げられる。
【0109】
クラス2に分類される色素として、最も代表的な色素はビオロゲン等ピリジニウム系化合物である。ビオロゲン系化合物は表示が鮮明であること、置換基を変えることなどにより色のバリエーションを持たせることが可能であることなどの長所を有しているため、有機色素の中では最も盛んに研究されている。発色は、還元で生じた有機ラジカルに基づく。
【0110】
ビオロゲン等ピリジニウム系化合物としては、例えば、特表2000−506629号公報を初めとして下記特許文献に記載されている化合物が挙げられる。
【0111】
特開平5−70455号、特開平5−170738号、特開2000−235198号、特開2001−114769号、特開2001−172293号、特開2001−181292号、特開2001−181293号、特表2001−510590号、特開2004−101729号、特開2006−154683号、特表2006−519222号、特開2007−31708号、特開2007−171781号、特開2007−219271号、特開2007−219272号、特開2007−279659号、特開2007−279570号、特開2007−279571号、特開2007−279572号の各公報等。
【0112】
以下に、本発明に用いることができるビオロゲン等ピリジニウム化合物を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0113】
【化1】

【0114】
【化2】

【0115】
[クラス3のEC化合物]
クラス3のEC化合物は還元状態で無色乃至は極淡色であり、酸化状態である特定の着色状態を示す化合物である。
【0116】
クラス3に分類される無機化合物としては、例えば、酸化イリジウム(暗青色)、プルシアンブルー(青)等が挙げられる(各々酸化状態でカッコ内に示した色を示す)。
【0117】
クラス3に分類される導電性ポリマーとしては例は少ないが、例えば、特開平6−263846号公報に記載のフェニルエーテル系化合物が挙げられる。
【0118】
クラス3に分類される色素としては多数の色素が知られているが、スチリル系色素、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系色素、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール等のアゾール系色素等が好ましい。
【0119】
以下に、本発明に用いることができるスチリル系色素、及びアジン系色素、アゾール系色素を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0120】
【化3】

【0121】
【化4】

【0122】
本発明の好ましい態様においては、前記EC色素と共に電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩を併用し、黒表示、白表示及び黒以外の着色表示の3色以上の多色表示を行う。この場合、該金属塩が還元されて黒表示を行うため、EC色素としては酸化により発色するクラス3のEC化合物が好ましく、特に発色の多様性、低駆動電圧、メモリー性等の点でアゾール系色素が好ましい。本発明において、最も好ましい色素は下記一般式(L)で表される化合物である。
【0123】
【化5】

【0124】
以下、本発明に係る前記一般式(L)で表されるエレクトロクロミック化合物について説明する。
【0125】
前記一般式(L)において、Rlは置換もしくは無置換のアリール基を表し、Rl、Rlは各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−Rl、酸素原子または硫黄原子を表し、Rlは水素原子、または置換基を表す。
【0126】
Rlが置換基を有するアリール基を表す場合、置換基としては特に制限はなく、例えば、以下のような置換基が挙げられる。
【0127】
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルフォニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基(例えば、ホスホノエチル基、ホスホノプロピル基、ホスホノオキシエチル基)等を挙げることができる。また、これらの基は更にこれらの基で置換されていてもよい。
【0128】
Rlとしては、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、更に好ましくは置換もしくは無置換の2−ヒドロキシフェニル基または4−ヒドロキシフェニル基である。
【0129】
Rl、Rlで表される置換基としては特に制限はなく、前記Rlのアリール基上への置換基として例示した置換基等が挙げられる。好ましくはRl、Rlは、置換基を有してもよい、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基である。
【0130】
Rl、Rlは互いに連結して、環構造を形成してもよい。Rl、Rlの組み合わせとしては、双方共に置換基を有してもよいフェニル基、複素環基である場合、もしくはいずれか一方が置換基を有してもよいフェニル基、複素環基であり、他方が置換基を有してもよいアルキル基の組み合わせである。
【0131】
Xとして好ましくは、>N−Rlである。Rlとして、好ましくは水素原子、アルキル基、芳香族基、複素環基、アシル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、アシル基である。
【0132】
本発明の表示素子においては、前記一般式(L)で表される化合物が、電極表面と化学吸着または物理吸着する基を有していることが好ましい。本発明に係る化学吸着とは、電極表面との化学結合による比較的強い吸着状態であり、本発明に係る物理吸着とは、電極表面と吸着物質との間に働くファンデルワールス力による比較的弱い吸着状態である。本発明に係る吸着性基は、化学吸着性の基である方が好ましく、化学吸着する吸着性基としては、−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rはアルキル基を表す)が好ましい。
【0133】
一般式(L)で表されるアゾール色素の中でも、特に下記一般式(L2)で表されるイミダゾール系色素が特に好ましい。
【0134】
【化6】

