説明

釣り用リール及び釣り情報表示システム

【課題】釣り用リールの構成の簡素化を実現する。
【解決手段】この釣り用リールは、釣りに関する第2情報を表示する第2表示部63と各種のデータを保持する記憶部67とを有する釣り情報表示装置60に有線又は無線により接続可能であり、釣り情報表示装置60に有線又は無線により接続されるリール本体1と、リール本体1に装着されリールに関する第1情報を表示する第1表示部5と、釣り情報表示装置60の記憶部67に保持されたデータを元にリール動作の制御を行う第1リール制御部31と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リール、特に、釣りに関する情報を表示する表示部と各種のデータを保持する記憶部とを有する釣り情報表示装置に有線又は無線により接続可能な釣り用リールに関する。また、本発明は、釣り用リール及び釣り情報表示装置を有する釣り情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣り用リールは、リール本体と、リール本体に装着されたスプールと、スプールを回転させるハンドルと、リール本体の上部に装着されるカウンタケースと、カウンタケースの上面に設けられたスイッチ操作部と、カウンタケースの上面に設けられ水深表示用の表示部を有する表示装置とを備えている。表示部は、たとえば液晶ディスプレイであり、棚位置や現在の仕掛けの水深等のリールに関する第1情報を表示することができる。
【0003】
また、一般に、釣り船には、魚群探知機や全地球測位システム(GPS)等の釣りに関する第2情報を収集可能な情報収集装置が搭載されている。このような情報収集装置には、第2情報を表示可能な表示部が設けられている(たとえば、特許文献1参照)。この種の情報収集装置は、一般に、釣人から離れた位置に配置されることが多い。このため、船頭は、表示部に表示された釣りに関する情報を釣人に口頭で提供している。
【特許文献1】特開2002−142623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の情報収集装置には、表示部が設けられているので、第2情報を得ることができる。しかし、情報収集装置は釣人から離れた位置に配置されているので、釣人には、たとえば船頭から口頭で第2情報が提供されることとなり、第2情報をリアルタイムに得るのは困難である。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、第2情報を表示可能な釣り情報表示装置を釣人の近傍に設けることが考えられる。このような釣り情報表示装置を釣人の近傍に設けることにより、第2情報が釣り情報表示装置に表示され、第2情報を迅速に得ることができる。
【0006】
しかし、この種の釣り情報表示装置において、各種の第2情報を表示させるには、釣り情報表示装置に設けられたスイッチ操作部を操作する必要がある。たとえば魚群探知機から得られる魚の棚位置等の第2情報を表示させるとき、釣り情報表示装置に設けられたスイッチ操作部を操作して第2情報を表示させる。
【0007】
このとき、釣り情報表示装置で得られた第2情報をもとに現在の棚位置をリールにセットすることがある。リールに棚位置をセットする操作は、カウンタケースの上面に設けられたスイッチ操作部で行わなければならない。このため、各種の操作を行う毎に、リールと釣り情報表示装置との間を往来しなければならず、各種の操作の操作性が低下するおそれがある。
【0008】
また、リールの制御が複雑になってくると、リールに設けられる記憶部のデータ保持容量を大きくする必要があり、リールのコストアップを招く。
【0009】
本発明の課題は、釣り用リールの構成の簡素化を実現することにある。
【0010】
本発明の別の課題は、釣り用リールと情報表示装置を含むシステムにおいて、各種の操作の操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明1に係る釣り用リールは、釣りに関する第2情報を表示する第2表示部と各種のデータを保持する記憶部とを有する釣り情報表示装置に有線又は無線により接続可能であり、釣り情報表示装置に有線又は無線により接続されるリール本体と、リール本体に装着されリールに関する第1情報を表示する第1表示部と、釣り情報表示装置の記憶部に保持されたデータを元にリール動作の制御を行う第1リール制御部と、を備えている。
