説明

鉄筋籠の組立方法、及び該方法に用いられる組立補助用具

【課題】溶接が必要な専用の型枠を使用することなく、主筋の取付け位置が正確で精度の
高い鉄筋籠を効率良く組立てることができる鉄筋籠の組立方法を提供すること。
【解決手段】円周上の中心軸方向に配列される複数の主筋と、これら主筋の内側に配設さ
れる複数の補強枠とを含んで構成される鉄筋籠の組立方法であって、中心軸方向とほぼ直
交する方向に並列配置された鉄筋籠台10に、柱部材30を複数本ずつ立設する工程と、
柱部材30の各々に付された各主筋の配設高さ位置31に、中心軸方向とほぼ直交する水
平方向に棒部材を支持するための支持具40を固定する工程と、同一高さ位置にある2つ
以上の支持具40に主筋受け部材50を掛け渡して設置する工程と、同一高さ位置に並列
配置された主筋受け部材50に主筋1を載置し、かつ主筋1を起立状態で並列配置された
補強枠2の外側に接触させた状態で、主筋1を各補強枠2に固定する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄筋籠の組立方法、及び該方法に用いられる組立補助用具に関し、より詳細に
は、コンクリートで構築される場所打ち杭などの構造体の補強に用いられる鉄筋籠の組立
方法、及び該方法に用いられる組立補助用具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建造物の耐震基礎となる場所打ち杭には、コンクリート構造体の補強を行うた
めに、多数の鉄筋を格子状に組み合わせて筒状に形成された鉄筋籠と呼ばれる組立体が使
用されている。
【0003】
図13は、従来の鉄筋籠の構造例を示す斜視図である。鉄筋籠100は、円周上の中心
軸方向に配列された多数の主筋101と、主筋101にほぼ直交する多数のフープ筋10
2と、鉄筋籠100の内側から主筋101に接し、主筋101との交差部で固定されてい
る複数の補強枠(帯状板からなる補強リング)103とを含んで構成されており、主筋1
01とフープ筋102との交差部は、図示しない鉄線結束やクリップ金具、又は溶接等に
より固定(接合)され、また、主筋101と補強枠103との交差部も、図示しない固定
用金具、又は溶接等により固定されている。
【0004】
次に従来の鉄筋籠の組立方法について説明する。図14〜18は、従来の鉄筋籠の組立
方法を説明するための図である。
鉄筋籠100の組み立てに当たって、まず、図14に示したように主筋受けスタンド1
10を施行現場へ並列に配置する。なお、図16(a)に示したように主筋受けスタンド
110の円弧凹曲面111には、主筋受け止め爪112が一定の間隔ピッチを保って内向
きに(溶接により)突設されている。
【0005】
そして、主筋受けスタンド110の円弧凹曲面111に突設された主筋受け止め爪11
2へ、上方から図15、図16(b)に示したように主筋101を係止させて、下側の主
筋101を平行状態に配列する。
【0006】
次に、真円形に捲き曲げ形成されている補強枠103を、図17に示したように、前記
平行状態に配列された主筋101の上に所定間隔を設けて並列に載置する。この状態で、
図18(a)に示したように、各補強枠103は各主筋101と交差して接しており、そ
の後、各主筋101を各補強枠103に、固定用金具や溶接等により固定する。
【0007】
次に、図18(b)に示したように、主筋受けアーチ枠120を主筋受けスタンド11
0の上方から施蓋状態に組み付け固定する。なお、主筋受けアーチ枠120の円弧凸曲面
121には、主筋受け止め爪122が一定の間隔ピッチを保って外向きに(溶接により)
突設されている。
【0008】
そして、主筋受けアーチ枠120の円弧凸曲面121に突設された主筋受け止め爪12
2へ、上方から主筋101を係止させて、上側の主筋101を平行状態に配列する。この
状態で、各補強枠103は主筋101と交差して接しており、その後、各主筋101を各
補強枠103に、固定用金具や溶接等により固定する。
【0009】
次に、平行状態にある複数の主筋101へ、フープ筋102を交差状態に巻き付けて固
定する。その後、主筋101とフープ筋102との交差部を、図示しない鉄線結束やクリ
ップ金具、又は溶接等により固定し、その後、主筋受けアーチ枠120、主筋受けスタン
ド110などを取り外して、組立てを完成するようになっている。このような鉄筋籠の組
立方法については、下記の特許文献1に提案されている。
【0010】
しかしながら、従来の鉄筋籠の組立方法では、例えば、約8〜12mの鉄筋籠100を
組み立てる場合、主筋受けスタンド110及び主筋受けアーチ枠120が約2〜3m間隔
で設置されるため、このような数メートル間隔で設置される複数の主筋受けスタンド11
0と主筋受けアーチ枠120とを事前に製作しておかなければならない。
【0011】
また、主筋受けスタンド110の円弧凹曲面111のなす円の半径は、主筋受けアーチ
枠120の円弧凸曲面121のなす円の半径よりも、主筋1本分の直径ほど大きく設定さ
れており、これらの形状加工により主筋受け止め爪112、122に係止された主筋10
1が補強枠103に接触するようになっており、これらの加工精度も要求され、また、籠
径が大きくなると、配設する主筋本数も増え、重量が増大するため、図18(b)に示し
たような円弧凸曲面121のみからなる主筋受けアーチ枠120では、多数の主筋の重量
を支えることが難しくなる。そのため、円弧凸曲面121を補強するための筋交い部材な
どをさらに溶接により接合して組立てる必要があり、これら型枠の製作に非常に手間がか
かるといった課題があった。
【0012】
しかも、1つの建築現場で、籠の外径サイズや主筋本数の異なる数種類(例えば、規模