【0135】
一般式(L2)において、Rl21、Rl22は脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、アシル基、スルホンアミド基、スルファモイル基を表し、Rl23は芳香族基もしくは芳香族複素環基を表し、Rl24は水素原子、脂肪族基、芳香族基、芳香族複素環基を表し、Rl25は水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基を表す。
【0136】
これらRl21からRl25で表される基は、更に任意の置換基で置換されていてもよい。但し、Rl21からRl25で表される基の少なくとも1つは、その部分構造として−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rはアルキル基を表す)を有する。
【0137】
Rl21、Rl22で表される基としては、アルキル基(特に分岐アルキル基)、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基が好ましい。Rl23としては、置換もしくは無置換のフェニル基、5員もしくは6員環複素環基(例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基等)が好ましい。Rl24としては置換もしくは無置換の、フェニル基、5員もしくは6員環複素環基、アルキル基が好ましい。Rl25としては、特に水素原子もしくはアリール基が好ましい。
【0138】
また、一般式(L2)を電極上に固定する際、これらRl21からRl25で示される基の少なくとも一つに、部分構造として−P=O(OH)、−Si(OR)(Rはアルキル基を表す)を有することが好ましく、特にRl23もしくはRl24で示される基の部分構造として、−Si(OR)(Rはアルキル基を表す)を有することが好ましい。
【0139】
以下に、一般式(L2)で表されるEC色素の具体的化合物例、及び一般式(L2)には該当しないが、一般式(L)に含まれるEC色素の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0140】
【化7】

【0141】
【化8】

【0142】
【化9】

【0143】
【化10】

【0144】
【化11】

【0145】
【化12】

【0146】
【化13】

【0147】
【化14】

【0148】
【化15】

【0149】
【化16】

【0150】
【化17】

【0151】
(電解質組成物)
本発明で言う「電解質組成物」とは、一般に、水などの溶媒に溶けて溶液がイオン伝導性を示す物質(以下、「狭義の電解質組成物」と言う)を言うが、本発明の説明においては、狭義の電解質組成物に電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質(「広義の電解質」)と言う。
【0152】
[支持電解質]
本発明において用いられる支持電解質としては、電気化学の分野または電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。塩類としては特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用できる。
【0153】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0154】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF、更には下記式で表される化合物が挙げられる。
【0155】
【化18】