【0012】
この場合は、釣り情報表示装置の記憶部に多くのデータを保持できるので、リールの構成を簡素化できる。
【0013】
発明2に係る釣り用リールは、発明1において、釣り情報表示装置は、釣り船に搭載された魚群探知機に有線又は無線により接続可能であり、第2情報は魚群探知機により収集された情報である。
【0014】
発明3に係る釣り用リールは、発明1又は2において、釣り情報表示装置の第2表示部の表示を制御可能な外部制御手段をさらに備えている。
【0015】
この釣り用リールでは、釣り情報表示装置を制御可能な外部制御手段を有している。このため、たとえば釣り情報表示装置に設けられた各種の操作を行うスイッチ操作部や、各種の表示を行う表示部等の制御を、たとえば釣り用リールに設けられたスイッチ操作部によって行うことができるので、各種の操作の操作性を向上できる。
【0016】
発明4に係る釣り情報表示システムは、釣り用リールと釣り情報表示装置とを有している。釣り用リールは、釣り情報表示装置に有線又は無線により接続されるリール本体と、リール本体に装着されリールに関する第1情報を表示する第1表示部と、釣り情報表示装置の記憶部に保持されたデータを元にリール動作の制御を行う第1リール制御部と、を有する。釣り情報表示装置は、釣り用リールに有線又は無線により接続され、釣りに関する第2情報を表示する第2表示部と、各種のデータを保持する記憶部と、を有する。
【0017】
発明5の係る釣り情報表示システムは、発明4において、釣り情報表示装置は釣り用リール及び第2表示部の制御を行う制御部を有している。
【0018】
発明6に係る釣り情報表示システムは、発明4又は5において、釣り情報表示装置は、釣り船に搭載された魚群探知機に有線又は無線により接続可能であり、第2情報は魚群探知機により収集された情報である。
【0019】
発明7に係る釣り情報表示システムは、発明4から6のいずれかにおいて、釣り用リールは、釣り情報表示装置の第2表示部の表示を制御可能な外部制御手段をさらに備えている。
【0020】
発明8に係る釣り情報表示システムは、発明4から7のいずれかにおいて、釣り情報表示装置は釣り用リールを制御する第2リール制御部をさらに備えている。そして、第1リール制御部は釣り用リールのリール動作の一部分を制御可能であり、第2リール制御部は釣り用リールのリール動作の他部分を制御可能である。
【0021】
この釣り情報表示システムでは、たとえば第1リール制御部によってリール側でモータの回転制御等の必要最低限の制御のみを行い、第2リール制御部によって釣り情報表示装置側で棚停止機能、誘い機能や自動しゃくり機能等の付加的な制御を行うことができる。このため、釣り情報表示装置を用いずにリール単独で使用する場合には、必要最低限の制御のみ行えるので、リール制御の構成が容易になるとともに、各種の操作の操作性を向上できる。また、釣り情報表示装置をリールに接続して使用する場合には、釣り情報表示装置側で付加的な制御を行えるので、リール自体を拡張することなく、釣り情報表示装置側でのみ逐次的に機能拡張を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のような本発明では、釣り用リールの構成の簡素化を実現することができる。また、釣り用リールと情報表示装置を含むシステムにおいて、各種の操作の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態を採用した電動リールは、図1に示すように、釣竿Rに装着されるリール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3と、リール本体1の上部に設けられたケース部材4とを備えている。
【0024】
リール本体1は、釣竿Rに装着されるものであり、左右1対の側板7a、7bとそれらを連結する複数の連結部8とからなるフレーム7と、フレーム7の左右を覆う左右の側カバー9a、9bとを有している。ハンドル2側の側カバー9bには、ハンドル2の図示しない回転軸が回転自在に支持されている。
【0025】