の大きな現場では、8種類程度)の鉄筋籠を組み立てる場合もあり、このような場合には
、各鉄筋籠の仕様に対応した主筋受けスタンドと主筋受けアーチ枠とをそれぞれ事前に製
作しておかなければならず、これら型枠の製作だけでも、数日必要となる場合もあり、さ
らに多くの作業時間や製作費を要すことになるといった課題があった。
【0013】
また、上記した主筋受けスタンド110や主筋受けアーチ枠120は、決まった口径サ
イズや主筋本数の鉄筋籠の組み立てにしか適用することができないため、汎用性も低く、
そのため製作コストも高く付いてしまうといった課題もあった。
【特許文献1】特開2002−356845号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0014】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、鉄筋籠の組み立て作業時に、上記した
主筋受けスタンドや主筋受けアーチ枠のような型枠を使用することなく、主筋の取付け位
置が正確で精度の高い鉄筋籠を効率良く組み立てることができる鉄筋籠の組立方法を提供
すること、また、外径サイズや主筋本数などの仕様が異なる鉄筋籠の組み立てにも広く適
用することができ、しかも正確な位置に主筋を効率よく配置することが可能となる組立補
助用具を提供することを目的としている。
【0015】
上記目的を達成するために本発明に係る鉄筋籠の組立方法(1)は、円周上の中心軸方
向に配列される複数の主筋と、これら主筋の内側に配設される複数の補強枠とを含んで構
成される鉄筋籠の組立方法であって、前記中心軸方向とほぼ直交する方向に並列配置され
た鉄筋籠台に、柱部材を複数本ずつ立設する柱部材立設工程と、前記柱部材に、前記中心
軸方向とほぼ直交する水平方向でかつ各主筋の配設高さ位置に棒部材を支持するための支
持具を固定する支持具固定工程と、前記支持具に棒状の主筋受け部材を水平方向に掛け渡
して設置する主筋受け棒設置工程と、同一高さ位置に並列配置された前記主筋受け部材に
前記主筋を載置し、かつ起立状態で並列配置された前記補強枠の外側に前記主筋を当接さ
せた状態で、前記主筋を前記各補強枠に固定する主筋固定工程とを含むことを特徴として
いる。
【0016】
上記鉄筋籠の組立方法(1)によれば、鉄筋籠の組み立て作業時に、上記背景技術の欄
で説明した主筋受けスタンドや主筋受けアーチ枠のような型枠を使用することなく、前記
主筋の取付け位置が正確で精度の高い鉄筋籠を効率良く組み立てることができる。したが
って、従来のように、鉄筋籠の仕様に応じた専用の型枠を、溶接技術者が溶接により事前
に製作しておく必要がなくなり、早期に鉄筋籠の組み立て作業に着手することができ、工
期を短縮することが可能となる。さらに、前記鉄筋籠台、前記柱部材、前記支持具、及び
前記主筋受け部材は、前記仕様の異なる鉄筋籠の組み立てにも適用することが可能となる
ため、前記専用の型枠の製作にかかるコストも削減することができる。
【0017】
また本発明に係る鉄筋籠の組立方法(2)は、上記鉄筋籠の組立方法(1)において、
前記柱部材立設工程は、前記鉄筋籠台に摺動可能に配設された柱受け台の挿入部に、前記
柱部材の一端側を挿入して、該柱部材を立設することを特徴としている。
【0018】
上記鉄筋籠の組立方法(2)によれば、前記柱受け台を前記鉄筋籠台に沿って摺動させ
ることで、前記柱受け台を所望の位置に移動させることができ、組み立てる鉄筋籠の仕様
(籠径の大きさや主筋本数等)を考慮した適切な位置に前記柱部材を立設することができ
、また、立設後の前記柱部材の位置調整も簡単に行うことができる。また、前記柱部材を
前記柱受け台の挿入部から引き抜くことにより、前記鉄筋籠台上に一旦振り分けて配置さ
れた主筋の移動(再配置)も容易に行うことができる。
【0019】
また本発明に係る鉄筋籠の組立方法(3)は、上記鉄筋籠の組立方法(1)又は(2)
において、前記支持具固定工程は、磁石を用いて、前記支持具を前記柱部材に付された各
主筋の配設高さ位置に固定することを特徴としている。
【0020】
前記鉄筋籠の仕様(籠径の大きさや主筋本数等)が異なる場合は、前記柱部材に付され
る主筋の配設高さ位置も異なることとなるが、上記鉄筋籠の組立方法(3)によれば、磁
石を用いて前記支持具を前記柱部材に固定するので、前記支持具の着脱が可能となり、前
記鉄筋籠の仕様によって異なる各主筋の配設高さ位置に前記支持具を簡単かつ確実に固定
することができ、また、前記支持具の取り外し作業も容易に行うことができる。
【0021】
また、鉄筋籠の組み立て前の作業としては、鉄筋籠の仕様(籠径の大きさや主筋本数等
)に応じて割り出された籠断面(前記中心軸と直交する面)における各主筋の配設高さ位
置(より具体的には、円周上に配置された各主筋の断面下端部の高さ位置)を示す指標(
目印)を、前記柱部材に付与(マーキング)する作業を行うだけでよく、従来のように専
用の型枠を、溶接技術者が溶接により事前に製作する必要がなく、作業の効率を高めるこ
とができる。
また、前記柱部材を角材とした場合には、該角材の向かい合う2側面に前記支持具を磁
石で取付けることも可能となり、前記柱部材の立設本数などの組み立て状況に応じて前記
支持具の取付け方を変えることができる。なお、前記磁石には、前記支持具で支持する前
記主筋受け部材や前記主筋などを含めた重量(30kg程度以上の重量)に耐え得る強さ
の磁力を有するものを用いる。
【0022】
また本発明に係る鉄筋籠の組立方法(4)は、上記鉄筋籠の組立方法(1)又は(2)
において、前記支持具が、各主筋の配設高さ位置に前記棒部材を支持するための支持部が
突設された板部材からなり、前記支持具固定工程は、挟着具を用いて、前記支持具の板部
材を前記柱部材に固定することを特徴としている。