【0156】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0157】
本発明に用いられる支持電解質としては4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級スピロアンモニウム塩が好ましい。また、対アニオンとしてはClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PFが好ましく、特にBFが好ましい。
【0158】
電解質塩の使用量は任意であるが、一般的には電解質塩は溶媒中に上限としては20M以下、好ましくは10M以下、更に好ましくは5M以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01M以上、好ましくは0.05M以上、更に好ましくは0.1M以上存在していることが望ましい。
【0159】
固体電解質の場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を電解質組成物中に含むことができる。
【0160】
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、CuS、AgS、CuSe、AgCrSe2等のカルコゲニド、CaF、PbF、SrF、LaF、TlSn、CeF等の含F化合物、LiSO、LiSiO、LiPO等のLi塩、ZrO、CaO、Cd、HfO、Y、Nb、WO、Bi、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiAlF、AgSBr、CNHAg、RbCu16Cl13、RbCuCl10、LiN、LiNI、LiNBr等の化合物が挙げられる。
【0161】
(イオン性液体)
また、本発明の電解質組成物にはイオン性液体を含んでもよい。
【0162】
イオン性液体は常温溶融塩とも言われ、融点が100℃以下の塩である。この塩は同数のカチオンとアニオンから構成されており、分子構造によって融点が室温以下の物質も数多く存在し、これらは溶媒をまったく加えなくても室温で液体状態である。イオン性液体は、強い静電的な相互作用をもっているため、蒸気圧がほとんどないことが大きな特徴であり、高温でも蒸発がなく揮発しない。
【0163】
本発明に用いるイオン性液体としては、一般的に研究・報告されている物質ならばどのようなものでも構わない。特に有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。
【0164】
本発明で用いるイオン性液体とは、式Qで表され、20〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃、更に好ましくは20〜40℃、特に20℃で液体として存在する塩のことを指し、粘度(25℃)は、常温で融体である限り特に制限されないが、好ましくは1〜200mPa・sである。更に、式中Qで表されるカチオン成分はオニウムカチオンが好ましく、更に好ましくはアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオンである。
【0165】
上述のイオン性液体について具体的に詳述すると、上式中のQとしては、R、R、R、R=CR、R=CR[ここで、RからRは互いに独立して、水素、飽和または不飽和の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基、R−X−(R−Y−)−(式中、Rは炭素数4以下のアルキル基、Rは炭素数4以下のアルキレン基、X及びYは酸素原子または硫黄原子、nは0〜10の整数を示す)を表し、これらの基は置換基を有していてもよい]から成る群から選択されるアンモニウム及び/またはホスホニウムイオン、R=CR−R−RC=N、R−R−S、R=CR−R−RC=P(ここで、R、R及びRは、前記で定義したものと同じであり、そしてRは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレン基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい)からなる群から選択される第四級アンモニウム及び/またはホスホニウムイオン、更には下記一般式で表される窒素、硫黄及び燐原子から選ばれる原子を1、2または3個含む窒素、硫黄及び燐原子含有複素環から誘導されるアンモニウムイオン、スルホニウムイオンまたはホスホニウムイオンなどを挙げることができる。
【0166】
【化19】