リール本体1の内部には、ハンドル2に連結されたスプール10が回転自在に支持されている。スプール10の内部には、スプール10を糸巻き上げ方向に回転駆動するモータ12が配置されている。また、側カバー9bのハンドル2側側面には図示しないクラッチ機構を操作するためのクラッチレバー11が配置されている。後部の連結部8の側板7a側には図示しない外部電源及び別体で設けられた後述する釣り情報表示装置60を接続するためのリールコード19が装着されている。
【0026】
ケース部材4は、図1に示すように、リール本体1の上部に配置されたアルミニウム合金製のケースであり、内部の空間に各種の電気部品が収納されている。ケース部材4の上面には、透明樹脂製の表示窓を介して仕掛けの水深や棚位置を水面からと底からとの2つの基準でリールに関する情報を表示するための液晶ディスプレイからなる第1表示部5と、第1表示部5の周囲に配置された操作キー部6とが設けられている。操作キー部6は、後述する釣り情報表示装置60の第2表示部63の表示制御等の各種の制御を行うスイッチとしても機能する。
【0027】
第1表示部5は、図2に示すように、中央に配置された4桁の7セグメント表示の水深表示領域5aと、その下方に配置された3桁の底水深表示領域5bと、水深表示領域5aの図4右側に配置された変速段数表示領域5cとを有している。また、第1表示部5には、「底から」、「学習」、「指定」、「下巻」、「修正」、「入力」、「糸送止」、「0セット」の8つの文字を表示可能である。「底から」の文字は、水深表示モードが底からモードの時に表示される。底からモードとは、仕掛けの水深を底基準で表示するモードである。なお、通常は、仕掛けの水深は水面基準(上からモード)で表示される。また、「学習」から「入力」までの文字は、糸巻モードの種類を示しており、いずれかが択一的に選択されると選択された糸巻モードの文字が表示される。
【0028】
操作キー部6は、第1表示部5の図2右側に上下に並べて配置された変速キーSK及びモータキーPWと、図2左側に上下に並べて配置された底メモキーSM及びモードキーMDとを有している。
【0029】
モータキーPWは、モータ12をオン、オフするとともに、オン時間によりモータ12を増速するためのトグルスイッチである。
【0030】
変速キーSKは、駆動されたモータ12を増減速するためのキーであり、上下の2つのスイッチ(上スイッチSK1及び下スイッチSK2)と中立位置とを有するシーソー型のスイッチである。上スイッチSK1を押すと増速し、下スイッチSK2を押すと減速する。また、モータ12を駆動していないときに上スイッチSK1を所定時間以上押すと表示モードを「上から」と「底から」との間で切り換えできる。また、下スイッチSK2を所定時間以上押すと糸送りモード(繰り出し時にクラッチを切った状態でモータ12を駆動させて糸送り速度を速くするモード)をオン、オフできる。
【0031】
底メモキーSMは、仕掛けが底に到達したときに押されるスイッチであり、そのときの水深が底として設定される。この底メモキーSMを所定時間以上押すと、釣り糸が切れたときになどに水深表示の0点を新たな位置にセットできる。
【0032】
モードキーMDは、5種の糸巻モードを設定するためのスイッチであり、たとえばこれを1回押すと学習モードに設定され、2回連続して押すと指定モード、3回連続して押すと下巻モード、4回連続して押すと修正モード、5回連続して押すと入力モードにそれぞれ糸巻モードが設定される。
【0033】
操作キー部6は、後述する釣り情報表示装置60の第2表示部63の表示制御等を行うことも可能である。たとえば操作キー部6を操作することにより、第2表示部63に表示されるメニュー等を選択できる。
【0034】
ケース部材4の内部には、図3に示すように、水深表示制御やモータ駆動制御等を行うCPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータからなるリール制御部30を有している。リール制御部30には、操作キー部6の各種キー、スプール10の回転位置及び方向を検出するためのスプールセンサ41、スプールセンサ41からの所定パルス毎に値が変化するスプールカウンタ42が接続されている。また、リール制御部30には、各種の警報を出力するためのブザー43、各種の表示を行うための第1表示部5、各種のデータを記憶する記憶部45、モータ12をPWM駆動するFETを含むPWM駆動回路44、及び他の入出力部が接続されている。さらに、リール制御部30には、リールに関する第1情報を外部に送信したり、釣り情報表示装置60及び情報