【0023】
上記鉄筋籠の組立方法(4)によれば、前記挟着具を用いて、前記支持具の板部材を前
記柱部材に固定するだけで、各主筋の配設高さ位置に前記支持部を位置させることができ
、組み立て時の作業効率を高めることができ、また、前記支持具の着脱も容易に行うこと
ができる。また、鉄筋籠の組み立て前の作業としては、鉄筋籠の仕様に応じて割り出され
た籠断面(前記中心軸と直交する面)における各主筋の配設高さ位置(より具体的には、
円周上に配置された各主筋の断面下端部の高さ位置)を示す指標(目印)を、前記板部材
に付与(マーキング)し、これら指標に従って、前記支持部を、溶接やネジ等で前記板部
材に固定しておけばよく、従来のようにアーチ型等の専用の型枠を溶接技術者が溶接によ
り事前に製作する必要がなく、組み立て前の作業を減らすことができる。
【0024】
また本発明に係る鉄筋籠の組立方法(5)は、上記鉄筋籠の組立方法(1)〜(4)の
いずれかにおいて、前記主筋固定工程は、固定用金具を用いて、前記主筋を前記各補強枠
に固定することを特徴としている。
【0025】
一般に、工事現場における溶接による接合は、季節や天候による溶接強度のばらつき、
溶接技術者の熟練度によるのばらつきなどを含む恐れがあり、鉄筋籠の剛性にばらつきが
生じる可能性が高くなる。上記鉄筋籠の組立方法(5)によれば、溶接の代わりに、前記
固定用金具を用いることにより、一般作業者でも容易かつ確実に前記主筋を前記各補強枠
へ固定することができ、不適切な溶接により前記主筋等が損傷を受け、強度低下が起こる
といった虞もなく、高品質の安定した鉄筋籠を効率よく組み立てることができる。
なお、前記固定用金具としては、本発明者が先に発明し、特開2002−106113
号公報、特許第3914897号公報に開示された固定用金具(図8、図9参照)などを
用いることが好ましいが、これらとは異なる形態の固定用金具であってもよい。
【0026】
また本発明に係る鉄筋籠の組立方法(6)は、上記鉄筋籠の組立方法(1)〜(5)の
いずれかにおいて、前記主筋固定工程において、前記補強枠の転がり防止部材を固定する
主筋を先に前記補強枠に固定した後、固定用金具を用いて、前記先に固定された主筋に前
記転がり防止部材を固定する転がり防止部材固定工程を含むことを特徴としている。
【0027】
上記鉄筋籠の組立方法(6)によれば、溶接技術者による溶接作業を行うことなく、固
定用金具を用いて前記主筋に前記補強枠の転がり防止部材を固定することができ、一般作
業者でも容易かつ確実に前記転がり防止部材を設置することができる。
なお、前記固定用金具としては、本発明者が先に発明し、特開2007−278037
号公報に開示された固定用金具を用い、前記転がり防止部材としては、棒状のL型鋼材を
用いることができるが、これらとは異なる形態の固定用金具や転がり防止部材であっても
よい。
【0028】
また本発明に係る鉄筋籠の組立方法(7)は、上記鉄筋籠の組立方法(1)〜(6)の
いずれかにおいて、前記主筋受け部材には、組み立てる鉄筋籠の直径以下の長さの棒部材
を用いることを特徴としている。
【0029】
上記鉄筋籠の組立方法(7)によれば、前記主筋受け部材を前記支持具に掛け渡した場
合に、前記補強枠の外側にはみ出す部分の長さを抑えることができ、前記主筋受け部材が
長すぎて、前記主筋の配置作業の邪魔になるといったこともなく、また、前記支持具への
取付けも容易に行うことができ、作業性を高めることができる。なお、前記主筋受け部材
の長さは、鉄筋籠の直径以下の長さであればよいが、鉄筋籠半径の±20%程度の長さの
ものが、使い勝手がよく、好ましい。
【0030】
また本発明に係る鉄筋籠の組立方法(8)は、所定間隔を設けて並列配置される補強枠
の外周面に、これら補強枠とほぼ直交する方向に所定間隔を設けて複数の主筋が配設され
る鉄筋籠の組立方法であって、起立状態の前記補強枠の外周面に配設される前記各主筋を
載置することができる高さ位置に、これら主筋の軸方向とほぼ直交する水平方向に棒状の
主筋受け部材を配設し、これら主筋受け部材に主筋を載せ、該主筋を前記補強枠の外周面
に当接させた状態で、前記主筋と前記補強枠とを固定する工程を含むことを特徴としてい
る。
【0031】
上記鉄筋籠の組立方法(8)によれば、起立状態の前記補強枠の外周面に配設される前
記各主筋を載置することができる高さ位置に、これら主筋の軸方向とほぼ直交する水平方
向に棒状の主筋受け部材を配設し、これら主筋受け部材に主筋を載せ、該主筋を前記補強
枠の外周面に当接させた状態で、前記主筋と前記補強枠とを固定することにより、上記背
景技術の欄で説明した主筋受けスタンドや主筋受けアーチ枠のような型枠を使用すること
なく、前記主筋の取付け位置が正確で精度の高い鉄筋籠を効率良く組み立てることができ
る。
また、鉄筋籠の仕様に応じて割り出された籠断面における前記各主筋を載置することが
できる高さ位置に前記主筋受け部材を配設すればよいので、従来のように、鉄筋籠の仕様
に応じた専用の型枠を用意する必要がなく、仕様の異なる鉄筋籠の組み立てにも広く適用
することができ、型枠の製作にかかるコストを削減することができる。
【0032】
また本発明に係る組立補助用具(1)は、上記鉄筋籠の組立方法(1)〜(8)のいず
れかに用いられる組立補助用具であって、鉄筋籠台に対してほぼ鉛直方向に立設させる柱
部材と、該柱部材を立設させるための挿入部を有し、鉄筋籠台に摺動可能に配設される柱
受け台と、前記柱部材へ着脱可能に構成され、該柱部材に固定して、棒部材を水平方向に
支持するための支持具と、該支持具に取り付け可能に構成され、前記主筋を載置するため
の主筋受け部材とを含んで構成されていることを特徴としている。
【0033】
上記組立補助用具(1)によれば、前記柱部材、前記柱受け台、前記支持具、及び前記