【0167】
式中、R及びRはこの上で定義した通りであり、ZはN、N=C、S、PあるいはP=Cを含む4〜10員環を構成しうる原子を指し、この構成する原子には置換基を有していてもよい。
【0168】
上述の中で、RからRの具体的な例はとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの直鎖または分枝を有するアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどのシクロアルキル基、無置換あるいはハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、水酸基、低級アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、カルボキシル基、アセチル基、プロパノイル基、チオール基、低級アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ)、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基などの置換基を1〜3個有するフェニル、ナフチル、トルイル、キシリル等のアリール基、ベンジルなどのアラルキル基などを挙げることができる。
【0169】
また、Rの具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル基などのアルキル基などが挙げられ、Rとしてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基などのアルキレン基などを挙げることができる。更にRの具体的な例はとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基、フェニレンなどのフェニレン基などを挙げることができる。
【0170】
また、式中のAで表される対アニオンとしては、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、フルオロスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩、フッ化アルキルスルホン酸塩または水素硫酸塩を表す。
【0171】
更に、国際公開第95/18456号パンフレット、特開平8−259543号公報、特開2001−243995号公報、電気化学第65巻11号923頁(1997年)、EP−718288号、J.Electrochem.Soc.,Vol.143,No.10,3099(1996)、Inorg.Chem.1996,35,1168〜1178等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩なども本発明に応じては適時選択して用いることができる。
【0172】
(固体化)
電解質組成物の安定性の確保や外部への流出を抑制するため、化学架橋剤により硬化させる方法(特開2007−163865号公報)や、光重合組成物(特開2007−141658号公報)を用いる方法なども好適に適用される。
【0173】
(増粘剤)
本発明の表示素子においては、電解質組成物に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0174】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色散乱粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類、ポリビニルアセタール類である。
【0175】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0176】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり、封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0177】
柱状構造物は基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は、表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0178】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合は、その高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合は、スペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0179】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の透明状態及び着色状態の制御方法は、エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位や銀イオンの析出過電圧を基に決められることが好ましい。
【0180】
例えば、一般式(A)で表される化合物と銀化合物を対向電極間に有する表示素子の場合、酸化側で黒以外の着色状態を示し、還元側で黒色状態を示す。この場合の制御方法の一例としては、一般式(A)で表される化合物の酸化還元電位より貴な電圧を印加することで一般式(A)で表される化合物を酸化し黒以外の着色状態を示し、一般式(A)で表される化合物の酸化還元電位と銀化合物の析出過電圧の間の電圧を印加することで一般式(A)で表される化合物を還元し白色状態に戻し、銀化合物の析出過電圧より卑な電圧を印加することで銀を電極上に析出させ黒色状態を示し、析出した銀の酸化電位と一般式(A)で表される化合物の酸化還元電位の間の電圧を印加することで析出した銀を溶解して消色する方法が挙げられる。
【0181】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明で言う単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号公報の図5に記載されている回路を用いることができる。
【実施例】
【0182】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0183】
実施例1
《表示素子EP−101の作製》(発色材料=銀塩方式)
〔透明電極の作製〕
ガラス基板上に、スパッタ装置を用いて厚さ1000nm、ピッチ140μm、電極幅130μmのITO層を形成し、透明電極とした。
【0184】
〔対向電極の作製〕
TFT基板は純水中に洗浄液(横浜油脂工業製L.G.L、無機アルカリ性洗浄剤)を加えた水溶液中に浸漬し、超音波洗浄機を用いて5min洗浄を行い、更に充分に純水ですすぎ80℃、2時間オーブンで乾燥させた。