集約装置70を介して魚群探知機53やGPS54からの釣りに関する第2情報を受信するための情報通信部50が接続されている。
【0035】
情報通信部50は、図1及び図3に示すように、リールコード19を介した有線通信によって、釣り情報表示装置60に設けられた情報通信部51に接続されている。
【0036】
釣り情報表示装置60は、図1に示すように、本体部材64と、本体部材64に装着され各種の情報を表示可能な第2表示部63と、第2表示部63の周囲に配置され各種の操作を行う操作キー部62と、本体部材64の両側部に配置され情報通信部51に接続されるアンテナ部65とを有している。
【0037】
本体部材64は、図1に示すように、各種の電気部品が収納される金属製の第1部材64bと、第2表示部63が設けられる合成樹脂製の第2部材64aとを有している。合成樹脂製の第2部材64aの両側部には、金属製の凸部からなるアンテナ部65がそれぞれ形成されている。
【0038】
釣り情報表示装置60の内部には、図3に示すように、表示制御等を行うCPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータからなる情報表示制御部61を有している。情報表示制御部61には、情報通信部51、操作キー部62の各種キー、各種の表示を行うための第2表示部63が接続されている。
【0039】
情報通信部51は、図3に示すように、リールに設けられた情報通信部50と有線通信可能であり、情報集約装置70に設けられた情報通信部52と無線通信可能である。リールと釣り情報表示装置60とは、ソケット式のリールコード19により連結され電力及び情報を送受信できる。また、釣り情報表示装置60と図示しない外部電源とは、鰐口式のコードにより連結され、これにより電力が供給されている。釣り情報表示装置60と情報集約装置70とは、たとえばBluetoothやWi−Fi等の無線通信技術を用いて接続されている。リールと釣り情報表示装置60との間及び釣り情報表示装置60と情報集約装置70との間は、双方向通信が可能である。
【0040】
操作キー部62は、第2表示部63の表示制御等の各種の制御を行うスイッチである。操作キー部62は、釣り情報表示装置60側の制御だけでなく、リール側の制御を行うことができる。たとえば操作キー部62の操作により、棚停止等の制御を行ったり、モータ12の回転制御等を行うことができる。
【0041】
第2表示部63は、図7から図9に示すように、カラーTFT方式の液晶ディスプレイであって、リールから得られたリールに関する第1情報と、情報集約装置70から得られた魚群探知機53やGPS54からの釣りに関する第2情報とを重畳させて表示可能である。たとえば、リールからの釣り糸の負荷データや糸長データ等を魚群探知機53からのデータをもとに補正して表示したり、魚群探知機53からの情報とリールからの情報を複合画面にて表示させているとき、水深表示の履歴をグラフ表示させたりすることができる。
【0042】
情報集約装置70は、図3に示すように、魚群探知機53やGPS54と接続されており、魚群探知機53やGPS54からの情報を集約して記憶し、釣り情報表示装置60と双方向通信が可能である。情報集約装置70の内部には、表示制御等を行うCPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータからなる情報集約制御部71を有している。情報集約制御部71には、情報通信部52、操作キー部72の各種キー、各種の情報を記憶するための記憶部73が接続されている。
【0043】
情報通信部52は、図3に示すように、釣り情報表示装置60に設けられた情報通信部51と無線通信可能であり、魚群探知機53やGPS54と有線通信可能である。
【0044】
操作キー部72は、船頭の知らせたい情報、たとえば仕掛けを下ろす等の指示情報を入力可能である。この入力情報は記憶部73に記憶され、釣り情報表示装置60に送信されて表示される。ここでは、従来、船頭がマイクを用いて指示していた内容を釣り情報表示装置60に表示させることができるので、情報伝達が確実に容易になる。