主筋受け部材を前記鉄筋籠台に組み付けることにより、上記背景技術の欄で説明した主筋
受けスタンドや主筋受けアーチ枠のような、溶接で接合され、製作に手間のかかる型枠を
使用することなく、前記主筋の取付け位置が正確で精度の高い鉄筋籠を効率良く組み立て
ることが可能となる。また、仕様の異なる鉄筋籠の組み立てにも広く適用することができ
、鉄筋籠毎に専用の型枠を製作する手間を省くことができ、その製作にかかるコストを削
減することができる。
【0034】
また本発明に係る組立補助用具(2)は、上記組立補助用具(1)において、前記支持
具が、前記柱部材に付された各主筋の配設高さ位置に固定するものであって、前記主筋受
け部材を挿通可能な筒部材からなり、前記主筋受け部材が、その一端側に、主筋の落下を
防止するための係止片を備えていることを特徴としている。
【0035】
上記組立補助用具(2)によれば、前記主筋受け部材を前記支持具に挿通させることが
でき、前記支持具から前記主筋受け部材が外れてしまう危険をなくすことができる。また
、前記主筋受け部材に設けられた前記係止片により、前記主筋受け部材の一端側に載せら
れた主筋が、前記主筋受け部材から落下してしまうことを防止することができる。
【0036】
また本発明に係る組立補助用具(3)は、上記組立補助用具(1)において、前記支持
具が、各主筋の配設高さ位置に前記棒部材を支持するための支持部が突設された板部材か
らなり、該板部材が、挟着具を用いて前記柱部材に固定されるように構成されていること
を特徴としている。
【0037】
上記組立補助用具(3)によれば、前記支持具には、各主筋の配設高さ位置に前記棒部
材を支持するための支持部が突設されているので、工事現場での組み立て時には、前記支
持具を構成する板部材を、前記挟着具(例えば、万力等)を用いて前記柱部材の側面に固
定するだけで、各主筋の配設高さ位置に前記支持部を位置させることができ、従来使用さ
れていた製作に手間のかかる型枠を使用することなく、前記主筋の取付け位置が正確で精
度の高い鉄筋籠を効率良く組み立てることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係る鉄筋籠の組立方法、及び該方法に用いられる組立補助用具の実施の
形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、円周上の中心軸方向に配列さ
れる複数の主筋(例えば、直径が約19〜41mm程度の異形棒鋼)と、これら主筋の内
側に配設される複数のリング形状をした補強枠(例えば、幅が約50〜100mmで、厚
さが約6〜12mmの帯状板からなる枠部材)とを含んで構成される鉄筋籠の組立方法(
例えば、直径が約0.7〜2.8mで、長さが3.5〜12m程度の鉄筋籠を横臥させた
状態で組み立てる方法)について説明する。
【0039】
図1は、実施の形態に係る鉄筋籠の組立方法の概略手順を示したフローチャートであり
、図2〜図10は、実施の形態に係る鉄筋籠の組立方法、及び組立補助用具を説明するた
めの図である。
【0040】
図2は、鉄筋籠台が配置された状態を示す斜視図、図3は、鉄筋籠台に柱部材が立設さ
れた状態を示す斜視図、図4(a)は柱部材を取付ける柱受け台を示した斜視図、(b)
は柱部材に固定される支持具を示した斜視図、図5は、補強枠の設置状態を示す斜視図、
図6(a)は柱部材に下部主筋用の主筋受け部材を取付けている状態を示す正面図、(b
)は(a)におけるB−B線断面図を示している。
【0041】
さらに、図7は、鉄筋籠下部の主筋が配置されている状態を示す正面図、図8、9は、
主筋と補助枠との固定に用いられる固定用金具を示した斜視図、図10は、鉄筋籠上部の
主筋が配置されている状態を示す正面図である。
【0042】
まず、鉄筋籠の組立てに当って、図2に示したように、所定の長さの断面H型の鋼材(
H型鋼)からなる複数の鉄筋籠台10を、主筋にたわみが生じない間隔で施行現場へ並列
に配置し(工程1)、これら鉄筋籠台10の上に、鉄筋籠を構成する必要数量の主筋1を
、後ほど立設される柱部材30(図3参照)等の位置(なお、これらの位置を各鉄筋籠台
10に付与しておいてもよい)を考慮して振り分けて配置する(工程2)。なお、配置さ
れる主筋1の一端側には、主筋1の先端を揃えるための当て板(図示せず)が立設されて
いる。また、ここでは鉄筋籠台10にH型鋼を用いているが、後述の柱受け台20を設置
できる形状のものであればH型鋼以外のものでもよい。
【0043】
次に、図3に示したように、各鉄筋籠台10に、柱部材30(30a〜30e)に対応
した数の柱受け台20を、間隔(補強枠2(図5参照)の外径や各主筋の位置等を考慮し
た間隔)をあけて設置し(工程3)、各柱受け台20に、主筋の配設高さ位置が付与(マ
ーキング)された柱部材30a〜30eを取り付け、これら柱部材30a〜30eを鉄筋
籠台10にほぼ垂直、かつ主筋1の軸方向に整列させた状態で立設させる(工程4)。
【0044】
柱受け台20は、図4(a)に示したように、鉄筋籠台10の側壁11とほぼ同じ高さ
の金属性の有底筒状部材からなり、略矩形の上部開口部分が、柱部材30a〜30eの下
端部を挿入するための挿入部21となっている。また、その上端の一側面から下方に向け
て逆L字形状をした係止部22が延設され、係止部22が鉄筋籠台10の側壁11に係止
されるようになっており、係止部22を鉄筋籠台10の側壁11に係止させた状態で摺動
させることができるようになっている。
【0045】
なお、本実施の形態においては、柱受け台20が、補強枠2(図6等参照)の外径をほ
ぼ四等分する各位置、すなわち5箇所に配設されているが、柱受け台20の設置個数は、