【0185】
金属酸化物Aとして、シーアイ化成製ITO粒子分散液ITRT15WT%−G30(平均一次粒子径25nm、固形分15質量%)、1.0質量部と、金属酸化物Bとして、ULVAC製ITOインクITO1Dn(平均一次粒子径4nm、固形分20質量%)、0.1質量部とを、室温で30min混合し、MIKASA製スピンコーターを用いて塗布操作を行った。80℃、5min予備乾燥を行った後、オーブンで230℃、60min焼成し、金属酸化物多孔質膜を形成した。
【0186】
作製された金属酸化物多孔質膜の膜厚は、500nmになるようにスピンコート条件を調整した。その後、中性洗剤で洗浄した後、純水ですすぎ、80℃、2時間オーブンで乾燥させた。
【0187】
次にレジスト材、東京応化製OFPR−800LBをMIKASA製スピンコーターを用いて、1000rpm、20secで塗布した。この時のレジスト材の膜厚は2.0μmであった。続いて、フォトマスクを用いてピッチ100μm、金属酸化物多孔質膜の開口率が50%になるようにパターン露光した。このときの露光量は100mJ/cm(405nm)であった。続いて、現像液トクヤマ製現像液SD−1、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38%中に浸漬して100秒保持した。
【0188】
その後、120℃、30minオーブンでポストベーク処理を行った。その後、ITOエッチング液、伸陽化学工業製ITOエッチャント(塩酸17.4%、塩化鉄15.2%)中に20min浸漬エッチング処理を行い、更に水酸化ナトリウム水溶液2質量%に浸漬してレジストを剥離した。
【0189】
パターン形成された金属酸化物多孔質膜は、純水中に洗浄液(横浜油脂工業製L.G.L、無機アルカリ性洗浄剤)を加えた水溶液中に浸漬し、超音波洗浄機を用いて5min洗浄を行い、更に充分に純水ですすぎ、80℃、2時間オーブンで乾燥させた。
【0190】
〔電解質組成物の作製〕
5mMの過塩素酸リチウム、酸化チタン(平均一次粒径:0.25μm)を30質量%、SP−220(積水化学製スペーサー粒子SP−220、40μm)を0.05質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)を4質量%含むγ−ブチロラクトン溶液に、0.8Mのトシル酸銀及び支持電解質塩として1.33mol/Lのメルカプトトリアゾールを溶解させて電解液組成物を調製した。
【0191】
得られた電解質組成物を窒素ガス(純度99.99%)存在下において、プライミクス製真空乳化機TKアジホモミクサーを用いて分散/脱気操作を行った。攪拌翼の回転数、6000rpmで攪拌/分散操作を行いながら、日本ビュッヒ製ダイヤフラムポンプV710を用いて、20Torr、60minで真空脱気操作を行った。操作時のジャケット温度は50℃であった。
【0192】
〔表示素子の作製〕
透明電極上及び対向電極をオレフィン系封止材シール材で封止した後、真空注入方式で電解質組成物を封入することで表示素子EP−101を作製した。
【0193】
《表示素子EP−102の作製》
金属酸化物Bとして、ULVAC製ITOインクITO1Dn(平均一次粒子径4nm、固形分20質量%)、0.1質量部を0.2質量部にした以外は、EP−101同様に作製した。
【0194】
《表示素子EP−103の作製》
金属酸化物Aとして、シーアイ化成製ITO粒子分散液ITRT15WT%−G30(平均一次粒子径25nm、固形分15質量%)、1.0質量部を住友金属鉱山SUFP−HX、0.15質量部とトルエン0.85質量部にした以外は、EP−101同様にしてEP−103を作製した。
【0195】
《表示素子EP−104の作製》
酢酸インジウム1質量部、ジヘキシルアミン0.95質量部、DMF9質量部及びn−ブチルカルビトール2質量部を混合し、80℃、2時間加熱撹拌して透明溶液を得た。t−ブトキシ錫(IV)をインジウムと錫の元素含有比率が100:6となるように添加し、有機金属ITOを作製した。
【0196】
金属酸化物Bとして、ULVAC製ITOインクITO1Dn、0.1質量部に代えて有機金属ITO、0.3質量部した以外は、EP−101と同様にしてEP−104を作製した。
【0197】
《表示素子EP−105の作製》
金属酸化物Aとして、シーアイ化成製ITO粒子分散液ITRT15WT%−G30(平均一次粒子径25nm、固形分15質量%)、1.0質量部を住友金属鉱山SUFP−HX、0.15質量部とトルエン0.85質量部にした以外は、EP−104と同様にしてEP−105を作製した。
【0198】
《表示素子EP−106の作製》
ヘリウムガス圧力66.66Paの条件下において、ガス中蒸発法を用いて、平均粒子径9nmのインジウム−錫合金分散液を得た。ガス中には溶媒としてα−テルピネオール、分散剤としてドデシルアミンを20:1になるような条件にしておいた。
【0199】
インジウム−錫合金分散液にアセトンを加えてデカンテーションを行った後、溶媒置換をしてインジウム−錫合金分散液(トルエン溶媒)を作製した。得られたIn濃度は3質量%に調整した。
【0200】
金属酸化物Bとして、ULVAC製ITOインクITO1Dn、0.1質量部に代えてインジウム−錫合金分散液、0.3質量部とした以外は、EP−101と同様にしてEP−106を作製した。
【0201】
《表示素子EP−107の作製》
金属酸化物Aとして、シーアイ化成製ITO粒子分散液ITRT15WT%−G30(平均一次粒子径25nm、固形分15質量%)、1.0質量部を住友金属鉱山SUFP−HX、0.15質量部とトルエン0.85質量部にした以外は、EP−106と同様にしてEP−107を作製した。
【0202】
《表示素子EP−108の作製》
オーブンでの焼成温度を200℃、60minにした以外は、EP−101と同様にしてEP−108を作製した。
【0203】
《表示素子EP−109の作製》
オーブンでの焼成温度を200℃、60minにした以外は、EP−106と同様にしてEP−109を作製した。
【0204】
《表示素子EP−110の作製》(発色材料=EC方式)
〔電解質組成物の作製〕
5mMの過塩素酸リチウム、酸化チタン(平均一次粒径:0.25μm)を30質量%、SP−220(積水化学製スペーサー粒子SP−220、40μm)を0.05質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)を4質量%含むγ−ブチロラクトン溶液に、0.2Mの例示化合物110(特開2008−52172号公報記載)を溶解させて電解質組成物を調製した。それ以外はEP−101と同様にして、EP−110を作製した。
【0205】
【化20】