【0045】
次に、リール制御部30によって行われるリールの主な制御処理を図4以降に示す制御フローチャートに従って説明する。
【0046】
電動リールに外部電源が接続されると、図4に示すステップS1において初期設定が行われる。ここでは、各種のフラグをリセットしたり、表示モードを釣りモードに設定する等の処理を実行する。
【0047】
ステップS2では、第1表示部5及び第2表示部63に対する表示処理を行う。ここでは、第2表示部63において表示モードが釣りモードのときには、図7に示すように、算出された水深表示や速度表示を行う。また、第2表示部63において通信モードのときには、図8に示すように、通信モードの初期画面を表示する。この通信モードの初期画面では、通信メニューとして、たとえば「魚群探知機情報」、「GPS情報」の2つのメニューが表示される。これらの2つの釣りに関する情報を操作キー部6の操作により選択可能である。
【0048】
ここで、魚群探知機情報とは、魚群探知機53から得られる釣りに関する第2情報の処理を行うものである。GPS情報とは、釣りに関する第2情報であって、GPS54から得られる位置情報の表示を行うものである、ここから図9に示すように、釣りを行う場所の魚群の情報や水温などの釣りに関する情報を図形や数値により得ることができる。
【0049】
ステップS3では、操作キー部6の各種キーの操作によるキー入力の割り込みがなされたか否かを判断する。ステップS3においてキー入力がなされると、ステップS6に移行し、キー入力処理を行う。
【0050】
ステップS4では、スプール10が回転したか否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41の出力により判断する。スプール10が回転していると判断すれば、ステップS4からステップS7に移行する。ステップS7では、通信モードであるか否かの判断を行い、通信モードのときにはステップS8に移行して、表示モードを通信モードから釣りモードに切り換える。通信モードではないとき、及びステップS8の処理が終了すると、ステップS9の各動作モード処理に移行する。
【0051】
ステップS5では、その他の指令がなされたか否かを判断する。その他の指令がなされるとステップS5からステップS10に移行し、指令に応じたその他の処理を行う。
【0052】
ステップS6のキー入力処理では、図5のステップS11でモードキーMDが操作されたか否かを判断する。ステップS12では、変速キーSK又はモータキーPWが操作されたか否かを判断する。ステップS13では他のキーが操作されたか否かを判断する。
【0053】
モードキーMDが操作されたと判断するとステップS11からステップS15に移行し、表示モードが釣りモードか否かを判断する。釣りモードのときにはステップS16に移行し、表示モードを通信モードに切り換える。通信モードのときにはステップS17に移行し表示モードを釣りモードに切り換える。表示モードが通信モードに切り換えられると、情報通信部50を制御して釣り情報表示装置60との通信が可能になり、図4のステップS2での表示処理で図8に示す初期画面が表示される。
【0054】
変速キーSK又はモータキーPWが操作されるとステップS12からステップS18に移行する。ステップS18では、表示モードが釣りモードか否かを判断する。釣りモードと判断するとステップS19に移行し、変速キーSK又はモータキーPWの操作されたキーに応じたモータ制御処理を行う。たとえば、モータキーPWが押圧操作されるとモータ12をオン、オフする。変速キーSKにおいては、上スイッチSK1を押圧操作されると増速処理し、下スイッチSK2が押圧操作されると減速処理する。
【0055】
通信モードのときには、ステップS20に移行し、カーソルの移動によりメニューを制御するメニュー制御処理を実行する。
【0056】