組み立てる鉄筋籠の径や主筋本数などを考慮して適宜増減させることができる。但し、後
述する主筋受け部材50(図6参照)が少なくとも2本の柱部材で支持される必要がある
ため、柱受け台20は、少なくとも2つは必要となる。
【0046】
これら5つの柱受け台20のうち両端の2つには、鉄筋籠の半径以下の短めの柱部材3
0d、30eが取り付けられ、これらの間にある3つの柱受け台20には、鉄筋籠の直径
よりも長い柱部材30a、30b、30cが取り付けられている。なお、両端の柱部材3
0d、30eは、主に起立状態の補強枠2(図6等参照)の下部において、隣に配置され
る主筋1どうしの高さの差が小さくて、補強枠2の内側で主筋受け部材50を掛け渡すこ
とができない位置にある主筋を配置するために利用される。
【0047】
これら柱部材30a〜30eは、断面略矩形の鉄製の棒部材からなり、その側面には、
各主筋の配設高さ位置を示す指標(目印、マーク)31(図6等参照)が事前に付与され
ている。なお、柱部材30a〜30eに付与される各主筋の配設高さ位置は、鉄筋籠の仕
様(籠径の大きさや主筋本数等)に応じて割り出された籠断面(籠の中心軸と直交する面
)における各主筋の配設高さ位置、より具体的には、鉄筋籠台10上に起立状態で配置さ
れた補強枠2の外周上に配置された主筋1の断面下端部の水平位置を示している。この高
さ位置に、後述する主筋受け部材50を掛け渡し、その主筋受け部材50の上に主筋1を
載置することで、各主筋1を設計された位置に配置することが可能となっている。
【0048】
次に、図5に示したように、補強枠2を所定の間隔で並列に起立状態で配置する(工程
5)。なお、補強枠2には、補強枠2の転がりを防止するための部材(支持棒など、図示
せず)が、溶接等により取り付けられるようになっている。
【0049】
次に、図6に示したように、各鉄筋籠台10に設置された柱部材30a〜30eに付さ
れている鉄筋籠下部(下半分)の主筋の配設高さ位置に、それぞれ図4(b)に示した支
持具40を固定し、隣合う柱部材の同一高さ位置に固定された2つの支持具40に角棒状
の主筋受け部材50(50a〜50h)を掛け渡した状態に取り付ける(工程6)。
【0050】
支持具40は、図4(b)に示したように、主筋受け部材50を挿通できるように金属
性の断面矩形の筒部材からなり、その一側面に磁石41が固着されており、磁石41を利
用して柱部材30の側面に固定させることができるようになっている。なお、ここでは、
支持具40が筒(管)部材から構成されているが、主筋受け部材50を水平方向に支持で
きる形態であればよく、別の実施の形態では、断面コの字形状の鋼材などが適用され得る

【0051】
また、主筋受け部材50は、鉄筋籠の直径以下の長さ、好ましくは、鉄筋籠半径の±2
0%程度の長さに設定されており(なお、長さの異なるものを用いてもよい)、その一端
側に、主筋1を係止させるための係止片51が、屈曲形成、又は、金属片を溶接して形成
されているもの(50a〜50c、50e〜50g)もあり、また他端側は、支持具40
に挿通しやすくなるように、角部がやや丸みをおびた形状に加工されている。
【0052】
本実施の形態において、支持具40は、図6(b)から明らかなように、中央の柱部材
30bに対しては、背面と正面の両側に取り付け、右側の柱部材30c、30eに対して
は、背面側に取り付け、左側2本の柱部材30a、30dに対しては、正面側に取り付け
られている。
【0053】
このような支持具40の取り付け方によって、補強枠2の内側であったとしても、右側
半分の主筋1を載置するための主筋受け部材50a〜50cと、左側半分の主筋1を載置
するための主筋受け部材50e〜50gとを、それぞれ同一高さ位置に配設することが可
能となっている。
【0054】
また、柱部材30a、30b、及び柱部材30b、30cに固定された支持具40に掛
け渡して支持されている各主筋受け部材50a〜50c、50e〜50gは、係止片51
のある一端部分が、補強枠2の外側に、少なくとも主筋1が載置できる適度突き出した状
態に配置されている。
【0055】
一方、柱部材30a、30d、及び柱部材30c、30eに固定された支持具40に掛
け渡して、補強枠2の外で支持されている主筋受け部材50d、50hは、一端側が補強
枠2に接近させた位置に配置される。なお、主筋受け部材50d、50hの設置が、鉄筋
籠台10上に振り分け配置された主筋1を主筋受け部材50a〜50c、50e〜50g
に載置する移動の妨げとなる場合には、主筋受け部材50a〜50c、50e〜50gへ
の主筋1の載置を終えた後に取り付けるようにすればよく、各主筋受け部材50の取付け
順序等は、現場での作業性を考慮して、適宜変更するようにすればよい。
【0056】
また、工程5、工程6の順番を入れ替えて、先に、支持具40の固定と主筋受け部材5
0の取り付けとを行い、その後、補強枠2の設置を行っても良く、また、工程3の前に、
柱部材30のマーキング位置31に各支持具40を固定しておき、工程3では、支持具4
0が固定された柱部材30を柱受け台20に取り付けるようにしてもよい。
【0057】
次に、図7に示したように、支持具40に掛け渡した各主筋受け部材50a〜50hの
一端側に主筋1を載せ、各補強枠2の外周面に当接させた状態で、各主筋1を各補強枠2
に固定する(工程7)。これら主筋1と補強枠2との固定には、溶接による接合を行って
もよいが、固定用金具による固定を行うことが好ましい。
【0058】
固定用金具には、図8に示した、本発明者が先に発明し、特開2002−106113
号公報に開示された固定用金具を用いることができる。この固定用金具60は、平板体6
1がU字状に折り返され、左、右側片が形成されたものであって、U字状曲折部が主筋挿