【0206】
《表示素子EP−111の作製》
電解質組成物をEP−110と同様にした。その他はEP−106と同様にして、EP−111を作製した。
【0207】
《各特性値の測定及び評価》
EP−101〜EP−111において、それぞれ金属酸化物A半値幅Pa、金属酸化物B半値幅Pb及びPb/Paを表1に示す。それぞれガラス基板上に金属酸化物単独で実施例と同様の乾燥/焼成条件で製膜したものを、株式会社リガク製X線小角散乱測定装置RINT−TTRIIを用いて回折パターン、強度及び半値幅の値を得た。X線はCu−K線であり、10[deg]から70[deg]の範囲を1[deg/min]の速さで0.02[deg]おきに計数管を回転させる条件で測定を行った。以上より得られた結果を表1に示す。
【0208】
【表1】

【0209】
また、下記の方法によって得られた結果を表2に示す。
【0210】
(金属酸化物多孔質膜の厚み)
金属酸化物多孔質膜の厚みは断面を切り出し、TEM写真撮影を行い、100μmの範囲で等間隔に10点、厚みを計量し、その平均値を対向電極多孔質構造体の厚みとした。EP−101〜EP−111の厚みは、全て1μmであった。
【0211】
(金属酸化物多孔質膜の空隙率)
基板ガラス及び基板ガラス上に作製した金属酸化物多孔質膜の質量を測定し、それぞれの差分を形成した金属酸化物多孔質膜の質量とした。金属酸化物多孔質膜の厚みから体積を算出し、金属酸化物多孔質膜の質量を体積で除し、密度を算出した。金属酸化物多孔質膜の密度を、金属酸化物の密度で除した値を金属酸化物多孔質膜の空隙率とした。
【0212】
(金属酸化物多孔質膜の膜強度)
安田精機製作所製鉛筆引っかき強度試験機ELECTRIC SYSTEM PENCIL SCRATCH HARDNESS TESTER553−M1を用いて鉛筆硬度を算出した。
【0213】
(パターニング)
L/S100μmのテストパターンでパターン形成を行い、20倍で10視野光学顕微鏡で確認を行った。
【0214】
○:剥離、ワレがほとんど認められない
△:剥離、ワレが一部にある
×:剥離、ワレがある。
【0215】
(多孔質膜の表面比抵抗)
ダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて、金属酸化物多孔質膜の表面比抵抗を四端子法で測定し算出した。
【0216】
(密着性)
基板を10枚に分割し、それぞれの基板に接着剤(エポキシ樹脂)を用いてピンを固定し、充分に乾燥させた。このスタッドピンに対してセバスチャン法を用いて引張り試験を行い、密着性を評価した。測定された10点の単位面積当りの引き上げ力の平均値を密着性とした(kgf/mm)。
【0217】
(駆動安定性)
各表示素子について、公知のパッシブマトリックス回路を用いて、駆動実験を行った。はじめに、黒表示で550nmでの反射率が10%となる駆動条件を求め、この条件で白表示(白化)と黒表示(黒化)を連続駆動させて初期の黒反射率が80%になるまでの回数を測定した。
【0218】
但し、EP−110及びEP−111については、エレクトロクロミック色素の最大吸収波長の反射率が30%になるところを駆動条件とした。
【0219】
【表2】

【0220】
EP−101〜107から明らかなように、所望空隙率と膜強度を有さない金属酸化物多孔質膜を銀塩方式によって発色または消色する発色材料を用いた表示素子の対極電極として用いた場合、パターニング不良や充分な駆動安定性が得られないことがわかる。
【0221】
一例として示した同一金属酸化物を結着材として用いた場合には、所望の空隙率及び強度を有する金属酸化物多孔質膜を得ることができ、パターニング可能である上に密着性及び導電性に優れ、表示素子の対極電極として使用した場合に、優れた駆動安定性を有することがわかる。
【0222】
また、EP−108及びEP−109より、同一の金属酸化物を用いて結晶性が1.5<Pb/Pa<3.0の範囲にある場合、焼成温度がより低温になっても充分な強度を有する膜を形成することがわかる。
【0223】
更にEP−110及び111より、エレクトロクロミック方式によって発色または消色する発色材料を用いた表示素子の対極電極として用いた場合においても、本発明の金属酸化物多孔質膜が優れた駆動安定性を有することがわかる。
【符号の説明】
【0224】
12 透明画素電極
13 TFT
100、110 データ線駆動回路
120 ゲート線駆動回路
130 信号制御部
140 ゲート線(走査線配線)
150 データ線(信号線配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなり、空隙率30%以上70%未満であり、且つ鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする金属酸化物多孔質膜。
【請求項2】
前記金属酸化物が錫ドープ酸化インジウムであることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物多孔質膜。
【請求項3】
前記金属酸化物が結晶性の高い金属酸化物Aと結晶性の低い金属酸化物Bの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物多孔質膜。
【請求項4】
前記結晶性の高い金属酸化物AのX線回折パターンのメインピーク半値幅をPa、結晶性の低い金属酸化物BのX線回折パターンのメインピーク半値幅をPbとしたとき、Pb/Paが1.5以上3.0未満であることを特徴とする請求項3に記載の金属酸化物多孔質膜。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属酸化物多孔質膜を含む電極を有することを特徴とする表示素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−275132(P2010−275132A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127483(P2009−127483)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】