ステップS20のメニュー制御処理では、上スイッチSK1又は下スイッチSK2により第1表示部5上でカーソルの移動を行い、中央のスイッチの押圧によりメニューの選択を行う。たとえば、図8の通信メニューでは、上スイッチSK1又は下スイッチSK2を押すと、カーソルがメニューの項目を上下に移動して中央のスイッチの押圧操作によりメニューが選択され、情報通信部50から情報が受信され、次の処理に移る。そして、上スイッチSK1又は下スイッチSK2によりカーソルを上下に移動していくつかの選択処理を行うと、図9に示すような釣り場での魚群探知機53からの釣りに関する第2情報を表示可能になる。
【0057】
ステップS9の各動作モード処理では、図6のステップS41でスプール10の回転方向が糸繰り出し方向か否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41のいずれのリードスイッチが先にパルスを発したか否かにより判断する。スプール10の回転方向が糸繰り出し方向と判断するとステップS41からステップS42に移行する。
【0058】
ステップS42では、スプールセンサ41の所定パルス毎に減少するスプールカウンタ42の値から記憶部45に記憶されたデータを読み出し、繰り出された糸長を算出しさらに糸長から水深LXを算出する。この得られた水深LXがステップS2の表示処理で表示される。このときの第1表示部5の画面例を図2に、第2表示部63の画面例を図7に示す。この釣りモードの各動作モード処理では、第1表示部5及び第2表示部63に仕掛けの水深や棚位置やスプール10の速度などの情報が表示される。
【0059】
ステップS43では、得られた水深LXが棚位置に一致したか、つまり、仕掛けが棚に到達したか否かを判断する。ステップS44では、他の釣りモードか否かを判断する。他の釣りモードではない場合には、各動作モード処理を終わりメインルーチンに戻る。
【0060】
水深が棚位置に一致するとステップS43からステップS45に移行し、仕掛けが棚に到達したことを報知するためにブザー43を鳴らす。他の釣りモードの場合には、ステップS44からステップS46に移行し、指定された他の釣りモードを実行する。
【0061】
スプール10の回転が糸巻き取り方向と判断するとステップS41からステップS49に移行する。ステップS49では、スプールセンサ41の所定パルス毎に増加するスプールカウンタ42の値から記憶部45に記憶されたデータを読み出し、繰り出された糸長を算出しさらに糸長から水深LXを算出する。この得られた水深LXもステップS2の表示処理で表示される。
【0062】
ステップS50では、水深が船縁停止位置に一致したか否かを判断する。船縁停止位置まで巻き取っていない場合にはメインルーチンに戻る。
【0063】
船縁停止位置に到達するとステップS50からステップS51に移行する。ステップS51では、仕掛けが船縁にあることを報知するためにブザー43を鳴らす。ステップS44では、モータ12をオフする。これにより魚が釣れたときに取り込みやすい位置に魚が配置される。この船縁停止位置は、たとえば水深6m以内で所定時間以上スプール10が停止しているとセットされる。
【0064】
この電動リールでは、リールから得られる第1情報と、魚群探知機53及びGPS54から得られる第2情報を情報集約装置70を介して釣り情報表示装置60に表示させている。そして、電動リールの操作キー部6によって釣り情報表示装置60を制御可能、かつ釣り情報表示装置60の操作キー部62によって電動リールを制御可能である。
【0065】
ここでは、電動リールの操作キー部6によって釣り情報表示装置60を制御可能、かつ釣り情報表示装置60の操作キー部62によって電動リールを制御可能である。このため、たとえば釣り情報表示装置60の操作キー部62によって、電動リールの棚停止等の制御を行うことができるので、各種の操作の操作性を向上できる。
【0066】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、釣り船の情報収集手段として魚群探知機53やGPS54を示したが、たとえば、釣り船がインターネット情報を収集できる機能を有している場合には、得られたインターネット情報を表示できるようにしてもよい。また、釣り船が海底などの地形情報を収集できる場合には、得られた地形情報を表示するようにしてもよい。また、これらの情報は、デジタル化された高密度情報であってもよい。
【0067】