入部となり、この主筋挿入部の長さ方向中間部より端部にかけてさらに、左、右側片が延
設されて突片62が形成され、この突片62の延設一側縁より補強枠挿入用の切欠63が
設けられ、前記主筋挿入部に固定用ボルト64が螺着されるように構成されている。この
固定用金具60を使用すれば、補強枠2の外側から主筋1と補強枠2とを簡単な作業で確
実に固定することができる。
【0059】
また、上記固定用金具には、図9に示した、本発明者が先に発明し、特許第39148
97号公報に開示された固定用金具を用いることもできる。この固定用金具70は、補強
枠2を上下(幅)方向に挟んで位置し、主筋1を挿入させるためのC形切り欠け部71a
を有する主筋把持部71と、これら2つの主筋把持部71を連結するねじ孔板部72とを
備えている。ねじ孔板部72の略中央部には主筋1と補強枠2との交差部を締め付けるボ
ルト73を螺合させるためのねじ孔72aが形成され、また、主筋把持部71の上面には
、頭部がお椀形状をした鉄筋籠用スペーサ74の軸部74aを差し込むための軸受け75
が固定されているものである。なお、鉄筋籠用スペーサ74のための軸受け75は、必要
に応じて設ければよい。
【0060】
この固定用金具70を使用すれば、ねじ孔板72を補強枠2の内側に位置させ、2つの
主筋把持部71を補強枠2の幅方向を挟んで主筋1を把持する位置に位置させ、その後、
ねじ孔板部72のねじ孔72aにボルト73を装着して、締め付けることによって、補強
枠2の内側から主筋1と補強枠2とを簡単な作業で確実に固定することができ、また、組
み立てた鉄筋籠を採掘孔に建て込む場合に、鉄筋籠用スペーサ74を、軸受け75に差し
込むだけで簡単に取り付けることができる。
【0061】
各補強枠2への鉄筋籠下部の主筋1の固定が完了すれば、次に、工程6で設置された主
筋受け部材50を支持具40から引き抜いて取り外す(工程8)。なお、必要であれば支
持具40も取り外してもよく、また、主筋受け部材50、支持具40ともに取り外さずに
、鉄筋籠上側の主筋の配置作業に移ってもよい。
【0062】
次に、図10に示したように、支持具40を、柱部材30a〜30cに付与されている
鉄筋籠上部(上半分)の主筋の配設高さ位置に取り付け、上記工程6と同様にして、これ
ら支持具40に主筋受け部材50(50a、50b、50d、50e、50f)を掛け渡
した状態に取り付ける(工程9)。なお、図10に示したように、補強枠2の上部におい
て、左右の主筋の間隔が、主筋受け部材50g、50hの長さよりも小さくなっているも
のについては、1本の主筋受け部材50g、50hで左右の主筋を支持するようにしても
よい。
【0063】
そして、支持具40に掛け渡した状態の各主筋受け部材50上に、主筋1を補強枠2の
外周面に当接させた状態に載置し、工程7と同様の方法で、固定用金具60、70を用い
て主筋1を各補強枠2に固定する(工程10)。
【0064】
補強枠2への鉄筋籠上部の主筋1の固定が完了すれば、次に工程9で取り付けた主筋受
け部材50を支持具40から引き抜いて取り外し(工程11)、次に各柱部材30a〜3
0eを柱受け台20から引き抜いて(又は、柱受け台20ごと)取り外す(工程12)。
【0065】
次に、各補強枠2に固定された複数の主筋1へ、図示しないフープ筋を交差状態に巻き
付けて固定する(工程13)。フープ筋の配筋、固定方法は、従来と同様の方法で行えば
良く、すなわち、フープ筋を主筋へ外接状態に捲き曲げ、主筋とフープ筋との交差部を、
図示しない鉄線結束やクリップ金具等により固定し、その後、補強枠2の転がり防止部材
を取り外し、鉄筋籠の組立てを終える。
【0066】
上記した実施の形態に係る鉄筋籠の組立方法によれば、鉄筋籠の組み立て作業時に、従
来使用していた主筋受けスタンド110や主筋受けアーチ枠120(図18参照)のよう
な大型で製作に手間を要する型枠を使用することなく、主筋の取付け位置が正確で精度の
高い鉄筋籠を効率良く組み立てることができる。
また、鉄筋籠の組み立て前の作業としては、鉄筋籠の仕様(籠径の大きさや主筋本数)
に応じて割り出された籠断面(前記中心軸と直交する面)における各主筋の配設高さ位置
(より具体的には、円周上に配置された各主筋の断面下端部の高さ位置)を示す指標(目
印)を、各柱部材30a〜30eに付与する(マーキング)作業を行うだけでよく、従来
のように、鉄筋籠の仕様に応じた専用の型枠を、溶接技術者が溶接により事前に製作して
おく必要がなくなり、早期に鉄筋籠の組み立て作業に着手することができ、工期を短縮す
ることが可能となる。
さらに、鉄筋籠台10、柱部材30、支持具40、及び主筋受け部材50は、仕様の異
なる鉄筋籠の組み立てにも適用することが可能となるため、専用の型枠の製作にかかるコ
ストも削減することができる。
【0067】
また、鉄筋籠台10に摺動可能に配設された柱受け台20の挿入部21に、柱部材30
の一端側を挿入して、柱部材30を立設するので、柱受け台20を鉄筋籠台10に沿って
摺動させることで、柱受け台20を所望の位置に移動させることができ、組み立てる鉄筋
籠の仕様を考慮した適切な位置に柱部材30を立設することができ、また、立設後の柱部
材30の位置調整も簡単に行うことができる。また、柱部材30を柱受け台20の挿入部
21から引き抜くことにより、鉄筋籠台10上に一旦振り分けて配置された主筋1の移動
(再配置)も容易に行うことができる。
【0068】
また、鉄筋籠の仕様が異なる場合は、柱部材30に付される主筋の配設高さ位置も異な
ることとなるが、磁石41を用いて支持具40を柱部材30に固定するので、支持具40
の着脱が可能となり、鉄筋籠の仕様によって異なる各主筋の配設高さ位置に支持具40を
簡単かつ確実に固定することができ、また、支持具40の取り外し作業も容易に行うこと