(b) 前記実施形態では、釣り用リールとして電動リールを例に説明したが、これに限定されず、手巻きのカウンタリール等であってもよい。
【0068】
(c) リールを特定する固有のIDコード(識別情報)を保持する情報保持手段と、IDコードを送信する情報送信手段とをさらに備えていてもよい。この場合、釣りに関する情報は情報送信手段で送信されたIDコードに関連する情報とすることで、リールを特定する固有のIDコードを送信することにより、各リールに適した釣りに関する情報を双方向通信によって受信できる。
【0069】
(d) 第1表示部5及び第2表示部63は、各種情報を全て表示する標準画面と、表示項目を概略化して簡易表示を行う簡易画面とに切り換え可能であってもよい。
【0070】
(e) 電動リールと釣り情報表示装置60との接続方法や、釣り情報表示装置60と情報集約装置70との接続方法は、前記実施形態に限定されず、有線通信及び無線通信のいずれかの組み合わせでもよい。無線通信の方法は、BluetoothやWi−Fi等の無線通信技術に限定されず、赤外線通信や他の通信プロトコルを用いてもよい。また、情報集約装置70を設けずに、魚群探知機53及びGPS54を直接的に釣り情報表示装置60に接続してもよい。また、情報収集端末として魚群探知機53及びGPS54の複数端末を接続したが、これらに限定されず、単一の端末のみ接続してもよい。
【0071】
(f) 前記実施形態では、釣り情報表示装置60は外部電源から給電されていたが、内部電池により給電するようにしてもよい。また、電動リールと釣り情報表示装置60とがリールコード19により接続されていたが、電動リールと外部電源とを直接的に接続してもよい。また、コードのコネクタの形状は、ソケット式及び鰐口式に限定されるものではない。
【0072】
(g) 前記実施形態では、釣り情報表示装置60は、電動リールの外部に離反して設けられていたが、電動リールのケース部材4の前部又は上部に着脱可能に装着できる構成にしてもよい。また、釣り情報表示装置60は、外光を遮蔽するために第2表示部63を覆う開閉式のカバー部材をさらに設けてもよい。この場合、第2表示部63の視認性を向上できるとともに、カバー部材を閉じたとき第2表示部63の表面を保護できる。
【0073】
(h) 前記実施形態では、釣り情報表示装置60の第2表示部63に第1情報及び第2情報を表示させていたが、電動リールの第1表示部5に第1情報及び第2情報を表示させてもよい。
【0074】
(i) 前記実施形態では、電動リールの操作キー部6によって釣り情報表示装置60を制御可能、かつ釣り情報表示装置60の操作キー部62によって電動リールを制御可能であったが、双方向の制御でなくいずれかの方向の制御のみ可能な構成であってもよい。
【0075】
(j) 図10に示すように、リール側に設けられリールの一部分を制御可能な第1リール制御部31と、釣り情報表示装置60側に設けられリールの他部分を制御可能な第2リール制御部66とを備えた構成にしてもよい。第1リール制御部31にはPWM駆動回路44を介してモータ12が接続されており、第1リール制御部31によってモータ12の回転制御を行う。第2リール制御部66には、操作キー部62の各種キー、各種の表示を行うための第2表示部63、各種のデータを記憶する記憶部67が接続されている。
【0076】
ここでは、たとえば記憶部67に保持された複数の誘いデータ等の各種のデータを元に釣人が釣り情報表示装置60の操作キー部62を操作することにより、情報通信部51、情報通信部50、第1リール制御部31を介してリールの制御である棚停止機能、誘い機能や自動しゃくり機能等の制御を行うことができる。この場合、リールに釣り情報表示装置60が接続されていないときは、モータ12の回転制御等の必要最低限の制御のみ行え、リールに釣り情報表示装置60が接続されたときは、釣り情報表示装置60の第2リール制御部66によってリールの付加的な制御を行える。したがって、リール制御の構成が容易になるとともに、各種の操作の操作性を向上でき、さらに、リール自体を拡張することなく釣り情報表示装置側でのみ逐次的に機能拡張を行える。
【0077】
なお、前記実施形態ではリール側のリール制御部30に記憶部45が接続されていたが、これに代えて釣り情報表示装置60側の第2リール制御部66に記憶部67を接続してもよい。これにより、リールの構成を簡素化できるとともに、釣り情報表示装置60の記憶部67に多くのデータを保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態による電動リールの斜視図。
【図2】前記電動リールの平面一部拡大図。
【図3】前記電動リールの制御ブロック図。
【図4】メインルーチンの処理の内容を示すフローチャート。
【図5】キー入力処理の内容を示すフローチャート。
【図6】各動動作モード処理の内容を示すフローチャート。
【図7】釣り情報表示装置の表示画面の一例を示す図。
【図8】前記釣り情報表示装置の通信モード時の表示画面の一例を示す図。
【図9】前記釣り情報表示装置の釣りモード時の表示画面の一例を示す図。
【図10】他の実施形態の図3に相当する図。
【符号の説明】
【0079】
1 リール本体
5 第1表示部
6 操作キー部
30 リール制御部
31 第1リール制御部
50、51、52 情報通信部
53 魚群探知機
60 釣り情報表示装置
61 情報表示制御部
62 操作キー部
63 第2表示部
64 本体部材
66 第2リール制御部
67 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣りに関する第2情報を表示する第2表示部と各種のデータを保持する記憶部とを有する釣り情報表示装置に有線又は無線により接続可能な釣り用リールであって、
前記釣り情報表示装置に有線又は無線により接続されるリール本体と、
前記リール本体に装着されリールに関する第1情報を表示する第1表示部と、
前記釣り情報表示装置の記憶部に保持されたデータを元にリール動作の制御を行う第1リール制御部と、
を備えた釣り用リール。
【請求項2】
前記釣り情報表示装置は、釣り船に搭載された魚群探知機に有線又は無線により接続可能であり、
前記第2情報は前記魚群探知機により収集された情報である、
請求項1に記載の釣り用リール。
【請求項3】
前記釣り情報表示装置を制御可能な外部制御手段をさらに備えている、請求項1又は2に記載の釣り用リール。
【請求項4】
釣り用リールと、
前記釣り用リールに有線又は無線により接続され、釣りに関する第2情報を表示する第2表示部と各種のデータを保持する記憶部とを有する釣り情報表示装置と、
を備え、
前記釣り用リールは、
前記釣り情報表示装置に有線又は無線により接続されるリール本体と、
前記リール本体に装着されリールに関する第1情報を表示する第1表示部と、
前記釣り情報表示装置の記憶部に保持されたデータを元にリール動作の制御を行う第1リール制御部と、を有する、
釣り情報表示システム。
【請求項5】
前記釣り情報表示装置は前記釣り用リール及び前記第2表示部の制御を行う制御部を有している、請求項4に記載の釣り情報表示システム。
【請求項6】
前記釣り情報表示装置は、釣り船に搭載された魚群探知機に有線又は無線により接続可能であり、
前記第2情報は前記魚群探知機により収集された情報である、
請求項4又は5に記載の釣り情報表示システム。
【請求項7】
前記釣り用リールは、前記釣り情報表示装置を制御可能な外部制御手段をさらに備えている、請求項4から6のいずれかに記載の釣り用リール。
【請求項8】
前記釣り情報表示装置は前記釣り用リールを制御する第2リール制御部をさらに備え、
前記第1リール制御部は前記釣り用リールのリール動作の一部分を制御可能であり、
前記第2リール制御部は前記釣り用リールのリール動作の他部分を制御可能である、
請求項4から7のいずれかに記載の釣り情報表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−212032(P2006−212032A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48792(P2006−48792)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【分割の表示】特願2003−101425(P2003−101425)の分割
【原出願日】平成15年4月4日(2003.4.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】