ができる。
【0069】
また、支持具40を柱部材30から外した状態で、支持具40が邪魔になることなく、
柱部材30への各主筋の配設高さ位置となる指標(目印)の付与を正確かつ容易に行うこ
とができる。また、柱部材30を角材とした場合には、柱部材30の向かい合う2側面に
支持具40を取付けることが可能となり、柱部材30の立設本数などの組み立て状況に応
じて支持具40の取付け方を変えることができる。
【0070】
また、主筋1と補強枠2との固定に、図8、9に示した固定用金具を用いることができ
、一般作業者でも容易かつ確実に主筋1を各補強枠2へ固定することができ、不適切な溶
接により主筋等が損傷を受け、強度低下が起こるといった虞もなく、高品質の安定した鉄
筋籠を効率よく組み立てることができる。
【0071】
また、主筋受け部材50には、組み立てる鉄筋籠の直径以下の長さのものを用いるので
、主筋受け部材50を支持具40に掛け渡した場合に、補強枠2の外側にはみ出る部分の
長さを抑えることができ、主筋受け部材50が長すぎて、主筋1の配置作業の邪魔になる
といったこともなく、また、支持具40へ取付けも容易に行うことができ、作業性を高め
ることができる。
【0072】
また、実施の形態に係る組立補助用具によれば、柱受け台20、柱部材30、支持具4
0、及び主筋受け部材50を含んで構成されるので、これらを現場で鉄筋籠台10に組み
付けることにより、溶接で接合された型枠を使用することなく、主筋の取付け位置が正確
で精度の高い鉄筋籠を効率良く組み立てることが可能となる。また、仕様(籠径の大きさ
や主筋本数等)の異なる鉄筋籠の組み立てにも広く適用することができ、鉄筋籠毎に専用
の型枠を製作する手間を省くことができ、その製作にかかるコストを削減することができ
る。
【0073】
また、支持具40が、主筋受け部材50を挿通させるように筒形状からなるので、支持
具40から主筋受け部材50が外れてしまう危険をなくすことができ、また、必要に応じ
て主筋受け部材50の一端側に、主筋受け部材50に載置された主筋の落下を防止するた
めの係止片51が設けられているので、係止片51により、主筋受け部材50の一端側に
載せられた主筋が、主筋受け部材50から落下してしまうことを防止することができる。
【0074】
なお、上記実施の形態では、工程5において補強枠2の転がり防止部材を補強枠2に溶
接で取り付ける場合について説明したが、別の実施の形態では、図11に示したように、
溶接を行うのではなく、補強枠2の転がり防止に適した高さに配設される左右各1本の主
筋を、上記した方法で先に補強枠2に固定した後、これら左右の主筋に、固定用金具60
A(図8と類似した形状のもの)を用いて、L型鋼からなる転がり防止部材80を床面に
立設させた状態で、転がり防止部材80と主筋1とを固定してもよい。
【0075】
係る鉄筋籠の組立方法によれば、主筋1と補強枠2との固定だけでなく、補強枠2の転
がり防止部材80の設置も溶接によらずに固定用金具を用いて行うことができ、溶接技術
者による溶接作業を全く行うことなく、鉄筋籠の組立てを行うことが可能となる。なお、
安定力を高めるために転がり防止部材80を左右に各2本以上設けてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態では、一側面に磁石41が固着された筒部材からなる支持具40
を、柱部材30に付された各主筋の配設高さ位置に固定するようになっているが、別の実
施の形態では、図12に柱部材30周辺の側面図として示したように、柱部材30と同等
の長さを有し、柱部材30の正面(又は背面)に配設される板部材42と、板部材42に
付された各主筋の配設高さ位置(円周上に配置された各主筋の断面下端部の高さ位置を示
す指標位置)に、溶接又はネジ等で突設された支持部43とを含む支持具40Aを、万力
などの挟持具44で柱部材30に固定し、支持具40Aに設けられた側面視略L字形状を
した支持部43に主筋受け部材50を掛け渡した状態に取り付ける(係止させる)方法を
採用することもできる。
【0077】
係る組み立て方法によっても、鉄筋籠の組み立て作業時に、従来使用していた主筋受け
スタンド110や主筋受けアーチ枠120(図18参照)のような大型で製作に手間を要
する型枠を使用することなく、主筋の取付け位置が正確で精度の高い鉄筋籠を効率良く組
み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係る鉄筋籠の組立方法の概略手順を示したフローチャートである。
【図2】鉄筋籠台が配置された状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示した鉄筋籠台に柱部材が立設された状態を示す斜視図である。
【図4】(a)は、柱部材が取り付けられる柱受け台を示す斜視図、(b)は、柱部材に固定される支持具を示す斜視図である。
【図5】補強枠の設置状態を示す斜視図である。
【図6】(a)は、柱部材に主筋受け部材を掛け渡している状態を示す正面図、(b)は、(a)におけるB−B線平面断面図である。
【図7】主筋受け部材に鉄筋籠下部の主筋が載置されている状態を示す正面図である。
【図8】主筋と補強枠との固定に用いられる固定用金具の一例を示す斜視図である。
【図9】主筋と補強枠との固定に用いられる別の固定用金具を示す斜視図である。
【図10】主筋受け部材に鉄筋籠上部の主筋が載置されている状態を示す正面図である。
【図11】別の実施の形態に係る補強枠の転がり防止部材が固定されている状態を示す正面図である。
【図12】別の実施の形態に係る支持具を説明するための部分側面図である。
【図13】従来の鉄筋籠の構造例を示す斜視図である。
【図14】従来の鉄筋籠の組立に用いた主筋受けスタンドの配列状態を示す斜視図である。
【図15】主筋受けスタンドに主筋が係止された状態を示す斜視図である。
【図16】(a)は、主筋受けスタンドの正面図であり、(b)は、主筋受けスタンドに主筋が係止された状態を示す正面図である。
【図17】主筋受けスタンドに配列された主筋の上に補強枠が配置される状態を示す斜視図である。
【図18】(a)は、主筋受けスタンドに配列された主筋の上に補強枠が配置された状態を示す正面図であり、(b)は、主筋受けスタンドに対する主筋受けアーチ枠の組付け固定状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 主筋
2 補強枠
10 鉄筋籠台
20 柱受け台
30、30a〜30e 柱部材
40、40A 支持具
50、50a〜50h 主筋受け部材
60、70 固定用金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周上の中心軸方向に配列される複数の主筋と、これら主筋の内側に配設される複数の
補強枠とを含んで構成される鉄筋籠の組立方法であって、
前記中心軸方向とほぼ直交する方向に並列配置された鉄筋籠台に、柱部材を複数本ずつ
立設する柱部材立設工程と、
前記柱部材に、前記中心軸方向とほぼ直交する水平方向でかつ各主筋の配設高さ位置に
棒部材を支持するための支持具を固定する支持具固定工程と、
前記支持具に棒状の主筋受け部材を水平方向に掛け渡して設置する主筋受け棒設置工程
と、
同一高さ位置に並列配置された前記主筋受け部材に前記主筋を載置し、かつ起立状態で
並列配置された前記補強枠の外側に前記主筋を当接させた状態で、前記主筋を前記各補強
枠に固定する主筋固定工程とを含むことを特徴とする鉄筋籠の組立方法。
【請求項2】
前記柱部材立設工程は、前記鉄筋籠台に摺動可能に配設された柱受け台の挿入部に、前
記柱部材の一端側を挿入して、該柱部材を立設することを特徴とする請求項1記載の鉄筋
籠の組立方法。
【請求項3】
前記支持具固定工程は、磁石を用いて、前記支持具を前記柱部材に付された各主筋の配
設高さ位置に固定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鉄筋籠の組立方法。
【請求項4】
前記支持具が、各主筋の配設高さ位置に前記棒部材を支持するための支持部が突設され
た板部材からなり、
前記支持具固定工程は、挟着具を用いて、前記支持具の板部材を前記柱部材に固定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鉄筋籠の組立方法。
【請求項5】
前記主筋固定工程は、固定用金具を用いて、前記主筋を前記各補強枠に固定することを
特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の鉄筋籠の組立方法。
【請求項6】
前記主筋固定工程において、前記補強枠の転がり防止部材を固定する主筋を先に前記補
強枠に固定した後、固定用金具を用いて、前記先に固定された主筋に前記転がり防止部材
を固定する転がり防止部材固定工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項
に記載の鉄筋籠の組立方法。
【請求項7】
前記主筋受け部材には、組み立てる鉄筋籠の直径以下の長さの棒部材を用いることを特
徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の鉄筋籠の組立方法。
【請求項8】
所定間隔を設けて並列配置される補強枠の外周面に、これら補強枠とほぼ直交する方向
に所定間隔を設けて複数の主筋が配設される鉄筋籠の組立方法であって、
起立状態の前記補強枠の外周面に配設される前記各主筋を載置することができる高さ位
置に、これら主筋の軸方向とほぼ直交する水平方向に棒状の主筋受け部材を配設し、これ
ら主筋受け部材に主筋を載せ、該主筋を前記補強枠の外周面に当接させた状態で、前記主
筋と前記補強枠とを固定する工程を含むことを特徴とする鉄筋籠の組立方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの項に記載の鉄筋籠の組立方法に用いられる組立補助用具であ
って、
鉄筋籠台に対してほぼ鉛直方向に立設させる柱部材と、
該柱部材を立設させるための挿入部を有し、鉄筋籠台に摺動可能に配設される柱受け台
と、
前記柱部材へ着脱可能に構成され、該柱部材に固定して、棒部材を水平方向に支持する
ための支持具と、
該支持具に取り付け可能に構成され、前記主筋を載置するための主筋受け部材とを含ん
で構成されていることを特徴とする組立補助用具。
【請求項10】
前記支持具が、前記柱部材に付された各主筋の配設高さ位置に固定するものであって、
前記主筋受け部材を挿通可能な筒部材からなり、
前記主筋受け部材が、その一端側に、主筋の落下を防止するための係止片を備えている
ことを特徴とする請求項9記載の組立補助用具。
【請求項11】
前記支持具が、各主筋の配設高さ位置に前記棒部材を支持するための支持部が突設され
た板部材からなり、該板部材が、挟着具を用いて前記柱部材に固定されるように構成され
ていることを特徴とする請求項9記載の組立補助用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−293245(P2009−293245A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146696(P2008−146696)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(302033757)株式会社泉州イワタニ (3)
【Fターム(参考)】